説明

車体端部構造

【課題】 筒状部材を車体骨格部材の長手方向端部に締結手段によって結合するための張出板部の変形を抑制することができる車体端部構造を得る。
【解決手段】 車体前後方向に沿うフロントサイドメンバ12の前端に筒状のクラッシュボックス20を介してバンパリインフォースメント12が連結される車体前部構造10では、クラッシュボックス本体26の後端から上下に張り出して設けられた取付フランジ28と、取付フランジ28におけるクラッシュボックス本体26よりも上下に張り出した部分とクラッシュボックス本体26とを連結して取付フランジ28が前後方向に変形することを抑制する立壁52、54と、取付フランジ28における立壁52等によって補強された部分とフロントサイドメンバ12の取付フランジ12Aとを固定する締結手段24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフロントサイドメンバの前端とフロントバンパの骨格部材との間に筒状のクラッシュボックスが配設されている車体端部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントサイドメンバの前端とフロントバンパの骨格部材であるバンパリインフォースメントとの間に、前突時に軸圧縮変形して衝撃エネルギを吸収するためのクラッシュボックス(筒状部材)を配設した構成が知られている。このような構成において、クラッシュボックスの前端をバンパリインフォースメントの背面に溶接接合すると共に、クラッシュボックスの後端に設けた取付フランジをフロントサイドメンバの前端に設けた取付フランジにボルト・ナットにて締結して固定する技術が考えられている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、車両の軽衝突時等、フロントサイドメンバに損傷が及ばない場合に、溶接補修を伴うことなくバンパリインフォースメント及びクラッシュボックスを交換することができ、補修性が良好である。
【特許文献1】特開平5−116645号公報
【特許文献2】特開平3−79477号公報
【特許文献3】特開平5−246288号公報
【特許文献4】特開2002−155981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、取付フランジにおけるクラッシュボックスの側方に張り出した部分においてフロントサイドメンバの取付フランジに締結されるため、ボルト・ナットの締め付け、取り外しの作業が煩雑であった。そして、この作業性を改善するために締結位置をクラッシュボックスの上下に配置すると、取付フランジの前後方向の(面外変形に対する)剛性が不足するため、車種によってはバンパリインフォースメントの振動に伴うこもり音発生の原因となることが懸念される。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、筒状部材を車体骨格部材の長手方向端部に締結手段によって結合するための張出板部の変形を抑制することができる車体端部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車体端部構造は、長尺状の車体骨格部材の長手方向端部に、該車体骨格部材の長手方向に軸線方向を一致させた筒状部材が取り付けられる車体端部構造であって、前記筒状部材の前記車体骨格部材側の端部に該筒状部材の軸線との交差面に沿って設けられ、該筒状部材に対し上下方向の少なくとも一方に張り出した張出板部と、 前記張出板部と前記筒状部材とを連結し、該張出板部が前記筒状部材側又は前記車体骨格部材側に変形することを抑制する変形抑制手段と、上下方向における前記変形抑制手段の端部と前記筒状部材との間で、前記張出板部を前記車体骨格部材の長手方向端部に設けられた取付部に固定する締結手段と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車体端部構造では、筒状部材における軸線方向の車体骨格部材側の端部から上下方向に沿って張り出した張出板部が、締結手段によって、車体骨格部材の長手方向端部に設けられた取付部に固定的に取り付けられる。この張出板部は、該張出板部と筒状部材(閉断面構造体)とを連結する変形抑制手段によって、筒状部材側又は車体骨格部材側への曲げ変形(面外変形)に対する剛性が高くされている。そして、張出板部における変形抑制手段の端部よりも筒状部材側の位置、すなわち張出板部における変形抑制手段によって前後方向の変形が抑制された上下方向の範囲内で、該張出板部が締結手段によって取付部に締結されるため、筒状部材は車体骨格部材への取り付け状態で面外変形に対する剛性が高く、仮に筒状部材に上下方向の荷重が入力しても張出板部が変形し難い。すなわち、筒状部材の車体骨格部材に対する取付剛性が向上する。
【0007】
このように、請求項1記載の車体端部構造では、筒状部材を車体骨格部材の長手方向端部に締結手段によって結合するための張出板部の変形を抑制することができる。なお、締結手段は、その締結部位の中心(例えばボルトの軸心)が、上下方向で変形抑制手段の端部よりも筒状部材側に位置すれば良い。
【0008】
上記目的を達成するために請求項2記載の発明に係る車体端部構造は、車体前後方向に沿う車体骨格部材の前端に、該車体骨格部材の長手方向に軸線方向を一致させた筒状部材を介してバンパ骨格部材が連結される車体端部構造であって、前記筒状部材の後端に該筒状部材の軸線との交差面に沿って設けられ、上下方向の少なくとも一方に張り出して設けられた張出板部と、前記張出板部と前記筒状部材とを連結し、該張出板部が前後方向に変形することを抑制する変形抑制手段と、上下方向における前記変形抑制手段の端部と前記筒状部材との間で、前記張出板部を前記車体骨格部材の長手方向端部に設けられた取付部に取り外し可能に固定する締結手段と、を備えている。
【0009】
請求項2記載の車体端部構造では、張出板部が筒状部材の少なくとも上下方向の一方側に張り出しており、該張出板部が締結手段にて車体骨格部材の前端に位置する取付部に固定的にかつ取り外し可能に取り付けられている。このため、車幅方向に長手のバンパ骨格部材が締結又は締結解除の作業の邪魔になり難く、作業性が良好である。
【0010】
ここで、張出板部は、該張出板部と筒状部材(閉断面構造体)とを連結する変形抑制手段によって、筒状部材側又は車体骨格部材側への曲げ変形(面外変形)に対する剛性が高くされている。そして、張出板部における変形抑制手段の端部よりも筒状部材側の位置、すなわち張出板部における変形抑制手段によって前後方向の変形が抑制された上下方向の範囲内で、該張出板部が締結手段によって取付部に締結されるため、仮にバンパ骨格部材に振動(変位や荷重の変動)等が入力しても張出板部が変形し難い。すなわち、筒状部材の車体骨格部材に対する取付剛性が向上する。
【0011】
このように、請求項2記載の車体端部構造では、筒状部材を車体骨格部材の長手方向端部に締結手段によって結合するための張出板部の変形を抑制することができる。なお、締結手段は、その締結部位の中心(例えばボルトの軸心)が、上下方向で変形抑制手段の端部よりも筒状部材側に位置すれば良い。
【0012】
請求項3記載の発明に係る車体端部構造は、請求項1又は請求項2記載の車体端部構造において、前記締結手段は、前記筒状部材の軸線及び上下方向に対しそれぞれ垂直な幅方向の両端間で、前記張出板部を前記取付部に固定する。
【0013】
請求項3記載の車体端部構造では、張出板部における筒状部材の幅方向両端間の範囲内の部分が締結手段によって取付部に締結される。すなわち、張出板部における一層剛性が高い領域に締結手段による締結部位が配置されるため、張出板部の変形を効果的に抑制することができる。
【0014】
請求項4記載の発明に係る車体端部構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体端部構造において、前記変形抑制手段は、平板状に形成され前記筒状部材の上下方向に沿う側壁と一体化された立壁を含む。
【0015】
請求項4記載の車体端部構造では、例えば筒状部材は軸直角断面形状が矩形状等の多角形状とされて上下方向に沿う側壁を有しており、変形抑制手段は、この閉断面構造の筒状部材を構成する側壁に一体化された平板状の立壁を含んで構成されている。このため、筒状部材の上下の壁部に変形抑制手段を連結する構成と比較して、締結作業のための工具スペース等を確保し易い。
【0016】
請求項5記載の発明に係る車体端部構造は、請求項4記載の車体端部構造において、前記筒状部材は、軸線方向に作用する所定値以上の荷重によって軸圧縮変形する緩衝部材であり、前記立壁は、前記筒状部材における前記張出板部側の端部に一体に形成されている。
【0017】
請求項5記載の車体端部構造では、例えば車両衝突時に筒状部材に所定値以上の軸線方向の荷重が入力されると、該筒状部材が軸圧縮変形して衝撃エネルギが吸収される。変形抑制手段を構成する立壁は、筒状部材における幅方向端部(側壁側)でかつ張出板部側の端部に位置するため、筒状部材の軸圧縮変形を阻害することがない。
【0018】
請求項6記載の発明に係る車体端部構造は、請求項5記載の車体端部構造において、前記筒状部材は、軸線に対する直交面に沿う断面形状が側方に開口すると共に開口縁から上下方向に沿ってフランジが形成された第1部材と、平板状に形成され前記第1部材の上下のフランジを連結して該第1部材の側方開口部を閉止する第2部材とを有し、前記立壁は、前記第1部材のフランジ又は前記第2部材における前記張出板部側の端部を上下方向に沿って延設して形成されている。
【0019】
請求項6記載の車体端部構造では、軸直角断面形状がハット形状とされた第1部材の開口縁が、上下端がそれぞれ上下のフランジに接合された第2部材によって閉止されることで、閉断面構造の筒状部材が形成されている。そして、立壁は、第1部材の上下少なくとも一方のフランジ、又は第2部材の上下少なくとも一方の端部が上下方向に沿って延設されることで、筒状部材(第1部材又は第2部材)に一体に形成されており、その張出板部側の端部が該張出板部に固着される(筒状部材と張出板部とを連結する)ことで変形抑制手段を構成している。このため、筒状部材は、構造が簡単で製造性も良好である。
【0020】
請求項7記載の発明に係る車体端部構造は、請求項4記載の車体端部構造において、前記立壁は、前記張出板部における前記筒状部材の軸線方向及び上下方向にそれぞれ垂直な幅方向の端部を屈曲して形成されると共に、該筒状部材の上下方向に沿う側壁に固着されている。
【0021】
請求項7記載の車体端部構造では、張出板部の幅方向端部を屈曲して形成された立壁は、筒状部材の側壁に固着されて変形抑制手段を構成している。このため、筒状部材は、構造が簡単で製造性も良好である。特に、立壁が張出板部の外縁に沿って立設された周壁の一部である構成とすれば、立壁自体の剛性が高く張出板部の変形を効果的に抑制することができる。
【0022】
請求項8記載の発明に係る車体端部構造は、請求項4乃至請求項7の何れか1項記載の車体端部構造において、前記張出板部から該筒状部材側又は前記車体骨格部材側に向けて立設され、上下方向に少なくとも前記締結手段の締結部位から前記筒状部材まで至る補助壁をさらに備える。
【0023】
請求項8記載の車体端部構造では、張出板部における締結手段による締結部位が補助壁によっても補強され、張出板部の変形を効果的に抑制することができる。特に、筒状部材の幅方向において立壁と補助壁との間に締結手段による締結部位が配置される構成とすれば、該張出板部における締結部位の剛性が高くなり、張出板部の変形を一層効果的に抑制することが可能である。なお、補助壁は、張出板部の締結面に対し直角に設けられると、該締結面に対する角度が小さい場合と比較して張出板部の変形抑制効果が大きい。
【0024】
請求項9記載の発明に係る車体端部構造は、請求項1乃至請求項8の何れか1項記載の車体端部構造において、前記張出板部、前記変形抑制手段、及び前記締結手段は、それぞれ前記筒状部材に対し上下方向の両側に設けられている。
【0025】
請求項9記載の車体端部構造では、筒状部材は、上下の張出板部においてそれぞれ車体骨格部材の取付部に締結手段にて締結される。そして、上下の張出板部がそれぞれ変形抑制手段によって変形が抑制されるため、張出板部の変形に伴う筒状部材(に取り付けたバンパ骨格部材)の変位が効果的に抑えられる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明に係る車体端部構造は、筒状部材を車体骨格部材の長手方向端部に締結手段によって結合するための張出板部の変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態に係る車体端部構造としての車体前部構造10について、図1乃至図5に基づいて説明する。先ず、車体前部構造10が適用された車体Sの前部骨格構造について説明し、次いで本発明の要部であるクラッシュボックス20について詳細に説明することとする。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印RE、矢印UP、矢印LO、及び矢印INは、それぞれ車体前部構造10が適用された自動車車体Sの前方向(進行方向)、後方向、上方向、下方向、及び車幅方向内側を示しており、以下単に上下前後及び車幅方向の内外を示す場合は上記各矢印方向に対応している。
【0028】
(車体前部の概略構成)
図1には車体前部構造10が適用された自動車車体Sの前部骨格構造が斜視図にて示されている。この図に示される如く、車体Sの前部には、車幅方向両端部に車体前後方向に長手とされた左右一対のフロントサイドメンバ12が配設されている。左右のフロントサイドメンバ12の前端(自由端)には、それぞれブラケット14の上部が固定されており、左右のブラケット14の下部間は、フロントクロスメンバ16にて架け渡されている。
【0029】
また、左右のフロントサイドメンバ12の前端間には、ラジエータサポート18が配設されている。この実施形態では、ラジエータサポート18は、上下方向に長手とされた左右一対のラジエータサポートサイド18Aと、各ラジエータサポートサイド18Aの上端間を架け渡し図示しない部分で車体Sに対し固定されているラジエータサポートアッパ18Bとを含んで構成されている。各ラジエータサポートサイド18Aは、フロントサイドメンバ12の前端の車幅方向内側に近接して配置されている。
【0030】
さらに、左右のフロントサイドメンバ12の各前端には、それぞれクラッシュボックス20を介してフロントバンパを構成するバンパリインフォースメント22が取り付けられている。クラッシュボックス20は、自動車が比較的低速度で前面衝突した場合に、バンパリインフォースメント22から入力される後向きの荷重によって軸圧縮変形しつつ衝撃エネルギを吸収することで、フロントサイドメンバ12以後の車体Sに損傷が及びことを防止する構成とされている。これにより、軽衝突の場合における車体Sの修理は、バンパリインフォースメント22及びクラッシュボックス20を交換することで足りる構成とされている。
【0031】
図2(A)、図2(B)に平面図、側面図にて示される如く、クラッシュボックス20は、その前端がバンパリインフォースメント22の背面に溶接にて固定されると共に、その後端がフロントサイドメンバ12の前端に締結手段24にて取り外し可能に固定されている。締結手段24は、フロントサイドメンバ12の前端に設けた取付部としての取付フランジ12Aに固着されたウェルドナット24Aと、クラッシュボックス20の取付フランジ28(後述)及び取付取付フランジ12Aを貫通してウェルドナット24Aに螺合するボルト24Bとで構成されている。このため、上記の如く軽衝突後にバンパリインフォースメント22及びクラッシュボックス20を交換する場合に、溶接補修を伴うことなく交換部品のみを取り外し・取り付けることができ、交換作業性(リペアビリティ)が良好な構成とされている。
【0032】
(クラッシュボックスの詳細構成)
図3及び図4に斜視図にて示される如く、クラッシュボックス20は、筒状部材としてのクラッシュボックス本体26と、クラッシュボックス本体26の後端に固着された取付フランジ28とを有して構成されている。
【0033】
クラッシュボックス本体26は、正面(断面)視で車幅方向外向きに開口するハット形状に形成された第1部材30と、第1部材30の車幅方向開口部を閉止する略矩形平板状の第2部材32とで構成されている。第1部材30は、第2部材32とで閉断面を形成する正面視で略コ字状に形成されたボックス形成部34と、車幅方向外向きに開口するボックス形成部34の上下の開口縁から上下方向外向きに延設された上フランジ36及び下フランジ38と、バンパリインフォースメント22に溶接される接合フランジ部40とを有して構成されている。
【0034】
ボックス形成部34は、略水平面に沿って互いに対向する上壁34A及び下壁34Bと、上下方向に沿う側壁34Cと、側壁34Cの上端と上壁34Aの車幅方向内端とを連結する上傾斜壁34Dと、側壁34Cの下端と下壁34Bの車幅方向内端とを連結する下傾斜壁34Eとで構成されている。側壁34C、上傾斜壁34D、下傾斜壁34Eには、それぞれ軸方向荷重によるクラッシュボックス本体26の軸圧縮変形を生じ易くするためのビード42が設けられている。各ビード42は、クラッシュボックス20の軸線方向(車体前後方向)に対し直角を成す方向に長手とされており、それぞれの対応する壁部に該長手方向の全長に亘り設けられて端部が隣り合う壁部に至っている。すなわち、側壁34Cのビード42と、上下の傾斜壁34D、34Eのビード42とでは、前後方向の位置がずらされている。
【0035】
接合フランジ部40は、ボックス形成部34を上フランジ36及び下フランジ38の前端よりも前方に延設して形成され、バンパリインフォースメント22の上面又は下面に接合される上下のフランジ40A、40Bと、バンパリインフォースメント22の背面に接合される前フランジ40Cとを有している。上フランジ40Aは、上壁34Aを前方に延設して形成されている。下フランジ40Bは、下壁34Bの前端から垂下した段差壁40Dの下端から前方に延設して形成され、該下壁34Bよりも下方に位置している。前フランジ40Cは、側壁34C、上傾斜壁34D、下傾斜壁34Eの前端からクラッシュボックス20の外側に向けて延設されている。
【0036】
上下のフランジ36、38は、それぞれボックス形成部34の前後方向に沿う略全長に亘って形成されており、互いに同一平面上に位置するように配置されている。そして、上フランジ36は、その車幅方向外向きの面に第2部材32の上端部が溶接によって固着され、下フランジ38は、その車幅方向外向きの面に第2部材32の下端部が溶接によって固着されている。第2部材32は、その前後方向の長さがボックス形成部34(上下のフランジ36、38)の長さに略対応しており、該前後方向の略全長に亘り断続的又は連続的に上下のフランジ36、38に固着されている。
【0037】
以上により、ボックス形成部34を含む第1部材30と第2部材32とで、閉断面構造の(筒状の)クラッシュボックス本体26が構成されており、第2部材32はクラッシュボックス本体26の側壁を構成している。また、第2部材32には、上下方向(クラッシュボックス20の軸線に対する直角方向)に沿って、軸方向荷重によるクラッシュボックス本体26の軸圧縮変形を生じ易くするための複数のビード44が設けられている。この実施形態では、前側に位置するビード44の方が後側に位置するビード44よりも上下に長い構成とされている。これにより、クラッシュボックス本体26は、軸線方向に所定値以上の荷重が作用すると、前側から確実に軸圧縮変形するようになっている。さらに、第2部材32の前端からは、バンパリインフォースメント22の背面に溶接接合される前フランジ32Aが外向きに延設されている。
【0038】
以上説明した第1部材30は、プレス加工によって各部が一体に形成されており、第2部材32は、プレス加工によって各部が一体に形成されている。
【0039】
取付フランジ28は、平板状に形成されたフランジ本体46と、フランジ本体46の車幅方向内端から後方に向けて延設された補助壁としての横フランジ48とを有している。図5に示される如く、フランジ本体46は、上下方向及び左右方向にそれぞれクラッシュボックス本体26よりも大である略矩形平板状に形成されており、その前面中央部に突き当てられたクラッシュボックス本体26の後端が溶接にて固着されている。
【0040】
これにより、フランジ本体46は、クラッシュボックス本体26の上端(上壁34A)よりも上側に張り出した上張出部46Aと、クラッシュボックス本体26の下端(下壁34B)よりも下側に張り出した下張出部46Bとを有している。上張出部46A及び下張出部46Bには、それぞれボルト24Bを貫通するためのボルト貫通孔50が設けられている。ボルト貫通孔50は、上張出部46A及び下張出部46Bに、それぞれ複数(この実施形態では各2つ)設けられている。各ボルト貫通孔50の配置については後述する。
【0041】
また、フランジ本体46の車幅方向内外端は、それぞれクラッシュボックス本体26の車幅方向内外端よりも張り出している。さらに、フランジ本体46における車幅方向内端(横フランジ48の立設部位)を除く周縁部からは、周壁46Cが前方に向けて略全周に亘り延設されている。これにより、フランジ本体46の剛性が向上している。なお、図2及び図5では周壁46Cの図示を省略している。
【0042】
一方、図4に示される如く、フランジ本体46の車幅方向内端からは、上記の通り横フランジ48が後向きに延設(立設)されている。横フランジ48は、フランジ本体46の車幅方向内端を後方に折り曲げることで形成されており、取付フランジ28(フランジ本体46)の上下方向の略全長に亘り設けられている。横フランジ48の上下両端近傍には、それぞれ前後方向に長手とされると共に後向きに開口するスリット48Aが設けられている。
【0043】
そして、図3乃至図5に示される如く、各クラッシュボックス20は、筒状に形成された閉断面構造のクラッシュボックス本体26とフランジ本体46とを連結し、上下の張出部46A、46Bにおけるボルト貫通孔50形成部位の剛性を向上するための変形抑制手段としての立壁52、54を備えている。
【0044】
この実施形態では、立壁52は、第1部材30の上フランジ36における後端部から上方に延設されて、上下方向及び前後方向に沿う平板状に形成されている。立壁54は、第1部材30の下フランジ38における後端部から下方に延設されて、上下方向及び前後方向に沿う平板状に形成されている。このように、この実施形態では、上下の立壁52、54は、第1部材30(クラッシュボックス本体26)に一体に形成されており、第2部材32によって互いに連結されている。すなわち、上下の立壁52、54は、クラッシュボックス本体26の側壁に一体化されている。立壁52は、下辺が上辺よりも長い略台形状に形成され、立壁54は、上下方向中心線に対し立壁52と略対称に形成されている。
【0045】
そして、各立壁52、54は、それぞれの後端面が取付フランジ28のフランジ本体46の前面に突き当てられており、この状態で後端部がフランジ本体46に隅肉溶接によって固着されている。この実施形態では、第1部材30及び第2部材32の各後端面、すなわちクラッシュボックス本体26の閉断面となる後端面及び該閉断面構造から上下に張り出した上下のフランジ36、38、上下の立壁52、54が全周に亘って、フランジ本体46に隅肉溶接されている。
【0046】
このフランジ本体46への固着状態で、立壁52の上端は、周壁46Cを除くフランジ本体46の上端に至り、立壁54の下端は、周壁46Cを除くフランジ本体46の下端に至る構成とされている。したがって、フランジ本体46の前面には、立壁52(上フランジ36)、第2部材32(クラッシュボックス本体26の側壁)、立壁54(下フランジ38)が連結されて上下方向の略全長に亘る立壁部が立設されている。これにより、フランジ本体46の剛性が一層向上し、該フランジ本体46の前後方向の変形(曲げによる面外変形)が抑制される構成とされている。また、フランジ本体46は、横フランジ48によっても剛性が向上し、その面外変形が効果的に抑制される構成とされている。
【0047】
そして、図5に示される如く、各ボルト貫通孔50は、上下方向については、上張出部46Aにおける立壁52の上端と上壁34Aとの間の領域H、下張出部46Bにおける立壁54の下端と下壁34Bとの間の領域Hに配置されている。また、この実施形態では、各ボルト貫通孔50は、横フランジ48の上下端よりも上下方向内側に位置している。さらに、各ボルト貫通孔50は、車幅方向については、上下の張出部46A、46Bにおける立壁52、54とクラッシュボックス本体26の側壁34Cとの間の領域Wに配置されている。したがって、各ボルト貫通孔50は、車幅方向において立壁52、54と横フランジ48との間にも位置している。これにより、クラッシュボックス20では、上下の張出部46A、46Bにおける立壁52、54(横フランジ48、及びクラッシュボックス本体26)にて補剛(補強)された領域に、各ボルト貫通孔50すなわち締結手段によるフロントサイドメンバ12への締結部位が配置されている。また、領域Hの上下端である立壁52、54の上下の自由端がボルト貫通孔50を超えて位置するため、換言すれば、上下の張出部46A、46Bの曲げに伴うモーメントが立壁52、54の根元に作用する立壁52、54が上下に長いため、該上下の張出部46A、46Bの面外変形が一層効果的に抑制される構成とされている。
【0048】
また、立壁52、54は、上記の通り上下のフランジ36、38の後端部から上下方向に延設されることで、クラッシュボックス本体26の後端側においてのみフランジ本体46を補剛する変形抑制手段を構成し、クラッシュボックス本体26の軸圧縮特性(軸圧縮変形を生じる軸方向荷重の設定)に影響を与えない構成とされている。すなわち、上下の立壁52、54は、各クラッシュボックス20による軽衝突時の衝撃エネルギ吸収作用を阻害しない構成とされている。
【0049】
さらに、図1に示される如く、この実施形態では、各クラッシュボックス20の横フランジ48が、図示しない締結手段によって、ブラケット56を介してラジエータサポートサイド18Aに接続されている。締結手段は、ボルトとナットとで構成されており、ボルトが前後方向に長手とされたスリット48Aを貫通することでラジエータサポート18とフロントサイドメンバ12と前後方向の相対変位を吸収しつつ、フロントサイドメンバ12の前端(クラッシュボックス20)の上下方向の運動を規制するようになっている。また、スリット48Aは、仮止め(仮保持)や該仮止め時の位置決めにも利用することができる。
【0050】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0051】
上記構成の車体前部構造10が適用された自動車が比較的低速度で前面衝突に至ると、バンパリインフォースメント22からクラッシュボックス20に軸線方向後向きの衝撃荷重が入力される。この衝撃荷重が所定値以上であると、クラッシュボックス20が軸圧縮変形し、フロントサイドメンバ12に作用する衝撃荷重を緩和する。これにより、軽衝突に伴う損傷がフロントサイドメンバ12以後の車体Sに生じることが防止される。このため、軽衝突後の修理は、バンパリインフォースメント22及びクラッシュボックス20の交換によって果たされる。
【0052】
ところで、自動車車体Sでは、その骨格構造の自由端に配置されたバンパリインフォースメント22は、例えばエンジン振動が入力されると、主に上下方向に振動する。
【0053】
ここで、車体前部構造10では、取付フランジ28における略平板状に形成されたフランジ本体46の前面に、クラッシュボックス本体26に一体化された上下の立壁52、54が固着されているため、フランジ本体46の上張出部46A及び下張出部46Bは、それぞれ上下方向における立壁52、54が固着された範囲の前後方向の剛性(面外変形に対する剛性)が高い。そして、この上張出部46A及び下張出部46Bにおける面外変形に対する剛性が高い上下方向の範囲内(上下の領域H)に、ボルト貫通孔50すなわち締結手段24によるフロントサイドメンバ12への締結部位が配置されているため、クラッシュボックス20のフロントサイドメンバ12への取付剛性が高くなる。
【0054】
また、フランジ本体46の上張出部46A及び下張出部46Bにおけるクラッシュボックス本体26の幅の範囲内(車幅方向の領域W)にボルト貫通孔50が配置されているため、フランジ本体46の上張出部46A自体の剛性、すなわちクラッシュボックス20のフロントサイドメンバ12への取付剛性が一層高くなる。さらに、このフランジ本体46における各ボルト貫通孔50を挟んで立壁52、54とは車幅方向反対側に、フランジ本体46の面方向に対し略直角に横フランジ48が延設されているため、クラッシュボックス20のフロントサイドメンバ12への取付剛性が一層高くなる。
【0055】
これらにより、主にバンパリインフォースメント22を質量要素とする振動系のエンジン振動による振動に伴うこもり音が抑制される。このことを立壁52、54等を有しない比較例と比較しつつ説明する。
【0056】
図12には、比較例に係るクラッシュボックス100が斜視図にて示されており、図13にはクラッシュボックス100が軸直角断面図にて示されている。なお、クラッシュボックス100におけるクラッシュボックス20と同様の部分には、クラッシュボックス20と同一の符号を付して説明を省略する。図12及び図13に示す如く、クラッシュボックス100は、クラッシュボックス本体102の第1部材104が上下のフランジ36、38を備えず、第2部材106が上壁34Aと下壁34Bとの間に入り込んで該上壁34Aと下壁34Bとを連結することで閉断面構造を成している。また、クラッシュボックス100の取付フランジ108は、横フランジ48を有せず、フランジ本体46の周縁部に沿って周壁46Cが略全周に亘り形成されている。この周壁46Cにおける車幅方向内側で上下方向に沿う部分の上下両端からは、それぞれ横フランジ110が前向きに延設されている(図12では上側の横フランジ110のみ図示)。各横フランジ110には、該横フランジ110をラジエータサポートサイド18Aに直接的に締結するボルトが貫通するスリット110Aが形成されている。以上説明したクラッシュボックス100は、単体でクラッシュボックス20と同等の衝撃吸収性能を有している。
【0057】
このクラッシュボックス100は、クラッシュボックス本体102と上下の張出部46A、46Bとを連結する立壁52、54に相当する部分が設けられていないため、上下の張出部46A、46Bは、図14(A)に示す面外変形(前後方向の曲げ変形)、特に図14(B)から図14(C)への変化で示すように、締結手段24による締結部位(ボルト貫通孔50廻り)において局部的かつ大きな変形を生じ易い。このため、クラッシュボックス100を備える車体Sでは、図6(B)に誇張して示す如く、バンパリインフォースメント22の上下方向への振動時の振幅が大きくなる。また、クラッシュボックス100のフロントサイドメンバ12への取付剛性が低いため、換言すれば、バンパリインフォースメント22を質量要素とする振動系のばね定数が小さいため、こもり音が問題となる周波数帯域(略100〜120Hz)においてバンパリインフォースメント22が振動し易くなる。本比較例では、バンパリインフォースメント22の上下方向の共振周波数が113Hzであり、バンパリインフォースメント22のエンジン振動に基づく上下振動に伴って、比較的大きなこもり音が発生する。
【0058】
一方、本発明の実施形態に係る車体前部構造10では、上記の通り立壁52、54によって取付フランジ28(上下の張出部46A、46B)自体の剛性、クラッシュボックス20のフロントサイドメンバ12への取付剛性が高いため、エンジン振動がバンパリインフォースメント22に伝達されても、図6(A)に示される如くバンパリインフォースメント22の振動振幅は小さい。特に、上記取付剛性の向上によってバンパリインフォースメント22の上下方向の共振周波数がこもり音が問題となる周波数帯域によりも上側にずれ、該周端数帯域での振動振幅が一層小さくなっている。この実施形態では、バンパリインフォースメント22の上下方向の共振周波数は162Hzであり、こもり音が問題となる周波数帯域に対し十分にずれていることが確認された。
【0059】
これにより、車体前部構造10では、比較例と比較して、バンパリインフォースメント22のエンジン振動に基づく上下振動に伴うこもり音が大幅に低減された。また、この共振周波数から、クラッシュボックス20のフロントサイドメンバ12に対する取付剛性は、上記比較例に係るクラッシュボックス100フロントサイドメンバに対する取付剛性の略2倍であることが分かる。
【0060】
このように、本実施形態に係る車体前部構造10では、クラッシュボックス20をフロントサイドメンバ12の前端に締結手段24によって結合するための上下の張出部46A、46Bの変形を抑制することができる。特に、例えば小型の前輪駆動の自動車のように4気筒エンジンを横置きに搭載した自動車では、バンパリインフォースメント22の振動に伴うこもり音が問題となり易いが、車体前部構造10を適用することで該こもり音を効果的に抑制することができる。
【0061】
また、車体前部構造10では、立壁52、54がクラッシュボックス本体26を構成する第1部材30の上下のフランジ36、38から上下に延設して形成されているため、換言すれば、立壁52、54が第1部材と一体に形成されているため、立壁52、54をクラッシュボックス本体26及び取付フランジ28の両者に溶接等にて接合する構成と比較して、構造が簡単で製造性が良好である。すなわち、車体前部構造10では、上記比較例に対し立壁52、54廻りの隅肉溶接面積を若干増すだけで、上下の張出部46A、46Bの変形を抑制する構成が実現されている。また、立壁52、54がクラッシュボックス本体26の側壁(車幅方向端部)である第2部材32に沿って配置されているため、締結手段30による締結又は締結解除の作業のための工具スペース等を確保し易い。
【0062】
さらに、立壁52、54は、クラッシュボックス本体26の後端側にのみ設けられているため、前突時のクラッシュボックス20の衝撃吸収性能を損なうことがない。すなわち、車体前部構造10では、クラッシュボックス20の衝撃吸収性能を犠牲にすることなく取付剛性を向上することで、バンパリインフォースメント22の振動に伴うこもり音の発生を抑制する構成が実現されている。
【0063】
次に本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付してその説明及び図示を省略する場合がある。
【0064】
(第2の実施形態)
図7には、第2の実施形態に係る車体端部構造を構成するクラッシュボックス60が断面図にて示されている。この図に示される如く、クラッシュボックス60は、クラッシュボックス本体62の後端に取付フランジ28が固着されて構成されている。クラッシュボックス本体62は、上壁部材64、下壁部材66、及び左右一対の側壁部材68を備えている。上壁部材64は、水平面に沿う矩形平板状に形成された上壁64Aの車幅方向両端から上向きに上フランジ64B、64Cが延設されて構成され、下壁部材66は、上壁64Aに対応する矩形平板状に形成された下壁66Aの車幅方向両端から下向きに下フランジ66B、66Cが延設されて構成されている。各側壁部材68は、第2部材32と同様に構成されており、車幅方向内側に位置する側壁部材68が該車幅方向内側の上下のフランジ64B、66Bを連結すると共に、車幅方向外側に位置する側壁部材68が該車幅方向外側の上下のフランジ64C、66Cを連結することで、閉断面構造のクラッシュボックス本体62が形成されている。
【0065】
そして、車幅方向外側に位置する上フランジ64Cの後端からは、立壁52が上向きに延設されており、車幅方向外側に位置する下フランジ66Cの後端からは、立壁54が下向きに延設されている。上下の立壁52、54取付フランジ28に対する接合構造や接合位置については、第1の実施形態に係るクラッシュボックス20と同様である。また、第2の実施形態における他の構成は、第1の実施形態の対応する構成と同じである。
【0066】
したがって、この第2の実施形態に係るクラッシュボックス60を備えた車体端部構造によっても、取付フランジ28の上下の張出部46A、46Bが上下の立壁52、54によって補剛されるため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。この第2の実施形態に係る構成では、上壁部材64、下壁部材66、及び車幅方向内側の側壁部材68を接合したものが本発明における第1部材に相当し、車幅方向外側に位置し立壁52、54が設けられた側壁部材68が第2部材に相当する。
【0067】
なお、この第2の実施形態に係る構成において、横フランジ48に代えて又は横フランジ48と共に、車幅方向内側に位置する上下のフランジ64B、66Bからも立壁52、54を延設し、左右の立壁52間、54間にボルト貫通孔50が配置されるようにしても良い。また例えば、単一の立壁52を上フランジ64Bから延設すると共に、単一の立壁54を下フランジ66Cから延設するようにしても良い。
【0068】
(第3の実施形態)
図8には、第3の実施形態に係る車体端部構造を構成するクラッシュボックス70が斜視図にて示されている。この図に示される如く、クラッシュボックス70は、クラッシュボックス本体26の後端に取付フランジ72が固着されて構成されている。取付フランジ72は、フランジ本体46の上端近傍から車幅方向外側に向けて延設された延設部74を有しており、周壁46Cは延設部74の周縁にも沿うように形成されている。この立壁52の車幅方向外側に位置する延設部74には、ボルト貫通孔50が設けられている。このため、クラッシュボックス70は、計5対の締結手段24によってフロントサイドメンバ12の取付フランジ12Aに締結されるようになっている。第3の実施形態における他の構成は、第1の実施形態の対応する構成と同じである。
【0069】
したがって、この第3の実施形態に係るクラッシュボックス70を備えた車体端部構造によっても、取付フランジ28の上下の張出部46A、46Bが上下の立壁52、54によって補剛されるため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、本発明は、ボルト貫通孔50すなわち締結手段24による締結部位がクラッシュボックス本体26の車幅方向外側に位置しても良い。
【0070】
なお、上記第1乃至第3の実施形態では、第1部材30の上下のフランジ36、38又は上壁部材64、下壁部材66のフランジ64C、66Cから立壁52、54が延設された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第2部材32又は側壁部材68の上下端から立壁52、54が延設された構成としても良い。また、立壁52、54は、クラッシュボックス本体26、62に対し車幅方向外側に配置される構成には限定されず、例えば、クラッシュボックス本体26、62車幅方向内側に配置されても良く、上壁34Aに接合又は一体に形成されてクラッシュボックス本体26等の車幅方向中央に配置されても良い。
【0071】
(第4の実施形態)
図9には、第4の実施形態に係る車体端部構造を構成するクラッシュボックス80が斜視図にて示されている。この図に示される如く、クラッシュボックス80は、クラッシュボックス本体82の後端に取付フランジ84が固着されて構成されている。クラッシュボックス本体82は、上壁82A、下壁82Bと上下方向に沿う左右の側壁82Cとの間にそれぞれ傾斜壁82Dが形成されて、全体として略八角形筒状に形成されて閉断面形状を成している。
【0072】
各側壁82C、傾斜壁82Dには、それぞれ軸方向荷重によるクラッシュボックス本体26の軸圧縮変形を生じ易くするためのビード86、88が設けられている。各ビード86、88は、クラッシュボックス80の軸線方向に対し直角を成す方向に長手とされており、それぞれの対応する壁部に該長手方向の全長に亘り設けられて端部が隣り合う壁部に至っている。また、クラッシュボックス本体82の前端には、バンパリインフォースメント22の背面に溶接される前フランジ82Eが設けられている。このクラッシュボックス本体82は、例えば、押し出し成形にて一体に形成されても良く、クラッシュボックス本体26、62のように複数部材を接合して構成されても良い。
【0073】
取付フランジ84は、略矩形平板状に形成されたフランジ本体90の周縁から周壁(フランジ)92が全周に亘り前向きに立設されて構成されている。図10にも示される如く、周壁92における車幅方向内側で上下方向に沿う立壁92Aは、フランジ本体90の面方向に対し略直角に立設されている。周壁92の他の部分は、フランジ本体90側よりも開口端側が広がるようにテーパした傾斜壁とされている。この取付フランジ84は、その上下方向中央部の前面に突き当てられたクラッシュボックス本体82の後端が溶接にて固着されている。この状態で、フランジ本体90におけるクラッシュボックス本体82の上壁82Aよりも上側に位置する部分を上張出部90A、クラッシュボックス本体82の下壁82Bよりも下側に位置する部分を下張出部90Bということとする。
【0074】
そして、取付フランジ84の立壁92Aは、その上下方向の中央部が、クラッシュボックス本体82における車幅方向内側の側壁82Cに固着されて一体化されている。具体的には図10に示される如く、立壁92Aは、側壁82Cの後端部に外側(車幅方向内側)から重ね合わされて接触しており、前端面92Bと側壁82Cの外面との間が隅肉溶接部F(この実施形態では、アーク溶接を用いている)にて固着されている。これにより、立壁92Aが筒状部材としてのクラッシュボックス本体82の側壁82Cと、上張出部90A、下張出部90Bとをそれぞれ連結する構成が実現されている。
【0075】
また、周壁92における立壁92Aとは車幅方向反対側に位置する立壁92Cは、クラッシュボックス本体82に接合されていない。各ボルト貫通孔50は、上張出部90A、下張出部90Bにおける立壁92A、92B間で、かつ車幅方向においては左右の側壁82C間(領域Wに相当する部分)に配置されている。立壁92Cは、本発明における補助壁に相当し、第1の実施形態における横フランジ48と同様の機能を果たす構成とされている。
【0076】
ここで、クラッシュボックス80を備えた車体前部構造では、取付フランジ84における略平板状に形成されたフランジ本体90の前面から立設された立壁92Aが、クラッシュボックス本体82の側壁82Cに固着されているため、フランジ本体90の上張出部90A及び下張出部90Bは、それぞれ前後方向の剛性(面外変形に対する剛性)が高い。そして、この上張出部90A及び下張出部90Bにおける面外変形に対する剛性が高い上下方向の範囲内に、ボルト貫通孔50すなわち締結手段24によるフロントサイドメンバ12への締結部位が配置されているため、クラッシュボックス80のフロントサイドメンバ12への取付剛性が高くなる。
【0077】
したがって、第4の実施形態に係るクラッシュボックス80を備えた構成によっても第1の実施形態に係るクラッシュボックス20を備えた構成と同様の作用を奏し、同様の効果を得ることができる。すなわち、第4の実施形態に係るクラッシュボックス80を備えた車体端部構造では、クラッシュボックス80をフロントサイドメンバ12の前端に締結手段24によって結合するための上下の張出部46A、46Bの変形を抑制することができ、バンパリインフォースメント22の振動に伴うこもり音が効果的に抑制される。特に、立壁92Aが無端状(環状)を成す周壁92の一部として構成され、自由端を有する構成と比較して剛性が高いため、バンパリインフォースメント22の振動に伴うこもり音が一層効果的に抑制される。また、この実施形態では、立壁92Aが取付フランジ84側に一体に形成されているため、立壁52等がクラッシュボックス本体26に一体に形成された構成と同様に構造が簡単で製造性も良好である。
【0078】
(第5の実施形態)
図11には、第5の実施形態に係る車体端部構造を構成するクラッシュボックス95が断面図にて示されている。この図に示される如く、クラッシュボックス95は、取付フランジ84が第4の実施形態とは前後(上下)反対に向いて配置されている。この取付フランジ84の立壁92Aの外面(車幅方向内向き面)には、クラッシュボックス本体82の車幅方向内側の側壁82Cの後端から後方に延設された延設部96が重ね合わされて接触している。そして、この延設部96の後端面96Aと立壁92Aの外面とが隅肉溶接部Fによって固着されている。第5の実施形態における他の構成は、第4の実施形態の対応する構成と同じである。
【0079】
したがって、この第5の実施形態に係るクラッシュボックス95を備えた車体端部構造によっても、取付フランジ84の上下の張出部90A、90Bが立壁92Aによって補剛されるため、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
なお、上記各実施形態では、クラッシュボックス本体26、62、82と取付フランジ28、72、84とが別体である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、クラッシュボックス本体26等(の構成部品)の後端を折り曲げることで取付フランジ28等が形成される構成であっても良い。したがって、上下の張出部46A、46B等は互いに離間して設けられても良い。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造を示す車体前部の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造を示す図であって、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造を構成するクラッシュボックスの斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造を構成するクラッシュボックスの図3とは異なる方向から見た斜視図である。
【図5】図3の5−5線に沿う断面図である。
【図6】(A)は本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造の振動状態を示す斜視図、(B)は比較例の振動状態を誇張して示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車体前部構造を構成するクラッシュボックスを示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る車体前部構造を構成するクラッシュボックスを示す斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る車体前部構造を構成するクラッシュボックスを示す斜視図である。
【図10】図9の10−10線に沿う断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る車体前部構造を構成するクラッシュボックスを示す断面図である。
【図12】本発明の実施形態との比較例に係るクラッシュボックスの斜視図である。
【図13】本発明の実施形態との比較例に係るクラッシュボックスの断面図である。
【図14】本発明の実施形態との比較例に係るクラッシュボックスの変形状態を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は変形前の側断面図、(C)は変形状態の側断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10 車体前部構造(車体端部構造)
12 フロントサイドメンバ(車体骨格部材)
20 クラッシュボックス(筒状部材)
22 バンパリインフォースメント(バンパ骨格部材)
24 締結手段
26 クラッシュボックス本体(筒状部材)
28 取付フランジ(張出板部)
30 第1部材
32 第2部材(筒状部材の側壁)
36 上フランジ(フランジ)
38 下フランジ(フランジ)
46A 上張出部(張出板部)
46B 下張出部(張出板部)
48 横フランジ(補助壁)
52・54 立壁(変形抑制手段)
60 クラッシュボックス(筒状部材)
62 クラッシュボックス本体(筒状部材)
64C 上フランジ(フランジ)
66C 下フランジ(フランジ)
68 側壁部材(筒状部材の側壁)
70 クラッシュボックス(筒状部材)
72 取付フランジ(張出板部)
80 クラッシュボックス(筒状部材)
82 クラッシュボックス本体(筒状部材)
82C 側壁(筒状部材の側壁)
84 取付フランジ(張出板部)
90A 上張出部(張出板部)
90B 下張出部(張出板部)
92A 立壁
92C 立壁(補助壁)
95 クラッシュボックス(筒状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の車体骨格部材の長手方向端部に、該車体骨格部材の長手方向に軸線方向を一致させた筒状部材が取り付けられる車体端部構造であって、
前記筒状部材の前記車体骨格部材側の端部に該筒状部材の軸線との交差面に沿って設けられ、該筒状部材に対し上下方向の少なくとも一方に張り出した張出板部と、
前記張出板部と前記筒状部材とを連結し、該張出板部が前記筒状部材側又は前記車体骨格部材側に変形することを抑制する変形抑制手段と、
上下方向における前記変形抑制手段の端部と前記筒状部材との間で、前記張出板部を前記車体骨格部材の長手方向端部に設けられた取付部に固定する締結手段と、
を備えた車体端部構造。
【請求項2】
車体前後方向に沿う車体骨格部材の前端に、該車体骨格部材の長手方向に軸線方向を一致させた筒状部材を介してバンパ骨格部材が連結される車体端部構造であって、
前記筒状部材の後端に該筒状部材の軸線との交差面に沿って設けられ、上下方向の少なくとも一方に張り出して設けられた張出板部と、
前記張出板部と前記筒状部材とを連結し、該張出板部が前後方向に変形することを抑制する変形抑制手段と、
上下方向における前記変形抑制手段の端部と前記筒状部材との間で、前記張出板部を前記車体骨格部材の長手方向端部に設けられた取付部に取り外し可能に固定する締結手段と、
を備えた車体端部構造。
【請求項3】
前記締結手段は、前記筒状部材の軸線及び上下方向に対しそれぞれ垂直な幅方向の両端間で、前記張出板部を前記取付部に固定する請求項1又は請求項2記載の車体端部構造。
【請求項4】
前記変形抑制手段は、平板状に形成され前記筒状部材の上下方向に沿う側壁と一体化された立壁を含む請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体端部構造。
【請求項5】
前記筒状部材は、軸線方向に作用する所定値以上の荷重によって軸圧縮変形する緩衝部材であり、前記立壁は、前記筒状部材における前記張出板部側の端部に一体に形成されている請求項4記載の車体端部構造。
【請求項6】
前記筒状部材は、軸線に対する直交面に沿う断面形状が側方に開口すると共に開口縁から上下方向に沿ってフランジが形成された第1部材と、平板状に形成され前記第1部材の上下のフランジを連結して該第1部材の側方開口部を閉止する第2部材とを有し、
前記立壁は、前記第1部材のフランジ又は前記第2部材における前記張出板部側の端部を上下方向に沿って延設して形成されている、
請求項5記載の車体端部構造。
【請求項7】
前記立壁は、前記張出板部における前記筒状部材の軸線方向及び上下方向にそれぞれ垂直な幅方向の端部を屈曲して形成されると共に、該筒状部材の上下方向に沿う側壁に固着されている請求項4記載の車体端部構造。
【請求項8】
前記張出板部から該筒状部材側又は前記車体骨格部材側に向けて立設され、上下方向に少なくとも前記締結手段の締結部位から前記筒状部材まで至る補助壁をさらに備える請求項4乃至請求項7の何れか1項記載の車体端部構造。
【請求項9】
前記張出板部、前記変形抑制手段、及び前記締結手段は、それぞれ前記筒状部材に対し上下方向両側に設けられている請求項1乃至請求項8の何れ1項記載の車体端部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−206000(P2006−206000A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23924(P2005−23924)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】