説明

車体組立装置

【課題】 車体組立装置において、組付部品の位置決め精度の向上と治具の交換作業に要する時間の短縮を両立する。
【解決手段】 使用する治具の変更時に摺動ユニットが乗り移るレールについては、比較的に精度の低いレールを採用する。それにより、治具の交換作業を、短時間で行うことが可能となる。一方、治具を用いて組付部品を位置決めする作業エリアのレールについては、比較的に精度の高いレールを採用する。それにより、組付部品の位置決め精度が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多車種の車体を組み立てる車種混合の組立ラインで用いられ、治具を用いて組付部品を位置決めする車体組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車体組立装置が開示されている。この車体組立装置は、多車種の車体を組み立てる車種混合の組立ラインで用いられ、治具を用いて組付部品(ここでは、アンダーボディに組み付けるサイドメンバー)を位置決めする。
この車体組立装置は、車種毎に用意された複数の治具と、複数の治具を収容する収容エリアと、収容エリアに隣接しており、複数の治具の一つを用いて組付部品の位置決めを行う作業エリアを有している。収容エリアには、治具の搬送を案内する第1搬送レールが設けられており、作業エリアには、治具の搬送を案内する第2搬送レールが設けられている。複数の治具のそれぞれには、第1搬送レールに摺動可能に係合する第1摺動ユニットが設けられている。一方、第2搬送レール上には、第2搬送レールに摺動可能に係合する第2摺動ユニットが設けられている。そして、第2摺動ユニットには、収容エリアの第1搬送レールに一連に接続し、第1搬送レールとの間で治具の受け渡しを行う治具支持レールが設けられている。
【0003】
この車体組立装置では、車種毎に用意された複数の治具が、収容エリアに収容されている。収容エリアには第1搬送レールが設けられており、各治具には第1搬送レールを摺動する第1摺動ユニットが設けられているので、収容エリア内の各治具は第1搬送レールに沿って搬送される。収容エリアの第1搬送レールには、第2摺動ユニットに設けられた治具支持レールが、一連に接続可能となっている。それにより、組み立てる車種に対応する治具を、収容エリアから第2摺動ユニットへ移送することができる。第2摺動ユニットに移送された治具は、作業エリア内を第2搬送レールによって案内され、組付部品の位置決めに使用される。組み立てる車種が変更され、使用する治具を交換する際には、第2摺動ユニット上の治具を収容エリアへ戻し、新たに使用する治具を収容エリアから第2摺動ユニットへ搬送する。この治具の交換は、第1搬送レールと治具支持レールによって案内されるので、簡単に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−301236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車体組立装置では、治具の搬送を案内する各レールのガイド精度が、組付部品の位置決め精度に大きく影響する。ここで、レールのガイド精度は、レールとその摺動ユニットとの間のクリアランスによって決まり、当該クリアランスが大きいほど、レールに対する摺動ユニットのあそびが大きくなって、レールのガイド精度は低下することになる。そのことから、各レールとその摺動ユニットとの間のクリアランスを小さくし、各レールのガイド精度を高めることによって、組付部品の位置決め精度を高めることができる。
【0006】
その一方において、上記した車体組立装置では、使用する治具を交換する際に、第1搬送レールから治具支持レールへ、あるいは、治具支持レールから第1搬送レールへ、治具の摺動ユニットを乗り移らせる必要がある。この場合、各レールと摺動ユニットとの間のクリアランスが大きいほど、摺動ユニットはレール間を簡単に乗り移ることができる。逆に、当該クリアランスが小さければ、両レールの位置関係が僅かにずれただけでも、摺動ユニットはレール間を乗り移ることができなくなる。しかしながら、各レールと摺動ユニットの間のクリアランスを大きくすれば、組付部品の位置決め精度は悪化することとなり、組み立てる車体の品質を低下させてしまうことになる。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、組付部品の位置決め精度の向上と、治具の交換作業に要する時間の短縮を、両立可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、使用する治具の変更時に摺動ユニットが乗り移るレールについては、比較的に精度の低いレールを採用する。それにより、治具の交換作業を、短時間で行うことが可能となる。一方、治具を用いて組付部品を位置決めする作業エリアのレールについては、比較的に精度の高いレールを採用する。それにより、組付部品の位置決め精度が確保される。
【0008】
上記した本発明の技術的思想は、下記する車体組立装置に具現化される。この車体組立装置は、車種混合の車体組立ラインで用いられ、治具を用いて組付部品の位置決めを行うものである。この車体組立装置は、車種毎に用意された複数の治具と、その複数の治具を収容する収容エリアと、収容エリアに隣接しており、複数の治具の一つを用いて組付部品の位置決めを行う作業エリアを有している。収容エリアには、治具の搬送を案内する第1搬送レールが設けられており、作業エリアには、前記治具の搬送を案内する第2搬送レールが設けられている。
複数の治具の各々には、第1搬送レールに摺動可能に係合する第1摺動ユニットが設けられている。一方、第2搬送レール上には、前記第2搬送レールに摺動可能に係合する第2摺動ユニットが設けられている。そして、第2摺動ユニットには、収容エリアの第1搬送レールに一連に接続し、第1搬送レールとの間で治具の受け渡しを行う治具支持レールが設けられている。
【0009】
この車体組立装置では、第1搬送レールと治具支持レールが、互いに同型のレール部材を用いて構成されている。一方、第1搬送レールと第2搬送レールについては、互いに異型のレール部材を用いて構成されている。そして、第1搬送レール及び治具支持レールを構成するレール部材と第1摺動ユニットとの間のクリアランスは、第2搬送レールを構成するレール部材と第2摺動ユニットとの間のクリアランスよりも、大きくなっている。
上記した構成によると、組付部品の位置決め精度の向上と、治具の交換作業の時間短縮を、両立することが可能となる。
【0010】
前記した第2搬送レールは、平行に配設された複数本のレール部材によって構成することが好ましい。この場合、その複数本のレール部材のそれぞれに、前記した治具支持レールが設けられた第2摺動ユニットを、独立して設けることが好ましい。
第2摺動ユニットに移送した治具は、第2摺動ユニットに対して正しい位置にする必要がある。このとき、レール部材毎に第2摺動ユニットが独立していると、治具に対する2摺動ユニットの位置調整を細かに行うことができ、第2摺動ユニットに対する治具の位置決めを容易に行うことができる。
【0011】
本発明に係る車体組立装置は、治具支持レール上の治具を第2摺動ユニットに対して位置決めする位置決め部材をさらに有することが好ましい。
この構成によると、第2摺動ユニットに対する治具に位置決めを、速やかに行うことができる。
【0012】
前記した第1搬送レールは、収容エリアの床面に形成されていることが好ましく、前記した第2搬送レールは、作業エリアの床面に形成されていることが好ましい。この構成によると、第1搬送レールや第2搬送レールの撓みが防止され、搬送される治具の位置精度を向上することができる。各レールを各エリアの床面に配置する場合、収容エリアの床面と作業エリアの床面との間に、高低差が設けることが好ましい。それにより、収容エリアの第1搬送レールと第2摺動ユニットの治具支持レールを、同じ高さに位置させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、組付部品の位置決め精度の向上と治具の交換作業の時間短縮を両立し、車種混合の組立ラインにおける生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車体組立装置の平面図。
【図2】図1におけるII−II線断面図。
【図3】サイドメンバー治具を収容エリアへ搬送する様子を示す図。
【図4】第1搬送レールと第1摺動ユニットを示す図。
【図5】図4におけるV−V線断面図。
【図6】第2搬送レールと第2摺動ユニットを示す図。
【図7】図6におけるVII−VII線断面図。
【図8】第2摺動ユニットによって支持された第1摺動ユニットを示す図。
【図9】図8におけるIX−IX線断面図。
【図10】使用後のサイドメンバー治具を収容エリアに収容する様子を示す図。
【図11】使用するサイドメンバー治具を収容エリア内で搬送する様子を示す図。
【図12】使用するサイドメンバー治具を第2摺動ユニットへ移送する様子示す図。
【図13】サイドメンバー及びアンダーボディをセットする様子を示す図。
【図14】サイドメンバー治具によってサイドメンバーを位置決めする様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、本発明を実施した実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) 収容エリアには、サイドメンバー治具の搬送を案内する第1搬送レールが設けられている。第1搬送レールは、各々のサイドメンバー治具を、その収容位置から作業エリアとの境界位置へ、あるいは、作業エリアとの境界位置からその収容位置へ、搬送できるように敷設されている。
(形態2) 作業エリアには、サイドメンバー治具の搬送を案内する第2搬送レールが設けられている。第2搬送レールは、サイドメンバー治具を、収容エリアとの境界位置からサイドメンバーの組付位置へ、あるいは、サイドメンバーの組付位置から収容エリアとの境界位置へ、搬送できるように敷設されている。
【実施例】
【0016】
本発明の実施例である車体組立装置10について図面を参照しながら説明する。図1は、車体組立装置10の平面図を示しており、図2は、図1におけるII−II線断面図を示している。車体組立装置10は、多車種の車体を組み立てる車種混合の組立ラインにおいて、アンダーボディ100の両側に一対のサイドメンバー102を組み付ける工程で用いられる。車体組立装置10では、サイドメンバー治具60a、60b、60cを用いて、組付部品であるサイドメンバー102の位置決めが行われる。アンダーボディ100及びサイドメンバー102は鉄鋼材料で形成されており、位置決めされた一対のサイドメンバー102は、アンダーボディ100に溶接よって組み付けられる。ここで、車体組立装置10は、実質的に左右対称の構造を有している。また、アンダーボディ100は、アンダーボディ治具80に保持され、前工程から搬送される。
【0017】
図1、図2に示すように、車体組立装置10は、車種毎に用意された複数のサイドメンバー治具60a、60b、60cと、複数のサイドメンバー治具60a、60b、60cを収容する収容エリア20と、サイドメンバー102の位置決め及び組み付けを行う作業エリア40を備えている。作業エリア40では、複数のサイドメンバー治具60a、60b、60cの一つを用いて、サイドメンバー102の位置決めが行われる。収容エリア20は、作業エリア40の両側に設けられており、収容エリア20と作業エリア40は互い隣接している。
車体組立装置10では、組み立てる車種に応じて、作業エリア40で使用するサイドメンバー治具60a、60b、60cを変更することができる。図1、図2は、車種Aの車体を組み立てる様子を示しており、車種Aに対応するサイドメンバー治具60aを用いて、サイドメンバー102の位置決めが行われている。車種Aの組立作業が終了した後は、図3に示すように、サイドメンバー治具60aを収容エリア20へ搬送し、その収容位置に収容する。同様に、例えば車種Bの組立作業時には、車種Bに対応するサイドメンバー治具60bを作業エリア40に搬送して使用し、車種Bの組立作業が終了した後は、サイドメンバー治具60bを収容エリア20に搬送して収容する。あるいは、車種Cの組立作業時には、車種Cに対応するサイドメンバー治具60Cを作業エリア40に搬送して使用し、車種Cの組立作業が終了した後は、サイドメンバー治具60cを収容エリア20に搬送して収容する。
【0018】
図2に示すように、サイドメンバー治具60aには、サイドメンバー102を取り付ける複数のクランプ62が設けられている。複数のクランプ62は、対応する車種の形状に応じて配設されている。各々のクランプ62にサイドメンバー102の対応部位を取り付けると、サイドメンバー102がサイドメンバー治具60aに対して定位置に固定される。同様に、他のサイドメンバー治具60b、60cにも、対応する車種に応じて、複数のクランプ62が設けられている。即ち、クランプ62の数及び位置関係は、各々のサイドメンバー治具60a、60b、60cによって異なっている。ただし、サイドメンバー治具60a、60b、60cの基本構造は共通しており、以下に説明するサイドメンバー治具60a、60b、60cの構造は、特に区別しない限り、全てのサイドメンバー治具60a、60b、60cに共通する。以下では、三種類のサイドメンバー治具60a、60b、60cを総称して、単にサイドメンバー治具60と表現することがある。
【0019】
図1、図2に示すように、収容エリア20の床面には、サイドメンバー治具60の搬送を案内する第1搬送レール22が設けられている。なお、収容エリア20の床面の一部はレール26によって支持された可動部24となっており、可動部24はレール26に沿ってスライド移動可能となっている。第1搬送レール22は、可動部24にも設けられている。収容エリア20では、第1搬送レール22及び可動部24によって、任意のサイドメンバー治具20を、作業エリア40との境界位置まで搬送することができる。
一方、作業エリア40の床面には、サイドメンバー治具20の搬送を案内する第2搬送レール42が設けられている。ここで、図2、図3に示すように、収容エリア20の床面と作業エリア40の床面には段差が設けられており、収容エリア20の第1搬送レール22と作業エリア40の第2搬送レール42は、互いに高さ位置が異なっている。第2搬送レール42は、収容エリア20との境界位置から、サイドメンバー102の組付位置まで伸びている。第2搬送レール42は、平行に配設された複数本のレール部材によって構成されている。なお、作業エリア40の床面には、アンダーボディ治具80の搬送を案内するアンダーボディ搬送レール82も設けられている。
【0020】
図3に示すように、各々のサイドメンバー治具60には、第1搬送レール22に摺動可能に係合する第1摺動ユニット70が設けられている。同様に、他のサイドメンバー治具60b、60cにも、第1搬送レール22に摺動可能に係合する第1摺動ユニット70が設けられている。それにより、各々のサイドメンバー治具60は、収容エリア20において、第1搬送レール22に沿って搬送可能となっている。
図4、図5に、第1搬送レール22及び第1摺動ユニット70を拡大して示す。図4、図5に示すように、第1摺動ユニット70は、複数の車輪72と、複数のサイドプレート74と、ガイドピン76と、位置決めピン78を備えている。複数の車輪72は、第1搬送レール22上に位置しており、サイドメンバー治具60を移動可能に支持している。複数のサイドプレート74は、第1搬送レール22の両側に位置しており、その先端は第1搬送レール22のフランジ部22aの下方に伸びている。ガイドピン76は、第1搬送レール22に向って下方に伸びており、その先端が第1搬送レール22に設けられたガイド溝22b内に位置している。位置決めピン78は、サイドメンバー治具60を後述する第2摺動ユニット50に対して位置決めするための部材であり、後述する治具支持レール52のピン穴52cに挿入される。
サイドプレート74と第1搬送レール22の間、及び、ガイドピン76と第1搬送レール22のガイド溝22bの間には、数ミリメートル程度の比較的に大きなクリアランスが設けられている。即ち、第1搬送レール22と第1摺動ユニット70の間には、比較的に大きなあそびが設けられており、第1搬送レール22によるガイド精度は比較的に低く抑えられている。なお、ここでいう「あそび」とは、第1搬送レール22に係合する第1摺動ユニット70が、第1搬送レール22に直交する面内で変位または揺動可能なことを意味する。
【0021】
図1、図2、図3に示すように、作業エリア40の第2搬送レール42上には、第2搬送レール42に摺動可能に係合する第2摺動ユニット50が設けられている。ここで、第2摺動ユニット50は、第2搬送レール42を構成する複数本のレール部材のそれぞれに、独立して設けられている。第2摺動ユニット50は、作業エリア40内でサイドメンバー治具60を支持し、サイドメンバー治具60を第2搬送レール42に沿って案内する。
図6、図7に、第2搬送レール42及び第2摺動ユニット50を拡大して示す。図6、図7に示すように、第2搬送レール42は、ベースプレート41を介して、作業エリア40の床面に設けられている。第2摺動ユニット50は、第2搬送レール42に摺動可能に係合している摺動器54を備えている。第2摺動ユニット50には、複数の摺動器54が、互いに間隔を空けて配置されている。ここで、第2搬送レール42及び摺動器54には、例えば、THK株式会社製のLMガイド(登録商標)を採用することができる。
【0022】
第2搬送レール42は、第1搬送レール22と異型のレール部材によって構成されており、第1搬送レール22とは異なる断面形状を有している。また、各々の摺動器54についても、第1摺動ユニット70とは異なる構造を有している。摺動器54と第2搬送レール42のクリアランスは、第1搬送レール22と第1摺動ユニット70の間のクリアランスよりも十分に小さく、第2搬送レール42によるガイド精度は、第1搬送レール22によるガイド精度よりも十分に高くされている。それにより、作業エリア40ではサイドメンバー治具60が正確に案内され、サイドメンバー102の位置決めが正しく行われる構成となっている。
【0023】
また、第2摺動ユニット50は、複数の摺動器54によって支持された治具支持レール52を備えている。治具支持レール52は、収容エリア20の第1搬送レール22と同型のレール部材を用いて構成されている。即ち、治具支持レール52は、第1搬送レール22と同じ断面形状を有しており、フランジ部52aやガイド溝52bが同様に設けられている。なお、治具支持レール52には、第1摺動ユニット70の位置決めピン78を受入れるピン穴52cが形成されている。
【0024】
図3に示すように、第2摺動ユニット50の治具支持レール52は、第2摺動ユニット50が収容エリア20との境界位置に移動したときに、収容エリア20の第1搬送レール22に一連に接続する。ここで、治具支持レール52と第1搬送レール22は、収容エリア20の床面と作業エリア40の床面の間の段差により、同じ高さに位置している。治具支持レール52と第1搬送レール22が接続することにより、サイドメンバー治具60の第1摺動ユニット70は、第1搬送レール22から治具支持レール52へ、あるいは、治具支持レール52から第1搬送レール22へ、乗り移ることができる。
【0025】
先に説明したように、第1搬送レール22と第1摺動ユニット70との間には、比較的に大きなクリアランスが形成されている。また、第1搬送レール22と同型の治具支持レール52と第1摺動ユニット70との間にも、比較的に大きなクリアランスが形成される。従って、サイドメンバー治具60の第1摺動ユニット70は、第1搬送レール22と治具支持レール52の間を、容易に乗り移ることができる。例えば、第1搬送レール22と治具支持レール52の位置関係が少しずれていても、第1摺動ユニット70の乗り移りは比較的にスムーズに行われる。従って、サイドメンバー治具60の交換作業を、短時間で行うことができる。
【0026】
図8、図9に、サイドメンバー治具60の第1摺動ユニット70が、第2摺動ユニット50の治具支持レール52によって支持された状態を示す。図8、図9に示すように、治具支持レール52上では、第1摺動ユニット70の位置決めピン78が、治具支持レール52のピン穴52cに挿入される。それにより、第1摺動ユニット70と第2摺動ユニット50の位置決めが行われ、サイドメンバー治具60が第2摺動ユニット50に対して定位置に固定される。ここで、第2摺動ユニット50は、第2搬送レール42のレール部材毎に、独立して設けられている。従って、位置決めピン78による位置決め作業時に、各々の第2摺動ユニット50の位置を個々に調整することができる。そのことから、位置決めピン78による位置決め作業を、短時間で行うことができる。
【0027】
以上、車体組立装置10の構造について説明した。以下、図10から図14を参照し、サイドメンバー治具60の交換作業について説明する。ここでは、サイドメンバー治具60aを用いて車種Aの組立作業を行った(図1、図2に示す状態)後に、サイドメンバー治具60cを用いて車種Cの組立作業を行うものとする。
先ず、図10に示すように、使用後のサイドメンバー治具60cを、収容エリア20に搬送して収容する。詳しくは、第一に、サイドメンバー治具60aを、第2摺動ユニット50と共に、収容エリア20との境界位置まで搬送する。次いで、位置決めピン78による固定を解除し、サイドメンバー治具60aを、治具支持レール52から第1搬送レール22へ乗り移らせる。先に説明したように、治具支持レール52と第1搬送レール22のガイド精度が比較的に低く抑えられている(即ち、クリアランスが大きい)ので、この乗り移りはスムーズに行われる。治具支持レール52と第1搬送レール22の位置関係を、厳密に調整する必要はない。収容エリア20内では、サイドメンバー治具60aを第1搬送レール22に沿って搬送し、既定の収容位置に収容する。
【0028】
次に、図11に示すように、収容エリア20の可動部24をスライド移動させるとともに、車種Cに用いるサイドメンバー治具60cを、第1搬送レール22に沿って可動部24の上に移動させる。このとき、サイドメンバー治具60cの可動部24への乗り移りも、スムーズに行われる。
次に、図12に示すように、サイドメンバー治具60cを載置した可動部24を、作業エリア40との境界位置までスライド移動させる。そして、サイドメンバー治具60cを、第2摺動ユニット50の治具支持レール52へ乗り移らせる。この乗り移りについても、スムーズに行われる。サイドメンバー治具60cを治具支持レール52上へ移動させた後、位置決めピン78によってサイドメンバー治具60cを固定する。以上により、サイドメンバー治具60cの交換作業が完了する。
【0029】
その後、図13に示すように、車種Cのアンダーボディ100が前工程から搬入するとともに、サイドメンバー102をサイドメンバー治具60cに取り付ける。そして、図14に示すように、サイドメンバー治具60cを、アンダーボディ100に向けて移動する。サイドメンバー治具60cは、精度の高い第2搬送レール42によって案内され、サイドメンバー102が、アンダーボディ100に対して正確に位置決めされる。位置決めされたサイドメンバー102は、アンダーボディ100に溶接によって固定される。以上により、サイドメンバー102の組付作業が完了する。
【0030】
上記したように、車体組立装置10では、使用するサイドメンバー治具60を交換する際に、サイドメンバー治具60の第1摺動ユニット70を、第1搬送レール22と治具支持レール52の間で乗り移らせる必要がある。そこで、車体組立装置10では、第1搬送レール22と第1摺動ユニット70との間、及び、治具支持レール52と第1摺動ユニット70との間に、比較的に大きなクリアランスが設け、スムーズな乗り移りを実現している。一方、作業エリア40の第2搬送レール42については、第2摺動ユニット50との間に設けるクリアランスを比較的に小さくすることで、サイドメンバー102の位置決めが正確に行われる。
車体組立装置10によれば、多数の車種を少数ずつ生産する場合でも、高い品質の車体を効率よく生産することができる。
【0031】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0032】
10:車体組立装置
20:収容エリア
20:サイドメンバー治具
22:第1搬送レール
40:作業エリア
42:第2搬送レール
50:第2摺動ユニット
52:治具支持レール
52a:フランジ部
52b:ガイド溝
52c:ピン穴
60a、60b、60c:サイドメンバー治具
70:第1摺動ユニット
78:位置決めピン
100:アンダーボディ
102:サイドメンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車種混合の車体組立ラインで用いられるとともに、治具を用いて組付部品の位置決めを行う車体組立装置であって、
車種毎に用意された複数の治具と、
前記複数の治具を収容する収容エリアと、
前記収容エリアに隣接しており、前記複数の治具の一つを用いて組付部品の位置決めを行う作業エリアを有し、
前記収容エリアには、前記治具の搬送を案内する第1搬送レールが設けられており、
前記作業エリアには、前記治具の搬送を案内する第2搬送レールが設けられており、
前記複数の治具の各々には、前記第1搬送レールに摺動可能に係合する第1摺動ユニットが設けられており、
前記第2搬送レール上には、前記第2搬送レールに摺動可能に係合する第2摺動ユニットが設けられており、
前記第2摺動ユニットには、前記収容エリアの第1搬送レールに対して一連に接続可能な治具支持レールが設けられており、
前記第1搬送レールと前記治具支持レールは、互いに同型のレール部材を用いて構成されており、
前記第1搬送レールと前記第2搬送レールは、互いに異型のレール部材を用いて構成されており、
前記第1搬送レール及び前記治具支持レールを構成するレール部材と第1摺動ユニットとの間のクリアランスは、前記第2搬送レールを構成するレール部材と第2摺動ユニットとの間のクリアランスよりも、大きいことを特徴とする車体組立装置。
【請求項2】
前記第2搬送レールは、平行に配設された複数本のレール部材によって構成されており、その複数本のレール部材のそれぞれに、前記治具支持レールが設けられた第2摺動ユニットが独立して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体組立装置。
【請求項3】
前記治具支持レール上の治具を前記第2摺動ユニットに対して位置決めする位置決め部材をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車体組立装置。
【請求項4】
前記第1搬送レールは、前記収容エリアの床面に形成されており、
前記第2搬送レールは、前記作業エリアの床面に形成されており、
前記収容エリアの床面と前記作業エリアの床面との間には、高低差が設けられており、
前記収容エリアの第1搬送レールと前記第2摺動ユニットの治具支持レールは、同じ高さに位置することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車体組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−247662(P2010−247662A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99169(P2009−99169)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】