説明

車体補強構造

【課題】前方から受ける荷重に対するサイドボディの構造的な耐久性を向上させ、フロントボディとサイドボディとをより強固に結合することが可能な車体補強構造を提供する。
【解決手段】車外側に向かって凸に湾曲し、フロントドア104がドアヒンジ106,126を介して取り付けられる側壁部材116と、側壁部材116と車体の前部とを結合する結合部材112と、側壁部材116の車内側に上下方向にわたって取り付けられ、側壁部材116に沿って湾曲し、側壁部材116を補強する補強部材136とを備える車体補強構造において、補強部材136の湾曲する内面に差し渡され、長手の平面部が水平で車体前後方向に延びているブレース部材142,144と、結合部材112、側壁部材116、補強部材136およびブレース部材142,144を共締めするボルト122、124と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のフロントボディとサイドボディとの間における車体補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体は、ボンネットやドア等の開閉可能な部分を除いてボディシェルと呼ばれる。ボディシェルを大別すると、車体の前部を構成するフロントボディ、後部を構成するリヤボディ、側壁を構成するサイドボディ、下面を構成するアンダーボディ等の部位に分けることができる。
【0003】
上記の各部位のなかでもフロントボディは、車体の進行方向の前端であり、走行中に前方から荷重を受け易い部位である。フロントボディが荷重を受けると、その荷重はフロントボディの後方の各部位に伝達される。フロントボディにはその後方にサイドボディが結合されているが、フロントボディとサイドボディとの結合箇所は荷重が特に集中するため、結合箇所には荷重に耐え得る剛性が求められている。
【0004】
従来から、フロントボディとサイドボディとの結合箇所には、アウタメンバやアウタフレームと呼ばれる結合部材が利用されている。例えば、特許文献1には、フロントボディとサイドボディとをアウタフレーム部材で結合した車体フレーム構造が開示されている。特許文献1では、アウタフレーム部材を、サイドボディの骨格を形成するボディパネルとリーンフォースメント部材、およびそれらのドア取り付け位置に設置されるドアヒンジアッパに対してボルトを共締めすることにより補強している。特許文献1によれば、アウタフレーム部材を上記の各部材に共締めすることによって車体の耐久強度の向上を図ることが可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−75130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、アウタフレーム部材は、その長手方向が車体の前後方向とほぼ平行になるようにフロントボディおよびサイドボディに固定されている。そのため、サイドボディがアウタフレーム部材を介して前方のフロントボディから受ける荷重は、車体のほぼ前後方向に沿った方向性を有すると考えられる。ここで、特許文献1においてアウタフレーム部材が固定される箇所のサイドボディ、すなわちボディパネルとリーンフォースメント部材、およびドアヒンジアッパは、一般的な車体の構造と同じく、板金に曲げ加工を施すことによって立体化された部材である。例えば、特許文献1の図3では、ボディパネル等の部材は板状であって、車外側に向かって凸に湾曲している。しかし、このように湾曲した構成では、その方向に高い剛性を発揮し得るとは考え難く、アウタフレーム部材から受ける荷重に対するボディパネル等の耐久強度は構造的に制限されてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、前方から受ける荷重に対するサイドボディの構造的な耐久性を向上させ、フロントボディとサイドボディとをより強固に結合することが可能な車体補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体補強構造の代表的な構成は、車体の側壁を構成し、車外側に向かって凸に湾曲し、フロントドアがドアヒンジを介して取り付けられる側壁部材と、側壁部材の車外側で側壁部材と車体の前部とを結合する結合部材と、側壁部材の車内側に側壁部材の上下方向にわたって取り付けられ、湾曲する側壁部材に沿って湾曲し、側壁部材を補強する補強部材とを備える車体補強構造において、長手の平面部を有し補強部材の湾曲する内面に差し渡されるブレース部材であって、平面部が水平で車体前後方向に延びているブレース部材と、結合部材、側壁部材、補強部材およびブレース部材を共締めするボルトと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のブレース部材により、補強部材は湾曲していてもその車体の前後方向の剛性が構造的に高められる。この補強部材を取付けた側壁部材は、補強部材によって車体の前後方向の剛性が補強される。そして、これらの部材と一体になるように結合部材を取り付けることで、車体の側壁(サイドボディ)の剛性の高い部分を利用して、車体の前部(フロントボディ)とサイドボディとを結合することができる。この構成によれば、サイドボディは、結合部材を介してフロントボディから荷重を受けても変形せず、受けた荷重をドアヒンジを介してフロントドアやリアドアなど車体のさらに後方へ受け流すことができる。このように、上記構成によれば、前方から受ける荷重に対するサイドボディの構造的な耐久性を向上させ、フロントボディとサイドボディとをより強固に結合することが可能となる。
【0010】
上記の車体補強構造は、ブレース部材を2つ備え、ドアヒンジは側壁部材とともに補強部材にも取り付けられていて、2つのブレース部材は、補強部材の湾曲の内面においてドアヒンジの取付位置の上下近傍にそれぞれ取り付けられるとよい。
【0011】
上記のブレース部材によれば、ドアヒンジの取付位置の周囲における側壁部材および補強部材の剛性を確実に高めることができる。したがって、側壁部材および補強部材は、車体の前部から荷重を受けてもドアヒンジの取付位置に変形が発生せず、ドア(フロントドア)の取付状態が維持できる。これにより、フロントボディからサイドボディが受ける荷重は、側壁部材および補強部材だけでなく、フロントドアをも介して車体の後方へ伝達される。すなわち、上記構成によれば、車体の前方から後方へ荷重が伝達する過程において、サイドボディが受ける荷重を軽減することができる。
【0012】
ドアヒンジの取付位置の上側に取り付けられるブレース部材の平面部は水平で車体前後方向に延びていて、ドアヒンジの取付位置の下側に取り付けられるブレース部材の平面部は、フロントドアの上下方向の中部を補強する中部ビーム部材の長手方向に延びているとよい。
【0013】
上記構成によれば、側壁部材および補強部材がフロントボディから受けた荷重を、フロントドアのとりわけ剛性の高い箇所へ伝達させることができる。これにより、フロントドアを変形させることなく、荷重を的確に車体後方へ伝達させることができる。
【0014】
上記のボルトは、結合部材、側壁部材、補強部材およびブレース部材を、ブレース部材の車体前方の位置で車外側斜め前方から共締めするとよい。この車体前方の位置でのボルトの共締めにより、結合部材からボルトを介して車体後方へ伝わる荷重の経路に、ブレース部材を介在させることができる。また、上記の各部材に対してボルトが車外側斜め前方から挿入されて共締めされることにより、ボルトから各部材へ荷重が印加された際に各部材同士をずらすことなく接触させ、荷重の伝達効率を向上させている。
【0015】
上記のブレース部材は、平面部の外縁に設けられ、補強部材の湾曲の内面に接するリブをさらに有するとよい。この構成によれば、リブによって、上記のボルトを利用しての各部材の共締めが容易に可能となる。また、リブと平面部とを組み合わせることによって、ブレース部材は立体形状となって剛性がより向上する。さらに、リブによってブレース部材と補強部材との接触面積が拡大するため、ブレース部材は補強部材をより的確に補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態にかかる車体補強構造が実施される車体を示す図である。
【図2】図1の車体補強構造の分解図である。
【図3】図1の車体補強構造を示す図である。
【図4】図3の上側ブレース部材を示す図である。
【図5】図3の下側ブレース部材を示す図である。
【図6】図3の断面図である。
【図7】図3からフロントドアドアインナーパネルを省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態にかかる車体補強構造100が実施される車体102を示す図である。以下では、図1に示すように車体102の右側壁に設置される車体補強構造100を例に挙げて説明する。なお、車体102の左側壁には、右側壁の車体補強構造100と対称な構造かつ同一の機能を有する車体補強構造(図示省略)が設置される。
【0019】
本実施形態にかかる車体補強構造100は、車体102のフロントドア104における上下方向の上側のドアヒンジ106が取り付けられる位置の近傍において、フロントボディ107とサイドボディ108とを結合して固定する。
【0020】
フロントボディ107は、車体102の前部を構成する部位である。フロントボディ107には、不図示のエンジンやフロントサスペンション等の部品が取り付けられる。フロントボディ107は、車体102の進行方向の前端であって、走行中に前方の外部から荷重を受け易い部位である。
【0021】
フロントボディ107の後方には、サイドボディ108が結合される。サイドボディ108は、車体102の側壁を構成する部位である。サイドボディ108には、フロントドア104やリアドア110が取り付けられる。サイドボディ108とフロントボディ107とは、様々な箇所において溶接やボルト締結等を利用して結合される。これらの結合箇所は、フロントボディ107が前方からの荷重を受けた場合にその荷重が集中しやすい箇所である。
【0022】
本実施形態にかかる車体補強構造100は、サイドボディ108とフロントボディ107とを結合する結合部材112を備えている。詳細には、結合部材112は、フロントボディ107のフェンダーエプロン114と、サイドボディ108の側壁部材116とを結合し、固定する。結合部材112は、フロントガラス118の下方に取付けられるカウル120の車幅方向の両側近傍に設置され、カウルサイドアウターメンバとも呼ばれる。
【0023】
図2は、図1の車体補強構造100の分解図である。図2に示すように、車体補強構造100が備える結合部材112は、側壁部材116の車外側にボルト122、124を利用して結合される。
【0024】
側壁部材116は、サイドボディーアウタパネルとも呼ばれ、車体102(図1)の側壁の外板として機能する。側壁部材116には、その車外側にフロントドア104およびリアドア110が取り付けられる。これらのドアは側壁部材116にドアヒンジによって開閉可能に取り付けられる。例えば、フロントドア104はドアヒンジ106、126を介して側壁部材116に取り付けられる。
【0025】
側壁部材116には、ルーフ(天井)を支えるための支柱となる複数のピラーが形成されている。ピラーは、車体102の前方側から、フロントピラー128、センタピラー130、リアピラー132の領域に分かれる。側壁部材116における各ドアの上下方向の下方には、乗員が搭乗する際に敷居となるサイドシル134が形成される。これら、フロントピラー128等のピラーおよびサイドシル134は、車体102の全体を支え、かつその剛性を保つために重要な部分である。
【0026】
側壁部材116におけるドアヒンジ106、126が取り付けられる領域の車内側には、補強部材136が設置されている。補強部材136は、側壁部材116がドアヒンジ106、126を介してフロントドア104から受ける荷重に耐え得るように側壁部材116を補強する部材である。補強部材136は、側壁部材116の車内側に上下方向にわたって取り付けられる。
【0027】
補強部材136には、ドアヒンジ106、126を取り付けるためのボルト孔138、140が設けられている。このボルト孔138、140を利用して、ドアヒンジ106、126は側壁部材116とともに補強部材136にも取り付けられる。このように、補強部材136は、側壁部材116におけるドアヒンジ106、126の取付領域を補強するため、ヒンジリーンフォースとも呼ばれる。
【0028】
本実施形態では補強部材136の車内側に、2つのブレース部材(上側ブレース部材142および下側ブレース部材144)が取り付けられる。この2つのブレース部材は、補強部材136および側壁部材116をさらに構造的に補強する。
【0029】
図3は、図1の車体補強構造100を示す図である。図3(a)は図1の車体補強構造100およびフロントドア104を車内側から示す図、図3(b)は図3(a)のC−C断面を示す図である。
【0030】
図3(b)に示すように、側壁部材116および補強部材136は金属製であって、一般的な車体102の外板と同様に、板金に曲げ加工を施すことによって立体化されている。例えば、側壁部材116は車外側に向かって凸に湾曲する形状に加工され、立体化されている。そして、補強部材136も側壁部材116に沿って湾曲する形状に立体化されている。そのため、補強部材136の車内側の面は湾曲の内面となって凹に窪んでいる(以下、湾曲の内面を凹部146と記載する)。図3(a)に示す上側ブレース部材142および下側ブレース部材144は、この凹部146に差し渡すように取り付けられる。
【0031】
図4は、図3(a)の上側ブレース部材142を示す図である。図4に示すように、上側ブレース部材142は、金属製であって、板状に広がる長手の平面部148を有している。平面部148の外縁には、リブ150が設けられている。このリブ150と平面部148とを組み合わせることによって、上側ブレース部材142は立体形状となっている。これにより、上側ブレース部材は特に車体前後方向に対する剛性がより向上している。
【0032】
リブ150における車体前方(図4中、左方向)にはボルト孔152が設けられている。リブ150にボルト孔152を設けることによって、後述するボルト122を利用しての各部材の共締めが容易に可能となっている。
【0033】
図3(a)を再び参照する。図3(a)に示すように、上側ブレース部材142は、平面部148の長手方向が車体102の前後方向を向くように水平に延びていて、補強部材136の凹部146に取り付けられる。また上側ブレース部材142のリブ150は、凹部146に接している。リブ150は、上側ブレース部材142と補強部材136との接触面積を拡大させることができる。また、リブ150に設けられたボルト孔152には、ボルト122が挿入される。
【0034】
図5は、図3(a)の下側ブレース部材144を示す図である。図5に示すように、下側ブレース部材144は、上側ブレース部材142と同様に、金属製であって、板状に広がる長手の平面部154を有している。また、下側ブレース部材144における平面部154の外縁にも、車体前方にボルト孔156を有するリブ158が設けられている。このリブ158と平面部154とを組み合わせることによって、下側ブレース部材144は立体形状となっている。これにより、下側ブレース部材144も上側ブレース部材142と同様に車体前後方向に対する剛性がより向上している。また、リブ158にボルト孔156を設けることによって、後述するボルト124を利用しての各部材の共締めが容易に可能となっている。
【0035】
下側ブレース部材144では、平面部154の長手方向の端である端部155(車体前方側(図中、左方向側))および端部157(車体後方側(図中、右方向側))において、リブ158が平面部154に対して傾斜して設けられている。この点において、下側ブレース部材144は上側ブレース部材142と異なる。
【0036】
図3(a)を再び参照する。図3(a)に示すように、下側ブレース部材144は車体後方側(図中、右方向側)を下方にし、補強部材136に斜めに取り付けられる。後述するように、下側ブレース部材144は、フロントドア104の中部ビーム部材162の長手方向と略平行になるように取り付けられるためである。このとき、前述したように、下側ブレース部材144のリブ158が平面部154に対して傾斜して設けられているため、下側ブレース部材144を補強部材136に斜めに取り付けても、リブ158は凹部146に接することができる。これにより、リブ158は、下側ブレース部材144と補強部材136との接触面積を拡大させることができる。リブ158に設けられたボルト孔156には、ボルト124が挿入される。
【0037】
なお、上記の上側ブレース部材142および下側ブレース部材144の補強部材136への取り付けは、ボルト122、124の締結だけでなく、スポット溶接等を利用して行ってもよい。
【0038】
図6は、図3(a)の断面図である。図6(a)は、図3(a)のA−A断面を示している。図6(a)に示すように、補強部材136は側壁部材116に向かって凸に湾曲している。しかし、補強部材136は、凹部146に上側ブレース部材142を備え、これが突っ張り部材として機能することによって、車体102の前後方向(図6(a)中、左右方向)の剛性を構造的に高めることができる。このとき、リブ150によって上側ブレース部材142と補強部材136との接触面積が拡大しているため、上側ブレース部材142は補強部材136をより的確に補強することができる。
【0039】
図6(b)は、図3(a)のB−B断面を示している。図6(b)に示すように、凹部146に下側ブレース部材144が備え、これを突っ張り部材として機能させることによっても、補強部材136の車体102の前後方向(図6(b)中、左右方向)の剛性は構造的に高められる。また、下側ブレース部材144においてもリブ158によって補強部材136との接触面積が拡大しているため、下側ブレース部材144は補強部材136をより的確に補強することが可能となっている。そして、これら上側ブレース部材142および下側ブレース部材144を取り付けた補強部材136によって、側壁部材116は車体102の前後方向の剛性が補強される。
【0040】
図6(a)に示すように、ボルト122は、車体補強構造100の車外側から順に結合部材112、側壁部材116、補強部材136および上側ブレース部材142に挿入され、これらを共締めする。また、図6(b)に示すように、ボルト124は、車体補強構造100の車外側から順に結合部材112、側壁部材116、補強部材136および下側ブレース部材144に挿入され、これらを共締めする。
【0041】
ボルト122、124による各部材の共締めは、上側ブレース部材142および下側ブレース部材144における車体前方の位置で、車外側斜め前方から行われている。通常、ボルトによって各部材を単に共締めするだけであれば、ボルトは各部材に対して車外側から垂直に挿入される。しかしその場合、ボルトを介してのフロントボディ107から各部材への荷重が、ボルトの軸に対する垂直方向、つまり各部材の面に対してせん断方向にかかってしまう。このような構成では、ボルトから各部材へ荷重が伝わり難くなり、各部材同士はせん断方向にずれてしまう。そこで、本実施形態では、ボルト122、124を上記のように車外側斜め前方で共締めすることで、ボルト122、124から各部材へ荷重が印加された際に各部材同士をずらすことなく接触させ、荷重の伝達効率を向上させている。
【0042】
また、上記車体前方の位置でボルト122、124が共締めされることによって、結合部材112からボルト122、124を介して車体後方へ伝わる荷重の経路に、上側ブレース部材142および下側ブレース部材144を介在させることができる。このように、各部材と一体になるように結合部材112を取り付けることで、結合部材112はサイドボディ108(図1)における剛性のより高い部分を利用して、フロントボディ107とサイドボディ108とを結合することができる。
【0043】
上記の構成によれば、図1に示すサイドボディ108は、結合部材112を介してフロントボディ107から荷重を受けても変形せず、荷重をほとんど吸収しない。そのため、受けた荷重をドアヒンジ106、126を介してフロントドア104やリアドア110など車体102のさらに後方へ受け流すことができる。このように、本実施形態にかかる車体補強構造100によれば、前方から受ける荷重に対するサイドボディ108の構造的な耐久性を向上させ、フロントボディ107とサイドボディ108とをより強固に固定することが可能となる。
【0044】
図3(a)を再び参照して、本実施形態にかかる車体補強構造100の有するさらなる効果について説明する。図3(a)に示すように、上側ブレース部材142および下側ブレース部材144は、補強部材136の凹部146において、ボルト孔138(図2)を含むドアヒンジ106の取付位置Eの上下近傍にそれぞれ取り付けられる。詳細には、上側ブレース部材142はドアヒンジ106の取付位置Eの上側に取り付けられ、下側ブレース部材144はドアヒンジ106の取付位置Eの下側に取り付けられる。
【0045】
上記の上側ブレース部材142および下側ブレース部材144によれば、ドアヒンジ106の取付位置Eの周囲における側壁部材116および補強部材136の剛性を確実に高めることができる。したがって、側壁部材116および補強部材136は、フロントボディ107から荷重を受けてもドアヒンジ106の取付位置Eに変形が発生せず、ドア(フロントドア104)を荷重を受ける以前と同様の取付状態に維持できる。
【0046】
上記構成により、車体102の前方から後方へ荷重が伝達する過程において、サイドボディ108が受ける荷重を軽減することができる。例えば、サイドボディ108がフロントボディ107から荷重を受けた際、フロントドア104が通常の取付位置から移動したり外れたりしていては、サイドボディ108上(特に側壁部材116上)を後方へ向かって移動する荷重は、フロントピラー128およびサイドシル134に集中して伝わってしまう。しかし、上記のようにフロンドア104の取付状態を維持することで、サイドボディ108がフロントボディ107から受けた荷重は、ドアヒンジ106および側壁部材116とフロントドア104との接触点からフロントドア104にも伝達される。つまり、フロントボディ107からサイドボディ108が受ける荷重は、側壁部材116および補強部材136だけでなく、フロントドア104をも介して車体102の後方へ伝達される。
【0047】
図7は、図3(a)からフロントドアドアインナーパネル164を省略した図である。通常、フロントドア104の内部には、フロントドア104を補強するための複数のビーム部材が備えられている。例えば図7に示すように、フロントドア104は、その上部を補強する上部ビーム部材160と、上下方向の中部を補強する中部ビーム部材162を備えている。上部ビーム部材160は、車体102の前後方向にほぼ平行に設置されている。中部ビーム部材162は、車体102の後方側(図中、右方向側)を下方にして斜めに設置されている。これらのビーム部材が支柱となることで、フロントドア104は各ビーム部材の長手方向に対して特に剛性が高められている。
【0048】
図7に示すように、上側ブレース部材142は、ドアヒンジ106の取付位置Eの上側に取り付けられるだけでなく、平面部148の長手方向がフロントドア104の上部を補強する上部ビーム部材160の長手方向と略平行になるように取り付けられる。また、下側ブレース部材144は、ドアヒンジ106の取付位置Eの下側に取り付けられるだけでなく斜めに取り付けられていて、平面部154がフロントドア104の上下方向の中部を補強する中部ビーム部材162の長手方向と略平行になるように延びている。
【0049】
上記構成によれば、側壁部材116および補強部材136がフロントボディ107から受けた荷重を、フロントドア104上のとりわけ剛性の高い箇所へ伝達させることができる。したがって、フロントドア104に荷重を伝達させたとしても、フロントドア104を変形させることなく、荷重を的確に車体後方へさらに伝達させることができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車体のフロントボディとサイドボディとの間における車体補強構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
E …取付位置、100 …車体補強構造、102 …車体、104 …フロントドア、106 …ドアヒンジ、107 …フロントボディ、108 …サイドボディ、110 …リアドア、112 …結合部材、114 …フェンダーエプロン、116 …側壁部材、118 …フロントガラス、120 …カウル、122 …ボルト、124 …ボルト、126 …ドアヒンジ、128 …フロントピラー、130 …センタピラー、132 …リアピラー、134 …サイドシル、136 …補強部材、138 …ボルト孔、140 …ボルト孔、142 …上側ブレース部材、144 …下側ブレース部材、146 …凹部、148 …平面部、150、158 …リブ、152 …ボルト孔、154 …平面部、156 …ボルト孔、160 …上部ビーム部材、162 …中部ビーム部材、164 …フロントドアドアインナーパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側壁を構成し、車外側に向かって凸に湾曲し、フロントドアがドアヒンジを介して取り付けられる側壁部材と、
前記側壁部材の車外側で該側壁部材と前記車体の前部とを結合する結合部材と、
前記側壁部材の車内側に該側壁部材の上下方向にわたって取り付けられ、前記湾曲する側壁部材に沿って湾曲し、該側壁部材を補強する補強部材とを備える車体補強構造において、
長手の平面部を有し前記補強部材の湾曲する内面に差し渡されるブレース部材であって、該平面部が水平で車体前後方向に延びているブレース部材と、
前記結合部材、側壁部材、補強部材およびブレース部材を共締めするボルトと、を備えることを特徴とする車体補強構造。
【請求項2】
前記ブレース部材を2つ備え、
前記ドアヒンジは前記側壁部材とともに前記補強部材にも取り付けられていて、
前記2つのブレース部材は、前記補強部材の湾曲の内面において前記ドアヒンジの取付位置の上下近傍にそれぞれ取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の車体補強構造。
【請求項3】
前記ドアヒンジの取付位置の上側に取り付けられるブレース部材の平面部は水平で車体前後方向に延びていて、
前記ドアヒンジの取付位置の下側に取り付けられるブレース部材の平面部は、前記フロントドアの上下方向の中部を補強する中部ビーム部材の長手方向に延びていることを特徴とする請求項2に記載の車体補強構造。
【請求項4】
前記ボルトは、前記結合部材、側壁部材、補強部材およびブレース部材を、該ブレース部材の車体前方の位置で車外側斜め前方から共締めすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車体補強構造。
【請求項5】
前記ブレース部材は、前記平面部の外縁に設けられ、前記補強部材の湾曲の内面に接するリブをさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車体補強構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−230711(P2011−230711A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104514(P2010−104514)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】