説明

車体部品の締結構造

【課題】異種金属で形成された2つの構成部品を締結する車体部品の締結構造において、構造用接着剤の使用を排除することを可能にするとともに、一方の部材と他方の部材との隙間を十分に確保し、水環境の厳しい状況でも電食を防止して錆の発生を抑制することを可能にする。
【解決手段】材質が互いに異なる異種材料同士で形成された一方の部材(連結部材)21と他方の部材(ダンパハウジング)22とをボルト81で締結する車体部品の締結構造20において、一方の部材21にかしめナット74が固定され、このかしめナット74のフランジ75面に他方の部材22がボルト81で締結され、かしめナット74が、少なくとも一方の部材21及び他方の部材22に対して不活性な表面を有するとともに、他方の部材22に、フランジ75面へ向けて突出する突出部57aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属で形成された2つの構成部品を締結する車体部品の締結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体部品の締結構造として、鉄素材で形成された構造部品とアルミニウム素材で形成された構造部品とを締結したものが知られている。
この種の車体部品の締結構造は、異種金属同士が直接接触することで発生する電食を防止する若しくは発生を遅らす配慮がなされていた。一般的には、構造用接着剤とSPR(Self Piercing Rivets)とを併用したり、構造用接着剤とボルト締めとを併用するものであった。
【0003】
上記の構造用接着剤を塗布する目的は、接合強度を期待することもあるが、主たる目的は異種金属同士(異材同士)が直接接することにより発生する電食錆の発生を防止する、又は発生時期を遅らせるものである。
【0004】
このような車体部品の締結構造に利用できる技術として、一方の部材に他方の部材を所定の隙間を保って接合され、これらの一方の部材及び他方の部材間に構造用接着剤を介在させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3179187号公報
【0005】
特許文献1の車体部品の締結構造は、車体フロアに溶接された連結部材(一方の部材)と、この連結部材がワッシャを介して連結されるダッシュパネル(他方の部材)と、これらの連結部材、ワッシャ及びダッシュパネルに貫通させるボルトと、このボルトにねじ込まれるナットと、連結部材の端部とダッシュパネルとの隙間に充填される構造用接着剤(接着剤層)とから構成されたものである。
【0006】
しかし、車体部品の締結構造では、ワッシャによって連結部材とダッシュパネルとの隙間を確保した分、構造用接着剤の量が増加するという課題があった。
また、車体部品の締結構造では、連結部材、ダッシュパネル、ワッシャ及びボルトを全体的に覆う塗膜や皮膜の存在がないので、水環境の厳しい状況で錆の発生を抑制することはできない。
【0007】
詳細に述べると、電食錆の発生防止のためには、構造用接着剤の塗布品質が確実なものでなければならない。塗布品質を確実なものとするためには、人手による作業ではなく機械化された作業が望ましい。従って、それに伴う投資額が発生したり、それらの設備を配置するためのスペースを生産現場の適切な位置に確保する必要がある。
また、構造用接着剤の材料費や塗布用ロボットを稼動させる操業費等によるコストアップも安価ではない。
さらに、塗布品質を確実なものとするためには、細心の注意が必要であり、生産上の管理工数(塗布位置、塗布量をカメラチェック、目視チェック等)が著しく増大するということもある。
【0008】
構造用接着剤が界面に確実に塗布されているためには、沢山の量を塗布し、界面部位からはみ出す様にする必要があるため、材料費(構造用接着剤費)も多く必要となる。
すなわち、接合前の構造用接着剤塗布状態では、構造用接着剤の量が非常に多く必要であり、接合後には鉄とアルミニウムとの界面に確実に構造用接着剤が介在する様に、構造用接着剤をはみ出させている。
【0009】
例えば、鉄素材の構造部品(一方の部材)とアルミニウム素材の構造部品(他方の部材)との間に、所定の隙間を確保して電食を防止し、さらに、鉄素材の構造部品とアルミニウム素材の構造部品とを電着塗膜で覆うことで、水環境の厳しい状況でも錆の発生を抑制するように配慮する場合には、上記所定の隙間が一定以上確保できなければ、隙間部分に十分な電着塗膜を形成することはできない。すなわち、隙間部分の電着塗膜の厚さが薄ければ、十分な防錆性能を確保することはできない。従って、一方の部材と他方の部材との隙間を十分に確保したいものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、異種金属で形成された2つの構成部品を締結する車体部品の締結構造において、構造用接着剤の使用を排除することができるとともに、一方の部材と他方の部材との隙間を十分に確保し、水環境の厳しい状況でも電食を防止して錆の発生を抑制することができる車体部品の締結構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、材質が互いに異なる異種材料同士で形成された一方の部材と他方の部材とをボルトで締結する車体部品の締結構造において、一方の部材にかしめナットが固定され、このかしめナットのフランジ面に他方の部材がボルトで締結され、かしめナットに、少なくとも一方の部材及び他方の部材に対して不活性な表面を有するとともに、他方の部材に、フランジ面へ向けて突出する突出部を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、フランジのフランジ高さと突出部の高さで形成される隙間が、充分な防錆性能を確保できる電着塗膜厚さよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、材質が互いに異なる異種材料同士で形成された一方の部材と他方の部材とをボルトで締結する。
一方の部材にかしめナットが固定され、このかしめナットのフランジ面に他方の部材がボルトで締結され、他方の部材に、フランジ面へ向けて突出する突出部を有するので、一方の部材と他方の部材との間に、フランジの厚み分と突出部の厚み分とを合計した隙間を形成することができる。従って、かしめナットだけの場合よりも隙間を大きく設定することができるので、例えば、一方の部材、他方の部材、かしめナット及びボルトの締結後の外表面に、電着塗膜を形成する場合には隙間部分にも確実に電着塗膜を形成することができる。さらに、かしめナットが、少なくとも一方の部材及び他方の部材に対して不活性な表面を有するので、構造用接着剤の使用を排除することができるとともに、異種金属間の接触で起きる電食を防止して錆の発生を抑制することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、フランジのフランジ高さと突出部の高さで形成される隙間が、充分な防錆性能を確保できる電着塗膜厚さよりも大きいので、隙間に良好な電着塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、CLは車幅中央側を示す。
図1は本発明に係る車体部品の結合構造を採用した車体フレームの斜視図である。図2は図1に示すダンパハウジング周りを車幅中央側から見た斜視図である。図3は図1に示すダンパハウジング周りの分解斜視図であり、図4は図1に示す車体フレームのサブアッセンブリを示す斜視図である。
【0016】
図1は車体フレーム(車体)10における左前部を示している。なお、車体フレーム10における右前部は、左前部と同様の構成である。車体フレーム10は、車体前面に設けられるフロントバルクヘッド15と、このフロントバルクヘッド15から車体後方に延出されるフロントサイドフレーム(サイドフレーム)12(左だけを示す。以下同じ。)と、フロントバルクヘッド15の上部から車体後方に延出されるアッパメンバ13と、このアッパメンバ13の中間から斜め後方に延出されるロアメンバ14と、サイドシル(不図示)から立ち上げられ、アッパメンバ13の後端及びロアメンバ14の後端が接続されるフロントピラー支持部材18と、このフロントピラー支持部材18の上部から斜め後方に延ばされるフロントピラー11と、フロントサイドフレーム12、アッパメンバ13及びロアメンバ14に取付けられ、フロントダンパ(不図示)を支持するダンパハウジング22とからなる。
【0017】
フロントバルクヘッド15は、車体下部に且つ車幅方向に延ばされる下部横メンバ23と、車体上部に且つ車幅方向に延ばされる上部横メンバ24と、これらの上部・下部横メンバ23,24を接続する左の縦メンバ25及び右の縦メンバ(不図示)とからなる。上部横メンバ24は両サイドにエクステンション29,29(一方不図示)を備える。
【0018】
フロントサイドフレーム12は、フロアフレーム(不図示)に接続される延長部12aを備え、断面視凹状のサイドフレームロア33と、このサイドフレームロア33に被せられるサイドフレームアッパ34と、これらのサイドフレームロア33及びサイドフレームアッパ34に設けられ、ダンパハウジング22側を締結する車体側前ブラケット31及び車体側後ブラケット32とからなる。
【0019】
フロントサイドフレーム12のサイドフレームロア33、サイドフレームアッパ34、車体側前ブラケット31及び車体側後ブラケット32は、鉄素材(鉄製)にて形成されている。
【0020】
車体側前ブラケット31は、車体前後方向に沿わせて設けられる第1溶接面35と、この第1溶接面35の前端から車幅方向に沿わせて曲げ形成された第2溶接面36と、この第2溶接面36から車体前方に沿わせて曲げ形成された第3溶接面37とから構成される。
なお、車体側後ブラケット32は、車体側前ブラケット31にダンパハウジング22の中心部に対して前後方向で対称に形成されたブラケットである。
【0021】
アッパメンバ13及びロアメンバ14は、鉄素材(鉄製)にて形成された角型のパイプ材であり、アッパメンバ13及びロアメンバ14で連結部材21が構成される。
アッパメンバ13には、ダンパハウジング22の締結用のかしめナット74,74が設けられ、ロアメンバ14には、ダンパハウジング22の締結用のかしめナット74が設けられている。
【0022】
ダンパハウジング22は、アルミニウム素材で形成された部材であり、フロントダンパ(不図示)を取付ける本体部41と、この本体部41の本体側フランジ56の前後に設けられ、連結部材21に締結する前の上締結部42及び後の上締結部43と、本体部41の前後に且つ下方に延ばされた前後の脚部44,45と、前の脚部44の先端に形成され、フロントサイドフレーム12側に前ダンパブラケット46を介して締結する前の下締結部52と、後の脚部45の先端に形成され、フロントサイドフレーム12側に後ダンパブラケット47を介して締結する後の下締結部53とからなる。
【0023】
本体部41は、フロントダンパ(不図示)を臨ます開口54と、フロントダンパを取付ける複数の取付孔55とが形成される。
前の上締結部42は、本体部41の上端に形成された本体側フランジ56の前部分に、ボルト81を貫通させる貫通孔57と、この貫通孔57の廻りに且つ連結部材21に向けて形成された突出部57a(図5参照)とが形成された部分であり、アッパメンバ13に、かしめナット74を介してボルト81で締結される。
【0024】
後の上締結部43は、本体部41の上端に形成された本体側フランジ56の後部分に、ボルト82,83を貫通させる貫通孔58,59、これらの貫通孔58,59の廻りに且つ連結部材21に向けて形成された突出部58a(図6参照、ロアメンバ14側の突出部は不図示)とが形成された部分であり、アッパメンバ13及びロアメンバ14の双方に、かしめナット74,74を介してボルト82,83で締結される。
【0025】
前ダンパブラケット46は、上部がダンパハウジング22側にボルト締めされるとともに、下部が車体側前ブラケット31に溶接されるクランク状の板部材であり、第1〜第3取付面61〜63を有し、これらの第1〜第3取付面61〜63のそれぞれにかしめナット74が取付られている。なお、後ダンパブラケット47は、前ダンパブラケット46に略同一構成の部材であり、ダンパハウジング22の中心部に対して前後方向で対称の部材である。
【0026】
前の下締結部52は、車体前後方向に沿わせて設けられ、第1取付面61にボルト84で締結される第1締結面66と、この第1締結面66の前端から車幅方向に沿わせて曲げ形成され、第2取付面62にボルト85で締結される第2締結面67と、この第2締結面67から車体前方に沿わせて曲げ形成され、第3取付面63にボルト86で締結される第3締結面68とから構成される。
【0027】
第1〜第3締結面66〜68には、ボルト84〜86を貫通させる貫通孔71〜73と、これらの貫通孔71〜73の廻りに且つ前ダンパブラケット46の第1〜第3取付面61〜63に向けて形成された突出部71a(図8参照、第2・第3取付面の突出部は不図示)とが設けられる。
なお、後の下締結部53は、前の下締結部52に略同一構成の部分であり、前の下締結部52にダンパハウジング22の中心部に対して前後方向で対称の部分であり、後ダンパブラケット47にボルト87〜89で締結される。
【0028】
図4に示されたように、車体フレーム10は、連結部材21にダンパハウジング22が締結され、このダンパハウジング22に前・後のダンパブラケットが締結したダンパハウジング組立体(サブアッセンブリ)50が形成され、このダンパハウジング組立体50の前・後のダンパブラケットが車体側前ブラケット31及び車体側後ブラケット32にそれぞれ溶接され、図2に示される状態に組立られる。
【0029】
図5は図4の5−5線断面図であり、図6は図4の6−6線断面図であり、図7は図5の7部拡大図であり、図8は図4の8−8線断面図である。
車体部品の締結構造20は、ダンパハウジング22の前の上締結部42廻りの構造であり、鉄素材で形成された連結部材(一方の部材)21と、アルミニウム素材で形成されたダンパハウジング(他方の部材)22と、連結部材21にかしめられたかしめナット74と、このかしめナット74にねじ込まれ、連結部材21にダンパハウジング22を締結するボルト81と、貫通孔57の廻りに且つ連結部材21(フランジ75面)に向けて形成された突出部57aとから構成される。
【0030】
かしめナット74は、かしめ状態で、連結部材21及びダンパハウジング22間、若しくはダンパハウジング22及び前・後ダンパブラケット46,47間に所定の隙間を設けるフランジ75と、このフランジ75の下面とで連結部材21若しくは前・後ダンパブラケット46,47(図3参照)にかしめ固定するかしめ部76と、ボルト81〜89と嵌合するボルト嵌合部77とが形成される。
なお、かしめナット74であれば閉断面内の座面が狭くても装着する(かしめる)ことできる。すなわち、細いパイプ材にも使用できる。
【0031】
さらに、かしめナット74は、表面に5〜10μの光沢クロメート(MFZn NiC)処理がされ、この光沢クロメート処理された処理面の上からアクリルシリコン系コーティング(関西ペイント社製 コスマーNC2100相当品)がされ、電食等を防止する不活性膜が形成されている。
【0032】
ボルト81〜89(図3参照)は、同一品であり、表面に、電食防止用コーティング(GEOMET 720PLUS処理 CACRAL社製相当)がなされている。
さらに、図7に示されたように、連結部材(一方の部材)21、ダンパハウジング(他方の部材)22、かしめナット74及びボルト81の締結後の外表面に、電着塗膜78が形成される。なお、他のボルト82〜89廻りも同時に電着塗膜78が形成されている。
かしめナット74には、フランジ75が形成されているので、連結部材21とダンパハウジング22との間には所定の隙間(フランジ75の高さ)S1が形成されるとともに、他方の部材(ダンパハウジング)22に突出部57aが形成されているので、突出部57aの高さS2が加算される。従って、一方の部材21と他方の部材22との間は、隙間(フランジ75の高さ)S1と突出部57aの高さS2との合計分の隙間S3が形成される。
【0033】
図8に示されるように、車体部品の締結構造30は、ダンパハウジング22の前の下締結部52廻りの構造であり、鉄素材で形成された前ダンパブラケット(一方の部材)46の第1取付面61と、アルミニウム素材で形成されたダンパハウジング(他方の部材)22の第1締結面66と、前ダンパブラケット46の第1取付面61にかしめられたかしめナット74と、このかしめナット74にねじ込まれ、前ダンパブラケット46にダンパハウジング22を締結するボルト84と、貫通孔71の廻りに且つ連結部材21(フランジ75面)に向けて形成された突出部71aとから構成されたものであり、車体部品の締結構造20(図5参照)に同一構成の構造である。
なお、ボルト85〜89の締結部分は、車体部品の締結構造30に同一構成の構造である。また、×印は溶接部を示す。
【0034】
すなわち、アルミニウム素材のダンパハウジング(構造部材;他方の部材)22と鉄素材の連結部材(構造部材;一方の部材)21とが直接接触することがない。
また、異種金属(異材)間(アルミニウム素材及び鉄素材)とが直接接触しておらず、最低限の隙間S1を設けているために、両部材21,22に化成工程において電着塗膜78をつけることができる。
【0035】
ダンパハウジング(アルミニウム素材の部材)22、連結部材(鉄素材の部材)21は、複数のかしめナット74と直接界面を有するが、かしめナット74側に適切な表面処理である電食等を防止する不活性膜を予め形成しているので、電食(錆)の問題は発生しない。結果として、防錆性能を確保でき、コスト負担と量産管理負担の大きい構造用接着剤等(構造用接着剤、若しくは構造用接着剤及びダストシーラー等の併用)を塗布しなくても防錆性能を確保することができる。
なお、室内等、錆に対する配慮の必要性が低い環境下で使用する場合は、電着塗装も不要となる。
【0036】
ところで、かしめナット74のフランジ75の厚みは、かしめナット74を製造する設備能力に依存しており、その設備能力から充分な厚みを確保できない場合がある。その様な場合においても、突出部57aを他方の部材22側に形成することで、ダンパハウジング22と連結部材21との隙間S3を調整(コントロール)することができる。
【0037】
これにより、図7に示されたように、化成工程においてダンパハウジング22と連結部材21との隙間S3にも、十分な電着塗膜78の厚さを確保できる。この結果、所定の防錆性能を確保することができる。すなわち、構造用接着材及びダストシーラが不要でありながら、十分な防錆性能を確保することができる。
【0038】
また、他方の部材(ダンパハウジング)22に突出部57aを形成することで、例えば、生産現場においては既製のかしめナット74と、フランジの厚さを厚く形成したかしめナット(類似品)を管理する必要も排除でき、生産現場が煩雑になるという不都合も生ずることはない。
【0039】
すなわち、図5〜図7に示されたように、車体部品の締結構造20では、材質が互いに異なる異種材料同士で形成された連結部材(一方の部材)21とダンパハウジング(他方の部材)22とをボルト81で締結する。
【0040】
一方の部材21にかしめナット74が固定され、このかしめナット74のフランジ75面に他方の部材22がボルト81で締結され、他方の部材22に、フランジ75面へ向けて突出する突出部57aを有するので、一方の部材21と他方の部材22との間に、フランジ75の厚み分と突出部57aの厚み分とを合計した隙間S3を形成することができる。従って、かしめナット74だけの場合よりも隙間S3を大きく設定することができるので、例えば、一方の部材21、他方の部材22、かしめナット74及びボルト81の締結後の外表面に、電着塗膜78を形成する場合には隙間S3部分にも確実に電着塗膜78を形成することができる。さらに、かしめナット74が、少なくとも一方の部材21及び他方の部材22に対して不活性な表面を有するので、構造用接着剤の使用を排除することができるとともに、異種金属間の接触で起きる電食を防止して錆の発生を抑制することができる。
【0041】
車体部品の締結構造20では、図7に示されたように、フランジ75のフランジ75高さS1と突出部57aの高さS2で形成される隙間S3が、充分な防錆性能を確保できる所定の電着塗膜78の厚さよりも大きく設定したので、隙間S3に良好な電着塗膜78を形成することができる。
【0042】
尚、本発明に係る車体部品の締結構造は、図3に示すように、ダンパハウジング22はアルミニウム素材で形成されたが、アルミニウム素材には、アルミニウム若しくはアルミニウム合金が含まれる。
【0043】
本発明に係る車体部品の締結構造は、図7に示すように、金属の種類は、鉄素材とアルミニウム素材との組合わせであったが、金属の種類は、鉄素材とアルミニウム素材の組合わせに限定されたものではない。例えば、アルミニウムとマグネシウム等の組合わせも考えられる。また、車体部品(車体の部材)のどの部位においても、この構造は有効である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る車体部品の締結構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る車体部品の結合構造を採用した車体フレームの斜視図である。
【図2】図1に示すダンパハウジング周りを車幅中央側から見た斜視図である。
【図3】図1に示すダンパハウジング周りの分解斜視図である。
【図4】図1に示す車体フレームのサブアッセンブリを示す斜視図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図5の7部拡大図である。
【図8】図4の8−8線断面図である。
【符号の説明】
【0046】
20,30…車体部品の締結構造、21…一方の部材(連結部材)、22…他方の部材(ダンパハウジング)、61…一方の部材(第1取付面)、66…他方の部材(第1締結面)、57a,71a…突出部、74…かしめナット、75…フランジ、78…電着塗膜、81,84…ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材質が互いに異なる異種材料同士で形成された一方の部材と他方の部材とをボルトで締結する車体部品の締結構造において、
前記一方の部材にかしめナットが固定され、このかしめナットのフランジ面に前記他方の部材が前記ボルトで締結され、
前記かしめナットは、少なくとも前記一方の部材及び前記他方の部材に対して不活性な表面を有するとともに、前記他方の部材は、前記フランジ面へ向けて突出する突出部を有することを特徴とする車体部品の締結構造。
【請求項2】
前記フランジのフランジ高さと前記突出部の高さで形成される隙間は、充分な防錆性能を確保できる電着塗膜厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1記載の車体部品の締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−112425(P2010−112425A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284174(P2008−284174)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】