説明

車体長手部材の補強構造

【課題】重量増加を抑制しつつ必要な補強強度が得られる補強構造を提供すること。
【解決手段】本発明は、車体長手部材の補強構造であって、細長い中空部が内部に形成された閉断面構造の車体長手部材と、中空部内に配置された軽合金製の細長い補強部材20とを備え、補強部材が、細長い板状部分22と、板状部分の両面から側方に延びる複数の三角形状のリブ部分24とを有し、補強部材は、三角形状のリブ部分の底辺が車体内方側に配置され板状部分の短辺が車体内方から外方に向かって延びるように配置され、補強板は、補強部材のリブ部分に沿って延びるように配置されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体長手部材の補強構造に関し、詳細には、細長い中空部が内部に形成された閉断面構造の車体長手部材の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のフレームは、フロントピラー、Bピラー、ルールサイドレール、サイトシル等の内部に細長い中空部が形成された閉断面構造の細長い部材(長手部材)を組み合わせることによって形成されている。
【0003】
これらの長手部材には、衝突等によって外部から応力が加わった際には、応力を吸収、あるいは分散等させて客室の変形を最小限に抑え、乗員の安全を図ることが求められている。このため長手部材は、用いられる場所によっては、内部の中空部に補強部材が取付けられた補強構造を有する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような補強構造としては、所謂「ハット」形状の断面を有する複数枚の金属製補強部材(レインフォースメント)を、長手部材を構成するアウタパネルとインナパネルの間に配置する構造が知られている。
【0005】
代表的な長手部材であるBピラーの横断面を図1に示す。この補強構造1では、アウタパネル2とインナパネル4の間に、アウタレインフォースメント6、ヒンジレインフォースメント8、インナレインフォースメント10が配置されている。この結果、この補強構造には、合計3枚の鋼製補強部材(レインフォースメント)がアウタパネル2とインナパネル4の間に配置されるので、溶接箇所が多く且つ重量を抑制できない問題がある。
【0006】
さらに、組み立てに際しては、図2に示されているように、アウタパネル2にアウタレインフォースメント6およびヒンジレインフォースメント8が取付けられたアウタサブアセンブリ12と、インナパネル4にインナレインフォースメント10が取り付けられたインナサブアッセンブリ14とが、矢印方向Aに接合されて溶接される。このとき、アウタサブアセンブリ12とインナサブアッセンブリ14は、図1にxで示されるようにフランジのみで溶接されるため、断面剛性が低くなるという問題もある。
【0007】
本発明は、文献公知発明に係る先行技術ではない上記従来技術に基づいてなされたものである。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、重量増加を抑制しつつ必要な補強強度が得られる補強構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
車体長手部材の補強構造であって、
細長い中空部が内部に形成された閉断面構造の車体長手部材と、
該中空部内に配置された軽合金製の細長い補強部材と、を備え、
該補強部材が、細長い板状部分と、該板状部分の両面から側方に延びる複数の三角形状のリブ部分とを有し、
前記補強部材は、前記三角形状のリブ部分の底辺が車体内方側に配置され前記板状部分の短辺が車体内方から外方に向かって延びるように配置され、
前記補強板は、前記補強部材のリブ部分に沿って延びるように配置されている、
ことを特徴とする補強構造が提供される。
【0010】
このような構成によれば、補強部材がアルミニウム合金等の軽合金で構成されているので、軽量化が達成される。
また、補強部材が、三角形状のリブ部分の底辺が車体内方側に配置され板状部分の短辺が車体内方から外方に向かって延びるように配置されるので、衝突時等に長手部材の外板等を介して補強部材に伝えられた車体外方からの力は、板状部分と、長手部材の内板側に向かって「末広がり状」に配置された三角形状のリブ部分とによって、長手部材の内板側に伝えられる。
したがって、衝突時等に長手部材の外板等を介して補強部材に伝えられた車体外方からの力を、分散させられながら、長手部材の内板側に伝えられることができ、長手部分の耐力が向上する。
【0011】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記三角形状のリブ部分が、前記板状部分に対し左右対称である。
このような構成によれば、衝突時等に長手部材の外板等を介して補強部材に伝えられた車体外方からの力を、効率的に分散させることができる。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記補強部材が、前記補強板に接着剤で固定されている。
このような構成によれば、溶接箇所を減少させることにより、製造工程を簡略化することができる。
【0013】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記補強板と前記長手部材との間に、該長手部材に連結された板状レインフォースメントが配置され、前記補強板が、前記板状レインフォースメントに発泡性接着剤で固定されている。
このような構成によれば、発泡性接着剤の圧縮剛性を利用して、衝突時等に長手部材から板状レインフォースメントを介して補強部材に伝えられた車体外方からの力を、効率的に分散、あるいは吸収することができる。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、補強板が鋼製である。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記閉断面構造体が、車両のBピラーであり、
前記補強部材が、前記Bピラー上部の横断面積が減少する部位に配置されている。
【発明の効果】
【0016】
このような構成によれば、重量増加を抑制しつつ必要な補強強度が得られる補強構造が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図3は、補強部材20の取付位置を示す図面であり、図4は、本発明の好ましい実施態様の補強構造で使用される補強部材20の斜視図である。
【0018】
図3に示されているように、本実施形態の細長い補強部材20は、細長い中空部が内部に形成された閉断面構造体である自動車の車体のBピラーP内の中空部に取付けられ、側方からの衝突による衝撃を吸収する等の機能を有する。
【0019】
図4に示されているように、補強部材20は、細長い板状部分22と、板状部分22の両面から側方に延びる4枚のリブ部分24とを有する細長い形状を有している。補強部材20は、軽合金で形成されている。本実施形態では、アルミニウム合金の鋳造あるいは切削加工で形成されている。
【0020】
リブ部分24は、二等辺三角形形状を有し、底辺24aの中点と頂角を結ぶ線で板状部分22に接続されている。したがって、本実施形態では、三角形状のリブ部分24が、板状部分22に対し左右対称に配置されている構成を備えている。
また、リブ部分24は、板状部分22の両端と、内方側2カ所に、板状部分22の長手方向軸線に沿って略等間隔に配置されている。
【0021】
補強部材20は、図3に示されているBピラーPの取付位置において、三角形状のリブ部分24の底辺24aが車体内方側に配置され板状部分22の短辺が車体内方から外方に向かって延びるように配置される。
また、補強部分20の左右方向の取付位置は、板状部分22がBピラーPの幅方向略中央に設定されている。
【0022】
図5は、本実施形態の補強構造が設けられたBピラーPの横断面図である。図5に示されているように、本実施形態の補強構造は、補強部材20の車体外方側部分(三角形状のリブ部分の頂角側部分)に配置された鋼製の補強板28を備えている。
【0023】
補強板28は、左右の両側縁にフランジ部28aを有し、前記補強部材20のリブ状部分24に沿って延びるハット状の断面形状を有する細長い板状部分である。
補強板28は、両側端のフランジ部分28aが、Bピラーインナ30の内面に溶接によって取付固定されるるともに、ハットの内周面が、補強部材20の上面すなわち板状部分22の頂面(上方側端面)とリブ状部分24の斜面に接着剤32で固定されている。
【0024】
補強板28と、BピラーPの車体外方側を構成するBピラーアウタ26との間には、板状レインフォースメントであるBピラーレインフォースメント34が配置されている。Bピラーレインフォースメント34は、断面形状が所謂ハット状であり、左右の両側縁にフランジ部34aを有している。
【0025】
Bピラーレインフォースメント34は、左右のフランジ部34aが、Bピラーアウタ26の左右のフランジ部26aとBピラーインナ30の左右のフランジ部30aとの間に溶接固定されることにより、BピラーPに固定されている。
さらに、補強板28のハットの頂面28bは、Bピラーレインフォースメント34のハットの頂面34bの裏面に、発泡性接着剤36で固定されている。
本実施形態では、発泡性接着剤36は、組み立て後の焼き付け塗装工程の熱によって発泡し接着作用を生じる、公知の発泡性接着剤が使用される。
【0026】
次に、補強部材20の取付位置について説明する。BピラーPの車幅方向の縦断面である図6に矢印Fで示されているような、衝突等によってBピラーPに車幅方向外方から車幅方向内方に向う力が加わると、BピラーPは内方に変形する。この際、図6にSで示さる断面形状が変化している部分は、応力が集中する高応力部位Hとなり、その周囲が低応力部位Lとなる。また、力は、車幅方向内方に向かう力であるから、BピラーPの車幅方向外方部位には圧縮応力が、車幅方向内方部位には引張応力が作用することになる。
本実施形態の補強部材20は、高応力部位Hに位置するようにBピラーL内に配置されている。
【0027】
このような衝突の際に、Bピラーアウタ26に、図7に矢印Fで示されるような力が作用すると、この力は、矢印F1ないし3で示されるようにBピラーアウタ26、補強板28、補強部材20の板状部分にそれぞれ伝えられる。
【0028】
板状部分22の幅方向に伝わる力F2によって、リブ状部分24で外方に向かう反力F4が生じるため、補強部材の内倒れ、さらに補強板の壁崩れが抑制される。このため、衝突時に、BピラーPを所定厚に維持できる。
さらに、三角形状のリブ状部分24が、Bピラーインナ28に向かって「末広がり状」に配置されているので、リブ状部分24に伝わった力が幅方向に分散される。
この結果、本実施形態の補強構造では、衝突等によって加わる力に対する耐力が大きなる。
【0029】
又、本実施形態は、補強部材20がアルミニウム合金で形成されているので、必要な耐力を確保しつつ重量の増加を抑制することができる。さらに、接着剤が多用されるので、スポット溶接箇所を減少させることもできる。
【0030】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更が可能である。
【0031】
上記実施形態では、リブ状部分24が、板状部分22に対して左右対称であったが、千鳥状に左右交互に配置されたものでもよい。また、リブ状部分の数も4枚に限定されるものではない。
【0032】
さらに、上記実施形態では、補強部材20がアルミ合金製であったが、補強部材を他の軽合金で構成してもよい。
【0033】
上記実施形態は、本発明の補強構造をBピラーに適用した例であったが、本発明は、Bピラーに限定されるものではなく、他の閉断面構造の長手部材、例えば、ルーフサイドレール、フロントピラー、サイドシル等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来技術の補強構造を有するBピラーの横断図である。
【図2】図1のBピラーの組み立てを説明する図面である。
【図3】本発明の好ましい実施形態の補強構造における補強部材の取付位置を示す図面である。
【図4】本発明の好ましい実施形態の補強構造で使用される補強部材の斜視図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態の補強構造が設けられたBピラーの横断面図である。
【図6】Bピラーの車幅方向の縦断面である。
【図7】本発明の好ましい実施形態の補強構造の衝突時等における力の伝達を説明するための図面である。
【符号の説明】
【0035】
20:補強部材
22:板状部分
24:リブ部分
26:Bピラーアウタ
28:補強板
30:Bピラーインナ
32:構造用接着剤
34:Bピラーレインフォースメント
36:発泡性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体長手部材の補強構造であって、
細長い中空部が内部に形成された閉断面構造の車体長手部材と、
該中空部内に配置された軽合金製の細長い補強部材と、を備え、
該補強部材が、細長い板状部分と、該板状部分の両面から側方に延びる複数の三角形状のリブ部分とを有し、
前記補強部材は、前記三角形状のリブ部分の底辺が車体内方側に配置され前記板状部分の短辺が車体内方から外方に向かって延びるように配置され、
前記補強板は、前記補強部材のリブ部分に沿って延びるように配置されている、
ことを特徴とする補強構造。
【請求項2】
前記三角形状のリブ部分が、前記板状部分に対し左右対称である、
請求項1に記載の補強構造。
【請求項3】
前記補強部材が、前記補強板に接着剤で固定されている、
請求項1または2に記載の補強構造。
【請求項4】
前記補強板と前記長手部材との間に、該長手部材に連結された板状レインフォースメントが配置され、
前記補強板が、前記板状レインフォースメントに発泡性接着剤で固定されている、
請求項1ないし3の何れか1項に記載の補強構造。
【請求項5】
前記補強板が、鋼製である、
請求項1ないし4の何れか1項に記載の補強構造。
【請求項6】
前記閉断面構造体が、車両のBピラーであり、
前記補強部材が、前記Bピラー上部の横断面積が減少する部位に配置されている、
請求項1ないし5の何れか1項に記載の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−64505(P2010−64505A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229811(P2008−229811)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(508036075)ゼフィロス インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】