説明

車体開口部の開閉構造

【課題】車体開口部と該車体開口部を閉止している蓋体との隙間から車体内部を見え難くすることができる車体開口部の開閉構造を得る。
【解決手段】車体開口部の開閉構造10は、エンジンルーム12の前縁を成すバンパカバー16に設けられ、エンジンルーム12と該エンジンルーム12閉止する閉止位置に位置するエンジンフード14との見切り隙Gを、エンジンルーム12内側から覆う被覆姿勢をとり得るカバー部24を備える。カバー部24は、被覆姿勢から姿勢変化することで、エンジンフード14が閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入することを許容する許容姿勢をとり得、エンジンフード14が閉止位置に復帰する際には、マグネット26がエンジンフード14の前端14Aに吸着されることで、許容姿勢から被覆姿勢に姿勢変化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジンフードにて開閉されるエンジンルーム等、蓋体による車体開口部の閉止状態で見切り部が形成される車体開口部の開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルームをエンジンフードにて閉止する際に、エンジンフードが閉止位置を超えて車体内方に変位する動作に伴ってエンジンルームの前縁を成すバンパカバーを車両前方に移動させ、エンジンフードがエンジンルームの閉止位置に戻るとバンパカバーを正規の位置に復原させる構成を採用することで、エンジンルームの開口縁とエンジンフードとの見切り隙を小さくする技術が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−111165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記技術を含む従来の構造では、エンジンフードの車体内方側に該エンジンフードが閉止位置を超えて移動することを許容する空間が必要であるため、見切り隙を通じてエンジンルーム内が見えてしまう。
【0004】
本発明は、車体開口部と該車体開口部を閉止している蓋体との隙間から車体内部を見え難くすることができる車体開口部の開閉構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る車体開口部の開閉構造は、車体開口部に対し開口面に交差する方向に接離することで、前記開口部を開放する開放位置と、外縁を前記開口部の開口縁の内側に位置させて該開口部を閉止する閉止位置とをとり得る蓋体と、前記車体開口部の縁部に設けられ、前記蓋体が前記閉止位置を超えて前記開放位置とは反対側に移動することを許容する許容姿勢と、前記閉止位置に位置する前記蓋体と前記車体開口部の縁部との間に形成される隙を車体内方から覆う被覆姿勢とをとり得るカバー部と、前記蓋体が前記閉止位置に対する前記開放位置とは反対側の位置から前記閉止位置に戻る際に、前記カバー部を前記許容姿勢から前記被覆姿勢にするカバー作動手段と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車体開口部の開閉構造では、蓋体が車体開口部の開口面に対し交差する方向に接離(例えば、所定の開動軸周りの回動)することで、該蓋体が車体開口部を開閉する。閉止位置に位置する蓋体は、その外縁を開口部の内縁の内側に位置させており(開口面に略垂直な方向から見て蓋体の外縁が開口部の内縁の内側に入り込んでいれば足り、蓋体が全体として開口部の内縁を規定する壁部等の内側に入り込まなくても良い)、車体の開口縁と蓋体との間には所謂見切り部としての隙(以下、「見切り隙」という)が形成される。
【0007】
開放されている車体開口部を閉止する際には、蓋体を開放位置から閉止位置に移動させる。この移動に伴って、蓋体は、一時的に閉止位置を超えて開放位置とは反対側(車体内方)まで移動し、その後、閉止位置に復帰して車対開口部を閉止する。この際、車体開口部の縁部に設けられたカバー部は、許容姿勢をとることで蓋体の一時的な車体内方への移動を許容し、蓋体が閉止位置に復帰されるとカバー作動手段によって被覆姿勢とされる。
【0008】
ここで、本車体開口部の開閉構造では、被覆姿勢をとるカバー部は、車体開口部と蓋体との見切り隙を車体内方から覆うため、該見切り隙から車体内部が見え難い。また、上記の通り、カバー部は、姿勢変化可能であるため、見切り隙を車体内方から覆う構成でありながら、蓋体による車体開口部の閉止動作を阻害することがない。
【0009】
このように、請求項1記載の車体開口部の開閉構造では、車体開口部と該車体開口部を閉止している蓋体との隙間から車体内部を見え難くすることができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係る車体開口部の開閉構造は、請求項1記載の車体開口部の開閉構造において、前記カバー部は、前記被覆姿勢において前記蓋体の車体内側の面に接触する。
【0011】
請求項2記載の車体開口部の開閉構造では、被覆姿勢をとるカバー部は、蓋体の車体内側の面に接触しつつ上記見切り隙を車体内方から覆うため、該見切り隙から車体内部が一層見え難い。
【0012】
請求項3記載の発明に係る車体開口部の開閉構造は、請求項1又は請求項2記載の車体開口部の開閉構造において、前記カバー作動手段は、前記蓋体及び前記カバー部の何れか一方に設けられた永久磁石と、前記蓋体及び前記カバー部の他方に設けられ前記永久磁石によって吸着可能な磁性体とを含んで構成されている。
【0013】
請求項3記載の車体開口部の開閉構造では、蓋体が閉止位置を超えた車体内方から閉止位置に復帰する際、磁性体が永久磁石に吸着されることで、カバー部が被覆位置に移動されると共に該被覆位置で保持される。磁性体は、永久磁石であっても良い。
【0014】
請求項4記載の発明に係る車体開口部の開閉構造は、請求項1又は請求項2記載の車体開口部の開閉構造において、前記カバー作動手段は、少なくとも前記許容姿勢をとる前記カバー部に対し、前記被覆姿勢に姿勢変化する側への付勢力を付与する弾性構造である。
【0015】
請求項4記載の車体開口部の開閉構造では、蓋体が閉止位置を超えた車体内方から閉止位置に復帰する際、弾性構造の付勢力によってカバー部が被覆位置に移動されると共に該被覆位置で保持される。弾性構造は、カバー部とは別部材の付勢部材としても良く、カバー部に一体に形成された弾性変形部とされても良く、カバー部自体に弾性を持たせて構成されても良い。
【0016】
請求項5記載の発明に係る車体開口部の開閉構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車体開口部の開閉構造において、前記蓋体は、車両後端側で車幅方向に沿った軸線廻りに回転可能に支持され、フロントバンパが前縁を形成する車体開口部を開閉するためのフード部材であり、前記カバー部は、前記フロントバンパにおける前記車体開口部の前縁を形成する部分に、車両後端側が車両上下方向に移動される方向に姿勢変化可能に設けられている。
【0017】
請求項5記載の車体開口部の開閉構造では、フード部材を車両後端側において車幅方向に沿った軸線廻りに回転させることで、車体開口部が開閉される。この回転軸から遠い車両前端側では、フード部材とフロントバンパとの見切り隙が他の部分の見切り隙よりも大きく設定される場合がある。ここで、本車体開口部の開閉構造では、上記の如く見切り隙を車体内方から覆うカバー部が設けられているため、仮にフード部材とフロントバンパとの見切り隙が大きく設定されても、該見切り隙から車体内部が見え難い。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明に係る車体開口部の開閉構造は、車体開口部と該車体開口部を閉止している蓋体との隙間から車体内部を見え難くすることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係る車体開口部の開閉構造10について、図1〜図2に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印Wは、車体開口部の開閉構造10が適用された自動車Aの前方向(進行方向)、上方向、車幅方向をそれぞれ示している。
【0020】
図2には、車体開口部の開閉構造10が適用された自動車Aの前部が斜視図にて示されており、図1(A)には、図の1A−1A線に沿った側断面図が示されている。これらの図に示される如く、自動車Aの前部には、車体開口部としてのエンジンルーム(エンジンコンパートメントとも言う)12が設けられている。エンジンルーム12は、その車両上向きの開口端が、本発明における蓋体、フード部材としてのエンジンフード14にて開閉されるようになっている。以下の説明では、単にエンジンルーム12がエンジンフード14によって開閉される等ということとする。
【0021】
図1に示される如く、エンジンフード14は、アウタパネル14Oとインナパネル14Iとが周縁部においてヘミング加工等によって接合されることで、車両上下方向に偏平な中空板状体として形成されている。この実施形態におけるエンジンフード14は、その車両後端側における車幅方向両端部が図示しないフードヒンジを介して車体に支持されており、該フードヒンジの車幅方向に沿った軸線廻りに回転することで、エンジンルーム12を開閉するようになっている。
【0022】
すなわち、エンジンフード14は、フードヒンジの回転軸線廻りに回転することで、エンジンルーム12を開放する開放位置(図示省略)と、エンジンルーム12を閉止する閉止位置(図2参照)とをとり得る構成とされている。また、エンジンフード14は、開放位置から閉止位置に移動されると、車体に設けられた図示しない合成ゴム製のフードストッパに突き当たる構成とされている。このため、エンジンフード14は、フードストッパを変形させつつ、図1(B)に実線にて示される如く閉止位置(図1(B)の想像線参照)を超えてエンジンルーム12の内方に移動された後、フードストッパの復元力で閉止位置に復帰するようになっている。
【0023】
閉止位置をとるエンジンフード14は、その外縁をエンジンルーム12の開口縁の内側に入り込ませるようになっている。このため、図2に示される如く、エンジンフード14の外縁と、エンジンルーム12の開口縁との間には、見切り隙G(図1(A)参照)が設定された見切り部Pが形成されている。
【0024】
そして、見切り部Pのうち、エンジンフード14におけるフードヒンジによる支持軸から最も離間して位置する前端14Aと、エンジンルーム12の前縁を規定するバンパカバー16の上端16Aとの間の前側見切り部Pfでは、他の部分に対し見切り隙Gが大きく(広く)設定されている。
【0025】
バンパカバー16について補足すると、バンパカバー16は、図示しないバンパリインフォースメントを車両前側から覆っており、該バンパリインフォースメントとでフロントバンパ18を構成している。また、この実施形態では、バンパカバー16は、例えば発泡材等によって形成されたバンパカバー本体200と、該バンパカバー本体200の外表面を覆い意匠面を成す表皮22とを含んで構成されている。
【0026】
そして、図1に示される如く、車体開口部の開閉構造10は、バンパカバー16の上端16Aから車両後方側に張り出されたカバー部24を備えている。この実施形態におけるカバー部24は、表皮22を延設して構成されており、少なくともバンパカバー本体200への固定部分との境界部24Aを起点に、車両後端側を上下方向に移動する方向に変形(撓み、姿勢変化)可能な構成とされている。
【0027】
この変形によってカバー部24は、図1(A)に示される如く前側見切り部Pfの見切り隙Gをエンジンルーム12の内部側から覆う被覆姿勢と、図1(B)に示される如くエンジンフード14が閉止位置を超えてエンジンルーム12の内方に侵入することを許容する許容姿勢とをとり得る構成とされている。図示は省略するが、カバー部24は、エンジンルーム12の前縁を成すバンパカバー16の上端16Aの車幅方向に沿った略全長に亘って設けられており、被覆姿勢においては前側見切り部Pfを略全長に亘りエンジンルーム12の内側から覆う構成とされている。
【0028】
また、車体開口部の開閉構造10は、カバー作動手段としてのマグネット26を備えている。マグネット26は、カバー部24を構成する表皮22にて被覆されており、エンジンフード14における磁性体より成るアウタパネル14O又はインナパネル14I(ヘミング可能による接合部)磁力によって吸着可能とされている。
【0029】
これにより、車体開口部の開閉構造10では、エンジンフード14が閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入した位置から閉止位置に復帰する際に、カバー部24がマグネット26の磁力によってエンジンフード14の前端14Aに吸着保持されるようになっている。なお、マグネット26は、カバー部24の長手方向(車幅方向)に沿って、連続的に1つ又は断続的に複数設けられている。
【0030】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0031】
上記構成の車体開口部の開閉構造10が適用された自動車Aでは、エンジンルーム12を開放する際には、エンジンフード14ロックを解除して該エンジンフード14の前端14Aを車両上方に持ち上げる。すると、マグネット26の磁力によるカバー部24のエンジンフード14の前端14Aへの吸着が解消される。そして、エンジンフード14が開放位置で保持されると、エンジンルーム12内の部品のメンテナンスや消耗品の補充等が可能になる。
【0032】
一方、開放されているエンジンルーム12を閉止する際には、例えば人手や重力によって前端14Aを車両下方に移動させる。すると、エンジンフード14はフードストッパに当接し、該フードストッパを圧縮変形させつつ閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入し、その後、フードストッパの復元力にて閉止位置に復帰される。
【0033】
ここで、車体開口部の開閉構造10では、カバー部24が許容姿勢をとり得るため、該カバー部24は、許容姿勢をとることで、エンジンフード14が閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入することを許容する。この実施形態では、カバー部24は、エンジンフード14が開放位置に位置する状態で、マグネット26の重みで許容姿勢に姿勢変化(変形)されるか、又は閉止位置を通過するエンジンフード14に接触して許容姿勢に姿勢変化されるかすることで、エンジンフード14が閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入することを許容する。
【0034】
そして、車体開口部の開閉構造10では、エンジンフード14が閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入した状態から閉止位置に復帰する際に、マグネット26の磁力によってカバー部24がエンジンフード14の前端14Aに吸着されて被覆姿勢に姿勢変化され、エンジンフード14が閉止位置に位置する状態でカバー部24は被覆姿勢に維持される。
【0035】
この状態では、カバー部24が前側見切り部Pfの見切り隙Gをエンジンルーム12内側から覆うため、該見切り隙Gからエンジンルーム12の内部が見え難い。しかも、車体開口部の開閉構造10では、カバー部24がエンジンフード14の前端14Aに接触しつつ前側見切り部Pfの見切り隙Gをエンジンルーム12内側から覆うため、該見切り隙Gからエンジンルーム12の内部が一層見え難い。
【0036】
このため、車体開口部の開閉構造10が適用された自動車Aでは、前側見切り部Pfからエンジンルーム12内が見え難く、見栄えが良好である。
【0037】
例えば図8に示される比較例に係る車体開口部の開閉構造100では、エンジンフード14が閉止位置を超えてエンジンルーム12内側に移動することを許容するために、バンパカバー16の上端16Aから前側見切り部Pfの下方に延設された上壁102と、閉止位置に位置するエンジンフード14の前端14Aとの間には、車両上下方向の寸法が大きい空間Rが形成されることとなる。したがって、車体開口部の開閉構造100では、前側見切り部Pfの見切り隙Gを通じて外部から空間Rが見えてしまい、見栄えが悪い。特に、見切り部Pfの見切り隙Gは、大型部品であるエンジンフード14の寸法や形状のばらつきを吸収し、かつエンジンフード14強閉時の閉止位置を超える動きを吸収するために、比較的大きく設定する必要があり、該見切り隙Gからエンジンルーム12内が一層見えやすく見栄えが一層悪くなる。
【0038】
これに対して車体開口部の開閉構造10では、閉止位置をとるエンジンフード14の前端14Aとバンパカバー16の上端16Aとの見切り隙Gをエンジンルーム12内から覆うカバー部24を設けることで、見切り隙Gが比較的大きく設定されても、該見切り隙Gからエンジンルーム12内が見え難く、比較例においては見栄えの悪くなりやすい前側見切り部Pfにおいて良好な見栄えを得ることができる。
【0039】
このように、第1の実施形態に係る車体開口部の開閉構造10では、エンジンルーム12の前縁を成すバンパカバー16の上端16Aと、エンジンルーム12を閉止しているエンジンフード14との見切り隙Gからエンジンルーム12内部を見え難くすることができる。
【0040】
また、カバー部24は、姿勢変化して許容位置をとり得るので、エンジンフード14によるエンジンルーム12の閉止動作がカバー部24によって阻害されることがない。さらに、カバー部24は、姿勢変化して許容位置をとり得るので、エンジンフード14の開閉動作に伴って該エンジンフード14がカバー部24によって傷つけられ難い。
【0041】
またさらに、車体開口部の開閉構造10では、バンパカバー16を可動構造とする必要がないので、バンパカバー16とエンジンフード14との相対位置(精度)が確保され、バンパカバー16からエンジンフード14にかけての外形ライン(意匠面)が崩れることもない。
【0042】
なお、第1の実施形態では、カバー部24が表皮22にてマグネット26を被覆して構成された例を示したが、例えば、カバー部24に代えて、図3に示される如く、表皮22の延設部分にマグネット26を固定することで構成されたカバー部30を備えた構成としても良い。本変形例では、マグネット26は、カバー部30の長手方向(車幅方向)に連続的に1つ又は断続的に複数設けられている。
【0043】
また、第1の実施形態及びその変形例では、エンジンフード14のアウタパネル14O及びインナパネル14Iの少なくとも一方が磁性体より成る例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、樹脂等の非磁性体より成るエンジンフード14にマグネット26にて吸着可能な磁性体を取り付けた構成としても良い。また、マグネット26をエンジンフード14側に設け、該マグネット26にて吸着可能な磁性体をカバー部24、30に設けた構成としても良い。上記各磁性体には、マグネット26と吸着するように配置されたマグネットが含まれる。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態について図6に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
(第2の実施形態)
図4(A)には、第2の実施形態に係る車体開口部の開閉構造40が図1(A)に対応する側断面図にて示されており、図4(B)には車体開口部の開閉構造40が図1(B)に対応する側断面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体開口部の開閉構造40は、カバー作動手段としてスプリング部42を備える点で、マグネット26の磁力にてカバー部24を被覆姿勢に姿勢変化させる車体開口部の開閉構造10とは異なる。以下、具体的に説明する。
【0046】
車体開口部の開閉構造40を構成するカバー部44は、バンパカバー16のバンパカバー本体200に一体に形成されており、カバー部44におけるバンパカバー16との境界部分にはスプリング部42が設けられている。この実施形態では、スプリング部42は、車両前後方における部分的な薄肉部としてバンパカバー16に一体に形成された低剛性部として捉えることができる。カバー部44は、スプリング部42における弾性的な曲げ変形によって、図4(A)に示す被覆姿勢と、図4(B)に示す許容姿勢とをとり得る構成とされている。
【0047】
また、車体開口部の開閉構造40では、被覆姿勢をとるカバー部44は、図4(A)に示される如く、エンジンフード14の前端14Aに対し非接触で極近接する構成とされている。この実施形態では、被覆姿勢をとるカバー部44は、バンパカバー16がエンジンフード14とで滑らかな外形ライン(意匠面)を形成するように、バンパカバー16の上端16Aから段状に凹まされて形成されている。また、この実施形態では、スプリング部42を薄肉部として構成する切欠き部16Bは、上記段状を成す2つの角部16C、16Dのうち、カバー部44の基端と成る角部16Dにエンジンルーム12側に開口するように形成されている。
【0048】
なお、図4では、バンパカバー16が表皮22を有しない構成が図示されているが、表皮22を有する構成としても良い。車体開口部の開閉構造40の他の構成は、図示しない部分を含め車体開口部の開閉構造10の対応する構成と同じである。
【0049】
車体開口部の開閉構造40の作用における車体開口部の開閉構造10の作用と異なる部分を説明する。
【0050】
開放されているエンジンルーム12を閉止する際に車両下方に移動されるエンジンフード14は、フードストッパを圧縮変形させつつ閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入し、その後、フードストッパの復元力にて閉止位置に復帰される。カバー部44は、閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入するエンジンフード14によって押圧されつつ、スプリング部42において弾性的に変形される。この変形に伴う姿勢変化によりカバー部44は許容姿勢をとり、エンジンフード14が閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入することを許容する。
【0051】
一方、車体開口部の開閉構造10では、エンジンフード14が閉止位置を超えてエンジンルーム12内に進入した状態から閉止位置に復帰する際に、カバー部44はスプリング部42の復原力によって被覆姿勢に復帰する。また、無負荷のカバー部44は、そのスプリング部42の剛性によって被覆姿勢に維持される。
【0052】
このように、車体開口部の開閉構造40は、マグネット26の磁力に代えてスプリング部42の弾性力(復元力)によってカバー部44を許容姿勢から被覆姿勢に姿勢変化させる点において主に車体開口部の開閉構造10とは異なるが、カバー部44を許容姿勢から被覆姿勢に姿勢変化させる作用(機能)において共通する。
【0053】
したがって、第2の実施形態に係る車体開口部の開閉構造40によっても、基本的に第1の実施形態に係る車体開口部の開閉構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、この車体開口部の開閉構造40では、エンジンフード14を樹脂等の非磁性体にて構成して軽量化を図ることができる。
【0054】
なお、第2の実施形態では、角部16Dにエンジンルーム12側を向く切欠き42Aを形成することで、薄肉部としてのスプリング部42が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図5(A)〜図5(C)に示される変形例の如く構成しても良い。
【0055】
図5(A)に示す第1変形例では、バンパカバー16の角部16Dに、エンジンルーム12の外側を向くように開口された切欠き部16Eを形成することで、スプリング部42が構成されている。図5(B)に係る第2変形例では、バンパカバー16の角部16Cに、エンジンルーム12側を向いて開口された切欠き部16Fを形成することで、スプリング部42が構成されている。図5(C)に係る第3変形例では、バンパカバー16の角部16Dに、エンジンルーム12側を向いて開口された湾曲部16Gを形成することで、スプリング部42が構成されている。この第3変形例は、上記の各構成と比較してスプリング部42を厚肉に形成しつつばね生を確保することができる。このため、例えば、材料等の制約により凹部を設けた構成ではバンパカバー16のバンパカバー本体200が割れ(折れ)やすい場合に、第3変形例の構成採用することで、カバー部44が許容姿勢と被覆姿勢との間で姿勢変化(変形)可能な状態を確保することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
図6(A)には、第3の実施形態に係る車体開口部の開閉構造50が図1(A)に対応する側断面図にて示されており、図6(B)には車体開口部の開閉構造50が図1(B)に対応する側断面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体開口部の開閉構造50は、被覆姿勢をとるカバー部44がエンジンフード14の前端14Aに接触する点で、第2の実施形態に係る車体開口部の開閉構造40とは異なる。以下、具体的に説明する。
【0057】
車体開口部の開閉構造50では、バンパカバー16におけるカバー部44の基端部にスプリング部52が形成されている。そして、図6(A)に示される如く、被覆姿勢をとるカバー部44は、スプリング部52の付勢力によってエンジンフード14の前端14Aに密着されるようになっている。一方、カバー部44は、エンジンフード14からの荷重が抜けた状態では、スプリング部52が自由状態に復原されることで、図6(B)に実線にて示される如く、エンジンルーム12の外側に突出するように変形(姿勢変化)される構成である。したがって、車体開口部の開閉構造50におけるカバー部44は、被覆姿勢、許容姿勢に加えて、図6(B)に示される突出姿勢をとりうる構成とされている。
【0058】
なお、カバー部44の許容姿勢は、車体開口部の開閉構造40を構成するカバー部44の許容姿勢(図4(B)の実線参照)と基本的に同じであるため、図示及び説明を省略する。車体開口部の開閉構造50の他の構成は、図示しない部分を含め車体開口部の開閉構造40の対応する構成と同じである。
【0059】
したがって、第3の実施形態に係る車体開口部の開閉構造50によっても、基本的に第2の実施形態に係る車体開口部の開閉構造40(第1の実施形態に係る車体開口部の開閉構造10)と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車体開口部の開閉構造50では、被覆姿勢をとるカバー部44がスプリング部52の付勢力でエンジンフード14の前端14Aに密着されつつ前側見切り部Pfの見切り隙Gをエンジンルーム12内側から覆うため、該見切り隙Gからエンジンルーム12の内部が一層見え難い。
【0060】
なお、第3の実施形態では、エンジンフード14が開放位置から閉止位置に移動する際に前端14Aがカバー部44の車両後端(自由端)に当接する例を示したが、例えば、図7(A)及び図7(B)に示される変形例に係る構成としても良い。この変形例に係るカバー部54は、図7(B)に示される如くエンジンフード14が開放位置から閉止位置に移動する際に前端14Aが面接触する第1当接面54Aと、図7(A)に示される如く閉止位置に位置する前端14Aが面接触する第2当接面54Bとを有する。本変形例では、エンジンフード14の開閉動作に伴いカバー部54に作用する応力を緩和することができる。
【0061】
なお、上記した各実施形態では、エンジンルーム12とエンジンフード14との見切り部Pのうち、前側見切り部Pfにカバー部24、30、44、54が設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、エンジンルーム12の左右側縁とエンジンフード14の幅方向側縁との間に形成される横見切り部Ps(図1参照)にカバー部24、30、44、54を設けた構成しても良い。
【0062】
また、上記した各実施形態では、エンジンルーム12がエンジンフード14によって開閉される例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、車体開口部としてのハッチバックゲートが蓋体としての上ヒンジのリアドアによって開閉される部分に、本発明を適用しても良い。
【0063】
さらに、本発明は、上記各実施形態や変形例には限定されず、各種変更して実施可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体開口部の開閉構造を示す図であって、(A)は図2の1A−1A線に沿った側断面図、(B)はエンジンフードの閉止動作を説明するための側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車体開口部の開閉構造が適用された自動車の前部を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例に係る車体開口部の開閉構造を示す、図1(A)に対応する側断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る車体開口部の開閉構造を示す図であって、(A)はエンジンルーム閉止状態の側断面図、(B)はエンジンフードの閉止動作を説明するための側断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の変形例に係る車体開口部の開閉構造を示す図であって、(A)は第1変形例の側断面図、(B)は第2変形例の側断面図、(C)は第3変形例の側断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る車体開口部の開閉構造を示す図であって、(A)はエンジンルーム閉止状態の側断面図、(B)はエンジンフードの閉止動作を説明するための側断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の変形例に係る車体開口部の開閉構造を示す図であって、(A)はエンジンルーム閉止状態の側断面図、(B)はエンジンフードの閉止動作を説明するための側断面図である。
【図8】本発明の実施形態との比較例に係る車体開口部の開閉構造を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 車体開口部の開閉構造
12 エンジンルーム(車体開口部)
14 エンジンフード(蓋体、フード部材、磁性体)
16 バンパカバー(車体開口部の縁部)
18 フロントバンパ
24 カバー部
26 マグネット(カバー作動手段)
30・44・54 カバー部
40・50 車体開口部の開閉構造
42・52 スプリング部(カバー作動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体開口部に対し開口面に交差する方向に接離することで、前記開口部を開放する開放位置と、外縁を前記開口部の開口縁の内側に位置させて該開口部を閉止する閉止位置とをとり得る蓋体と、
前記車体開口部の縁部に設けられ、前記蓋体が前記閉止位置を超えて前記開放位置とは反対側に移動することを許容する許容姿勢と、前記閉止位置に位置する前記蓋体と前記車体開口部の縁部との間に形成される隙を車体内方から覆う被覆姿勢とをとり得るカバー部と、
前記蓋体が前記閉止位置に対する前記開放位置とは反対側の位置から前記閉止位置に戻る際に、前記カバー部を前記許容姿勢から前記被覆姿勢にするカバー作動手段と、
を備えた車体開口部の開閉構造。
【請求項2】
前記カバー部は、前記被覆姿勢において前記蓋体の車体内側の面に接触する請求項1記載の車体開口部の開閉構造。
【請求項3】
前記カバー作動手段は、前記蓋体及び前記カバー部の何れか一方に設けられた永久磁石と、前記蓋体及び前記カバー部の他方に設けられ前記永久磁石によって吸着可能な磁性体とを含んで構成されている請求項1又は請求項2記載の車体開口部の開閉構造。
【請求項4】
前記カバー作動手段は、少なくとも前記許容姿勢をとる前記カバー部に対し、前記被覆姿勢に姿勢変化する側への付勢力を付与する弾性構造である請求項1又は請求項2記載の車体開口部の開閉構造。
【請求項5】
前記蓋体は、車両後端側で車幅方向に沿った軸線廻りに回転可能に支持され、フロントバンパが前縁を形成する前記車体開口部を開閉するためのフード部材であり、
前記カバー部は、前記フロントバンパにおける前記車体開口部の前縁を形成する部分に、車両後端側が車両上下方向に移動される方向に姿勢変化可能に設けられている請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車体開口部の開閉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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