説明

車体防護用フィルムシート

【課題】コストの削減を図り、且つ位置決めを正確に行うことが可能な車体防護用フィルムシートを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の構成は、プロテクタフィルム110を含む車体防護用フィルムシート100において、プロテクタフィルムの、裏面110bを被覆して保護する離型紙120と、表面110aを被覆してプロテクタフィルムおよび離型紙の支持体となるアプリケーションフィルム(アプリケーション130)とをさらに含み、離型紙には、プロテクタフィルムを被覆する被覆領域120aに、車体102のキャラクタライン106bに重ねられ領域を分割する第2スリット124が形成されていて、離型紙およびアプリケーションフィルムの少なくとも一方には、プロテクタフィルムを被覆しない非被覆領域120dまたは130bに、車体の所定箇所に位置合わせされる目印部160が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に塗装された塗膜の剥離を防ぐプロテクタフィルムを含む車体防護用フィルムシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体の外装部材には、意匠性や防錆性を高めるために、塗装によって塗膜が形成されている。しかしながら、車体下方すなわち路面に近い部位では、走行時に巻き上げられた砂利等が衝突しやすいため塗膜が損傷を受けることがある(チッピング)。そこで、従来から、チッピングを受けやすいホイールハウス等には、塗膜ひいては車体を保護するフィルム状のチッピングプロテクタ(以下、プロテクタフィルムと称する。)が貼付されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−214475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体に貼付される前のプロテクタフィルムは、その裏面(貼付面)が離型紙によって被覆されて保護されている。一方、その裏面の反対側の面である表面(露出面)は、プロテクタフィルムや離型紙を支持するアプリケーションフィルムによって被覆されることがある。以下、離型紙やアプリケーションフィルムによって被覆された状態の、車体に貼付される前のプロテクタフィルムを車体防護用フィルムシートと称する。
【0005】
車体防護用フィルムシートの製造方法について簡略に説明すると、まず、プロテクタフィルムの構成材料からなるフィルム状の母材と、かかる母材の裏面を被覆する離型紙とからなる投入材から、プロテクタフィルムより大きめの形状で、母材および離型紙が切り抜かれる。ここで、プロテクタフィルムより大きめの形状とするのは、実際にはプロテクタフィルムとならない領域を、車体への貼付作業時の把持部として利用するためである。続いて、切り抜かれた構成材料および離型紙のうち、プロテクタフィルムとなる領域の輪郭近傍の構成材料を取り除く。そして、構成材料(プロテクタフィルム)の表面に必要に応じてアプリケーションフィルムを貼付することにより、車体防護用フィルムシートが完成する。
【0006】
ところで、プロテクタフィルムは一般に手作業で貼られるため、正しい位置に確実に貼り付けるには車体への位置決めにおいて正確性が重要となる。そこで、従来の車体防護用フィルムシートでは、貼付作業時の目印を複数設け、その複数の目印と車体とを位置合わせすることにより、プロテクタフィルムの位置決めを行っていた。
【0007】
車体防護用フィルムシートにおいて、貼付作業時の目印は、プロテクタフィルムとなる領域およびその領域の輪郭近傍よりも更に外側の領域、換言すれば、プロテクタフィルムではなく把持部となる領域(以下、把持部領域と称する)に形成される。これは、プロテクタフィルムとなる領域内に目印を形成すると、目印形成時の加工によってプロテクタフィルムに跡が残るため、貼付後の車体においてその跡があたかも傷のように見えて外観不良が生じるおそれがあるからである。
【0008】
しかし、近年、車体コストの削減が求められていて、それを達成するために、車体防護用フィルムシートにおいては、プロテクタフィルムとならない領域である把持部領域をできる限り狭めることが、歩留まりの向上ひいてはコストの削減に有効であると考えられた。しかしながら、把持部領域を単に狭めると、目印を設ける領域がなくなってしまうため目印の数が減ってしまい、プロテクタフィルムの位置決めに支障が生じることが懸念された。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、プロテクタフィルムとならない領域を狭めてコストの削減を図りながらも、車体へのプロテクタフィルムの位置決めを正確に行うことが可能な車体防護用フィルムシートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体防護用フィルムシートの代表的な構成は、車体に貼付され、車体に塗装された塗膜の剥離を防ぐプロテクタフィルムを含む車体防護用フィルムシートにおいて、プロテクタフィルムの車体に貼付される側の面である裏面全体を被覆し裏面を保護する離型紙と、裏面の反対側の面である表面全体を被覆し、プロテクタフィルムおよび離型紙の支持体となるアプリケーションフィルムとをさらに含み、離型紙には、プロテクタフィルムを被覆する領域に、車体の第1のキャラクタラインに重ねられ領域を分割するスリットが形成されていて、離型紙およびアプリケーションフィルムの少なくとも一方は、プロテクタフィルムよりも大きく、プロテクタフィルムを被覆しない領域に、所定の加工による目印部が形成されていて、目印部は、車体の所定箇所に位置合わせされることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、目印部を1つしか要さないため、把持部領域も含め、かかる1つの目印部近傍以外のプロテクタフィルムとならない領域を格段に狭めることができる。したがって、車体防護用フィルムシートのコストを大幅に削減することが可能となる。そして、目印部が1つのみであっても、スリットを車体の第1のキャラクタラインに重ねることにより、そのスリットを位置合わせの際の目印として用いることができる。したがって、車体へのプロテクタフィルムの位置決めの正確性を十分に確保することが可能である。
【0012】
ここで、スリットを形成する際にはプロテクタフィルムに線状の跡(以下、ショックラインと称する)が残るが、車体へ貼付後のプロテクタフィルムのショックラインはキャラクタラインに重なるため視認されづらく、外観品質を阻害することがない。またスリットによって、離型紙において、プロテクタフィルムを被覆する領域が分割されることにより、プロテクタフィルムを車体に貼付する際に、分割された一方の領域を把持しながら他方の領域を車体に貼付することができる。すなわち分割された一方の領域を把持部として用いることが可能であるため、貼付時の作業性も好適に確保される。
【0013】
上記の目印部が位置合わせされる所定箇所は、第1のキャラクタラインと異なる方向に向かって延びている第2のキャラクタラインであるとよい。例えば、第1のキャラクタラインが車幅方向に延びていて、第2のキャラクタラインが車高方向に延びている場合、それらにスリットおよび目印部を位置合わせすると、当該車体防護用フィルムシートひいてはプロテクタフィルムは、車幅方向および車高方向において位置決めされる。したがって、位置決めの正確性を高めることが可能となる。
【0014】
上記のスリットは、プロテクタフィルムの高さ方向の中間近傍に配置されていて、目印部は、プロテクタフィルムの上端よりも上方に配置されているとよい。かかる構成により、目印部とスリットとが離れた位置に配置されるため、広範囲でより確実な位置合わせが可能となる。また位置合わせも容易になるため、作業性の向上を図ることができる。
【0015】
上記の目印部の近傍の離型紙およびアプリケーションフィルムとの間には、プロテクタフィルムと同一素材からなるシートが配置されているとよい。これにより、目印部近傍の剛性が向上するため撓みが生じにくくなり、且つ厚みが増すため貼付作業時に目印部近傍を掴み易くなる。したがって、作業性の向上を図ることが可能となる。またシートをプロテクタフィルムと同一素材とすることにより、材料数の増加を抑え、ひいてはコストの増大を抑制することができる。
【0016】
上記の目印部は、切欠、孔または凹みのいずれかであるとよい。かかる構成であれば、切断、穿孔、押圧等の簡単な加工によって、離型紙やアプリケーションフィルムに目印部を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プロテクタフィルムとならない領域を狭めてコストの削減を図りながらも、車体へのプロテクタフィルムの位置決めを正確に行うことが可能な車体防護用フィルムシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態にかかる車体防護用フィルムシートの構成を示す図である。
【図2】図1(a)の車体防護用フィルムシートの各構成部材を示す平面図である。
【図3】本実施形態にかかるフィルムシートの製造方法を説明する図である。
【図4】本実施形態のプロテクタフィルムを貼付される車体を例示する図である。
【図5】図4(a)の破線円C内の拡大図である。
【図6】車体へのプロテクタフィルムの貼付手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態にかかる車体防護用フィルムシートの構成を示す図であり、図1(a)は本実施形態の車体防護用フィルムシートの平面図であり、図1(b)は図1(a)の車体防護用フィルムシートの分解斜視図である。図2は、図1(a)の車体防護用フィルムシートの各構成部材を示す平面図であり、図2(a)はプロテクタフィルムの平面図であり、図2(b)は離型紙の平面図であり、図2(c)はアプリケーションフィルムの平面図である。なお、理解を容易にするために、図1(a)ではプロテクタフィルムを破線にて図示している。
【0021】
図1(a)に示す本実施形態の車体防護用フィルムシート(以下、フィルムシート100と称する。)は、図1(b)に示すように、プロテクタフィルム110、離型紙120およびアプリケーションフィルム(以下、アプリケーション130と称する。)を含んで構成される。
【0022】
図2(a)に示すプロテクタフィルム110は、車体102(図4参照)に貼付され、その車体102に塗装された塗膜の剥離を防ぐ。プロテクタフィルム110において、車体102に貼付される側の面である裏面110b(図1(b)参照)には、粘着剤(不図示)が塗布されている。これにより、プロテクタフィルム110の裏面110bを車体102に当接させて押し付けるだけで、プロテクタフィルム110を車体102に貼り付けることが可能となる。
【0023】
プロテクタフィルム110は透明材料から構成される。したがって、車体102に貼付されてもその外観を損なうことがない。かかる透明材料としては、チッピングへの耐久性および車体102への追従性の観点から高分子系樹脂材料を好適に用いることができ、既知の材料としてはポリエステルやポリウレタン等が例示される。
【0024】
図2(b)に示す離型紙120は、プロテクタフィルム110の裏面110bの全体を被覆してそれを保護する。離型紙120の裏面120e(図1(b)参照)、すなわちプロテクタフィルム110と当接する面には離型剤(不図示)がコーティングされている。これにより、車体102へのプロテクタフィルム110の貼付作業時に離型紙120を容易に剥がすことができる。
【0025】
離型紙120は、プロテクタフィルム110よりも範囲が大きく設定されて、その上部に第1スリット122が形成されている。この第1スリット122により、離型紙120において、プロテクタフィルム110を被覆する領域(以下、被覆領域120aと称する)と、プロテクタフィルム110を被覆しない領域(以下、非被覆領域120dと称する)とが分割される。このように、離型紙120がプロテクタフィルム110よりも大きいことにより非被覆領域120dを把持部とすることができ、第1スリット122を設けることにより、非被覆領域120dを把持した状態であっても、被覆領域120aの剥離を容易に行うことができる。
【0026】
また本実施形態の特徴として、離型紙120には、被覆領域120aに第2スリット124が形成されている。この第2スリット124は、被覆領域120aを上領域120bおよび下領域120cに分割する。第2スリット124は、車体102へのプロテクタフィルム110の貼付時に、車体102の第1のキャラクタラインであるキャラクタライン106b(図6参照)に重ねられる。この詳細については後に詳述する。
【0027】
なお、本実施形態では、離型紙120に、第1スリット122および第2スリット124の2つのスリットを設けたが、これに限定するものではなく、第1スリット122は必要に応じて設ければよい。
【0028】
図2(c)に示すアプリケーション130は、プロテクタフィルム110の表面110a(図1(b)参照)の全体を被覆し、プロテクタフィルム110および離型紙120の支持体となる。これにより、車体102へのプロテクタフィルム110の貼付作業時に離型紙120を剥がす際に、プロテクタフィルム110がアプリケーション130に支持されるため作業性を高めることができる。
【0029】
アプリケーション130においても、離型紙120と同様にプロテクタフィルム110よりも範囲が大きく設定されているため、上述したように上部を把持することができ、作業性の向上が図られる。なお、便宜上、以下の説明では、アプリケーション130のうち、プロテクタフィルム110を被覆する領域(一点鎖線で囲った領域)を被覆領域130aと称し、その被覆領域130aの外側の領域、すなわちプロテクタフィルム110を被覆しない領域を非被覆領域130bと称する。
【0030】
本実施形態では、上述した離型紙120の非被覆領域120dおよびアプリケーション130の非被覆領域130b、すなわちプロテクタフィルム110を被覆しない領域に、切欠からなる目印部126および136が各々形成されている。また後述するフィルム112にも同様に目印部116が形成されている。これにより、後に詳述するように車体102へのフィルムシート100の位置決めを好適に行うことができる。以下、これらの目印部116、126および136を総称するときは、単に目印部160(図1参照)と称する。
【0031】
なお、目印部160は、必ずしも切欠である必要はなく、孔や凹みであってもよい。切欠、孔、凹みのいずれの場合においても、切断、穿孔、押圧等の簡単な加工によって、離型紙120やアプリケーション130に目印部126および136を形成することができる。また切欠、孔、凹み以外でも、目印を付すことが可能な加工があれば、それを適用することも可能である。更に、本実施形態では、離型紙120およびアプリケーション130の両方に目印部126および136を形成したが、目印部は少なくともいずれか一方に設けられていればよく、加えて、フィルム112への目印部116の有無も任意に変更することが可能である。
【0032】
図3は、本実施形態にかかるフィルムシート100の製造方法を説明する図である。なお、本実施形態では、1つの投入材から4つのフィルムシート100を製造する場合を例示するが、これに限定するものではなく、任意に変更可能である。
【0033】
上述したフィルムシート100の製造では、まず図3(a)に示す投入材140から、プロテクタフィルム110および離型紙120を切り抜く。図3(a)のA−A断面図である図3(b)に示すように、投入材140は、プロテクタフィルム110の構成材料からなるフィルム状の母材142と、その母材142の裏面を被覆する離型紙144とから構成される。
【0034】
図3(a)に示す太一点鎖線は、目印部160を含むフィルムシート100の輪郭および第1スリット122(図2(b)参照)に該当し、母材142および離型紙144の両方が切断される切断線140aである。図3(a)に示す細一点鎖線は、プロテクタフィルム110の輪郭に該当し、母材142のみが切断される切断線140bである。図3(a)に示す破線は、第2スリット124(図2(b)参照)に該当し、離型紙144のみが切断される切断線140cである。
【0035】
切断線140a〜140cにおいて、母材142および離型紙144を各々適宜切断すると、図3(c)に示すように、プロテクタフィルム110より大きめの形状で、母材146および離型紙120が切り抜かれる。図3(c)に示す母材146のうち、切断線140b内の領域はプロテクタフィルム110であり、切断線140bの周囲の領域は、プロテクタフィルム110とならない不要部146bである。この不要部146bを図3(d)に示すように取り除くと、図3(e)に示す状態となる。そして、図3(f)に示すように、プロテクタフィルム110にアプリケーション130を貼り付けると、図1(a)に示すフィルムシート100が完成する。なお、切断線140cを切断する際、プロテクタフィルム110には、切断線140cの切断痕として線状のショックライン114(図2(a)参照)が残る。
【0036】
ここで、図3(c)に示す母材146のうち、プロテクタフィルム110とならない不要部146bは製造工程において取り除かれるが、同様にプロテクタフィルム110とならない領域である不要部146aは本実施形態においては取り除かない。これにより、上述したように不要部146bを取り除くと、図3(c)の不要部146aは、図3(d)および(e)に示すようにプロテクタフィルム110と同一素材からなるシート112となる。
【0037】
そして、図3(f)においてアプリケーション130を貼り付けられることによって、シート112は、離型紙120の目印部126の近傍およびアプリケーション130の目印部136の近傍との間に配置される。このような構成により、目印部126および136の近傍の剛性が向上するため撓みが生じにくくなる上に、目印部126および136の近傍の厚みが確保されるため貼付作業時にそこを掴みやすくなる。したがって、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0038】
図4は、本実施形態のプロテクタフィルム110を貼付される車体102を例示する図であり、図4(a)は車体102の右側側面図であり、図4(b)は図4(a)のB−B断面図である。なお、図4(a)のFは車体前方を、Rは車体後方を意味している。
【0039】
図4(a)に示す車体102を構成する外装部材102aには、意匠性や防錆性を高めるために、塗装による塗膜(不図示)が形成されている。しかしながら、車体102の下方において路面に近い部位では、走行時に巻き上げられた小石や砂利等(以下、砂利101(図4(b)参照)と称する。)が衝突しやすいため、チッピングにより塗膜が損傷を受けることがある。このため、車体102(外装部材102a)の下方のホイールハウス等には、塗膜ひいては車体102を保護するプロテクタフィルム110が貼り付けられる。
【0040】
特に、図4(b)に示すように、外装部材102aにおいて、リアタイア104bの周辺が車両外側に張り出しているデザインであると、フロントタイア104aにより巻き上げられた砂利101が衝突しやすいため、プロテクタフィルム110の貼付により一層優れた効果が得られる。
【0041】
なお、車体102に貼付されているプロテクタフィルム110の大きさは例示にすぎず、これに限定するものではない。プロテクタフィルム110の大きさは、リアタイア104b周辺の外装部材102aの張出量に応じて変更可能である。すなわち、リアタイア104b周辺の外装部材102aの張出量が大きいと、砂利101が衝突する面積が拡大するため、当然にしてプロテクタフィルム110もより大きくする必要がある。また上述したように外装部材102aは、下方にいくにつれて路面に近くなりチッピングが生じやすくなるため、プロテクタフィルム110は、上部よりも下部の面積が大きくなるように設計されているが、これにおいても、適宜変更可能である。
【0042】
次に、本実施形態にかかるフィルムシート100を用いたプロテクタフィルム110の車体102への貼付方法について説明する。図5は、図4(a)の破線円C内の拡大図であり、図5(a)はプロテクタフィルム110が貼付された状態を、図5(b)はプロテクタフィルム110が貼付されてない状態を示す。図6は、車体102へのプロテクタフィルム110の貼付手順を説明する図である。
【0043】
なお、車体102にプロテクタフィルム110を貼付する際には、アプリケーション130が最前面に位置し、その背面にプロテクタフィルム110および離型紙120が位置する。またプロテクタフィルム110は透明であるため、外装部材102aへの貼付後に目視しづらい。そこで、理解を容易にするために、図5および図6では、プロテクタフィルム110およびフィルム112をハッチングにて示し、プロテクタフィルム110およびフィルム112と、離型紙120とが重なっている領域をクロスハッチングにて示している。
【0044】
図5(a)および(b)に示すように、外装部材102aには、車体102のデザインを特徴づける複数のキャラクタライン106a〜106gが設けられている。本実施形態では、これらのキャラクタライン106a〜106gのうち、キャラクタライン106bを第1のキャラクタラインとし、キャラクタライン106dを第2のキャラクタラインとしてフィルムシート100の位置決めをする場合を例示して説明する。ただし、これに限定するものではなく、当然にして、他のキャラクタラインを利用してフィルムシート100の位置決めをしてもよい。またキャラクタライン106a〜106gの配置も単なる例示に過ぎず、車体102のデザインに応じて任意に変更可能である。なお、煩雑になるため、図6では、位置決めに利用するキャラクタライン106bおよび106d以外の図示を省略している。
【0045】
車体102にプロテクタフィルム110を貼付する際には、まず離型紙120の被覆領域120aのうち上領域120b(図2(b)参照)を剥がす。そして、図6(a)に示すように、フィルムシート100の上部である非被覆領域120dとその背面にあるフィルム112(図2(a)参照)、ならびにフィルムシート100の下部である下領域120cとその背面にあるプロテクタフィルム110を把持しながら、第2スリット124すなわち下領域120cの上辺と、車体102のキャラクタライン106b(第1のキャラクタライン)とを位置合わせする。このように、本実施形態では第2スリット124によって被覆領域120aの上領域120bと下領域120cとを異なるタイミングで剥離可能であるため、上領域120bを剥離した後の下領域120cを、貼付の際の下側の把持部として使用することができる。したがって、従来のフィルムシートのように下方に把持部を形成する必要がないため、部材コストの削減が図られる。
【0046】
第2スリット124とキャラクタライン106bとの位置合わせをしたら、同様にフィルムシート100の上部と下部を把持した状態で、目印部160を車体102の所定箇所に位置合わせする。図6(b)に示すように、本実施形態において、目印部160は、キャラクタライン106b(第1のキャラクタライン)と異なる方向に向かって延びているキャラクタライン106d(第2のキャラクタライン)に位置合わせされる。キャラクタライン106bは車体前後方向に延びていて、キャラクタライン106dは車高方向に延びている。このため、プロテクタフィルム110が、第2スリット124およびキャラクタライン106bによって車体前後方向で位置決めされ、且つ目印部160およびキャラクタライン106dによって車高方向で位置決めされる。したがって、位置決めの正確性を高めることが可能となる。
【0047】
また本実施形態では、第2スリット124は、プロテクタフィルム110の高さ方向の中間近傍に配置されていて、目印部160は、プロテクタフィルム110の上端よりも上方に配置されているため、第2スリット124と目印部160とは離れた位置にある。これにより、プロテクタフィルム110を広範囲で位置合わせすることが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態では、第2スリット124および目印部160ともに外装部材102aのキャラクタラインと位置合わせをすることとしたが、これに限定するものではなく、目印部160の位置合わせの対象は、必ずしもキャラクタラインでなくてもよい。ただし、仮に目印部160を外装部材102aの端部で位置合わせする場合、実際にプロテクタフィルム110を貼付する領域よりも外側で位置合わせしなくてはならない。このため、フィルムシート100全体の大型化、ひいては作業性の低下や部材コストの増大を招く傾向がある。したがって、外装部材102aの端部での位置合わせを回避するために、目印部160は、好ましくは外装部材102aの面上、更に好ましくは本実施形態のようにキャラクタラインと位置合わせするとよい。
【0049】
また上記説明した第2スリット124とキャラクタライン106bとの位置合わせ、および目印部160と車体102の所定箇所の位置合わせは、逆の順番で行ってもよい。更には、それらの位置合わせは、必ずしも別々に行う必要はなく、1度に両方の位置合わせを行ってもよい。
【0050】
第2スリット124および目印部160を位置合わせしたら、車体102(被覆領域120a)にフィルムシート100を当接させながら、プロテクタフィルム110の上領域120bを剥離された領域、すなわちプロテクタフィルム110のショックライン114(図1(a)参照)より上方の面を押し付けて外装部材102aに貼り付ける。
【0051】
次に、離型紙120の下領域120cをはがし、図6(c)に示すようにプロテクタフィルム110の下領域120cを剥離された領域、すなわちプロテクタフィルム110のショックライン114より下方の面を押し付けて外装部材102aに貼り付ける。このようにプロテクタフィルム110を外装部材102aに貼り付けたら、離型紙120の非被覆領域120d、およびその背面のフィルム112(図2(a)参照)とともにアプリケーション130を剥がす。これにより、図5(a)に示すように車体102へのプロテクタフィルム110の貼付が完了する。
【0052】
上述したように、フィルムシート100と車体102との位置合わせでは、第2スリット124をキャラクタライン106b(第1のキャラクタライン)に合わせているため、車体102へ貼付されたプロテクタフィルム110のショックライン114は、キャラクタライン106bに重なることとなる。したがって、プロテクタフィルム110のショックライン114が視認されづらく、車体102の外観品質を阻害することがない。
【0053】
以上説明したように、本実施形態にかかるフィルムシート100によれば、第2スリット124を、車体102のキャラクタライン106b(第1のキャラクタライン)に重ねて位置合わせの際の目印として利用できる。これにより、フィルムシート100においてプロテクタフィルム110の周辺に設ける目印部160が1つのみであっても、位置決めの正確性を十分に確保することが可能である。また第2スリット124によって、離型紙120の被覆領域120a(プロテクタフィルム110を被覆する領域)が分割されることにより、プロテクタフィルム110の貼付作業時に、下領域120c(分割された一方の領域)を把持しながら他方の領域を車体102に貼付することができる。このため、貼付時の作業性も好適に確保することができ、フィルムシート100の下方に把持部領域を設ける必要がなくなる。したがって、従来要していた複数の目印部を設けるための領域や、フィルムシート100を把持するための領域を格段に狭めることができ、フィルムシート100のコストを大幅に削減することが可能となる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、車体に塗装された塗膜の剥離を防ぐプロテクタフィルムを含む車体防護用フィルムシートに利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
100…フィルムシート、101…砂利、102…車体、102a…外装部材、104a…フロントタイア、104b…リアタイア、106a…キャラクタライン、106b…キャラクタライン、106d…キャラクタライン、110…プロテクタフィルム、110a…表面、110b…裏面、112…フィルム、114…ショックライン、116…目印部、120…離型紙、120a…被覆領域、120b…上領域、120c…下領域、120d…非被覆領域、120e…裏面、122…第1スリット、124…第2スリット、126…目印部、130…アプリケーション、130a…被覆領域、130b…非被覆領域、136…目印部、140…投入材、140a…切断線、140b…切断線、140c…切断線、142…母材、144…離型紙、146…母材、146a…不要部、146b…不要部、160…目印部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に貼付され、該車体に塗装された塗膜の剥離を防ぐプロテクタフィルムを含む車体防護用フィルムシートにおいて、
前記プロテクタフィルムの前記車体に貼付される側の面である裏面全体を被覆し該裏面を保護する離型紙と、
前記裏面の反対側の面である表面全体を被覆し、該プロテクタフィルムおよび前記離型紙の支持体となるアプリケーションフィルムとをさらに含み、
前記離型紙には、前記プロテクタフィルムを被覆する領域に、前記車体の第1のキャラクタラインに重ねられ該領域を分割するスリットが形成されていて、
前記離型紙および前記アプリケーションフィルムの少なくとも一方は、前記プロテクタフィルムよりも大きく、該プロテクタフィルムを被覆しない領域に、所定の加工による目印部が形成されていて、該目印部は、前記車体の所定箇所に位置合わせされることを特徴とする車体防護用フィルムシート。
【請求項2】
前記目印部が位置合わせされる所定箇所は、前記第1のキャラクタラインと異なる方向に向かって延びている第2のキャラクタラインであることを特徴とする請求項1に記載の車体防護用フィルムシート。
【請求項3】
前記スリットは、前記プロテクタフィルムの高さ方向の中間近傍に配置されていて、
前記目印部は、前記プロテクタフィルムの上端よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体防護用フィルムシート。
【請求項4】
前記目印部の近傍の前記離型紙および前記アプリケーションフィルムとの間には、前記プロテクタフィルムと同一素材からなるシートが配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車体防護用フィルムシート。
【請求項5】
前記目印部は、切欠、孔または凹みのいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車体防護用フィルムシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−233124(P2012−233124A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103982(P2011−103982)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】