説明

車体骨格構造

【課題】第一骨格部に形成された屈曲部の曲げ変形を抑制する。
【解決手段】車体骨格構造10は、車両前後方向に延在されたサイド骨格部材12と、車両幅方向に延在されたルーフヘッダパネル14とを備えている。ルーフヘッダパネル14における車両幅方向外側の端部には、サイド骨格部材12に形成された屈曲部24の内周部24Bよりも屈曲部24の外周部24C側に配置されると共に、この内周部24B側に凸を成すように湾曲された湾曲部68が一体に形成されている。この湾曲部68には、湾曲形状に沿う方向における両側に一対のフランジ70,72が形成されており、このフランジ72,74は、屈曲部24における外周部24Cと結合されている。屈曲部24に対してこの屈曲部24を曲げ変形させる方向にモーメントが作用しても、このモーメントを湾曲部68によって低減(キャンセル)するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ルーフサイドレールとフロントピラーとの連結部における車両幅方向内側の壁部に、フロントヘッダにおける車両幅方向外側の端部が結合された自動車の上部車体構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−30716号公報
【特許文献2】実開平3−100575号公報
【特許文献3】特開2000−264247号公報
【特許文献4】特開2005−329789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、ルーフサイドレールとフロントピラーとの連結部に対してこの連結部を曲げ変形させる方向にモーメントが作用した場合には、この連結部が曲げ変形される虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、第一骨格部の屈曲部に対してこの屈曲部を曲げ変形させる方向にモーメントが作用しても、この屈曲部が曲げ変形されることを抑制することができる車体骨格構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車体骨格構造は、長尺状に形成されると共に、長手方向と直交する方向に屈曲する屈曲部を有する第一骨格部と、前記第一骨格部の長手方向及び前記屈曲部の屈曲方向とそれぞれ交差する方向に沿って長尺状に形成された第二骨格部と、前記第二骨格部における長手方向端側の端部に設けられると共に、前記屈曲部の内周部よりも屈曲部の外周部側に配置され、且つ、前記内周部側に凸を成すように湾曲されて、湾曲形状に沿う方向における少なくとも両側に形成された結合部によって前記屈曲部と結合された湾曲部と、を備えている。
【0007】
この車体骨格構造によれば、第二骨格部における長手方向端側の端部には、第一骨格部に形成された屈曲部の内周部よりも屈曲部の外周部側に配置されると共に、この内周部側に凸を成すように湾曲された湾曲部が設けられている。この湾曲部は、湾曲形状に沿う方向における少なくとも両側に形成された結合部によって屈曲部と結合されている。従って、屈曲部に対してこの屈曲部を曲げ変形させる方向にモーメントが作用しても、このモーメントを湾曲部によって低減(キャンセル)することができる。これにより、屈曲部が曲げ変形されることを抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の車体骨格構造は、請求項1に記載の車体骨格構造において、前記第一骨格部が、長手方向と直交する方向に切断した断面形状が閉断面状とされ、前記湾曲部が、前記第一骨格部内に挿入されると共に、前記第一骨格部の一部とで閉断面部を形成する構成とされている。
【0009】
この車体骨格構造によれば、湾曲部は、閉断面状に形成された第一骨格部内に挿入されて、この第一骨格部の一部とで閉断面部を形成している。これにより、屈曲部の剛性が向上されるので、屈曲部が曲げ変形されることをより一層抑制することができると共に、第一骨格部と第二骨格部との結合剛性を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の車体骨格構造は、請求項1又は請求項2に記載の車体骨格構造において、前記屈曲部には、前記内周部と前記外周部とを連結する側壁部が形成され、前記結合部が、前記湾曲部の湾曲形状に沿う方向における両側に形成され、前記外周部に結合された第一結合部と、前記湾曲部の湾曲形状に沿う方向における前記第一結合部間の中間部に形成され、前記側壁部に結合された第二結合部と、を有する構成とされている。
【0011】
この車体骨格構造によれば、湾曲部は、第一結合部と第二結合部とによって屈曲部の外周部と側壁部とに結合されているので、湾曲部の第一骨格部に対する結合剛性、ひいては、第一骨格部と第二骨格部との結合剛性を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の車体骨格構造は、請求項3に記載の車体骨格構造において、前記側壁部が、前記第二骨格部の長手方向に対向する一対の側壁部によって構成され、前記第二結合部が、前記一対の側壁部の一方と結合され、前記結合部が、前記一対の側壁部の他方と結合された第三結合部を有する構成とされている。
【0013】
この車体骨格構造によれば、湾曲部は、第三結合部によって屈曲部における他方の側壁部に結合されているので、第一骨格部と第二骨格部との結合剛性をより一層向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の車体骨格構造は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車体骨格構造において、前記湾曲部の頂部が、前記第一骨格部における長手方向と直交する方向に切断した断面の図心よりも前記内周部側に位置された構成とされている。
【0015】
この車体骨格構造によれば、湾曲部の頂部は、第一骨格部が形成する閉断面部の図心よりも屈曲部の内周部側に位置されている。従って、屈曲部に対してこの屈曲部を曲げ変形させる方向にモーメントが作用しても、このモーメントを湾曲部によってより一層効果的に低減(キャンセル)することができる。
【0016】
請求項6に記載の車体骨格構造は、請求項5に記載の車体骨格構造において、前記湾曲部が、前記第二骨格部に一体に形成された構成とされている。
【0017】
この車体骨格構造によれば、湾曲部は、第二骨格部に一体に形成されているので、部品点数の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、本発明によれば、第一骨格部の屈曲部に対してこの屈曲部を曲げ変形させる方向にモーメントが作用しても、この屈曲部が曲げ変形されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る車体骨格構造を車両左前方上方から見た斜視図である。
【図2】図1に示される車体骨格構造を車両左側から見た側面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図1に示されるフロントピラー、ルーフサイドレール、ルーフヘッダパネル、及び、湾曲部を模式的に示した図である。
【図5】図1に示される湾曲部のモーメント低減効果を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る車体骨格構造を車両左前方上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態について説明する。
【0021】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印LHは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(左側)をそれぞれ示している。また、図2では、図1に示されるサイドアウタパネル及びルーフパネルが省略されている。
【0022】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る車体骨格構造10は、サイド骨格部材12(第一骨格部)と、ルーフヘッダパネル14(第二骨格部)とを備えている。サイド骨格部材12は、車両前後方向に延在する長尺状に形成されており、ルーフ部16の車両幅方向外側に設けられたルーフサイドレール18と、ウィンドシールドガラス20の縦縁20Aに沿って設けられたフロントピラー22とを構成している。
【0023】
ルーフサイドレール18は、略水平に形成されており、フロントピラー22は、車両前側に向かうに従って車両下側に向かうように水平方向に対して傾斜されている。このルーフサイドレール18とフロントピラー22との間には、ルーフサイドレール18に対して車両下側に屈曲する屈曲部24が形成されている(図2も参照)。
【0024】
また、サイド骨格部材12は、インナパネル26及びリインフォースメント28によって構成されている。インナパネル26は、上側フランジ30、内側壁部32、下側壁部34、及び、下側フランジ36を有している。上側フランジ30は、車両幅方向内側に向けて延びており、内側壁部32は、車両上下方向に延びて上側フランジ30と下側壁部34とを連結している。下側壁部34は、内側壁部32における車両下側の端部から車両幅方向外側に向けて延びており、下側フランジ36は、下側壁部34における車両幅方向外側の端部から車両下側に向けて延びている。
【0025】
また、内側壁部32における屈曲部24を構成する部分、つまり、屈曲部24における車両幅方向内側の側壁部24A(一方の側壁部)には、後述するルーフヘッダパネル14に形成された湾曲部68の断面形状と一致する半円状の切欠き38が形成されている。そして、この側壁部24Aには、この切欠き38の外縁に沿って湾曲されたフランジ部39が上側フランジ30と連続して形成されている。
【0026】
リインフォースメント28は、上側フランジ40、上側壁部41、外側壁部42、下側壁部44、及び、下側フランジ46を有している。上側フランジ40は、上側壁部41における車両幅方向内側の端部から車両幅方向内側に向けて延び、上側フランジ30に車両上側から重ねられている。上側壁部41は、車両幅方向に延びると共に、下側壁部34,44と車両上下方向に対向されている。外側壁部42は、内側壁部32と車両幅方向に対向されると共に、車両上下方向に延び、上側壁部41と下側壁部44とを連結している。下側壁部44は、外側壁部42における車両下側の端部から車両幅方向内側に向けて延びており、下側フランジ46は、下側壁部44における車両幅方向内側の端部から車両下側に向けて延び、下側フランジ36に車両幅方向外側から重ねられている。
【0027】
また、サイド骨格部材12には、車両前後方向の全長に亘ってサイドアウタパネル48が一体に設けられている。サイドアウタパネル48は、リインフォースメント28の車両幅方向外側に設けられており、上側フランジ40に車両上側から重ねられた上側フランジ50と、下側フランジ46に車両幅方向外側から重ねられた下側フランジ56とを有している。
【0028】
また、サイド骨格部材12の車両幅方向内側には、車両前後方向及び車両幅方向に延在されてルーフ部16を構成するルーフパネル58が設けられている。このルーフパネル58における車両幅方向外側の端部には、車両前後方向に延びるフランジ60が形成されている。このフランジ60は、上側フランジ50に車両上側から重ねられている。
【0029】
そして、フランジ60及び上側フランジ30,40,50は、車両前後方向に間隔を空けた複数箇所において例えばスポット溶接されて結合されている。同様に、下側フランジ36,46,56は、車両前後方向に間隔を空けた複数箇所において例えばスポット溶接されて結合されている。
【0030】
また、以上のようにして互いに結合されたインナパネル26及びリインフォースメント28によって構成されたサイド骨格部材12は、長手方向と直交する方向に切断した断面形状が閉断面状とされている。つまり、内側壁部32、上側壁部41、外側壁部42、及び、下側壁部34,44によって閉断面部66が形成されている。
【0031】
ルーフヘッダパネル14は、車両幅方向に延在する長尺状に形成されており、ルーフ部16の前部16Aに配置されている。このルーフヘッダパネル14の車両幅方向外側の端部には、湾曲部68が形成されている。この湾曲部68は、サイド骨格部材12が形成する上述の閉断面部66内に挿入されており、屈曲部24の内周部24Bよりも屈曲部24の外周部24C側に配置されている(図2も参照)。また、この湾曲部68は、屈曲部24の内周部24B側に凸を成すように湾曲されている。つまり、この湾曲部68は、屈曲部24とは逆向きの湾曲形状とされている。なお、屈曲部24の内周部24Bは、下側壁部34,44における屈曲部24を構成する部分により構成されており、屈曲部24の外周部24Cは、上側壁部41及び上側フランジ30,40における屈曲部24を構成する部分により構成されている。
【0032】
また、この湾曲部68には、その湾曲形状に沿う方向における両側の端部に一対のフランジ70,72(第一結合部)が形成されている。一方のフランジ70は、車両前側に向けて延びており、他方のフランジ72は、車両後側に向けて延びている。また、一対のフランジ70,72の間であって湾曲部68における車両幅方向内側の端部68A(第二結合部)は、フランジ部39に車両上側から重ねられている(図3も参照)。
【0033】
さらに、湾曲部68における車両幅方向外側の端部には、湾曲部68の外縁に沿ってフランジ74(第三結合部)が形成されている。このフランジ74は、湾曲部68の径方向外側に向けて延びており、湾曲部68及び一対のフランジ70,72と一体に形成されている。このフランジ74は、外側壁部42における屈曲部24を構成する部分、つまり、屈曲部24における車両幅方向外側の側壁部24D(他方の側壁部)に車両幅方向内側から重ねられている(図3も参照)。
【0034】
そして、一方のフランジ70は、上側フランジ30,40における切欠き38の車両前側に隣接するフランジ部30A,40Aの間に挟まれた状態で、このフランジ部30A,40Aと例えばスポット溶接による溶接部76によって結合されている(図2も参照)。また、他方のフランジ72は、上側フランジ30,40における切欠き38の車両後側に隣接するフランジ部30B,40Bの間に挟まれた状態で、このフランジ部30B,40Bと例えばスポット溶接による溶接部78によって結合されている(図2も参照)。なお、フランジ部30A,30B,40A,40Bは、屈曲部24における外周部24Cの一部を構成するものである。
【0035】
さらに、湾曲部68における車両幅方向内側の端部68Aは、その湾曲形状に沿って延びる例えばアーク溶接による溶接部80(図3参照)によってフランジ部39と結合されている。また、フランジ74は、このフランジ74の湾曲形状に沿う方向に並ぶ複数の例えばスポット溶接による溶接部82によって、側壁部24Dに結合されている(図3も参照)。
【0036】
そして、以上のようにしてサイド骨格部材12と結合された湾曲部68は、サイド骨格部材12の一部である屈曲部24の外周部24Cとで、閉断面部66内にこの閉断面部66とは異なる閉断面部86を形成している(図2も参照)。さらに、図2に示されるように、湾曲部68の頂部68Bは、サイド骨格部材12における長手方向と直交する方向に切断した断面の図心、すなわち、閉断面部66の図心66Aよりも屈曲部24の内周部24B側に位置されている。
【0037】
また、図1に示されるように、湾曲部68及び一対のフランジ70,72が形成されたルーフヘッダパネル14における車両幅方向外側の端部よりも車両幅方向内側の部分は、ルーフヘッダパネル14の本体部14Aとして形成されている。この本体部14Aは、湾曲部68及び一対のフランジ70,72が形成されたルーフヘッダパネル14における車両幅方向外側の端部と同様の断面ハット形状で形成されている。
【0038】
また、本体部14Aには、フランジ70,72と車両幅方向に連続してフランジ90,92が形成されている。車両前側のフランジ90は、ルーフパネル58における車両前側の端部に形成されたフランジ94に車両下側から重ねられた状態で例えばスポット溶接によって結合されている。一方、車両後側のフランジ92は、ルーフパネル58の前部16Aに例えば図示しない接着剤等によって接着されている。
【0039】
なお、本実施形態において、屈曲部24の屈曲方向である車両上下方向は、本発明における第一骨格部の長手方向と直交する方向に相当し、ルーフヘッダパネル14の長手方向である車両幅方向は、本発明における第一骨格部の長手方向及び屈曲部の屈曲方向とそれぞれ交差する方向に相当する。
【0040】
次に、本発明の第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
この車体骨格構造10によれば、ルーフヘッダパネル14における車両幅方向外側の端部には、屈曲部24の内周部24Bよりも屈曲部24の外周部24C側に配置されると共に、この内周部24B側に凸を成すように湾曲された湾曲部68が一体に形成されている。この湾曲部68には、湾曲形状に沿う方向における両側に一対のフランジ70,72が形成されており、このフランジ70,72は、屈曲部24における外周部24Cと結合されている。従って、屈曲部24に対してこの屈曲部24を曲げ変形させる方向にモーメントが作用しても、このモーメントを湾曲部68によって低減(キャンセル)することができる。これにより、屈曲部24が曲げ変形されることを抑制することができる。
【0042】
この結果、例えば、図示しないサスペンション等から車体に荷重が入力された場合でも、屈曲部24が曲げ変形されることを抑制することができるので、ルーフヘッダパネル14と共にウィンドシールドガラス20が振動することを抑制することができる。これにより、室内に例えばこもり音等の異音が生じることを抑制することができる。また、例えば、車両が横転し、屈曲部24に対して大きな荷重が入力された場合においても、屈曲部24が曲げ変形されることを抑制することができる。
【0043】
また、湾曲部68は、サイド骨格部材12に形成された閉断面部66内に挿入されて、このサイド骨格部材12の一部である屈曲部24の外周部24Cとで閉断面部86を形成している。従って、これにより、屈曲部24の剛性が向上されるので、屈曲部24が曲げ変形されることをより一層抑制することができると共に、サイド骨格部材12とルーフヘッダパネル14との結合剛性を向上させることができる。
【0044】
また、湾曲部68は、一対のフランジ70,72によって屈曲部24の外周部24Cと結合されると共に、車両幅方向内側の端部68Aによって側壁部24Aに形成されたフランジ部39に結合されているので、湾曲部68のサイド骨格部材12に対する結合剛性、ひいては、サイド骨格部材12とルーフヘッダパネル14との結合剛性を向上させることができる。
【0045】
さらに、湾曲部68は、車両幅方向外側の端部に形成されたフランジ74によって屈曲部24の側壁部24Dに結合されているので、サイド骨格部材12とルーフヘッダパネル14との結合剛性をより一層向上させることができる。
【0046】
また、湾曲部68の頂部68Bは、サイド骨格部材12が形成する閉断面部66の図心66Aよりも屈曲部24の内周部24B側に位置されている。従って、屈曲部24に対してこの屈曲部24を曲げ変形させる方向にモーメントが作用しても、このモーメントを湾曲部68によってより一層効果的に低減(キャンセル)することができる。
【0047】
また、湾曲部68は、ルーフヘッダパネル14に一体に形成されているので、部品点数の増加を抑制することができる。
【0048】
なお、本発明の第一実施形態において、湾曲部68及び一対のフランジ70,72は、ルーフヘッダパネル14に一体に形成されていたが、ルーフヘッダパネル14の本体部14Aに対して別体に構成されていても良い。
【0049】
また、図4に示されるように、湾曲部68は、ルーフサイドレール18とフロントピラー22との間に設けられてこれらを支持する役割を果たすので、湾曲部68をできるだけ大きく形成すると共に湾曲部68の曲率をできるだけ大きくすると、屈曲部24の変形を抑制する効果をより向上させることができる。
【0050】
ここで、図5を用いて、直線状の補強部168に荷重が入力された場合に、この直線状の補強部168に生じるモーメントと、本実施形態の湾曲部68に対して荷重が入力された場合に、この湾曲部68に生じるモーメントとの相違について説明する。
【0051】
先ず、図5(A),(C)に示されるように、直線状の補強部168に集中荷重Wが入力されると、この補強部168には、集中荷重Wの作用点で最大となるモーメントM1が作用する。これに対して、図5(B),(C)に示されるように、本実施形態の湾曲部68に集中荷重Wが入力されると、集中荷重Wの作用点において最大となるモーメントM2が作用する。ところが、このモーメントM2の最大値M2maxは、モーメントM1の最大値M1maxよりも小さくなる。
【0052】
これは、湾曲部68を支持する支点R1,R2から湾曲部68に対して支点反力F,Fがそれぞれ湾曲部68の中心方向へ作用することにより、キャンセルモーメントM3が生じることによるものである。
【0053】
つまり、荷重Wの入力方向に対して湾曲する湾曲部68の両端部に支点反力F,Fが生じ、これにより、湾曲部68に作用するモーメントを低減することができるのである。これは、湾曲部68にキャンセルモーメントが作用することで、湾曲部68の入力荷重に対する剛性を向上させるということと等価である。
【0054】
このように、湾曲部68に作用するモーメントを低減することができるので、湾曲部68の剛性、ひいては、屈曲部24(図1,図2参照)の剛性を向上させることができる。
【0055】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0056】
上述のように、本発明の第一実施形態に係る車体骨格構造10(図1参照)は、ルーフサイドレール18及びフロントピラー22を構成するサイド骨格部材12と、ルーフヘッダパネル14とに対して適用されていたが、図6に示される本発明の第二実施形態に係る車体骨格構造110は、リアフロアサイドメンバ112、フロアクロスメンバ114、及び、リアフロアパネル158に対して適用されている。
【0057】
リアフロアサイドメンバ112は、リアフロアパネル158に車両下側から結合されており、このリアフロアパネル158の一部とでサイドメンバ部118を構成している。なお、本発明の第二実施形態に係る車体骨格構造110の基本的な構造は、上述の本発明の第一実施形態に係る車体骨格構造10と同様とされている。つまり、サイドメンバ部118は、上述のサイド骨格部材12に相当する部材であり、フロアクロスメンバ114は、上述のルーフヘッダパネル14に相当する部材である。従って、本発明の第二実施形態において、本発明の第一実施形態と同様の構造については、同一符合を用いることとし、その説明を省略する。
【0058】
このように構成されていても、上述の本発明の第一実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0059】
すなわち、この車体骨格構造110によれば、フロアクロスメンバ114における車両幅方向外側の端部には、屈曲部24の内周部24Bよりも屈曲部24の外周部24C側に配置されると共に、この内周部24B側に凸を成すように湾曲された湾曲部68が一体に形成されている。この湾曲部68には、湾曲形状に沿う方向における両側に一対のフランジ70,72が形成されており、このフランジ72,74は、屈曲部24における外周部24Cを構成するフランジ部30A,30B及びリアフロアパネル158の一部と結合されている。従って、屈曲部24に対してこの屈曲部24を曲げ変形させる方向にモーメントが作用しても、このモーメントを湾曲部68によって低減(キャンセル)することができる。これにより、屈曲部24が曲げ変形されることを抑制することができる。
【0060】
この結果、例えば、図示しないサスペンション等から車体に荷重が入力された場合でも、屈曲部24が曲げ変形されることを抑制することができるので、フロアクロスメンバ114と共にリアフロアパネル158が振動することを抑制することができる。これにより、室内に例えばこもり音等の異音が生じることを抑制することができる。また、例えば、車両が後面衝突が生じ、屈曲部24に対して大きな荷重が入力された場合においても、屈曲部24が曲げ変形されることを抑制することができる。
【0061】
また、湾曲部68は、サイドメンバ部118に形成された閉断面部66内に挿入されて、リアフロアパネル158の一部とで閉断面部86を形成している。従って、これにより、屈曲部24の剛性が向上されるので、屈曲部24が曲げ変形されることをより一層抑制することができると共に、サイドメンバ部118とフロアクロスメンバ114との結合剛性を向上させることができる。
【0062】
また、湾曲部68は、一対のフランジ70,72によって屈曲部24の外周部24Cを構成するフランジ部30A,30B及びリアフロアパネル158の一部と結合されると共に、車両幅方向内側の端部68Aによって屈曲部24の側壁部24Aに形成されたフランジ部39に結合されているので、湾曲部68のサイドメンバ部118に対する結合剛性、ひいては、サイドメンバ部118とフロアクロスメンバ114との結合剛性を向上させることができる。
【0063】
さらに、湾曲部68は、車両幅方向外側の端部に形成されたフランジ74によって屈曲部24の側壁部24Dに結合されているので、サイドメンバ部118とフロアクロスメンバ114との結合剛性をより一層向上させることができる。
【0064】
また、湾曲部68の頂部68Bは、サイドメンバ部118が形成する閉断面部66の図心66Aよりも屈曲部24の内周部24B側に位置されている(図2も参照)。従って、屈曲部24に対してこの屈曲部24を曲げ変形させる方向にモーメントが作用しても、このモーメントを湾曲部68によってより一層効果的に低減(キャンセル)することができる。
【0065】
また、湾曲部68は、フロアクロスメンバ114に一体に形成されているので、部品点数の増加を抑制することができる。
【0066】
なお、本発明の第二実施形態において、湾曲部68及び一対のフランジ70,72は、フロアクロスメンバ114に一体に形成されていたが、フロアクロスメンバ114の本体部14Aに対して別体に構成されていても良い。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0068】
次に、特許請求の範囲に記載された発明以外に、上記実施形態から把握できる技術的思想について、その効果と共に記載する。
【0069】
つまり、前記第一骨格部は、車両前後方向に延在する長尺状に形成されて、ルーフ部の車両幅方向外側に設けられたルーフサイドレール及びウィンドシールドガラスの縦縁に沿って設けられたフロントピラーを構成するサイド骨格部材とされ、前記第二骨格部は、車両幅方向に延在する長尺状に形成され、前記ルーフ部の前部に配置されたルーフヘッダパネルとされている、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車体骨格構造である。
【0070】
この車体骨格構造によれば、例えば、図示しないサスペンション等から車体に荷重が入力された場合でも、屈曲部が曲げ変形されることを抑制することができるので、ルーフヘッダパネルと共にウィンドシールドガラスが振動することを抑制することができる。これにより、室内に例えばこもり音等の異音が生じることを抑制することができる。また、例えば、車両が横転し、屈曲部に対して大きな荷重が入力された場合においても、屈曲部が曲げ変形されることを抑制することができる。
【0071】
また、前記第一骨格部は、車両前後方向に延在する長尺状に形成されると共に、リアフロアサイドメンバ及びリアフロアパネルの一部によって構成されたサイドメンバ部とされ、前記第二骨格部は、車両幅方向に延在する長尺状に形成されたフロアクロスメンバとされている、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車体骨格構造である。
【0072】
この車体骨格構造によれば、例えば、図示しないサスペンション等から車体に荷重が入力された場合でも、屈曲部が曲げ変形されることを抑制することができるので、フロアクロスメンバと共にリアフロアパネルが振動することを抑制することができる。これにより、室内に例えばこもり音等の異音が生じることを抑制することができる。また、例えば、車両が後面衝突が生じ、屈曲部に対して大きな荷重が入力された場合においても、屈曲部が曲げ変形されることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0073】
10,110 車体骨格構造
12 サイド骨格部材(第一骨格部)
14 ルーフヘッダパネル(第二骨格部)
24 屈曲部
24A 側壁部(一方の側壁部)
24B 内周部
24C 外周部
24D 側壁部(他方の側壁部)
66A 図心
68 湾曲部
68A 端部(結合部の一部、第二結合部)
68B 頂部
70,72 フランジ(結合部の一部、第一結合部)
74 フランジ(結合部の一部、第三結合部)
86 閉断面部
118 サイドメンバ部(第一骨格部)
158 リアフロアパネル(第二骨格部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状に形成されると共に、長手方向と直交する方向に屈曲する屈曲部を有する第一骨格部と、
前記第一骨格部の長手方向及び前記屈曲部の屈曲方向とそれぞれ交差する方向に沿って長尺状に形成された第二骨格部と、
前記第二骨格部における長手方向端側の端部に設けられると共に、前記屈曲部の内周部よりも前記屈曲部の外周部側に配置され、且つ、前記内周部側に凸を成すように湾曲されて、湾曲形状に沿う方向における少なくとも両側に形成された結合部によって前記屈曲部と結合された湾曲部と、
を備えた車体骨格構造。
【請求項2】
前記第一骨格部は、長手方向と直交する方向に切断した断面形状が閉断面状とされ、
前記湾曲部は、前記第一骨格部内に挿入されると共に、前記第一骨格部の一部とで閉断面部を形成している、
請求項1に記載の車体骨格構造。
【請求項3】
前記屈曲部には、前記内周部と前記外周部とを連結する側壁部が形成され、
前記結合部は、
前記湾曲部の湾曲形状に沿う方向における両側に形成され、前記外周部に結合された第一結合部と、
前記湾曲部の湾曲形状に沿う方向における前記第一結合部間の中間部に形成され、前記側壁部に結合された第二結合部と、
を有している、
請求項1又は請求項2に記載の車体骨格構造。
【請求項4】
前記側壁部は、前記第二骨格部の長手方向に対向する一対の側壁部によって構成され、
前記第二結合部は、前記一対の側壁部の一方と結合され、
前記結合部は、前記一対の側壁部の他方と結合された第三結合部を有している、
請求項3に記載の車体骨格構造。
【請求項5】
前記湾曲部の頂部は、前記第一骨格部における長手方向と直交する方向に切断した断面の図心よりも前記内周部側に位置されている、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車体骨格構造。
【請求項6】
前記湾曲部は、前記第二骨格部に一体に形成されている、
請求項5に記載の車体骨格構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−86732(P2012−86732A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236428(P2010−236428)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】