説明

車内空調システム

【課題】
本発明では、運転者の行動パターンを分析し、適切なタイミングで当該車内空調システムを動作させ、乗車時の室内環境を効率良く整えることができる車内空調システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る車内空調システムでは、運転者の過去の行動類型に係る情報に基づき、運転者が車両への乗車意思を有するか否かを判定する乗車意思判定手段と、乗車意思判定手段により乗車意思を有すると判定された場合に、運転者が車両へ到達するまでに要する時間を算出する到達時間算出手段と、車両室内の温度が所定の温度となるよう冷房又は暖房を行う冷暖房手段と、車両が有する窓を開ける車内換気手段と、到達時間算出手段により算出された時間が所定の時間以上である場合には、冷暖房手段を作動させ、到達時間算出手段により算出された時間が所定の時間未満である場合には、車内換気手段を作動させる車内環境調整手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内空調システムを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が車両に乗車する前に車内空調システムを動作させ、当該運転者が乗車するときには、車内環境を適当な状態に調整する技術が一般に知られている。
【0003】
特許文献1には、乗車前に車内空調装置の動作時刻を設定し、当該設定時刻には車内温度が適温範囲となるように冷暖房を行う技術が公開されている。
【特許文献1】特公昭61−10324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術においては、設定時刻に乗車しない場合には、車内空調装置を動作させたエネルギーが無駄になるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明では、上記問題点に鑑み、運転者の行動パターンを分析し、適切なタイミングで当該車内空調システムを動作させ、乗車時の室内環境を効率良く整えることができる車内空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車内空調システムでは、運転者の過去の行動類型に係る情報に基づき、前記運転者が車両への乗車意思を有するか否かを判定する乗車意思判定手段と、前記乗車意思判定手段により前記乗車意思を有すると判定された場合に、前記運転者が前記車両へ到達するまでに要する時間を算出する到達時間算出手段と、前記車両室内の温度が所定の温度となるよう冷房又は暖房を行う冷暖房手段と、前記車両が有する窓を開ける車内換気手段と、前記到達時間算出手段により算出された前記時間が所定の時間以上である場合には、前記冷暖房手段を作動させ、前記到達時間算出手段により算出された前記時間が前記所定の時間未満である場合には、前記車内換気手段を作動させる車内環境調整手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る車内空調システムの一形態では、前記車内換気手段は、前記窓を開けることに代えて、ベンチレータを用いて前記車両室内の換気を行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る車内空調システムの一形態では、前記車内環境調整手段は、前記冷暖房手段が前記車両室内の温度を前記所定の温度とするために要する時間である前記所定の時間を算出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る車内空調システムの一形態では、前記乗車意思判定手段により前記乗車意思を有さないと判定された場合に、前記車内環境調整手段は、前記冷暖房手段又は前記車内換気手段の作動を停止することを特徴とする。
【0010】
従って、本発明では、運転者の行動パターンを分析し、適切なタイミングで当該車内空調システムを動作させ、乗車時の室内環境を効率良く整えることができる車内空調システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、運転者の行動パターンを分析し、適切なタイミングで当該車内空調システムを動作させ、乗車時の室内環境を効率良く整えることができる車内空調システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0013】
(本実施の形態に係る車内空調システムの動作原理)
図1を用いて、本実施の形態に係る車内空調システムの動作原理を説明する。図1は、本実施の形態に係る車内空調システム100の動作原理を示す図である。
【0014】
車内空調システム100は、車両300の外部に配置される乗車意思検出装置200と車両300に搭載される車載器400とから構成される。
【0015】
乗車意思検出装置200は、運転者判定手段110、運転者挙動検知手段120、乗車パターン判定手段130、第1の通信手段140、データベース240、時計270を有する。
【0016】
運転者判定手段110は、ホームからの外出者が予め登録された車両300の運転者であるか否かを判定し、運転者挙動検知手段120に対して、運転者情報を通知する。ここで、ホームとは、典型的には、運転者の自宅や会社のような、運転者が車両300をそばに駐車して長時間生活する場所である。
【0017】
ホームからの外出者が、予め登録された車両300の運転者であるか否かは、例えば、所定の車両キー(スマートキー等の携帯キー)又は電子免許証を所持しているか否かを、非接触センサを用いて検出し、次いで、当該車両キーや電子免許証のIDに係る運転者が予め登録された運転者であるか否かを判定することで、判定しても良い。
【0018】
このとき、非接触センサは、ホームの所定の出入り口に設けられても良い。また、非接触センサは、会社の通用口等に設けられても良く、退社する際に検知する電子社員証のデータから、運転者が予め登録された運転者であるか否かを判定しても良い。運転者情報は、検知した運転者が所持する車両キーのID、携帯電話の番号、顔等の生体情報を含んでいても良い。
【0019】
運転者挙動検知手段120は、運転者情報に基づいて、各地点に設置されたカメラやアンテナ(共にインフラ設備)、携帯電話のGPS(Global Positioning System)信号等により運転者の存在や挙動(移動軌跡、移動方向、顔向き、視線等)を検知する。時計270は、現在時刻を管理し、現在時刻等の時刻情報を乗車パターン判定手段130に通知する。データベース240には、運転者挙動検知手段120により検知された運転者の過去の行動パターンであって、運転者が乗車したときの行動パターン(乗車パターン)や、運転者が乗車しなかったときの行動パターン(非乗車パターン)が記憶される。
【0020】
乗車パターン判定手段130は、乗車意思判定手段131、到達時間算出手段132を有する。乗車意思判定手段131は、運転者挙動検知手段120により検知された挙動及び時計270からの時刻情報と、データベース240に記憶された運転者の過去の乗車時の行動履歴パターンとを比較し、運転者の車両の乗車意思を検出する。
【0021】
到達時間算出手段132は、運転者の車両300への到達時間を予測する。到達予測時間は、現時刻から何秒後に到達するかを表す形態であるとする。ただし、到達予測時間は、例えば、絶対時刻で表されても良い。
【0022】
第1の通信手段140は、車両300の車載器400に対して、無線通信により、車両300への到達予測時間や乗車前制御開始許可情報(乗車前制御開始情報)を通知する。
【0023】
車載器400は、第2の通信手段150、車両情報取得手段160、車内環境調整手段170、冷暖房装置471、窓472、ベンチレータ473を有する。
【0024】
第2の通信手段150は、乗車意思検出装置200から、運転者の車両300への到達予測時間や乗車前制御許可情報を表す信号を受信し、また、車内環境調整手段170へ、運転者の車両300への到達予測時間や乗車前制御許可情報を伝達する。
【0025】
車両情報取得手段160は、各種の車載センサを介して、現在の車両の状態に係る情報を取得し、車内環境調整手段170に伝達する。ここで、現在の車両の状態とは、例えば、車室内外の温度等の環境情報である。
【0026】
車内環境調整手段170は、冷暖房手段171、車内換気手段172を有する。
【0027】
車内環境調整手段170は、乗車意思検出装置200から得られる運転者の到達予測時間と、車両情報取得手段160からの現在の車両300の状態、制御に要する時間に基づいて、乗車前の各種制御の内容(タイミングを含む)を判定し、当該判定に従った車内環境の調整を実行する。
【0028】
具体的には、車内環境調整手段170は、到達時間算出手段132により予測された到達予測時間が所定の時間以上である場合、後述する冷暖房手段171による車内環境の調整を行い、到達時間算出手段132により予測された到達予測時間が所定の時間未満である場合、後述する車内換気手段172による車内環境の調整を行う。この処理は、運転者が車両300へ到達するまでに時間的余裕がある場合には、冷暖房手段171による車内の室温調整を行い、運転者が車両300へ到達するまでに時間的余裕が無い場合には、窓472を開放するか、またはベンチレータ473を用いて車内の換気を行うことであり、この処理を行うことによって、車両のエネルギーを効率良く空調準備に使用できるという利点がある。
【0029】
ここで、上記所定の時間とは、冷暖房手段171により車両室内の温度を予め定めた目標とする温度に調整するために要する時間(駆動時間)であっても良い。このとき、車内環境調整手段170は、車両情報取得手段160から取得した車室内外の気温情報と冷暖房手段171による冷暖房能力とに基づき、予め設定した目標温度に達するまでの駆動時間を算出する。
【0030】
また、車内環境調整手段170は、車両情報取得手段160から取得した現在の車室内の温度と所定の目標温度とを比較し、当該車室内の温度が高い場合には、冷暖房手段171による車室内の冷房を行い、逆に、当該車室内の温度が低い場合には、冷暖房手段171による車室内の暖房を行う。
【0031】
また、車内環境調整手段170は、運転者が車両300へ到達する予定の時刻に、車室内の温度が予め定めた目標温度となるよう、冷暖房手段171による制御の開始時期(開始するタイミング)を判定する形態としても良い。こうすることによって、車内環境を調整するために要するエネルギーの省力化を図ることができる。
【0032】
一方、冷暖房手段171又は車内換気手段172による車内環境の調整を行っている際に、乗車意思判定手段131により運転者の乗車意思が無いと判定された場合には、車内環境調整手段170は、当該冷暖房手段171又は車内換気手段172による車両室内の環境の調整を停止する。
【0033】
冷暖房手段171は、車両300の室内温度が、所定の温度(目標温度)となるように、冷暖房装置471を制御する。この制御においては、例えば、特開2007−112287号公報や特開2005−349854号公報により公開されている技術を用いて制御しても良い。
【0034】
車内換気手段172は、車両300のドアに設置されている窓472を開放する。これにより、車両300の室内の換気を促す。また、車内換気手段172は、車両300に設置されたベンチレータ473を動作させ、車室内の換気を行う。
【0035】
以下で、車内空調システム100の処理動作の流れを説明する。はじめに、運転者判定手段110が運転者を検知し、車両キーのIDや携帯電話の番号等の運転者情報を運転者挙動検知手段120に通知する。当該通知を受けて、運転者挙動検知手段120が、運転者の行動を追跡する。このとき、運転者挙動検知手段120は、運転者情報に基づいて、各地点に設置されたカメラやアンテ、携帯電話のGPS信号等により運転者挙動を検知する。
【0036】
そして、乗車意思判定手段131が、運転者の現在の行動軌跡と、データベース240に記憶されている乗車パターン又は非乗車パターンとを比較し、運転者の乗車意思の有無を判定する。同時に、到達時間算出手段132が、過去の行動パターンに基づき、運転者が車両300に到達するまでに要する到達予測時間を算出する。
【0037】
乗車意思判定手段131により運転者が乗車意思を有すると判定された場合には、第1の通信手段140が、第2の通信手段150に対し、当該判定情報と到達予測時間とを通知する。そして、第2の通信手段150が、受信した当該判定情報と到達予測時間とを車内環境調整手段170へ通知する。同時に、車両情報取得手段160が、車室内外の温度を計測し、その計測結果を車内環境調整手段170に通知する。
【0038】
それらの通知を受けて、車内環境調整手段170が、到達予測時間が所定の時間以上である場合には、冷暖房手段171による車両室内の温度の調整を行い、到達予測時間が所定の時間未満である場合には、車内換気手段172による車内の換気を行う。一方、上記車両室内の環境の調整をしている途中で、運転者挙動検知手段120により運転者に乗車意思が無いと判定された旨の情報が通知された場合には、車内環境調整手段170が、冷暖房手段171又は車内換気手段172による車両室内の環境の調整を停止する。
【0039】
上記のような処理を行うことで、運転者の乗車前に車内環境を整えるために、適切なタイミングで空調制御を実施する。また、運転者に乗車意思が無いと判断された場合には、実施中の空調制御を中止し、空調制御に要する無駄なエネルギー消費を抑制する。
【0040】
従って、本発明では、運転者の行動パターンを分析し、適切なタイミングで当該車内空調システムを動作させ、乗車時の室内環境を効率良く整えることができる車内空調システムを提供するができる。
【0041】
(乗車意思検出装置のハードウェア構成)
図2を用いて、本実施の形態に係る乗車意思検出装置のハードウェア構成を説明する。図2は、本実施の形態に係る乗車意思検出装置200のハードウェア構成の一例を示す図である。乗車意思検出装置200は、CPU(Central Processing Unit)210、ROM(Read−Only Memory)220、RAM(Random Access Memory)230、HDD(Hard Disc Drive)240、通信I/F(InterFace)250、各種センサ・計測装置260、時計270、その他の装置280を有する。
【0042】
CPU210は、ROM220に記憶されたプログラムを実行する装置で、RAM230に展開(ロード)されたデータを、プログラムの命令に従って演算処理し、乗車意思検出装置200の全体を制御する。ROM220は、CPU210が実行するプログラムやデータを記憶している。RAM230は、CPU210でROM220に記憶されたプログラムを実行する際に、実行するプログラムやデータが展開(ロード)され、演算の間、演算データを一時的に保持する。
【0043】
HDD240は、基本ソフトウェアであるOS(Operating System)、本実施の形態に係るアプリケーションプログラムなどを、関連するデータとともに記憶する装置である。本実施の形態では、運転者挙動検知手段120により検知された運転者の過去の行動パターンであって、運転者が乗車したときの行動パターン(乗車パターン)や運転者が乗車しなかったときの行動パターン(非乗車パターン)が、データベースとして記憶されている。
【0044】
通信I/F250は、通信ネットワークを介して接続された他の通信制御機能を備えた周辺機器と情報(データ)をやり取りするインタフェースである。本実施の形態では、第1の通信手段140が通信I/F250を介し無線通信ネットワーク通じて、車載器400と、車両300への到達予測時間や乗車前制御開始許可情報(乗車前制御開始情報)の送受信を行う。
【0045】
各種センサ・計測装置260は、運転者判定手段110及び運転者挙動検知手段120が運転者の判定及び運転者の挙動を検知するため、各所に設置されるセンサや計測装置である。本実施の形態では、運転者を確認する非接触センサ、運転者の挙動を検知する各地点に設置されたカメラ、アンテナ、携帯電話が含まれる。
【0046】
時計270は、現在時刻を管理し、現在時刻等の時刻情報を提供する装置である。本実施の形態では、乗車パターン判定手段130に対し、現在時刻等の時刻情報を提供する。その他の装置280は、例えば、乗車意思検出装置200が有する機能を操作者が利用する際に、各種設定を行うなどのユーザインタフェースとして機能する表示装置等の装置である。
【0047】
以下で、乗車意思検出装置200の処理の流れを、各処理で使用するハードウェアを含めて説明する。ただし、各手段は、CPU210が、ROM220又はHDD240に記憶された各手段に対応するプログラムを実行することにより実現されるため、この点に関しては説明を省略する。
【0048】
はじめに、運転者判定手段110が、非接触センサ260を利用して運転者を検知し、車両キーのIDや携帯電話の番号等の運転者情報を運転者挙動検知手段120に通知する。当該通知を受けて、運転者挙動検知手段120が運転者の行動を追跡する。このとき、運転者挙動検知手段120は、運転者情報に基づいて、各地点に設置されたカメラ、アンテ、運転者が有する携帯電話260のGPS信号等により運転者の現在位置を特定し、運転者の挙動を検知する。
【0049】
そして、乗車意思判定手段131が、運転者の現時点までの行動軌跡と、HDD(データベース)240に記憶されている乗車パターン又は非乗車パターンとを比較し、運転者の乗車意思の有無を判定する。同時に、到達時間算出手段132が、HDD(データベース)240に記憶されている過去の行動パターンに基づき、運転者が車両300に到達するまでに要する到達予測時間を算出する。乗車意思判定手段131により運転者が乗車意思を有すると判定された場合には、第1の通信手段140が、第2の通信手段150に対し、通信I/F250を介して当該判定情報と到達予測時間とを通知する。
【0050】
(車載器のハードウェア構成)
図3を用いて、本実施の形態に係る車載器のハードウェア構成を説明する。図3は、本実施の形態に係る車載器400のハードウェア構成の一例を示す図である。車載器400は、CPU410、ROM420、RAM430、HDD440、通信I/F450、各種車載センサ460、空調装置470、その他の装置480を有する。
【0051】
CPU410は、ROM420に記憶されたプログラムを実行する装置で、RAM430に展開(ロード)されたデータを、プログラムの命令に従って演算処理し、車載器400の全体を制御する。ROM420は、CPU410が実行するプログラムやデータを記憶している。RAM430は、CPU410でROM420に記憶されたプログラムを実行する際に、実行するプログラムやデータが展開(ロード)され、演算の間、演算データを一時的に保持する。
【0052】
HDD440は、基本ソフトウェアであるOS、本実施の形態に係るアプリケーションプログラムなどを、関連するデータとともに記憶する装置である。通信I/F450は、通信ネットワークを介して接続された他の通信制御機能を備えた周辺機器と情報(データ)をやり取りするインタフェースである。本実施の形態では、第2の通信手段150が通信I/F450を介し無線通信ネットワーク通じて、乗車意思検出装置200と、車両300への到達予測時間や乗車前制御開始許可情報(乗車前制御開始情報)の送受信を行う。
【0053】
各種車載センサ460は、車室内外の温度を検知する温度検知センサ等の装置である。本実施の形態では、車内環境調整手段170により車室内の環境を調整する場合に、当該温度検知センサ460による検知結果が用いられる。
【0054】
空調装置470は、車室内の空気の調整を行う装置である。本実施の形態では、車室内の冷房又は暖房を行う冷暖房装置471、開放することにより車室内の換気を行う窓472、車室内の換気を促す装置であるベンチレータ473が含まれる。その他の装置480は、例えば、車載器400が有する機能を運転者が利用する際に、各種設定を行うなどのユーザインタフェースとして機能する表示装置等の装置である。
【0055】
以下で、車載器400の処理の流れを、各処理で使用するハードウェアを含めて説明する。ただし、各手段は、CPU410が、ROM420又はHDD440に記憶された各手段に対応するプログラムを実行することにより実現されるため、この点に関しては説明を省略する。
【0056】
第2の通信手段150が、第1の通信手段140により送信された判定情報と到達予測時間とを通信I/F450を介して受信する。そして、第2の通信手段150が、受信したこれらの情報を車内環境調整手段170へ通知する。同時に、車両情報取得手段160が、温度検知センサ460を利用して車室内外の温度を計測し、その計測結果を車内環境調整手段170に通知する。それらの通知を受けて、車内環境調整手段170が、到達予測時間に基づき、冷暖房手段171又は車内換気手段172による車両室内の環境を調整する。このとき、冷暖房手段171は、冷暖房装置471を用いて車両室内の調整を行い、車内換気手段172は、窓472を開放し、又はベンチレータ473を用いて車内換気を行う。
【0057】
一方、上記車両室内の環境を調整している途中で、通信I/F450を介して、運転者挙動検知手段120により運転者に乗車意思が無いと判定された旨の情報が通知された場合には、車内環境調整手段170が、空調装置470(冷暖房装置471、窓472、ベンチレータ473)による車室内の環境調整を停止する。
【0058】
(車内空調システムの基本処理について)
図4を用いて、本実施の形態に係る車内空調システムの基本処理について説明する。図4は、本実施の形態に係る車内空調システム100の基本処理のフローチャートである。
【0059】
S1で車両空調システム100は処理を開始する。
【0060】
S2で運転者判定手段110が、ホームからの外出者が検出された場合に、ホームからの外出者が運転者条件を満たしているか否かを判定する。ここで、運転者条件とは、外出時に車両キーを携帯しているか、更に、運転免許証を携帯しているか、予め車両300の使用が許可された者であるか、といった条件である。
【0061】
S2で運転者判定手段110が、当該外出者が車両300の運転者であると判定した場合(S2でYesの場合)、S3で運転者挙動検知手段120が、ホームからの運転者の挙動(行動パターン)を検知する。例えば、外出時の出発時間、歩行ルート、歩行ルート上の各地点への到達時間、歩中の顔向き、視線、しぐさ等が検知されても良い。S2で運転者判定手段110が、当該外出者が車両300の運転者ではないと判定した場合(S2でNoの場合)、S7で車内空調システム100は処理を終了する。
【0062】
S4で乗車意思判定手段131が、運転者挙動検知手段120により現在検知されている運転者の行動パターンと、データベース240に記憶された過去の乗車時(又は非乗車時)の行動パターンとを比較する。
【0063】
S5で乗車意思判定手段131が、運転者挙動検知手段120により現在検知されている運転者の行動パターンが、データベース240に記憶された過去の乗車時の行動パターンと整合した場合、つまり、運転者に乗車意思が有ると判定した場合(S5でYesの場合)、S6で車載器400は、乗車前制御の処理を開始する。
【0064】
S5で乗車意思判定手段131が、運転者挙動検知手段120により現在検知されている運転者の行動パターンが、データベース240に記憶された過去の乗車時の行動パターンと整合しなかった場合、つまり、運転者に乗車意思が無いと判定した場合(S5でNoの場合)、S7で車内空調システム100は処理を終了する。
【0065】
このように、図4で示す基本動作によれば、運転者の特別な操作によらず、乗車前に必要な制御が実施できる。
【0066】
(車内環境調整手段による処理について)
図5を用いて、本実施の形態に係る車内環境調整手段における処理例について説明する。図5は、本実施の形態に係る車内環境調整手段における処理の一例を示すフローチャートである。
【0067】
S11で車内空調システム100が車内環境調整手段170による処理を開始する。
【0068】
S12で車内環境調整手段170が、乗車意思判定手段131から運転者が乗車意思を有する旨の通知を受信した場合(S12でYesの場合)、S13で車内環境調整手段170が、到達時間算出手段132から、車両300に到達するまでの到達予測時間Tに係る情報を受信する。S12で車内環境調整手段170が、乗車意思判定手段131から運転者が乗車意思を有する旨の通知を受信しない場合(S12でNoの場合)、S12で車内環境調整手段170は待機する。
【0069】
S14で車両情報取得手段160が、車両300の内外に設置した温度検知センサ260を用いて当該車両内外の温度を測定し、その測定結果を車内環境調整手段170へ通知する。この処理に対応して、車内環境調整手段170が、車両情報取得手段160より通知された車室内外の気温情報を取得する。
【0070】
S15で車内環境調整手段170が、冷暖房手段171による空調装置470を用いた車両室内の温度制御において、車両情報取得手段160より取得された車両室内の温度と外気温との気温差と、冷暖房手段171による冷暖房能力とに基づき、現在の車両室内の温度から予め設定した目標温度に達するまでに要する駆動時間tを算出する。
【0071】
ここで車内環境調整手段170は、特開2006−21659号公報により公開される技術により上記の駆動時間tを算出する形態としても良い。また、車内環境調整手段170は、車両室内の温度と外気温との気温差に対応した上記駆動時間tのテーブルを予め有しており、そのテーブルの中から適当な駆動時間tを選択する形態としても良い。例えば、上記気温差が10℃以上であれば車内環境調整手段170により選択される駆動時間tはt1分となり、上記気温差が10℃より小さければ車内環境調整手段170により選択される駆動時間tはt2分とする形態であっても良い。ここで、t1>t2であるものとする。また、車内環境調整手段170は、上記の駆動時間tとして、所定の値、例えば10分を常に選択する形態としても良い。
【0072】
ここで、車内空調システム100では、車両室内の温度に関し目標となる温度を予め定めておき、現在の車両室内の温度が当該目標温度より高い場合には、車室内を冷暖房手段171による冷房制御又は車内換気手段172による車内換気制御により車内環境の調整を行い、現在の車両室内の温度が当該目標温度より低い場合には、冷暖房手段171による暖房制御により車内環境の調整を行う。
【0073】
また、車内空調システム100では、運転者が車両300に到達するために要する到達予測時間Tと冷暖房手段171により車両室内の温度を目標温度まで調整するために要する駆動時間tとを比較して、到達予測時間Tが駆動時間tより大きい場合、すなわち、運転者が車両300に到達するまでに一定の時間的猶予がある場合には、車両室内の温度の調整を冷暖房手段171による冷房制御で行う。一方、一定の時間的猶予が無い場合は、車内換気手段172による車内換気で車両室内の温度の調整を行う。車内換気手段172により車内換気を行う方法としては、車両300の窓472を開けて自然換気を行う方法と、ベンチレータ473を用いて強制的に換気を行う方法とがある。
【0074】
S16で車内環境調整手段170が、車室内の温度が予め設定した目標温度以上であると判定した場合(S16でYesの場合)、かつ、S17で車内環境調整手段170が、到達予測時間Tが駆動時間t以上であると判定した場合(S17でYesの場合)、S18で冷暖房手段171が、車室内の温度が予め設定した目標温度となるように、冷暖房装置471を用いて、車室内の冷房を行う。
【0075】
上記の冷房制御においては、例えば、特開2007−112287号公報や特開2005−349854号公報により公開されている技術を用いて制御しても良い。
【0076】
また、運転者が車両300へ到達すると予想される時刻と車室内の温度が予め設定した目標温度となる時刻とを一致させるために、S17において車内環境調整手段170が判定を行った時刻から(T−t)の時間が経過した後、S18で冷暖房手段171が、車室内の温度が予め設定した目標温度となるように、冷暖房装置471を用いて、車室内の冷房を行う形態としても良い。こうすることにより、車内温度の調整に要するエネルギーを効率的に使用することができる。
【0077】
S16で車内環境調整手段170が、車室内の温度が予め設定した目標温度以上であると判定した場合(S16でYesの場合)、かつ、S17で車内環境調整手段170が、到達予測時間Tが駆動時間tより小さいと判定した場合(S17でNoの場合)、S19で車内換気手段172が車室内の換気を行う。ここで、車内換気手段172は、車両300が備える窓472を開放することにより車室内の換気を行う形態としても良いし、ベンチレータ473を用いて、強制的に車室内の換気を行う形態としても良い。
【0078】
S16で車内環境調整手段170が、車室内の温度が予め設定した目標温度より低いと判定した場合(S16でNoの場合)、S21で冷暖房手段171が、車室内の温度が予め設定した目標温度となるように、冷暖房装置471を用いて、車室内の暖房を行う。
【0079】
上記の暖房制御においては、例えば、特開2007−112287号公報や特開2005−349854号公報により公開されている技術を用いて制御しても良い。
【0080】
また、運転者が車両300へ到達すると予想される時刻と車室内の温度が予め設定した目標温度となる時刻とを一致させるために、S16において車内環境調整手段170が判定を行った時刻から(T−t)の時間が経過した後、S21で冷暖房手段171が、車室内の温度が予め設定した目標温度となるように、冷暖房装置471を用いて、車室内の暖房を行う形態としても良い。こうすることにより、車内温度の調整に要するエネルギーを効率的に使用することができる。
【0081】
ここで、車載器400(車内環境調整手段170)による処理と平行して、乗車意思検出装置200は、運転者の挙動を監視し、当該運転者の乗車意思の有無を判定する処理を継続しているため、下記のような処理が行うことができる。
【0082】
S22で車内環境調整手段170による車内環境の調整処理を開始した後、乗車意思判定手段131が運転者は乗車意思を有していない旨の判定を行い、第2の通信手段150を介して、車内環境調整手段170へ上記の判定に係る情報を通知する。それに対応して、車内環境調整手段170が、乗車意思判定手段131から運転者が乗車意思を有していない旨の通知を受信した場合、つまり、乗車前制御を解除する旨の指示を受けた場合(S22でYesの場合)、S23で車内環境調整手段170が、冷暖房手段171又は車内換気手段172による車室内の環境調整を停止し、S24で車内空調システム100が車内環境調整手段170による処理を終了する。
【0083】
上記S23における車内環境調整手段170の具体的な処理は、車室内の冷暖房を行っていた場合は冷暖房装置471の作動を停止させ、窓472を開放し車内の換気をしていた場合は窓472を再び閉じ、ベンチレータ473による車内の換気を行っていた場合は、ベンチレータの作動を停止させる。
【0084】
S22で車内環境調整手段170が、乗車意思判定手段131から運転者が乗車意思を有していない旨の通知を受信していない場合、つまり、乗車前制御を解除する旨の指示を受けていない場合(S22でNoの場合)、S13で車内環境調整手段170は待機する。
【0085】
(総括)
車内空調システム100では、運転者の日常的な行動に基づいて乗車意思の有無を判断し、当該運転者に乗車意思が有ると判断した場合には、車室内の温度を適切に制御する。そのため、運転者が乗車するときには、車室内の温度は適当に調整され、運転者は心地よく乗車することができる。
【0086】
一方で、一旦、車室内の温度の制御を開始した場合であっても、運転者のその後の行動に基づき、乗車意思が無いと判断されたときは、当該制御を停止する。そのため、当該制御に係る無駄なエネルギー消費を防ぐことができる。
【0087】
つまり、本発明では、運転者の行動パターンを分析し、適切なタイミングで当該車内空調システムを動作させ、乗車時の室内環境を効率良く整えることができる車内空調システムを提供することができる。
【0088】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施の形態に係る車内空調システムの動作原理を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る乗車意思検出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る車載器のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る乗車前制御に関連する基本処理を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態に係る車内環境調整手段における処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
100 車内空調システム
110 運転者判定手段
120 運転者挙動検知手段
130 乗車パターン判定手段
131 乗車意思判定手段
132 到達時間算出手段
140 第1の通信手段
150 第2の通信手段
160 車両情報取得手段
170 車内環境調整手段
171 冷暖房手段
172 車内換気手段
200 乗車意思検出装置
210、410 CPU
220、420 ROM
230、430 RAM
240、440 HDD
250、450 通信I/F
260 各種センサ・計測装置
270 時計
280、480 その他の装置
300 車両
400 車載器
460 各種車載センサ
470 空調装置
471 冷暖房装置
472 窓
473 ベンチレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の過去の行動類型に係る情報に基づき、前記運転者が車両への乗車意思を有するか否かを判定する乗車意思判定手段と、
前記乗車意思判定手段により前記乗車意思を有すると判定された場合に、前記運転者が前記車両へ到達するまでに要する時間を算出する到達時間算出手段と、
前記車両室内の温度が所定の温度となるよう冷房又は暖房を行う冷暖房手段と、
前記車両が有する窓を開ける車内換気手段と、
前記到達時間算出手段により算出された前記時間が所定の時間以上である場合には、前記冷暖房手段を作動させ、前記到達時間算出手段により算出された前記時間が前記所定の時間未満である場合には、前記車内換気手段を作動させる車内環境調整手段と、を有することを特徴とする車内空調システム。
【請求項2】
前記車内換気手段は、前記窓を開けることに代えて、ベンチレータを用いて前記車両室内の換気を行うことを特徴とする請求項1に記載の車内空調システム。
【請求項3】
前記車内環境調整手段は、前記冷暖房手段が前記車両室内の温度を前記所定の温度とするために要する時間である前記所定の時間を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の車内空調システム。
【請求項4】
前記乗車意思判定手段により前記乗車意思を有さないと判定された場合に、前記車内環境調整手段は、前記冷暖房手段又は前記車内換気手段の作動を停止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の車内空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−248778(P2009−248778A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99795(P2008−99795)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】