説明

車室フロアパネル

【課題】重量増を招かないビードによって、排気管ハンガを介しトンネルの側壁、車室フロアパネルに伝達される排気管からの振動入力に起因した共振や異音発生を防止できるようにする。
【解決手段】車両の前後方向に延びるトンネル1が形成され、そのトンネル側壁11aに排気管3を支持する排気管ハンガ4が取付けられた車室フロアパネル100において、トンネル側壁11aの排気管ハンガ4の取付け対応位置にて立ち下がり、このトンネル側壁11aに続くパネル壁12へ車両の左右方向に延びる横向きビード6と、この横向きビード6から車両の前後方向に延びる縦向きビード7a、7b、7cとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室フロアパネル、詳しくは、前後方向に延びるトンネルの側壁に排気管ハンガを設けた車室フロアパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
このような車室フロアパネルは、下記の特許文献1、2などで知られ、トンネル内空間を利用してマフラーを有した排気管が配置できる。特許文献1は、特に、トンネルの両内側面下部に固定された断面が略コ字形のトンネルサイドメンバーの一方によって排気管ハンガを溶接して支持し、この排気管ハンガによって、これに装着した排気管マウント用の支持ゴムを介し排気管を支持する具体例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−127278号公報
【特許文献2】特開2008−74335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、省エネ、省資源、走行負荷の低減が望まれるなか、車両の軽量化の一環として車室フロアパネルのトンネルおよびその左右両側に延びるパネル壁の薄肉化が課題となっている。しかし、パネル壁に懸架されたハンガから伝わる排気管の振動は、支持ゴムによっては吸収し切れない。結果、壁の薄肉化は入力する振動への共振、異音発生の原因になる。
【0005】
これを、トンネル付近の板厚の増大、リインフォースメントの追加などによって対応するのでは、薄肉化効果が低減し、また相殺されてしまう。また、車室フロアパネルには図4に示すようなビードaを設けて補強することが従来から行われているものの、排気管ハンガbを介しトンネルcの側壁からこれに続くパネルdに伝わる振動は防止しきれない。従って、そのような特異な振動入力に起因する共振や異音発生に対応できるパネル壁構造はまだ提案されていない。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑み、重量増を招かないビードによって、排気管ハンガを介しトンネルの側壁、車室フロアパネルに伝達される排気管からの振動入力に起因した共振や異音発生を防止できる車室フロアパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車室フロアパネルは、車両の前後方向に延びるトンネルが形成され、そのトンネル側壁に排気管を支持する排気管ハンガが取付けられた車室フロアパネルにおいて、トンネル側壁の排気管ハンガの取付け対応位置にて立ち下がり、このトンネル側壁に続くパネル壁へ車両の左右方向に延びる横向きビードと、この横向きビードから車両の前後方向に延びる縦向きビードとを含む、互いに繋がる横向きビードおよび縦向きビードを形成したことを特徴とする。
【0008】
このような構成では、排気管から排気管ハンガに及ぶ振動を、トンネル側壁の排気管ハンガ取付け位置に対応するトンネル側壁の横向きビード立ち下がり部から、これに続くパネル壁の横向きビードにて受けて、車両の横方向に振動を抑え、このような振動抑制構造上新たに分散発生する横向きビードがなす軸まわりの捩れ振動を縦向きビードによって抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車室フロアパネルによれば、排気管から排気管ハンガに及ぶ振動を、トンネル側壁からこれに続くパネル壁に延びる横向きビードで車両の横方向に抑え、この振動抑制構造から分散発生する横向きビードがなす軸まわりの捩れ振動を縦向きビードによって抑えるので、薄肉化を特に損なうことなく、排気管の振動による車室フロアパネルの共振や異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る車室フロアパネルの1つの具体例を示す斜視図である。
【図2】同車室フロアパネルの側面図である。
【図3】同車室フロアパネルのトンネルの排気管ハンガ取付け部を示す断面図である。
【図4】従来の車室フロアパネルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る車室フロアパネルの1つの具体例につき、図1〜3を参照して説明し、本発明の理解に供する。従って、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載事項を限定するものではない。
【0012】
図1には、本発明の車室フロアパネル100の概観を示す。車室フロアパネル100は、パネル壁12上に一体的に形成された凹凸と補強材からなる。パネル壁12の前後は図示していない車両幅方向に形成されたクロスメンバーおよびリインフォースメントに当接される。パネル壁12上には、車両前後方向への剛性を高めるために、車両前方から後方に向かうトンネル1がパネル壁12と一体的に形成されている。従って、パネル壁12の車両下面には、トンネル1に対応した凹みが形成される。
【0013】
さらにトンネル1は断面台形状でトンネル天壁11の両肩部にはビートが形成されている。強度補強のためである。パネル壁12の下面には、断面ハット形状の補強材21が、車両前方から後方へ向かって配置され、パネル壁12の下側面に接合されている。なお、図示していないが、車両幅方向にもクロスメンバーが補強材として配置されてもよい。
【0014】
また、パネル壁12の下面に形成されたトンネル1に対応する凹みには、エンジンからの排気管3が配置され、パネル壁12の下面側に係止されたハンガ4で固定される。ハンガ4は、トンネル1の側壁11aのパネル壁12下面側に溶接等の手段で接合されている。図2は、車室フロアパネル100の側面図を示す。また、図3は、車室フロアパネル100のハンガ4の部分での断面図を示す。
【0015】
図2を参照して、ハンガ4は車室フロアパネル100の車両後方側に配置されるが、この位置に限定されるものではない。また、ハンガ4は、車室フロアパネルのトンネル1に対して少なくとも一か所に配置されているが、複数箇所あってもよい。図3を参照して、ハンガ4は、パネル壁12のトンネル1の天壁11と側壁11aに対応する車両下側面に補強用の付帯部材13を介して接合される。
【0016】
ハンガ4は、断面円状若しくは方形上の線材4a、4bと、弾性体支持具5からなる。線材4aは、付帯部材13を介して、トンネル1の天壁11と側壁11aに対応する傾斜面で接合され、車両下側に所定寸法だけ延設される。延設された線材4bの先端には車両上下方向で固定される弾性体支持具5の一端側が固定される。
【0017】
弾性体支持具5の他端側には、線材4bの一端が固定される。線材4bは車両幅方向に所定寸法だけ延設され、排気管3を支持する。すなわち、ハンガ4は、付帯部材13を介して、パネル壁12の下側面と接合され、さらに弾性体支持具5を介して排気管3を支持する。このように弾性体支持具5を介して排気管3をパネル壁で支持するのは、排気管3の振動をパネル壁12に伝わるのを減衰させるためである。
【0018】
しかし、上述したように車両重量を軽量化するためにトンネル1を含むパネル壁12を薄肉化すると、この弾性体支持具5でも振動を吸収できなくなる。結果、パネル壁12に排気管3の振動が伝わり、共振周波数に応じた異音が生じる。
【0019】
図1を再び参照して、本発明の車室フロアパネル100では、ハンガ4が接合されているトンネル1の側壁11aからパネル壁12の上側面にかけて振動防止のための凸型のビードを形成する。
【0020】
図1に加え図3も参照して、ビードは、トンネル1の側壁11aでハンガ4が接合された位置に対応するパネル壁12の上側面の位置から、トンネル側壁11aを立ち下がってパネル壁12を車両幅方向に形成される。より詳細には、ビードは、トンネル側壁11aの横向きビード立ち下がり部6aから、これに続くパネル壁12の横向きビード6bを有する。また、横向きビード6bからは、車両前後方向に形成される縦向きビード7が形成される。特に縦向きビード7は、横向きビード6bを基点として、車両後方へ所定長形成された縦向きビード7aを有する。
【0021】
また、縦向きビード7aからトンネル1と遠い側に離れた位置に、横向きビード6bを基点として車両前方へ所定長形成された縦向きビード7bを有する。さらに、縦向きビード7bからトンネル11から遠い側に、横向きビード6bを基点として車両後方へ所定長形成された縦向きビード7cを有する。すなわち、横向きビード6bを基点として、車両後方へ形成された縦向きビード7a、7cと車両前方へ形成された縦向きビード7bが、互い違いに形成される。
【0022】
また、横向きビード6bからはさらに車両幅方向(車両外側)に向けて横向きビード8aが、パネル壁12の車両下側面に断面ハット形状の補強材21が配設されている位置まで形成される。横向きビード8aには、車両前後方向に形成される縦向きビード9aが連続して形成される。横向きビード8aと縦向きビード9aの関係は、特に限定されるものではないが、縦向きビード9aの途中に横向きビード8aが結合された形状であってもよい。また、縦向きビード9aの少なくとも一方の端部には所定長の横向きビード8bが形成される。ここで、横向きビード6a、6b、8aは、車両幅方向で中心軸が一致されており、この中心軸は、ハンガ4の取り付け位置と一致させている。
【0023】
次にこれらのビードの機能について説明する。排気管3からの振動は、トンネル側壁11aから、これに続くパネル壁12に延びる横向きビード6による車両幅方向の剛性向上で抑制される。そして、横向きビード6の軸周りに発生する捩れ振動を縦向きビード7でさらに抑制する。横向きビード6bのトンネル側壁11a近傍で互い違いに車両前後に延びる3つの縦向きビード7は、排気管3からの振動を大きく減衰させることができる。特に、横向きビード6bを基点として互い違いに車両前後方向に形成される構成が振動吸収には効果が高い。
【0024】
さらに、3つの縦向きビード7が近接配置された部分から車両外側に向け延びる横向きビード8aによってさらに振動を減衰させる。また、この横向きビード8aに生じる軸周り方向の捩れ振動を、補強材21が配置されているパネル壁12上の位置に配置した縦向きビード9aによって減衰させる。さらに、縦向きビード9aの軸周りに若干残る捩れ振動を縦向きビード9aの先端に中央部一側で繋がる短い横向きビード8bによって受けて最終的に抑えるようにしている。
【0025】
言い換えると、ハンガ4の取り付け位置と一致させて形成された横向きビードの中心軸が振動の節とならないように、縦向きビード7a、7b、7cおよび9aで横向きビードの捩れ振動を抑制する。
【0026】
なお、横向きビード8は、上記横向きビード6に加え、横向きビード8a、8bを含み、縦向きビード9は、上記縦向きビード7に加え、縦向きビード9aを含み、それらが互いに繋がって、車室フロアパネル100の面外変形に対する強度、剛性を、それらの配置域で高めている。また、横向きビード6と横向きビード8aとは、前後に位置ずれしていて、この位置ずれによってできる縦向きの繋がり部が、これら横向きビード6および横向きビード8aがなす軸まわりに生じる捩れ振動を抑制する。
【0027】
また、横向きビード8、縦向きビード9は、図1に示すように排気管4が取付けられないトンネル側壁11aおよびこれに繋がるパネル壁12にも同様に、従って対照的に、形成している。これにより、車室フロアパネル100の左右での強度バランスがとれる。もちろん、左右のトンネル側壁11aに排気ハンガを取り付け、排気管3を支持する場合には、左右の両パネル壁12に横向きビード8、縦向きビード9を設けることができるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、車室フロアパネルにおいて、トンネル側壁に取付けた排気管ハンガを介し排気管の振動がトンネル側壁からパネル壁に伝わり、共振して異音を発生するのを抑えるのに実用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 トンネル
3 排気管
4 排気管ハンガ
5 弾性体支持具
6、6a、6b、8、8a、8b 横向きビード
7、9a 縦向きビード
11 トンネル天壁
11a トンネル側壁
12 パネル壁
21 骨材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延びるトンネルが形成され、そのトンネル側壁に排気管を支持する排気管ハンガが取付けられた車室フロアパネルにおいて、トンネル側壁の排気管ハンガの取付け対応位置にて立ち下がり、このトンネル側壁に続くパネル壁へ車両の左右方向に延びる横向きビードと、この横向きビードから車両の前後方向に延びる縦向きビードとを含む、互いに繋がる横向きビードおよび縦向きビードを形成したことを特徴とする車室フロアパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−173542(P2011−173542A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39880(P2010−39880)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】