説明

車室内の冷暖房システム

【課題】車室内の熱媒体用の配管を有効に活用して車室内の冷暖房を行う。
【解決手段】循環路4は、加熱された熱媒体(熱媒)が流通する高温側管路20と冷却された熱媒体(冷媒)が流通する低温側管路21とを有する。配管5は、車室3内の所定範囲を巡回する中間部5aと、車室3内から車室3外へ延びる両端部5bとを有する。第1バルブ30は、基本状態と高温側接続状態と低温側接続状態とに選択的に設定される。基本状態では、配管5の両端部5aが高温側管路20及び低温側管路21から遮断され、熱媒体は循環路4から配管5に流入しない。高温側接続状態では、配管5の両端部5bが高温側管路20の上流側及び下流側にそれぞれ接続され、熱媒が配管5に流入する。低温側接続状態では、配管5の両端部5bが低温側管路21の上流側及び下流側にそれぞれ接続され、冷媒が配管5に流入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
実開平5−54018号公報には、自動車のエンジン冷却水の配管におけるエンジンからラジエータへの還流配管を、熱交換器の一次側に接続し、熱交換器の二次側配管を、ポンプを介して、車室の床面にジグザグに配置された暖房管に接続した自動車用床暖房装置が記載されている。
【0003】
また、特開2008−254665号公報には、車室空間を形成する車室内面に輻射放熱器を設定し、輻射放熱器を設定した面からの輻射熱で暖房する車両用暖房装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−54018号公報
【特許文献2】特開2008−254665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2は、何れもエンジンによって過熱された冷却水を熱媒とした暖房装置であり、車室内に配置された熱媒体の巡回管路は、気温の高い夏季などに利用されることはない。
【0006】
そこで、本発明は、車室内に配置された熱媒体の巡回管路を有効に活用することが可能な車室内の冷暖房システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様は、車室内の冷暖房システムであって、循環路と巡回管路と流路切替手段とを備える。
【0008】
循環路は、加熱された熱媒体が流通する高温側管路と冷却された熱媒体が流通する低温側管路とを有し、車両の車室外に配置されて熱媒体が循環する。巡回管路は、車両の車室内の所定範囲を巡回する中間部と、車室内から車室外へ延びる両端部とを有する。流路切替手段は、基本状態と高温側接続状態と低温側接続状態とに選択的に設定可能である。基本状態では、巡回管路の両端部が高温側管路及び低温側管路から遮断され、熱媒体は循環路から巡回管路に流入しない。高温側接続状態では、巡回管路の両端部が高温側管路の上流側及び下流側にそれぞれ接続され、加熱された熱媒体が巡回管路に流入する。低温側接続状態では、巡回管路の両端部が低温側管路の上流側及び下流側にそれぞれ接続され、冷却された熱媒体が巡回管路に流入する。
【0009】
上記構成では、流路切替手段が高温側接続状態に設定されると、加熱された熱媒体(熱媒)は、循環路の高温側管路から巡回管路へ流入し、巡回管路を流通して、高温側管路へ戻る。熱媒の巡回によって車室内の所定範囲が加熱されるので、例えば外気温が低下する冬季などに、車室内の温度(室温)を上昇させることや、室温の低下を防止することが可能となり、車室内の温度環境の快適化を図ることができる。
【0010】
また、流路切替手段が低温側接続状態に設定されると、冷却された熱媒体(冷媒)は、循環路の低温側管路から巡回管路へ流入し、巡回管路を流通して、低温側管路へ戻る。冷媒の巡回によって車室内の所定範囲が冷却されるので、例えば外気温が上昇する夏季などに、室温を低下させることや、室温の上昇を防止することが可能となり、車室内の温度環境の快適化を図ることができる。
【0011】
このように、車室内に配置された巡回管路を有効に活用して、車室内の暖房と冷房とを行うことができる。
【0012】
また、流路切替手段が基本状態に設定されると、熱媒体は巡回管路に流入せずに循環路を循環する。従って、他の冷却対象や加熱対象を冷却又は加熱するための熱媒体の循環路を利用して、車室内の暖房や冷房を行うことができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の冷暖房システムであって、検知手段と判定手段と制御手段とを備える。
【0014】
検知手段は、車両の外部温度に関する車外情報及び前記車室内の温度に関する車内情報のうち少なくとも一方を検知する。判定手段は、巡回管路に熱媒体を供給しない供給停止状態と、加熱された熱媒体を供給する熱媒供給状態と、冷却された熱媒体を供給する冷媒供給状態とのうち、何れの状態が車室内の温度環境にとって好適であるかを、検知手段が検知した情報に基づいて判定する。制御手段は、判定手段の判定結果に基づいて流路切替手段を制御する。
【0015】
上記構成では、供給停止状態と熱媒供給状態と冷媒供給状態とのうち何れの状態が車室内の温度環境にとって好適であるかを判定手段が判定し、その判定結果に基づいて制御手段が流路切替手段を制御するので、車両の乗員は、煩雑な入力操作を行うことなく、車室内の温度環境の快適化を図ることができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様の冷暖房システムであって、検知手段は、日射量を車外情報として検出する日射量検出手段と、車室内の熱流束を車内情報として検出する熱流束検出手段とを有する。判定手段は、熱流束検出手段が検出した熱流束が所定の判定閾値以下であるとき、供給停止状態が好適であると判定する。判定手段は、熱流束検出手段が検出した熱流束が所定の判定閾値を超えており、且つ日射量検出手段が検出した日射量が判定閾値以下であるとき、熱媒供給状態が好適であると判定する。また、判定手段は、熱流束検出手段が検出した熱流束が判定閾値を超えており、且つ日射量検出手段が検出した日射量が判定閾値を超えているとき、冷媒供給状態が好適であると判定する。
【0017】
上記構成では、車両が車室内に温風や冷風を供給する空調装置を備えており、例えば、外気温が低く日射量が判定閾値以下となる冬季に、車室内の温度が低下した状態で運転者が車両を始動し、空調装置による車室内への温風の供給を開始すると、車室内の熱流束が増大する。日射量検出手段が検出する日射量は判定閾値以下であるため、熱流束検出手段が検出する熱流束が判定閾値を超えると、判定手段は熱媒供給状態が好適であると判定する。制御手段は、判定手段の判定結果に基づいて流路切替手段を制御し、流路切替手段が高温側接続状態に設定されると、熱媒が巡回管路を巡回し、車室内の所定範囲が加熱される。
【0018】
また、例えば、外気温が高く日射量が判定閾値を超える夏季に、車室内の温度が上昇した状態で運転者が車両を始動し、空調装置による車室内への冷風の供給を開始すると、車室内の熱流束が増大する。日射量検出手段が検出する日射量は判定閾値を超えているため、熱流束検出手段が検出する熱流束が判定閾値を超えると、判定手段は冷媒供給状態が好適であると判定する。また、運転者が車両を停車させ、空調装置による車室内への冷風の供給を停止し、外気温から受ける温度負荷によって車室内の温度が上昇し、熱流束検出手段が検出する熱流束が判定閾値を超えた場合にも、判定手段は冷媒供給状態が好適であると判定する。制御手段は、判定手段の判定結果に基づいて流路切替手段を制御し、路切替手段が低温側接続状態に設定されると、冷媒が巡回管路を巡回し、車室内の所定範囲が冷却される。
【0019】
本発明の第4の態様は、上記第2の態様の冷暖房システムであって、検知手段は、日射量を車外情報として検出する日射量検出手段と、車室内の温度を車内情報として検出する室温検出手段とを有する。判定手段は、日射量検出手段が検出した日射量が所定の判定閾値以下であり、且つ室温検出手段が検出した車室内の温度が所定の下限値以上であるとき、又は日射量検出手段が検出した日射量が判定閾値を超えており、且つ室温検出手段が検出した車室内の温度が所定の上限値以下であるとき、供給停止状態であると判定する。判定手段は、日射量検出手段が検出した日射量が所定の判定閾値以下であり、且つ室温検出手段が検出した車室内の温度が所定の下限値未満であるとき、熱媒供給状態であると判定する。また、判定手段は、日射量検出手段が検出した日射量が判定閾値を超えており、且つ室温検出手段が検出した車室内の温度が所定の上限値を超えているとき、冷媒供給状態であると判定する。
【0020】
上記構成では、例えば、外気温が低く日射量が判定閾値以下となる冬季に、車室内の温度が下限値よりも低下した状態で運転者が車両を始動すると、日射量検出手段が検出する日射量は判定閾値以下であり、室温検出手段が検出する車室内の温度は下限値よりも低下しているため、判定手段は熱媒供給状態が好適であると判定する。制御手段は、判定手段の判定結果に基づいて流路切替手段を制御し、流路切替手段が高温側接続状態に設定されると、熱媒が巡回管路を巡回し、車室内の所定範囲が加熱される。
【0021】
また、例えば、外気温が高く日射量が判定閾値を超える夏季に、車室内の温度が上限値よりも上昇した状態で運転者が車両を始動すると、日射量検出手段が検出する日射量は判定閾値を超えており、室温検出手段が検出する車室内の温度は上限値を超えているため、判定手段は冷媒供給状態が好適であると判定する。また、運転者が車両を停車させ、外気温から受ける温度負荷によって車室内の温度が上限値よりも上昇した場合にも、判定手段は冷媒供給状態が好適であると判定する。制御手段は、判定手段の判定結果に基づいて流路切替手段を制御し、流路切替手段が低温側接続状態に設定されると、冷媒が巡回管路を巡回し、車室内の所定範囲が冷却される。
【0022】
本発明の第5の態様は、上記第2〜第4の態様の何れかの冷暖房システムであって、第2の巡回管路と第2の流路切替手段とを備える。
【0023】
第2の巡回管路は、車室内の第2の所定範囲を巡回する中間部と、車室内から車室外へ延びる両端部とを有する。第2の流路切替手段は、基本状態と低温側接続状態とに選択的に設定可能である。基本状態では、第2の巡回管路の両端部が高温側管路及び低温側管路から遮断され、熱媒体は循環路から第2の巡回管路に流入しない。低温側接続状態では、第2の巡回管路の両端部が低温側管路の上流側及び下流側にそれぞれ接続され、冷却された熱媒体が第2の巡回管路に流入する。
【0024】
巡回管路の中間部は、車室内の床及びシートの少なくとも一方の内部を巡回する。第2の巡回管路の中間部は、車室内の天井及びダッシュパネルの少なくとも一方の内部を巡回する。制御手段は、判定手段の判定結果に基づいて第2の流路切替手段を制御する。
【0025】
上記構成では、車室内の床及びシートの少なくとも一方の内部には、熱媒と冷媒とが適宜巡回し、天井及びダッシュパネルの少なくとも一方の内部には、冷媒が適宜巡回する。このように、乗員にとって好適な場所を熱媒及び冷媒が適宜巡回するので、車室内の温度環境をさらに快適化することができる。
【0026】
本発明の第6の態様は、上記第5の態様の冷暖房システムであって、循環路の高温側管路は、エンジンを冷却することによって加熱された熱媒体としての冷却水を放熱器へ流入する。循環路の低温側管路は、放熱器によって冷却された冷却水をエンジンへ供給する。
【0027】
制御手段は、供給停止状態が好適である判定手段が判定した場合、流路切替手段と第2の流路切替手段とを基本状態に設定する。制御手段は、熱媒供給状態が好適であると判定手段が判定し、且つエンジンが作動している場合、流路切替手段を高温側接続状態に設定し、第2の流路切替手段を基本状態に設定する。制御手段は、熱媒供給状態が好適であると判定手段が判定し、且つエンジンが停止している場合、流路切替手段と第2の流路切替手段とを基本状態に設定する。制御手段は、冷媒供給状態が好適であると判定手段が判定し、且つエンジンが作動している場合、流路切替手段と第2の流路切替手段とを冷媒供給状態に設定する。また、制御手段は、冷媒供給状態が好適であると判定手段が判定し、且つエンジンが停止している場合、流路切替手段を基本状態に設定し、第2の流路切替手段を冷媒供給状態に設定する。
【0028】
上記構成では、エンジンを冷却するための冷却水を熱媒体として利用するので、車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0029】
また、熱媒供給状態が好適であると判定手段が判定した場合において、エンジンが作動しているときには、巡回管路への熱媒の供給が可能であるため、制御手段は、流路切替手段を高温側接続状態に設定し、巡回管路に熱媒を巡回させる。一方、エンジンが停止しているときには、熱媒を供給できない状態であるため、巡回管路に熱媒体を巡回させない。
【0030】
また、冷媒供給状態が好適であると判定手段が判定した場合において、エンジンが作動しているときには、乗員が車室内に存在している可能性が高いため、制御手段は、流路切替手段及び第2の流路切替手段を低温側接続状態に設定し、巡回管路及び第2の巡回管路に冷媒を巡回させる。一方、エンジンが停止しているときには、乗員が車室内に存在している可能性が低く、冷却水の循環及び冷却に消費されるエネルギを抑制することが好ましいため、第2の流路切替手段を冷媒供給状態に設定し、第2の巡回管路のみに冷媒を巡回させる。
【0031】
このように、エンジンの作動又は停止に応じて熱媒や冷媒の巡回状態を変更するので、車両全体のエネルギ効率をさらに向上させるとともに、車室内の温度環境をさらに快適化することができる。
【0032】
本発明の第7の態様は、上記第6の態様の冷暖房システムであって、太陽電池とポンプとを備える。
【0033】
太陽電池は、車両に搭載され、太陽光線を電力に変換する。ポンプは、循環路に設けられ、太陽電池からの電力供給によって作動して熱媒体を循環させる。放熱器は、太陽電池からの電力供給によって作動して熱媒体を冷却するファンを有する。
【0034】
上記構成では、熱媒体の循環や冷却が太陽電池からの電力供給によって行われるので、車両全体のエネルギ効率をさらに向上させることができる。
【0035】
また、熱媒体の循環や冷却を車両に搭載されたバッテリからの電力供給によって行う場合、車両の停車中において、バッテリの充電量の低下によって熱媒体の循環や冷却が行われない可能性があるが、上記構成では、車両の停車中であっても、太陽電池からの電力供給が確保されている限り、熱媒体の循環や冷却を継続して行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、車室内に配置された巡回管路を有効に活用して、車室内の暖房と冷房とを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態の冷暖房システムを模式的に示す概略構成図である。
【図2】バルブユニットの全てのバルブが基本状態に設定されている場合の概略構成図である。
【図3】バルブユニットの第1バルブが高温側接続状態に設定され、第2バルブ及び第3バルブが基本状態に設定されている場合の概略構成図である。
【図4】バルブユニットの全てのバルブが低温側接続状態に設定されている場合の概略構成図である。
【図5】バルブユニットの第1バルブが基本状態に設定され、第2バルブ及び第3バルブが低温側接続状態に設定されている場合の概略構成図である。
【図6】第1実施形態のバルブ制御処理を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態のバルブ制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態の冷暖房システムについて、図面を参照して説明する。本実施形態の冷暖房システムは、トラックなどの車両1に搭載され、キャブ2の車室3内の暖房及び冷房を行う。なお、車両1には、本実施形態の冷暖房システムの他に、車室3内に温風や冷風を供給する空調装置(図示省略)を備えている。
【0039】
図1に示すように、冷暖房システムは、循環路4と、床・シート配管(巡回管路)5と、天井配管(第2の巡回管路)6と、ダッシュパネル配管(第2の巡回管路)7と、バルブユニット8と、ECU(Electric Control Unit)9と、日射量センサ(検知手段、日射量検出手段)17と、熱流束センサ(検知手段、熱流束検出手段)18と、太陽電池19とを備える。
【0040】
車両1のエンジン10には、冷却水(熱媒体)の巡回流路(図示省略)が設けられ、車両1の前端部には、エンジン10によって昇温された冷却水を空冷するラジエータ(放熱器)11が設けられている。ラジエータ11は、冷却水を冷却するファン12を有する。
【0041】
循環路4は、高温側管路20と低温側管路21とを有し、車両1の車室3の外部下方に配置されている。高温側管路20は、エンジン10の巡回流路の流出口13とラジエータ11の流入口14とを連通する。低温側管路21は、エンジン10の巡回流路の流入口15とラジエータ11の流出口16とを連通する。低温側管路21には、冷却水を循環させる電動ポンプ22が設けられている。電動ポンプ22は、エンジン10を冷却することによって加熱された冷却水(熱媒)を、高温側管路20を介してラジエータ11へ流入させ、ラジエータ11によって冷却された冷却水(冷媒)を、低温側管路21を介してエンジン10へ供給する。このように、循環路4は、エンジン10によって加熱された冷却水を回収し、ラジエータ11によって冷却した後、エンジン10へ循環供給する。なお、電動ポンプ22は、高温側管路20に設けてもよい。
【0042】
床・シート配管5は、車室3の下方を区画する床(床パネル)23の内部を巡回し、床23に載置されたシート24の座部24a及び背部24bの内部を巡回する中間部5aと、車室3の外部下方へ延びる両端部5bとを有する。なお、床・シート配管5を、床配管とシート配管とに分けて設けてもよい。
【0043】
天井配管6は、車室3の上方を区画する天井(天井パネル)25の内部を巡回する中間部6aと、床23を挿通して車室3の外部下方へ延びる両端部6bとを有する。
【0044】
ダッシュパネル配管7は、車室3の前部に配置されたダッシュパネル26の内部を巡回する中間部7aと、床23を挿通して車室3の外部下方へ延びる両端部7bとを有する。なお、天井配管6とダッシュパネル配管7とを、床・シート配管5のように連続的に設けてもよい。
【0045】
バルブユニット8は、第1バルブ(流路切替手段)30と第2バルブ(第2の流路切替手段)31と第3バルブ(第2の流路切替手段)32とを有し、高温側管路20と低温側管路21との双方に跨るように設けられている。
【0046】
第1バルブ30は、基本状態と高温側接続状態と低温側接続状態とに選択的に設定される。基本状態では、図2及び図5に示すように、床・シート配管5の両端部5bが高温側管路20及び低温側管路21から遮断され、冷却水は循環路4から床・シート配管5に流入しない。高温側接続状態では、図3に示すように、床・シート配管5の両端部5bは、低温側管路21には接続されず、高温側管路20の上流側及び下流側にそれぞれ接続される。これにより、加熱された冷却水(熱媒)は、高温側管路20から床・シート配管5へ流入し、中間部5aを流通した後、高温側管路20へ戻る。低温側接続状態では、図4に示すように、床・シート配管5の両端部5bは、高温側管路21には接続されず、低温側管路21の上流側及び下流側にそれぞれ接続される。これにより、冷却された冷却水(冷媒)は、低温側管路21から床・シート配管5へ流入し、中間部5aを流通した後、低温側管路21へ戻る。高温側接続状態と低温側接続状態とでは、床・シート配管5内の冷却水の流通方向が逆転する。
【0047】
第2バルブ31は、基本状態と低温側接続状態とに選択的に設定される。基本状態では、図2及び図3に示すように、天井配管6の両端部6bが高温側管路20及び低温側管路21から遮断され、冷却水は循環路4から天井配管6に流入しない。低温側接続状態では、図4及び図5に示すように、天井配管6の両端部5bは、高温側管路21には接続されず、低温側管路21の上流側及び下流側にそれぞれ接続される。これにより、冷却された冷却水(冷媒)は、低温側管路21から天井配管6へ流入し、中間部6aを流通した後、低温側管路21へ戻る。
【0048】
第3バルブ32は、接続対象がダッシュパネル配管7であることを除き、第2バルブ31と同様に構成されている。すなわち、基本状態では、図2及び図3に示すように、ダッシュパネル配管7の両端部7bが高温側管路20及び低温側管路21から遮断され、冷却水は循環路4からダッシュパネル配管7に流入しない。低温側接続状態では、図4及び図5に示すように、ダッシュパネル配管7の両端部7bは、高温側管路21には接続されず、低温側管路21の上流側及び下流側にそれぞれ接続される。これにより、冷却された冷却水(冷媒)は、低温側管路21からダッシュパネル配管7へ流入し、中間部7aを流通した後、低温側管路21へ戻る。
【0049】
日射量センサ17は、車両1のうち太陽光線が照射される部分(本実施形態では、天井25の上面)に固定され、日射量を車外情報として逐次検出してECU9へ出力する。
【0050】
熱流束センサ18は、車室3内の所定位置に固定され、車室3内の熱流束を車内情報として逐次検出してECU9へ出力する。
【0051】
ECU9は、CPU(Central Processing Unit)33とROM(Read Only Memory)34とRAM(Random Access Memory)35とを備える。
【0052】
CPU33は、ROM34に格納されたバルブ制御プログラムを読み出して後述するバルブ制御処理を実行することにより、判定手段及び制御手段として機能する。バルブ制御プログラムは、後述する熱流束の判定閾値と日射量の判定閾値とを含む。なお、これらの判定閾値は、バルブ制御プログラムとは別にROM34やRAM35に記憶されてもよい。また、CPU33は、バッテリ(図示省略)からの電力供給を受けて、バルブ制御処理を実行する。
【0053】
RAM35には、日射量センサ17が検出した日射量と、熱流束センサ18が検出した熱流束とをそれぞれ記憶する記憶領域が設定されている。日射量センサ17が検出した日射量や熱流束センサ18が検出した熱流束がECU9に入力すると、CPU33は、入力した日射量や熱流束をRAM35に更新して記憶する。なお、熱流束センサ18が正負を伴う値として熱流束を検出する場合、ECU9は、熱流束センサ18の検出値の絶対値を熱流束としてRAM35に記憶する。また、以下の説明において、特に説明がない限り、RAM35に記憶された最新の日射量を単に日射量と称し、RAM35に記憶された最新の熱流束を単に熱流束と称する。
【0054】
ECU9は、例えばイグニッションスイッチ(図示省略)からの信号を受信することによって、エンジン10が作動しているか停止しているかを検知する。
【0055】
また、ECU9は、エンジン10が作動しているときは、エンジン10の冷却に要求される所定量の冷却水が循環するように電動モータ22の出力を制御し、エンジン10が停止しているときは、電動モータ22の出力を低下させて、冷却水の循環量(単位時間当たりの流量)を低減する。
【0056】
バルブ制御処理において、ECU9(CPU30)は、床・シート配管5に対して、冷却水を供給しない供給停止状態と、加熱された冷却水を供給する熱媒供給状態と、冷却された冷却水を供給する冷媒供給状態とのうち、何れの状態が車室3内の温度環境にとって好適であるかを、日射量と熱流束とに基づいて判定する。また、天井配管6及びダッシュパネル配管7のそれぞれに対して、冷却水を供給しない供給停止状態と、冷却された冷却水を供給する冷媒供給状態とのうち、何れの状態が車室3内の温度環境にとって好適であるかを、日射量と熱流束とに基づいて判定する。
【0057】
具体的には、床・シート配管5に対しては、熱流束が判定閾値以下であるとき、供給停止状態が好適であると判定する。熱流束が判定閾値を超えており、且つ日射量が判定閾値以下であるとき、熱媒供給状態であると判定する。また、熱流束が判定閾値を超えており、且つ日射量が判定閾値を超えているとき、冷媒供給状態であると判定する。
【0058】
天井配管6及びダッシュパネル配管7に対しては、熱流束が判定閾値以下であるとき、及び熱流束が判定閾値を超えており、且つ日射量が判定閾値以下であるとき、供給停止状態が好適であると判定する。また、熱流束が判定閾値を超えており、且つ日射量が判定閾値を超えているとき、冷媒供給状態であると判定する。
【0059】
ECU9(CPU30)は、上記判定結果とエンジン10の作動状態とに基づいて、バルブユニット8(第1バルブ30、第2バルブ31及び第3バルブ32)を制御する。
【0060】
具体的には、ECU9は、供給停止状態が好適であると判定した場合、エンジン10の作動状態に拘わらず、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを基本状態に設定する。熱媒供給状態が好適であると判定した場合において、エンジン10が作動しているときは、第1バルブ30を高温側接続状態に設定し、第2バルブ31及び第3バルブ32を基本状態に設定する。熱媒供給状態が好適であると判定した場合において、エンジン10が停止しているときは、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを基本状態に設定する。冷媒供給状態が好適であると判定した場合において、エンジン10が作動しているときは、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを冷媒供給状態に設定する。冷媒供給状態が好適であると判定した場合において、エンジン10が停止しているときは、第1バルブ30を基本状態に設定し、第2バルブ31と第3バルブ32とを冷媒供給状態に設定する。
【0061】
太陽電池19は、車両1のうち太陽光線が照射される部分(本実施形態では、天井25の上面)に固定されている。太陽電池19は、太陽光線を電力に変換し、電動ポンプ22とファン12のモータ(図示省略)とに電力を供給する。電動ポンプ22とファン12とは、太陽電池19から十分な電力が供給されている場合には、太陽電池からの電力供給によって作動する。なお、太陽電池19からの電力供給が不十分である場合には、バッテリからの電力供給によって必要な電力が補完される。また、太陽電池19からの供給電力が電動ポンプ22及びファン12の消費電力を超えている場合、その余剰電力はバッテリに充電される。
【0062】
次に、ECU9が実行するバルブ制御処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。バルブ制御処理は、エンジン10の作動状態に拘わらず、所定時間毎に常時繰り返して実行される。
【0063】
本処理が開始されると、熱流束が規定値(判定閾値)を超えているか否かを判定する(ステップS1)。熱流束が規定値以下である場合(ステップS1:NO)、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを基本状態に設定し、全ての配管5,6,7に対する冷却水の供給を停止して(ステップS2)、本処理を終了する。
【0064】
熱流束が規定値を超えている場合(ステップS1:YES)、日射量が規定値(判定閾値)を超えているか否かを判定する(ステップS3)。
【0065】
日射量が規定値以下である場合(ステップS3:NO)、エンジン10が作動しているか否かを判定する(ステップS4)。エンジン10が停止している場合には(ステップS4:NO)、全ての配管5,6,7に対する冷却水の供給を停止して(ステップS2)、本処理を終了する。エンジン10が作動している場合には(ステップS4:YES)、第1バルブ30を高温側接続状態に設定し、且つ第2バルブ31及び第3バルブ32を基本状態に設定して、床23とシート24とに加熱された冷却水(熱媒)を供給し(ステップS5)、本処理を終了する。
【0066】
また、日射量が規定値を超えている場合も(ステップS3:YES)、エンジン10が作動しているか否かを判定する(ステップS6)。エンジン10が停止している場合には(ステップS6:NO)、第1バルブ30を基本状態に設定し、第2バルブ31と第3バルブ32とを低温側接続状態に設定して、天井25とダッシュパネル26とに冷却された冷却水(冷媒)を供給し(ステップS7)、本処理を終了する。エンジン10が作動している場合には(ステップS6:YES)、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを低温側接続状態に設定し、天井25とダッシュパネル26と床23とシート24とに冷却された冷却水(冷媒)を供給し(ステップS8)、本処理を終了する。
【0067】
例えば、外気温が低く日射量が規定値以下となる冬季に、車室3内の温度が低下した状態で運転者が車両1を始動し(エンジン10を作動し)、空調装置による車室3内への温風の供給を開始すると、車室3内の熱流束が増大する。日射量は規定値以下であるため、熱流束が規定値を超えると、ECU9の判定処理は、ステップS1→S3→S4→S5と移行する。これにより、床・シート配管5を熱媒が巡回し、床23及びシート24が熱媒によって温められる。なお、暖房効果によって車室3内の温度が安定し、熱流束が規定値以下となった場合や、エンジン10を停止した場合には、全ての配管5,6,7に対する冷却水の供給が停止される(ステップS2)。
【0068】
一方、外気温が高く日射量が規定値を超える夏季に、車室3内の温度が上昇した状態で運転者が車両1を始動し(エンジン10を作動し)、空調装置による車室内への冷風の供給を開始すると、車室3内の熱流束が増大する。日射量は規定値を超えているため、熱流束が規定値を超えると、ECU9の判定処理は、ステップS1→S3→S6→S8と移行する。これにより、床・シート配管5、天井配管6及びダッシュパネル配管7を冷媒が巡回し、床23、シート24、天井25及びダッシュパネル26が冷媒によって冷却される。
【0069】
また、外気温が高く日射量が規定値を超える夏季の日中に、運転者が野外に車両1を駐車する場合(エンジン10を停止して、空調装置による車室内への冷風の供給を停止する場合)において、外気温から受ける温度負荷によって車室3内の温度が上昇して熱流束が規定値を超えると、ECU9の判定処理は、ステップS1→S3→S6→S7と移行する。これにより、天井配管6及びダッシュパネル配管7を冷媒が巡回し、天井25及びダッシュパネル26が冷媒によって冷却される。なお、冷房効果によって車室3内の温度が安定し、熱流束が規定値以下となった場合には、全ての配管5,6,7に対する冷却水の供給が停止される(ステップS2)。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1バルブ30が高温側接続状態に設定されると、加熱された冷却水は、循環路4の高温側管路20から床・シート配管5へ流入し、中間部5aを流通して、高温側管路20へ戻る。熱媒の巡回によって車室3内の床23やシート24が温められるので、例えば外気温が低下する冬季などに、室温を上昇させることや、室温の低下を防止することが可能となり、車室3内の温度環境の快適化を図ることができる。
【0071】
第1バルブ30、第2バルブ31及び第3バルブ32がそれぞれ低温側接続状態に設定されると、冷却された冷却水(冷媒)は、循環路4の低温側管路21から床・シート配管5、天井配管6及びダッシュパネル配管7へ流入し、中間部5a、6a、7aを流通して、低温側管路21へ戻る。冷媒の巡回によって車室3内の床23、シート24、天井25及びダッシュパネル26が冷却されるので、例えば外気温が上昇する夏季などに、室温を低下させることや、室温の上昇を防止することが可能となり、車室3内の温度環境の快適化を図ることができる。
【0072】
従って、車室3内に配置された配管5,6,7を有効に活用し、乗員にとって好適な場所に熱媒及び冷媒を適宜巡回させて、車室3内の暖房と冷房とを行うことができる。
【0073】
バルブ30,31,32が基本状態に設定されると、冷却水は配管5,6,7に流入せずに循環路4を循環する。すなわち、エンジン10を冷却するための冷却水の循環路4を利用して、車室3内の暖房や冷房を行うことができる。また、エンジン10を冷却するための冷却水を熱媒体として利用するので、車両1全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0074】
ECU9は、日射量センサ17が検出する日射量と熱流束センサ18が検出する熱流束とに基づいて、供給停止状態と熱媒供給状態と冷媒供給状態とのうち何れの状態が車室3内の温度環境にとって好適であるかを判定し、その判定結果に基づいて、バルブユニット8を制御するので、車両1の乗員は、煩雑な入力操作を行うことなく、車室3内の温度環境の快適化を図ることができる。
【0075】
熱媒供給状態が好適であると判定された場合において、エンジン10が作動しているときには、床・シート配管5への熱媒の供給が可能であるため、ECU9は、第1バルブ30を高温側接続状態に設定し、床・シート配管5に熱媒を巡回させる。一方、エンジン10が停止しているときには、熱媒を供給できない状態であるため、ECU9は、第1バルブ30を基本状態に設定し、床・シート配管5に冷却水を巡回させない。
【0076】
冷媒供給状態が好適であると判定された場合において、エンジン10が作動しているときには、乗員が車室3内に存在している可能性が高いため、ECU9は、第1バルブ30、第2バルブ31及び第3バルブ32を低温側接続状態に設定し、配管5,6,7に冷媒を巡回させる。一方、エンジン10が停止しているときには、乗員が車室内に存在している可能性が低く、冷却水の循環及び冷却に消費されるエネルギを抑制することが好ましいため、ECU9は、第1バルブ30を基本状態に設定し、第2バルブ31及び第3バルブ32を冷媒供給状態に設定して、配管6,7のみに冷媒を巡回させる。
【0077】
このように、エンジン10の作動状態に応じて熱媒や冷媒の巡回状態を変更するので、電動ポンプ22の負荷を低減して車両1全体のエネルギ効率をさらに向上させるとともに、車室3内の温度環境をさらに快適化することができる。
【0078】
冷却水の循環及び冷却を、太陽電池19からの電力供給によって行うので、車両1全体のエネルギ効率をさらに向上させることができる。
【0079】
また、冷却水の循環及び冷却を、車両1に搭載されたバッテリからの電力供給のみによって行う場合、車両1の停車中において、バッテリの充電量の低下によって冷却水の循環や冷却が行われない可能性があるが、本実施形態では、車両1の停車中(エンジン10の停止中)であっても、太陽電池19からの電力供給が確保されている限り、冷却水の循環や冷却を継続して行うことができる。
【0080】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0081】
本実施形態は、図1に示すように、第1実施形態の熱流束センサ18を温度センサ(室温検出手段)40に置き換えたものであり、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
温度センサ40は、車室3内の所定位置に固定され、車室3内の温度(室温)を車内情報として逐次検出してECU9へ出力する。
【0083】
ROM34に格納されたバルブ制御プログラムは、後述する室温の上限値及び下限値と日射量の判定閾値とを含む。なお、これらの値は、バルブ制御プログラムとは別にROM34やRAM35に記憶されてもよい。
【0084】
RAM35には、日射量センサ17が検出した日射量と、温度センサ40が検出した室温とをそれぞれ記憶する記憶領域が設定されている。日射量センサ17が検出した日射量や温度センサ40が検出した室温がECU9に入力すると、CPU33は、入力した日射量や室温をRAM35に更新して記憶する。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、RAM35に記憶された最新の日射量を単に日射量と称し、RAM35に記憶された最新の熱流束を単に熱流束と称する。
【0085】
バルブ制御処理において、ECU9は、床・シート配管5に対しては、日射量が判定閾値以下であり、且つ室温が下限値以上であるとき、又は日射量が判定閾値を超えており、且つ室温が上限値以下であるとき、供給停止状態であると判定する。日射量が判定閾値以下であり、且つ室温が下限値未満であるとき、熱媒供給状態であると判定する。また、日射量が判定閾値を超えており、且つ室温が上限値を超えているとき、冷媒供給状態であると判定する。
【0086】
天井配管6及びダッシュパネル配管7に対しては、日射量が判定閾値以下であるとき、又は日射量が判定閾値を超えており、且つ室温が上限値以下であるとき、供給停止状態であると判定する。また、日射量が判定閾値を超えており、室温が上限値を超えているとき、冷媒供給状態であると判定する。
【0087】
ECU9は、上記判定結果とエンジン10の作動状態とに基づいて、バルブユニット8(第1バルブ30、第2バルブ31及び第3バルブ32)を第1実施形態と同様に制御する。
【0088】
すなわち、ECU9は、供給停止状態が好適であると判定した場合、エンジン10の作動状態に拘わらず、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを基本状態に設定する。熱媒供給状態が好適であると判定した場合において、エンジン10が作動しているときは、第1バルブ30を高温側接続状態に設定し、第2バルブ31及び第3バルブ32を基本状態に設定する。熱媒供給状態が好適であると判定した場合において、エンジン10が停止しているときは、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを基本状態に設定する。冷媒供給状態が好適であると判定した場合において、エンジン10が作動しているときは、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを冷媒供給状態に設定する。冷媒供給状態が好適であると判定した場合において、エンジン10が停止しているときは、第1バルブ30を基本状態に設定し、第2バルブ31と第3バルブ32とを冷媒供給状態に設定する。
【0089】
次に、ECU9が実行するバルブ制御処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。バルブ制御処理は、エンジン10の作動状態に拘わらず、所定時間毎に常時繰り返して実行される。
【0090】
本処理が開始されると、日射量が規定値(判定閾値)を超えているか否かを判定する(ステップS11)。日射量が規定値以下である場合(ステップS11:NO)、室温が下限値未満であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0091】
室温が下限値以上である場合(ステップS12:NO)、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを基本状態に設定し、全ての配管5,6,7に対する冷却水の供給を停止して(ステップS13)、本処理を終了する。
【0092】
室温が下限値未満である場合(ステップS12:YES)、エンジン10が作動しているか否かを判定する(ステップS14)。エンジン10が停止している場合には(ステップS14:NO)、全ての配管5,6,7に対する冷却水の供給を停止して(ステップS13)、本処理を終了する。エンジン10が作動している場合には(ステップS14:YES)、第1バルブ30を高温側接続状態に設定し、且つ第2バルブ31及び第3バルブ32を基本状態に設定して、床23とシート24とに加熱された冷却水(熱媒)を供給し(ステップS15)、本処理を終了する。
【0093】
また、日射量が規定値を超えている場合(ステップS11:YES)、室温が上限値を超えているか否かを判定する(ステップS16)。
【0094】
室温が上限値以下である場合(ステップS16:NO)、全ての配管5,6,7に対する冷却水の供給を停止して(ステップS13)、本処理を終了する。
【0095】
室温が上限値を超えている場合(ステップS16:YES)、エンジン10が作動しているか否かを判定する(ステップS17)。エンジン10が停止している場合には(ステップS17:NO)、第1バルブ30を基本状態に設定し、第2バルブ31と第3バルブ32とを低温側接続状態に設定して、天井25とダッシュパネル26とに冷却された冷却水(冷媒)を供給し(ステップS18)、本処理を終了する。エンジン10が作動している場合には(ステップS17:YES)、第1バルブ30と第2バルブ31と第3バルブ32とを低温側接続状態に設定し、天井25とダッシュパネル26と床23とシート24とに冷却された冷却水(冷媒)を供給し(ステップS19)、本処理を終了する。
【0096】
例えば、外気温が低く日射量が規定値以下となる冬季に、車室3内の温度が下限値よりも低下した状態で運転者が車両1を始動すると(エンジン10を作動すると)、日射量は規定値以下であり、室温は下限値よりも低下しているため、ECU9の判定処理は、ステップS11→S12→S14→S15と移行する。これにより、床・シート配管5を熱媒が巡回し、床23及びシート24が熱媒によって温められる。なお、暖房効果によって室温が下限値以上となった場合や、エンジン10を停止した場合には、全ての配管5,6,7に対する冷却水の供給が停止される(ステップS13)。
【0097】
一方、外気温が高く日射量が判定閾値を超える夏季に、車室3内の温度が上限値よりも上昇した状態で運転者が車両1を始動すると(エンジン10を作動すると)、日射量は規定値を超えており、室温は上限値を超えているため、ECU9の判定処理は、ステップS11→S16→S17→S19と移行する。これにより、床・シート配管5、天井配管6及びダッシュパネル配管7を冷媒が巡回し、床23、シート24、天井25及びダッシュパネル26が冷媒によって冷却される。
【0098】
また、外気温が高く日射量が規定値を超える夏季の日中に、運転者が野外に車両1を駐車する場合(エンジン10を停止して、空調装置による車室内への冷風の供給を停止する場合)において、外気温から受ける温度負荷によって車室3内の温度が上昇して室温が上限値を超えると、ECU9の判定処理は、ステップS11→S16→S17→S18と移行する。これにより、天井配管6及びダッシュパネル配管7を冷媒が巡回し、天井25及びダッシュパネル26が冷媒によって冷却される。なお、冷房効果によって車室3内の温度が上限値以下となった場合には、全ての配管5,6,7に対する冷却水の供給が停止される(ステップS13)。
【0099】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、車両1の乗員からの煩雑な入力操作を必要とすることなく、車室3内に配置された配管5,6,7を有効に活用して、車室3内の暖房と冷房とを行うことができる。また、車両1全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0100】
なお、上記実施形態は本発明の一例であり、本発明を逸脱しない範囲において変更可能である。
【0101】
例えば、日射量に代えて、熱流束や外気温などの他の検出値を車外情報として取得してもよい。車外情報は、種類が異なる複数のセンサからの検出値(日射量と熱流束など)であってもよく、車内情報も、種類が異なる複数のセンサからの検出値(室温と熱流束など)であってもよい。車外情報と車内情報の一方に基づいて、車室内の温度環境にとって好適な状態を判定してもよい。
【0102】
各バルブ30,31,32の開度を変更して設定可能とし、車室3内の温度環境に応じて各バルブ30,31,32の開度を調節してもよい。各配管6,7,8に、それぞれ個別の電動ポンプを設け、車室3内の温度環境に応じて冷却水の巡回流量を調節してもよい。
【0103】
また、エンジン10の冷却水に代えて、他の熱媒体を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の冷暖房システムは、様々な車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1:車両
2:キャブ
3:車室
4:循環路
5:床・シート配管(巡回管路)
5a:床・シート配管の中間部
5b:床・シート配管の両端部
6:天井配管(第2の巡回管路)
6a:天井配管の中間部
6b:天井配管の両端部
7:ダッシュパネル配管(第2の巡回管路)
7a:ダッシュパネル配管の中間部
7b:ダッシュパネル配管の両端部
8:バルブユニット
9:ECU
10:エンジン
11:ラジエータ(放熱器)
12:ファン
17:日射量センサ(検知手段、日射量検出手段)
18:熱流束センサ(検知手段、熱流束検出手段)
19:太陽電池
20:高温側管路
21:低温側管路
22:電動ポンプ
23:床(床パネル)
24:天井(天井パネル)
25:ダッシュパネル
30:第1バルブ(流路切替手段)
31:第2バルブ(第2の流路切替手段)
32:第3バルブ(第2の流路切替手段)
33:CPU(判定手段、制御手段)
40:温度センサ(検知手段、室温検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された熱媒体が流通する高温側管路と冷却された熱媒体が流通する低温側管路とを有し、車両の車室外に配置されて熱媒体が循環する循環路と、
前記車両の車室内の所定範囲を巡回する中間部と、前記車室内から前記車室外へ延びる両端部とを有する巡回管路と、
前記巡回管路の両端部を前記高温側管路及び前記低温側管路から遮断し、熱媒体を前記循環路から前記巡回管路に流入させない基本状態と、前記巡回管路の両端部を前記高温側管路の上流側及び下流側にそれぞれ接続し、加熱された熱媒体を前記巡回管路に流入させる高温側接続状態と、前記巡回管路の両端部を前記低温側管路の上流側及び下流側にそれぞれ接続し、冷却された熱媒体を前記巡回管路に流入させる低温側接続状態とに選択的に設定可能な流路切替手段と、を備えた
ことを特徴とする車室内の冷暖房システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷暖房システムであって、
前記車両の外部温度に関する車外情報及び前記車室内の温度に関する車内情報のうち少なくとも一方を検知する検知手段と、
前記巡回管路に熱媒体を供給しない供給停止状態と、加熱された熱媒体を供給する熱媒供給状態と、冷却された熱媒体を供給する冷媒供給状態とのうち、何れの状態が前記車室内の温度環境にとって好適であるかを、前記検知手段が検知した情報に基づいて判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記流路切替手段を制御する制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車室内の冷暖房システム。
【請求項3】
請求項2に記載の冷暖房システムであって、
前記検知手段は、日射量を前記車外情報として検出する日射量検出手段と、前記車室内の熱流束を前記車内情報として検出する熱流束検出手段とを有し、
前記判定手段は、前記熱流束検出手段が検出した熱流束が所定の判定閾値以下であるとき、前記供給停止状態が好適であると判定し、前記熱流束検出手段が検出した熱流束が所定の判定閾値を超えており、且つ前記日射量検出手段が検出した日射量が前記判定閾値以下であるとき、前記熱媒供給状態が好適であると判定し、前記熱流束検出手段が検出した熱流束が前記判定閾値を超えており、且つ前記日射量検出手段が検出した日射量が前記判定閾値を超えているとき、前記冷媒供給状態が好適であると判定する
ことを特徴とする車室内の冷暖房システム。
【請求項4】
請求項2に記載の冷暖房システムであって、
前記検知手段は、日射量を前記車外情報として検出する日射量検出手段と、前記車室内の温度を前記車内情報として検出する室温検出手段とを有し、
前記判定手段は、前記日射量検出手段が検出した日射量が所定の判定閾値以下であり、且つ前記室温検出手段が検出した車室内の温度が所定の下限値以上であるとき、又は前記日射量検出手段が検出した日射量が前記判定閾値を超えており、且つ前記室温検出手段が検出した車室内の温度が所定の上限値以下であるとき、前記供給停止状態が好適であると判定し、前記日射量検出手段が検出した日射量が所定の判定閾値以下であり、且つ前記室温検出手段が検出した車室内の温度が所定の下限値未満であるとき、前記熱媒供給状態が好適であると判定し、前記日射量検出手段が検出した日射量が前記判定閾値を超えており、且つ前記室温検出手段が検出した車室内の温度が所定の上限値を超えているとき、前記冷媒供給状態が好適であると判定する
ことを特徴とする車室内の冷暖房システム。
【請求項5】
請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の冷暖房システムであって、
前記車室内の第2の所定範囲を巡回する中間部と、前記車室内から前記車室外へ延びる両端部とを有する第2の巡回管路と、
前記第2の巡回管路の両端部を前記高温側管路及び前記低温側管路から遮断し、熱媒体を前記循環路から前記第2の巡回管路に流入させない基本状態と、前記第2の巡回管路の両端部を前記低温側管路の上流側及び下流側にそれぞれ接続し、冷却された熱媒体を前記第2の巡回管路に流入させる低温側接続状態とに選択的に設定可能な第2の流路切替手段と、を備え、
前記巡回管路の中間部は、前記車室内の床及びシートの少なくとも一方の内部を巡回し、
前記第2の巡回管路の中間部は、前記車室内の天井及びダッシュパネルの少なくとも一方の内部を巡回し、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果に基づいて前記第2の流路切替手段を制御する
ことを特徴とする車室内の冷暖房システム。
【請求項6】
請求項5に記載の冷暖房システムであって、
前記循環路の高温側管路は、エンジンを冷却することによって加熱された熱媒体としての冷却水を放熱器へ流入し、
前記循環路の低温側管路は、前記放熱器によって冷却された冷却水を前記エンジンへ供給し、
前記制御手段は、前記供給停止状態が好適であると前記判定手段が判定した場合、前記流路切替手段と前記第2の流路切替手段とを前記基本状態に設定し、前記熱媒供給状態が好適であると前記判定手段が判定し、且つ前記エンジンが作動している場合、前記流路切替手段を前記高温側接続状態に、前記第2の流路切替手段を前記基本状態にそれぞれ設定し、前記熱媒供給状態が好適であると前記判定手段が判定し、且つ前記エンジンが停止している場合、前記流路切替手段と前記第2の流路切替手段とを前記基本状態に設定し、前記冷媒供給状態が好適であると前記判定手段が判定し、且つ前記エンジンが作動している場合、前記流路切替手段と前記第2の流路切替手段とを前記冷媒供給状態に設定し、前記冷媒供給状態が好適であると前記判定手段が判定し、且つ前記エンジンが停止している場合、前記流路切替手段を前記基本状態に、前記第2の流路切替手段を前記冷媒供給状態にそれぞれ設定する
ことを特徴とする車室内の冷暖房システム。
【請求項7】
請求項6に記載の冷暖房システムであって、
前記車両に搭載され、太陽光線を電力に変換する太陽電池と、
前記循環路に設けられ、前記太陽電池からの電力供給によって作動して熱媒体を循環させるポンプと、を備え
前記放熱器は、前記太陽電池からの電力供給によって作動して熱媒体を冷却するファンを有する
ことを特徴とする車室内の冷暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−144065(P2012−144065A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1759(P2011−1759)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】