説明

車室内用空調装置

【課題】複数の電池モジュールの温度を均一化して蓄電装置の劣化を抑制することが可能な車室内用空調装置を提供する。
【解決手段】主通路11の上流側から順に、A/Cフィルタ12と、送風手段13と、エバポレータ14とが設けられた車室内用空調装置10であって、A/Cフィルタ12と送風手段13との間のA/Cフィルタ12に隣接する主通路11内に、複数の電池モジュール32で構成された車載バッテリBを配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄電装置を備えた車両に搭載される車室内用空調装置に関するものであり、特に蓄電装置の冷却に係るものである。
【背景技術】
【0002】
駆動源として電動発電機とを備えたハイブリッド車両や電動車両等の車両にあっては、電動発電機を駆動する電力を供給する一方、電動発電機によって回生された電力を蓄電する複数の電池モジュールからなる蓄電装置を備えている。一般に、この種の蓄電装置は温度上昇により充放電性能の低下を招く虞があるため、近年、蓄電装置がインスツルメントパネル内に配置された車両において、車室内用の空調装置が取り込んだ空気の一部を分流させて蓄電装置を冷却するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−222041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車室内用空調装置にあっては、例えば、蓄電装置を冷却するための流路の中心付近の流速が相対的に速い一方、流路の壁面付近の流速が相対的に遅いので、蓄電装置の各電池モジュールの設置位置に応じて吹き付けられる冷却空気の量が異なってしまう。そのため、冷却空気が良く当たる電池モジュールと冷却空気があまり当たらない電池モジュールとで温度差が生じてしまう可能性がある。そして、このように各電池モジュールの冷却が一様に行われない場合、各電池モジュールの電池性能が均一化されないため、充放電性能が不均一になり蓄電装置の劣化が加速する虞がある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の電池モジュールの温度を均一化して蓄電装置の劣化を抑制することが可能な車室内用空調装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、空気流路(例えば、実施形態における主通路11)の上流側から順に、空気中の異物を取り除くエアフィルタ(例えば、実施形態におけるA/Cフィルタ12)と、空気流量を調節する送風手段(例えば、実施形態における送風手段13)と、空気の温度を調整する温度調整手段(例えば、実施形態におけるエバポレータ14)とが設けられた車室内用空調装置(例えば、実施形態における車室内用空調装置10,110,210)であって、前記エアフィルタと前記送風手段との間の前記エアフィルタに隣接する前記空気流路内に、複数の電池モジュール(例えば、実施形態における電池モジュール32)で構成された蓄電装置(例えば、実施形態における車載バッテリB,B2,B3)を配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記空気流路の流路中心(例えば、実施形態における流路中心O)付近に配置される前記電池モジュール同士の間隔は、前記空気流路の壁面(例えば、実施形態における壁面31)側に配置される前記電池モジュール同士の間隔よりも狭く設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記電池モジュールは、前記空気流路の流れ方向に沿って積層配置され、前記空気流路の流路中心付近ほど積層数が増加されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の発明において、前記蓄電装置の温度を検出する蓄電装置温度検出手段(例えば、実施形態における温度センサs1)と、該蓄電装置温度検出手段の検出結果に基づき前記エアフィルタの目詰まり発生の有無を判定するエアフィルタ目詰まり判定手段(例えば、実施形態におけるステップS03,ステップS34)とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載した発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の発明において、前記蓄電装置の出力を検出する蓄電装置出力検出手段(例えば、実施形態における電圧センサs2)と、該蓄電装置出力検出手段の検出結果に基づき前記エアフィルタの目詰まり発生の有無を判定するエアフィルタ目詰まり判定手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載した発明は、前記蓄電装置の温度を検出する蓄電装置温度検出手段と、
該蓄電装置温度検出手段の検出結果に基づき前記エアフィルタの目詰まり発生の有無を判定するエアフィルタ目詰まり判定手段とを備え、該エアフィルタ目詰まり判定手段は、前記送風手段の流量が所定流量以上に設定され、前記蓄電装置の温度が、該蓄電装置から適正な出力を得られなくなる所定温度以上であることが検出された場合に、前記エアフィルタが目詰まりしていると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、エアフィルタの有する整流作用によって、空気流路の上流側から下流側へ流過する空気がエアフィルタを通過する際に整流されて、空気流路の中心付近の流速と空気流路の壁面付近の流速とのばらつきが抑制されて、エアフィルタの下流側に隣接配置された蓄電装置の各電池モジュールに接触する空気の流速が均一化されて各電池モジュールの温度が均一化されるため、蓄電装置の電池性能を向上することができる効果がある。
【0013】
請求項2に記載した発明によれば、エアフィルタに隣接配置される蓄電装置の電池モジュール同士の間隔のうち、空気流路の流路中心付近に配置される電池モジュール同士の間隔を空気流路の壁面側に配置された電池モジュール同士の間隔よりも相対的に狭く設定することで、空気流路の流路中心付近を空気が流れ難くなり、塵埃等の異物の堆積が集中し易いエアフィルタの流路中心付近を通過する空気が減少されるため、エアフィルタの各位置を通過する空気の量がより均一化される。したがって、エアフィルタの流路中心付近のみに異物の体積が集中するのを防止してエアフィルタの全面を無駄なく利用することができ、また、電池モジュールへより均一に空気を供給することができるため、電池モジュールの温度ばらつきを更に低減することができる効果がある。
【0014】
請求項3に記載した発明によれば、エアフィルタに隣接配置される蓄電装置の電池モジュールの積層数が流路中心付近ほど増加されていることで、空気流路の流路中心付近を空気が流れ難くなりエアフィルタの流路中心付近を通過する空気が減少されるため、エアフィルタの各位置を通過する空気の量が均一化される。したがって、エアフィルタの流路中心付近のみに異物の体積が集中するのを防止してエアフィルタの全面を無駄なく利用することができる。また、電池モジュールへより均一に空気を供給することができるため、電池モジュールの温度ばらつきを更に低減することができる効果がある。
【0015】
請求項4に記載した発明によれば、エアフィルタの目詰まりが発生すると空気流路内を流れる空気の絶対量が減少して冷却性能が低下し蓄電装置の温度が上昇するので、この温度上昇を蓄電装置温度検出手段により検出することで、エアフィルタ目詰まり判定手段によりエアフィルタの目詰まりを判定することが可能になる。したがって、エアフィルタの目詰まりを検出するための特別な装置を設けずに、エアフィルタの目詰まり発生を検出してエアフィルタの目詰まりに起因する蓄電装置の温度上昇が長期化するのを防止し、蓄電装置の充放電性能の向上および負担軽減を図ることができる効果がある。
【0016】
請求項5に記載した発明によれば、エアフィルタの目詰まりが発生すると空気流路内を流れる空気の絶対量が減少して冷却性能が低下し蓄電装置の温度が上昇するので、この温度上昇に起因する蓄電装置の出力低下を蓄電装置出力検出手段により検出することで、エアフィルタ目詰まり判定手段によりエアフィルタの目詰まりを判定することが可能になる。したがって、エアフィルタの目詰まりを検出するための特別な装置を設けずに、エアフィルタの目詰まり発生を検出してエアフィルタの目詰まりに起因する蓄電装置の出力低下が長期化するのを防止し、蓄電装置の充放電性能の向上および負担軽減を図ることができる効果がある。
【0017】
請求項6に記載した発明によれば、エアフィルタが目詰まりをしていないときに蓄電装置の温度を適正な温度まで低下させることが可能な所定流量以上に送風手段の流量が設定されている場合に、蓄電装置の温度が適正な出力を得られなくなる所定温度以上であることが検出された場合にのみ、エアフィルタ目詰まり判定手段によりエアフィルタの目詰まりを判定することが可能になる。したがって、エアフィルタの目詰まりを検出するための特別な装置を設けることなく、エアフィルタの目詰まり発生を検出してエアフィルタの目詰まりに起因する蓄電装置の出力低下が長期化するのを防止し、蓄電装置の充放電性能の向上および負担軽減を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態における車室内用空調装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態における目詰まり検出処理のフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態におけるバッテリ温度推定処理のフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態における車載バッテリの劣化状態のマップである。
【図5】本発明の第1実施形態の第2変形例における目詰まり検出処理のフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態における図1に相当する概略構成図である。
【図7】本発明の第2実施形態の変形例における主通路の縦断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の第2変形例における図1に相当する概略構成図である。
【図9】本発明の各実施形態の第3変形例における電池モジュールおよびフィルタ材の断面図である。
【図10】本発明の各実施形態の第4変形例における電池モジュールおよびフィルタ材の断面図であり、(a)は凹部が角溝形状の場合、(b)は角溝形状の凹部の下流側開口を絞り込んで形成した場合、(c)は溝部が丸溝形状の場合、(d)はフィルタ材40に細かい凹凸を形成した場合、(e)は略矩形断面の電池モジュールで凹部が角溝形状の場合、(f)は略矩形断面の電池モジュールで角溝形状の凹部の下流側開口を絞り込んで形成した場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、この発明の実施形態における車室内用空調装置10について図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明の実施形態における車室内用空調装置10を備えたハイブリッド車両1の概略構成を示した図である。ハイブリッド車両1(以下、単に車両1という)では、エンジン(ENG)2と電動発電機(MOT;以下、モータジェネレータという)3が直結されており、エンジン2とモータジェネレータ3の少なくとも一方の動力がトランスミッション(T/M)4およびディファレンシャルギヤ5を介して駆動輪Wfに伝達され、走行可能に構成されている。
モータジェネレータ3はいわゆるDCブラシレスタイプのものであり、駆動輪Wfへその動力を伝達する際には、モータジェネレータ3の駆動制御を回転角度に基づいて行うパワードライブユニット(PDU)6を介して車載バッテリBに蓄電されている電力が供給される。一方、車両1の減速時にはパワードライブユニット6の回生制御で発電機として機能して駆動輪Wfからディファレンシャルギヤ5およびトランスミッション4を介してモータジェネレータ3に伝達される運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。この変換された電気エネルギーは、パワードライブユニット6を介して車載バッテリBに蓄電されると共に、コンバータ(不図示)を介して低圧バッテリ(不図示)に蓄電される。
【0020】
車室内用空調装置10は、車両1のインスツルメントパネル内に配置され、主通路11の上流側から順に、A/Cフィルタ12、車載バッテリB、送風手段13、および、エバポレータ14が配置されている。
A/Cフィルタ12は、不織布等のフィルタ材からなるもので、主通路11に導入された空気(後述の内気または外気)に含まれる塵埃等の異物を除去する。ここで、A/Cフィルタ12は、通過する直前の空気に流速のばらつきがあったとしても、A/Cフィルタ12を通過する際に流速のばらつきを緩和するいわゆる整流機能を有している。
【0021】
送風手段13は、風量調整が可能ないわゆるブロアであり、その上流側の空気を設定された所定風量で下流側へと送り出す。この送風手段13は不図示の制御手段によって駆動制御される。
エバポレータ14は、冷凍サイクル(不図示)において循環される冷媒を気化する部位であり、主通路11内を流過する空気との接触面積を増加させるための複数のフィン(不図示)を備えている。送風手段13により送り出された空気は上記フィン間を通過することで熱を奪われて冷却および除湿される。このエバポレータ14には、空気の通過量を調整するダンパ15が取り付けられている。
【0022】
車室内用空調装置10には、車室(キャビン)内の空気(以下、内気という)を導入する内気導入口16を有した内気導入通路17と、車室外の空気(以下、外気という)を導入する外気導入口18を有した外気導入通路19とがそれぞれ設けられている。これら内気導入通路17および外気導入通路19は主通路11に合流接続され、その合流点P1に内気導入通路17と外気導入通路19とを選択的に開閉するダンパ20が揺動可能に取り付けられている。このダンパ20により、例えばユーザが内気循環モードを選択した場合には内気導入通路17が主通路11と連通され、ユーザが外気導入モードを選択した場合には外気導入通路19が主通路11と連通される。
【0023】
一方、主通路11のエバポレータ14よりも下流側には、温風通路21と冷風通路22とがそれぞれ接続され、車室内へ空調風を吹き出す共通のベント(不図示)の直前で再び合流している。温風通路21と冷風通路22との分岐点P2には、温風通路21および冷風通路22へ分流させる空気(冷却空気)の流量を調整するダンパ24が取り付けられている。ダンパ24は、ユーザが設定した空調風の温度をベントから吹き出させるために、その角度を変化させることで、温風通路21へ導入される冷却空気の流量と冷風通路22へ導入される冷却空気の流量とを調整する。
【0024】
温風通路21は、導入された冷却空気を加温するヒータコア23を備えている。このヒータコア23は、エンジン2の冷却水の一部が循環されて、エンジン2の温度の上昇にともない温度上昇される。つまり、温風通路21へ流入される冷却・除湿された空気は、ヒータコア23を通過して温風としてベントへ送り出される一方、冷風通路22へ流入される冷却・除湿された空気は、そのまま冷風としてベントへ送り出される。
【0025】
ところで、上述したA/Cフィルタ12と送風手段13との間の主通路11には、A/Cフィルタ12に隣接して車載バッテリBが配置されている。この車載バッテリBは、複数の電池モジュール32を備えて構成されている。この電池モジュール32は、略円柱状を呈し、その軸線が主通路11の流路方向と直交する方向(例えば、図1の紙面表裏方向)に沿って配置されている。また電池モジュール32は、電池モジュール32同士の間に空気が流過可能なように所定間隔を空けて電池ホルダ(不図示)により組みつけられている。これにより、送風手段13の駆動中に主通路11を流れる空気が電池モジュール32間を流過して、各電池モジュール32が冷却される。車載バッテリBには、車載バッテリBの温度を検出する温度センサs1が設けられており、この温度センサs1の検出結果が不図示の制御装置へ入力されるようになっている。なお、車載バッテリBに出力電圧を検出する電圧センサs2を設け、電圧センサs2の検出結果が制御装置へ入力されるようにしてもよい。
【0026】
すなわち、上述した車室内用空調装置10においては、送風手段13が駆動され、ダンパ20により内気導入通路17が選択されている場合には内気導入口16から車室内の空気が主通路11へ導入され、外気導入通路19が選択されている場合には外気導入口18から車室外の空気が主通路11へ導入される。そして、主通路11へ導入された空気は、壁面31近傍で失速するなど、流速のばらつきが生じているが、A/Cフィルタ12の整流作用により、流速のばらつきが均一化される。そして、流速が均一化された空気は、A/Cフィルタ12に隣接している車載バッテリBを通過して電池モジュール32を冷却して、その後、送風手段13に至り、エバポレータ14で冷却・除湿される。さらに冷却・除湿された空気のうち、ダンパ24を介して温風通路21へ流れ込んだものは、ヒータコア23により加温されて温風となる一方、冷風通路22へ流れ込んだものは、そのまま冷風として冷風通路22を通過する。そして、これら温風と冷風とが合流してベントから車室内へ空調風として吹き出されることとなる。
【0027】
次に、制御装置におけるA/Cフィルタ12の目詰まり検出処理について図2,3のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、温度センサs1により車載バッテリBのバッテリ温度Tを検出する(ステップS01)。
次いで、バッテリ温度の推定値であるバッテリ温度Tsを算出するバッテリ温度推定処理を実施する(ステップS02)。
【0028】
温度センサs1により検出されたバッテリ温度Tと、バッテリ温度推定処理により求められたバッテリ温度Tsとの差分の絶対値を求め、予め設定された所定の閾値以上か否かを判定する(ステップS03;エアフィルタ目詰まり判定手段)。この判定の結果、バッテリ温度Tとバッテリ温度Tsとの差分の絶対値が予め設定された所定の閾値以上である場合には(ステップS03でYES)、A/Cフィルタ12が目詰まりを起こしていると判定してユーザに対してフィルタ目詰まりの警告を行い(ステップS04)、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0029】
一方、上記判定の結果、バッテリ温度Tとバッテリ温度Tsとの差分の絶対値が予め設定された所定の閾値より小さい場合には(ステップS03でNO)、フィルタの目詰まりが発生していないと判定して上述した処理を繰り返す。
【0030】
次に、上述したステップS02のバッテリ温度推定処理のサブルーチンを、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、温度センサs1により、車両1のイグニッションON直後など、起動時のバッテリ初期温度を検出し、不図示のメモリ等の記憶手段に記憶させる(ステップS21)。
次いで、電流センサ等により車載バッテリBの電流値を検出し、充電量および放電量(充放電量)を積算して記憶手段に記憶させる(ステップS22)。
さらに、外気温センサ等により車両1の外気温を検出して記憶手段に記憶させる(ステップS23)。
【0031】
また、図4に示すバッテリ性能と時間[t]とのマップ等により、車載バッテリBの劣化状態を求めて記憶手段に記憶させる(ステップS24)。
そして、上記記憶手段に記憶されている、バッテリ初期温度、充放電量、外気温および劣化状態の諸条件より車載バッテリBの温度推定値すなわちバッテリ温度Tsを求め、このバッテリ温度Tsを記憶手段に記憶させて(ステップS25)メインルーチンへ戻る。ここで、車載バッテリBの充放電量によりその発熱量が推定できるが、温度センサs1によるバッテリ温度Tの測定条件と合わせるために、バッテリ初期温度、外気温、および劣化状態を加味して推定値であるバッテリ温度Tsを算出している。
【0032】
上述したバッテリ温度Tsは車載バッテリBが十分に冷却されている理想的な温度であり、バッテリ温度Tとバッテリ温度Tsとの差分の絶対値が所定の閾値以上のときは、車載バッテリBの冷却が十分なされずに車載バッテリBのバッテリ温度Tが相対的に高くなっている状態であると推定できる。そして上述した目詰まり検出処理では、車載バッテリBが十分に冷却されていない原因がA/Cフィルタ12の下流で十分な空気流量が得られないためであり、この空気流量の不足がA/Cフィルタ12の目詰まりによるものと判定している。
【0033】
したがって、上述した第1実施形態の車室内用空調装置10によれば、A/Cフィルタ12の整流作用によって、主通路11の上流側から下流側へ流過する空気がA/Cフィルタ12を通過する際に整流されて、主通路11の中心付近の流速と主通路11の壁面31付近の流速とのばらつきが抑制されて、A/Cフィルタ12の下流側に隣接配置された車載バッテリBの各電池モジュール32に接触する空気の流速が均一化されて各電池モジュール32の温度が均一化されるため、車載バッテリBの電池性能を向上することができる。
【0034】
また、A/Cフィルタ12の目詰まりが発生すると主通路11内を流れる空気が減少して冷却性能が低下し車載バッテリBの温度が上昇するので、この温度上昇を温度センサs1により検出することで、エアフィルタの目詰まりを判定することが可能になり、この結果、A/Cフィルタ12の目詰まりを検出するための特別な装置を設けずに、A/Cフィルタ12の目詰まり発生を検出してA/Cフィルタ12の目詰まりに起因する車載バッテリBの温度上昇が長期化するのを防止し、充放電性能の向上および負担軽減を図ることができる。
【0035】
なお、上述した第1実施形態では、バッテリ初期温度、充放電量、外気温および劣化状態によってバッテリ温度Tsを求めて、このバッテリ温度Tsと温度センサs1により検出されたバッテリ温度Tとに基づきA/Cフィルタ12の目詰まり検出を行う場合について説明したが、この構成に限られるものではなく、例えば変形例として、車載バッテリBの出力電圧Vを用いてA/Cフィルタ12の目詰まり検出処理を行うようにしてもよい。より具体的には、出力電圧Vは車載バッテリBの温度に応じて変動するため、バッテリ初期電圧、充放電量、外気温および劣化状態に応じて算出可能な車載バッテリBの出力電圧の推定値である出力電圧Vsと電圧センサ(蓄電装置出力検出手段)s2で検出される出力電圧Vとを比較して、これらの差分の絶対値が予め設定された所定の閾値以上の場合に、車載バッテリBが冷却不足に陥り、A/Cフィルタ12が目詰まりを起こしていると判定するようにしてもよい(エアフィルタ目詰まり判定手段)。
【0036】
この第1実施形態の変形例によれば、A/Cフィルタ12の目詰まりが発生すると主通路11内を流れる空気が減少して冷却性能が低下し車載バッテリBの温度が上昇するので、この温度上昇に起因する車載バッテリBの出力低下を電圧センサs2により検出することで、A/Cフィルタ12の目詰まりを判定することが可能になるため、A/Cフィルタ12の目詰まりを検出するための特別な装置を設けずに、A/Cフィルタ12の目詰まり発生を検出してA/Cフィルタ12の目詰まりに起因する車載バッテリBの出力低下が長期化するのを防止し、車載バッテリBの充放電性能の向上および負担軽減を図ることができる。
【0037】
さらに、上述した第1実施形態の第2変形例として、上述した推定値であるバッテリ温度Tsに代えて、送風手段13の設定風量とバッテリ温度Tとに基づきA/Cフィルタ12の目詰まり検出処理を行うようにしてもよい。図5のフローチャートに示すように、この第2変形例の目詰まり検出処理は、まず送風手段(FAN)13の風量が最大か否かを判定して、送風手段13の風量が最大である場合は(ステップS31でYES)、風量が最大となってから所定時間経過したか否かを判定する。ここで所定時間とは、最大風量で車載バッテリBを冷却した場合に充放電性能が得られる温度に下がるのに十分な時間が設定される。
【0038】
そして、この判定の結果、所定時間が経過したと判定された場合は(ステップS32でYES)、温度センサs1によりバッテリ温度Tを検出する(ステップS33)。
次いで、バッテリ温度Tが所定の閾値以上か否かを判定し(ステップS34;エアフィルタ目詰まり判定手段)、この判定の結果、所定の閾値以上であると判定された場合には(ステップS34でYES)、A/Cフィルタ12に目詰まりが生じていると判定してユーザに対してフィルタ目詰まりの警告を行い(ステップS34でYES)、本ルーチンの実行を一旦終了する。なお、送風手段13の設定風量が最大ではない場合(ステップS31でNO)、風量最大となってから所定時間経過していない場合(ステップS32でNO)、バッテリ温度Tが所定の閾値以上ではない場合(ステップS34でNO)には、上述した目詰まり検出処理を最初からやり直す。なお、上述した処理では、送風手段13の風量を最大風量に設定する場合について説明したが、十分に車載バッテリBの温度低下が可能な風量であれば最大風量に限られるものではない。
【0039】
要するに、上述した第1実施形態の第2変形例の目詰まり検出処理では、送風手段13の風量が最大に設定されているにも関わらず、十分に車載バッテリBが冷却されない場合にA/Cフィルタ12に目詰まりが生じて車載バッテリBを冷却するのに十分な空気流量が得られていないと判定して目詰まり発生の警告を行っているのである。
【0040】
上述した第1実施形態の第2変形例によれば、A/Cフィルタ12が目詰まりをしていないときに車載バッテリBの温度を適正な温度まで低下させることが可能な所定流量以上に送風手段13の流量が設定されている場合に、車載バッテリBの温度が適正な出力を得られなくなる所定温度以上であることが検出された場合にのみ、ステップS34によりA/Cフィルタ12の目詰まりを判定することが可能になり、この結果、A/Cフィルタ12の目詰まりを検出するための特別な装置を設けることなく、A/Cフィルタ12の目詰まり発生を検出してA/Cフィルタ12の目詰まりに起因する車載バッテリBの出力低下が長期化するのを防止し、車載バッテリBの充放電性能の向上および負担軽減を図ることができる。
【0041】
次に、この発明の第2実施形態の車室内用空調装置110について図6を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態の車室内用空調装置110は、上述した第1実施形態の電池モジュール32の配置を改良したものである。第1実施形態と同一部分に同一符号を付して説明し、重複する説明を省略する。
【0042】
図6に示すように、主通路11には、上流側から下流側に向かって、A/Cフィルタ12、車載バッテリB2、送風手段13、およびエバポレータ14が順次配置されている。
車載バッテリB2は、複数の電池モジュール32より構成され、電池モジュール32間に空気が流過可能な所定間隔を空けて不図示の電池ホルダにより組みつけられている。第1実施形態と同様に、送風手段13が駆動中することで主通路11を流れる空気が電池モジュール32間を通過して、各電池モジュール32が冷却される。
【0043】
ここで、主通路11においては、A/Cフィルタ12による整流作用があるものの、壁面31側を流れる空気の流速よりも流路中心O付近を流れる空気の流速がやや高く、A/Cフィルタ12の流路中心O付近の部分を通過する空気の流量が相対的に若干多くなるため、経年的に塵埃等の異物の堆積が集中し易くなってしまう。
【0044】
そのため、この第2実施形態の車室内用空調装置110においては、電池ホルダにより組みつけられた電池モジュール32のうち、主通路11の流路中心O付近に配置される所定数(図6中、7個の場合を示す)の電池モジュール32a同士の間隔を、主通路11の壁面31側に配置される電池モジュール32b同士の間隔よりも狭く設定している。すなわち、電池モジュール32a同士の隙間が狭い流路中心O付近の流路抵抗が相対的に増加するため、主通路11の流路中心O付近の空気が若干流れ難くなる。流路中心O付近の電池モジュール32a同士の間隔および、電池モジュール32aの数は、A/Cフィルタ12を通過する空気の流量が全面に亘って均一になるように、例えば、A/Cフィルタ12の表面積等に応じて適宜調整されている。
【0045】
したがって、上述した第2実施形態によれば、A/Cフィルタ12に隣接配置される車載バッテリB2の電池モジュール32同士の間隔のうち、主通路11の流路中心O付近に配置される電池モジュール32a同士の間隔を主通路11の壁面31側に配置された電池モジュール32b同士の間隔よりも相対的に狭く設定することで、主通路11の流路中心O付近を空気が流れ難くなりA/Cフィルタ12の流路中心O付近を通過する空気が減少されるため、A/Cフィルタ12の各位置を通過する空気の量が均一化され、この結果、A/Cフィルタ12の流路中心O付近のみに異物の体積が集中するのを防止してA/Cフィルタ12の全面を無駄なく利用することができ、また、電池モジュール32へより均一に空気を供給することができるため、電池モジュール32の温度ばらつきを更に低減することができる。
【0046】
なお、上述した第2実施形態では、電池モジュール32を、主通路11の流路方向と直交する方向に沿うように配置する場合について説明したが、この構成に限られるものではなく、例えば、第2実施形態の変形例として図7に示すように、主通路11の流路方向に電池モジュール32の軸線を沿わせて配置してもよい。この場合においても、流路中心O付近に配置される電池モジュール32a同士の間隔を壁面31側に配置される電池モジュール32b同士の間隔よりも狭く設定することで、上述した第2実施形態と同様に、電池モジュール32の温度ばらつきを低減することができる。
【0047】
また、上述した第2実施形態では、電池モジュール32aの間隔を相対的に狭く設定することで、主通路11の流路中心O付近の空気を流れ難くして、流路全体の流速を均一化する場合について説明したが、流路中心O付近の空気を流れ難くすることができればよく、例えば、第2変形例として図8に示すように、A/Cフィルタ12の面に沿って配列された電池モジュール32を、A/Cフィルタ12側から下流側に向かって積層して設けた車載バッテリB3を、A/Cフィルタ12に隣接配置するようにしてもよい。
【0048】
この車載バッテリB3の電池モジュール32の流路方向に沿う積層数は、主通路11の壁面31側(図8中、2層)よりも流路中心O付近の方がより多く(図8中、3層)設定されている。そして、これら電池モジュール32は、空気が流過可能なように電池モジュール32同士が所定間隔をあけて電池ホルダにより組みつけられて、主通路11内に設置されている。
【0049】
この第2実施形態の第2変形例によれば、上述した第2実施形態の変形例と同様に、A/Cフィルタ12に隣接配置される車載バッテリB3の電池モジュール32の積層数が流路中心O付近ほど増加されていることで、主通路11の流路中心O付近を空気が流れ難くなりA/Cフィルタ12の流路中心O付近を通過する空気が減少されるため、A/Cフィルタ12の各位置を通過する空気量が均一化され、この結果、A/Cフィルタ12の流路中心O付近のみに異物の体積が集中するのを防止してA/Cフィルタ12の全面を無駄なく利用することができ、さらに、電池モジュール32へより均一に空気を供給することができるため、電池モジュール32の温度ばらつきを更に低減することができる。
【0050】
また、上述した各実施形態および第1,2変形例においては、車載バッテリB,B2,B3を主通路11のA/Cフィルタ12の下流側にA/Cフィルタ12に隣接して配置する場合について説明したが、例えば、図9に示す第3変形例のように、ハニカム構造で形成されたA/Cフィルタ12のフィルタ材40の隙間に電池モジュール32を収納してA/Cフィルタ12と車載バッテリB,B2,B3とを一体的に構成してもよい。
【0051】
また、図10(a)〜図10(f)は上述した各実施形態の第4変形例を示しており、A/Cフィルタ12のフィルタ材40には凹部41が屈曲形成され、この凹部41に電池モジュール32が没入されており、少なくとも電池モジュール32の上流端からその両サイドに亘ってフィルタ材40が覆っている。これにより、A/Cフィルタ12の表面積が増加され、さらに車載バッテリB,B2,B3とA/Cフィルタ12との少なくとも一部が流路方向で重なるように配置されることとなる。
【0052】
図10(a)〜(d)は電池モジュール32の断面形状が略円形の場合であり、図10(a)は凹部41が角溝形状の場合、図10(b)は図10(a)よりも凹部41の下流側の開口をやや絞り込んで形成した場合、図10(c)は凹部41が丸溝形状の場合、図10(d)は図10(c)のフィルタ材40に細かな凹凸を形成した場合をそれぞれ示している。また、図10(e),(f)は電池モジュール32の断面形状が略矩形の場合を示しており、図10(e)は凹部41が角溝形状の場合、図10(f)は図10(e)の凹部41の下流側の開口をやや絞り込んで形成した場合をそれぞれ示している。
【0053】
上述した各実施形態の第3,4変形例によれば、電池モジュール32とA/Cフィルタ12との配置スペースが削減されて、車室内用空調装置10,110,210の小型化に寄与することができると共に、車載バッテリB,B2,B3を交換する際に、同時にA/Cフィルタ12も交換可能となるため、A/Cフィルタ12の目詰まりを防止し、この目詰まりによる電池モジュール32の温度上昇をより確実に防止することができる。
【0054】
なお、車両1はエンジン2とモータジェネレータ3を備えるハイブリッド車両を一例に説明したが、車載バッテリB,B2,B3が搭載される車両であれば、ハイブリッド車両に限られるものではない。
【符号の説明】
【0055】
10,110,210 車室内用空調装置
11 主通路(空気流路)
12 A/Cフィルタ(エアフィルタ)
13 送風手段
14 エバポレータ(温度調整手段)
31 壁面
32 電池モジュール
B,B2,B3 車載バッテリ(蓄電装置)
O 流路中心
s1 温度センサ(蓄電装置温度検出手段)
s2 電圧センサ(蓄電装置出力検出手段)
ステップS03,ステップS34 エアフィルタ目詰まり判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流路の上流側から順に、空気中の異物を取り除くエアフィルタと、空気流量を調節する送風手段と、空気の温度を調整する温度調整手段とが設けられた車室内用空調装置であって、
前記エアフィルタと前記送風手段との間の前記エアフィルタに隣接する前記空気流路内に、複数の電池モジュールで構成された蓄電装置を配置したことを特徴とする車室内用空調装置。
【請求項2】
前記空気流路の流路中心付近に配置される前記電池モジュール同士の間隔は、前記空気流路の壁面側に配置される前記電池モジュール同士の間隔よりも狭く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車室内用空調装置。
【請求項3】
前記電池モジュールは、前記空気流路の流れ方向に沿って積層配置され、前記空気流路の流路中心付近ほど積層数が増加されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車室内用空調装置。
【請求項4】
前記蓄電装置の温度を検出する蓄電装置温度検出手段と、
該蓄電装置温度検出手段の検出結果に基づき前記エアフィルタの目詰まり発生の有無を判定するエアフィルタ目詰まり判定手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車室内用空調装置。
【請求項5】
前記蓄電装置の出力を検出する蓄電装置出力検出手段と、
該蓄電装置出力検出手段の検出結果に基づき前記エアフィルタの目詰まり発生の有無を判定するエアフィルタ目詰まり判定手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車室内用空調装置。
【請求項6】
前記蓄電装置の温度を検出する蓄電装置温度検出手段と、
該蓄電装置温度検出手段の検出結果に基づき前記エアフィルタの目詰まり発生の有無を判定するエアフィルタ目詰まり判定手段とを備え、
該エアフィルタ目詰まり判定手段は、前記送風手段の流量が、前記蓄電装置の温度を適正な温度まで低下可能な所定流量以上に設定され、前記蓄電装置の温度が、該蓄電装置から適正な出力を得られなくなる所定温度以上であることが検出された場合に、前記エアフィルタが目詰まりしていると判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車室内用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−25790(P2011−25790A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172213(P2009−172213)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】