説明

車室内空調方法および装置

【課題】インストルメントパネルの両サイドに設けられている吹出口から吹出された温風を直接乗員に当てることなく車室内全域に流通させ、その拡散混合を促進して暖房感を向上することができる車室内空調方法および装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吹出口に温風の吹出し方向をセンターピラー17に衝突する方向に固定することが可能なルーバーを設け、該ルーバーにより温風をセンターピラー17に衝突させて車室内1の幅方向中央側へと流れを転向させ、その温風を前席3,4の後方を通して車室内1の幅方向中央付近で合流させた後、後席5,6の幅方向中央部を通して後方に流し、該温風をリアウィンド20に衝突させて左右に分流し、リアウィンド20に沿って側方に流れた温風を後方からリアサイドウィンド21に沿って前方側へと流すことにより、温風を直接乗員に当てることなく車室内1全体を暖房する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内における特に、後席側を快適に空調(暖房)することができる車室内の空調方法および空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車室内の暖房は、一部の温風をインストルメントパネルに設けられているフェース吹出口やデフ吹出口から吹出しているが、基本的に足元から温風を吹出すことにより、車室内の温度を上げて暖房感を確保している。このため、上半身や膝部の暖房は、温風の浮力に起因した自然対流による温度混合に依存されるが、自然対流による温度混合は制御がし難く、上半身や膝部の暖房が不十分となりがちであった。特に、ミニバンのように車室内の広い車種において、後席側においてその傾向が顕著であった。また、単にフェース吹出口やデフ吹出口からの温風の吹出し量を増加すると、浮力により、温風が上方に滞留しやすくなり、顔火照りなどの問題が発生してしまう。
【0003】
特許文献1には、ワンボックスカー等の空調に好適な空調システムとして、インパネ吹出口からの吹出し風を後方に導くルーバーを設けたフロントエアコンユニットと、天井吹出口からの吹出し風を前方に導くルーバーを設けたリアエアコンユニットとを設け、両吹出口からの吹出し風をぶつけ合い、乗員に直接吹出し風が当たらないようにした空調システムが開示されている。また、特許文献2には、吹出口に上下用ルーバーおよび左右用ルーバーを設け、その偏向角度を制御して乗員の頭部付近と脚部付近の温度が所定温度差となるようにものが開示されている。さらに、特許文献3には、吹出口に前側風向調整板と後側風向調整板を設け、空気流を所望の部位にポイント的に指向させるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3575119号公報
【特許文献2】特開2000−247139号公報
【特許文献3】特開2009−23530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、足元には、床下にダクトを通すことで直接温風を吹出すことは可能であるが、上半身や膝部に直接温風を吹出すことは難しい。従って、上半身や膝部には、温風の混合拡散による暖房が必要となるが、自然対流による温風の混合拡散は、気流の制御が困難であるため、相対的に浮力の影響が小さくなる強制対流による温風の混合拡散が望ましい。しかしながら、特許文献1のように、リア側に別のエアコンユニットを設け、天井吹出口から温風を吹出して強制対流させたとしても、上半身の頭部や顔部のみが温められる結果、不快感を与えることとなり、快適な暖房感は得られない。
【0006】
また、温風では、ドラフト感を感じる程流速が速い場合、人は不快と感じてしまうことから、人体周りでは温風の流速を抑制するか、あるいは温風が直接乗員に当たらないようにする必要がある。特許文献2,3には、吹出口に上下ルーバーおよび左右ルーバーを前後に設け、吹出し風を様々コントロールするようにしたものが開示されているが、フェース吹出口やデフ吹出口から吹出される温風を、乗員に直接当てることなく、車室内全域に流通させて温風の混合拡散を促進しようとするものではない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、インストルメントパネルの両サイドに設けられている吹出口から吹出された温風を直接乗員に当てることなく車室内全域に流通させ、その拡散混合を促進して暖房感を向上することができる車室内空調方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の車室内空調方法および装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる車室内空調方法は、インストルメントパネルの両サイドに設けられているサイドフェース吹出口またはサイドデフ吹出口もしくは専用の吹出口に、温風の吹出し方向をサイドウィンドに沿ってセンターピラーに衝突する方向に固定することが可能なルーバーを設け、該ルーバーを介して前記吹出口から吹出された前記温風を前記センターピラーに衝突させて車室内の幅方向中央側へと流れを転向させ、その温風を前席の後方を通して前記車室内の幅方向中央付近で合流させた後、後席の幅方向中央部を通して後方に流し、該温風をリアウィンドに衝突させて左右に分流し、該リアウィンドに沿って側方に流れた前記温風を後方からリアサイドウィンドに沿って前方側へと流すことにより、前記温風を直接乗員に当てることなく前記車室内全体を暖房することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、吹出口に設けられているルーバーの位置を、吹出した温風がセンターピラーに衝突する方向に固定して、温風をサイドウィンドに沿って吹出し、該温風をセンターピラーに衝突させて車室内の幅方向中央側へと流れを転向させ、その温風を前席の後方を通して車室内の幅方向中央付近で合流させた後、後席の幅方向中央部を通して後方に流し、該温風をリアウィンドに衝突させて左右に分流し、リアウィンドに沿って側方に流れた温風を後方からリアサイドウィンドに沿って前方側へと流すことにより、温風を直接乗員に当てることなく車室内全域に流通させ、強制対流による温風の混合拡散を促進して暖房することができる。従って、温風によるドラフト感を抑制しながら、車室内全体の温度を上昇させ、暖房感を向上することができる。
【0010】
さらに、本発明の車室内空調方法は、上記の車室内空調方法において、前記ルーバーを可動調整する際、前記吹出口に設けられているルーバー位置制御手段を介して、前記ルーバーが前記温風を前記センターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定可能とされていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ルーバーを可動調整する際、吹出口に設けられているルーバー位置制御手段を介して、ルーバーが温風をセンターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定可能とされているため、吹出口のルーバーを可動して後席側を含む車室内全域に温風を流通させる際、ルーバー位置制御手段を介してルーバーをセンターピラーに衝突する方向に向って温風を吹出す位置に固定することにより、温風を確実にセンターピラーに衝突する方向に向って吹出すことができる。従って、誰もがルーバーの簡易な操作により温風をセンターピラーに衝突させ、該温風を上記フローパターンで車室内全域に流通させてその混合拡散を促進し、快適な暖房感を得ることができる。
【0012】
また、本発明の車室内空調方法は、上記の車室内空調方法において、前記ルーバーが、操作ボタン等の手動操作または設定外気温の検知により空調用コントローラを介して自動的に可動され、前記ルーバーを温風が前記センターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定可能とされていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、ルーバーが、操作手段等の手動操作または設定外気温の検知により空調用コントローラを介して自動的に可動され、ルーバーを温風がセンターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定可能とされているため、操作ボタン等の手動操作あるいは設定外気温の検知により空調用コントローラを介してルーバーを可動し、該ルーバーを自動的にセンターピラーに衝突する方向に向って温風を吹出す位置に固定することができる。従って、温風をセンターピラーに衝突する方向に吹出す位置へのルーバーの可動、固定を自動化し、操作性および操作精度を高めることにより強制対流による温風の混合拡散を促進することができ、車室内全域でより快適な暖房感が得られるようになる。
【0014】
さらに、本発明にかかる車室内空調装置は、インストルメントパネルの両サイドに設けられているサイドフェース吹出口またはサイドデフ吹出口もしくは専用の吹出口に、空調風の吹出し方向を調整可能なルーバーが設置されている車室内空調装置において、前記ルーバーに対し、前記空調風を車室内側に突出されているセンターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定することが可能なルーバー位置制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、インストルメントパネルの両サイドに設けられているサイドフェース吹出口またはサイドデフ吹出口もしくは専用の吹出口に、空調風の吹出し方向を調整可能なルーバーが設置されている空調装置にあって、ルーバーに対し、空調風を車室内側に突出されているセンターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定することが可能なルーバー位置制御手段が設けられているため、吹出口のルーバーを可動して後席側を含む車室内全域に空調風(温風)を流通させる際、該ルーバーをルーバー位置制御手段を介して温風をセンターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定し、吹出口からの温風をサイドウィンドに沿ってセンターピラーに衝突する方向に吹出すことができ、これによって、温風をセンターピラーに衝突させて車室内の幅方向中央側へと流れを転向させ、その温風を前席の後方を通して車室内の幅方向中央付近で合流させた後、後席の幅方向中央部を通して後方に流し、該温風をリアウィンドに衝突させて左右に分流し、該リアウィンドに沿って側方に流れた温風を後方からリアサイドウィンドに沿って前方側へと流すことにより、温風を直接乗員に当てることなく車室内全域に流通させ、強制対流による混合拡散を促進して暖房することができる。従って、温風によるドラフト感を抑制しつつ、車室内全体の温度を上昇させ、暖房感を向上することができる。
【0016】
さらに、本発明の車室内空調装置は、上記の車室内空調装置において、前記ルーバー位置制御手段は、前記吹出口に設けられ、前記ルーバーを可動する時、前記センターピラーに衝突する方向に向って前記空調風を吹出す位置に該ルーバーを固定可能な突起、ストッパまたは目印等のいずれかとされていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、ルーバー位置制御手段が、吹出口に設けられ、ルーバーを可動する時に、センターピラーに衝突する方向に向って空調風を吹出す位置に該ルーバー固定可能な突起、ストッパまたは目印等のいずれかとされているため、ルーバーを可動して空調風の吹出し方向をセンターピラーに衝突する方向とする際、ルーバーを突起またはストッパと当たる位置あるいは目印が合致する位置まで動かすことにより、必然的にルーバーによる空調風(温風)の吹出し方向をセンターピラーに衝突する方向とすることができる。従って、誰もがルーバーの簡易な操作により温風をセンターピラーに衝突させ、該温風を上記フローパターンで車室内全域に流通させてその混合拡散を促進し、快適な暖房感を得ることができる。
【0018】
また、本発明の車室内空調装置は、上記の車室内空調装置において、前記ルーバーは、操作ボタン等の手動操作または設定外気温の検知により空調用コントローラを介して、該ルーバーを前記センターピラーに衝突する方向に向って前記空調風を吹出す位置に可動するルーバー可動機構を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、ルーバーが、操作ボタン等の手動操作または設定外気温の検知により空調用コントローラを介して、ルーバーをセンターピラーに衝突する方向に向って空調風を吹出す位置に可動するルーバー可動機構を備えているため、操作ボタン等の手動操作または設定外気温の検知により空調用コントローラを介してルーバー可動機構を動作させることによって、該ルーバーを自動的にセンターピラーに衝突する方向に向って空調風(温風)を吹出す位置に可動、固定することができる。従って、温風をセンターピラーに衝突する方向に吹出す位置へのルーバーの可動、固定を自動化し、操作性および操作精度を高めることにより強制対流による温風の混合拡散を促進することができ、車室内全域でより快適な暖房感が得られるようになる。
【0020】
さらに、本発明の車室内空調装置は、上述のいずれかの車室内空調装置において、前記センターピラーは、前記空調風の衝突する前方側側面が、該空調風を前記車室内の幅方向中央側に向って転向させる凹状の円弧面とされていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、センターピラーは、空調風の衝突する前方側側面が、該空調風を車室内の幅方向中央側に向って転向させる凹状の円弧面とされているため、センターピラーに衝突した空調風(温風)を凹状の円弧面によりスムーズに車室内の幅方向中央側に向って転向させることができ、流れの剥離、その他に起因する乱れを低減し、温風の拡散を抑制することができる。従って、温風の下流側(後席側)への到達性を向上し、必要風量を低減することが可能となる。また、サイドウィンドに沿う温風の流れを確実に車室内の幅方向中央側へと転向させることができるため、後席側の乗員に対して、特に顔部付近に直接温風が当たるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車室内空調方法および装置によると、インストルメントパネルの両サイドの吹出口から吹出された温風をセンターピラーに衝突させ、車室内の幅方向中央側に向って転向させることにより、この温風を直接乗員に当てることなく車室内全域に流通させ、強制対流による混合拡散を促進して暖房することができるため、温風によるドラフト感を抑制しながら、車室内全体の温度を上昇させ、暖房感を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車室内空調方法および装置による温風の流れを示す車室内の概略平面視図である。
【図2】図1に示す車室内の側面視図である。
【図3】図1に示す車室内空調方法および装置の空調風の吹出口位置を示す斜視図である。
【図4】図3に示す吹出口に設けられる空調風の吹出し方向を調整可能なルーバーの概略構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示すルーバーに対する位置制御手段の一例を示す正面視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る車室内空調方法および装置に適用されるセンターピラーの一例の概略斜視図(A)とその断面図(B),(C),(D)である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車室内空調方法および装置に適用されるセンターピラーの変形例の概略斜視図(A)とその断面図(B),(C),(D)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図5を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る車室内空調方法および装置による温風の流れを示す車室内の概略平面視図が示され、図2には、その側面視図が示され、図3には、その空調風の吹出口位置を示す斜視図が示されている。
車両の車室内1は、図1に示されるように、平面形状が略長方形状をなし、前方部にインストルメントパネル2が設けられており、その後方側に運転席(前席)3および助手席(前席)4が配置され、更にその後方側に左右の後席5,6が配置されている。この後席5,6は、ミニバンやワンボックスカー等においては、前後に2列に配置されている場合もある。
【0025】
車両用空調装置は、通常、インストルメントパネル2内に、HVACユニット(Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)が配設されており、該HVACユニットにおいて温度調整された温調風(冷風または温風)は、インストルメントパネル2の前面の中央部および両サイド部に設けられているセンターフェース吹出口およびサイドフェース吹出口から車室内1の後方に向って吹出され、インストルメントパネル2の上面に開口されているデフ吹出口からフロントウィンド7に向って吹出され、更にHVACユニットの下部に設けられているフット吹出口から乗員の足元付近に吹出されるように構成されている。
【0026】
図3には、インストルメントパネル2の前面の両サイド部に設けられているサイドフェース吹出口8,9とインストルメントパネル2の上面に設けられているサイドデフ吹出口10,11が示されている。この吹出口のうち、特にインストルメントパネル2の前面に設けられているセンターフェース吹出口(図示省略)およびサイドフェース吹出口8,9には、図4に示されるように、温調風の吹出し方向を左右方向および上下方向に調整する複数枚の左右ルーバー12および上下ルーバー13が、複数枚毎回動可能に設けられている。該左右ルーバー12および上下ルーバー13は、サイドフェース吹出口8,9付近に設けられているルーバー位置調整用つまみ14,15を介して回動可能とされている。
【0027】
さらに、本実施形態においては、サイドフェース吹出口8,9の周辺に、左右ルーバー12および上下ルーバー13を、サイドフェース吹出口8,9から吹出された温調風がサイドウィンド16に沿ってセンターピラー17に衝突する方向に向って吹出される位置に可動し、固定するための目印18A,18Bおよび19A,19Bを設けている。このルーバー位置制御手段としての目印18A,18Bおよび19A,19Bは、ルーバー位置調整用つまみ14,15側とインストルメントパネル2側との間に対で設けられている。
【0028】
なお、センターピラー17は、前席3,4側の前ドアと、後席5,6側の後ドアとの間において、ルーフパネル側のルーフサイドレールとフロアパネル側のサイドシルとの間に上下方向に架設され、ボディの強度を確保するメンバーであり、車両幅方向の外側に配置されるアウター部材と、その内側に配置されるインナー部材とから構成されている。インナー部材は、コの字断面形状とされており、アウター部材と結合されることにより、中空の柱状部材とされ、車室内1に突出されるように設けられている。
【0029】
また、ルーバー位置制御手段としての目印18A,18Bおよび19A,19Bは、上記のように、サイドフェース吹出口8,9から吹出された温風をサイドウィンド16に沿ってセンターピラー17に衝突する方向に向って吹出せる位置において、左右ルーバー12および上下ルーバー13もしくはルーバー位置調整用つまみ14,15を、クリック感をもって停止、固定できる突起あるいはストッパにより代替する構成としてもよい。
【0030】
さらに、左右ルーバー12および上下ルーバー13を手動操作により上記位置に可動調整する代わりに、空調用コントローラ(図示省略)に専用の操作ボタンを設け、該操作ボタンを操作することにより、あるいは空調用コントローラに設けられている外気温センサで一定温度以下(例えば、0℃以下)の外気温を検知することにより、左右ルーバー12および上下ルーバー13を空調用コントローラおよびモータ等のアクチュエータ(図示省略)を介して直接またはリンク機構(図示省略)を介して駆動し、上記の如く温風をセンターピラー17に衝突する方向に吹出せる位置に可動、停止するようにしてもよい。
【0031】
次に、上記した空調装置による車室1内の空調方法について説明する。
一般的なHVACユニットを用いた空調装置での温調風吹出しモードは、温調風をフェース吹出口から吹出すフェースモード、主にフット吹出口から吹出すフットモード、デフ吹出口から吹出すデフモード、フェース吹出口およびフット吹出口の双方から吹出すバイレベルモード、主にデフ吹出口から吹出すと共にフット吹出口からも吹出すデフ・フットモードの5のモードが設定可能であり、暖房運転時には、通常フットモード、バイレベルモードまたはデフ・フットモードのいずれかが選択されるようになっている。
【0032】
暖房運転時、外気温が低いと、特に後席5,6側においては、十分な暖房感が得られないことがある。この場合、足元から温風を吹出すのみでは、特に、上半身や膝部に対する暖房が不十分となりがちとなる。そこで、サイドフェース吹出口からの吹出しを付加したフットモードまたはデフ・フットモード若しくはデフ吹出口からの吹出しを付加したバイレベルモードを選択し、サイドフェース吹出口8,9からも温風を吹出すようにする。この際、サイドフェース吹出口8,9に設けられている左右ルーバー12および上下ルーバー13を、サイドフェース吹出口8,9から吹出された温風がサイドウィンド16に沿ってセンターピラー17に衝突する方向に向って吹出される位置に回動操作する。
【0033】
上記位置への左右ルーバー12および上下ルーバー13の回動操作は、ルーバー位置調整用つまみ14,15を目印18A,18Bおよび19A,19Bが互いに合致する位置まで可動する方法、左右ルーバー12および上下ルーバー13もしくはルーバー位置調整用つまみ14,15が突起やストッパに当たってクリック感が得られる位置まで可動する方法、更には、操作ボタンの手動操作によりあるいは外気温センサが設定温度以下の外気温を検知することにより、空調用コントローラおよびアクチュエータを介して左右ルーバー12および上下ルーバー13を上記位置に自動的に可動する方法等が用いられる。
【0034】
このようにして、サイドフェース吹出口8,9から吹出された温風をセンターピラー17に衝突する方向に向って吹出すことができる。該温風は、図1に示されるように、まずセンターピラー17の車室内1に突出されている前方側の側面に衝突し、車室内1の幅方向中央側に流れが転向される。この温風を前席3,4の後方を通して車室内1の幅方向中央部に向って流し、幅方向中央部付近において合流させる。この合流された温風を左右の後席5,6間である車室内1の幅方向中央部を通して後方に流し、リアウィンド20に衝突させることによって左右に分流する。更に、この温風をリアウィンド20に沿って車室内1の側方に流し、そこからリアサイドウィンド21に沿って前方側に流すようにする。
【0035】
これにより、サイドフェース吹出口8,9からサイドウィンド16に沿って吹出された温風をセンターピラー17に衝突させて流れ方向を転向させ、その温風を上記のフローパターンにより直接乗員に当てることなく、車室内1全域に流通させることができる。その結果、強制対流による温風の混合拡散を促進して車室内1を暖房することができる。
従って、本実施形態にかかる車室内空調方法および装置によると、温風によるドラフト感を抑制しながら、車室内1全体の温度を上昇させ、暖房感を向上することができる。
【0036】
また、左右ルーバー12および上下ルーバー13を可動して温風の吹出し方向をセンターピラー17に衝突する方向とする際、ルーバー位置制御手段としての目印18A,18Bおよび19A,19B、あるいは突起、ストッパ等を利用して、左右ルーバー12および上下ルーバー13を目印18A,18Bおよび19A,19Bが合致する位置あるいは突起またはストッパに衝突してクリック感が得られる位置まで動かすことにより、必然的に左右ルーバー12および上下ルーバー13による空調風(温風)の吹出し方向をセンターピラー17に衝突する方向とすることができる。
【0037】
このため、誰もが左右ルーバー12および上下ルーバー13の簡易な可動操作のみによってサイドフェース吹出口8,9からの温風をセンターピラー17に衝突させ、その温風を上記したフローパターンにより車室内1全域に流通させることができる。従って、強制対流による温風の混合拡散を促進し、快適な暖房感を得ることができる。
【0038】
さらに、目印18A,18B、19A,19B等のルーバー位置制御手段に代え、操作ボタン等の手動操作または設定外気温の検知により空調用コントローラを介して、左右ルーバー12および上下ルーバー13をセンターピラー17に衝突する方向に向って空調風を吹出す位置に可動するアクチュエータ、リンク機構等のルーバー可動機構を設けることにより、操作ボタン等の手動操作または設定外気温の検知により空調用コントローラを介してルーバー可動機構を動作させ、左右ルーバー12および上下ルーバー13を自動的にセンターピラー17に衝突する方向に向けて空調風(温風)を吹出す位置に可動、固定することができる。
【0039】
このため、温風をセンターピラー17に衝突する方向に吹出す位置への左右ルーバー12および上下ルーバー13の可動、固定を自動化し、その操作性および操作精度を高めることにより、強制対流による温風の混合拡散を促進することができ、従って、車室内1全域でより快適な暖房感が得られるようになる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図6および図7を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、センターピラー17における空調風の衝突面を円弧面としている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、サイドフェース吹出口8,9から吹出された空調風(温風)が衝突されるセンターピラー17の前方側側面が、図6に示されるように、上下方向の各位置B,C,Dにおいて、図6(B),(C),(D)に示す如く、空調風の流れを車室1内の幅方向中央側に向って転向させる凹状の円弧面17Aとされている。
【0041】
上記のように、センターピラー17の空調風(温風)が衝突される前方側側面を、温風の流れを車室内1の幅方向中央側に向って転向させる凹状の円弧面17Aとすることによって、センターピラー17に衝突された空調風(温風)を凹状の円弧面17Aによりスムーズに車室内1の幅方向中央側に向って転向させることができ、流れの剥離、その他に起因する乱れを低減し、温風の拡散を抑制することができる。
従って、温風の下流側(後席5,6側)への到達性を向上し、必要風量を低減することが可能となる。また、サイドウィンド16に沿う温風の流れを確実に車室内1の幅方向中央側へと転向させることができるため、後席5,6側の乗員に対して、特に顔部付近に直接温風が当たるのを防止することができる。
【0042】
なお、上記センターピラー17の前方側側面を、図6に示されるような単純な凹状円弧面17Aではなく、図7に示されるように、上下方向の各位置B,C,Dにおいて、図7(B),(C),(D)に示す如く、下方から上方に高さ方向に向って直線面から凹状の円弧面へと漸次変化され、更に車室内1に突出する先端側に向う傾斜が漸次大きくなるような凹状の円弧面17Bとしてもよい。
【0043】
このように、センターピラー17の前方側側面を、高さ方向に漸次断面形状が変化する凹状の円弧面17Bとすることにより、後席乗員の顔付近と肩/肘付近の温風流れを変化させることが可能となる。その結果、後席乗員の顔火照りを防止しつつ、肩/肘付近に温風の一部を流し込むことにより、全身の暖房感を向上することができる。
【0044】
[その他の実施形態]
本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、以下のような実施形態とすることができる。
(1)上記実施形態では、サイドフェース吹出口8,9から吹出される温風をセンターピラー17に衝突させて流れ方向を転向させるようにしているが、図3に示されているサイドデフ吹出口10,11に左右ルーバー12および上下ルーバー13を設け、該サイドデフ吹出口10,11からの温風をセンターピラー17に衝突させるようにしてもよい。
また、インストルメントパネル2の両サイドに、センターピラー17に向って温風を吹出すことができる専用の吹出口を設けた構成としてもよい。
【0045】
(2)サイドフェース吹出口8,9またはサイドデフ吹出口10,11もしくは専用の吹出口から温風をセンターピラー17に衝突させるように吹出し、後席5,6側の暖房感を向上させる際、通常のバイレベルモードあるいはデフ・フットモードに比べ、サイドフェース吹出口8,9またはサイドデフ吹出口10,11もしくは専用の吹出口から吹出される温風量を増大し、後席5,6側の暖房性能を向上させるようにしてもよい。
【0046】
(3)サイドフェース吹出口8,9またはサイドデフ吹出口10,11もしくは専用の吹出口から温風をセンターピラー17に衝突させるように吹出し、後席5,6側の暖房感を向上させる際、その温風の温度を所定温度だけ高めるようにしてもよい。
(4)サイドフェース吹出口8,9またはサイドデフ吹出口10,11もしくは専用の吹出口の形状は、矩形状に限らず、丸形状等、他の形状としてもよく、同様に、左右ルーバー12および上下ルーバー13の形状も、平板形、円弧形、翼形等、様々な形状とすることができる。
【0047】
なお、本実施形態の車室内空調方法および装置は、ミニバンやワンボックスカーに限らず、セダン型等の車種にも同様に適用できることは云うまでもなく、これによって、リアエアコンユニットの設置を不要とすることが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 車室内
2 インストルメントパネル
3 運転席(前席)
4 助手席(前席)
5,6 左右の後席
8,9 サイドフェース吹出口
10,11 サイドデフ吹出口
12 左右ルーバー
13 上下ルーバー
14,15 ルーバー位置調整用つまみ
16 サイドウィンド
17 センターピラー
17A,17B 凹状の円弧面
18A,18B,19A,19B 目印(ルーバー位置制御手段)
20 リアウィンド
21 リアサイドウィンド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルの両サイドに設けられているサイドフェース吹出口またはサイドデフ吹出口もしくは専用の吹出口に、温風の吹出し方向をサイドウィンドに沿ってセンターピラーに衝突する方向に固定することが可能なルーバーを設け、
該ルーバーを介して前記吹出口から吹出された前記温風を前記センターピラーに衝突させて車室内の幅方向中央側へと流れを転向させ、
その温風を前席の後方を通して前記車室内の幅方向中央付近で合流させた後、後席の幅方向中央部を通して後方に流し、
該温風をリアウィンドに衝突させて左右に分流し、該リアウィンドに沿って側方に流れた前記温風を後方からリアサイドウィンドに沿って前方側へと流すことにより、
前記温風を直接乗員に当てることなく前記車室内全体を暖房することを特徴とする車室内空調方法。
【請求項2】
前記ルーバーを可動調整する際、前記吹出口に設けられているルーバー位置制御手段を介して、前記ルーバーが前記温風を前記センターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の車室内空調方法。
【請求項3】
前記ルーバーが、操作ボタン等の手動操作または設定外気温の検知により空調用コントローラを介して自動的に可動され、前記ルーバーを温風が前記センターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の車室内空調方法。
【請求項4】
インストルメントパネルの両サイドに設けられているサイドフェース吹出口またはサイドデフ吹出口もしくは専用の吹出口に、空調風の吹出し方向を調整可能なルーバーが設置されている車室内空調装置において、
前記ルーバーに対し、前記空調風を車室内側に突出されているセンターピラーに衝突する方向に向って吹出す位置に固定することが可能なルーバー位置制御手段が設けられていることを特徴とする車室内空調装置。
【請求項5】
前記ルーバー位置制御手段は、前記吹出口に設けられ、前記ルーバーを可動する時、前記センターピラーに衝突する方向に向って前記空調風を吹出す位置に該ルーバーを固定可能な突起、ストッパまたは目印等のいずれかとされていることを特徴とする請求項4に記載の車室内空調装置。
【請求項6】
前記ルーバーは、操作ボタン等の手動操作または設定外気温の検知により空調用コントローラを介して、該ルーバーを前記センターピラーに衝突する方向に向って前記空調風を吹出す位置に可動するルーバー可動機構を備えていることを特徴とする請求項4に記載の車室内空調装置。
【請求項7】
前記センターピラーは、前記空調風の衝突する前方側側面が、該空調風を前記車室内の幅方向中央側に向って転向させる凹状の円弧面とされていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の車室内空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−162083(P2011−162083A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27736(P2010−27736)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】