説明

車椅子収容装置

【課題】車椅子の収容作業が容易であると共に車椅子を安定して支持でき、しかも汎用性が高くて、コンパクト化することが可能な車椅子の収容装置を提供する。
【解決手段】車椅子11の上方側に配置した支持フレーム部13と、支持フレーム部13に保持し且つ車椅子11を係止して吊り下げる吊り下げ部15と、支持フレーム部13に連結し支持フレーム部13を移動させる移動機構17と、を備え、支持フレーム部13は、移動機構17との連結部21と、連結部21に対して固定状態で配置し大車輪31の回転中心Crより上部後方に当接する大車輪当接部26と、大車輪当接部26より上方の位置に連結部21に対して固定状態で配置し吊り下げ部15を垂下させて保持する吊り下げ保持部24と、を有し、吊り下げ部15により車椅子11が吊り下げられた状態で大車輪31が大車輪当接部26に当接するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車椅子を収容するための車椅子収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子を車両室内に収納する装置として車椅子利用者自身が収納作業を行うタイプのものが多数知られている(例えば特許文献1乃至4)。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、一列目シートと二列目シートの間の床面に車椅子車載装置を配置して車椅子を車幅方向に出し入れする装置が提案されている。これらの装置では、車椅子利用者が運転席に移った後、車両の外側を向いて車椅子を自分で折り畳み、かつ車椅子車載装置に向くように車椅子を揃えて、車椅子を車椅子車載装置に載せなければならず、車椅子利用者が運転者である場合に非常に労力や手間がかかる。
【0004】
特許文献3には、ガイドレールを車両デッキで運転席後部から斜め後方のコーナー部に向けて配置した車椅子収納装置が提案されている。この装置では、車椅子利用者の労力や手間が改善できるものの、装置が大型化する。
特許文献4には、車椅子を車室内で移動するために車両床面側にレールなどのガイド部材を配設せず、車両室内のルーフ側にガイド部材を配設した装置が提案されている。この装置では、レールが運転席側のドア近傍から運転席上を横断して助手席上で湾曲し、後部左座席の上方を通り、後部左座席後方のリアウインドの近くまで設けられている。ここでは車椅子を昇降させるリフト装置を備えることで使用者の負担を軽減させているが、装置が一層大型化する。
【0005】
特に特許文献1乃至4に開示されている装置では、車椅子を強固に固定して移動させる構造であるため、車椅子に適合した装置が必要となり、使用できる車椅子に制限が多くて汎用性が十分でない。そのため本発明者は、汎用性があり、車椅子利用者が簡便に手間や労力をかけないで車椅子を車室内外に出し入れすることができる車椅子収納装置を、平成22年6月1日付特願2010−126298号で既に出願している。
【0006】
上記特願010−126298号に係る車椅子収納装置では、車椅子を出し入れするための開口を有する枠体を備え、枠体には大車輪の車軸方向に延設された支持フレームを前後に一組設けると共に一組の支持フレーム上に大車輪を載置した状態で車椅子の上部を支持するロックレバーを設けている。
ここでは車椅子使用者が運転席に乗り移った後、大車輪を転動させて一組の支持フレーム上に車椅子を移動させ、ロックレバーを倒すだけで車椅子の上部をロックさせればよいため、使用者の労力や手間を顕著に軽減できる。また、車椅子の下端側などを強固に支持するような構造体を設けていないため、汎用性があり、使用できる車椅子の自由度が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−108770号公報
【特許文献2】特開2006−102214号公報
【特許文献3】特開2009−18689号公報
【特許文献4】特開平10−129335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許出願に係る車椅子収納装置によれば高い汎用性が得られ、しかも強固に車椅子を固定する必要がなくて軽量ではあるものの、車椅子を収容する部位の容積が比較的大きくなってしまう。また、車椅子を後方側から掬うように持ち上げると、車椅子が前方に移動してずれる場合がある。
【0009】
そこで、本発明では、車椅子の収容作業が容易であると共に車椅子を安定して支持でき、しかも汎用性が高くて、コンパクト化することが可能な車椅子の収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の車椅子の収容装置は、車椅子の上方側に配置される支持フレーム部と、支持フレーム部に保持され車椅子を係止して吊り下げる吊り下げ部と、支持フレーム部に連結し支持フレーム部を移動させる移動機構とを備え、支持フレーム部は、移動機構との連結部と、連結部に対して固定状態で配置され大車輪の回転中心より上部後方に当接する大車輪当接部と、大車輪当接部より上方の位置に連結部に対して固定状態で配置され、吊り下げ部を垂下させて保持する吊り下げ保持部と、を有し、吊り下げ部により車椅子が吊り下げられた状態で大車輪が大車輪当接部に当接するように構成されている。
【0011】
大車輪当接部は、車椅子の幅方向に延設されて一対の大車輪が当接する当接バーを有するのがよい。特に、大車輪当接部は、車椅子の背もたれ部より後方で大車輪に当接するのが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大車輪の回転中心より上部後方に当接する大車輪当接部を支持フレーム部に備えると共に、支持フレーム部の吊り下げ保持部に垂下されて車椅子を係止可能な吊り下げ部を備え、吊り下げ部により車椅子を吊り下げた状態で大車輪が大車輪当接部に当接するように構成されている。この吊り下げ部により車椅子を安定して吊り下げることができる。
【0013】
ここでは大車輪を大車輪当接部に当接させて吊り下げ部を車椅子に係止すれば車椅子を支持フレームに安定して支持できるので、車椅子の収容作業を容易に行うことができる。また大車輪当接部が大車輪の回転中心より上部後方に当接しているため、車椅子が前方へ移動するようなことがない。そのため使用者の労力を軽減できると共に車椅子の収容作業を迅速かつ安全に行うことができる。
【0014】
また大車輪当接部が大車輪の上部後方に当接できれば吊り下げ部を車椅子に係止して支持できるため、背もたれ部周辺の形状や前方側や側方側の形状が異なる車椅子であっても、共通に使用可能で汎用性が高い。ここでは大車輪当接部の位置を車椅子毎に調整する必要もない。
【0015】
車椅子の上部側に配置される支持フレーム部に大車輪当接部及び吊り下げ保持部を設け、吊り下げ保持部から吊り下げ部を垂下させた構成であるため、車椅子収容装置の構成を極めて簡素化でき、コンパクトな車椅子収容装置を実現できる。しかも簡素でコンパクトな構成であるため、車両に搭載する場合であっても、車両や車椅子を特別な構造にする必要がなく、安価に車椅子収容装置を車両に装着できる。さらに軽量化、高剛性化等も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置に車椅子を収容した状態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の支持フレーム部及び吊り下げ部を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の支持フレーム部及び吊り下げ部を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の支持フレーム部及び吊り下げ部を示す正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置の吊り下げ部を示す側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車椅子収容装置のフック部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
この実施形態では、車椅子を車室内に収容可能に構成した車椅子収容装置の例について説明する。
この車椅子収容装置10は、図1及び図2に示すように、車椅子11の上方側に配置される支持フレーム部13と、支持フレーム部13に保持されて車椅子11を係止可能な吊り下げ部15と、支持フレーム部13に連結して支持フレーム部13を移動させる移動機構17と、を備えている。なお、本発明で収容し得る車椅子11は、大車輪31、キャスタ33、背もたれ部35と座席を有するごく一般的なタイプのものであっても、電動タイプのものであっても広く適用可能である。
【0018】
支持フレーム部13は、図3乃至図5に示すように、鋼材等からなるパイプ、棒材、角材、板材等を用いて、車椅子11を支持可能な剛性を備えた一体の構造体として作製されており、車椅子11に対して格段に小さく形成されている。
【0019】
この支持フレーム部13には、一方の側面側に後述する移動機構17との連結部21が設けられ、他方の側面側に車椅子11の前後方向に延びるガイド部22が設けられている。連結部21とガイド部22との間には、上方の位置に略コ字状に屈曲して上部連続部23が設けられ、この上部連続部23には吊り下げ部15を垂下させて保持するための吊り下げ保持部24が設けられている。さらに連結部21とガイド部22との間には、下方に後継して略コ字状に屈曲して下部連続部25が設けられ、この下部連続部25には車椅子11の大車輪31を当接させるための大車輪当接部26が設けられている。
【0020】
ここでは、図5に示すように、正面視において、連結部21、上部連続部23、ガイド部22及び下部連続部25が環状に連続して一体化している。また吊り下げ保持部24及び大車輪当接部26が、それぞれ連結部21に対して使用時に相対変位不能な固定状態で配置されている。この実施形態では、連結部21と吊り下げ保持部24との間に補強材27が配設されて補強されている。これらにより支持フレーム部13は、車椅子11の荷重に対して十分な剛性が確保されている。
【0021】
大車輪当接部26は、車椅子11の幅方向に水平に延設されており、幅方向に折りたたまれた車椅子11の一対の大車輪31が当接する当接バー26aにより構成されている。この当接バー26aは、図2に示すように、大車輪31の回転中心Crより上部後方に当接するように配置されており、本実施形態では、車椅子11の背もたれ部35に対して後方の位置で大車輪31に当接するようになっている。
【0022】
ガイド部22は、車椅子11の前後方向に延びるガイドバー28と、ガイドバー28に固定されて大車輪31の上部外側に配置されるガイド板29と、を有する。このガイド板29は車椅子11を支持フレーム部13に支持させる際に、車椅子11の大車輪31やハンドリム37等を適宜摺接させて所定位置に案内するものである。
【0023】
吊り下げ保持部24に保持される吊り下げ部15は、車椅子11に係止して支持フレーム部13が上昇することで車椅子11を支持フレーム部13に吊り下げるものである。
この吊り下げ部15は、図6及び図7に示すように、車椅子11を吊り下げるフック部41と、フック部41に連結されて吊り下げ保持部24に保持された支持ベルト42と、を備えている。支持ベルト42は、車椅子11の荷重に対して十分な耐力を有し柔軟性を有するものが使用されている。
【0024】
フック部41は、支持ベルト42を固定するベルト固定部43と、ベルト固定部43とは反対側に配置されるフック先端部44とを有している。ベルト固定部43は支持ベルト42を移動不能に固定できるものであればよく、ここでは支持ベルト42の一方の端部に形成された巻き返し部45に貫通して固定された固定片からなる。フック先端部44は車椅子11を係止する際に係止操作を行い易いように外側に向けて湾曲した側面形状を有する。
【0025】
このフック部41では、図7に示すように、支持ベルト42によりフック部41を垂下させた際、フック先端部44の頂部がベルト固定部43の頂部より上方に配置されるように、ベルト固定部43側をフック先端部44側より重く形成している。このようにすると、フック部41に車椅子11を係止した際、支持ベルト42に張力を付与しない状態で配置していても、フック先端部44が側方側に倒れて配置されることを防止でき、フック先端部44の係止状態が予期せずに解除されるようなことを防止できる。またフック部41と車椅子11との係止を解除した際には、フック部41が大きく傾倒しないため、自重で降下して車椅子11から離間し易くできる。
【0026】
吊り下げ部15を保持するための吊り下げ保持部24は、支持フレーム部13の上部に装着されている。この吊り下げ保持部24は、図6に示すように、カムバックル51を用いて構成されている。具体的には、支持フレーム部13の上部連続部23に固定され支持ベルト42の支持面52を有して支持ベルト42が挿通された保持部本体53と、保持部本体53に回動可能に配置されたカムバックル51と、カムバックル51を一方の回動方向に付勢するバネ部材54と、カムバックル51をバネ部材54の付勢力に抗して他方の回転方向に操作可能なロック解除ボタン55とを備える。
【0027】
カムバックル51の一端側には、保持部本体53の支持面52と対向配置された噛合部56を有し、バネ部材54の付勢力により噛合部56が支持面52側に付勢されている。そのため支持面52と噛合部56との間に挿通された支持ベルト42が支持面52と噛合部56とにより噛合されることで支持ベルト42の一方側への移動が阻止される。支持ベルト42の他方側への移動は、カムバックル51の噛合部56が保持部本体53の支持面52から離間することで許容される。
【0028】
そのためカムバックル51により吊り下げ保持部24とフック部41との間の支持ベルト42の長さを短くする方向に支持ベルト42を移動可能に保持でき、支持ベルト42の長さを長くする方向に支持ベルト42を移動不能に保持できる。
【0029】
支持フレーム部13に連結された移動機構17は、車室内における運転席後方のフロアに車幅方向に固設されている。この移動機構17は、本体ケース61内に駆動手段が設けられ、この駆動手段により2本の回動アーム62が平行に回動可能となっている。回動アーム62の先端には支持フレーム部13の連結部21と連結した連結ケース63が設けられ、内部に配置された駆動手段により支持フレーム部13が横回転可能となっている。
【0030】
このような移動機構17によれば、回動アーム62を回動させることで、運転席後方のドア開口から車幅方向に車椅子11を支持した支持フレーム部13を出し入れすることができる。回動アーム62を最も外側に配置させたとき、支持フレーム部13の路面からの高さが予め設定された所定の高さに配置可能となっている。
【0031】
また回動アーム62を最も外側に配置させた状態で、連結ケース63の駆動手段により支持フレーム部13を横回転させることで、支持フレーム部13の前後方向、即ち、ガイド部22の長手方向が車両前後方向に配置され、運転席の側方の位置から後方に向けて車椅子11を移動させることで、車椅子11を支持フレーム部13に対して所定の支持位置に配置することが可能となっている。
【0032】
次に、車椅子収容装置10の動作について説明する。
不使用時には、移動機構17の回動アーム62を車内側に回動させた状態で維持することで、支持フレーム部13を車室内に配置しておく。
使用時には、まず車椅子11により使用者が車両の運転席側に接近し、運転席後方のドアを開口し、移動機構17の回動アーム62を駆動して、支持フレーム部13を車外側に移動させて下降した位置に配置する。連結ケース63の駆動手段によりガイド板29が車両前後方向に向くように支持フレーム部13を回動させて停止させる。
【0033】
これにより支持フレーム部13が路面から所定の高さに配置される。この高さは図2に示すように、大車輪当接部26が大車輪31の回転中心Crより上部後方に当接することが可能であればよい。
車両にはサスペンションが設けられているため車高の上下変動が生じるが、大車輪31の上部後方に大車輪当接部26が当接できる限り、問題なく車椅子収容装置10を動作させることが可能である。そのため移動機構17により車高の上下変動を吸収する必要はない。また吊り下げ保持部24のカムバックル51をロック解除ボタン55により操作し、フック部41を下方へ配置しておく。
【0034】
使用者が車椅子11から運転席に乗り移り、車椅子11を幅方向に折り畳んだ状態で、ガイド板29により案内させつつ車椅子11を前方側から移動させ、大車輪31を大車輪当接部26に当接させる。
支持フレーム部13の吊り下げ保持部24から垂下している吊り下げ部15のフック部41に車椅子11を係止する。多くの車椅子11には座面の両側にベルトからなる環体65が装着されているため、この環体65をフック部41に係止すればよい。また座面の両側にベルトが装着されていない車椅子11の場合には、車椅子11にベルト等により環状に形成した環体を車椅子11に装着し、この環体をフック部41に係止すればよい。
この状態で、吊り下げ部15の支持ベルト42を一方側に引っ張ることで弛みを無くすのがよい。このとき支持ベルト42の引張方向が前方側であるため、支持ベルト42の弛みを容易に無くすことが可能である。支持ベルト42の弛みを無くすことで、支持フレーム部13を上昇させる際、安定して車椅子11を吊り下げることができる。
【0035】
吊り下げ部15により車椅子11を吊り下げる位置は環体65の配置に依存するが、好ましくは、図2に示すように、吊り下げ保持部24と車椅子11の重心Cwとを結ぶ仮想の直線Lより後方側で環体65により車椅子11を吊り上げるのがよい。
【0036】
そして、移動機構17の回動アーム62を駆動して支持フレーム部13を上昇させる。すると、車椅子11の全体が吊り下げ部15により吊り下げられる。この状態では車椅子11には重心Cw、吊り下げ部15及び吊り下げ保持部24の位置関係に応じて車椅子11の自重により回動方向の力が生じる。例えば吊り下げ保持部24と重心Cwとを結ぶ仮想の直線Lより後方側で吊り下げ部15で車椅子11を吊り下げることにより、図中矢印Aに示す方向に回動しようとする力が生じる。ところが大車輪当接部26に大車輪31が当接することで回動が阻止されるため、この回動方向の力により大車輪26が大車輪当接部26に押さえつけられることになる。
こうして車椅子11を大車輪当接部26及びフック部41により安定して支持することができ、他の部分が車椅子収容装置10と非接触状態で安定した状態で吊り下げられる。
【0037】
その後、連結ケース63の駆動手段を駆動して支持フレーム部13を車幅方向に沿って配置した後、移動機構17の回動アーム62を駆動することで、車椅子11を支持した支持フレーム部13をドア開口から車室内に収容することができる。
【0038】
使用者が降車する際には、逆の手順で車椅子11を支持した支持フレーム部13を車外に移動させ、車椅子11を路面に着地させた後、吊り下げ保持部24のカムバックル51をロック解除ボタン55により解放し、フック部41と車椅子11との係止を解除することで、車椅子11を使用者が再び使用することができる。
【0039】
以上のような車椅子収容装置10によれば、大車輪31の回転中心Crより上部後方に当接する大車輪当接部26を支持フレーム部13に備えると共に、支持フレーム部13の吊り下げ保持部24に垂下されて車椅子11を係止可能な吊り下げ部15を備え、吊り下げ部15により車椅子11を吊り下げた状態で、大車輪31が大車輪当接部26に当接するように構成されている。そのため吊り下げ部15と大車輪当接部26とにより車椅子11を安定して支持することができる。特に車椅子11を吊り上げることで車椅子11の自重により生じる回動方向の力によって、大車輪31を大車輪当接部26に押しつけることができる場合には、吊り下げ部15により車椅子11をより安定して吊り下げることができる。
【0040】
大車輪31を大車輪当接部26に当接させて吊り下げ部15を車椅子11に係止することで、車椅子11を支持フレーム部13に安定して支持できるので、車椅子11の収容作業を容易に行うことができる。一方、移動機構17で支持フレーム部13を下降させた後、吊り下げ部15を車椅子11から解除すれば車椅子11を容易に取り出すことができる。
また大車輪当接部26が大車輪31の回転中心Crより上部後方に当接しているため、車椅子11がたとえ支持フレーム部13から外れたとしても、大車輪31の上部後方に当接した大車輪当接部26がそのまま上昇するだけであり、車椅子11が前方へ移動するようなことがない。そのため使用者の労力を軽減できると共に車椅子11の収容作業を迅速かつ安全に行うことができる。
【0041】
さらに、大車輪当接部26が大車輪31の上部後方に当接できれば吊り下げ部15を車椅子11に係止して支持できるため、背もたれ部35周辺の形状や前方側や側方側の形状が異なる車椅子11であっても、共通に使用可能で汎用性が高い。ここでは大車輪当接部26の位置を車椅子11毎に調整する必要もない。
【0042】
本発明は、車椅子11の上部側に配置される支持フレーム部13に大車輪当接部26及び吊り下げ保持部24を設け、吊り下げ保持部24から吊り下げ部15を垂下させる構成であるため、車椅子収容装置10の構成を極めて簡素化でき、コンパクトな車椅子収容装置10を実現できる。簡素でコンパクトな構成のため、車両に搭載する場合であっても、車両や車椅子11を特別な構造にする必要がなく、安価に車椅子収容装置10を車両に装着できる。またコンパクトな構成のため、軽量化、高剛性化することも容易である。
【0043】
移動機構17により車椅子11を吊り上げた際、支持フレーム部13に安定して支持でき、大車輪当接部26及び吊り下げ保持部24が移動機構17の連結部21に対して固定状態で配置されているので、搬送時に車椅子11の所定の姿勢や向きを安定して保持することができる。そのため収容作業時に車椅子11が周囲に接触することを防止でき、車椅子11の破損や車両の破損が生じることを防止できる。
【0044】
この車椅子収容装置10では、大車輪当接部26が当接バー26aからなるので、一対の大車輪31を当接バー26aに当接させることができ、車椅子収容装置10の構成を簡素化でき、製造も容易である。
また大車輪当接部26が車椅子11の背もたれ部35より後方で大車輪31に当接するので、背もたれ部35の形状に関わらず共通に大車輪当接部26を使用することができる。
また支持フレーム部13に大車輪31の上部外側に配置されるガイド板29を有するので、収容作業を行う際、ガイド板29を利用して車椅子11を配置することができ、収容作業を容易に行うことができる。
【0045】
この車椅子収容装置10では、吊り下げ部15が柔軟性を有する支持ベルト42にフック部41を連結したものであるためフック部41を容易に車椅子11に連結することができ、しかも垂下させた際、フック先端部44の頂部がベルト固定部43の頂部より上方に配置されるので、車椅子11を吊り上げる際、フック部41が車椅子11から外れることを確実に防止することができる。
また吊り下げ保持部24が支持ベルト42を縮める側に移動可能に延長する側に移動不能に保持するカムバックル51を有しているので、収容作業の際、支持ベルト42を引っ張ることで吊り下げ保持部24とフック部41との間の支持ベルト42の弛みを容易に無くすことができ、カムバックル51を解放することで、吊り下げ保持部24とフック部41との間の支持ベルト42を弛めることができる。そのため車椅子11の収容作業及び取り出し作業を容易に行える。
【0046】
この車椅子収容装置10では、車椅子11に装着されてフック部41を係止可能な環体65を有するので、容易にフック部41を係止することができる。そのためより車椅子11の収容作業及び取り出し作業が簡単になる。
【0047】
上記実施形態は、本発明の範囲において適宜変更可能である。例えば上記では、移動機構17として、2本の回動アーム62により支持フレーム部13の連結部を回動可能及び昇降可能に支持する装置を用いた例について説明したが、特に限定されるものではない。
支持フレーム部の連結部に連結して、車椅子を支持した支持フレーム部を搬送する装置としては、支持フレーム部を吊り下げて移動させるものであってもよく、レール等により所定位置を搬送するものであってもよい。
【0048】
上記では、移動機構を車両の内部に装着し、車室内に車椅子を支持した支持フレーム部を搬入及び搬出できるように構成したものについて説明したが、支持フレーム部を搬送する位置は適宜選択可能であり、例えば車両後部の荷室やルーフ上などであっても本発明を適用することは可能である。
【0049】
上記実施形態では、吊り下げ部15としてフック部41を利用したが、フック部41以外であってもよく、車椅子11に容易に係止することができ、十分な強度で車椅子11を吊り下げ可能なものであれば適宜選択可能である。
上記では、大車輪当接部26が当接バー26aからなる例について説明したが、大車輪31が自重により生じる回動方向の力により押しつけることが可能なものであれば、適宜使用可能である。
上記の吊り下げ保持部24及び大車輪当接部26は、使用時に連結部21に対して相対変位不能な固定状態で配置できればよく、位置調整可能であってもよい。
上記では、支持フレーム部13に支持された車椅子11をそのまま車室内に収容した例について説明したが、車椅子11や車椅子11及び支持フレーム部13全体をカバー等で被覆して車室に収容することも可能である。
上記では、使用者が車椅子11から運転席に移動して車椅子11の収容作業を行う車両の例について説明したが、支持フレーム部13が極めてコンパクトであるため、運転席の外側に移乗用シートを有する車両であっても、何らの問題なく本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 車椅子収容装置
11 車椅子
13 支持フレーム部
15 吊り下げ部
17 移動機構
21 連結部
22 ガイド部
23 上部連続部
24 吊り下げ保持部
25 下部連続部
26 大車輪当接部
26a 当接バー
27 補強材
28 ガイドバー
29 ガイド板
31 大車輪
35 背もたれ部
37 ハンドリム
41 フック部
42 支持ベルト
43 ベルト固定部
44 フック先端部
45 巻き返し部
51 カムバックル
52 支持面
53 保持部本体
54 バネ部材
55 ロック解除ボタン
56 噛合部
61 本体ケース
62 回動アーム
63 連結ケース
65 環体
Cr 回転中心
Cw 重心
L 仮想の直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子の上方側に配置される支持フレーム部と、該支持フレーム部に保持され上記車椅子を係止して吊り下げる吊り下げ部と、上記支持フレーム部に連結し該支持フレーム部を移動させる移動機構とを備え、
上記支持フレーム部は、上記移動機構との連結部と、該連結部に対して固定状態で配置され車椅子の大車輪の回転中心より上部後方に当接する大車輪当接部と、該大車輪当接部より上方の位置に上記連結部に対して固定状態で配置され、上記吊り下げ部を垂下させて車椅子を保持する吊り下げ保持部と、を有し、
上記吊り下げ部により上記車椅子が吊り下げられた状態で上記大車輪が上記大車輪当接部に当接する、車椅子収容装置。
【請求項2】
前記大車輪当接部は、前記車椅子の幅方向に延設されて一対の前記大車輪が当接する当接バーを有する、請求項1に記載の車椅子収容装置。
【請求項3】
前記大車輪当接部は、前記車椅子の背もたれ部より後方で前記大車輪に当接する、請求項1又は2に記載の車椅子収容装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−111270(P2013−111270A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260424(P2011−260424)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)