説明

車椅子用ボンベ支持具

【課題】車椅子に装着した状態で折り畳み可能なボンベ支持具、及び、当該ボンベ支持具を装着した折り畳み式車椅子を提供する。
【解決手段】本発明は、車椅子に装着されるボンベ支持具100に関する。ボンベ支持具100は、折り畳み式車椅子10の後部フレーム11に固定される、長手状の固定部材101と、ボンベBを内側に保持するための開口を有し、固定部材101の接続部101aに回動式に取り付けられた支持枠102と、を備える。支持枠102の開口が固定部材101の長手方向を向いた状態で、固定部材101に設けられた支承部101bが支持枠102を下方から支承すると共に、支持枠102が接続部101aを軸として上方に回動して折り畳まれるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車椅子のフレームに取り付けられてボンベを支持するための車椅子用ボンベ支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素等の所定のガスを定期的又は常時的に吸入する必要があるユーザーは、車いすの利用の際、車椅子に座乗した状態で、ガスボンベを常に傍らに配置しておく必要がある。そして、従来、ガスボンベが固定又は脱着式に取り付けられた車椅子が利用されていた。
【0003】
例えば、特許文献1は、折り畳み式車椅子に工具等を使用せずに簡単に脱着できる酸素ボンベ立てを開示している。この折り畳み式車椅子用酸素ボンベ立ては、筒状体(7)と、支柱(6)と、帯状体(10)と、環状体(9)と、上部環状体(8)と、スライドフック(1)とからなる。この酸素ボンベ立てにおいて、筒状体(7)を折り畳み式車椅子(20)の後部下の走行補助バー(24)に差し込み、スライドフック(1)を折り畳み式車椅子(20)のハンドルの柄(22)に引っ掛けることで、酸素ボンベ立てが車椅子(20)の後背部に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−33057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術及び上記特許文献1の発明では、酸素ボンベ立てを装着したまま折り畳み式車椅子を折り畳もうとしても、ボンベ立てが車椅子のフレームや車輪に干渉して、車椅子をコンパクトに折り畳むことができない。つまり、ボンベ立てを装着することで、折り畳み式車椅子本来の折り畳み機能を損なってしまうという問題がある。また、例えば、折り畳み式車椅子の利用者が自動車で移動する際、一般的に車椅子を折り畳んで自動車に搭載するが、乗降の都度、車椅子を折り畳むために酸素ボンベ立てを脱着する必要があり、非常に手間がかかって不便であるという問題もある。したがって、ボンベ立てを車椅子に装着した状態であっても、折り畳み式車椅子を通常どおりコンパクトに折り畳むことができる、ボンベ支持具が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車椅子に装着した状態で折り畳み可能なボンベ支持具、及び、当該ボンベ支持具を装着した折り畳み式車椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のボンベ支持具は 車椅子に装着されるボンベ支持具であって、前記車椅子の後部フレームに固定される、長手状の固定部材と、
ボンベを内側に保持するための開口を有し、前記固定部材の接続部に回動式に取り付けられた支持枠と、を備え、前記支持枠の前記開口が前記固定部材の長手方向を向いた状態で、前記固定部材に設けられた支承部が前記支持枠を下方から支承すると共に、前記支持枠が前記接続部を軸として上方に回動して折り畳まれるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のボンベ支持具は、請求項1記載のボンベ支持具において、前記車椅子の前記後部フレームと前記固定部材とを連結するための連結部材と、前記固定部材の下端に設けられた、前記車椅子の下部フレームを把持するための把持部材と、をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載のボンベ支持具は、請求項2記載のボンベ支持具において、前記固定部材には、前記連結部材を固定するための複数の固定孔が長手方向に所定間隔で設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載のボンベ支持具は、請求項2又は3記載のボンベ支持具において、前記把持部材は、前記固定部材に設けられた長孔に沿って長手方向にスライド可能に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載のボンベ支持具は、請求項1から4のいずれか一項に記載のボンベ支持具において、前記車椅子は、前記後部フレームの上部のハンドル部が後方に背折れする背折れ部を備え、当該ボンベ支持具の折り畳み形態における全長が、前記車椅子の下部フレームから背折れ部までの距離以下になるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の折り畳み式車椅子は、請求項1から5のいずれか一項に記載のボンベ支持具が後部フレームに装着されていることを特徴とする折り畳み式車椅子。
【0013】
請求項7に記載の折り畳み式車椅子は、請求項6記載の折り畳み式車椅子において、前記ボンベ支持具が左右両側の後部フレームに装着されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、ボンベ支持具が折り畳み式車椅子と共に折り畳み可能に構成され、ボンベ支持具を取り外すことなく、車椅子を容易に折り畳むことができる。さらに、ボンベを支持するためにボンベ支持具を変形させる際、折り畳み式車椅子を走行形態に展開した上で、支持枠を下方に回動させると、支持枠の開口が固定部材の長手方向(車椅子の垂直方向)を向くように、支持枠が固定部材の支承部に支承される。つまり、折り畳み形態から支持枠を下方に回動させるだけで、ボンベを支持可能な状態にボンベ支持具を簡単且つ迅速に変形させることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、連結部材及び把持部材により、2箇所のフレームで固定部材を車椅子にしっかりと固定することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の発明の効果に加え、連結部材を固定するための複数の固定孔が長手方向に所定間隔で設けられていることによって、最適な位置の固定孔を選択して、車椅子のフレームにボンベ支持具を取り付けることが可能である。すなわち、サイズ(規格)の異なる車椅子に対しても対応可能である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3の発明の効果に加え、把持部材が固定部材に設けられた長孔に沿って長手方向にスライド可能であることによって、把持部材に対して固定部材を上下に相対移動させて、ボンベ支持部の取り付け位置を微調整することができる。すなわち、サイズ(規格)の異なる車椅子に対しても対応可能である。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から4のいずれかの発明の効果に加え、背折れ機能を有する折り畳み式車椅子に当該ボンベ支持具を取り付けて、ボンベ支持具を装着した状態で車椅子を折り畳んでも、ボンベ支持具が突出することなく、ボンベ支持具を装着していないときと同様にコンパクトに折り畳み変形可能である。
【0019】
請求項6に記載の発明に係る折り畳み式車椅子は、請求項1から5のいずれかのボンベ支持具を装着してなることによって、上記請求項1から5のいずれかの効果を車椅子として発揮することができる。つまり、ボンベ支持具を装着しているにも拘わらず、通常の折り畳み式車椅子と同様の折り畳み動作が可能である。
【0020】
請求項7に記載の発明に係る折り畳み式車椅子は、請求項6の発明に加えて、左右両側部または一方の側部にボンベ支持具を装着してなる。これにより、折り畳み式車椅子のコンパクト性(折り畳み性)を犠牲にすることなく、車椅子の座乗者がボンベを長時間使用することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態のボンベ支持具の斜視図。
【図2】図1のボンベ支持具の分解斜視図。
【図3】図1のボンベ支持具の部分拡大図であって、(a)はボンベ支持具の第1形態、(b)はボンベ支持具の第2形態を示す。
【図4】図1のボンベ支持具を装着した折り畳み式車椅子の背面図。
【図5】図4の折り畳み式車椅子の側面図。
【図6】図1のボンベ支持具を折り畳み式車椅子に装着する各工程を示した図であって、(a)は、把持部材を車椅子の下部フレームに取り付けるステップ、(b)は、後部フレームに対して固定部材の上下位置を調整するステップを示す。
【図7】図1のボンベ支持具を装着した折り畳み式車椅子の折り畳み態様を示す模式図であって、(a)はボンベ支持具の第1(展開)形態、(b)はボンベ支持具の第2(折り畳み)形態、(c)は折り畳み式車椅子全体を折り畳んだ形態を示す。
【図8】図5(c)の折り畳み形態から、さらに背折れ部を背折れさせた、折り畳み式車椅子の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0023】
図1に示すとおり、一実施形態のボンベ支持具100は、長手状の固定部材101と、複数の支持枠102と、当該複数の支持枠102を連結する長板状の連結フレーム103と、固定部材101と車椅子フレームとを連結する連結部材104と、固定部材101の下端に設けられた把持部材105と、連結フレーム103(の孔103b)に取着されたボンベBを押圧固定するための螺子式のボンベ固定部材106と、を備える。
【0024】
図2は、図1のボンベ支持具100の分解斜視図である。図2に示すとおり、固定部材101は、直線状に延びる長手状の平板である。当該固定部材101には、複数の支持枠102(本実施形態では3つであるが、本発明はこれに限定されない)を回動可能に軸支するための接続部101aが、その上端側、略中央、及び、下端側において、それぞれ突出形成されている。当該接続部101aには孔が形成されており、当該接続部101aの孔と支持枠102の接続孔102aとをボルト(軸)が貫通してナットで締結する。後述するように、当該ボルトを軸芯として、各支持枠102が固定部材101に(回動可能に)軸支される。また、固定部材101の接続部101aの突出方向先端には、支持枠102と当接可能な支承部101bが前方(接続部101aの突出方向)に突出形成されている。そして、固定部材101の上端から下端に亘って略中央に、その長手方向に所定間隔で複数の固定孔101cが穿設されていると共に、固定部材101の下端には、固定部材101の長手方向に延びる長孔101dが穿設されている。当該長孔101dには、固定部材101に対する上下位置を調整可能に把持部材105がボルト及びナットで固定される。当該把持部材105は、パイプ(フレーム)を挟んで把持するように構成されており、把持部材105を貫通するボルトを締め付けつけると、当該把持部材105が締まって、車椅子のパイプを強く把持する。なお、長孔101dの長さは、全ての固定位置を網羅できるように、固定孔101cの間隔とほぼ等しく設定されるのが好ましい。
【0025】
支持枠102は円環状の枠体であり、本実施形態では、3つの支持枠102−1、102−2、102−3が設けられている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、支持枠の数を増減することは可能である。各支持枠102は、固定部材101の接続部101aに接続するように環状部の後方(固定部材101側)に延出した肉部に形成された接続孔102aと、一対の連結フレーム103を(その連結孔103aを介して)回動式に連結するための左右に突出した一対の接続凸部102bと、を備える。そして、下方に位置する支持枠102−3には、ボンベを下方から支えるための支持部102cが、環体を架け渡るように設けられている。
【0026】
連結フレーム103は一対の長手状の平板であり、複数(本実施形態では3)の支持枠102の接続凸部102bを軸支するための複数(本実施形態では3)の連結孔103a及びボンベ固定部材106を螺着可能な孔103bを備える。図1及び図2に示すとおり、一対の連結フレーム103の各連結孔103aには、支持枠102の各接続凸部102bが挿通され、各々が互いに回動可能に連結される。そして、後述するように、ボンベ支持具100が折り畳み変形するとき、各支持枠102及び連結フレーム103が連動して、各支持枠102が固定部材101に対して上方に回動すると共に連結フレーム103に対して回動して支持枠102と連結フレーム103とが一直線に整列する。
【0027】
連結部材104は、一端に固定部材101の固定孔101cにボルトで固定するための1つの第1固定孔104aと、2又に分岐した他端に車椅子10の後部フレーム11に固定するための2つの第2固定孔104bとを備える。当該連結部材104の第1固定孔101aと固定部材101の固定孔101c(複数のうちの1つ)を介して、ボルト及びナットで、連結部材104が固定部材101に固定される。そして、後述するように、一方(上方)の第2固定孔104bが車椅子10の後部フレーム11の孔11aに固定される。さらに、他方(下方)の第2固定孔104bには、車椅子10の後部フレーム11を把持可能な第2の把持部材104cがボルト及びナットで取着されている。当該第2の把持部材104cは、把持部材105と同様の構造を有し、上記ボルト及びナットを締結すると、パイプを強固に把持可能である。
【0028】
なお、本実施形態では、各部材は主に金属から構成されているが、硬質樹脂等の他の素材を適宜選択可能である。また、各部材の形状は、実施形態に限定されない。例えば、連結フレームを平板でなく、丸棒とすることもできる。
【0029】
ボンベ支持具100の支持枠102は、図3に示すとおり、固定部材101に対して回動することにより、ボンベ支持可能な第1形態(図3(a))から折り畳み時の第2形態(図3(b))へ変形する。
【0030】
図3(a)の第1形態では、支持枠102が固定部材101の支承部101bと当接することにより、支持枠102の開口が長手方向を向き、且つ、支持枠102と固定部材101とが略直角になるように、支持枠102が固定部材101の支承部101bに支承されている。つまり、下方に力(又は重量)が加わっても、支承部101bが支持枠102を支持するため、これ以上、支持枠102が下方に回動することはない。他方、支持枠102は上方に自由に回動可能である。
【0031】
第1形態から、支持枠102を固定部材101に対して折り畳むには、支持枠102を、接続部101a(接続孔102a)を軸として、上方に回動させる。そうすると、支持枠102が接続凸部102bを軸として連結フレーム103に対して相対的に回動し、連結フレーム103が固定部材101の長手方向と平行にある状態を維持しながら固定部材101に接近する(図3(b)の仮想線)。このとき、支持枠102の1つを回動させると、連結フレーム103を介して、他の支持枠102も連動して回動する。そして、固定部材101の長手軸に対して、支持枠102が平行になる(換言すると支持枠102の開口が長手軸の直交方向を向く)まで回動すると、固定部材101、支持枠102、及び、連結フレーム103がほぼ同一平面を形成するようにコンパクトに整列する。なお、回動軸(ボルト及びナット)を締め付けることにより、重力によって各部が自由に回動することを防止することができる。
【0032】
図4及び5は、2つの本実施形態のボンベ支持具100を車椅子10の後部フレーム11にそれぞれ取り付け、ボンベBを搭載した状態を示す。折り畳み式車椅子10は、クロスバー部材Xを有し、当該クロスバー部材Xのクロス角を変更するように折り畳まれる、一般的な構造の折り畳み式車椅子である。車椅子10は、車椅子の背もたれSが張架された後部フレーム11と、車椅子の下部で略水平に延びる下部フレーム12とを有する。後部フレーム11の車椅子の側面側に背もたれSを固定するための複数の孔11aが穿設されている。なお、車椅子の他の機構(フレーム等)については、折り畳み式車椅子の構造は当業者にとって一般的であるため、本明細書で詳細に説明することを省略する。なお、本実施形態の車椅子10は、背折れ折り畳み式車椅子であるが、本発明のボンベ支持具を、背折れ折り畳み式車椅子以外の車椅子(例えば、背固定折り畳み式車椅子、固定車(折り畳み出来ない車椅子)等)に取り付け、使用することができることは云うまでもない。
【0033】
図4及び図5に示すとおり、ボンベ支持具100の固定部材101は、連結部材104を介して、車椅子10の後部フレーム11に固定されている。具体的には、後部フレーム11の孔11aの1つと、連結部材104の上方の連結孔104bとを介して、固定部材101が後部フレーム11にボルトで連結されている。また、連結部材104の第2の把持部材104cがパイプ状の後部フレーム11を把持することによって、連結部材104(固定部材101)が後部フレーム11により安定的に装着されている。そして、固定部材100の下端に位置する把持部材105が下部フレーム12を把持している。すなわち、ボンベ支持具100が、車椅子10の後部フレーム11及び下部フレーム10によって2方向から3点でしっかりと支持されている。さらに、図4及び図5では、ボンベBが支持枠102内に搭載されており、ボンベ固定部材106の押圧端がボンベBを反対側に押圧して、ボンベBを固定している。
【0034】
なお、本実施形態では、2つのボンベ支持具100が車椅子10に取り付けられているが、本発明はこれに限定されず、必要に応じて、その数を増減可能である。さらに、ボンベ支持具100が後部フレーム11に連結部材104を介して固定されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、車椅子の構造によっては、後部フレームと同等な他のフレームに固定することも可能である。また、連結部材104は上記構造に限定されず、固定部材と車椅子フレームとを連結するという機能を発揮すれば、その態様を自由に選択可能である。例えば、連結部材を2又分岐構造としなくてもよく、把持部材のみの構成とし、あるいは、固定孔のみの構成としてもよい。
【0035】
次に、図6を参照して、ボンベ支持具100を車椅子10に取り付ける手順を説明する。まず、図6(a)に示すとおり、ボンベ支持具100の把持部材105が車椅子10の下部フレーム12を把持するように、把持部材105の把持を緩めた状態で、把持部材105を下部フレーム12の所定位置に仮配置する。そして、図6(b)に示すとおり、連結部材104の固定孔104bを、選択した後部フレーム11の孔11aに合わせるように(図示せず)、把持部材105を長孔101d内で上下に(固定部材101に対して)相対スライドさせて、固定部材101の上下位置を調整する。そして、調整した位置で、車椅子10の後部フレーム11に対して、連結部材104の固定孔104b及び第2の把持部材104cを、ボルトで締結して固定し、且つ、把持部材105を閉(把持)方向に締め付けて、長孔101d内で固定すると共に下部フレーム12を把持した状態で固定する。このようにしてボンベ支持具100が車椅子10に固定されるが、当該手順は一例にすぎず、使用者は取り付け方法を適宜選択可能である。
【0036】
なお、本実施形態では、後部フレーム11の孔11aは、背もたれを張架するための孔を兼ねているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、ボンベ支持具100を固定するために、他の用途の孔を使用してもよいが、後部フレーム11に専用の孔を穿設することも可能である。
【0037】
図7(a)〜(c)は、本実施形態のボンベ支持具100を装着した状態の折り畳み式車椅子10を折り畳む形態をそれぞれ示す。
【0038】
図7(a)の実線は、ボンベを保持可能な第1形態を示す。図7(a)の破線で示すように、車椅子10を折り畳む際、固定部材101の接続部101aを軸として、各支持枠102を上方(矢印方向)に回動させる。このとき、1つの支持枠102を回動させると、連結フレーム103を介して、他の支持枠102も連動して回動する。そして、支持枠102を垂直になる(支持枠102の開口が水平方向を向く)まで折り畳むと、ボンベ支持具100(車椅子10)が図7(b)の第2形態になる。この第2形態では、後部フレーム11、固定部材101、支持枠102、連結フレーム103が略平行に配置されており、ボンベ支持具100の各部材がほぼ一平面に収まるようにコンパクトな形態をとる。次に、図7(b)の形態から、折り畳み式車椅子10のクロスバー部材の角度を変更するように折り畳み式車椅子10を折り畳むと、図7(c)の折り畳み形態に変形する。図7(c)の折り畳み形態では、左右の変形したボンベ支持具100同士が干渉することがないため、折り畳み式車椅子10は通常の(すなわち、ボンベ支持具100を装着しないときと同様の)折り畳み形態をとる。
【0039】
本実施形態の折り畳み式車椅子10は、上記折り畳み形態(図7(c))から、後部フレーム11の上部(ハンドル部14)を背折れ部13で後方に折ることができる背折れ機能を有する。図8は背折れ形態の車椅子10を示すが、ボンベ支持具100は左右後部フレーム11の内方に配置されているため、背折れ形態において、ハンドル部14と干渉することはない。さらに、ボンベ支持具100の折り畳み時の全長Lが、車椅子10の下部フレーム12から背折れ部13までの距離よりも同等又はそれよりも短く構成されているため、車椅子10の折り畳み形態において、ボンベ支持具100が突出することはない。
【0040】
以下、本発明の一実施形態のボンベ支持具100及び当該ボンベ支持具100を装着した折り畳み式車椅子10の作用効果について説明する。
【0041】
本実施形態では、ボンベ支持具100が折り畳み式車椅子10と共に折り畳み可能に構成されていることにより、ボンベ支持具100を取り外すことなく、車椅子10を簡単且つ迅速に折り畳むことができる。さらに、折り畳み式車椅子10を展開した上で、支持枠102を回動させると、支持枠102の開口が固定部材101の長手方向(車椅子10の垂直方向)を向くように、支持枠102が固定部材101の支承部101bに支承される。つまり、支持枠101を折り畳み状態から回動させるだけで、ボンベBを支持可能な状態にボンベ支持具100を簡単且つ迅速に変形させることができる。また、連結フレーム103と各支持枠102とが回動式に連結されていることによって、1つの支持枠102を回動させるだけで、他の支持枠102も連結フレーム103を介して連動して回動するため、簡単な操作でボンベ支持具100を変形させることができる。
【0042】
すなわち、本発明のボンベ支持具100を装着することにより、(車椅子の利用者が自動車等で移動するために)車椅子を自動車に積む際に必要な、従来のボンベ支持具の脱着作業をも省略し、車椅子10を簡単且つ迅速にコンパクトな折り畳み形態に変形することができる。
【0043】
また、本実施形態のボンベ支持具100では、連結部材104及び把持部材105により、ボンベ支持具100を2方向から車椅子10にしっかりと固定することができる。すなわち、重量の大きいボンベを安定的に保持することが可能である。さらに、固定部材101には、複数の固定孔101cが形成されていると共に、把持部材105がスライド可能な長孔101dが形成されていることにより、ボンベ支持具100は、様々な規格(サイズ)の車椅子に装着可能である。つまり、車椅子の取り付け位置(実施形態では、後部フレームの孔)に近い固定孔101cを1つ選択した上で、把持部材105を長孔101d内で相対スライドさせて、固定部材101の上下位置を微調整することができるため、車椅子の取り付け位置に固定孔101cを確実に合わせて、ボンベ支持具を車椅子に強固に連結することが可能である。
【0044】
さらに、ボンベ支持具100の連結部材104に第2の把持部材104cを設けて、2箇所で後部フレーム11に固定可能であることにより、ボンベ支持具100を車椅子10により一層強固に固定することができる。
【0045】
本実施形態の折り畳み式車椅子10は、ボンベ支持具100を装着しつつも、通常の折り畳み式車椅子と同様に、コンパクトに折り畳むことが可能である。すなわち、本発明の折り畳み式車椅子10では、ボンベ支持具100を車椅子10に装着したままで、軽自動車等の小さい車両に車椅子を搭載することが可能であるため、車椅子の利用者にとってその利便性を大きく改善する。さらに、ボンベ支持具を車椅子に一体に装着した製品として、本実施形態の折り畳み式車椅子10を出荷する場合、車椅子10をコンパクトに折り畳んだ状態で出荷及び輸送することができるため、ユーザーだけでなくメーカーもまたコスト削減等の利益を享受する。
【0046】
さらに、本実施形態の折り畳み式車椅子10は、左右両側部の後部フレーム11にボンベ支持具100を装着してなる。上述したとおり、左右両方のボンベ支持具100が互いに干渉することなく、折り畳み式車椅子10を折り畳み形態に変形することができるため、折り畳み式車椅子のコンパクト性(折り畳み性)を犠牲にすることなく、車椅子に2本のボンベを搭載して、座乗者がボンベを長時間使用することを可能にする。ただし、ボンベ支持具100を車椅子10の左右いずれか一方に装着しても本発明の効果を奏することは云うまでもなく、使用者は、取り付け位置を任意に設定することができる。
【0047】
なお、本発明は上述の一実施形態に限定されない。例えば、本発明のボンベ支持具は、必要最小限の構成でも本発明の主たる目的を達成することができ、連結フレーム、連結部材、把持部材、ボンベ固定部材を省略した構成としてもよい。また、支持枠は、円環状でなくともよく、楕円形状や多角形状とすることもできる。
【0048】
したがって、本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0049】
10 折り畳み式車椅子
11 後部フレーム
12 下部フレーム
13 背折れ部
14 ハンドル部
100 ボンベ支持具
101 固定部材
101a 接続部
101b 支承部
101c 固定孔
101d 長孔
102 支持枠
103 連結フレーム
104 連結部材
105 把持部材
B ボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子に装着されるボンベ支持具であって、
前記車椅子の後部フレームに固定される、長手状の固定部材と、
ボンベを内側に保持するための開口を有し、前記固定部材の接続部に回動式に取り付けられた支持枠と、を備え、
前記支持枠の前記開口が前記固定部材の長手方向を向いた状態で、前記固定部材に設けられた支承部が前記支持枠を下方から支承すると共に、前記支持枠が前記接続部を軸として上方に回動して折り畳まれるように構成されていることを特徴とするボンベ支持具。
【請求項2】
前記車椅子の後部フレームと前記固定部材とを連結するための連結部材、及び、前記固定部材の下端に設けられた、前記車椅子の下部フレームを把持するための把持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のボンベ支持具。
【請求項3】
前記固定部材には、前記連結部材を固定するための複数の固定孔が長手方向に所定間隔で設けられていることを特徴とする請求項2記載のボンベ支持具。
【請求項4】
前記把持部材は、前記固定部材に設けられた長孔に沿って長手方向にスライド可能に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のボンベ支持具。
【請求項5】
前記車椅子は、前記後部フレームの上部のハンドル部が後方に背折れする背折れ部を備え、
当該ボンベ支持具の折り畳み形態における全長が、前記車椅子の下部フレームから背折れ部までの距離以下になるように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のボンベ支持具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のボンベ支持具が後部フレームに装着されていることを特徴とする折り畳み式車椅子。
【請求項7】
前記ボンベ支持具が左右両方又は左右いずれか片方の後部フレームに装着されてなることを特徴とする請求項6記載の折り畳み式車椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−78418(P2013−78418A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219117(P2011−219117)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000146113)株式会社松永製作所 (59)