説明

車線案内制御装置、方法およびプログラム

【課題】車両が走行する位置が一意に特定できない場合であっても推奨車線を案内させる技術の提供。
【解決手段】車両が走行する位置として複数の候補が特定された場合に、前記複数の候補のそれぞれを前記車両が走行する場合において前記車両を推奨車線へと誘導する案内内容であって、前記複数の候補について共通する案内内容である共通案内内容を特定する共通案内内容特定手段と、前記共通案内内容を案内部に案内させる車線案内制御手段と、
を備える車線案内制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行すべき推奨車線の位置を案内させる車線案内制御装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
目的地に到達するために車両を走行させるべき推奨車線を案内する技術が提案されている(特許文献1、参照)。特許文献1において、走行車線が特定できなかった場合に車両が走行する道路の端の車線を基準として推奨車線の位置を案内している。一方、走行車線が特定できた場合には、走行車線を基準として推奨車線の位置を示す案内を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−178383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両を走行させている車線は運転者が最も認識しやすい車線であり、車両を走行させている車線を基準として推奨車線の位置を案内するのが望ましい。しかしながら、特許文献1において走行車線が特定できなかった場合には、道路の端の車線を基準として推奨車線の位置を案内するため、運転者が最も認識しやすい車線を基準として推奨車線の位置を案内することができないという問題があった。また、特許文献1では車両が走行しているマップマッチング等により走行道路が一意に特定されていることが前提となっているが、走行道路が一意に特定できない場合も生じ得る。このような場合、そもそも目的地に到達するための走行予定経路が一意に定まらなくなるため、推奨車線が特定できなくなる。従って、走行道路が一意に特定できない場合、推奨車線の案内を行うことが不可能となるという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、車両が走行する位置が一意に特定できない場合であっても推奨車線を案内させる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明において、共通案内内容特定手段は、車両が走行する位置として複数の候補が特定された場合に、複数の候補のそれぞれを車両が走行する場合において車両を推奨車線へと誘導する案内内容であって、複数の候補について共通する案内内容である共通案内内容を特定する。そして、車線案内制御手段は、共通案内内容を案内部に案内させる。これにより、車両が走行する位置として複数の候補が特定された場合、すなわち車両が走行する位置が一意に特定できない場合であっても共通案内内容により推奨車線へと車両を誘導することができる。ここで、共通案内内容は、複数の候補のいずれを車両が走行する場合であっても共通して推奨車線へと車両を誘導できる案内内容であるため、複数の候補のいずれを車両が現実に走行する場合であっても問題のない案内を行わせることができる。すなわち、ある候補を車両が走行するとした場合に車両を推奨車線へと誘導させることができる案内内容と、別の候補を車両が走行するとした場合に車両を推奨車線へと誘導させることができる案内内容とが共通する場合に、当該共通する案内内容を案内させるため、車両がいずれの候補を走行する場合であっても推奨車線へと車両を誘導できる。
【0006】
車両が走行する位置として複数の候補が特定された場合とは、車両が走行する位置を一意に特定しようとしたが結果として複数の候補から一意に絞り込むことができなかった場合であってもよい。例えば、複数の候補ごとに車両が走行する位置であることの信頼度が最も高い位置を車両が走行する位置として特定する場合において、最も信頼度が高い候補と次に信頼度が高い候補の信頼度の差が所定閾値以内である場合に、車両が走行する位置として複数の候補が特定されたとしてもよい。また、車両が走行する位置の候補を予め複数挙げておき、当該候補を消去法により絞り込んで残った唯一の候補を車両が走行する位置として特定する場合において、絞り込まれずに残った候補が複数存在する場合に車両が走行する位置として複数の候補が特定されたとしてもよい。
【0007】
車両を推奨車線へと誘導する案内内容とは、運転者が推奨車線にて車両を走行させるための指針となる情報であり、具体的には運転者に推奨車線を認識させる情報とするのが好ましい。例えば、案内内容によって推奨車線の特徴が示されれば、当該特徴を頼りに運転者は推奨車線を認識できる。ここで推奨車線の特徴とは、推奨車線の位置的特徴であってもよいし、方向的特徴であってもよいし、形状的特徴であってもよいし、色彩的特徴であってもよい。共通案内内容特定手段は、複数の走行位置のそれぞれを走行する場合における推奨車線の特徴が共通する場合には、当該共通する特徴を案内させる案内内容を共通案内内容として特定すればよい。特に、位置的特徴や方向的特徴は、ある位置や方向を基準として表現されるため、共通案内内容特定手段は、基準となる位置や方向が共通し、かつ、これらの位置や方向を基準とした推奨車線の位置的特徴や方向的特徴が共通する場合に、当該位置的特徴や方向的特徴を示す案内内容を共通案内内容として特定することが好ましい。
【0008】
推奨車線は車両が走行すべき車線であればよく、推奨車線は種々の観点に基づいて推奨され得る。例えば、目的地に到達するための車両の走行予定経路が設定されている場合、推奨車線は、当該走行予定経路上において次に走行すべき道路に進入できる車線であってもよい。また、推奨車線は、渋滞や障害物の有無等の交通状況に基づいて車両がスムーズに走行できる車線であってもよい。
案内制御手段は、音声出力装置である案内部によって共通案内内容を案内させてもよいし、画像出力装置である案内部によって共通案内内容を案内させてもよいし、これらの双方によって共通案内内容を案内させてもよい。
【0009】
推奨車線へと車両を誘導するための案内内容の好ましい例として、車両が走行する車線の位置を基準として推奨車線の位置を相対的に示す案内内容が挙げられる。運転者は車両を走行させている車線を容易に認識でき、当該車線の位置を基準として推奨車線の位置を容易に認識できるからである。しかしながら、車両が走行する車線が一意に特定できない場合も生じ得る。このような場合を考慮して、共通案内内容特定手段は、複数の候補として複数の候補車線が特定された場合に、複数の候補車線のそれぞれの位置を基準として推奨車線の位置を相対的に示す案内内容であって、複数の候補車線について共通する案内内容を共通案内内容として特定してもよい。かかる構成によれば、車両が走行する車線が一意に特定できない場合であっても、運転者が車両を走行させている車線の位置を基準として容易に推奨車線の位置を認識できる。
【0010】
さらに、推奨車線へと車両を誘導するための案内内容の好ましい例として、車両が走行する道路の所定位置を基準として推奨車線の位置を示す案内内容が挙げられる。運転者は車両を走行させている道路において基準となる所定位置を認識し、当該所定位置を基準として推奨車線の位置を認識できるからである。例えば位置的特徴や方向的特徴や形状的特徴や色彩的特徴等を有する位置を基準とすることにより、運転者は所定位置を基準として推奨車線の位置を容易に認識できる。しかしながら、車両が走行する道路が一意に特定できない場合も生じ得る。このような場合、基準とする所定位置が一意に定まらず、案内内容が特定できなくなる。このような場合を考慮して、共通案内内容特定手段は、複数の候補として複数の候補道路が特定された場合に、複数の候補道路のそれぞれにおける所定位置を基準として推奨車線の位置を示す案内内容であって、複数の候補道路について共通する案内内容を共通案内内容として特定してもよい。かかる構成によれば、車両が走行する道路が一意に特定できない場合であっても、運転者が車両を走行させている道路における所定位置を基準として推奨車線の位置を認識できる。
【0011】
さらに、車両が走行する車線も道路も一意に特定できない場合も生じ得る。すなわち、複数の候補として複数の候補道路が特定され、かつ、複数の候補道路のそれぞれを車両が走行する場合の複数の候補として複数の候補車線が特定された場合も生じ得る。複数の候補道路が特定された場合、複数の候補車線は複数の候補道路のそれぞれに分布し得る。このような場合、まず共通案内内容特定手段は、複数の候補車線のそれぞれの位置を基準として推奨車線の位置を相対的に示す案内内容であって、複数の候補車線について共通する案内内容が特定できた場合に、当該案内内容を共通案内内容として特定するのが望ましい。すなわち、複数の候補車線のそれぞれの位置を基準として推奨車線の位置を相対的に示す共通案内内容が特定できた場合には、当該共通案内内容を優先して案内させる。車両を走行させている車線は運転者が通常最も認識しやすい車線であるからである。一方、複数の候補車線のそれぞれ位置を基準として推奨車線の位置を相対的に示す共通案内内容が特定できなかった場合には、複数の候補道路のそれぞれにおける所定位置を基準として推奨車線の位置を示す案内内容であって、複数の候補道路について共通する案内内容を共通案内内容として特定する。このように2種類の案内内容について共通案内内容の特定を順次行うため、いずれかの種類の案内内容について共通案内内容の特定できる可能性を高めることができる。
【0012】
さらに、本発明のように、複数の候補について共通する共通案内内容を案内させる手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車線案内装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】道路を示す図である。
【図3】(3A)は前処理、(3B)は車線案内処理を示すフローチャートである。
【図4】(4A)は第2実施形態の車線案内処理を示すフローチャート、(4B)は道路を示す図である。
【図5】(5A)は第3実施形態の車線案内処理を示すフローチャート、(5B)は道路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)車線案内処理:
(3)第2実施形態:
(4)第3実施形態:
(5)他の実施形態:
【0015】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる車線案内制御装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、車両Vに備えられている。ナビゲーション装置10は、制御部20と記録媒体30とを備えている。制御部20は、CPUとRAMとROM等を備え、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行する。記録媒体30は、地図情報30aを記録する。地図情報30aは、道路の端点(走行方向の端点)に対応して設定されたノードを示すノードデータと、ノード間の道路に関する情報を示すリンクデータと、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データと、道路やその周辺に存在する地物を示すデータ等を含んでいる。リンクデータには、道路が含む車線の車線数と、車線をリンク終端に対応する位置まで走行した場合に進入できる道路と、隣接する車線間を区切る境界線や車線と路肩とを区切る境界線の線種(直線,破線,破線の間隔,色等)とを示す車線情報が含まれる。なお、本実施形態において、道路とは、車両の走行方向がほぼ同一(例えば、所定角度以内)となる車線によって構成され、走行方向がほぼ反対となる車線は互いに別の道路に属することとする。また、道路の端とは車両の走行方向前方を正面に見た場合の左右の端を意味する。
【0016】
また、本実施形態における車両Vは、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43と車載カメラ44とユーザI/F部45とを備えている。GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両Vの現在位置を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両Vの現在位置を取得する。車速センサ42は、車両Vが備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両Vの車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両Vに作用する角速度に対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両Vの走行方向を取得する。車速センサ42とジャイロセンサ43とは、GPS受信部41の出力信号から特定される車両Vの現在位置を補正するなどのために利用される。
【0017】
車載カメラ44は車両Vの周辺所定範囲を視界に含み、車両Vの周辺画像を示す周辺画像データを撮影する。車載カメラ44が撮影した周辺画像データは、図示しないインタフェースを介して制御部20に出力される。制御部20は、周辺画像データが示す周辺画像に基づいて車両Vが走行する走行車線を特定する。ユーザI/F部45は、制御部20から出力された制御信号に基づいて各種案内を出力する出力装置を含む。本実施形態のユーザI/F部45の出力装置は、音声により案内を出力するスピーカと、画像により案内を出力するディスプレイとを含む。
【0018】
車線案内プログラム21は、走行道路特定部21aと走行車線特定部21bと推奨車線特定部21cと共通案内内容特定部21dと案内制御部21eとを含む。
走行道路特定部21aは、車両Vが走行する道路を走行道路として特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、走行道路特定部21aの機能により制御部20は、車速センサ42とジャイロセンサ43の出力信号に基づいて特定された車両Vの位置の軌跡である自立航法軌跡の形状と、地図情報30aの形状補間点データによって特定される道路形状との類似度(マッチ度)を車両V周辺の所定範囲内に存在する道路ごとに算出する。そして、走行道路特定部21aの機能により制御部20は、マッチ度が最も大きい道路を最有力候補道路とし、次にマッチ度が大きい道路を次有力候補道路として特定する。さらに、走行道路特定部21aの機能により制御部20は、最有力候補道路のマッチ度が所定閾値以上であり、かつ、当該マッチ度が突出する場合に、当該最有力候補道路を車両Vが走行する走行道路であると特定する。本実施形態において制御部20は、最有力候補道路のマッチ度と、次有力候補道路のマッチ度との差が所定閾値以上である場合に、最有力候補道路のマッチ度が突出すると判定する。
【0019】
走行車線特定部21bは、走行道路に含まれる車線のなかから車両Vが走行する走行車線を特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、走行車線特定部21bの機能により制御部20は、車載カメラ44によって撮影された周辺画像に基づいて車両Vが走行する走行車線を特定する。具体的には、公知のハフ変換等の直線検出手法により、周辺画像から車線の境界線の像を抽出し、当該境界線の像に基づいて車両Vの左右において最も近い位置に存在する境界線の線種が実線であるか破線であるかを特定する。すなわち、走行道路において車両Vを左右から挟む境界線の線種を特定する。さらに、走行車線特定部21bの機能により制御部20は、周辺画像に基づいて、現在の走行道路を走行する期間において車両Vが境界線を跨いだ状態を特定し、当該跨いだ状態の履歴に基づいて車線変更履歴を特定する。すなわち、制御部20は、周辺画像に含まれる境界線の像が車両Vの左側から右側へと移動した場合には車両Vが左側へと車線変更し、反対に境界線の像が車両Vの右側から左側へと移動した場合には車両Vが右側へと車線変更したと特定する。さらに、走行車線特定部21bの機能により制御部20は、地図情報30aのリンクデータが示す走行車線の車線数と車線の境界線の線種とを特定する。
【0020】
図2は、走行道路Mの例を模式的に示す図である。同図に例示した走行道路Mでは、全5車線を区画する境界線のうち左右両端の境界線が実線であり、これらの内側の境界線はすべて破線(互いに同形状)となっている。この場合、周辺画像に基づいて車両Vを左右から挟む境界線の線種の組み合わせが(左:破線,右:実線)であると特定された場合、制御部20は右端の車線が車両Vの走行車線であると一意に特定できる。反対に、周辺画像に基づいて車両Vを左右から挟む境界線の線種の組み合わせが(左:実線,右:破線)であると特定された場合、制御部20は左端の車線が車両Vの走行車線であると一意に特定できる。また、制御部20は、一度、走行車線を一意に特定すれば、それ以降の車線変更履歴に基づいて現在の走行車線を一意に特定できる。
【0021】
また、周辺画像に基づいて車両Vを左右から挟む境界線の線種の組み合わせが(左:破線,右:破線)であると特定され、かつ、現在の走行道路Mを走行する期間において一度も左右両端のいずれかの車線を走行していない場合には、走行車線特定部21bの機能により制御部20は、以下のようにして走行車線とする候補車線の絞り込みを行う。すなわち、制御部20は、現在の走行道路Mを走行する期間における車線変更履歴に基づいて、車両Vが現在走行している車線よりも過去に最大何(NL)車線分だけ左側の車線を走行していたかを特定する。そして、制御部20は、左端の車線から起算して右側に1〜(NL+1)車線目までの車線は車両Vが走行している可能性がなく、走行車線として特定する候補車線を左端の車線から起算して右側に1〜(NL+1)車線目までの車線を除く車線に絞り込む。図2の例において、車両Vが走行道路Mにおいて一度も端の車線を走行することなく現在の車線から最大1車線(NL=1)だけ左側の車線(左隣の車線)を走行したとすると、現在の車線と左端の車線との間に少なくとも1車線は存在することとなる。従って、制御部20は、左端の車線から起算して右側に1〜2車線目の車線は車両Vが走行していないと判断できる。
【0022】
同様に、制御部20は、現在の走行道路Mを走行する期間における車線変更履歴に基づいて、車両Vが現在走行している車線から過去に最大何(NR)車線分だけ右側の車線を走行していたかを特定する。そして、制御部20は、右端の車線から起算して左側に1〜(NR+1)車線目までの車線は車両Vが走行している可能性がなく、走行車線として特定する候補車線から、右端の車線から起算して左側に1〜(NR+1)車線目までの車線を除外する。図2の例において車両Vが走行道路Mにおいて現在の車線よりも右側の車線を一度も走行していない(NR=0)とすると、現在の車線と左端の車線との間に1車線も存在しない可能性が残る。以上のようにしてNL,NRの双方に基づいて絞り込まれた候補車線が1車線のみとなった場合に、制御部20は、絞り込まれた候補車線を走行車線として特定する。一方、絞り込まれた候補車線が複数残った場合に、制御部20は、走行車線が一意に特定できないとする。図2の例では、左端の車線から起算して右側に3〜4車線目の2車線が走行車線の候補車線C(C1,C2)として残ることとなる。
以上説明したように、走行車線特定部21bの機能により制御部20が走行車線を一意に特定できない場合も生じ得る。特に、走行道路Mの車線数が多いほど、車線変更を行った車線数が小さいほど、走行車線が一意に特定できない可能性が高くなる。
【0023】
推奨車線特定部21cは、複数の車線のなかから車両Vが走行すべき推奨車線を特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。本実施形態では、推奨車線特定部21cの機能により制御部20は、走行道路Mから予め設定された目的地へと到達するための走行予定経路の探索を行っており、現在の走行道路Mの次に走行すべき推奨道路に進入可能な走行道路Mの車線を推奨車線として特定する。図2の例において左端の車線から起算して右側へ1〜3車線目の3車線が目的地へと到達するための推奨車線R(R1〜R3)とされている。
【0024】
共通案内内容特定部21dは、車両Vが走行する位置の複数の候補として複数の候補車線Cが特定された場合に、複数の候補車線Cのそれぞれの位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容であって、複数の候補車線Cについて共通する案内内容を共通案内内容として特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、共通案内内容特定部21dの機能により制御部20は、走行道路Mが含む車線のうち現在まで候補車線Cが単一となるまで絞り込まれなかった場合に、複数の候補車線Cのそれぞれの位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容であって、複数の候補車線Cについて共通する案内内容を共通案内内容として特定する。本実施形態の案内内容は、候補車線Cに対する推奨車線Rの位置を相対的に示す内容であるため、制御部20は、候補車線Cに対する推奨車線Rの相対位置であって複数の候補車線Cについて共通する相対位置を案内させる案内内容を共通案内内容として特定する。以下、具体例を挙げて説明する。
【0025】
図2の例において、走行道路Mの左端の車線から起算して右側へ3車線目の候補車線C1を基準として推奨車線R1〜R3の位置を相対的に示す案内内容は、
P1:現在走行中の車線(C1)から2車線左側の車線(R1)を走行して下さい。
P2:現在走行中の車線(C1)の左隣の車線(R2)を走行して下さい。
P3:現在走行中の車線(C1=R3)をそのまま走行して下さい。
と特定することができる。
【0026】
図2の例において、走行道路Mの左端の車線から起算して右側へ4車線目の候補車線C2を基準とした推奨車線R1〜R3の位置を相対的に示す案内内容は、
P4:現在走行中の車線(C2)から3車線左側の車線(R1)を走行して下さい。
P5:現在走行中の車線(C2)から2車線左側の車線(R2)を走行して下さい。
P6:現在走行中の車線(C2)の左隣の車線(R3)を走行して下さい。
と特定することができる。なお、案内内容P1〜P6における括弧内の符号は参照のため示したに過ぎず、現実に案内する内容には含まれない。
【0027】
共通案内内容特定部21dの機能により制御部20は、複数の候補車線Cのそれぞれを基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容について共通する案内内容を共通案内内容として特定する。図2の例の案内内容P1〜P6における括弧内の符号を無視すると、候補車線C1についての案内内容P1と候補車線C2についての案内内容P5とが共通し、さらに候補車線C1についての案内内容P2と候補車線C2についての案内内容P6とが共通する。従って、共通案内内容特定部21dの機能により制御部20は、案内内容P1=P5と案内内容P2=P6を共通案内内容として特定する。ここで、共通案内内容としての案内内容P1=P5によって案内される候補車線Cと推奨車線Rとの相対位置は、ともに『推奨車線Rが候補車線Cよりも2車線左側にあること』であり、共通すると言える。同様に、案内内容P2=P6によって案内される候補車線Cと推奨車線Rとの相対位置は、ともに『推奨車線Rが候補車線Cの左隣の車線であること』であり、共通すると言える。このように候補車線Cに対する推奨車線Rの相対位置が共通する場合、これらを示す案内内容も結果として共通することとなる。
【0028】
案内制御部21eは、共通案内内容を案内部としてのユーザI/F部45に案内させる機能を制御部20に実行させるモジュールである。案内制御部21eの機能により制御部20は、共通案内内容に対応する音声信号をユーザI/F部45に出力し、共通案内内容に対応する案内メッセージをユーザI/F部45に出力させる。
【0029】
以上の構成によれば、車両Vが走行する位置として複数の候補車線Cが特定された場合、すなわち走行車線が一意に特定できない場合であっても共通案内内容(P1=P5,P2=P6)により推奨車線Rのいずれかへと車両Vを誘導させることができる。ここで、共通案内内容は、複数の候補車線Cのいずれを車両Vが走行する場合であっても共通して推奨車線Rのいずれかへと車両Vを案内できる案内内容であるため、複数の候補車線Cのいずれを車両Vが現実に走行する場合であっても問題のない案内を行わせることができる。すなわち、ある候補車線C1を車両Vが走行するとした場合に車両Vを推奨車線Rへと誘導させることができる案内内容P1〜P2と、別の候補車線C2を車両Vが走行するとした場合に車両Vを推奨車線Rへと誘導させることができる案内内容P5〜P6とが共通する場合に、当該共通する案内内容P1=P5,P2=P6を案内させるため、車両がいずれの候補車線C1,C2を走行する場合であっても推奨車線Rへと車両を誘導できる。さらに、共通案内内容特定部21dの機能により制御部20は、複数の候補車線Cが特定された場合に、複数の候補車線Cのそれぞれの位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容P1=P5,P2=P6を共通案内内容として案内させるため、運転者が車両Vを走行させている車線の位置を基準として容易に推奨車線Rの位置を認識できる。
【0030】
(2)車線案内処理:
図3Aは前処理のフローチャートであり、図3Bは車線案内処理のフローチャートである。図3Aの前処理は、所定の時間周期、または、所定の走行距離周期で実行される。図3AのステップS100において制御部20は、車両Vの前方の先読距離D1(図2)以内の地図情報30aを取得する。具体的には、予め特定されている走行道路Mの区間であって、車両Vの前方における先読距離D1以内の区間に関する情報を地図情報30aから抽出して取得する。
【0031】
ステップS110において制御部20は、先読距離D1以内に分岐地点DP(図2、参照)が存在するか否かを判定する。すなわち、制御部20は、ステップS100において取得した地図情報30aに走行道路Mの終点に対応するノードが含まれるか否かを判定する。なお、走行道路Mを含む走行予定経路が推奨車線特定部21cの機能によって予め探索されており、走行道路Mの終点に対応するノードは走行予定経路上の分岐地点DPに対応することとする。ステップS110において先読距離D1以内に分岐地点DPが存在しないと判定された場合に、制御部20は、リターンし、次に前処理を実行するまで待機する。
【0032】
ステップS110において先読距離D1以内に分岐地点DPが存在すると判定された場合、ステップS120において制御部20は、案内開始距離D2(図2、参照)以内に分岐地点DPが存在するか否かを判定する。案内開始距離D2は先読距離D1よりも短く、例えば分岐地点DPまでに車線変更が十分に可能な距離とされる。ステップS120において案内開始距離D2以内に分岐地点DPが存在しないと判定された場合、制御部20は、リターンし、次に前処理を実行するまで待機する。すなわち、分岐地点DPが案内開始距離D2以内となるまで、ステップS100〜S120の処理が繰り返される。ステップS120において案内開始距離D2以内に分岐地点DPが存在すると判定された場合、制御部20は、ステップS130において車線案内処理を実行させる。
【0033】
図3Bに示す車線案内処理のステップS131において、制御部20は、走行車線特定部21bの機能により複数の候補車線Cが特定されているか否かを判定する。すなわち、制御部20は、現在までの走行車線特定部21bによる絞り込みにおいて複数の候補車線Cが残っているか否かを判定する。複数の候補車線Cが特定されていないと判定された場合、すなわち走行車線が一意に特定できている場合、ステップS132において制御部20は、当該走行車線の位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容をユーザI/F部45に案内させる。ここでは、走行車線が一意に特定されているため、当該走行車線の位置を基準とすればよい。例えば、図2において候補車線C1が走行車線として一意に特定されていたと仮定すると、案内内容P1〜P3のうち案内される車線の数が最も少なくなる案内内容P3を案内させればよい。なお、案内される車線の数とは、案内内容に含まれる車線の数であり、運転者が推奨車線Rを認識するためにカウントすることを要する数である。
【0034】
一方、ステップS131において複数の候補車線Cが特定されていると判定された場合、ステップS133において制御部20は、複数の候補車線Cの位置のそれぞれを基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容を特定する。図2の例において、候補車線C1を基準とする案内内容P1〜P3と、候補車線C2を基準とする案内内容P4〜P6とがそれぞれ特定される。
【0035】
ステップS134において制御部20は、複数の候補車線Cのそれぞれについての案内内容のうち共通する案内内容である共通案内内容があるか否かを判定する。すなわち、制御部20は、ステップS133にて特定した案内内容であって、複数の候補車線Cの間で共通する案内内容である共通案内内容が1つでも特定できたか否かを判定する。図2の例において、候補車線C1を基準とする案内内容P1〜P3と、候補車線C2を基準とする案内内容P4〜P6との間で共通する案内内容P1=P5と案内内容P2=P6とが共通案内内容として特定されるため、共通案内内容があると判定されることとなる。なお、3個以上の候補車線Cが特定された場合には、3個以上の候補車線Cの位置のそれぞれを基準として推奨車線Rの位置を示す案内内容を特定し、3個以上の候補車線Cのすべてについて共通する案内内容が共通案内内容として特定することを要する。
【0036】
なお、本実施形態では、ステップS133にて案内内容を特定し、ステップS134にて案内内容のなかから共通案内内容を特定することとしたが、案内内容を特定した場合に共通することとなる候補車線Cと推奨車線Rとの組み合わせを予め特定し、当該特定した組み合わせについての案内内容を共通案内内容として特定してもよい。本実施形態では、候補車線Cの位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容とするため、推奨車線Rの候補車線Cに対する相対位置が複数の候補車線Cについて共通すれば、案内内容も共通することなる。例えば、図2の例における候補車線C1と推奨車線R1、および、候補車線C2と推奨車線R2の組み合わせについて、推奨車線Rの候補車線Cに対する相対位置はそれぞれ2車線左側と共通することとなる。この相対位置を示す案内内容は、上述の案内内容P1=P5となる。同様に、候補車線C1と推奨車線R2、および、候補車線C2と推奨車線R3の組み合わせについて、推奨車線Rの候補車線Cに対する相対位置はそれぞれ1車線左側(左隣)と共通することとなる。この相対位置を示す案内内容は、上述の案内内容P2=P6となる。このように予め共通する推奨車線Rと候補車線Cとの相対位置を特定しておき、当該相対位置を示す案内内容を共通案内内容として特定してもよい。また、複数の候補車線Cが互いに隣接する状態、および、複数の推奨車線Rが互いに隣接する状態において、候補車線Cの数が推奨車線Rの数以上である場合には、複数の候補車線Cのうち両端の2つの候補車線Cに対して共通する相対位置となる推奨車線Rは存在し得ない。従って、候補車線Cの数が推奨車線Rの数以上である場合には、ステップS133〜S135をスキップすることにより、処理負荷を軽減してもよい。
【0037】
ステップS134において共通案内内容があると判定された場合、ステップS135において制御部20は、共通案内内容のうち案内される車線の数が最も少なくなる案内内容をユーザI/F部45に案内させる。図2の例において、候補車線C1,C2の間で共通する案内内容P1=P5と案内内容P2=P6とが共通案内内容として特定されるため、これらのうち案内される車線の数が最も少なくなる案内内容P2=P6が案内されることとなる。これにより、運転者は車線数の少ないカウントにより、推奨車線Rを特定できる。
【0038】
一方、ステップS134において共通案内内容があると判定されなかった場合、ステップS136において制御部20は、走行道路Mの端の車線の位置を基準として推奨車線Rの位置を示す案内内容をユーザI/F部45に案内させる。本実施形態において制御部20は、走行道路Mの左右両端の車線のうち推奨車線Rに近い方の車線の位置を基準として推奨車線Rの位置を示す案内内容を案内させる。図2の例において、共通案内内容が存在しなかったと仮定すると、ステップS136にて制御部20が案内させる案内内容は、
P7:道路(M)の左端の車線(R1)を走行して下さい。
P8:道路(M)の左端から2車線目の車線(R2)を走行して下さい。
P9:道路(M)の左端から3車線目の車線(R3)を走行して下さい。
と特定することができる。制御部20は、これらの案内内容P7〜P9のうち、案内される車線の数が最も少なくなる案内内容P7を案内させる。なお、走行道路Mの端の車線を基準として推奨車線Rの位置が示されるため、車両Vが現実にどの車線を走行しているかに拘わらず、運転者は案内内容P7〜P9により推奨車線Rの位置を認識できる。
【0039】
(3)第2実施形態:
図4Aは第2実施形態の車線案内処理を示すフローチャートである。第2実施形態の車線案内処理は、候補車線Cの位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容を案内させるのではなく、道路の所定位置を基準として推奨車線Rの位置を示す案内内容を案内させる処理である。なお、第1実施形態と同様の前処理(図3A)を、最有力候補道路を対象として行っていることとする。上述のように最有力候補道路とは、走行道路特定部21aの機能により、自立航法軌跡の形状とのマッチ度が最も高い道路であると特定された道路である。ステップS1131において制御部20は、最有力候補道路を走行する場合の推奨車線Rを特定する。すなわち、推奨車線特定部21cの機能により制御部20は、最有力候補道路から予め設定された目的地へと到達するための走行予定経路の探索を行い、最有力候補道路の次に走行すべき推奨道路に進入可能な最有力候補道路の車線を推奨車線Rとして特定する。
【0040】
図4Bは最有力候補道路M1の例を示す。同図の例では、最有力候補道路M1が含む全4車線のうち、右端の車線から起算して左側へ1〜2車線目の車線が推奨車線R(R1,R2)として特定されている。なお、図4B中の黒三角のマーカは最有力候補道路M1にて車両Vが走行し得る位置(候補)を示す。本実施形態において走行車線特定部21bの機能によって車両Vが走行する走行車線を特定する処理は行われておらず、いずれの車線を走行する可能性も否定されていないこととする。
【0041】
ステップS1132において制御部20は、最有力候補道路M1のマッチ度が突出せず、かつ、分岐地点間距離DPDが所定の閾値以下であるか否かを判定する。なお、最有力候補道路M1のマッチ度が突出しないとは、最有力候補道路M1のマッチ度と次有力候補道路M2のマッチ度との差が所定閾値以下であることを指す。また、分岐地点間距離DPDは、最有力候補道路M1における車両Vの現在位置の前方の分岐地点DP1と、次有力候補道路M2における車両Vの現在位置の前方の分岐地点DP2との距離(車両Vの走行方向に関する距離)である。ここでは制御部20は、次有力候補道路M2についての情報を地図情報30aから取得し、次有力候補道路M2を走行する場合の車両Vの現在位置の前方の分岐地点DP2との距離を特定する。なお、候補道路M1,M2を走行する場合の車両Vの現在位置は、自立航法軌跡と候補道路M1,M2のそれぞれの形状とに基づいて推定される。最有力候補道路M1のマッチ度が突出していないとは、現実に車両Vが次有力候補道路M2を走行している可能性が否定できないことを意味する。すなわち、最有力候補道路M1と次有力候補道路M2とがともに走行道路の候補として特定されたことを意味する。
【0042】
また、分岐地点間距離DPDが所定閾値以下である場合、車両Vが最有力候補道路M1を走行するとした場合に分岐地点DP1に到達する時刻と、車両Vが次有力候補道路M2を走行するとした場合に分岐地点DP2に到達する時刻とが所定期間以内となると判断できる。すなわち、分岐地点間距離DPDが所定閾値以下である場合には、現実に車両Vが次有力候補道路M2を走行するにも拘わらず最有力候補道路M1にて分岐地点DP1へ到達する場合の車線案内がなされた場合に、次有力候補道路M2にて分岐地点DP2へ到達する場合の車線案内がなされていると運転者が誤解する可能性が高いと判断できる。次有力候補道路M2にて分岐地点DP2が車両Vの前方の近い位置に存在しない状態で車線案内が行われれば、運転者は誤った車線案内が行われたと容易に認識できる。すなわち、ステップS1132では、最有力候補道路M1にて分岐地点DP1へ車両Vが到達する場合の車線案内を行った場合に、現実には次有力候補道路M2を走行する車両Vを誤った推奨車線Rへと誘導する可能性が所定基準よりも高いか否かを判定していることとなる。
【0043】
ステップS1132において最有力候補道路M1のマッチ度が突出せず、かつ、分岐地点間距離DPDが所定の閾値以下であると判定されなかった場合、制御部20はステップS1133を実行する。ステップS1133において制御部20は第1実施形態(図3BのステップS136)と同様の手法により、最有力候補道路M1の左右両端の車線のうち推奨車線Rに近い方の車線の位置を基準として推奨車線Rの位置を示す案内内容を案内させる。図4Bの例において、ステップS1132にてNoと判定されたと仮定すると、ステップS1133にて制御部20が案内させる案内内容は、
P10:道路(M1)の右端の車線(R2)を走行して下さい。
P11:道路(M1)の右端から2車線目の車線(R1)を走行して下さい。
と特定することができる。制御部20は、これらの案内内容P10〜P11のうち、案内される車線の数が最も少なくなる案内内容P10を案内させる。
【0044】
一方、ステップS1132において最有力候補道路M1のマッチ度が突出せず、かつ、分岐地点間距離DPDが所定の閾値以下であると判定された場合、制御部20はステップS1134を実行する。ステップS1134において制御部20は、次有力候補道路M2を走行する場合の推奨車線Rを特定する。ステップS1134において、推奨車線特定部21cの機能により制御部20は、次有力候補道路M2から予め設定された目的地Gへと到達するための走行予定経路の探索を行い、次有力候補道路M2の次に走行すべき推奨道路に進入可能な次有力候補道路M2の車線を推奨車線Rとして特定する。
【0045】
図4Bの例では、次有力候補道路M2(ステップS1132の要件を満足することとする)が含む全3車線のうち、右端車線が推奨車線R(R3)として特定されている。なお、図4B中の白三角のマーカは次有力候補道路M2にて車両Vが走行する位置(候補)を示す。
【0046】
ステップS1135において共通案内内容特定部21dの機能により制御部20は、ステップS1131において特定した推奨車線R1,R2の最有力候補道路M1における位置と、ステップS1134において特定した推奨車線R3の次有力候補道路M2における位置とを比較する。ここで候補道路M1,M2における推奨車線Rの位置とは、候補道路M1,M2において推奨車線Rに近い側の端の車線から起算して推奨車線Rまで数えた車線数であるとする。テップS1136において制御部20は、ステップS1131において特定した推奨車線R1,R2の最有力候補道路M1における位置と、ステップS1134において特定した推奨車線R3の次有力候補道路M2における位置とが共通するか否かを判定する。すなわち、制御部20は、候補道路M1,M2における推奨車線Rに近い側の端の方向が一致し、かつ、推奨車線Rに近い側の端の車線から起算して推奨車線Rまで数えた車線数が一致するか否かを判定する。図4Bに示すように、推奨車線R1は最有力候補道路M1における右端の車線であり、推奨車線R3は次有力候補道路M2における右端の車線であるため、推奨車線R1と推奨車線R3とは候補道路M1,M2に対して共通する位置を有することとなる。すなわち、推奨車線R1,R3に近い側の端の方向が共通して右、かつ、右端の車線から起算して推奨車線R1,R3まで数えた車線数が共通して1となる。
【0047】
ステップS1136において、推奨車線R1,R2の最有力候補道路M1における位置と、推奨車線R3の次有力候補道路M2における位置とが共通すると判定されなかった場合、制御部20はステップS1133にて最有力候補道路M1の左右両端の車線のうち推奨車線Rに近い方の車線の位置を基準として推奨車線Rの位置を示す案内内容を案内させる。すなわち、最有力候補道路M1のマッチ度が突出していないものの、車両Vが最有力候補道路M1を走行する可能性の方が高いため、車両Vが最有力候補道路M1を走行する場合の案内内容を案内させることとする。なお、誤った誘導を避けるために、ステップS1136において推奨車線R1,R2の最有力候補道路M1における位置と、推奨車線R3の次有力候補道路M2における位置とが共通すると判定されなかった場合には、車線案内を行わないようにしてもよい。
【0048】
一方、ステップS1136において推奨車線R1,R2の最有力候補道路M1における位置と、推奨車線R3の次有力候補道路M2における位置とが共通すると判定された場合、制御部20はステップS1137にて共通する推奨車線Rの位置を示す案内内容を案内させる。図4Bの例では、推奨車線R1と推奨車線R3とが共通して候補道路M1,M2の右端に位置すると判定されるため、
P11:道路(M1,M2)の右端の車線(R1,R3)を走行して下さい。
という共通案内内容P11を案内させる。このようにすることにより、車両Vが現実に候補道路M1,M2のどちらを走行していたとしても目的地Gへと到達可能な推奨車線Rへと車両を誘導することができる。なお、本実施形態のステップS1135では複数の候補道路M1,M2のそれぞれを車両Vが走行する場合における推奨車線Rの位置の共通性を判定することとしたが、複数の候補道路M1,M2のそれぞれを車両Vが走行する場合に推奨車線Rへと車両を誘導する案内内容を特定し、当該案内内容のうち共通するものを共通案内内容として特定してもよい。また、制御部20は、候補道路M1,M2において推奨車線Rに遠い側の端の車線から起算して推奨車線Rまで数えた車線数を示す案内内容を案内させてもよい。この場合、ステップS1135では候補道路M1,M2において推奨車線Rに遠い側の端の車線から起算して推奨車線Rまで数えた車線数の共通性を判定すればよい。むろん、制御部20は、候補道路M1,M2において推奨車線Rに遠い側の端の車線から起算して推奨車線Rまで数えた車線数を示す案内内容を特定し、当該案内内容のうち共通するものを共通案内内容として特定してもよい。
【0049】
(4)第3実施形態:
図5Aは第3実施形態の車線案内処理を示すフローチャートである。なお、第1実施形態と同様の前処理(図3A)を行っていることとする。ステップS2131において制御部20は、最有力候補道路M1を走行する場合の候補車線Cのそれぞれの位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容を特定する。ここでは、まず経路探索を行って、最有力候補道路M1から目的地Gへ到達可能な推奨車線Rを特定する。なお、本実施形態では、走行車線特定部21bの機能によって、最有力候補道路M1にて車両Vが走行する走行車線を特定する処理が行われている。
【0050】
図5Bは最有力候補道路M1の例を示す。同図の例では、最有力候補道路M1が含む全4車線のうち、右端の車線から起算して左側へ1〜2車線目の車線が推奨車線R(R1,R2)として特定されている。また、最有力候補道路M1の左端の車線から起算して右側へ2〜3車線目の2車線が候補車線C(C1,C2)として特定されている。すなわち、車両Vが最有力候補道路M1を走行する期間において、車両Vは一度も車線変更を行っておらず、左右の端の車線を除くすべての車線が候補車線C1,C2として残っている。図5B中の黒三角のマーカは最有力候補道路M1にて車両Vが走行し得る位置(候補)を示す。
【0051】
候補車線C1,C2のそれぞれの位置を基準として推奨車線R1,R2の位置を相対的に示す案内内容は、第1実施形態のステップS131(図3B)と同様に特定できる。すなわち、最有力候補道路M1の左端から起算して右側へ2車線目の候補車線C1を基準として推奨車線R1〜R2の位置を相対的に示す案内内容は、
P12:現在走行中の車線(C1)の右隣の車線(R1)を走行して下さい。
P13:現在走行中の車線(C1)から2車線右側の車線(R2)を走行して下さい。
と特定することができる。
さらに、最有力候補道路M1の左端から起算して右側へ3車線目の候補車線C2を基準として推奨車線R1〜R2の位置を相対的に示す案内内容は、
P14:現在走行中の車線(C2=R1)をそのまま走行して下さい。
P15:現在走行中の車線(C2)の右隣の車線(R2)を走行して下さい。
と特定することができる。
【0052】
ステップS2132において制御部20は、最有力候補道路M1のマッチ度が突出せず、かつ、分岐地点間距離DPDが所定の閾値以下であるか否かを判定する。すなわち、第2実施形態のステップS1132(図4A)と同様の判定を行う。
【0053】
ステップS2132において最有力候補道路M1のマッチ度が突出せず、かつ、分岐地点間距離DPDが所定の閾値以下であると判定された場合、制御部20はステップS2133を実行する。このステップS2133において制御部20は、次有力候補道路M2を走行する場合の候補車線Cのそれぞれの位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容を特定する。ここではまず経路探索を行って、次有力候補道路M2から目的地Gへ到達可能な推奨車線Rが特定される。
【0054】
図5Bの例では、次有力候補道路M2(ステップS2132の要件を満足することとする)が含む全3車線のうち、右端の車線が推奨車線R(R3)として特定されている。また、次有力候補道路M2の左端の車線から起算して2車線目の1車線(すなわち中央の車線)が候補車線C3として一意に特定されている。すなわち、最有力候補道路M1を走行する期間において、車両Vは一度も車線変更を行っていないが、左右の端の車線を除く車線が中央の車線のみであるため、候補車線C3が一意に特定されている。なお、候補車線C3は次有力候補道路M2においては一意に特定されるが、車両Vが最有力候補道路M1の候補車線C1,C2を走行する可能性も考慮すると、車両Vが走行する候補車線Cとして候補道路M1,M2の双方に分布する3車線の候補車線C1〜C3が特定されたこととなる。図5B中の白三角のマーカは次有力候補道路M2にて車両Vが走行し得る位置(候補)を示す。
【0055】
次有力候補道路M2の候補車線C3を基準として推奨車線R3の位置を相対的に示す案内内容は、第1実施形態のステップS131(図3B)と同様に特定できる。すなわち、候補車線C3を基準として推奨車線R3の位置を相対的に示す案内内容は、
P16:現在走行中の車線(C3)の右隣の車線(R3)を走行して下さい。
と特定することができる。ステップS2133が完了すると、制御部20は後述のステップS2134を実行する。
【0056】
一方、ステップS2132において最有力候補道路M1のマッチ度が突出せず、かつ、分岐地点間距離DPDが所定の閾値以下であると判定されなかった場合、制御部20はステップS2133をスキップして、ステップS2134実行する。
【0057】
ステップS2134において制御部20は、ステップS2131とステップS2133の双方(ステップS2132にてYesの場合)、または、ステップS2131のみ(ステップS2132にてNoの場合)において特定された案内内容のうち、複数の候補車線Cについて共通する共通案内内容があるか否かを判定する。そして、複数の候補車線Cについて共通する共通案内内容があった場合には、ステップS2135において制御部20は共通案内内容を案内させる。
【0058】
図5Bの例の場合、候補車線C1について案内内容P12,P13と候補車線C2について案内内容P14,P15とがステップS2131にて特定され、候補車線C3について案内内容P16がステップS2133にて特定されている。候補車線C1について案内内容P12,P13と、候補車線C2について案内内容P14,P15と、候補車線C3について案内内容P16とで共通する共通案内内容は、案内内容P12=P15=P16となる。従って、共通案内内容としての案内内容P12=P15=P16を案内させることができる。すなわち、最有力候補道路M1の候補車線C1,C2と次有力候補道路M2の候補車線C3とのいずれを車両Vが現実に走行していた場合でも、現在走行している車線の右隣の車線へと車両を誘導すれば、理想的な経路で目的地Gへと車両を到達させることができる案内内容を案内させることができる。
【0059】
一方、ステップS2134において複数の候補車線Cについて共通する共通案内内容がなかったと判定された場合、制御部20は相対案内フェーズを終了させ、絶対案内フェーズへと移行する。なお、相対案内フェーズは図5Aの処理全体を指し、絶対案内フェーズは第2実施形態の図4Aの処理全体を指す。すなわち、候補車線Cの位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容の案内を試みる相対案内フェーズを終了させ、次に道路の所定位置を基準として推奨車線Rの位置を示す案内内容の案内を行わせる絶対案内フェーズを実行させる。絶対案内フェーズでの処理は第2実施形態で説明した処理と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
以上のように第3実施形態では、運転者が車両を走行させている車線の位置を基準として相対的に推奨車線Rの位置を案内できる共通案内内容が特定できた場合には、当該共通案内内容を優先して案内させる(相対案内フェーズ)。一方、運転者が車両を走行させている車線の位置を基準として推奨車線Rの位置を相対的に示す案内内容が共通案内内容として特定できなかった場合には、複数の候補道路M1,M2のそれぞれにおける端の車線の位置を基準として推奨車線Rの位置を示す案内内容であって、複数の候補道路M1,M2について共通する案内内容を共通案内内容として案内させる(絶対案内フェーズ)。このように2種類の案内内容について共通案内内容の特定を順次行うため、いずれかの種類の案内内容について共通案内内容の特定できる可能性を高めることができる。また、相対案内フェーズを先行させることにより、運転者が推奨車線Rを認識しやすい案内内容を優先して案内させることができる。
【0061】
(5)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、以下の実施形態も採用し得る。複数の共通案内内容が特定された場合に、制御部20は案内される車線の数が最も少なくなる共通案内内容を案内させるようにしたが、複数の共通案内内容のすべてを案内させてもよい。例えば、図2の例における共通案内内容P1=P5,P2=P6を結合させて、『現在走行中の車線から2車線左側または左隣の車線を走行して下さい。』と案内させてもよい。
【0062】
走行車線特定部21bの機能により制御部20は、周辺画像における車線の境界線の像だけでなく、道路に付設された構造物(道路標識等)の像の位置等に基づいて走行車線を特定してもよい。また、走行車線特定部21bの機能により制御部20は、外部の装置から受信した電磁波等に基づいて走行車線を特定してもよい。例えば、車線ごとに異なるデータを搬送した電磁波(ビーコン)を車両Vに送信する装置が道路に備えられている場合、走行車線特定部21bの機能により制御部20は、当該装置から受信した電磁波に基づいて走行車線を特定してもよい。
【0063】
推奨車線特定部21cの機能により制御部20は、車両Vが走行すべき推奨車線Rを特定すればよく、推奨車線Rは種々の観点に基づいて推奨され得る。例えば、推奨車線特定部21cの機能により制御部20は、渋滞や障害物の有無等の交通状況に基づいて車両Vがスムーズに走行できる車線を推奨車線Rとして特定してもよい。案内制御部21eの機能により制御部20は、画像によって共通案内内容を案内させてもよいし、画像と音声との双方によって共通案内内容を案内させてもよい。
【0064】
また、共通案内内容として制御部20は、推奨車線Rの形状的特徴や色彩的特徴を示す案内内容を案内させてもよい。例えば、候補道路M1,M2のいずれを車両Vが走行する場合でも、候補道路M1,M2のそれぞれについての推奨車線Rが共通して上り勾配となる形状的特徴を有していたり、共通して緑色にペイントされたという色彩的特徴を有していたりする場合には、上り勾配の車線を走行すべきことを示す案内内容や、緑色の車線を走行すべきことを示す案内内容を共通案内内容として案内させてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…車線案内プログラム、21a…走行道路特定部、21b…走行車線特定部、21c…推奨車線特定部、21d…共通案内内容特定部、21e…案内制御部、30…記録媒体、30a…地図情報、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…車載カメラ、45…ユーザI/F部、C…候補車線、D1…先読距離、D2…案内開始距離、DP…分岐地点、DPD…分岐地点間距離、G…目的地、M…走行道路、M1,M2…候補道路、R…推奨車線、V…車両。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する位置として複数の候補が特定された場合に、前記複数の候補のそれぞれを前記車両が走行する場合において前記車両を推奨車線へと誘導する案内内容であって、前記複数の候補について共通する案内内容である共通案内内容を特定する共通案内内容特定手段と、
前記共通案内内容を案内部に案内させる車線案内制御手段と、
を備える車線案内制御装置。
【請求項2】
前記共通案内内容特定手段は、前記複数の候補として複数の候補車線が特定された場合に、前記複数の候補車線のそれぞれの位置を基準として前記推奨車線の位置を相対的に示す案内内容であって、前記複数の候補車線について共通する案内内容を前記共通案内内容として特定する、
請求項1に記載の車線案内制御装置。
【請求項3】
前記共通案内内容特定手段は、前記複数の候補として複数の候補道路が特定された場合に、前記複数の候補道路のそれぞれにおける所定位置を基準として前記推奨車線の位置を示す案内内容であって、前記複数の候補道路について共通する案内内容を前記共通案内内容として特定する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の車線案内制御装置。
【請求項4】
前記共通案内内容特定手段は、前記複数の候補として前記複数の候補道路が特定され、かつ、前記複数の候補道路のそれぞれを前記車両が走行する場合の前記複数の候補として複数の候補車線が特定された場合に、前記複数の候補車線のそれぞれの位置を基準として前記推奨車線の位置を相対的に示す案内内容であって、前記複数の候補車線について共通する案内内容が特定できた場合に、当該案内内容を前記共通案内内容として特定するとともに、
前記複数の候補車線のそれぞれの位置を基準として前記推奨車線の位置を相対的に示す案内内容が前記共通案内内容として特定できなかった場合に、前記複数の候補道路のそれぞれにおける所定位置を基準として前記推奨車線の位置を示す案内内容であって、前記複数の候補道路について共通する案内内容を前記共通案内内容として特定する、
請求項3に記載の車線案内制御装置。
【請求項5】
車両が走行する位置として複数の候補が特定された場合に、前記複数の候補のそれぞれを前記車両が走行する場合において前記車両を推奨車線へと誘導する案内内容であって、前記複数の候補について共通する案内内容である共通案内内容を特定する共通案内内容特定工程と、
前記共通案内内容を案内部に案内させる車線案内制御工程と、
を含む車線案内制御方法。
【請求項6】
車両が走行する位置として複数の候補が特定された場合に、前記複数の候補のそれぞれを前記車両が走行する場合において前記車両を推奨車線へと誘導する案内内容であって、前記複数の候補について共通する案内内容である共通案内内容を特定する共通案内内容特定機能と、
前記共通案内内容を案内部に案内させる車線案内制御機能と、
をコンピュータに実行させる車線案内制御プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202961(P2012−202961A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70737(P2011−70737)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】