説明

車線案内装置、方法およびプログラム

【課題】推奨車線を容易に認識させる技術の提供。
【解決手段】複数の車線を含む走行道路において車両の走行方向側方の端にそれぞれ存在する第1車線と第2車線とのうち、前記走行道路の形状に基づく認識容易度が高い方を基準車線として特定する基準車線特定手段と、前記複数の車線のなかから前記車両が走行すべき推奨車線を特定する推奨車線特定手段と、前記基準車線を基準とした前記推奨車線の位置を案内する推奨車線案内手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行すべき推奨車線の位置を案内させる車線案内装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が走行すべき推奨車線の位置を案内する装置が知られている(特許文献1、参照、0121)。ここでは、道路の端の車線から数えた車線数を用いて推奨車線の位置を案内することが開示されている。これにより、運転者は、案内された車線数だけ道路の端から車線を数えることにより、推奨車線が特定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−266975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路の端の車線が認識しづらい場合には、道路の端の車線を基準として容易に推奨車線が認識できないという問題があった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、推奨車線を容易に認識させる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明において、基準車線特定手段は、複数の車線を含む走行道路において車両の走行方向側方の端にそれぞれ存在する第1車線と第2車線とのうち、走行道路の形状に基づく認識容易度が高い方を基準車線として特定する。推奨車線特定手段は、複数の車線のなかから車両が走行すべき推奨車線を特定する。推奨車線案内手段は、基準車線を基準とした推奨車線の位置を案内させる。以上の構成において、基準車線特定手段は走行道路の端にそれぞれ存在する第1車線と第2車線とのうち認識容易度が高い方を基準車線として特定するため、推奨車線案内手段は認識容易度が高い車線を基準とした推奨車線の位置を案内させることができる。従って、運転者に推奨車線を容易に認識させることができる。
【0006】
基準車線特定手段は、走行道路ごとに基準車線を予め規定したデータベースを参照することにより走行道路についての基準車線を特定してもよい。また、走行道路を走行する際に、走行道路の形状に基に基づいて基準車線を特定する処理を行ってもよい。ここで、走行道路の形状とは、第1車線と第2車線との認識容易度に寄与する形状であればよく、例えば第1車線と第2車線自体の形状や位置であってもよい。すなわち、認識容易度は、第1車線と第2車線との形状や位置に基づいて特定されてもよい。また、走行道路の端とは、走行道路と道路以外の領域との境界に限らず、走行道路と他の道路との境界も含む。すなわち、車両が走行する車線と同一方向の複数の車線を有する走行道路と、車両が走行する車線と反対方向の対向車線を有する対向道路とが隣接している場合に、これらの道路間の境界も走行道路の端に含まれる。
【0007】
推奨車線特定手段は、車両が走行すべき推奨車線を特定すればよく、推奨車線は種々の観点に基づいて推奨され得る。例えば、目的地に到達するための車両の走行予定経路が設定されている場合、推奨車線特定手段は、当該走行予定経路上の道路に進入できる車線を推奨車線として特定してもよい。また、推奨車線特定手段は、渋滞や障害物の有無等の交通状況に基づいて車両がスムーズに走行できる車線を推奨車線として特定してもよい。
推奨車線案内手段は、音声によって推奨車線の位置を案内させてもよいし、画像によって推奨車線の位置を案内させてもよいし、これらの双方によって推奨車線の位置を案内させてもよい。
【0008】
ここで、第1車線と第2車線とのうち第2車線のみが特定車両の専用車線となる形状を走行道路が有する場合に、専用車線である第2車線よりも専用車線でない第1車線の方が走行道路の端の車線であることの認識容易度は高くなる。第2車線が専用車線である場合、運転者は、専用車線である第2車線を走行道路の端の車線であると捉えるべきか、専用車線である第2車線の内側に隣接する車線を走行道路の端の車線であると捉えるべきかが明確に判断できなくなるからである。従って、基準車線特定手段は、第1車線と第2車線とのうち第2車線のみが専用車線となる場合に、第1車線の認識容易度が第2車線の認識容易度よりも高いとして、第1車線を基準車線として特定してもよい。なお、特定車両とは、バスやトラックや二輪車等の特定の車両種別に属する車両であってもよいし、故障車等の特定の状態の車両であってよい。すなわち、専用車線は、バス専用車線等であってもよいし、故障車待避車線等であってもよい。
【0009】
また、第1車線と第2車線とのうち第2車線のみが道路同士の境界をなす境界地物を介することなく他の道路と隣接する形状を走行道路が有する場合に、第1車線の認識容易度は第2車線の認識容易度よりも高くなる。第2車線が境界地物を介することなく他の道路と隣接する場合、第2車線が走行道路に含まれる車線であるのか他の道路に含まれる車線であるのかが明確に判断できなくなり、第2車線が走行道路の端の車線であることが明確に認識できなくなる。これに対して、第1車線が他の道路と隣接しない場合や、第1車線が他の道路と境界地物を介して隣接する場合には、第1車線が走行車線の端の車線であることは明確に認識できるため、第1車線の認識容易度は第2車線の認識容易度よりも高くなる。従って、基準車線特定手段は、第1車線と第2車線とのうち第2車線のみが境界地物を介することなく他の道路と隣接する場合に、第1車線の認識容易度が第2車線の認識容易度よりも高いとして、第1車線を基準車線として特定してもよい。なお、本発明において、ある車線と、その対向車線とが隣接して設けられている場合、これらの車線はそれぞれ別の道路に属する。境界地物は、道路同士の境界をなす地物であればよく、道路同士の境界に特有の地物であることが望ましい。境界地物の例として、道路同士の境界に設けられる中央分離帯やガードレールや道路灯や交通標識や植栽等が挙げられる。また、境界地物は、所定の大きさ(高さや幅)を有する構造物であってもよいし、所定の色を有する(道路とは所定量以上異なる色相や彩度や明度を有する)構造物であってもよい。さらに、境界地物は、構造物でなくてもよく、道路同士の境界に設けられる所定幅以上の領域であってもよい。
【0010】
さらに、第1車線が車両の前方のカーブの最外側車線となり、第2車線がカーブの最内側車線となる形状を走行道路が有する場合に、第1車線の認識容易度が第2車線の認識容易度よりも高くなる。前方のカーブに接近した場合に、カーブの最外側の第1車線は、最内側の第2車線よりも車両の前方正面に近い位置に視認でき、車両のフロントガラスの側方に備えられたピラーに隠れる可能性が低いからである。従って、基準車線特定手段は、第1車線が車両の前方のカーブの最外側車線となり、第2車線がカーブの最内側車線となる場合に、第1車線を基準車線として特定してもよい。
【0011】
さらに、本発明のように、認識容易度が高い車線を基準として推奨車線の位置を案内させる手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車線案内装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】車線案内処理を示すフローチャートである。
【図3】(3A)〜(3C)は、道路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)車線案内処理:
(3)他の実施形態:
【0014】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる車線案内装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、車両Vに備えられている。ナビゲーション装置10は、制御部20と記録媒体30とを備えている。制御部20は、CPUとRAMとROM等を備え、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行する。記録媒体30は、地図情報30aを記録する。地図情報30aは、道路上に設定されたノードを示すノードデータ(不図示)と、ノード間の道路に関する情報を示すリンクデータLDとを含む。さらに、リンクデータLDは、形状補間点情報LD1と地物情報LD2と車線情報LD3とを含む。形状補間点情報LD1は、道路の形状を特定する形状補間点の位置を示すデータである。地物情報LD2は、道路やその周辺に存在する地物(中央分離帯,交通標識等)の位置や形状を示すデータである。地物情報LD2は、道路が含む車線の車線数と、車線の位置と、車線を走行した場合の進入道路(リンク)と、車線の属性(通常車線,バス専用車線,故障車待避車線等)等を示すデータである。なお、本実施形態において、道路とは、車両の走行方向がほぼ同一(例えば、所定角度以内)となる車線によって構成され、走行方向がほぼ反対となる車線は互いに別の道路に属することとする。また、道路の端とは車両の走行方向前方を正面とした場合の左右の端を意味する。
【0015】
また、本実施形態における車両Vは、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とユーザI/F部44とを備えている。GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両Vの現在位置を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両Vの現在位置を取得する。車速センサ42は、車両Vが備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両Vの車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両Vに作用する角速度に対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両Vの走行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43は、GPS受信部41の出力信号から特定される車両Vの現在位置を補正するなどのために利用される。
【0016】
ユーザI/F部44は、制御部20から出力された制御信号に基づいて各種案内を出力する出力装置を含む。本実施形態のユーザI/F部44は、音声により案内を出力するスピーカと、画像により案内を出力するディスプレイとを含む。
【0017】
車線案内プログラム21は、基準車線特定部21aと推奨車線特定部21bと推奨車線案内部21cとを含む。
基準車線特定部21aは、車両Vが走行する走行道路において車両Vの走行方向側方の端にそれぞれ存在する第1車線と第2車線とのうち、走行道路の形状に基づく認識容易度が高い方を基準車線として特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。具体的に、基準車線特定部21aの機能により制御部20は、第1車線と第2車線とのうち第2車線のみが専用車線となる形状を走行道路が有する場合に、第1車線を基準車線とする。すなわち、基準車線特定部21aの機能により制御部20は、車両Vの現在位置と地図情報30aに基づいて走行道路を特定し、走行道路に関するリンクデータLD(形状補間点情報LD1,地物情報LD2,車線情報LD3)を取得する。
【0018】
基準車線特定部21aの機能により制御部20は、走行道路に関する車線情報LD3に基づいて走行道路の右端の車線と左端の車線とを特定する。基準車線特定部21aの機能により制御部20は、走行道路についての車線情報LD3に基づいて右端の車線と左端の車線とのそれぞれについて属性を特定し、右端の車線と左端の車線とのいずれか一方のみがバス専用車線である場合には、バス専用車線でない方の車線を基準車線として特定する。なお、右端の車線と左端の車線とのうち、バス専用車線でない方の車線が第1車線に相当し、バス専用車線である方の車線が第2車線に相当する。
【0019】
また、基準車線特定部21aの機能により制御部20は、第1車線と第2車線とのうち第2車線のみが境界地物としての中央分離帯を介することなく他の道路と隣接する形状を走行道路が有する場合に、第1車線を基準車線とする。すなわち、基準車線特定部21aの機能により制御部20は、地図情報30aに基づいて、走行道路に隣接する対向道路を検索する。走行道路に隣接する対向道路とは、走行道路に対応するリンクの始点と終点のノードをそれぞれ終点と始点のノードとするリンクに対応する道路である。走行道路に隣接する対向道路が存在する場合、基準車線特定部21aの機能により制御部20は、地物情報LD2を参照して走行道路と対向道路との間に中央分離帯が存在するか否かを判定する。そして、基準車線特定部21aの機能により制御部20は、右端の車線と左端の車線とのいずれか一方のみが対向道路と中央分離帯を介することなく隣接する場合には、その反対側の車線を基準車線として特定する。なお、右端の車線と左端の車線とのうち、対向道路と隣接しないか、対向道路と中央分離帯を介して隣接する方の車線が第1車線に相当し、対向道路と中央分離帯を介することなく隣接する方の車線が第2車線に相当する。
【0020】
さらに、基準車線特定部21aの機能により制御部20は、第1車線が車両Vの前方のカーブの最外側車線となり、第2車線がカーブの最内側車線となる形状を走行道路が有する場合に、第1車線を基準車線とする。すなわち、基準車線特定部21aの機能により制御部20は、形状補間点情報LD1に基づいて、右端の車線と左端の車線のうち前方のカーブの最外側車線となる方の車線を特定し、当該車線を基準車線とする。なお、右端の車線と左端の車線とのうち、カーブの最外側となる方の車線が第1車線に相当し、カーブの最内側となる方の車線が第2車線に相当する。
【0021】
推奨車線特定部21bは、複数の車線のなかから車両Vが走行すべき推奨車線を特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。本実施形態では、図示しない経路探索部の機能により目的に到達するための走行予定経路の探索が行われており、推奨車線特定部21bの機能により制御部20は、走行予定経路において現在の走行道路の次に走行すべき道路に進入可能な走行道路の車線を推奨車線として特定する。
【0022】
推奨車線案内部21cは、基準車線を基準とした推奨車線の位置を案内させる機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、推奨車線案内部21cの機能により制御部20は、基準車線から起算して推奨車線まで数えた車線数を案内車線数として特定し、当該案内車線数を用いて推奨車線の位置を案内させる。具体的に制御部20は、案内車線数を案内メッセージの一部に含む音声信号をユーザI/F部44に出力し、当該音声信号に基づく案内メッセージをユーザI/F部44に出力させる。例えば『道路の左端(右端)の車線から"案内車線数"目の車線を走行することをお奨めします。』という案内メッセージを出力させる。
【0023】
以上の構成において、制御部20は道路の両端にそれぞれ存在する第1車線と第2車線とのうち認識容易度が高い方を基準車線として特定するため、認識容易度が高い方を基準とした推奨車線の位置を案内させることができる。従って、運転者に推奨車線を容易に認識させることができる。
【0024】
ここで、第1車線と第2車線とのうち第2車線のみがバス専用車線となる形状を走行道路が有する場合に、バス専用車線である第2車線よりもバス専用車線でない第1車線の方が走行道路の端の車線であることの認識容易度は高くなる。第2車線がバス専用車線である場合、運転者は、バス専用車線である第2車線を走行道路の端の車線であると捉えるべきか、バス専用車線である第2車線の内側に隣接する車線を走行道路の端の車線であると捉えるべきかが明確に判断できなくなるからである。従って、制御部20は、第1車線がバス専用車線とならず、第2車線がバス専用車線となる場合に、第1車線の認識容易度が第2車線の認識容易度よりも高いとして、第1車線を基準車線として特定している。
【0025】
また、第1車線と第2車線とのうち第2車線のみが中央分離帯を介することなく他の道路と隣接する形状を走行道路が有する場合に、第1車線の認識容易度は第2車線の認識容易度よりも高くなる。第2車線が中央分離帯を介することなく他の道路と隣接する場合、第2車線が走行道路に含まれる車線であるのか他の道路に含まれる車線であるのかが明確に判断できなくなり、第2車線が走行道路の端の車線であることが明確に認識できなくなる。これに対して、第1車線が他の道路と隣接しない場合や、第1車線が他の道路と中央分離帯を介して隣接する場合には、第1車線が走行車線の端の車線であることは明確に認識できるため、第1車線の認識容易度は第2車線の認識容易度よりも高くなる。従って、制御部20は、第1車線と第2車線とのうち第2車線のみが中央分離帯を介することなく他の道路と隣接する場合に、第1車線の認識容易度が第2車線の認識容易度よりも高いとして、第1車線を基準車線として特定している。
【0026】
さらに、第1車線が車両の前方のカーブの最外側車線となり、第2車線がカーブの最内側車線となる形状を走行道路が有する場合に、第1車線の認識容易度が第2車線の認識容易度よりも高くなる。前方のカーブの最外側の第1車線は、最内側の第2車線よりも車両の前方正面に近い位置に視認でき、車両のフロントガラスの側方に備えられたピラーに隠れる可能性が低いからである。従って、制御部20は、第1車線が車両の前方のカーブの最外側車線となり、第2車線がカーブの最内側車線となる場合に、第1車線を基準車線として特定している。
【0027】
(2)車線案内処理:
次に、車線案内プログラム21の機能により実行される車線案内処理を説明する。図2は車線案内処理のフローチャートである。図3A,3B,3Cは、車両Vが走行する道路を示す模式図である。図2の車線案内処理は、例えば車両Vが走行予定経路上の交差点に対して所定距離以内に接近した場合に実行される。図2のステップS100において制御部20は、走行道路Xについての車線情報LD3を取得し、車線情報LD3に基づいて走行道路Xの全車線数を取得する。ステップS105において、制御部20は、走行道路Xの全車線数が4車線以上であるか否かを判定する。
【0028】
走行道路Xの全車線数が4車線以上である場合、ステップS110において制御部20は推奨車線特定部21bの機能により推奨車線Eを特定し、さらに制御部20は基準車線特定部21aの機能により当該推奨車線Eが走行道路Xの左端の車線Lと右端の車線R以外であるか否かを判定する。図3A,3B,3Cの例ではそれぞれ目的地Gに到達するための推奨車線Eとして左端から2,3,3番目の車線が特定されている。推奨車線Eが走行道路Xの左端の車線Lと右端の車線R以外である場合、ステップS115において基準車線特定部21aの機能により制御部20は、車線情報LD3に基づいて左端の車線Lと右端の車線Rとの一方のみがバス専用車線となる形状を走行道路Xが有するか否かを判定する。なお、制御部20は、車両Vの前方の所定範囲Wの区間において走行道路Xの両端に存在する車線をそれぞれ左端の車線Lと右端の車線Rと特定することとする。所定範囲Wは、車両Vの現在位置から前方に所定距離以内となる範囲である。例えば、所定範囲Wは、通常の運転者が車両Vを運転中に走行道路Xの前方を認識する範囲に対応する。
【0029】
左端の車線Lと右端の車線Rとの一方のみがバス専用車線となる形状を走行道路Xが有すると判定した場合、ステップS120において基準車線特定部21aの機能により制御部20は、左端の車線Lと右端の車線Rとのうちバス専用車線でない方の車線を基準車線Sと特定する。図3Aの例では、左端の車線L(第2車線)のみがバス専用車線Bとなっているため、バス専用車線Bでない右側の車線R(第1車線)を基準車線Sと特定する。すなわち、制御部20は、左端の車線Lが端の車線であることの認識容易度よりも、右端の車線Rが端の車線であることの認識容易度が高いとして、右端の車線Rを基準車線Sと特定する。
【0030】
ステップS115にて左端の車線Lと右端の車線Rとの一方のみがバス専用車線となる形状を走行道路Xが有すると判定しなかった場合、ステップS125において基準車線特定部21aの機能により制御部20は、左端の車線Lと右端の車線Rとの一方のみが対向道路Yと中央分離帯を介することなく隣接する形状を走行道路Xが有するか否かを判定する。そして、左端の車線Lと右端の車線Rとの一方のみが対向道路Yと中央分離帯を介することなく隣接する形状を走行道路Xが有する場合、ステップS130において基準車線特定部21aの機能により制御部20は、走行道路Xの左端の車線Lと右端の車線Rとのうち、対向道路Yと中央分離帯を介することなく隣接する車線とは反対側の車線を基準車線Sと特定する。図3Bの例では、右端の車線R(第2車線)のみが対向道路Yと中央分離帯を介することなく隣接しているため、車線Rの反対側の車線L(第1車線)が基準車線Sと特定される。すなわち、制御部20は、右端の車線Rが端の車線であることの認識容易度よりも、左端の車線Lが端の車線であることの認識容易度が高いとして、左端の車線Lを基準車線Sと特定する。
【0031】
ステップS125にて左端の車線Lと右端の車線Rとの一方のみが対向道路Yと中央分離帯を介することなく隣接する形状を走行道路Xが有すると判定しなかった場合、ステップS135において基準車線特定部21aの機能により制御部20は、走行道路Xにおける車両Vの前方にカーブが存在するか否かを判定する。具体的に制御部20は、形状補間点情報LD1に基づいて、走行道路Xにおける車両Vの前方の所定範囲Wの少なくとも一部において曲率半径が所定半径(例えば150m)以下となっているカーブ区間が存在するか否かを判定し、当該カーブ区間が存在する場合に車両Vの前方にカーブが存在すると判定する。車両Vの前方にカーブが存在すると判定した場合、ステップS140において基準車線特定部21aの機能により制御部20は、左端の車線Lと右端の車線Rとのうちカーブの最外側車線である方を基準車線Sと特定する。図3Cの例では、走行道路Xが所定範囲Wにおいて右方向にカーブしており、最外側車線である左端の車線L(第1車線)が基準車線Sと特定される。すなわち、制御部20は、右端の車線Rの認識容易度よりも、左端の車線Lの認識容易度が高いとして、左端の車線Lを基準車線Sと特定する。
【0032】
ステップS135において走行道路Xにおける車両Vの前方にカーブが存在すると判定しなかった場合、ステップS145において基準車線特定部21aの機能により制御部20は、左端の車線Lと右端の車線Rとのうち推奨車線Eに近い方を基準車線Sと特定する。推奨車線Eに近いとは、基準車線Sと推奨車線Eとの間に存在する他の車線の数が少ないこと意味する。また、ステップS105において走行道路Xの全車線数が4車線よりも少ないと判定された場合も、ステップS145にて左端の車線Lと右端の車線Rとのうち推奨車線Eに近い方を基準車線Sと特定する。また、ステップS110において推奨車線Eが左端の車線Lと右端の車線Rのいずれであると判定された場合も、ステップS145にて左端の車線Lと右端の車線Rとのうち推奨車線Eに近い方を基準車線Sと特定する。この場合は、推奨車線Eと基準車線Sとが一致する。
【0033】
以上のようにして、ステップS120,S130,S140,S145のいずれかにおいて基準車線Sを特定すると、ステップS150において推奨車線案内部21cの機能により制御部20は、基準車線Sから起算して推奨車線Eまで数えた車線数を案内車線数として特定し、当該案内車線数を用いて推奨車線の位置を案内させる。すなわち、制御部20は、案内車線数を案内メッセージの一部に含む音声信号をユーザI/F部44に出力し、当該音声信号に基づく案内メッセージをユーザI/F部44に出力させる。図3Aの場合『道路の右端の車線から3番目の車線を走行することをお奨めします。』という案内メッセージを出力させる。図3Aの場合、左端の車線Lの方が右端の車線Lよりも推奨車線Eに近いが、バス専用車線Bである車線Lを走行道路Xの端と捉えるべきか迷わなくても、右端の車線Rを基準として容易に推奨車線Eを認識できる。図3Bの場合『道路の左端の車線から3番目の車線を走行することをお奨めします。』という案内メッセージを出力させる。図3Bの場合、右端の車線Rの方が左端の車線Lよりも推奨車線Eに近いが、車線Rが走行道路Xに属するか対向道路Yに属するかを判断せずとも、左端の車線Lを基準として容易に推奨車線Eを認識できる。図3Cの場合『道路の左端の車線から3番目の車線を走行することをお奨めします。』という案内メッセージを出力させる。図3Cの場合、右端の車線Rの方が左端の車線Lよりも推奨車線Eに近いが、車両Vの前方の正面近くに視認される左端の車線Lを基準として容易に推奨車線Eを認識できる。
【0034】
ところで、ステップS115がステップS125,S135に先行するため、図3Bの走行道路Xの左端の車線Lが仮にバス専用車線Bであった場合、走行道路Xと対向道路Yとの間における中央分離帯の有無に拘わらず、対向道路Y側の車線Rが基準車線Sとされる。同様に図3Cの走行道路Xの左端の車線Lが仮にバス専用車線Bであった場合も、前方のカーブの方向に拘わらず右端の車線Rが基準車線Sとされる。ここで、バス専用車線Bである左端の車線Lを走行道路Xの端と捉えるべきか否かは、ナビゲーション装置10の仕様を説明書等により確認しない限り明確に判断できない。これに対して、図3Bの車線Rが走行道路Xの端の車線であるか否かは、右端の車線Rおいて車両Vと同一方向に走行する他の車両と、対向道路Yの車線のうち右端の車線Rに最も近い対向車線Kにおいて車両Vと反対方向に走行する他の車両との双方を確認すれば判断できる。また、図3Cの右端の車線Rが端の車線であるか否かは、車両Vがカーブに接近すれば認識できるようになる。すなわち、バス専用車線Bである左端の車線Lを基準車線Sとすることを最優先させて回避することにより、車両Vや他の車両の走行状況によって認識可能となる見込みのない車線を基準車線Sとすることを最優先して防止できる。
【0035】
さらに、ステップS125がステップS135に先行するため、図3Bの走行道路Xが仮に左方向にカーブしていたとしても、カーブの最内側車線となる左端の車線Lが基準車線Sとされる。図3Bの車線Rが走行道路Xの端の車線であるか否かは、車線Rおいて車両Vと同一方向に走行する他の車両と、対向道路Yの対向車線Kにおいて車両Vと反対方向に走行する他の車両との双方を確認しない限り判断できないが、カーブの最内側車線が端の車線であることは車両Vがカーブに接近すれば認識できる。すなわち、中央分離帯を介することなく対向道路Yと隣接する車線Rを基準車線Sとすることを優先させて回避することにより、車両Vや他の車両の走行状況によって認識できない可能性のある車線を基準車線Sとすることを優先して防止できる。
【0036】
また、ステップS145にて左端の車線Lと右端の車線Rとのうち推奨車線Eに近い方を基準車線Sと特定することにより、案内車線数を少なくすることができ、基準車線Sから推奨車線Eまで車線をカウントする回数を抑制できる。従って、運転者に推奨車線Eを容易に認識させることができる。ステップS110,S145により、左端の車線Lと右端の車線Rのいずれかと推奨車線Eとが一致する場合、左端の車線Lと右端の車線Rとのうち推奨車線Eに近い方、すなわち推奨車線Eそのものを基準車線Sとして推奨車線Eの位置が案内されることとなる。例えば、『道路の左端(右端)の車線を走行することをお奨めします。』という案内メッセージが出力される。このように、左端の車線Lと右端の車線Rのいずれかと推奨車線Eとが一致する場合、運転者は車線数を数えずに済むため、左端の車線Lと右端の車線Rの認識容易度に拘わらず推奨車線Eに近い方を基準車線Sとすることとする。
【0037】
なお、走行道路Xの全車線数が1〜2車線である場合、必ず左端の車線Lと右端の車線Rのいずれかと推奨車線Eとが一致することとなる。従って、走行道路Xの全車線数が1〜2車線である場合、推奨車線Eそのものを基準車線Sとして推奨車線Eの位置が案内されることとなる。なお、走行道路Xの全車線数が1車線である場合、そもそも推奨車線Eを特定・案内する意義がないため、車線案内処理を中止してもよい。走行道路Xの全車線数が3車線である場合、左端の車線Lと右端の車線Rのいずれかと推奨車線Eとが一致する場合と、推奨車線Eが中央の車線となる場合のみが生じ得る。左端の車線Lと右端の車線Rのいずれかと推奨車線Eとが一致する場合には、上述と同様に『道路の左端(右端)の車線を走行することをお奨めします。』という案内メッセージを出力される。走行道路Xの全車線数が3車線である場合には、端以外の車線は中央の車線に一義的に定まるため、走行道路Xの全車線数が3車線で推奨車線Eが中央の車線となる場合には、例外として『道路の中央の車線を走行することをお奨めします。』という案内メッセージが出力させればよい。
【0038】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、以下の実施形態も採用し得る。例えば、図2の車線案内処理において必ずしもステップS115〜S120の組と、ステップS125〜S130の組と、ステップS135〜S140の組とのすべてを実行可能な構成とせず、これらのうち1組または2組のみを実行するようにしてもよい。この場合でも、ステップS115〜S120の組と、ステップS125〜S130の組と、ステップS135〜S140の組とのいずれも実行しない場合よりも、運転者に推奨車線Eを容易に認識させることができる。また、ステップS115〜S120の組と、ステップS125〜S130の組と、ステップS135〜S140の組とのうち2組以上する実行する場合の実行順序は、図2の順序に限られない。例えば、交通量が多い走行道路Xと対向道路Yについては、中央分離帯がなくても対向道路Yと隣接する左端の車線Lと右端の車線Rを確実に認識できるため、ステップS135〜S140の組をステップS125〜S130の組に先行させてもよい。
【0039】
制御部20は、推奨車線Eの案内を行う際に、予め道路の形状に基づく認識容易度に基づいて特定された基準車線Sを道路ごとに規定したデータベースを参照して基準車線Sを特定してもよい。さらに、特定車両はバスに限らず、トラックや二輪車等の他の車両種別に属する車両であってもよいし、故障車等の特定の状態の車両であってよい。すなわち、専用車線は、故障車待避車線等であってもよい。なた、中央分離帯とは、走行道路Xと対向道路Yとが隣接する場合に、これらを隔てる所定の構造物であってもよいし、これらを隔てる所定幅以上の領域であってもよい。さらに、ステップS125において制御部20は、走行道路Xの左端の車線Lと右端の車線Rとのうち、対向道路Yと中央分離帯以外の境界地物(例えばガードレールや道路灯や道路標識や植栽等)を介することなく隣接する車線とは反対側の車線を基準車線Sと特定してもよい。また、境界地物は、所定の大きさ(高さや幅)を有する構造物であってもよいし、所定の色を有する(道路とは所定量以上異なる色相や彩度や明度を有する)構造物であってもよい。さらに、境界地物は、構造物でなくてもよく、道路同士の境界に設けられる所定幅以上の領域であってもよい。
【0040】
推奨車線特定部21bの機能により制御部20は、車両が走行すべき推奨車線Eを特定すればよく、推奨車線Eは種々の観点に基づいて推奨され得る。例えば、推奨車線特定部21bの機能により制御部20は、渋滞や障害物の有無等の車線ごと交通状況に基づいて車両がスムーズに走行できる車線を推奨車線Eとして特定してもよい。推奨車線案内部21cの機能により制御部20は、画像によって推奨車線Eの位置を案内させてもよいし、画像と音声との双方によって推奨車線の位置を案内させてもよい。例えば、図3A〜3Cに示すように基準車線Sからの車線のカウントを模式的に示す矢印を表示させたり、白丸内に示すように案内車線数を示す数字を表示させてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…車線案内プログラム、21a…基準車線特定部、21b…推奨車線特定部、21c…推奨車線案内部、30…記録媒体、30a…地図情報、41…受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…ユーザI/F部、B…バス専用車線、G…目的地、K…対向車線、LD…リンクデータ、LD1…形状補間点情報、LD2…地物情報、LD3…車線情報、E…推奨車線、S…基準車線、V…車両、W…所定範囲、X…走行道路、Y…対向道路。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車線を含む走行道路において車両の走行方向側方の端にそれぞれ存在する第1車線と第2車線とのうち、前記走行道路の形状に基づく認識容易度が高い方を基準車線として特定する基準車線特定手段と、
前記複数の車線のなかから前記車両が走行すべき推奨車線を特定する推奨車線特定手段と、
前記基準車線を基準とした前記推奨車線の位置を案内する推奨車線案内手段と、
を備える車線案内装置。
【請求項2】
前記基準車線特定手段は、前記第1車線と前記第2車線とのうち前記第2車線のみが特定車両の専用車線となる形状を前記走行道路が有する場合に、前記第1車線を前記基準車線とする、
請求項1に記載の車線案内装置。
【請求項3】
前記基準車線特定手段は、前記第1車線と前記第2車線とのうち前記第2車線のみが道路同士の境界をなす境界地物を介することなく他の道路と隣接する形状を前記走行道路が有する場合に、前記第1車線を前記基準車線とする、
請求項1に記載の車線案内装置。
【請求項4】
前記基準車線特定手段は、前記第1車線が前記車両の前方のカーブの最外側車線となり、前記第2車線が前記カーブの最内側車線となる形状を前記走行道路が有する場合に、前記第1車線を前記基準車線とする、
請求項1に記載の車線案内装置。
【請求項5】
複数の車線を含む走行道路において車両の走行方向側方の端にそれぞれ存在する第1車線と第2車線とのうち、前記走行道路の形状に基づく認識容易度が高い方を基準車線として特定する基準車線特定工程と、
前記複数の車線のなかから前記車両が走行すべき推奨車線を特定する推奨車線特定工程と、
前記基準車線を基準とした前記推奨車線の位置を案内する推奨車線案内工程と、
を含む車線案内方法。
【請求項6】
複数の車線を含む走行道路において車両の走行方向側方の端にそれぞれ存在する第1車線と第2車線とのうち、前記走行道路の形状に基づく認識容易度が高い方を基準車線として特定する基準車線特定機能と、
前記複数の車線のなかから前記車両が走行すべき推奨車線を特定する推奨車線特定機能と、
前記基準車線を基準とした前記推奨車線の位置を案内する推奨車線案内機能と、
をコンピュータに実行させる車線案内プログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−168144(P2012−168144A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31630(P2011−31630)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】