説明

車線逸脱検出装置

【課題】車両の走行状態を短時間で適切に判断することができる車線逸脱検出装置車線逸脱検出装置を提供する。
【解決手段】車両Aに搭載された、車両A前方を撮影する撮影手段10と、撮影手段10によって撮影された画像Pに基づいて車両Aの走行状態を検出する走行状態検出手段20と、を備えており、撮影手段10は、車両Aの前端部および車両Aが走行する車道Rが同一画像P内に撮影されるように配設されており、走行状態検出手段20は、撮影手段10によって撮影された画像Pにおいて、車両Aの前端部直前の車道Rと平行な短冊状領域を検出領域DAとして設定する検出領域設定部21と、検出領域DA内に位置する、走行車線TLを区切る標示線LMを検出する標示線検出部22と、標示線LMの存在位置と検出領域DAに設定された複数の判断領域SA,BAとに基づいて、車両Aの走行状態を判断する走行判断部23を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車線逸脱検出装置に関する。さらに詳しくは、車載されたカメラ等の撮影手段によって撮影された車両前方画像に基づいて、車両の走行状態を検出し、車両が走行車線から逸脱することを防止する車線逸脱検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の不注意や居眠りなどによって車両が蛇行したり車両が走行車線から逸脱したりすると、事故を引き起こす可能性が高くなる。とくに、車両が走行車線を逸脱して反対車線まで飛び出した場合や歩道側に突っ込んだ場合には、重大な事故を引き起こす可能性が高くなる。かかる事故を防ぐ上では、車両が走行車線内を走行しているか否か、また、走行車線に沿って走行しているか否か、を検出することが非常に重要である。
【0003】
車両が走行車線内を走行しているか否か、また、走行車線に沿って走行しているか否か(以下、まとめて車両の走行状態という)を、検出する方法として、画像を利用する技術が多数開発されている(例えば、特許文献1〜6)。
かかる技術は、カメラ等の撮影手段を車両に搭載しておき、この撮影手段によって撮影された車両前方画像から、カメラを搭載している車両および標示線(センターラインやサイドライン等)を検出し、車両と標示線との相対的な位置を算出して、車両の走行状態を判断するものである。
【0004】
例えば、特許文献1〜4では、画像に基づいて標示線と車両の距離を算出し、この距離に基づいて車両の走行状態を判断する技術が開示されている。例えば、車両の基準位置から標示線までの距離が一定の距離以下となった場合には、走行車線を逸脱する可能性があると判断し、運転者に警告を発する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献5、6では、画像に基づいて標示線を検出し、検出された標示線に対する車両の姿勢を求めて、この車両の姿勢に基づいて車両の走行状態を判断する技術が開示されている。例えば、車両の走行方向と標示線の傾きとの差に基づいて走行車線を逸脱する可能性を判断する技術が開示されている。
【0006】
しかるに、従来の技術は、撮影された車両前方画像から標示線を検出して標示線の全体像を抽出し、その後、標示線と車両の距離、または、標示線の延びる方向に対する車両の向き等を算出して、車両の走行状態を判断しているため、車両の走行状態を判断するまでに時間を要している。
とくに、標示線の全体像を抽出する場合には、車道上に存在する他の車両や、電柱やガードレールなどのように車道の側方に存在する物体を標示線と誤認しないようにする必要があり、かかる誤認防止のために画像処理に時間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−341599号公報
【特許文献2】特開2010−167932号公報
【特許文献3】特開2010−173367号公報
【特許文献4】WO2008/114382号公報
【特許文献5】特開平6−162398号公報
【特許文献6】特開2002−211428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、車両の走行状態を短時間で適切に判断することができる車線逸脱検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の車線逸脱検出装置は、車両に搭載された、該車両前方を撮影する撮影手段と、該撮影手段によって撮影された画像に基づいて該車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備えており、前記撮影手段は、前記車両の前端部および該車両が走行する車道が同一画像内に撮影されるように配設されており、前記走行状態検出手段は、該撮影手段によって撮影された画像において、前記車両の前端部直前の前記車道と平行な短冊状領域を検出領域として設定する検出領域設定部と、前記検出領域内に位置する、走行車線を区切る標示線を検出する標示線検出部と、前記検出領域に複数の判断領域を設定して、該複数の判断領域と前記標示線の相対的な位置に基づいて、前記車両の走行状態を判断する走行判断部を備えていることを特徴とする。
第2発明の車線逸脱検出装置は、第1発明において、前記検出領域設定部は、前記撮影手段によって撮影された画像において、前記検出領域の高さが該画像中の前記車両が走行方向に沿った方向における前記標示線の長さよりも短くなるように前記検出領域を設定するものであることを特徴とする。
第3発明の車線逸脱検出装置は、第1または第2発明において、前記走行判断部は、異なるタイミングで撮影された複数枚の画像を比較して、前記標示線が存在する前記判断領域の変化に基づいて車両の走行状態を判断する機能を備えていることを特徴とする。
第4発明の車線逸脱検出装置は、第1、第2または第3発明において、前記検出領域設定部は、前記検出領域に、前記車両の車幅方向における中心に対して左右対称な位置に配設された一対の安定走行領域を形成するようになっており、該一対の安定走行領域は、前記走行車線の両側に前記標示線が標示されている前記走行車線を前記車両がその中心軸と該走行車線の中心軸とが一致するように走行している状態において、前記一対の標示線がいずれも前記一対の安定走行領域内に位置するように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、検出領域設定部が設定した短冊状の検出領域内の標示線を検出するだけであり、また、走行判断部は検出領域に複数の判断領域を設定してどの判断領域に標示線が存在するかを判断するだけである。したがって、標示線の検出するための処理および走行状態の判断処理を短時間で行うことができるから、車両の走行状態を短時間で判断することができる。しかも、車両の前端部直前領域を検出領域として設定しているので、領域中に存在する標示線以外のものが検出領域内に存在する可能性を低くできる。したがって、標示線の検出ミスを少なくすることができるので、車両の走行状態を精度よく検出することができる。
第2発明によれば、標示線検出部による標示線の検出が容易になるので、標示線を検出するための処理を短時間で行うことができる。
第3発明によれば、走行車線の幅方向に沿った車両の移動状況を判断することができるので、車両の走行状態をより正確に検出することができる。
第4発明によれば、走行車線の両側に標示線が標示されている道路において、走行車線のセンターに対する走行車線の幅方向への車両の移動を精密に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の車線逸脱検出装置1の概略説明図であって、(A)は車両Aへの搭載状況を説明した図であり、(B)は車線逸脱検出装置1のブロック図である。
【図2】(A)撮影手段10によって撮影された画像Pの概略説明図であり、(B)は画像Pから切りだされた検査領域画像DA1の概略説明図であり、(C)は標示線LMが撮影されている検査領域画像DA1の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の車線逸脱検出装置は、車両に搭載された撮影手段によって撮影された画像に基づいて車両の走行状態、具体的には、車両が走行車線を逸脱する可能性があるか否を検出する装置であり、車道に標示されている標示線と車両との相対的な位置関係に基づいて車両が走行車線を逸脱する可能性を検出するものである。
なお、本明細書において、標示線とは、車道において、走行車線を区切る線のことである。例えば、センターラインやサイドライン(車道外側線)が標示線に該当し、線の色(白色か黄色か)や線の形態(連続線か破断線か)などはとくに限定されない。
【0013】
(本実施形態の車線逸脱検出装置1の説明)
図1に示すように、本実施形態の車線逸脱検出装置1は、撮影手段10と、走行状態検出手段20とを備えたものであり、車線逸脱を検出する対象となる車両Aに搭載されている。
【0014】
(撮影手段10)
図1に示すように、撮影手段10は、例えば、CCDカメラ等の画像を撮影し、外部に撮影した画像のデータ(画像データおよび撮影タイミング等)を送信することができるものである。この撮影手段10は、車両A前方の車道Rの状況が撮影できる位置に配設されている。例えば、車両のフロントウインドウを通して車両A前方の車道Rを測定することができるように、バックミラーの近傍に配設することができるが、車両A前方の車道Rを測定できる位置であれば、車両Aにおいて撮影手段10を配設する位置はとくに限定されない。
【0015】
また、図1に示すように、撮影手段10は、少なくとも車道Rの路面と車両Aの前端部の両方が同一画像P中に撮影されるように配設されている(図2(A)参照)。例えば、図1(A)に示すように、車道Rと平行な平行線をHLとすると、撮影手段10を、その光軸CAが平行線HLに対して下方に傾いた状態となるように配設し、しかも、その画角VA内に平行線HLと車両Aの前端部が位置するように配設すれば、両方を同一画像P中に撮影することができる。
さらに、撮影手段10は、平坦な車道R上に車両Aを配置したときに、撮影される画像Pの横方向が車道Rと平行となるように配設されるが、その理由は後述する。
【0016】
(走行状態検出手段20)
走行状態検出手段20は、撮影手段10によって撮影された画像Pに基づいて車両Aの走行状態を検出する機能を有するものである。この走行状態検出手段20は、検査領域設定部21と、標示線検出部22と、走行判断部23と、記憶部25とを備えている。
【0017】
なお、走行状態検出手段20は、例えば、コンピュータなどの制御装置であり、以下の検査領域設定部21、標示線検出部22、走行判断部23の機能を実行することができるものである。また、記憶部25は、例えば、ハードディスクやメモリなどの画像Pや、後述する検査領域画像DA1および標示線情報等を記憶しておくことができるものである。
また、走行状態検出手段20は、撮影手段10の作動(例えば、画像Pを撮影するタイミング等)を制御する制御機能を有していてもよい。
【0018】
(検査領域設定部21)
検査領域設定部21は、撮影手段10から送信される画像Pのデータを受信し、この画像Pのデータに基づいて、標示線LMを検出する領域(検出領域DA)を設定する機能を有するものである。検査領域設定部21によって設定される検出領域DAは、画像P内における車両Aの前端部直前に位置する車道Rと平行な横長の短冊状領域である。
また、検査領域設定部21は、画像Pから検出領域DA内の画像を切り出して、検査領域画像DA1(図2(C)参照)とする機能を有している。つまり、画像Pからその一部を横長の短冊状の画像として切り出す機能を有している。
しかも、検査領域設定部21は、検査領域画像DA1を、撮影手段10から送信された画像のデータとともに、標示線検出部22および記憶部25に送信する機能も有している。
【0019】
(検出領域DAの設定)
上述した検出領域DAは、検査領域設定部21によって画像Pの特定の位置に設定される。つまり、どの画像Pにおいても、同じ位置に検出領域DAを設定する。
例えば、平坦な車道R上に車両Aを配置した状態で撮影された設定用画像Pにおいて、車両Aの前端部から所定の距離だけ離れた位置に、横長短冊状であって車道Rと平行な指定領域を設定し、この指定領域の位置(例えば領域の四隅の座標)を検査領域設定部21に記憶させておく。すると、どの画像Pにおいても、指定領域と同じ位置に検出領域DAを設定することができる。
【0020】
設定される検出領域DAの幅(図2では左右方向)はとくに限定されない。例えば、検出領域DAを、その幅が設定用画像Pに撮影されている車両Aの前端部の幅とほぼ同じ長さとなるように設定することができる。また、実際の車両Aの前端部の幅を基準として検出領域DAの幅を設定してもよい。
【0021】
設定される検出領域DAの高さもとくに限定されないが、標示線LMの長さよりも短く、車線Rがカーブしていても検出領域DA内では標示線LMがほぼ直線として見なせる程度の長さであることが好ましい。例えば、設定用画像Pにおける検出領域DA内において、標示線LMの幅が約150〜200mmに撮影される場合であれば、検出領域DAの高さを150〜200mm程度とすれば、検出領域DA内では標示線LMがほぼ直線の状態になる。つまり、検出領域DAは、その高さその内部に位置する標示線LMの幅とほぼ同じになるようにする。すると、標示線検出部22において標示線LMを検出が容易になるし、その検出精度も高くすることができる。なぜなら、検出領域DA内に標示線LMが存在した場合において、標示線LMの領域が取りうる幅の範囲を小さくできるからである。
【0022】
なお、検査領域設定部21は、撮影された各画像Pに基づいて、各画像Pでそれぞれ検出領域DAを設定するようにしてもよい。この場合には、車道Rが傾斜している場合であっても、検出領域DAを適切に設定することができる。
例えば、画像Pから車両Aの前端部および道Rの表面と平行な方向を求め、車両Aの前端部から所定の距離だけ離れた位置に、軸方向が車道Rの表面と平行となるように、検出領域DAを設定してもよい。この場合、検出領域DAの幅および高さは予め定められた長さとしてもよいが、車両Aの挙動に応じて画像P毎に変更するようにしてもよい。例えば、画像Pから得られる車両Aの前端部の幅と同程度となるように検出領域DAの幅を設定したり、検出領域DAの高さを予め定められている高さから車両の傾きに応じて変更したりするようにしてもよい。
【0023】
(標示線検出部22)
標示線検出部22は、検査領域設定部21から送信される検査領域画像DA1のデータを受信し、この検査領域画像DA1のデータから標示線LMを検出する機能を有するものである。
また、標示線検出部22は、検出された標示線LMの検査領域画像DA1内における位置、具体的には、検査領域画像DA1の中心CLからどの程度離れた位置に標示線LMが存在するかを算出して、標示線LMの存在位置に関する情報(中心CLから標示線LMまでの距離等)を走行判断部23および記憶部25に送信する機能も有している。
【0024】
この標示線検出部22では、以下の方法によって標示線LMを検出する。
まず、標示線LMは、通常、車道Rの路面よりも輝度が高く撮影されるので、検査領域画像DA1において、輝度の高い部分を標示線LMである可能性が高い領域とする。
ついで、図2(C)に示すように、標示線LMである可能性が高いと判断された領域について、その領域が検査領域画像DA1の上端から下端まで連続する領域であるか否かを判断する。そして、上端から下端まで連続すると判断された領域について、その幅を算出し、その幅が所定の範囲内である領域を標示線LMであると判断する。
かかる方法を採用すれば、検査領域画像DA1において、所定の値以上の輝度を有する領域を検出し、その領域が上端から下端まで連続するか否か、また、その幅が所定の範囲内であるか否かを判断するだけであるから、迅速かつ簡単な処理で標示線LMを検出することができる。
【0025】
そして、標示線検出部22は、ある領域が標示線LMと判断されると、その領域から検査領域画像DA1の中心CLまでの距離を算出する。例えば、検査領域画像DA1において、中心CLに最も近い位置から中心CLまでの距離MLを算出し、この距離に関する情報を走行判断部23および記憶部25に送信する。
以下では、標示線LMと判断された領域から検査領域画像DA1の中心CLまでの距離に関する情報を、標示線情報という。
【0026】
なお、上記例では、検査領域画像DA1において輝度は高い部分を標示線LMである可能性が高い領域と判断するようにしたが、検査領域画像DA1から標示線LMである可能性が高い領域を抽出する方法はとくに限定されない。例えば、撮影手段10として、カラー画像を撮影することができるものを採用した場合には、標示線LMの色(例えば、白色または黄色)である領域を標示線LMである可能性が高い領域と判断するようにしてもよい。
【0027】
また、標示線LMであると判断する領域の幅は、設定用画像Pにおいて撮影された標示線LMの幅Wを基準として設定することができる。例えば、走行車線TLが平均的な幅(例えば3.5m程度)を有する平坦な車道R上に、車道Rと直交する同一面内に車両Aの中心軸と走行車線TLの中心軸が位置するように車両Aを配置する。そして、その状態で撮影された設定用画像Pにおいて得られる指定領域内の標示線LMの幅に対して、±50%程度に設定することができる。
【0028】
(走行判断部23)
走行判断部23は、検査領域画像DA1に複数の判断領域を設定して、標示線検出部22によって検出された標示線LMがどの判断領域に存在しているかを判断する標示線位置検出機能を有している。
また、走行判断部23は、標示線位置検出機能によって検出された標示線LMの存在する領域に基づいて、車両Aの走行状態を判断する走行判断機能を有している。
なお、走行判断部23は、運転者に警告を発する警報手段30に接続されており、車両Aの走行状態に応じて警報手段30を作動させる信号を発信する機能を有している。警報手段30は、例えば、走行判断部23からの信号を受信すると、ブザーを鳴らしたりインジケータを点滅させたりする機能を有する装置を採用することができる。
【0029】
(標示線位置検出機能)
走行判断部23は、検査領域画像DA1に複数の判断領域を設定する機能を有している。具体的には、検査領域画像DA1を、その中心CLを挟んで線対照となるように、複数の判断領域JAを設定する。判断領域JAは、検査領域画像DA1の中心CLを挟んで片側に以下の3つの領域を設定する。
まず、車両Aが走行車線TLの中心に沿って移動している状況において、標示線LMが位置すると考えられる領域に、安定走行領域SAが設定される。この安定走行領域SAは、所定の幅に設定される。例えば、安定走行領域SAの幅は、走行車線TLの中心から±0.5m以下の範囲で走行車線TLの幅方向に車両Aが移動しても、標示線LMの全体が安定走行領域SA内に位置するように設定される。この場合、走行車線TLの両側に標示線LMが存在する場合には、車両Aが走行車線TLの中心に沿って移動している状況において上記範囲内で走行車線TLの幅方向に車両Aが移動しても、両方の標示線LMがいずれも安定走行領域SA内に位置するように、安定走行領域SAを設定することが好ましい。
【0030】
安定走行領域SAと検査領域画像DA1の中心CLとの間には、危険領域BAが設定され、安定走行領域SAよりも外方には外側領域OAが設定される。この外側領域OAを設けるのは、車道Rから車両Aが左右に(言い換えれば歩道側または対向車線に)はみ出したことをより確実に検出するためである。例えば、外側領域OAに走行車線TLが入った場合に、後述する警報手段30から、走行車線TLが危険領域BAに入った状態よりもより危険な状況にあることを運転者に知らせるようにすれば、より安全性を高めることができる。
【0031】
走行判断部23は、標示線検出部22から送信される標示線情報に基づいて、標示線LMと想定される領域が、判断領域JAのどの領域に位置するかを判断する機能も有している。具体的には、安定走行領域SAと検査領域画像DA1の中心CLまでの距離SLと、標示線LM情報に含まれる距離MLとを比較し、距離SL≧距離MLの場合には、標示線LMは安定走行領域SAに属していると判断し、距離SL<距離MLの場合には、標示線LMは危険領域BAに属していると判断する。
【0032】
(走行判断機能)
走行判断部23は、標示線LMがどの領域に属しているかが検出されると、この標示線LMの属している領域に基づいて、車両Aの走行状態を判断する。具体的には、標示線LMが安定走行領域SAに属している場合には、車両Aは安全に走行していると判断する。この場合には、走行判断部23は、警報手段30に対して信号を発信しないようになっている。
一方、標示線LMが危険領域BAに属している場合には、車両Aがどちらかの標示線LMに近づいており、対向車線へのハミ出しや歩道に突っ込む可能性があると判断する。この場合には、走行判断部23は、警報手段30に対して信号を発信するようになっている。
【0033】
本実施形態の車線逸脱検出装置1が以上のごとき構成であるので、撮影手段10によって撮影された画像Pに基づいて車両Aの走行状態を走行状態検出手段20によって検出することができる。したがって、車両Aの走行状態が危険な状態となった場合には、警報手段30によって危険な状態であることを運転者に知らせることができる。
【0034】
また、本実施形態の車線逸脱検出装置1では、走行状態判断の基準となる標示線LMが検出領域設定部21によって設定された短冊状の検出領域DA内に標示線LMが存在するか否かを調べているだけである。しかも、標示線LMであるか否かは、標示線LMと考えられる領域の幅とその領域が検出領域DAの上端から下端まで連続しているか否かだけで判断できるから、標示線LMを検出するための処理を短時間で簡単に実行することができる。
そして、走行判断部23は、標示線LMが判断領域JAのどの領域に位置するかによって車両Aの走行状態を判断しているだけであるから、車両Aの走行状態を判断する処理も短時間で行うことができるから、
【0035】
さらに、検出領域DAとして、画像Pにおける車両Aの前端部直前の横長短冊状の領域を設定しているので、標示線LM以外のものが検出領域DA中に存在する可能性自体を低くできる。したがって、標示線LMの検出ミスを少なくすることができるので、車両Aの走行状態を判断する精度も高くすることができる。
【0036】
なお、上記例では、判断領域JAの各領域が、検査領域画像DA1の中心CL(つまり、検出領域DAの中心)に対して対照に設定されている場合を説明したが、判断領域JAの各領域は必ずしもこのように設定しなくてもよい。例えば、判断領域JAの各領域を、検査領域画像DA1の中心CLから標示線LMのセンターライン側だけ、または、検査領域画像DA1の中心CLから標示線LMのサイドライン側だけ、に設定してもよい。この場合でも、センターラインおよびサイドラインがどの領域に属しているかを検出すれば、車両Aの走行状態が危険な状態であるか否かを判断することができる。
【0037】
(判断領域の設定)
なお、上記判断領域の設定は、検出領域DAを設定用画像Pに基づいて行う場合には、設定用画像Pに基づいて設定すればよい。
また、検査領域設定部21が撮影された各画像Pに基づいて検出領域DAを設定するようになっている場合には、ある特定の画像(例えば設定用画像P)で各判断領域を設定したときにおける相対的な比率に応じて、設定された検出領域DAに各判断領域を設定するようにすることもできる。
【0038】
(走行判断の他の例)
上記例では、あるタイミングで撮影された画像Pだけに基づいて車両Aの走行状態を判断する場合を説明したが、車両Aの蛇行や車両Aの走行方向が突然変化したことを検出する上では、車両Aの挙動を連続して把握する方が好ましい。
そこで、異なるタイミングで撮影された複数枚の画像Pについて、各画像Pから得られる標示線LMが属する領域の情報に基づいて、車両Aの走行状態を判断してもよい。
【0039】
例えば、あるタイミングにおいて、標示線LMが安定走行領域SAに属していたが、所定の時間経過後は、標示線LMが危険領域BAに属し、その後再び標示線LMが安定走行領域SAに属しているような場合には、車両Aが蛇行していると推定される。このような蛇行運転が生じる場合には、運転者が居眠りをしている可能性もあるので、警報装置30を作動させて、運転者を起こすような音を鳴らすなどすれば、事故を未然に防ぐことができる。
【0040】
また、あるタイミングにおいて、標示線LMが安定走行領域SAに属していたが、所定の時間経過後は、危険領域BAに属しそのまま危険領域BAに位置している場合であれば、車両Aが走行車線TLに対して傾いて走行している可能性がある。このような場合には、運転者が脇見をしている可能性があるので、警報装置30を作動させて、運転者に注意を喚起するような光や音を発すれば、事故を未然に防ぐことができる。
【0041】
さらに、標示線LMが属する領域の情報に、標示線LMから検査領域画像DA1の中心CLまでの距離MLの情報が含まれている場合には、連続した画像Pから得られる距離MLに基づいて、その距離MLの変動速度を算出するようにしてもよい。この場合には、運転ミスが生じている可能性があるので、警報装置30を作動させて、運転者に注意を喚起するような光や音を発すれば、事故を未然に防ぐことができる。
なお、距離MLの変動速度が把握できる場合であれば、その変動速度から標示線LMが安定走行領域SAから危険領域BAに入るタイミングを推測することができる。したがって、距離MLの変動速度が把握できる場合には、標示線LMが安定走行領域SAから危険領域BAに入ると推定される時間の前(例えば0.5秒前)に警報装置30による警告を行うようにしておけば、より安全性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の車線逸脱検出装置は、車両に搭載され、車両の蛇行や走行車線逸脱などを検出する装置として適している。
【符号の説明】
【0043】
1 車線逸脱検出装置
10 撮影手段
20 走行状態検出手段
21 検出領域設定部
22 標示線検出部
23 走行判断部
DA 検出領域
JA 判断領域
SA 安定走行領域
BA 危険領域
LM 標示線
A 車両
P 画像
R 車道


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された、該車両前方を撮影する撮影手段と、
該撮影手段によって撮影された画像に基づいて該車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、を備えており、
前記撮影手段は、
前記車両の前端部および該車両が走行する車道が同一画像内に撮影されるように配設されており、
前記走行状態検出手段は、
該撮影手段によって撮影された画像において、前記車両の前端部直前の前記車道と平行な短冊状領域を検出領域として設定する検出領域設定部と、
前記検出領域内に位置する、走行車線を区切る標示線を検出する標示線検出部と、
前記検出領域に複数の判断領域を設定して、該複数の判断領域と前記標示線の相対的な位置に基づいて、前記車両の走行状態を判断する走行判断部を備えている
ことを特徴とする車線逸脱検出装置。
【請求項2】
前記検出領域設定部は、
前記撮影手段によって撮影された画像において、前記検出領域の高さが該画像中の前記車両が走行方向に沿った方向における前記標示線の長さよりも短くなるように前記検出領域を設定するものである
ことを特徴とする請求項1記載の車線逸脱検出装置。
【請求項3】
前記走行判断部は、
異なるタイミングで撮影された複数枚の画像を比較して、前記標示線が存在する前記判断領域の変化に基づいて車両の走行状態を判断する機能を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の車線逸脱検出装置。
【請求項4】
前記検出領域設定部は、
前記検出領域に、前記車両の車幅方向における中心に対して左右対称な位置に配設された一対の安定走行領域を形成するようになっており、
該一対の安定走行領域は、
前記走行車線の両側に前記標示線が標示されている前記走行車線を前記車両がその中心軸と該走行車線の中心軸とが一致するように走行している状態において、前記一対の標示線がいずれも前記一対の安定走行領域内に位置するように設定されている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の車線逸脱検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−112280(P2013−112280A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262391(P2011−262391)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(599016785)株式会社シーマイクロ (4)
【Fターム(参考)】