車群管理方法および隊列走行通信システム
【課題】双方向通信を利用して隊列走行を行う隊列走行システムにおいて、送達確認に必要な通信量を減らして、通信の途絶をできるだけ抑制する。
【解決手段】本発明に係る隊列走行方法では、1台のリーダとその他のメンバからなる車群を形成して、リーダが定期的にHBパケットを送信し、メンバがHBパケットに応答してMRパケットを送信する。これを通信の1サイクルとして定義したときに、HBパケットには前サイクルにおけるメンバからの通信に対するACKを格納し、MRパケットには現サイクルにおけるリーダからの通信と前サイクルにおけるメンバからの通信に対するACKを格納する。ACKをサイクルごとにまとめて送れるので通信量を削減できる。また、各車両は自車が認識する周囲の状態情報を送信し、各車両は通信から得られる状態情報および自車のセンサで得られる情報に基づいて自律的に走行制御を行う。
【解決手段】本発明に係る隊列走行方法では、1台のリーダとその他のメンバからなる車群を形成して、リーダが定期的にHBパケットを送信し、メンバがHBパケットに応答してMRパケットを送信する。これを通信の1サイクルとして定義したときに、HBパケットには前サイクルにおけるメンバからの通信に対するACKを格納し、MRパケットには現サイクルにおけるリーダからの通信と前サイクルにおけるメンバからの通信に対するACKを格納する。ACKをサイクルごとにまとめて送れるので通信量を削減できる。また、各車両は自車が認識する周囲の状態情報を送信し、各車両は通信から得られる状態情報および自車のセンサで得られる情報に基づいて自律的に走行制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車群管理方法および隊列走行通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先行車両に自動的に追従して走行する隊列走行が研究されている。このような隊列走行により、運転者を運転操作から解放するとともに、車間距離の短縮による輸送効率および燃費の向上を図ることができる。また、このような隊列走行では、車車間通信により走行制御に必要な情報をやりとりして、より効果的な制御を実現する提案がなされている。
【0003】
通信を利用する隊列走行の第1の態様としては、レーダの代わりにあるいはレーダと併用して、前方車両から送信される情報にしたがって自車両を制御する手法がある。このような仕組みの隊列走行を、本明細書では、通信ACC(Adaptive Cruise
Control)あるいは追従走行と称する。
【0004】
さらに進んだ態様として、隊列走行を行う車両間で送達確認を行い、双方向の通信を担保しつつ走行制御を行う隊列走行システムがある。双方向通信が担保されると割り込みたい車両に対して車間を広げるなどの柔軟で高度な制御が可能となり、車間距離の短縮化、燃費の改善、滑らかな追従が実現できる。このような仕組みの隊列走行を、本明細書では、協調走行と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−46820号公報
【特許文献2】特開2006−261742号公報
【特許文献3】特開2001−6099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、協調走行を行っている車両が互いの通信全てに対して個別に受信応答(ACK)を送信する分散通信方式の場合、必要な通信の量が隊列走行を行う車両の台数の増加に伴って急激に増加する。N台の車両で隊列走行をしている場合に、ある1台の車両が送信した情報に対して残りのN−1台の車両が受信応答を返すことになるので、N台の車両がそれぞれ情報を送信するたびに合計でN2のオーダーの回数送信が必要となる。
【0007】
このように通信量が増加すると電波干渉が発生し、隊列走行制御に悪影響を与えるおそれがある。したがって、送達確認に要する通信量をできるだけ減らして、通信の途絶がなるべく発生しないようにすることが望まれる。
【0008】
また、協調走行を行っている際に通信途絶が発生したら、通信ACCによる追従走行に切り替えることも考えられる。通信ACCでは、送達確認が不要であり、また、車間距離も長くなるので電波干渉が抑制されるためである。しかしながら、協調走行から通信ACCによる追従走行に切り替えて車間距離を広げるのは容易ではない。通信の途絶を完全に抑制することは困難であることを考慮すると、通信途絶が発生した際の悪影響をできるだけ少なくすることも望ましい。
【0009】
以上のように、本発明は、双方向通信を利用して隊列走行を行う隊列走行システムにお
いて、送達確認に必要な通信量を減らして、通信の途絶をできるだけ抑制することを目的とする。また、本発明はさらに、通信の途絶が発生した場合にもその影響を最小限にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
通信途絶の抑制を達成するために、本発明に係る車群管理方法は、
双方向通信が可能な複数の車両から、1台の車両をリーダ、その他の車両をメンバとして車群を形成し、車群内の車両同士による通信を利用して隊列走行を行う隊列走行通信システムにおける車群管理方法であって、
リーダが、定期的に情報を送信するステップと、
各メンバが、リーダから送信される情報に対して応答を返すステップと、
を含み、
リーダから送信される情報には、前サイクルにおける各メンバからの通信を受信できたか否かを示す受信応答が含まれ、
各メンバから送信される情報には、現サイクルにおけるリーダからの通信、および、前サイクルにおける他のメンバからの通信を受信できたか否かを示す受信応答が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報に含まれる受信応答に基づいて、通信の双方向性を確認する
ことを特徴とする。
【0011】
上記のように、車群内でリーダが定期的に情報送信を行い、それに対してメンバが応答を返すことで、車群内の通信に関して時間的な境界であるサイクルを導入できる。そして、各車両が1サイクル分の受信応答をまとめて送信するとパケットヘッダなどの重複情報を減らせるので、通信の双方向性を確認するために要する通信量を削減できる。通信量を削減できるので通信品質の向上すなわち通信途絶を抑制することが可能となる。
【0012】
本発明においては、各車両が定期的に送信する情報には、当該車両の位置、車群を構成する車両の識別子、車群を構成する各車両に対する受信応答が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報と、自車両が備えるセンサによって取得される情報とに基づいて、自律的に走行制御を行うことが好ましい。
ここで、各車両が定期的に送信する情報には、車群を構成する車両の車群内の走行順序が含まれることが好ましい。車群内の走行順序は、送信する情報の中に車群を構成する識別子を走行順序にしたがって列挙することで表現することができる。また、車両の識別子と走行順序(番号等)を関連付けて送信する情報に格納するようにしても良い。また、車群外の直前および直後の車両に関する情報も含まれることが好ましい。また、自車両が備えるセンサとしては、自車両の位置を測定するセンサ、自車両の少なくとも前方の物体の位置を測定するセンサが含まれることが好ましい。
【0013】
上記のように、各車両が定期的に送信する情報に送信車両が送信時点で把握している車群に関する情報を格納して送信するようにし、他の車両に対して特定の制御を行うように指示する命令を発することなく各車両が自律的に走行制御の判断を行うことで、制御命令を送信する必要がなくなる。さらに制御命令の送達確認に要する通信も不要となる。このように通信量を減らすことができるので、通信品質の向上すなわち通信途絶を抑制することが可能となる。また、他車両から送信される情報を一時的に受信できなかった場合であっても、次に送信される情報を受信したときに走行制御が可能となり、しかも常に最も新しい状態情報に基づいて走行制御が可能となるという利点も得られる。
【0014】
本発明において、車群を構成する車両の台数に上限が設けられていることが好ましい。
【0015】
車群内の車両台数を制限することで、車群内での通信量を減らすことができ、通信品質
の向上および通信途絶の抑制が可能となる。
【0016】
本発明においては、車群の先頭に位置する車両は、車群外の前方の車両に対して追従する走行制御を行い、
車群の先頭車両とその前方の車両との間の車間距離は、車群内での車間距離よりも長い
ことが好ましい。
【0017】
上記のように車群の先頭車両がその前方車両に追従することで、複数の車群が全体として隊列走行が可能となる。この際、車群の先頭車両とその前方の車間距離を、車群内の車間距離よりも長くすることで、車群の前方での速度等の変化をこの部分で吸収することができ、車群内への影響を低減することができる。すなわち、前方車群で通信途絶等が発生した場合であっても、その悪影響を前方車群内だけにとどめることが可能となり、後方車群に通信途絶による悪影響が極力及ばないようにできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、より少ない通信量で隊列走行を行う車両間での送達確認が行えるので、電波の干渉が減り通信の途絶が抑制される。
【0019】
さらに、通信の途絶が発生した場合であっても、その影響を限定的にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態におけるACK制御方式を説明する図である。
【図2】本実施形態における車群協調走行と車群間の走行制御を説明する図である。
【図3】車群内で通信途絶が発生した場合に、通信途絶車両の前後で車群を分離する制御を説明する図である。
【図4】本実施形態におけるデータパケットのフォーマットを説明する図である。
【図5】本実施形態におけるACK制御方式を詳細に説明する図である。
【図6】本実施形態における状態情報の情報源を説明する図である。
【図7】本実施形態における車両の機能構成を説明する図である。
【図8】本実施形態における車両の状態遷移を説明する図である。
【図9】通信ACCにより走行していた2台の車両が合流して1つの車群を形成する処理を説明する図である。
【図10】車群に対して通信ACCにより追従走行していた車両を車群が合流する処理を説明する図である。
【図11】2つの車群が合流して1つの車群を形成する処理を説明する図である。
【図12】車群内で車両IDが競合した場合の競合解決処理を説明する図である。
【図13】車群内から通信メンバが離脱したときの制御を説明する図である。
【図14】車群内から通信リーダ(先頭車両)が離脱したときの制御を説明する図である。
【図15】車群内の車両が車群協調走行を解除した場合の処理を説明する図である。
【図16】車群内に通信機能を有しない車両が割り込んだ場合の処理を説明する図である。
【図17】車群内車両の通信機能停止を検出する方法を説明する図である。
【図18】車群内で車両の通信機能が停止した場合の処理を説明する図である。
【図19】車群内の車両が通信可能範囲外へ移動した場合の処理を説明する図である。
【図20】車群内で電波干渉が発生した場合の処理を説明する図である。
【図21】パケット受信時に行う全車両共通の処理のフローチャートである。
【図22】追従走行状態にある車両がパケット受信時および送信タイミング到来時に行う処理のフローチャートである。
【図23】車群準備状態にある車両がパケット受信時および送信タイミング到来時に行う処理のフローチャートである。
【図24】通信リーダ状態にある車両が車群パケット受信時に行う処理のフローチャートである。
【図25】通信リーダ状態にある車両が通信ACCパケット受信時に行う処理のフローチャートである。
【図26】通信リーダ状態にある車両が送信タイミング到来時に行う処理のフローチャートである。
【図27】通信メンバ状態にある車両が車群パケット受信時に行う処理のフローチャートである。
【図28】通信メンバ状態にある車両が送信タイミング到来時に行う処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態は、車群を形成し車群内での双方向通信によって隊列走行を制御する隊列走行システムである。本実施形態の隊列走行制御は、協調走行の一種であるが従来技術と区別するために車群協調走行と称する。このような双方向通信を利用する車群協調走行では、より柔軟で高度な隊列走行制御が可能となり車間距離を短縮化できる。車間距離を短縮した隊列走行を行っているときに、通信の途絶が発生した場合には、安全のために隊列走行制御を解除または制御を追従走行に変更して車間距離を開ける必要が生じる。このように、双方向通信を利用して隊列走行を行う場合、通信途絶が発生するとその影響が大きい。
【0022】
1.本実施形態に係る隊列走行システムの概要説明
本実施形態では、通信を管理するリーダを選出し、通信リーダが通信メンバを選んでグループ(車群)を形成する。それ以降、通信リーダと通信メンバ間の定期的な通信によって車群の維持・管理を行う。また、車群内の制御リーダが他の車両に目標制御値を送信し、各車両が送信された目標制御値に従って走行することで隊列走行が行われる。このように、通信リーダが車群内の通信を管理し、制御リーダが車群内の隊列走行制御を行うことで、車群による隊列走行が実現される。
【0023】
本実施形態においては、車群内および車群間でこれから述べる通信方式や車群維持・管理手法を採用することで、通信途絶の発生抑制および通信途絶時の影響軽減を実現する。
【0024】
(A)通信途絶の発生抑制
通信途絶の発生抑制のためには、隊列走行に必要な無線通信を効率的に行って、電波干渉を抑制する必要がある。その対策として以下の手法を採用する。
【0025】
(A−1)ACK制御の改善(車群通信方式)
通信の双方向性を確認するためにACK(受信応答。ループバックと呼ばれることもあるが本明細書ではACKと呼ぶ。)を返す必要がある。各車両が他車両からの通信に対して個別にACKを返す分散通信方式では、車両数の増加にしたがって必要な通信量が急激に(O(N2)のオーダーで)増加する。したがって、車群内の各車両が1回メッセージ(ACKのみの通信を除く)を送信するたびに車群内でN2のオーダー回の通信が必要となり、電波の干渉を招く。
【0026】
本実施形態においては、図1(A)に示すように、車群内で通信リーダ(図中A)がブロードキャスト通信を行い、それに応答して各メンバ(図中B,C)が応答を返す通信方式を採用する。本明細書では、通信リーダからの通信をHB(HeartBeat)、通信メンバ
からの通信をMR(Membership Report)と称する。このような通信方式とすることで、
車群内の通信にサイクルを定義することができる。1サイクルは、通信リーダからのHBで始まり、次のHBの直前で終了する。通信リーダおよび通信メンバは、1サイクルにおいて1回の送信権が得られる。
【0027】
図1(B)を参照してACK制御の方式を説明する。図1(B)において、「カウンタ」は各車両が送信するメッセージを識別するものであり、「ACK」はそのメッセージ送信においてどのメッセージに対するACKを返すかを示す。図に示すように、通信リーダは、前サイクルにおける各メンバからの通信に対するACKを格納してHBパケットを送信する。また、通信メンバは、現サイクルにおける通信リーダからの通信に対するACKと、前サイクルにおける他のメンバからの通信に対するACKを格納してMRパケットを送信する。具体的には、サイクルiにおいて、通信リーダはサイクルi−1における通信メンバからの通信に対するACKを格納してHBパケットを送信する。また、通信メンバは、サイクルiにおける通信リーダからのHBパケットに対するACKと、サイクルi−1における他のメンバからのMRパケットに対するACKを格納してMRパケットを送信する。
【0028】
このようにサイクルごとのACKをまとめて伝達することで、通信回数を減らしつつ、互いの通信の双方向性が確認できる。なお、本ACK制御方式では、各車両がそれぞれ1回メッセージ送信するときに必要となる双方向性確認のための通信回数は車群の台数と同じ(O(N))である。このように車群内での双方向性確認のための通信回数を減らせるので、電波干渉を抑制し通信途絶の発生を抑制することができる。メンバ間通信の双方向性確認には1サイクルの遅延が生じるが、ACKのための通信回数を減らせ1サイクルごとに新しい情報を送れるので問題は生じない。むしろ、従来のACK方式ではACK確認にNサイクルを必要としNサイクルおきにしか新しい情報が送れないのに対して、本ACK方式ではACK確認しつつ1サイクルごとに新しい情報を送信できるために、通信の遅延が少なくなるという利点がある。
【0029】
なお、ACKを返す対象の通信を車群内車両からの通信に限る必要はなく、車群外の車両からの通信に対してもACKを返すようにしても良い。本実施形態においては、後述するように、自車両が属する車群のすぐ前方に位置する車両(「車群外先行車」と呼ぶ)と、自車両が属する車群のすぐ後方に位置する車両(「車群外後続車」と呼ぶ)からの通信に対するACKを含める。
【0030】
(A−2)状態情報共有による協調(情報伝達方式)
本実施形態では、各車両は自車が把握している状態情報をHBパケットやMRパケットに含めて送信する。各車両は、周囲車両の通信から得られる状態情報および、自車両のセンサ等から得られる情報に基づいて、周囲の状態情報の変化を把握して、状態情報の更新およびそれに応じた制御を行う。状態情報は、車群の維持・管理に必要または有用な情報や、隊列走行制御に必要または有用な情報である。たとえば、状態情報には、双方向通信可能性、車群に属しているか否か、車群内での走行順、各車両の位置、走行方向、走行速度、加速度など種々の情報が含まれうる。
【0031】
状態情報を共有し各車両が最新の状態情報に応じて自律的に制御を行う間接命令型の制御方式以外に、他車両からの明示的な制御命令にしたがって制御を行う直接命令型の制御方式を採用することも考えられる。直接命令型の命令伝達方式には、リーダが制御命令を送りメンバがACKを返す方式や、リーダが複数回(パケット到達率に応じて必要な回数が計算される)制御命令を送りメンバはACKを返さない方式が考えられる。しかしながら、間接命令型の制御方式には以下のような利点があるため、本実施形態では状態情報共有による制御方式を採用する。
【0032】
まず、状態情報共有方式では、制御命令やそれに対するACKを送る必要がなくなるため、通信量を減らすことができる。制御命令+ACK方式では1回の制御情報伝達に2回(往復)の通信が必要であり、制御命令複数回伝送方式では複数回の通信を必要としてしまう。また、複数回伝送方式では何回送出するかを設計することも難しい。状態情報共有方式では状態情報を送る必要があるが、状態情報自体は制御目的以外にも必要な情報であり、余分なデータというわけではない。
【0033】
また、制御命令を送信する方式で送信に失敗した場合は有効時間内であれば制御命令の再送を行うが、その間に状況の変化が生じることもあり、情報が実際に有効である保証はない。その場合、無駄なブロードキャストの発生や陳腐化した情報による混乱が生じる可能性がある。それに対して、状態情報共有方式では、各車両が常に最新の状態情報を送信するため、無駄なブロードキャストの発生や情報の陳腐化といった問題は生じない。
【0034】
なお、状態情報共有方式では、他車両から送信される状態情報に単純に従うと制御状態が振動する場合がある。たとえば、ある車両が車群に合流したり離脱したりを繰り返すことが起こりうる。そのため制御状態の変更にヒステリシスを設けこの問題を回避することが望ましい。具体的には、制御状態の振動を引き起こす可能性が高い車両からの通知される状態情報を一定期間(除外期間)無視するようにすればよい。
【0035】
(A−3)車群通信の優先制御
車群内では通信の双方向性を維持することが隊列走行の制御に重要である。したがって、車群通信(車群に属する車両の通信)を車群に属さない車両の通信に優先させることで、車群通信の通信途絶を抑制することが好ましい。このために本実施形態では、車群通信を受信した車両は通信を抑制する。
【0036】
抑制方法については、車群通信を傍受した車両が一定時間待機する抑制(Suppression
)方式と、車群通信を傍受した車両が車群通信で指定された時間まで待機する予約(Reservation)方式とがある。すなわち、抑制方式では待機時間を受信側車両(車群外車両)
で判断し、予約方式では待機時間を送信側車両(車群内車両)で判断する。抑制方式では車群通信に対して特殊な制御を設ける必要がないので実装が簡易であり、予約方式では車群通信に追加情報が必要であるものの車群通信を行っている間確実に通信を除外できるという利点がそれぞれある。
【0037】
また、抑制される通信内容に関して、全ての通信を行わない方法と、車両制御用を除いた通信(エンターテインメント用情報、交通情報等)を行わないことが考えられる。全ての通信を待機すれば車群通信の優先度が上がるが、車群に属さない車両の制御用情報のやりとりができなくなる。したがって、車群通信をどれだけ優先させるかによって、抑制する通信内容を決定すればよい。
【0038】
なお、本実施形態では、抑制方式で、制御用以外の通信を行わない手法を採用する。
【0039】
(B)通信途絶の影響軽減
本実施形態では、通信途絶を抑制するために上記(A)のような種々の手法を採用しているが、それでも通信途絶を完全になくすことは困難である。そこで、通信途絶が発生した場合であっても、その影響が軽減する設計が望まれる。通信途絶による影響としては、隊列走行制御モードの切り替え(車群協調走行から追従走行への切り替え)による車間距離等の変化が挙げられる。
【0040】
本実施形態では、以下の手法によって通信途絶時の悪影響を軽減する。
【0041】
(B−1)車群間での追従走行
本実施形態では、図2に示すように、1つの車群を構成する車両台数に上限を設け、車群間の隊列走行制御方式として追従走行を採用する。車群内では、上述の車群通信によって双方向通信を行いながら隊列走行制御を行う。このような車群協調走行では、柔軟な制御が可能であるため車間距離を比較的短くすることができる。
【0042】
一方、車群間の隊列走行制御では、後方車両が前方車両に追従する追従走行を採用する。ここでは、後続車群22の先頭車両22Hが通信ACCにより前方車群21の最後尾車両21Tに追従する。先頭車両22Hにおける走行制御は、最後尾車両21Hからの通信および自車に搭載されたレーダによって得られる情報に基づいて行われる。追従走行では、車群協調走行ほどには柔軟な制御ができないため、車間距離はより長くなっている。
【0043】
このように車群間を追従走行とすることで、ある車群内での通信途絶の影響が後続車群に及ばないようにすることができる。たとえば、前方車群21において通信途絶が発生し、前方車群内の車両が全て通信ACCによる追従走行に変更になった場合を考える。前方車群内では、追従走行への移行に伴って車間距離を長くする必要があるため、各車両間の相対位置が変化する。しかしながら、後続車群の先頭車両はもともと追従走行を行っているため、前方車両との相対位置(車間距離)を変化させる必要がない。もちろん前方車両の速度変化(減速)に伴って後続車群も速度を変化させる必要があるが、車両間の相対位置に変化がなければ乗員に対して与える不安は少ないと考えられる。
【0044】
(B−2)車群内での通信途絶時に車群分割
車群内で通信の途絶が発生する状況には、2通りの状況が考えられる。1つは、特定の車両との間で通信が行えなくなる場合である。図3(A)に示すように、車群を構成する特定の車両31との間で通信ができなくなった場合には、図3(B)に示すように車両31より前方に位置する車両からなる車群32と、車両31より後方に位置する車両からなる車群33との2つの車群に分割する。そして後方車群33は、車両31に対して通信ACCにより追従走行を行う。このようにすれば、車両間の相対位置の変化を最小限とすることができる。
【0045】
また、通信の輻輳により車群を構成する車両全体で通信ができにくくなる状況も考えられる。この場合には、通信リーダが車群内の通信メンバの一部を車群から除外する。車群を構成する車両台数を少なくすることで、電波干渉を軽減でき通信を回復できる。除外された車両以外は車群協調走行を維持できるので、通信途絶時の悪影響を抑えることができる。
【0046】
2.本実施形態に係る隊列走行システムにおける制御要求
本実施形態に係る隊列走行システムでは、以下の通信制御を可能とする。なお、ここでは本隊列走行システムが満たすべき要求を提示するだけにし、これらの要求を如何にして実現するかについては後述する。
【0047】
(A)隊列への合流
車両間の通信によって隊列へ新たな車両が合流できる必要がある。隊列の合流とは、隊列に属する車両台数が増加することを言い、車群が新たに形成されることを含む。隊列への合流の態様は、さらに[1]〜[3]の3つに分けることができる。
【0048】
[1]車群の形成:
これは、車群に属していない車両同士が合流して新たに車群を形成するシナリオである。このシナリオのイメージは図9に示されている。なお、図中、点線で囲まれている車両
の集まりは車群を意味する。
【0049】
[2]車群への参加:
これは、既存の車群に、車群に属していない車両が参加して車群が大きくなるシナリオである。このシナリオのイメージは図10に示されている。
【0050】
[3]車群同士の合流:
これは、既存の2つの車群が合流して、1つの大きな車群になるシナリオである。このシナリオのイメージは図11に示されている。
【0051】
また、隊列の合流時における問題として車両IDの競合がある。
【0052】
[4]車両IDの競合解決
車両IDには全ての車両に個別のIDを割り当てることが理想的であるが無駄が多いため、たとえば、ある限られた範囲で重複しないようなIDを採用することが考えられる。このように車両IDは必ずしも一意ではないので、隊列の合流時に車群内の車両で車両IDが重複(競合)する場合がある。したがって、この車両IDの競合を解決する仕組みも必要である。
【0053】
(B)隊列からの離脱
[5]車線変更による離脱
車群内の車両が車線変更などにより隊列から離脱した場合には、残りの車両で車群を維持して隊列走行を続けることができるという要求である(図13、図14参照)。
【0054】
(C)隊列の分離
車群内に車群通信不可能な車両が発生した場合には、その車両よりも前方部分と後方部分との2つに車群を分離するという要求である。車群内に車群通信不可能な車両が現れるシナリオは以下の2つに分けることができる。
【0055】
[6]ドライバーによる解除
車群協調走行中に、その車群内の1台がドライバーによって隊列走行を解除することによって、車群内に車群通信できない車両が現れる場合である(図15参照)。
【0056】
[7]非通信車両の割り込み
車群内に、通信機能を有していない車両が割り込むことによって、車群内に車群通信できない車両が現れる場合である(図16参照)。
【0057】
(D)通信の途絶
車群内で通信の途絶が発生した場合でも、安全に制御を続けられることが要求される。通信の途絶は、さらに以下の4つの態様に分類できる。
【0058】
[8]特定車両の通信機能停止
車群内の車両の通信機能が停止した場合に、その車両よりも前方部分と後方部分との2つに車群を分離する。なお、通信機能の停止には、送信機能が停止する場合(図17(A)参照)と受信機能が停止する場合(図17(B)参照)がある。いずれの場合であっても、その車両よりも前方部分と後方部分の2つに車群を分離する(図18)。
【0059】
[9]通信可能範囲外への移動
車群内の車両が通信可能範囲外へ移動した場合にも、それ以外の車両で車群を維持することが要求される(図19参照)。
【0060】
[10]電波干渉の発生
電波干渉(輻輳)が発生した場合には、車群内の全ての車両が同時多発的に通信を受信できなくなる。電波干渉が発生した場合には全体の通信量を抑制する必要がある。本実施形態では、車群を構成する車両の台数を減らすことで通信量を抑制する(図20参照)。
【0061】
3.本実施形態に係る隊列走行システムの詳細説明
(A)通信リーダ・制御リーダの決定方針
本実施形態に係る隊列走行システムでは、通信リーダが通信可能範囲内から通信メンバを選出して車群を形成する。そのため、どの車両を通信リーダとするかは重要な問題である。通信リーダが車群内のどの位置にあっても上記の要求を満たした機能を実装可能であるが、通信リーダは車群の先頭または中央付近に位置することが好適である。
【0062】
通信リーダが先頭の場合、車群後方の車両を合流する場合は合流する車両台数が何台であっても通信リーダの変更が生じず安定である。一方、車群前方の車両を合流する場合には必ず通信リーダの変更が生じてしまうため不安定である。
【0063】
一方、通信リーダが車群中央付近の場合、車群前方および後方のいずれからの合流であっても、合流する台数が少ない場合は通信リーダの変更が生じず安定であるが、合流する台数が多くなると通信リーダの変更が生じて不安定となる。
【0064】
このように、車群への合流を考慮した場合、通信リーダを先頭車両として、後方からの合流のみを許可すれば(前方からの合流は行わない)常に通信リーダが変わらず安定的であることが分かる。
【0065】
また、通信の途絶時の影響についても考察する。通信リーダの通信機能が停止した場合、通信リーダが先頭であれば、2台目以降の車両で1つの車群を自律的に形成することができる。これに対して、通信リーダが車群中央付近であれば、少なくとも車群は2つに分かれてしまう(あるいは完全に車群を解消する)。また、電波干渉発生時にも、通信リーダが先頭であれば、車群最後尾の車両を車群から除くことで対応できる。通信リーダが中央付近の場合は、通信リーダを変更しないという条件の下では、車群の先頭と最後尾から均等に車両を除くという複雑な制御が必要となる。
【0066】
このように、通信途絶時の影響を考慮しても通信リーダが先頭であれば制御が容易あるいは安定的である。
【0067】
なお、通信リーダは、その通信可能範囲内から通信メンバを選出して車群を形成する。ここで、通信可能範囲は、直接通信可能な範囲(ワンホップで通信可能な範囲)だけではなく、マルチホップ通信により通信可能な範囲内であって良い。ただし、以下では説明の簡略化のためにシングルホップ通信を例に説明するが、マルチホップ通信を利用しても構わない。
【0068】
以上の検討の結果、本実施形態では、通信リーダが常に車群になるように制御を行う。これにより、前方からの合流が行えなくなるがこのデメリットは小さく、制御が安定的になるという大きなメリットが得られる。もっとも、このことは本発明において通信リーダを先頭車両以外にすることを除外するものではなく、通信リーダは先頭以外であっても構わない。
【0069】
制御リーダは、車群内の隊列走行を行うための目標制御値を車群内の車両に通知する。ここで、目標制御値は、たとえば、目標とする加速度情報、操舵角情報、ブレーキ操作情
報などが含まれる。このような目標制御値を決定するためには、制御リーダは車群の先頭であることが好ましい。したがって、通信リーダが先頭である場合には、通信リーダが制御リーダを兼ねることが好ましい。一方、通信リーダが中央付近の車両である場合には、車群の先頭車両が制御リーダとなることが好ましい。
【0070】
(B)パケットフォーマット
図4(A)(B)に本実施形態で使用するパケットフォーマットの例を示す。本実施形態においては、車群に属している車両も車群に属していない車両も、または、通信リーダであっても通信メンバであっても、同一のパケットフォーマットを有するパケットを送信する。
【0071】
送信元車両ID401には、このパケットを生成した車両のIDが格納される。本実施形態においては、車両IDは16ビットで表現されるものとする。
【0072】
宛先車両ID402には、このパケットを届ける車両IDが格納される。なお、ブロードキャスト通信を行う場合には、宛先車両ID402にはブロードキャストである旨を示す識別子(典型的には「0xFFFF」)を格納する。
【0073】
車両状態403として、送信元車両の状態に関する種々の情報が格納される。車両状態として典型的には位置情報が含まれる。送信元位置404には、緯度情報28ビット、経度情報28ビット、高さ情報14ビットの合計70ビットで表現される位置情報が格納される。その他の車両状態としては、速さ、進行方向、ブレーキ状態等種々のものを採用できるが、ここではその詳細は省略する。
【0074】
制御状態405には、隊列走行制御の状態として、「車群協調走行」、「通信ACC走行」、「ACC走行」、「マニュアル走行」のいずれであるかを示す情報が格納される。車群ID406には、自車が属する車群のIDが格納される。なお、自車両が車群に属さない場合は「0」を格納するものとする。サイクル407には、車群通信におけるHBパケットとMRパケットの交換を1サイクルとして、このパケットが何サイクル目のものであるかを格納する。種類408には、このパケットがHBパケットであるかMRパケットであるかを格納する。なお、自車両が車群に属していない場合は、サイクルおよび種類は空欄とする(「0」を格納する)。
【0075】
図4(B)に走行順車両ID409と走行順送達確認410の詳細を示した。走行順車両ID409には、車群内の車両と車群外の前後1台の車両を、その走行順にしたがって格納する。また、走行順送達確認410には、これらの各車両からの通信を受信したか否かを示すACKを格納する。
【0076】
ここでは1つの車群に属すことができる車両台数の上限はN台であり、車群内車両用としてN車両分のフィールドが用意されている。車群内の車両台数がN台に満たない場合には、余った走行順車両IDフィールドは空欄とする(「0」を格納する)。なお、車両IDは16ビットを採用しているが、車群内の車両の走行順車両ID409にはその車両IDの下位Lビット(たとえば7ビット)を格納する。これは車群内の車両との間では、後述するように車両IDのLビットが競合した場合に競合解決ができるためである。このように車両IDを短縮化することで通信量を削減している。もちろん走行順車両IDに格納する値は車両IDの下位Lビットでなくても良く、実際の車両IDがKビットであるときに、この車両IDから導かれるL(<K)ビットの値であればよい。
【0077】
なお、車群に属しない車両は、車群内車両のIDを空欄にしたパケットを生成して送信する。
【0078】
・ACK制御
ここで、上述したフォーマットのパケットを利用して行う、車群内での双方向通信可能性の確認(ACK制御)について改めて説明する。図5は、5台の車両A〜Eで構成される車群において、あるサイクル(ここではサイクル「23」)において交換されるメッセージの内容を示す。図5左側は通信リーダから送信されるHBパケット、図5右側は通信メンバから送信されるMRパケットの内容を示している。図5において示される通信の内容は、図4に示すパケットフォーマットを簡略化して示したものである。まず、通信リーダAが、サイクル番号「23」を格納したHBパケットを車群内の車両に対してブロードキャスト送信する。ここで、走行順車両IDには、車群を構成する車両のIDをその走行順にしたがって格納する。また、各車両に対するACKには、前回サイクル(#22)においてそれぞれの車両からの通信を受信できたか否かに応じた値を格納する。自車両についてのACKは不定であって良く、本実施形態では常に「1」を格納するものとするが、このフィールドを他の用途に利用しても構わない。
【0079】
通信メンバ(ここでは車両B)は、通信リーダからのHBパケットを受信すると、それに応答したMRパケットを送信する。ここでは、通信メンバBから通信リーダAへユニキャスト通信を行う。通信メンバBは、現在サイクル(#23)のMRパケットを送信する際に、通信リーダAのACKに関しては現在サイクル(#23)で通信リーダAからの通信を受信できたか否かを、通信メンバC〜Eに関しては前回サイクル(#22)で各通信メンバからの通信を受信できたか否かを格納する。なお、通信メンバBは、前回サイクル(#22)において他の通信メンバC〜Eが送信するMRパケットを傍受することで、他の通信メンバC〜Eからの通信を受信できたか否か判断する。
【0080】
このように通信リーダが通信サイクルの管理を行い、通信メンバが各サイクルに1回通信リーダからのHBパケットに応答してMRパケットを送信するという通信方式を採用しているので、車群内の全車両についての1サイクル分のACKをまとめて送信することが可能である。これにより双方向通信の確認に必要な通信量を削減することができる。
【0081】
(C)状態情報の定義
次に、各車両が記憶する、現在の周囲および自車両に関する情報(状態情報)について説明する。状態情報には、大きく分けて、所属する車群に関する情報、自車が属していない車群(外部車群)に関する情報、一定期間通知される情報を無視すべき車両のリスト(除外リスト)、初期設定情報が含まれる。
【0082】
所属車群情報としては、車群ID、現在のサイクル番号、車群内車両および車群外の先行車・後続車に関する車両ID、ACK有無、通信から得られる車両情報(位置情報等)がある。また、車群内の車両に関しては、車群内での走行順序も記憶する。
【0083】
これらの情報は、車群内の車両や車群外の先行車・後続車からの通信や自車両のセンサ等から得られる情報が情報源となる。より詳細な情報源を図6に示す。図中、「自」とあるのは自車で定義された情報、または自車のセンサから得られる情報を意味し、「HB」とあるのは通信リーダからの情報(HBパケット)であることを意味し、「MR」とあるのは通信メンバからの情報(MRパケット)であることを意味し、「外」とあるのは車群外からの情報であることを意味し、「−」とあるのは情報を取得しなくても良いことを意味する。車群外の車両についての情報は一部の車群メンバは取得しなくても良いが、もちろん車群外の車両からの通信からこれらの情報を取得して記憶しても良い。
【0084】
図6に示すように、通信リーダは、車群メンバに関する情報は各メンバ(MRパケット)から取得し、車群外の先行車・後続車からの情報はこれらの車両からの通信から取得す
る。最後尾以外の通信メンバは、通信リーダに関する情報と、車群内での通信メンバの走行順序は通信リーダ(HBパケット)から取得する。通信メンバのACK(前サイクルでの自車からの通信が届いたか)や位置情報などの車両情報は、各通信メンバ(MRパケット)から取得する。また、最後尾の通信メンバは、車群外の後続車両との間のACKおよび車両情報を、当該車両から取得する。
【0085】
外部車群情報としては、車群ID、通信リーダの車両ID、サイクル番号を記憶する。これは、外部車群に属する車両からの通信を傍受することによって得られる。この情報は、周囲にどのような車群が存在するかを把握するために車両内に使用される。
【0086】
外部車群のうち、自車両が属する車群のすぐ後ろに位置する車群については、その車群を構成する車両のIDおよび、これらの車両から受信した通信の最新サイクル番号を記憶する。この情報は、車群同士の合流時に後続車群内の全ての車両との間の双方向通信が確認できた段階で合流を行うために使用される。
【0087】
除外リストは、状態の振動を防止するために一定期間送信される状態情報を無視する車両または車群のリストである。車群については、車群ID、通信リーダの車両ID、除外開始時刻を記憶する。また、車両については、車両IDおよび除外開始時刻を記憶する。
【0088】
初期設定情報としては、車群内車両台数の上限(車群サイズ)、パケットの送信レート(サイクル時間)、ランダム待機時間、通信タイムアウトと判定するまでの時間、通信途絶と判定するまでのタイムアウト回数、車群対象から除外している期間などが含まれる。
【0089】
(D)車両の構成
図7は本実施形態に係る隊列走行システムを構成する車両の機能ブロックを示す図である。各車両は、車両走行制御ECU(Electronic Control Unit)701、車車間通信装
置705、GPS装置707、ミリ波レーダ708、エンジンECU709、ブレーキECU710、ステアリングECU711などを備える。車両走行制御ECU701は、後述する各種の処理を実行する制御部702、状態情報などを記憶する記憶部703、時刻を計測するタイマ704などを有する。車車間通信装置705は、車両間で無線通信を行う通信部706を有する。無線通信方式は任意のものであって構わないが、700MHz帯を利用した車車間通信システム(たとえばITC-FORUM RC-006)や、5.8GHz帯を利用した車車間通信システム(たとえばITC-FORUM RC-005)などを採用することができるが、これらに限定されるものでもない。GPS装置707は、自車両の位置情報をGPS衛星等から取得するための装置である。なお、必ずしもGPS衛星から直接送信される信号を受信するものでなく、中継装置等からの信号を受信するものであっても良い。ミリ波レーダ708は前方車両の位置を計測するためのものである。したがって、ミリ波以外の波長の電波や超音波などを用いた測距センサ、あるいはステレオカメラによる測距センサなどを用いても良い。エンジンECU709、ブレーキECU710、ステアリングECU711は自車の状態を取得するためのものであり、この他にも必要に応じて車内の機器から情報を取得すればよい。
【0090】
(E)制御フロー
ここでは、通信リーダを車群の先頭車両として設計した場合に制御要求[1]〜[10]を満たすための処理を説明する。上述したように、通信リーダを先頭としているので車群の成長は後方からのみとする。
【0091】
・状態遷移
まず、図8を参照して追従走行、車群協調走行、マニュアル走行の間の状態遷移を定義する。マニュアル走行時に、追従走行機能を有効にしレーダや通信などを使って実際に追
従走行が可能になると追従走行状態に遷移する。なお、実際には通信ACCによる追従走行とACCによる追従走行の2つの場合があるが、本発明においては本質的な違いではないのでこれら2つの状態をまとめて追従走行状態としている。追従走行状態において、他の車両と連続していることと双方向通信が可能であることが、それぞれレーダと通信によって判断できると、車群準備状態に遷移する。車群準備状態にある車両は、ランダム待機時間待機した後に通信リーダ状態に遷移してHBパケットを送信する。この際、後続車両を車群メンバとして選出する。待機時間中にHBパケットを受信して、その中に自車両IDが含まれていれば車群メンバに遷移する。HBパケットを送信する際に後続車両のみをメンバとして選出するので、結局連続する2台の車両のうち前方の車両がリーダになる。
【0092】
また、追従走行状態中に前方車群からのHBパケットに自車両のIDが含まれている場合には、前方車群に属する通信メンバへと遷移する。
【0093】
通信リーダは、前方車群からのHBパケットに自車両のIDが含まれている場合には、前方車群に属する通信メンバへと遷移する。
【0094】
通信メンバは、先行車との間で通信が途絶したり、HBパケットにおいて自車が先頭であったりする場合には、通信リーダ状態へと移行し、車群内の自車よりも後方の車両を通信メンバとする。また、HBパケットに自車両のIDが含まれなくなったり、自ら車群協調走行モードを解除したりする場合には、追従走行状態へと遷移する。
【0095】
また、いずれの状態においても、ドライバーによる隊列走行の解除によりマニュアル走行状態へ移行することができる。
【0096】
・フローチャート
次に、車両走行制御ECUの制御部が行う処理について、図21〜図28のフローチャートを参照して説明する。図21は、車両の状態にかかわらず他の車両からのパケットを受信したときに行う共通処理を示している。図21の共通処理は、車群外からのパケットを受信したときに、それらの情報を状態情報として格納する処理、および走行制御に関係ない通信を抑制する処理といえる。
【0097】
待機状態にあるときに他の車両からのパケットが到着すると(S2102)、所定時間の間走行制御を含まない通信を控える(S2104)。本実施形態では、他の車両から隊列走行に関するパケットを受信した車両側が、あらかじめ定められた時間だけ通信を抑制する。もちろん、走行制御を含む通信については通常通り送信を続ける。
【0098】
そして、受信パケットが、自車両が属する車群内の車両からの車群パケットであるか判断する(S2106)。受信したパケットが、自車両が属さない車群からの車群パケット(自車両が車群に属しない場合は全ての車群パケットが該当する)であるか、または、車群パケット以外のパケット(通信ACCパケット)である場合は否定判定される(S2106−NO)。所属車群からのパケットでない場合には、受信パケットの送信元が後続車両であって、かつ、自車の通信を受信可能であるか(ACKビットが立っているか)を判断する(S2108)。なお、後続車両とは、自車両のすぐ後ろの車両を意味する。送信元が後続車両であるか否かは、受信パケットに含まれる車群外先行車両が、自車両であるか否かによって判断できる。送信元が後続車両であり、かつ、自車両からの通信を受信できる場合には状態情報に、所属車群情報の車群外後続車両としてこの車両を登録する(S2110)。なお、自車が属する車群以外の車両からのパケットを受信した場合のみS2108の判定を行うので、自車両が車群に属している場合は自車両が車群の最後尾である場合のみ、この登録が行われる。
【0099】
また同様に、受信したパケットの送信元が先行車両であって、かつ、自車の通信を受信可能であるかを判断する(S2112)。先行車両とは、自車両のすぐ前に位置する車両のことである。受信パケットの送信元が先行車であるか否かは、自車両の状態(車群の先頭または非車群)および、パケットに含まれる送信元の位置情報と自車のレーダで取得できる前方車両の位置情報が一致するか否かによって判断することができる。すなわち、受信したパケットに含まれる送信元の位置情報と自車のレーダで取得できる前方車両の位置情報が一致する場合は、先行車からのパケットであると判断できる(S2112−YES)。この場合、自車の状態情報に、所属車群情報の車群外先行車両としてこの車両を登録する(S2114)。なお、自車が属する車群以外の車両からのパケットを受信した場合のみS2112の判定を行うので、自車両が車群に属している場合は自車両が車群の先頭である場合のみ、この登録が行われる。
【0100】
また、受信したパケット(所属車群以外からパケット)が車群パケットであるか判断する(S2116)。受信パケットが車群パケットである場合(S2116−NO)には、状態情報として、外部車群情報にこの車群に関する情報を登録する(S2118)。
【0101】
受信したパケットが所属車群からの車群パケットでない場合(S2106−NO)には、上記のS2108〜S2118の処理を行った上で、ステップS2120へ進む。一方、受信したパケットが所属車群からの車群パケットである場合(S2106−NO)には、そのままステップS2120へ進む。ステップS2120では、送信元の車両が除外リストに存在する車両または除外リストに存在する車群に属する車両である場合か判断し、除外リストに該当する場合(S2120−YES)はそれ以上の処理をせずに待機状態に戻る。除外リストに該当しない場合には、受信パケットが車群パケットであるか否か判断する(S2122)。車群パケットである場合には車群パケット受信処理へ進み、車群パケットではない場合(通信ACCパケットである場合)は通信ACCパケット受信処理へと進む。なお、これ以降の処理は、車両の状態に応じて異なるものとなる。したがって、以下では、車両の状態別に処理フローを説明する。以下のフローチャートでは、パケット受信時だけでなく、送信タイミング到来時の処理も含まれることに注意されたい。
【0102】
図22〜図28は、各状態(追従走行状態、車群準備状態、通信リーダ、通信メンバ)において、車群パケット受信時、通信ACCパケット受信時、および送信タイミング到来時に行う処理を示すフローチャートである。上述したように、車群パケットおよび通信パケット受信時には、前処理として図21に示した共通処理が実行されることに注意されたい。以下では、図21〜図28のフローチャートに従うことで、「2.本実施形態に係る隊列走行システムにおける制御要求」で示した[1]〜[10]の機能が実現できることを説明する。
【0103】
[1]車群の形成
図9(A)(B)に示すように、通信ACCによる追従走行中の2台の車両が通信の双方向性を確認したことにより、車群を形成する制御シナリオである。
【0104】
まず車両A,Bのそれぞれは、定期的に車両IDと位置情報を含む通信ACCパケットをブロードキャスト送信しながら走行をしている。車両Bが車両Aの後方から接近して車両Aの通信ACCパケット(S2102、S2106−NO)を受信したときに、車両Aのパケットに含まれる位置情報と、自車のミリ波レーダによって得られる前方車両の位置情報とが一致して、車両Aが車両Bの先行車両であることが分かる(S2112−YES)。したがって、車両Bは、車両Aを車群外先行車両として登録する(S2114)。車両Bに送信タイミングが到来すると(S2210)、図9(A)に示すように、車群外先行車両が車両Aであり、車両Aに対するACKを有りにした通信ACCパケットを生成してブロードキャスト送信する(S2212)。
【0105】
車両Bからの通信ACCパケット(S2102,S2106−NO)を受信した車両Aは、受信したパケットの車群外先行が自車両でありACKも有る(S2108−YES)ことから、車両Bを車群外後続車両として登録する(S2110)。そして、車両Aに送信タイミングが到来すると(S2210)、図9(A)に示すように、車群外後続車両が車両Bであり、車両Bに対するACKを有りにした通信ACCパケット生成してブロードキャスト送信する(S2212)。
【0106】
車両Aは、車両Bから受信する通信ACCパケットに自車両が車群外先行車両でかつACKも有りとされていることから、受信した通信ACCパケットは後続車両からのものであり、かつ、ACKが有る(S2206−YES)と判断できるため、車群準備状態へと状態遷移する。また、車両Bも同様に、車両Aから受信する通信ACCパケットに自車両が車群外後続車両であり、かつ、ACKも有りとされていることから、受信した通信ACCパケットは先行車両からのものであり、かつ、ACKが有る(S2208−YES)と判断できるため、車群準備状態へと状態遷移する。このように、車両Aと車両Bは、通信ACCによる追従走行中に、双方向通信ができること、および、両車両が連続していることを確認したことによって、車群準備状態へと状態遷移する。
【0107】
なお、図22のフローチャートでは双方向の通信可能性および連続性が一度でも確認されたら状態遷移を行うもの(S2206かS2208のいずれかが成り立てばすぐに状態遷移する)として示しているが、何回か連続してこの条件が成立する場合に状態遷移を行うようにすることも、安定性の面で優れるので好ましい。
【0108】
車群準備状態へと移行した車両A,Bは、それぞれランダム時間待機した後に送信タイミングを得る(S2312)。車両Aが先に送信タイミングを得たとすると、車両Aは通信リーダへ状態遷移するとともに、状態情報の編集を行う(S2314)。ここで、状態情報の編集とは車群を構成する車両を選出することを含んでいる。本実施形態では、通信リーダを車群の先頭とするために、通信リーダよりも後方に位置する車両を車群に含める。車両Bは車両Aの後方であるため、作成される所属車群情報には車両Aを通信リーダ、車両Bを通信メンバとする車群が格納される。また、共通処理によって得ている外部車群情報を参照して、自車両が属する車群における車群IDとサイクルを、他の車群と重複しないように決定する(S2318)。そして、車両Aは、通信リーダとして図9(B)に示すHBパケットをブロードキャスト送信する(S2318)。車群準備状態にある車両Bが、このHBパケットを受信し(S2302、S2304−HB)、このHBパケットが先行車両のものからでありかつACK確認も有る(S2306−YES)ことから、車両Aを通信リーダとする車群のメンバになったことが分かる。そこで、車両Bは通信メンバへと状態遷移し、状態情報を更新する(S2308)。
【0109】
なお、後方に位置する車両Bが先に送信タイミングを得た場合には、通信メンバを後方に位置する車両からのみ選択するので、車両Bは自車両のみから構成される車群の通信リーダとなる。車両Bは通信リーダとしてHBパケットを送信するが、車両Aにとっては車両Bは先行車両ではない(S2306−NO)ことから車群準備状態を継続する。やがて、車両Aが送信タイミングを得て、上記の説明と同様に、車両Bをメンバとした車群を形成することになる。通信リーダとなっていた車両Bも、他の車群から送信されるHBパケット内に自車両のIDを発見することから、車両Aを通信リーダとする車群の通信メンバに遷移する(S2404−S2406−S2408−S2410)。したがって、車群準備状態にある車両Aと車両Bのいずれが先に送信タイミングを得たとしても、最終的に形成される車群は同じとなる。
【0110】
このようにして、通信ACCによって追従走行を行っていた車両Aと車両Bの間で通信
の双方向性および連続性が確認されると、前方の車両Aを通信リーダとして2台の車両からなる車群が形成されることになる。車群を形成した車両Aと車両Bは、車両A,Bを車群リストに含むHBパケットとMRパケットを定期的に交換して、通信の双方向性を確認しながら車群協調走行を行うことができる。
【0111】
[2]車群への参加
図10(A)(B)に示すように、車群に対して通信ACCで追従している車両が、車群に参加して車群が大きくなるシナリオである。
【0112】
まず、図10(A)に示すように、車両A〜Cで構成される車群の後方に、通信ACCにより追従走行を行う車両Dが存在する状況を考える。この状況では、車両Dが車群外先行車両として車両Cを認識して(S2112−S2114)、通信ACCパケットを送信する(S2212)。つまり車両Dが送信する通信ACCパケットには車群外先行車両として車両Cが格納され、かつ、ACK有りが格納される。車両Cがこの通信ACCパケットを受信することで、車両Cは車両Dが車群外後続車両であることを認識する(S2108−S2110)。車両Cは、車群外後続車両に車両Dを格納してMRパケットを送信する(S2808)。通信リーダAは、このMRパケットを受信することで車群外後続車両が車両Dであることを認識する(S2404−S2432−S2434−S2436)。
【0113】
このように通信リーダ(車両A)が、車群外後続車両が車両Dであると認識している状況で、車両Dからの通信ACCパケットを受信したときの処理を説明する。通信ACCパケットを受信した通信リーダ(S2502)は、車群外後続車両である車両Dと車群最後尾車両である車両Cとの間で双方向通信が確立している(S2504−YES)ことから、車群内の車両台数が最大に達していなければ(S2506−YES)、車両Dを車群の最後尾に登録する(S2508)。そして、次の送信タイミングで通信リーダは、車両Dを車群リストに含めてHBパケットを送信する。
【0114】
追従走行をしている車両Dが、車両AからのHBパケットを受信すると、まず受信パケットは先行車からのものでありかつACKが有る(S2208−YES)ので、車群準備状態へ遷移する。そして、車群準備状態においてHBパケットを受信したときに(S2304−HB)、このHBパケットが先行車両からのものでありかつACKの確認も有る(S2306−YES)ので、通信メンバ状態へと遷移する(S2308)。またこのとき自車両が車群に所属したことに応じて、状態情報を更新する。
【0115】
このようにして、車群に対して通信ACCで追従していた車両Dが、車群と車両Dの間で双方向通信可能性と連続性が確認された場合に、車群に合流することができる。
【0116】
[3]車群同士の合流
図11(A)(B)に示すように、車群間を通信ACCで追従走行している2つの車群が合流して1つの大きな車群を形成するシナリオである。
【0117】
前方車群1101の最後尾車両Cと後方車群1102の先頭車両Dとか連続していることは、上記と同様にして分かる。車両Cが送信するMRパケットを受信することによって、前方車群1101内の各車両は車群外後続車両が車両Dであることが認識できる。同様に、車両Dが送信するHBパケットを受信することによって、後方車群内の各車両は車群外先行車両が車両Cであることが認識できる。
【0118】
通信リーダAが後方車群内の通信メンバからMRパケットを受信した場合は、S2404−S2406−S2422−S2424と処理が進み、MRパケットに含まれる車群リストを後方車群情報に登録する。また、後方車群の通信リーダからHBパケットを受信し
た場合は、S2404−S2406−S2408−S2412−S2422−S2424と処理が進み、結局同様の処理が行われることになる。なおS2412における判断は、通信リーダAが同一車群に属していると認識している通信メンバからHBパケット(別の車群IDを有する)を受信したか否かの判断なので、このケースでは否定判定される。通信リーダは、後方車群情報として、後方車群をどの車両が構成するかと、後方車群を構成するそれぞれの車両からの通信を受信できるか否かを記憶している。そして、後方車群からのHBパケットを受信したときに(S2425−YES)、後方車群に属する全車両から通信を受信可能であり(S2426−YES)、後方車群を全て合流しても最大数に達しない場合(S2408−YES)は、所属車群情報の最後尾に、後方車群を構成する各車両を登録する(S2430)。また、後方車群を除外リストに登録して、一定期間後方車群からの情報による状態情報の変更を行わないようにする。通信リーダは、送信タイミングが到来すると、車群リストに車両A〜Fまでを含むHBパケットを送信する(S2612)。
【0119】
後方車群の通信リーダDは、車両AからのHBパケットを受信すると、他の車群のHBパケットに自車両のIDを発見するので通信メンバへと状態遷移する(S2404−S2406−S2408−S2410)。また、車両AからのHBパケットを受信した、後方車群の通信メンバE,Fは、他の車群のHBパケットに自車両のIDを発見するので、所属車群を変更する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、通信メンバE,Fは、元の車群を除外リストに登録して、所属車群の変更が完了していない同一車群に属していた車両からの情報による状態変動を起こさないようにする。
【0120】
このようにして、通信ACCにより追従走行していた2つの車群1101,1102の間で、連続性と通信の双方向性が確認された場合に、これら2つの車群1101,1102を1つの車群1103に合流することができる。
【0121】
[4]車両IDの競合解決
通信に使用するパケット内では、車群内の車両に関するIDは本来のビット数(例えば16ビット)よりも短いビット数(例えば7ビット)で表現している(図4(B)参照)。これは、通信パケットのデータ量を減らすための工夫である。そもそも車両IDに重複がないことは保証していないが、仮に16ビットの車両IDが重複していない場合でも、下位7ビットのみを使用する場合は衝突が発生する確率が高まる。このような車群内で使用するビット数を短縮化した車両IDが衝突した場合に、車両IDの再設定を行って競合を解決する必要がある。
【0122】
図12(A)に示すように8台の車両で車群が構成されている例を考える。図中「h−o」などとあるのは、全16ビットの車両IDのうち、上位9ビットが「h」であり、下位7ビットが「o」であることを意味している。この例では、通信リーダと6台目の車両の下位7ビットが「g」で衝突しており、4台目と7台目の車両の下位7ビットが「e」で衝突している。
【0123】
本実施形態では、通信リーダは車両IDの再設定は行わず、通信メンバが車両IDの下位7ビットの再設定を行って競合を解決する。すなわち、通信リーダは、車群リスト内の車両IDが重複しているか否かの判断は行わない。一方、通信メンバは、通信リーダから受信するHBパケットにおいて自車両のID(下位7ビット)が2つ以上登録されているか判断する(S2726)。ここで車両IDの競合が発生している場合には、自車両の車両IDの下位7ビットに関して再設定を行う(S2730)。なお、新しい車両IDの下位7ビットは、HBパケットに含まれている「g」「h」「w」「e」「m」「o」以外の値をランダムに選択するものとする。ランダムに設定しているので、再度衝突が発生する可能性もあるが、再設定処理を繰り返すことで最終的には競合が解決できる。
【0124】
また、車両IDが競合している通信メンバからのMRパケットは、どの通信メンバに関する情報であるか判断できないため、受信したMRパケットの送信元の車両IDが競合している場合にはそのMRパケットは無視する(S2718)。一方、通信リーダの車両IDが他のメンバと競合している場合であっても、通信リーダからのパケットをパケット種別(HBパケット)から判断できるので、HBパケットについてはそのような処理を行う必要はない。
【0125】
このように、車群内で車両IDが衝突したときの競合解決が可能となる。競合解決が担保されると、車群内では短縮化した車両IDを使って通信データ量を減らすことが可能となる。
【0126】
なお、短縮化した車両IDを使うことにより通信データ量を減らすことができるが、競合解決のためのオーバヘッドが生じるのは避けられない。通信データ量が問題とならないケースやオーバヘッドが許されない環境では、車群内であっても短縮化した車両IDを用いないことが好ましいと言える。
【0127】
[5]車線変更による離脱
車群を構成する車両が路線変更などにより隊列から離脱した場合に、残りの車両で車群を維持して隊列走行を行うというシナリオである。
【0128】
まず、図13(A)(B)を参照して通信メンバが路線変更により離脱する場合を説明する。ここでは5台の車両A〜Eで構成される車群から、車両Cが路線変更した場合を考える。このとき、通信により通知される車群リストには車群を構成する車両とその走行順序が格納されているので、車群内の各車両は車群の状況が把握できる。各車両は、通信リーダAから送信されるHBパケットによって、車両A,B,C,D,Eの順からなる5台の車両から車群が構成されていることが分かる。また、それぞれの車両の位置情報も車群パケットに格納されている。
【0129】
一方、各車両はレーダによって前方車両の位置が分かる。車両Cが路線変更した場合、車両Dは前方の車両が(Xb,Yb)に位置することがレーダから検出できる。ここで、車群パケットから得られる位置情報を参照すると、(Xb,Yb)に位置する車両は車両Bであることが分かる。すなわち、車両Dは車両Bのすぐ後ろに位置していることが分かり、したがってその間に位置していた車両Cが路線変更等により離脱したことが分かる。そこで、車両Dは所属車群情報から離脱した車両Cを除いて、車両A,B,D,Eがこの順序で並んで車群を構成していると更新する。この処理は、S2720またはS2728で行われる処理である。車両Dに送信タイミングが到来すると、車両Dは自車が保持している状態情報、すなわち、車群は車両A,B,D,Eから構成されるという車群リストをMRパケットに格納して送信する。
【0130】
通信リーダAは、車両DからのこのMRパケットを受信すると、車群から車両Cが離脱したことを認識し、状態情報を更新する(S2404−S2432−S2434−S2436)。通信リーダAに送信タイミングが到来すると、通信リーダは自車が保持している状態情報、すなわち車群は車両A,B,D,Eから構成されるという車群リストをHBパケットに格納して送信する(S2612)。
【0131】
通信リーダAからのHBパケットを受信した車群メンバは、車群から車両Cが離脱したことを車群リストから認識できる。
【0132】
このように、車群中の車両が路線変更等により離脱した場合であっても、残りの車両に
よって車群を維持することができる(S2728)。
【0133】
次に、図14(A)(B)を参照して通信リーダが路線変更等により離脱する場合を説明する。このとき、車群において通信リーダの直後を走行していた通信メンバである車両Bは、レーダによって車群内の先行車両を特定することができなくなる。車両Bに送信タイミングが到来したときに先行車が特定不能であれば、車両Bは通信リーダへと状態遷移する(S2802−S2804−S2810)。そして、自車両を通信リーダとして、元の車群に含まれる車両のうち、自車両よりも後方に位置する全ての車両を通信メンバとして新しい車群を生成して所属車群情報として登録する(S2812)。外部の車群と重複しない車群IDおよびサイクルを選択し(S2814)、元の車群を除外リストに登録した上で(S2816)、HBパケットを作成してブロードキャスト送信する(S2818)。このHBパケットの車群リストには車両B〜Eが格納されている。
【0134】
車両Bから送信されるHBパケットを受信した車両C〜Eでは、HBパケットの車群IDは自車が属している車群IDとは異なるものの、そのHBパケットの車群リスト中に自車の車両IDが存在することが分かる。したがって、自車は今までとは異なる車群のメンバになったことが認識できるので、所属車群情報を受信したHBパケットにしたがって編集する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、元の車群からの情報による状態の振動を避けるために、元の車群を除外リストに追加する(S2912)。
【0135】
このように、通信リーダが路線変更等により車群から離脱した場合であっても、2番目を走行していた通信メンバが新しい通信リーダとなって、車群を維持することができる。
【0136】
[6]ドライバーによる解除
車群協調走行中に、その車群内の1台がドライバーによって車群隊列走行を解除し、マニュアル走行または通信ACC走行に移行したときに、残りの車両で車群を維持して隊列走行を行うというシナリオである。
【0137】
図15に示すように、7台の車両A〜Gが車群を形成しているときに車両Dがドライバーの操作によって車群協調走行を解除した場合を考える。車両Dは、通信機能により車群協調走行を解除したことを周囲の車両に通知する。このとき車両Dが送信する通信情報は、制御情報に自車の隊列走行モード(「マニュアル」または「通信ACC」)を格納し、走行順リストには、車群外前方車両に車両Cを、車群外後方車両に車両Eを格納して送信する。
【0138】
車群の通信リーダが、ドライバー操作による協調走行解除を通知するパケットを受信した場合(S2609−YES)は、この車両から車群外後続車両までを所属車群情報から削除するとともに、除外リストに登録する(S2611)。これにより、車両Dおよびこれより後方に位置する車両が車群から除外され、車両Aが通信リーダである車群には車両A〜Cのみが含まれるようになる。そして通信リーダは、HBパケットの車群リストに車両A,B,Cのみを格納して送信することで、他の車両に対して車群を構成するメンバが変更したことを通知する。
【0139】
一方、通信メンバが、ドライバー操作による協調走行解除を通知するパケットを受信した場合は、解除を行った車両が先行車であるか判断する(S2807)。自車両の前方に位置する車両が協調走行を解除した場合には、自車両が通信リーダへ遷移する(S2810)。この場合は、車両Eが通信リーダへと遷移する。そして、自車両よりも後方の車両F,Gを通信メンバとして新しい車群を生成して所属車群情報として登録する(S2812)。外部の車群と重複しない車群IDおよびサイクルを選択し(S2814)、元の車群を除外リストに登録した上で(S2816)、HBパケットを作成してブロードキャス
ト送信する(S2818)。このHBパケットの車群リストには車両E,F,Gが格納されている。
【0140】
車両Eから送信されるHBパケットを受信した車両F,Gでは、HBパケットの車群IDは自車が属している車群IDとは異なるものの、そのHBパケットの車群リスト中に自車の車両IDが存在することが分かる。したがって、自車は今までとは異なる車群のメンバになったことが認識できるので、受信したHBパケットにしたがって所属車群情報を編集する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、元の車群からの情報による状態の振動を避けるために、元の車群を除外リストに追加する(S2912)。
【0141】
このように、車群内のいずれかの車両でドライバーが車群協調走行を解除した場合であっても、その位置で車群を分離して前方車群および後方車群を生成して車群協調走行が行える。
【0142】
[7]非通信車両の割り込み
車群内に、通信機能を有していない車両が割り込んだときに、この非通信車両の前後で車群を分離するシナリオである。
【0143】
図16に示すように、6台の車両A〜Fで構成される車群が形成されているときに、車両Dの前方に通信機能を有していない車両Xが割り込んだ場合を考える。このとき、通信により通知される車群リストには、車群を構成する車両とのその走行順序が格納されているので、車群内の状況が把握できる。ここでは、車群が車両A,B,C,D,E,Fの順からなる6台の車両で構成されていることが分かる。また、それぞれの車両の位置情報も車群パケットに格納されている。
【0144】
一方、各車両はレーダによって前方車両の位置が分かる。車両Dの前方に非通信車両Xが割り込んだ場合は、レーダによって得られる前方車両の位置と、車群通信によって得られる前方車両(車両C)の位置(Xc,Yc)とが矛盾することになる。すなわち、車両Dは、先行車両を特定することができなくなる。
【0145】
通信メンバである車両Dに送信タイミングが到来したときに、車両Dは先行車両が特定できないので、通信リーダへと状態遷移する(S2804−S2810)。そして、自車両を通信リーダとして、元の車群に含まれる車両のうち、自車両よりも後方に位置する全ての車両を通信メンバとして新しい車群を生成して所属車群情報として登録する(S2812)。外部の車群と重複しない車群IDおよびサイクルを選択し(S2814)、元の車群を除外リストに登録した上で(S2816)、HBパケットを作成してブロードキャスト送信する(S2818)。このHBパケットの車群リストには車両D,E,Fが格納されている。
【0146】
車両Dから送信されるHBパケットを受信した車両E,Fでは、HBパケットの車群IDは自車が属している車群IDとは異なるものの、そのHBパケットの車群リスト中に自車の車両IDが存在することが分かる。したがって、自車は今までとは異なる車群のメンバになったことが認識できるので、所属車群情報を受信したHBパケットにしたがって編集する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、元の車群からの情報による状態の振動を避けるために、元の車群を除外リストに追加する(S2912)。
【0147】
また、車両Dから送信されるHBパケットを受信した車両A(元の車群の通信リーダ)は、受信パケットが他の車群からのHBパケットであり(S2404−NO,S2406−YES)、自車の所属車群情報に通信メンバとして登録されている車両が送信元である(S2412ーYES)ことが分かる。受信したHBパケットの送信元の車両Cは、元の
車群の3番目以降なので(S2416−NO)、車両Cおよびそれより後ろの車両E,Fを車群から削除して、車両A,B,Cのみを車群リストに含むように所属車群情報を更新する(S2420)。なお、分離した後続車群の通信リーダの走行位置が2番目であった場合(S2416−YES)は、通信リーダAは1台だけの車群となるので、車群準備状態へと遷移する(S2418)。なお、いずれの場合も、分離した車群との間で状態の振動を起こさないように、新たな車群を除外リストに追加している(S2414)。
【0148】
通信リーダAから車両A〜Cを車群リストに含むHBパケットを受信した車両B,Cは、所属車群を構成する車両に変化があったことを認識して、所属車群情報を更新する。
【0149】
このように、車群内に通信機能を有しない車両が割り込んだ場合であっても、その位置で車群を分離して前方車群および後方車群を生成して車群協調走行が行える。
【0150】
[8]特定車両の通信機能停止
車群内の特定車両の通信機能が停止したときに、この車両の前後で車群を分離するシナリオである。通信機能の停止には、送信機能の停止と、受信機能の停止がある。まず、それぞれの場合について、どのようにして機能停止を他の車両が検知するかについて説明する。
【0151】
図17(A)は、車両A〜Gで構成される車群内の車両Dの送信機能が停止した場合を説明する図である。車群内の車両は、自車両は車両Dからの通信を受信しないことがわかる。そこで、HBパケットまたはMRパケットに車両DについてACK無しを格納して送信する。また、他の車両からのパケットにも車両DについてACK無しが格納されていることから、車群内の各車両は自車両だけでなく車群内の全車両が車両Dからの通信を受信できないことが分かる。このように、車群内の車両のうち所定割合以上の車両(全車両でも良い)が、車両DについてACK無しの車群パケットを送信した場合は、この車両Dの通信機能が停止したと判断できる。なお、この判断は1サイクルだけで判断するのではなく、車両DからのACK無しが所定サイクル以上続いた場合に、車両Cの送信機能が停止したと判断することが好ましい。
【0152】
図17(B)は、車両A〜Gで構成される車群内の車両Dの受信機能が停止したが送信機能は有効な場合を説明する図である。車両Dは受信機能が停止していることから他の車両からの通信を受信できず、MRパケット(またはHBパケット)に他の車両についてACK無しを格納して送信する。車両D以外の車両は、車群内の各車両からの通信を受信できるので、各車両についてACK有りを格納してMRパケットまたはHBパケットを送信する。このように車両Dから車群内の車両のうち所定割合以上の車両(全車両でも良い)についてACK無しの車群パケットを受信し、他の車両からはACK有りの車群パケットを受信している場合には、車両Dの受信機能が停止したことが判断できる。なお、この判断も、1サイクルだけで判断するのではなく、車両Dが各車両について所定サイクル以上続けてACK無しの車群パケットを送信する場合に、車両Dの受信機能が停止したと判断することが好ましい。
【0153】
図18は先行車両の通信機能が停止したときの制御を説明する図である。車両Dの通信機能(送信機能・受信機能いずれでも)が停止した場合、車両Eは送信タイミング到来時に先行車両の通信機能が停止している(S2806−YES)ことから、通信リーダへと遷移し(S2810)、自車両よりも後方の車両F,Gを通信メンバとして新しい車群を生成して所属車群情報として登録する(S2812)。外部の車群と重複しない車群IDおよびサイクルを選択し(S2814)、元の車群を除外リストに登録した上で(S2816)、HBパケットを作成してブロードキャスト送信する(S2818)。このHBパケットの車群リストには車両E,F,Gが格納されている。
【0154】
車両Eから送信されるHBパケットを受信した車両F,Gでは、HBパケットの車群IDは自車が属している車群IDとは異なるものの、そのHBパケットの車群リスト中に自車の車両IDが存在することが分かる。したがって、自車は今までとは異なる車群のメンバになったことが認識できるので、受信したHBパケットにしたがって所属車群情報を編集する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、元の車群からの情報による状態の振動を避けるために、元の車群を除外リストに追加する(S2912)。
【0155】
また、車両Eから送信されるHBパケットを受信した車両A(元の車群の通信リーダ)は、受信パケットが他の車群からのHBパケットであり(S2404−NO,S2406−YES)、自車の所属車群情報に通信メンバとして登録されている車両が送信元である(S2412ーYES)ことが分かる。受信したHBパケットの送信元の車両Eは、元の車群の3番目以降なので(S2416−NO)、車両E、それより後ろの車両F,G、および通信機能の停止した車両Dを車群から削除して、車両A,B,Cのみを車群リストに含むように所属車群情報を更新する(S2420)。なお、いずれの場合も、分離した車群との間で状態の振動を起こさないように、新たな車群を除外リストに追加している(S2414)。
【0156】
通信リーダAから車両A〜Cを車群リストに含むHBパケットを受信した車両B,Cは、所属車群を構成する車両に変化があったことを認識して、所属車群情報を更新する。
【0157】
ここで車両Eは、受信機能が停止したことにより周囲の車両からの通信が受信できなくなる。したがって、車両Eでも自らの受信機能が停止したことを推定できる。そこで、車両Eは他の車両からのパケットを受信しなくても、車群メンバ状態から追従走行状態へと遷移することが好ましい。通信メンバは、自らの受信機能が停止した場合(S2808−YES)には、車群準備状態へと遷移し(S2820)、状態情報を編集する。また、元の車群を除外リストに追加する(S2822)。これにより、受信機能が途絶えた車両は、自らメンバを解除できる。
【0158】
このように、車群内のいずれかの車両で通信機能が停止した場合であっても、その位置で車群を分離して前方車群および後方車群を生成して車群協調走行が行える。
【0159】
[9]通信可能範囲外への移動
車群内の車両が通信可能範囲外へ移動した場合に、通信可能な車両同士で車群を維持するシナリオである。図19(A)(B)は、車両A〜Eの5台の車両で車群を形成している際に、車両A,B間の車間距離が開いて車両A,B間での通信ができなくなった場合を示す図である。車両Bは、先行車両からの通信を受信できなくなるので、先行車を特定することができなくなる(S2804−YES)。したがって、図14(B)に示すように車両Bは通信リーダへ遷移して、車群内で自車よりも後方に位置する車両を通信メンバとした新しい車群を形成する。これ以降の処理は上記[7]で説明した処理と同じであるため、詳細は省略する。
【0160】
なお、図19(A)(B)では通信リーダ(先頭車両)と2番目の車両との間で車間距離が開いた場合を説明したが、車群内の任意の車両間で車間距離が開いた場合も、先行車両を特定できなくなった車両が通信リーダに遷移することに代わりはない。
【0161】
[10]電波干渉の発生
電波干渉が発生した場合に、車群協調走行を行う車両台数を減らして通信量を抑制することで、通信品質を回復する制御である。
【0162】
図20(A)(B)は、車両A〜Gの7台の車両で構成される車群内で電波の干渉が発生した場合を説明する図である。電波干渉が発生すると車群内の多くの車両で電波を受信できなくなる。したがって、通信リーダは、車群リストにACK無しを多く含むMRパケットを同時に受信することになる。このように、通信リーダは、車群内の通信メンバが全体的に他車両からの通信をできなくなった場合に、電波干渉による受信障害が発生したと判断する。
【0163】
通信リーダが同時多発的な受信途絶を検知したときは、所属車群情報から最後尾車両を削除する(S2606−S2610)。この例では、車群最後尾の車両Gを通信メンバから除外して、車群外後続車両として登録する。そして、通信リーダは、新しい車群リストを含むHBパケットを生成してブロードキャスト通信する(S2612)。
【0164】
このHBパケットを受信した車両Gは、自車が属していた車群からのHBパケットであるにもかかわらず、自車両のIDがHBパケットに含まれないことから、自車両が車群から除外されたことを検知して車群準備状態へ遷移する(S2704−S2714−S2724−S2732)。
【0165】
なお、通信メンバである車両B〜Fは、車両AからのHBパケットを受信することで、車両Gが車群から除外されたことを認識できるので、状態情報を更新する。
【0166】
このようにして、車両Gと車両A〜Fは別の車群となるので、車両F,G間は通信ACCによる追従走行となり車間距離が開くので、電波干渉が軽減されることになる。なお、車両Gを車群から除外しても電波干渉が改善されない場合には、さらに次の最後尾車両を除外していくことで、最終的に電波干渉が軽減される。
【0167】
以上のように本実施形態によれば、車群内での通信量を削減することで、通信品質の向上すなわち通信途絶の抑制が可能となる。また、通信途絶が発生した場合であっても、重大な影響が及ぶ範囲を車群内に限定可能である。また、通信途絶が発生した場合に車群を分離することで、通信途絶が発生した車群内についても重大な影響がおよび範囲を限定可能である。
【0168】
なお、上記では例示的に実施形態を参照して本発明の説明を行ったが、本発明は上記で記した実施形態に限定して解釈するべきではない。たとえば、実施形態では通信リーダが車群の先頭である場合を例に説明しているが、通信リーダを先頭以外としても良い。また、通信リーダが先頭であっても先頭以外であっても、車群の前方に位置する車両を車群に合流するようにしても構わない。前方の車両を合流する場合も後方の車両を合流する場合と同様の処理により対処可能である。また、車群内で通信リーダが変更する場合も、新しい通信リーダがHBパケットにより自車両が通信リーダになったことを通知すればよい。
【0169】
また、上記の実施形態では、通信リーダと制御リーダが同一の車両である場合を例に説明しているが、必ずしも通信リーダと制御リーダとを同一の車両とする必要はない。たとえば、通信リーダを中央付近の車両(先頭車両以外の車両)とし、制御リーダを先頭車両とする形態が考えられる。通信リーダが上記の説明と同様の方法により車群の維持・管理を行い、制御リーダが車群の隊列走行を制御する。この場合、制御リーダが目標制御値を含む走行制御情報をブロードキャスト送信し、これを受信した通信リーダが車群メンバに走行制御情報を再度ブロードキャスト送信することで、車群内の各車両に走行制御情報を伝達する。このように、通信リーダと制御リーダとを別々の車両とした場合、メンバー離脱などの解散の影響が少なくなりロバスト性が向上する。また、通信リーダによる走行制御情報の転送により車群の範囲が広がるという利点もある。
【符号の説明】
【0170】
701 車両走行制御ECU
702 制御部
703 記憶部
704 タイマ
705 車車間通信装置
706 通信部
707 GPS装置
708 ミリ波レーダ
709 エンジンECU
710 ブレーキECU
711 ステアリングECU
【技術分野】
【0001】
本発明は、車群管理方法および隊列走行通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先行車両に自動的に追従して走行する隊列走行が研究されている。このような隊列走行により、運転者を運転操作から解放するとともに、車間距離の短縮による輸送効率および燃費の向上を図ることができる。また、このような隊列走行では、車車間通信により走行制御に必要な情報をやりとりして、より効果的な制御を実現する提案がなされている。
【0003】
通信を利用する隊列走行の第1の態様としては、レーダの代わりにあるいはレーダと併用して、前方車両から送信される情報にしたがって自車両を制御する手法がある。このような仕組みの隊列走行を、本明細書では、通信ACC(Adaptive Cruise
Control)あるいは追従走行と称する。
【0004】
さらに進んだ態様として、隊列走行を行う車両間で送達確認を行い、双方向の通信を担保しつつ走行制御を行う隊列走行システムがある。双方向通信が担保されると割り込みたい車両に対して車間を広げるなどの柔軟で高度な制御が可能となり、車間距離の短縮化、燃費の改善、滑らかな追従が実現できる。このような仕組みの隊列走行を、本明細書では、協調走行と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−46820号公報
【特許文献2】特開2006−261742号公報
【特許文献3】特開2001−6099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、協調走行を行っている車両が互いの通信全てに対して個別に受信応答(ACK)を送信する分散通信方式の場合、必要な通信の量が隊列走行を行う車両の台数の増加に伴って急激に増加する。N台の車両で隊列走行をしている場合に、ある1台の車両が送信した情報に対して残りのN−1台の車両が受信応答を返すことになるので、N台の車両がそれぞれ情報を送信するたびに合計でN2のオーダーの回数送信が必要となる。
【0007】
このように通信量が増加すると電波干渉が発生し、隊列走行制御に悪影響を与えるおそれがある。したがって、送達確認に要する通信量をできるだけ減らして、通信の途絶がなるべく発生しないようにすることが望まれる。
【0008】
また、協調走行を行っている際に通信途絶が発生したら、通信ACCによる追従走行に切り替えることも考えられる。通信ACCでは、送達確認が不要であり、また、車間距離も長くなるので電波干渉が抑制されるためである。しかしながら、協調走行から通信ACCによる追従走行に切り替えて車間距離を広げるのは容易ではない。通信の途絶を完全に抑制することは困難であることを考慮すると、通信途絶が発生した際の悪影響をできるだけ少なくすることも望ましい。
【0009】
以上のように、本発明は、双方向通信を利用して隊列走行を行う隊列走行システムにお
いて、送達確認に必要な通信量を減らして、通信の途絶をできるだけ抑制することを目的とする。また、本発明はさらに、通信の途絶が発生した場合にもその影響を最小限にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
通信途絶の抑制を達成するために、本発明に係る車群管理方法は、
双方向通信が可能な複数の車両から、1台の車両をリーダ、その他の車両をメンバとして車群を形成し、車群内の車両同士による通信を利用して隊列走行を行う隊列走行通信システムにおける車群管理方法であって、
リーダが、定期的に情報を送信するステップと、
各メンバが、リーダから送信される情報に対して応答を返すステップと、
を含み、
リーダから送信される情報には、前サイクルにおける各メンバからの通信を受信できたか否かを示す受信応答が含まれ、
各メンバから送信される情報には、現サイクルにおけるリーダからの通信、および、前サイクルにおける他のメンバからの通信を受信できたか否かを示す受信応答が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報に含まれる受信応答に基づいて、通信の双方向性を確認する
ことを特徴とする。
【0011】
上記のように、車群内でリーダが定期的に情報送信を行い、それに対してメンバが応答を返すことで、車群内の通信に関して時間的な境界であるサイクルを導入できる。そして、各車両が1サイクル分の受信応答をまとめて送信するとパケットヘッダなどの重複情報を減らせるので、通信の双方向性を確認するために要する通信量を削減できる。通信量を削減できるので通信品質の向上すなわち通信途絶を抑制することが可能となる。
【0012】
本発明においては、各車両が定期的に送信する情報には、当該車両の位置、車群を構成する車両の識別子、車群を構成する各車両に対する受信応答が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報と、自車両が備えるセンサによって取得される情報とに基づいて、自律的に走行制御を行うことが好ましい。
ここで、各車両が定期的に送信する情報には、車群を構成する車両の車群内の走行順序が含まれることが好ましい。車群内の走行順序は、送信する情報の中に車群を構成する識別子を走行順序にしたがって列挙することで表現することができる。また、車両の識別子と走行順序(番号等)を関連付けて送信する情報に格納するようにしても良い。また、車群外の直前および直後の車両に関する情報も含まれることが好ましい。また、自車両が備えるセンサとしては、自車両の位置を測定するセンサ、自車両の少なくとも前方の物体の位置を測定するセンサが含まれることが好ましい。
【0013】
上記のように、各車両が定期的に送信する情報に送信車両が送信時点で把握している車群に関する情報を格納して送信するようにし、他の車両に対して特定の制御を行うように指示する命令を発することなく各車両が自律的に走行制御の判断を行うことで、制御命令を送信する必要がなくなる。さらに制御命令の送達確認に要する通信も不要となる。このように通信量を減らすことができるので、通信品質の向上すなわち通信途絶を抑制することが可能となる。また、他車両から送信される情報を一時的に受信できなかった場合であっても、次に送信される情報を受信したときに走行制御が可能となり、しかも常に最も新しい状態情報に基づいて走行制御が可能となるという利点も得られる。
【0014】
本発明において、車群を構成する車両の台数に上限が設けられていることが好ましい。
【0015】
車群内の車両台数を制限することで、車群内での通信量を減らすことができ、通信品質
の向上および通信途絶の抑制が可能となる。
【0016】
本発明においては、車群の先頭に位置する車両は、車群外の前方の車両に対して追従する走行制御を行い、
車群の先頭車両とその前方の車両との間の車間距離は、車群内での車間距離よりも長い
ことが好ましい。
【0017】
上記のように車群の先頭車両がその前方車両に追従することで、複数の車群が全体として隊列走行が可能となる。この際、車群の先頭車両とその前方の車間距離を、車群内の車間距離よりも長くすることで、車群の前方での速度等の変化をこの部分で吸収することができ、車群内への影響を低減することができる。すなわち、前方車群で通信途絶等が発生した場合であっても、その悪影響を前方車群内だけにとどめることが可能となり、後方車群に通信途絶による悪影響が極力及ばないようにできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、より少ない通信量で隊列走行を行う車両間での送達確認が行えるので、電波の干渉が減り通信の途絶が抑制される。
【0019】
さらに、通信の途絶が発生した場合であっても、その影響を限定的にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態におけるACK制御方式を説明する図である。
【図2】本実施形態における車群協調走行と車群間の走行制御を説明する図である。
【図3】車群内で通信途絶が発生した場合に、通信途絶車両の前後で車群を分離する制御を説明する図である。
【図4】本実施形態におけるデータパケットのフォーマットを説明する図である。
【図5】本実施形態におけるACK制御方式を詳細に説明する図である。
【図6】本実施形態における状態情報の情報源を説明する図である。
【図7】本実施形態における車両の機能構成を説明する図である。
【図8】本実施形態における車両の状態遷移を説明する図である。
【図9】通信ACCにより走行していた2台の車両が合流して1つの車群を形成する処理を説明する図である。
【図10】車群に対して通信ACCにより追従走行していた車両を車群が合流する処理を説明する図である。
【図11】2つの車群が合流して1つの車群を形成する処理を説明する図である。
【図12】車群内で車両IDが競合した場合の競合解決処理を説明する図である。
【図13】車群内から通信メンバが離脱したときの制御を説明する図である。
【図14】車群内から通信リーダ(先頭車両)が離脱したときの制御を説明する図である。
【図15】車群内の車両が車群協調走行を解除した場合の処理を説明する図である。
【図16】車群内に通信機能を有しない車両が割り込んだ場合の処理を説明する図である。
【図17】車群内車両の通信機能停止を検出する方法を説明する図である。
【図18】車群内で車両の通信機能が停止した場合の処理を説明する図である。
【図19】車群内の車両が通信可能範囲外へ移動した場合の処理を説明する図である。
【図20】車群内で電波干渉が発生した場合の処理を説明する図である。
【図21】パケット受信時に行う全車両共通の処理のフローチャートである。
【図22】追従走行状態にある車両がパケット受信時および送信タイミング到来時に行う処理のフローチャートである。
【図23】車群準備状態にある車両がパケット受信時および送信タイミング到来時に行う処理のフローチャートである。
【図24】通信リーダ状態にある車両が車群パケット受信時に行う処理のフローチャートである。
【図25】通信リーダ状態にある車両が通信ACCパケット受信時に行う処理のフローチャートである。
【図26】通信リーダ状態にある車両が送信タイミング到来時に行う処理のフローチャートである。
【図27】通信メンバ状態にある車両が車群パケット受信時に行う処理のフローチャートである。
【図28】通信メンバ状態にある車両が送信タイミング到来時に行う処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態は、車群を形成し車群内での双方向通信によって隊列走行を制御する隊列走行システムである。本実施形態の隊列走行制御は、協調走行の一種であるが従来技術と区別するために車群協調走行と称する。このような双方向通信を利用する車群協調走行では、より柔軟で高度な隊列走行制御が可能となり車間距離を短縮化できる。車間距離を短縮した隊列走行を行っているときに、通信の途絶が発生した場合には、安全のために隊列走行制御を解除または制御を追従走行に変更して車間距離を開ける必要が生じる。このように、双方向通信を利用して隊列走行を行う場合、通信途絶が発生するとその影響が大きい。
【0022】
1.本実施形態に係る隊列走行システムの概要説明
本実施形態では、通信を管理するリーダを選出し、通信リーダが通信メンバを選んでグループ(車群)を形成する。それ以降、通信リーダと通信メンバ間の定期的な通信によって車群の維持・管理を行う。また、車群内の制御リーダが他の車両に目標制御値を送信し、各車両が送信された目標制御値に従って走行することで隊列走行が行われる。このように、通信リーダが車群内の通信を管理し、制御リーダが車群内の隊列走行制御を行うことで、車群による隊列走行が実現される。
【0023】
本実施形態においては、車群内および車群間でこれから述べる通信方式や車群維持・管理手法を採用することで、通信途絶の発生抑制および通信途絶時の影響軽減を実現する。
【0024】
(A)通信途絶の発生抑制
通信途絶の発生抑制のためには、隊列走行に必要な無線通信を効率的に行って、電波干渉を抑制する必要がある。その対策として以下の手法を採用する。
【0025】
(A−1)ACK制御の改善(車群通信方式)
通信の双方向性を確認するためにACK(受信応答。ループバックと呼ばれることもあるが本明細書ではACKと呼ぶ。)を返す必要がある。各車両が他車両からの通信に対して個別にACKを返す分散通信方式では、車両数の増加にしたがって必要な通信量が急激に(O(N2)のオーダーで)増加する。したがって、車群内の各車両が1回メッセージ(ACKのみの通信を除く)を送信するたびに車群内でN2のオーダー回の通信が必要となり、電波の干渉を招く。
【0026】
本実施形態においては、図1(A)に示すように、車群内で通信リーダ(図中A)がブロードキャスト通信を行い、それに応答して各メンバ(図中B,C)が応答を返す通信方式を採用する。本明細書では、通信リーダからの通信をHB(HeartBeat)、通信メンバ
からの通信をMR(Membership Report)と称する。このような通信方式とすることで、
車群内の通信にサイクルを定義することができる。1サイクルは、通信リーダからのHBで始まり、次のHBの直前で終了する。通信リーダおよび通信メンバは、1サイクルにおいて1回の送信権が得られる。
【0027】
図1(B)を参照してACK制御の方式を説明する。図1(B)において、「カウンタ」は各車両が送信するメッセージを識別するものであり、「ACK」はそのメッセージ送信においてどのメッセージに対するACKを返すかを示す。図に示すように、通信リーダは、前サイクルにおける各メンバからの通信に対するACKを格納してHBパケットを送信する。また、通信メンバは、現サイクルにおける通信リーダからの通信に対するACKと、前サイクルにおける他のメンバからの通信に対するACKを格納してMRパケットを送信する。具体的には、サイクルiにおいて、通信リーダはサイクルi−1における通信メンバからの通信に対するACKを格納してHBパケットを送信する。また、通信メンバは、サイクルiにおける通信リーダからのHBパケットに対するACKと、サイクルi−1における他のメンバからのMRパケットに対するACKを格納してMRパケットを送信する。
【0028】
このようにサイクルごとのACKをまとめて伝達することで、通信回数を減らしつつ、互いの通信の双方向性が確認できる。なお、本ACK制御方式では、各車両がそれぞれ1回メッセージ送信するときに必要となる双方向性確認のための通信回数は車群の台数と同じ(O(N))である。このように車群内での双方向性確認のための通信回数を減らせるので、電波干渉を抑制し通信途絶の発生を抑制することができる。メンバ間通信の双方向性確認には1サイクルの遅延が生じるが、ACKのための通信回数を減らせ1サイクルごとに新しい情報を送れるので問題は生じない。むしろ、従来のACK方式ではACK確認にNサイクルを必要としNサイクルおきにしか新しい情報が送れないのに対して、本ACK方式ではACK確認しつつ1サイクルごとに新しい情報を送信できるために、通信の遅延が少なくなるという利点がある。
【0029】
なお、ACKを返す対象の通信を車群内車両からの通信に限る必要はなく、車群外の車両からの通信に対してもACKを返すようにしても良い。本実施形態においては、後述するように、自車両が属する車群のすぐ前方に位置する車両(「車群外先行車」と呼ぶ)と、自車両が属する車群のすぐ後方に位置する車両(「車群外後続車」と呼ぶ)からの通信に対するACKを含める。
【0030】
(A−2)状態情報共有による協調(情報伝達方式)
本実施形態では、各車両は自車が把握している状態情報をHBパケットやMRパケットに含めて送信する。各車両は、周囲車両の通信から得られる状態情報および、自車両のセンサ等から得られる情報に基づいて、周囲の状態情報の変化を把握して、状態情報の更新およびそれに応じた制御を行う。状態情報は、車群の維持・管理に必要または有用な情報や、隊列走行制御に必要または有用な情報である。たとえば、状態情報には、双方向通信可能性、車群に属しているか否か、車群内での走行順、各車両の位置、走行方向、走行速度、加速度など種々の情報が含まれうる。
【0031】
状態情報を共有し各車両が最新の状態情報に応じて自律的に制御を行う間接命令型の制御方式以外に、他車両からの明示的な制御命令にしたがって制御を行う直接命令型の制御方式を採用することも考えられる。直接命令型の命令伝達方式には、リーダが制御命令を送りメンバがACKを返す方式や、リーダが複数回(パケット到達率に応じて必要な回数が計算される)制御命令を送りメンバはACKを返さない方式が考えられる。しかしながら、間接命令型の制御方式には以下のような利点があるため、本実施形態では状態情報共有による制御方式を採用する。
【0032】
まず、状態情報共有方式では、制御命令やそれに対するACKを送る必要がなくなるため、通信量を減らすことができる。制御命令+ACK方式では1回の制御情報伝達に2回(往復)の通信が必要であり、制御命令複数回伝送方式では複数回の通信を必要としてしまう。また、複数回伝送方式では何回送出するかを設計することも難しい。状態情報共有方式では状態情報を送る必要があるが、状態情報自体は制御目的以外にも必要な情報であり、余分なデータというわけではない。
【0033】
また、制御命令を送信する方式で送信に失敗した場合は有効時間内であれば制御命令の再送を行うが、その間に状況の変化が生じることもあり、情報が実際に有効である保証はない。その場合、無駄なブロードキャストの発生や陳腐化した情報による混乱が生じる可能性がある。それに対して、状態情報共有方式では、各車両が常に最新の状態情報を送信するため、無駄なブロードキャストの発生や情報の陳腐化といった問題は生じない。
【0034】
なお、状態情報共有方式では、他車両から送信される状態情報に単純に従うと制御状態が振動する場合がある。たとえば、ある車両が車群に合流したり離脱したりを繰り返すことが起こりうる。そのため制御状態の変更にヒステリシスを設けこの問題を回避することが望ましい。具体的には、制御状態の振動を引き起こす可能性が高い車両からの通知される状態情報を一定期間(除外期間)無視するようにすればよい。
【0035】
(A−3)車群通信の優先制御
車群内では通信の双方向性を維持することが隊列走行の制御に重要である。したがって、車群通信(車群に属する車両の通信)を車群に属さない車両の通信に優先させることで、車群通信の通信途絶を抑制することが好ましい。このために本実施形態では、車群通信を受信した車両は通信を抑制する。
【0036】
抑制方法については、車群通信を傍受した車両が一定時間待機する抑制(Suppression
)方式と、車群通信を傍受した車両が車群通信で指定された時間まで待機する予約(Reservation)方式とがある。すなわち、抑制方式では待機時間を受信側車両(車群外車両)
で判断し、予約方式では待機時間を送信側車両(車群内車両)で判断する。抑制方式では車群通信に対して特殊な制御を設ける必要がないので実装が簡易であり、予約方式では車群通信に追加情報が必要であるものの車群通信を行っている間確実に通信を除外できるという利点がそれぞれある。
【0037】
また、抑制される通信内容に関して、全ての通信を行わない方法と、車両制御用を除いた通信(エンターテインメント用情報、交通情報等)を行わないことが考えられる。全ての通信を待機すれば車群通信の優先度が上がるが、車群に属さない車両の制御用情報のやりとりができなくなる。したがって、車群通信をどれだけ優先させるかによって、抑制する通信内容を決定すればよい。
【0038】
なお、本実施形態では、抑制方式で、制御用以外の通信を行わない手法を採用する。
【0039】
(B)通信途絶の影響軽減
本実施形態では、通信途絶を抑制するために上記(A)のような種々の手法を採用しているが、それでも通信途絶を完全になくすことは困難である。そこで、通信途絶が発生した場合であっても、その影響が軽減する設計が望まれる。通信途絶による影響としては、隊列走行制御モードの切り替え(車群協調走行から追従走行への切り替え)による車間距離等の変化が挙げられる。
【0040】
本実施形態では、以下の手法によって通信途絶時の悪影響を軽減する。
【0041】
(B−1)車群間での追従走行
本実施形態では、図2に示すように、1つの車群を構成する車両台数に上限を設け、車群間の隊列走行制御方式として追従走行を採用する。車群内では、上述の車群通信によって双方向通信を行いながら隊列走行制御を行う。このような車群協調走行では、柔軟な制御が可能であるため車間距離を比較的短くすることができる。
【0042】
一方、車群間の隊列走行制御では、後方車両が前方車両に追従する追従走行を採用する。ここでは、後続車群22の先頭車両22Hが通信ACCにより前方車群21の最後尾車両21Tに追従する。先頭車両22Hにおける走行制御は、最後尾車両21Hからの通信および自車に搭載されたレーダによって得られる情報に基づいて行われる。追従走行では、車群協調走行ほどには柔軟な制御ができないため、車間距離はより長くなっている。
【0043】
このように車群間を追従走行とすることで、ある車群内での通信途絶の影響が後続車群に及ばないようにすることができる。たとえば、前方車群21において通信途絶が発生し、前方車群内の車両が全て通信ACCによる追従走行に変更になった場合を考える。前方車群内では、追従走行への移行に伴って車間距離を長くする必要があるため、各車両間の相対位置が変化する。しかしながら、後続車群の先頭車両はもともと追従走行を行っているため、前方車両との相対位置(車間距離)を変化させる必要がない。もちろん前方車両の速度変化(減速)に伴って後続車群も速度を変化させる必要があるが、車両間の相対位置に変化がなければ乗員に対して与える不安は少ないと考えられる。
【0044】
(B−2)車群内での通信途絶時に車群分割
車群内で通信の途絶が発生する状況には、2通りの状況が考えられる。1つは、特定の車両との間で通信が行えなくなる場合である。図3(A)に示すように、車群を構成する特定の車両31との間で通信ができなくなった場合には、図3(B)に示すように車両31より前方に位置する車両からなる車群32と、車両31より後方に位置する車両からなる車群33との2つの車群に分割する。そして後方車群33は、車両31に対して通信ACCにより追従走行を行う。このようにすれば、車両間の相対位置の変化を最小限とすることができる。
【0045】
また、通信の輻輳により車群を構成する車両全体で通信ができにくくなる状況も考えられる。この場合には、通信リーダが車群内の通信メンバの一部を車群から除外する。車群を構成する車両台数を少なくすることで、電波干渉を軽減でき通信を回復できる。除外された車両以外は車群協調走行を維持できるので、通信途絶時の悪影響を抑えることができる。
【0046】
2.本実施形態に係る隊列走行システムにおける制御要求
本実施形態に係る隊列走行システムでは、以下の通信制御を可能とする。なお、ここでは本隊列走行システムが満たすべき要求を提示するだけにし、これらの要求を如何にして実現するかについては後述する。
【0047】
(A)隊列への合流
車両間の通信によって隊列へ新たな車両が合流できる必要がある。隊列の合流とは、隊列に属する車両台数が増加することを言い、車群が新たに形成されることを含む。隊列への合流の態様は、さらに[1]〜[3]の3つに分けることができる。
【0048】
[1]車群の形成:
これは、車群に属していない車両同士が合流して新たに車群を形成するシナリオである。このシナリオのイメージは図9に示されている。なお、図中、点線で囲まれている車両
の集まりは車群を意味する。
【0049】
[2]車群への参加:
これは、既存の車群に、車群に属していない車両が参加して車群が大きくなるシナリオである。このシナリオのイメージは図10に示されている。
【0050】
[3]車群同士の合流:
これは、既存の2つの車群が合流して、1つの大きな車群になるシナリオである。このシナリオのイメージは図11に示されている。
【0051】
また、隊列の合流時における問題として車両IDの競合がある。
【0052】
[4]車両IDの競合解決
車両IDには全ての車両に個別のIDを割り当てることが理想的であるが無駄が多いため、たとえば、ある限られた範囲で重複しないようなIDを採用することが考えられる。このように車両IDは必ずしも一意ではないので、隊列の合流時に車群内の車両で車両IDが重複(競合)する場合がある。したがって、この車両IDの競合を解決する仕組みも必要である。
【0053】
(B)隊列からの離脱
[5]車線変更による離脱
車群内の車両が車線変更などにより隊列から離脱した場合には、残りの車両で車群を維持して隊列走行を続けることができるという要求である(図13、図14参照)。
【0054】
(C)隊列の分離
車群内に車群通信不可能な車両が発生した場合には、その車両よりも前方部分と後方部分との2つに車群を分離するという要求である。車群内に車群通信不可能な車両が現れるシナリオは以下の2つに分けることができる。
【0055】
[6]ドライバーによる解除
車群協調走行中に、その車群内の1台がドライバーによって隊列走行を解除することによって、車群内に車群通信できない車両が現れる場合である(図15参照)。
【0056】
[7]非通信車両の割り込み
車群内に、通信機能を有していない車両が割り込むことによって、車群内に車群通信できない車両が現れる場合である(図16参照)。
【0057】
(D)通信の途絶
車群内で通信の途絶が発生した場合でも、安全に制御を続けられることが要求される。通信の途絶は、さらに以下の4つの態様に分類できる。
【0058】
[8]特定車両の通信機能停止
車群内の車両の通信機能が停止した場合に、その車両よりも前方部分と後方部分との2つに車群を分離する。なお、通信機能の停止には、送信機能が停止する場合(図17(A)参照)と受信機能が停止する場合(図17(B)参照)がある。いずれの場合であっても、その車両よりも前方部分と後方部分の2つに車群を分離する(図18)。
【0059】
[9]通信可能範囲外への移動
車群内の車両が通信可能範囲外へ移動した場合にも、それ以外の車両で車群を維持することが要求される(図19参照)。
【0060】
[10]電波干渉の発生
電波干渉(輻輳)が発生した場合には、車群内の全ての車両が同時多発的に通信を受信できなくなる。電波干渉が発生した場合には全体の通信量を抑制する必要がある。本実施形態では、車群を構成する車両の台数を減らすことで通信量を抑制する(図20参照)。
【0061】
3.本実施形態に係る隊列走行システムの詳細説明
(A)通信リーダ・制御リーダの決定方針
本実施形態に係る隊列走行システムでは、通信リーダが通信可能範囲内から通信メンバを選出して車群を形成する。そのため、どの車両を通信リーダとするかは重要な問題である。通信リーダが車群内のどの位置にあっても上記の要求を満たした機能を実装可能であるが、通信リーダは車群の先頭または中央付近に位置することが好適である。
【0062】
通信リーダが先頭の場合、車群後方の車両を合流する場合は合流する車両台数が何台であっても通信リーダの変更が生じず安定である。一方、車群前方の車両を合流する場合には必ず通信リーダの変更が生じてしまうため不安定である。
【0063】
一方、通信リーダが車群中央付近の場合、車群前方および後方のいずれからの合流であっても、合流する台数が少ない場合は通信リーダの変更が生じず安定であるが、合流する台数が多くなると通信リーダの変更が生じて不安定となる。
【0064】
このように、車群への合流を考慮した場合、通信リーダを先頭車両として、後方からの合流のみを許可すれば(前方からの合流は行わない)常に通信リーダが変わらず安定的であることが分かる。
【0065】
また、通信の途絶時の影響についても考察する。通信リーダの通信機能が停止した場合、通信リーダが先頭であれば、2台目以降の車両で1つの車群を自律的に形成することができる。これに対して、通信リーダが車群中央付近であれば、少なくとも車群は2つに分かれてしまう(あるいは完全に車群を解消する)。また、電波干渉発生時にも、通信リーダが先頭であれば、車群最後尾の車両を車群から除くことで対応できる。通信リーダが中央付近の場合は、通信リーダを変更しないという条件の下では、車群の先頭と最後尾から均等に車両を除くという複雑な制御が必要となる。
【0066】
このように、通信途絶時の影響を考慮しても通信リーダが先頭であれば制御が容易あるいは安定的である。
【0067】
なお、通信リーダは、その通信可能範囲内から通信メンバを選出して車群を形成する。ここで、通信可能範囲は、直接通信可能な範囲(ワンホップで通信可能な範囲)だけではなく、マルチホップ通信により通信可能な範囲内であって良い。ただし、以下では説明の簡略化のためにシングルホップ通信を例に説明するが、マルチホップ通信を利用しても構わない。
【0068】
以上の検討の結果、本実施形態では、通信リーダが常に車群になるように制御を行う。これにより、前方からの合流が行えなくなるがこのデメリットは小さく、制御が安定的になるという大きなメリットが得られる。もっとも、このことは本発明において通信リーダを先頭車両以外にすることを除外するものではなく、通信リーダは先頭以外であっても構わない。
【0069】
制御リーダは、車群内の隊列走行を行うための目標制御値を車群内の車両に通知する。ここで、目標制御値は、たとえば、目標とする加速度情報、操舵角情報、ブレーキ操作情
報などが含まれる。このような目標制御値を決定するためには、制御リーダは車群の先頭であることが好ましい。したがって、通信リーダが先頭である場合には、通信リーダが制御リーダを兼ねることが好ましい。一方、通信リーダが中央付近の車両である場合には、車群の先頭車両が制御リーダとなることが好ましい。
【0070】
(B)パケットフォーマット
図4(A)(B)に本実施形態で使用するパケットフォーマットの例を示す。本実施形態においては、車群に属している車両も車群に属していない車両も、または、通信リーダであっても通信メンバであっても、同一のパケットフォーマットを有するパケットを送信する。
【0071】
送信元車両ID401には、このパケットを生成した車両のIDが格納される。本実施形態においては、車両IDは16ビットで表現されるものとする。
【0072】
宛先車両ID402には、このパケットを届ける車両IDが格納される。なお、ブロードキャスト通信を行う場合には、宛先車両ID402にはブロードキャストである旨を示す識別子(典型的には「0xFFFF」)を格納する。
【0073】
車両状態403として、送信元車両の状態に関する種々の情報が格納される。車両状態として典型的には位置情報が含まれる。送信元位置404には、緯度情報28ビット、経度情報28ビット、高さ情報14ビットの合計70ビットで表現される位置情報が格納される。その他の車両状態としては、速さ、進行方向、ブレーキ状態等種々のものを採用できるが、ここではその詳細は省略する。
【0074】
制御状態405には、隊列走行制御の状態として、「車群協調走行」、「通信ACC走行」、「ACC走行」、「マニュアル走行」のいずれであるかを示す情報が格納される。車群ID406には、自車が属する車群のIDが格納される。なお、自車両が車群に属さない場合は「0」を格納するものとする。サイクル407には、車群通信におけるHBパケットとMRパケットの交換を1サイクルとして、このパケットが何サイクル目のものであるかを格納する。種類408には、このパケットがHBパケットであるかMRパケットであるかを格納する。なお、自車両が車群に属していない場合は、サイクルおよび種類は空欄とする(「0」を格納する)。
【0075】
図4(B)に走行順車両ID409と走行順送達確認410の詳細を示した。走行順車両ID409には、車群内の車両と車群外の前後1台の車両を、その走行順にしたがって格納する。また、走行順送達確認410には、これらの各車両からの通信を受信したか否かを示すACKを格納する。
【0076】
ここでは1つの車群に属すことができる車両台数の上限はN台であり、車群内車両用としてN車両分のフィールドが用意されている。車群内の車両台数がN台に満たない場合には、余った走行順車両IDフィールドは空欄とする(「0」を格納する)。なお、車両IDは16ビットを採用しているが、車群内の車両の走行順車両ID409にはその車両IDの下位Lビット(たとえば7ビット)を格納する。これは車群内の車両との間では、後述するように車両IDのLビットが競合した場合に競合解決ができるためである。このように車両IDを短縮化することで通信量を削減している。もちろん走行順車両IDに格納する値は車両IDの下位Lビットでなくても良く、実際の車両IDがKビットであるときに、この車両IDから導かれるL(<K)ビットの値であればよい。
【0077】
なお、車群に属しない車両は、車群内車両のIDを空欄にしたパケットを生成して送信する。
【0078】
・ACK制御
ここで、上述したフォーマットのパケットを利用して行う、車群内での双方向通信可能性の確認(ACK制御)について改めて説明する。図5は、5台の車両A〜Eで構成される車群において、あるサイクル(ここではサイクル「23」)において交換されるメッセージの内容を示す。図5左側は通信リーダから送信されるHBパケット、図5右側は通信メンバから送信されるMRパケットの内容を示している。図5において示される通信の内容は、図4に示すパケットフォーマットを簡略化して示したものである。まず、通信リーダAが、サイクル番号「23」を格納したHBパケットを車群内の車両に対してブロードキャスト送信する。ここで、走行順車両IDには、車群を構成する車両のIDをその走行順にしたがって格納する。また、各車両に対するACKには、前回サイクル(#22)においてそれぞれの車両からの通信を受信できたか否かに応じた値を格納する。自車両についてのACKは不定であって良く、本実施形態では常に「1」を格納するものとするが、このフィールドを他の用途に利用しても構わない。
【0079】
通信メンバ(ここでは車両B)は、通信リーダからのHBパケットを受信すると、それに応答したMRパケットを送信する。ここでは、通信メンバBから通信リーダAへユニキャスト通信を行う。通信メンバBは、現在サイクル(#23)のMRパケットを送信する際に、通信リーダAのACKに関しては現在サイクル(#23)で通信リーダAからの通信を受信できたか否かを、通信メンバC〜Eに関しては前回サイクル(#22)で各通信メンバからの通信を受信できたか否かを格納する。なお、通信メンバBは、前回サイクル(#22)において他の通信メンバC〜Eが送信するMRパケットを傍受することで、他の通信メンバC〜Eからの通信を受信できたか否か判断する。
【0080】
このように通信リーダが通信サイクルの管理を行い、通信メンバが各サイクルに1回通信リーダからのHBパケットに応答してMRパケットを送信するという通信方式を採用しているので、車群内の全車両についての1サイクル分のACKをまとめて送信することが可能である。これにより双方向通信の確認に必要な通信量を削減することができる。
【0081】
(C)状態情報の定義
次に、各車両が記憶する、現在の周囲および自車両に関する情報(状態情報)について説明する。状態情報には、大きく分けて、所属する車群に関する情報、自車が属していない車群(外部車群)に関する情報、一定期間通知される情報を無視すべき車両のリスト(除外リスト)、初期設定情報が含まれる。
【0082】
所属車群情報としては、車群ID、現在のサイクル番号、車群内車両および車群外の先行車・後続車に関する車両ID、ACK有無、通信から得られる車両情報(位置情報等)がある。また、車群内の車両に関しては、車群内での走行順序も記憶する。
【0083】
これらの情報は、車群内の車両や車群外の先行車・後続車からの通信や自車両のセンサ等から得られる情報が情報源となる。より詳細な情報源を図6に示す。図中、「自」とあるのは自車で定義された情報、または自車のセンサから得られる情報を意味し、「HB」とあるのは通信リーダからの情報(HBパケット)であることを意味し、「MR」とあるのは通信メンバからの情報(MRパケット)であることを意味し、「外」とあるのは車群外からの情報であることを意味し、「−」とあるのは情報を取得しなくても良いことを意味する。車群外の車両についての情報は一部の車群メンバは取得しなくても良いが、もちろん車群外の車両からの通信からこれらの情報を取得して記憶しても良い。
【0084】
図6に示すように、通信リーダは、車群メンバに関する情報は各メンバ(MRパケット)から取得し、車群外の先行車・後続車からの情報はこれらの車両からの通信から取得す
る。最後尾以外の通信メンバは、通信リーダに関する情報と、車群内での通信メンバの走行順序は通信リーダ(HBパケット)から取得する。通信メンバのACK(前サイクルでの自車からの通信が届いたか)や位置情報などの車両情報は、各通信メンバ(MRパケット)から取得する。また、最後尾の通信メンバは、車群外の後続車両との間のACKおよび車両情報を、当該車両から取得する。
【0085】
外部車群情報としては、車群ID、通信リーダの車両ID、サイクル番号を記憶する。これは、外部車群に属する車両からの通信を傍受することによって得られる。この情報は、周囲にどのような車群が存在するかを把握するために車両内に使用される。
【0086】
外部車群のうち、自車両が属する車群のすぐ後ろに位置する車群については、その車群を構成する車両のIDおよび、これらの車両から受信した通信の最新サイクル番号を記憶する。この情報は、車群同士の合流時に後続車群内の全ての車両との間の双方向通信が確認できた段階で合流を行うために使用される。
【0087】
除外リストは、状態の振動を防止するために一定期間送信される状態情報を無視する車両または車群のリストである。車群については、車群ID、通信リーダの車両ID、除外開始時刻を記憶する。また、車両については、車両IDおよび除外開始時刻を記憶する。
【0088】
初期設定情報としては、車群内車両台数の上限(車群サイズ)、パケットの送信レート(サイクル時間)、ランダム待機時間、通信タイムアウトと判定するまでの時間、通信途絶と判定するまでのタイムアウト回数、車群対象から除外している期間などが含まれる。
【0089】
(D)車両の構成
図7は本実施形態に係る隊列走行システムを構成する車両の機能ブロックを示す図である。各車両は、車両走行制御ECU(Electronic Control Unit)701、車車間通信装
置705、GPS装置707、ミリ波レーダ708、エンジンECU709、ブレーキECU710、ステアリングECU711などを備える。車両走行制御ECU701は、後述する各種の処理を実行する制御部702、状態情報などを記憶する記憶部703、時刻を計測するタイマ704などを有する。車車間通信装置705は、車両間で無線通信を行う通信部706を有する。無線通信方式は任意のものであって構わないが、700MHz帯を利用した車車間通信システム(たとえばITC-FORUM RC-006)や、5.8GHz帯を利用した車車間通信システム(たとえばITC-FORUM RC-005)などを採用することができるが、これらに限定されるものでもない。GPS装置707は、自車両の位置情報をGPS衛星等から取得するための装置である。なお、必ずしもGPS衛星から直接送信される信号を受信するものでなく、中継装置等からの信号を受信するものであっても良い。ミリ波レーダ708は前方車両の位置を計測するためのものである。したがって、ミリ波以外の波長の電波や超音波などを用いた測距センサ、あるいはステレオカメラによる測距センサなどを用いても良い。エンジンECU709、ブレーキECU710、ステアリングECU711は自車の状態を取得するためのものであり、この他にも必要に応じて車内の機器から情報を取得すればよい。
【0090】
(E)制御フロー
ここでは、通信リーダを車群の先頭車両として設計した場合に制御要求[1]〜[10]を満たすための処理を説明する。上述したように、通信リーダを先頭としているので車群の成長は後方からのみとする。
【0091】
・状態遷移
まず、図8を参照して追従走行、車群協調走行、マニュアル走行の間の状態遷移を定義する。マニュアル走行時に、追従走行機能を有効にしレーダや通信などを使って実際に追
従走行が可能になると追従走行状態に遷移する。なお、実際には通信ACCによる追従走行とACCによる追従走行の2つの場合があるが、本発明においては本質的な違いではないのでこれら2つの状態をまとめて追従走行状態としている。追従走行状態において、他の車両と連続していることと双方向通信が可能であることが、それぞれレーダと通信によって判断できると、車群準備状態に遷移する。車群準備状態にある車両は、ランダム待機時間待機した後に通信リーダ状態に遷移してHBパケットを送信する。この際、後続車両を車群メンバとして選出する。待機時間中にHBパケットを受信して、その中に自車両IDが含まれていれば車群メンバに遷移する。HBパケットを送信する際に後続車両のみをメンバとして選出するので、結局連続する2台の車両のうち前方の車両がリーダになる。
【0092】
また、追従走行状態中に前方車群からのHBパケットに自車両のIDが含まれている場合には、前方車群に属する通信メンバへと遷移する。
【0093】
通信リーダは、前方車群からのHBパケットに自車両のIDが含まれている場合には、前方車群に属する通信メンバへと遷移する。
【0094】
通信メンバは、先行車との間で通信が途絶したり、HBパケットにおいて自車が先頭であったりする場合には、通信リーダ状態へと移行し、車群内の自車よりも後方の車両を通信メンバとする。また、HBパケットに自車両のIDが含まれなくなったり、自ら車群協調走行モードを解除したりする場合には、追従走行状態へと遷移する。
【0095】
また、いずれの状態においても、ドライバーによる隊列走行の解除によりマニュアル走行状態へ移行することができる。
【0096】
・フローチャート
次に、車両走行制御ECUの制御部が行う処理について、図21〜図28のフローチャートを参照して説明する。図21は、車両の状態にかかわらず他の車両からのパケットを受信したときに行う共通処理を示している。図21の共通処理は、車群外からのパケットを受信したときに、それらの情報を状態情報として格納する処理、および走行制御に関係ない通信を抑制する処理といえる。
【0097】
待機状態にあるときに他の車両からのパケットが到着すると(S2102)、所定時間の間走行制御を含まない通信を控える(S2104)。本実施形態では、他の車両から隊列走行に関するパケットを受信した車両側が、あらかじめ定められた時間だけ通信を抑制する。もちろん、走行制御を含む通信については通常通り送信を続ける。
【0098】
そして、受信パケットが、自車両が属する車群内の車両からの車群パケットであるか判断する(S2106)。受信したパケットが、自車両が属さない車群からの車群パケット(自車両が車群に属しない場合は全ての車群パケットが該当する)であるか、または、車群パケット以外のパケット(通信ACCパケット)である場合は否定判定される(S2106−NO)。所属車群からのパケットでない場合には、受信パケットの送信元が後続車両であって、かつ、自車の通信を受信可能であるか(ACKビットが立っているか)を判断する(S2108)。なお、後続車両とは、自車両のすぐ後ろの車両を意味する。送信元が後続車両であるか否かは、受信パケットに含まれる車群外先行車両が、自車両であるか否かによって判断できる。送信元が後続車両であり、かつ、自車両からの通信を受信できる場合には状態情報に、所属車群情報の車群外後続車両としてこの車両を登録する(S2110)。なお、自車が属する車群以外の車両からのパケットを受信した場合のみS2108の判定を行うので、自車両が車群に属している場合は自車両が車群の最後尾である場合のみ、この登録が行われる。
【0099】
また同様に、受信したパケットの送信元が先行車両であって、かつ、自車の通信を受信可能であるかを判断する(S2112)。先行車両とは、自車両のすぐ前に位置する車両のことである。受信パケットの送信元が先行車であるか否かは、自車両の状態(車群の先頭または非車群)および、パケットに含まれる送信元の位置情報と自車のレーダで取得できる前方車両の位置情報が一致するか否かによって判断することができる。すなわち、受信したパケットに含まれる送信元の位置情報と自車のレーダで取得できる前方車両の位置情報が一致する場合は、先行車からのパケットであると判断できる(S2112−YES)。この場合、自車の状態情報に、所属車群情報の車群外先行車両としてこの車両を登録する(S2114)。なお、自車が属する車群以外の車両からのパケットを受信した場合のみS2112の判定を行うので、自車両が車群に属している場合は自車両が車群の先頭である場合のみ、この登録が行われる。
【0100】
また、受信したパケット(所属車群以外からパケット)が車群パケットであるか判断する(S2116)。受信パケットが車群パケットである場合(S2116−NO)には、状態情報として、外部車群情報にこの車群に関する情報を登録する(S2118)。
【0101】
受信したパケットが所属車群からの車群パケットでない場合(S2106−NO)には、上記のS2108〜S2118の処理を行った上で、ステップS2120へ進む。一方、受信したパケットが所属車群からの車群パケットである場合(S2106−NO)には、そのままステップS2120へ進む。ステップS2120では、送信元の車両が除外リストに存在する車両または除外リストに存在する車群に属する車両である場合か判断し、除外リストに該当する場合(S2120−YES)はそれ以上の処理をせずに待機状態に戻る。除外リストに該当しない場合には、受信パケットが車群パケットであるか否か判断する(S2122)。車群パケットである場合には車群パケット受信処理へ進み、車群パケットではない場合(通信ACCパケットである場合)は通信ACCパケット受信処理へと進む。なお、これ以降の処理は、車両の状態に応じて異なるものとなる。したがって、以下では、車両の状態別に処理フローを説明する。以下のフローチャートでは、パケット受信時だけでなく、送信タイミング到来時の処理も含まれることに注意されたい。
【0102】
図22〜図28は、各状態(追従走行状態、車群準備状態、通信リーダ、通信メンバ)において、車群パケット受信時、通信ACCパケット受信時、および送信タイミング到来時に行う処理を示すフローチャートである。上述したように、車群パケットおよび通信パケット受信時には、前処理として図21に示した共通処理が実行されることに注意されたい。以下では、図21〜図28のフローチャートに従うことで、「2.本実施形態に係る隊列走行システムにおける制御要求」で示した[1]〜[10]の機能が実現できることを説明する。
【0103】
[1]車群の形成
図9(A)(B)に示すように、通信ACCによる追従走行中の2台の車両が通信の双方向性を確認したことにより、車群を形成する制御シナリオである。
【0104】
まず車両A,Bのそれぞれは、定期的に車両IDと位置情報を含む通信ACCパケットをブロードキャスト送信しながら走行をしている。車両Bが車両Aの後方から接近して車両Aの通信ACCパケット(S2102、S2106−NO)を受信したときに、車両Aのパケットに含まれる位置情報と、自車のミリ波レーダによって得られる前方車両の位置情報とが一致して、車両Aが車両Bの先行車両であることが分かる(S2112−YES)。したがって、車両Bは、車両Aを車群外先行車両として登録する(S2114)。車両Bに送信タイミングが到来すると(S2210)、図9(A)に示すように、車群外先行車両が車両Aであり、車両Aに対するACKを有りにした通信ACCパケットを生成してブロードキャスト送信する(S2212)。
【0105】
車両Bからの通信ACCパケット(S2102,S2106−NO)を受信した車両Aは、受信したパケットの車群外先行が自車両でありACKも有る(S2108−YES)ことから、車両Bを車群外後続車両として登録する(S2110)。そして、車両Aに送信タイミングが到来すると(S2210)、図9(A)に示すように、車群外後続車両が車両Bであり、車両Bに対するACKを有りにした通信ACCパケット生成してブロードキャスト送信する(S2212)。
【0106】
車両Aは、車両Bから受信する通信ACCパケットに自車両が車群外先行車両でかつACKも有りとされていることから、受信した通信ACCパケットは後続車両からのものであり、かつ、ACKが有る(S2206−YES)と判断できるため、車群準備状態へと状態遷移する。また、車両Bも同様に、車両Aから受信する通信ACCパケットに自車両が車群外後続車両であり、かつ、ACKも有りとされていることから、受信した通信ACCパケットは先行車両からのものであり、かつ、ACKが有る(S2208−YES)と判断できるため、車群準備状態へと状態遷移する。このように、車両Aと車両Bは、通信ACCによる追従走行中に、双方向通信ができること、および、両車両が連続していることを確認したことによって、車群準備状態へと状態遷移する。
【0107】
なお、図22のフローチャートでは双方向の通信可能性および連続性が一度でも確認されたら状態遷移を行うもの(S2206かS2208のいずれかが成り立てばすぐに状態遷移する)として示しているが、何回か連続してこの条件が成立する場合に状態遷移を行うようにすることも、安定性の面で優れるので好ましい。
【0108】
車群準備状態へと移行した車両A,Bは、それぞれランダム時間待機した後に送信タイミングを得る(S2312)。車両Aが先に送信タイミングを得たとすると、車両Aは通信リーダへ状態遷移するとともに、状態情報の編集を行う(S2314)。ここで、状態情報の編集とは車群を構成する車両を選出することを含んでいる。本実施形態では、通信リーダを車群の先頭とするために、通信リーダよりも後方に位置する車両を車群に含める。車両Bは車両Aの後方であるため、作成される所属車群情報には車両Aを通信リーダ、車両Bを通信メンバとする車群が格納される。また、共通処理によって得ている外部車群情報を参照して、自車両が属する車群における車群IDとサイクルを、他の車群と重複しないように決定する(S2318)。そして、車両Aは、通信リーダとして図9(B)に示すHBパケットをブロードキャスト送信する(S2318)。車群準備状態にある車両Bが、このHBパケットを受信し(S2302、S2304−HB)、このHBパケットが先行車両のものからでありかつACK確認も有る(S2306−YES)ことから、車両Aを通信リーダとする車群のメンバになったことが分かる。そこで、車両Bは通信メンバへと状態遷移し、状態情報を更新する(S2308)。
【0109】
なお、後方に位置する車両Bが先に送信タイミングを得た場合には、通信メンバを後方に位置する車両からのみ選択するので、車両Bは自車両のみから構成される車群の通信リーダとなる。車両Bは通信リーダとしてHBパケットを送信するが、車両Aにとっては車両Bは先行車両ではない(S2306−NO)ことから車群準備状態を継続する。やがて、車両Aが送信タイミングを得て、上記の説明と同様に、車両Bをメンバとした車群を形成することになる。通信リーダとなっていた車両Bも、他の車群から送信されるHBパケット内に自車両のIDを発見することから、車両Aを通信リーダとする車群の通信メンバに遷移する(S2404−S2406−S2408−S2410)。したがって、車群準備状態にある車両Aと車両Bのいずれが先に送信タイミングを得たとしても、最終的に形成される車群は同じとなる。
【0110】
このようにして、通信ACCによって追従走行を行っていた車両Aと車両Bの間で通信
の双方向性および連続性が確認されると、前方の車両Aを通信リーダとして2台の車両からなる車群が形成されることになる。車群を形成した車両Aと車両Bは、車両A,Bを車群リストに含むHBパケットとMRパケットを定期的に交換して、通信の双方向性を確認しながら車群協調走行を行うことができる。
【0111】
[2]車群への参加
図10(A)(B)に示すように、車群に対して通信ACCで追従している車両が、車群に参加して車群が大きくなるシナリオである。
【0112】
まず、図10(A)に示すように、車両A〜Cで構成される車群の後方に、通信ACCにより追従走行を行う車両Dが存在する状況を考える。この状況では、車両Dが車群外先行車両として車両Cを認識して(S2112−S2114)、通信ACCパケットを送信する(S2212)。つまり車両Dが送信する通信ACCパケットには車群外先行車両として車両Cが格納され、かつ、ACK有りが格納される。車両Cがこの通信ACCパケットを受信することで、車両Cは車両Dが車群外後続車両であることを認識する(S2108−S2110)。車両Cは、車群外後続車両に車両Dを格納してMRパケットを送信する(S2808)。通信リーダAは、このMRパケットを受信することで車群外後続車両が車両Dであることを認識する(S2404−S2432−S2434−S2436)。
【0113】
このように通信リーダ(車両A)が、車群外後続車両が車両Dであると認識している状況で、車両Dからの通信ACCパケットを受信したときの処理を説明する。通信ACCパケットを受信した通信リーダ(S2502)は、車群外後続車両である車両Dと車群最後尾車両である車両Cとの間で双方向通信が確立している(S2504−YES)ことから、車群内の車両台数が最大に達していなければ(S2506−YES)、車両Dを車群の最後尾に登録する(S2508)。そして、次の送信タイミングで通信リーダは、車両Dを車群リストに含めてHBパケットを送信する。
【0114】
追従走行をしている車両Dが、車両AからのHBパケットを受信すると、まず受信パケットは先行車からのものでありかつACKが有る(S2208−YES)ので、車群準備状態へ遷移する。そして、車群準備状態においてHBパケットを受信したときに(S2304−HB)、このHBパケットが先行車両からのものでありかつACKの確認も有る(S2306−YES)ので、通信メンバ状態へと遷移する(S2308)。またこのとき自車両が車群に所属したことに応じて、状態情報を更新する。
【0115】
このようにして、車群に対して通信ACCで追従していた車両Dが、車群と車両Dの間で双方向通信可能性と連続性が確認された場合に、車群に合流することができる。
【0116】
[3]車群同士の合流
図11(A)(B)に示すように、車群間を通信ACCで追従走行している2つの車群が合流して1つの大きな車群を形成するシナリオである。
【0117】
前方車群1101の最後尾車両Cと後方車群1102の先頭車両Dとか連続していることは、上記と同様にして分かる。車両Cが送信するMRパケットを受信することによって、前方車群1101内の各車両は車群外後続車両が車両Dであることが認識できる。同様に、車両Dが送信するHBパケットを受信することによって、後方車群内の各車両は車群外先行車両が車両Cであることが認識できる。
【0118】
通信リーダAが後方車群内の通信メンバからMRパケットを受信した場合は、S2404−S2406−S2422−S2424と処理が進み、MRパケットに含まれる車群リストを後方車群情報に登録する。また、後方車群の通信リーダからHBパケットを受信し
た場合は、S2404−S2406−S2408−S2412−S2422−S2424と処理が進み、結局同様の処理が行われることになる。なおS2412における判断は、通信リーダAが同一車群に属していると認識している通信メンバからHBパケット(別の車群IDを有する)を受信したか否かの判断なので、このケースでは否定判定される。通信リーダは、後方車群情報として、後方車群をどの車両が構成するかと、後方車群を構成するそれぞれの車両からの通信を受信できるか否かを記憶している。そして、後方車群からのHBパケットを受信したときに(S2425−YES)、後方車群に属する全車両から通信を受信可能であり(S2426−YES)、後方車群を全て合流しても最大数に達しない場合(S2408−YES)は、所属車群情報の最後尾に、後方車群を構成する各車両を登録する(S2430)。また、後方車群を除外リストに登録して、一定期間後方車群からの情報による状態情報の変更を行わないようにする。通信リーダは、送信タイミングが到来すると、車群リストに車両A〜Fまでを含むHBパケットを送信する(S2612)。
【0119】
後方車群の通信リーダDは、車両AからのHBパケットを受信すると、他の車群のHBパケットに自車両のIDを発見するので通信メンバへと状態遷移する(S2404−S2406−S2408−S2410)。また、車両AからのHBパケットを受信した、後方車群の通信メンバE,Fは、他の車群のHBパケットに自車両のIDを発見するので、所属車群を変更する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、通信メンバE,Fは、元の車群を除外リストに登録して、所属車群の変更が完了していない同一車群に属していた車両からの情報による状態変動を起こさないようにする。
【0120】
このようにして、通信ACCにより追従走行していた2つの車群1101,1102の間で、連続性と通信の双方向性が確認された場合に、これら2つの車群1101,1102を1つの車群1103に合流することができる。
【0121】
[4]車両IDの競合解決
通信に使用するパケット内では、車群内の車両に関するIDは本来のビット数(例えば16ビット)よりも短いビット数(例えば7ビット)で表現している(図4(B)参照)。これは、通信パケットのデータ量を減らすための工夫である。そもそも車両IDに重複がないことは保証していないが、仮に16ビットの車両IDが重複していない場合でも、下位7ビットのみを使用する場合は衝突が発生する確率が高まる。このような車群内で使用するビット数を短縮化した車両IDが衝突した場合に、車両IDの再設定を行って競合を解決する必要がある。
【0122】
図12(A)に示すように8台の車両で車群が構成されている例を考える。図中「h−o」などとあるのは、全16ビットの車両IDのうち、上位9ビットが「h」であり、下位7ビットが「o」であることを意味している。この例では、通信リーダと6台目の車両の下位7ビットが「g」で衝突しており、4台目と7台目の車両の下位7ビットが「e」で衝突している。
【0123】
本実施形態では、通信リーダは車両IDの再設定は行わず、通信メンバが車両IDの下位7ビットの再設定を行って競合を解決する。すなわち、通信リーダは、車群リスト内の車両IDが重複しているか否かの判断は行わない。一方、通信メンバは、通信リーダから受信するHBパケットにおいて自車両のID(下位7ビット)が2つ以上登録されているか判断する(S2726)。ここで車両IDの競合が発生している場合には、自車両の車両IDの下位7ビットに関して再設定を行う(S2730)。なお、新しい車両IDの下位7ビットは、HBパケットに含まれている「g」「h」「w」「e」「m」「o」以外の値をランダムに選択するものとする。ランダムに設定しているので、再度衝突が発生する可能性もあるが、再設定処理を繰り返すことで最終的には競合が解決できる。
【0124】
また、車両IDが競合している通信メンバからのMRパケットは、どの通信メンバに関する情報であるか判断できないため、受信したMRパケットの送信元の車両IDが競合している場合にはそのMRパケットは無視する(S2718)。一方、通信リーダの車両IDが他のメンバと競合している場合であっても、通信リーダからのパケットをパケット種別(HBパケット)から判断できるので、HBパケットについてはそのような処理を行う必要はない。
【0125】
このように、車群内で車両IDが衝突したときの競合解決が可能となる。競合解決が担保されると、車群内では短縮化した車両IDを使って通信データ量を減らすことが可能となる。
【0126】
なお、短縮化した車両IDを使うことにより通信データ量を減らすことができるが、競合解決のためのオーバヘッドが生じるのは避けられない。通信データ量が問題とならないケースやオーバヘッドが許されない環境では、車群内であっても短縮化した車両IDを用いないことが好ましいと言える。
【0127】
[5]車線変更による離脱
車群を構成する車両が路線変更などにより隊列から離脱した場合に、残りの車両で車群を維持して隊列走行を行うというシナリオである。
【0128】
まず、図13(A)(B)を参照して通信メンバが路線変更により離脱する場合を説明する。ここでは5台の車両A〜Eで構成される車群から、車両Cが路線変更した場合を考える。このとき、通信により通知される車群リストには車群を構成する車両とその走行順序が格納されているので、車群内の各車両は車群の状況が把握できる。各車両は、通信リーダAから送信されるHBパケットによって、車両A,B,C,D,Eの順からなる5台の車両から車群が構成されていることが分かる。また、それぞれの車両の位置情報も車群パケットに格納されている。
【0129】
一方、各車両はレーダによって前方車両の位置が分かる。車両Cが路線変更した場合、車両Dは前方の車両が(Xb,Yb)に位置することがレーダから検出できる。ここで、車群パケットから得られる位置情報を参照すると、(Xb,Yb)に位置する車両は車両Bであることが分かる。すなわち、車両Dは車両Bのすぐ後ろに位置していることが分かり、したがってその間に位置していた車両Cが路線変更等により離脱したことが分かる。そこで、車両Dは所属車群情報から離脱した車両Cを除いて、車両A,B,D,Eがこの順序で並んで車群を構成していると更新する。この処理は、S2720またはS2728で行われる処理である。車両Dに送信タイミングが到来すると、車両Dは自車が保持している状態情報、すなわち、車群は車両A,B,D,Eから構成されるという車群リストをMRパケットに格納して送信する。
【0130】
通信リーダAは、車両DからのこのMRパケットを受信すると、車群から車両Cが離脱したことを認識し、状態情報を更新する(S2404−S2432−S2434−S2436)。通信リーダAに送信タイミングが到来すると、通信リーダは自車が保持している状態情報、すなわち車群は車両A,B,D,Eから構成されるという車群リストをHBパケットに格納して送信する(S2612)。
【0131】
通信リーダAからのHBパケットを受信した車群メンバは、車群から車両Cが離脱したことを車群リストから認識できる。
【0132】
このように、車群中の車両が路線変更等により離脱した場合であっても、残りの車両に
よって車群を維持することができる(S2728)。
【0133】
次に、図14(A)(B)を参照して通信リーダが路線変更等により離脱する場合を説明する。このとき、車群において通信リーダの直後を走行していた通信メンバである車両Bは、レーダによって車群内の先行車両を特定することができなくなる。車両Bに送信タイミングが到来したときに先行車が特定不能であれば、車両Bは通信リーダへと状態遷移する(S2802−S2804−S2810)。そして、自車両を通信リーダとして、元の車群に含まれる車両のうち、自車両よりも後方に位置する全ての車両を通信メンバとして新しい車群を生成して所属車群情報として登録する(S2812)。外部の車群と重複しない車群IDおよびサイクルを選択し(S2814)、元の車群を除外リストに登録した上で(S2816)、HBパケットを作成してブロードキャスト送信する(S2818)。このHBパケットの車群リストには車両B〜Eが格納されている。
【0134】
車両Bから送信されるHBパケットを受信した車両C〜Eでは、HBパケットの車群IDは自車が属している車群IDとは異なるものの、そのHBパケットの車群リスト中に自車の車両IDが存在することが分かる。したがって、自車は今までとは異なる車群のメンバになったことが認識できるので、所属車群情報を受信したHBパケットにしたがって編集する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、元の車群からの情報による状態の振動を避けるために、元の車群を除外リストに追加する(S2912)。
【0135】
このように、通信リーダが路線変更等により車群から離脱した場合であっても、2番目を走行していた通信メンバが新しい通信リーダとなって、車群を維持することができる。
【0136】
[6]ドライバーによる解除
車群協調走行中に、その車群内の1台がドライバーによって車群隊列走行を解除し、マニュアル走行または通信ACC走行に移行したときに、残りの車両で車群を維持して隊列走行を行うというシナリオである。
【0137】
図15に示すように、7台の車両A〜Gが車群を形成しているときに車両Dがドライバーの操作によって車群協調走行を解除した場合を考える。車両Dは、通信機能により車群協調走行を解除したことを周囲の車両に通知する。このとき車両Dが送信する通信情報は、制御情報に自車の隊列走行モード(「マニュアル」または「通信ACC」)を格納し、走行順リストには、車群外前方車両に車両Cを、車群外後方車両に車両Eを格納して送信する。
【0138】
車群の通信リーダが、ドライバー操作による協調走行解除を通知するパケットを受信した場合(S2609−YES)は、この車両から車群外後続車両までを所属車群情報から削除するとともに、除外リストに登録する(S2611)。これにより、車両Dおよびこれより後方に位置する車両が車群から除外され、車両Aが通信リーダである車群には車両A〜Cのみが含まれるようになる。そして通信リーダは、HBパケットの車群リストに車両A,B,Cのみを格納して送信することで、他の車両に対して車群を構成するメンバが変更したことを通知する。
【0139】
一方、通信メンバが、ドライバー操作による協調走行解除を通知するパケットを受信した場合は、解除を行った車両が先行車であるか判断する(S2807)。自車両の前方に位置する車両が協調走行を解除した場合には、自車両が通信リーダへ遷移する(S2810)。この場合は、車両Eが通信リーダへと遷移する。そして、自車両よりも後方の車両F,Gを通信メンバとして新しい車群を生成して所属車群情報として登録する(S2812)。外部の車群と重複しない車群IDおよびサイクルを選択し(S2814)、元の車群を除外リストに登録した上で(S2816)、HBパケットを作成してブロードキャス
ト送信する(S2818)。このHBパケットの車群リストには車両E,F,Gが格納されている。
【0140】
車両Eから送信されるHBパケットを受信した車両F,Gでは、HBパケットの車群IDは自車が属している車群IDとは異なるものの、そのHBパケットの車群リスト中に自車の車両IDが存在することが分かる。したがって、自車は今までとは異なる車群のメンバになったことが認識できるので、受信したHBパケットにしたがって所属車群情報を編集する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、元の車群からの情報による状態の振動を避けるために、元の車群を除外リストに追加する(S2912)。
【0141】
このように、車群内のいずれかの車両でドライバーが車群協調走行を解除した場合であっても、その位置で車群を分離して前方車群および後方車群を生成して車群協調走行が行える。
【0142】
[7]非通信車両の割り込み
車群内に、通信機能を有していない車両が割り込んだときに、この非通信車両の前後で車群を分離するシナリオである。
【0143】
図16に示すように、6台の車両A〜Fで構成される車群が形成されているときに、車両Dの前方に通信機能を有していない車両Xが割り込んだ場合を考える。このとき、通信により通知される車群リストには、車群を構成する車両とのその走行順序が格納されているので、車群内の状況が把握できる。ここでは、車群が車両A,B,C,D,E,Fの順からなる6台の車両で構成されていることが分かる。また、それぞれの車両の位置情報も車群パケットに格納されている。
【0144】
一方、各車両はレーダによって前方車両の位置が分かる。車両Dの前方に非通信車両Xが割り込んだ場合は、レーダによって得られる前方車両の位置と、車群通信によって得られる前方車両(車両C)の位置(Xc,Yc)とが矛盾することになる。すなわち、車両Dは、先行車両を特定することができなくなる。
【0145】
通信メンバである車両Dに送信タイミングが到来したときに、車両Dは先行車両が特定できないので、通信リーダへと状態遷移する(S2804−S2810)。そして、自車両を通信リーダとして、元の車群に含まれる車両のうち、自車両よりも後方に位置する全ての車両を通信メンバとして新しい車群を生成して所属車群情報として登録する(S2812)。外部の車群と重複しない車群IDおよびサイクルを選択し(S2814)、元の車群を除外リストに登録した上で(S2816)、HBパケットを作成してブロードキャスト送信する(S2818)。このHBパケットの車群リストには車両D,E,Fが格納されている。
【0146】
車両Dから送信されるHBパケットを受信した車両E,Fでは、HBパケットの車群IDは自車が属している車群IDとは異なるものの、そのHBパケットの車群リスト中に自車の車両IDが存在することが分かる。したがって、自車は今までとは異なる車群のメンバになったことが認識できるので、所属車群情報を受信したHBパケットにしたがって編集する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、元の車群からの情報による状態の振動を避けるために、元の車群を除外リストに追加する(S2912)。
【0147】
また、車両Dから送信されるHBパケットを受信した車両A(元の車群の通信リーダ)は、受信パケットが他の車群からのHBパケットであり(S2404−NO,S2406−YES)、自車の所属車群情報に通信メンバとして登録されている車両が送信元である(S2412ーYES)ことが分かる。受信したHBパケットの送信元の車両Cは、元の
車群の3番目以降なので(S2416−NO)、車両Cおよびそれより後ろの車両E,Fを車群から削除して、車両A,B,Cのみを車群リストに含むように所属車群情報を更新する(S2420)。なお、分離した後続車群の通信リーダの走行位置が2番目であった場合(S2416−YES)は、通信リーダAは1台だけの車群となるので、車群準備状態へと遷移する(S2418)。なお、いずれの場合も、分離した車群との間で状態の振動を起こさないように、新たな車群を除外リストに追加している(S2414)。
【0148】
通信リーダAから車両A〜Cを車群リストに含むHBパケットを受信した車両B,Cは、所属車群を構成する車両に変化があったことを認識して、所属車群情報を更新する。
【0149】
このように、車群内に通信機能を有しない車両が割り込んだ場合であっても、その位置で車群を分離して前方車群および後方車群を生成して車群協調走行が行える。
【0150】
[8]特定車両の通信機能停止
車群内の特定車両の通信機能が停止したときに、この車両の前後で車群を分離するシナリオである。通信機能の停止には、送信機能の停止と、受信機能の停止がある。まず、それぞれの場合について、どのようにして機能停止を他の車両が検知するかについて説明する。
【0151】
図17(A)は、車両A〜Gで構成される車群内の車両Dの送信機能が停止した場合を説明する図である。車群内の車両は、自車両は車両Dからの通信を受信しないことがわかる。そこで、HBパケットまたはMRパケットに車両DについてACK無しを格納して送信する。また、他の車両からのパケットにも車両DについてACK無しが格納されていることから、車群内の各車両は自車両だけでなく車群内の全車両が車両Dからの通信を受信できないことが分かる。このように、車群内の車両のうち所定割合以上の車両(全車両でも良い)が、車両DについてACK無しの車群パケットを送信した場合は、この車両Dの通信機能が停止したと判断できる。なお、この判断は1サイクルだけで判断するのではなく、車両DからのACK無しが所定サイクル以上続いた場合に、車両Cの送信機能が停止したと判断することが好ましい。
【0152】
図17(B)は、車両A〜Gで構成される車群内の車両Dの受信機能が停止したが送信機能は有効な場合を説明する図である。車両Dは受信機能が停止していることから他の車両からの通信を受信できず、MRパケット(またはHBパケット)に他の車両についてACK無しを格納して送信する。車両D以外の車両は、車群内の各車両からの通信を受信できるので、各車両についてACK有りを格納してMRパケットまたはHBパケットを送信する。このように車両Dから車群内の車両のうち所定割合以上の車両(全車両でも良い)についてACK無しの車群パケットを受信し、他の車両からはACK有りの車群パケットを受信している場合には、車両Dの受信機能が停止したことが判断できる。なお、この判断も、1サイクルだけで判断するのではなく、車両Dが各車両について所定サイクル以上続けてACK無しの車群パケットを送信する場合に、車両Dの受信機能が停止したと判断することが好ましい。
【0153】
図18は先行車両の通信機能が停止したときの制御を説明する図である。車両Dの通信機能(送信機能・受信機能いずれでも)が停止した場合、車両Eは送信タイミング到来時に先行車両の通信機能が停止している(S2806−YES)ことから、通信リーダへと遷移し(S2810)、自車両よりも後方の車両F,Gを通信メンバとして新しい車群を生成して所属車群情報として登録する(S2812)。外部の車群と重複しない車群IDおよびサイクルを選択し(S2814)、元の車群を除外リストに登録した上で(S2816)、HBパケットを作成してブロードキャスト送信する(S2818)。このHBパケットの車群リストには車両E,F,Gが格納されている。
【0154】
車両Eから送信されるHBパケットを受信した車両F,Gでは、HBパケットの車群IDは自車が属している車群IDとは異なるものの、そのHBパケットの車群リスト中に自車の車両IDが存在することが分かる。したがって、自車は今までとは異なる車群のメンバになったことが認識できるので、受信したHBパケットにしたがって所属車群情報を編集する(S2704−S2706−S2708−S2710)。また、元の車群からの情報による状態の振動を避けるために、元の車群を除外リストに追加する(S2912)。
【0155】
また、車両Eから送信されるHBパケットを受信した車両A(元の車群の通信リーダ)は、受信パケットが他の車群からのHBパケットであり(S2404−NO,S2406−YES)、自車の所属車群情報に通信メンバとして登録されている車両が送信元である(S2412ーYES)ことが分かる。受信したHBパケットの送信元の車両Eは、元の車群の3番目以降なので(S2416−NO)、車両E、それより後ろの車両F,G、および通信機能の停止した車両Dを車群から削除して、車両A,B,Cのみを車群リストに含むように所属車群情報を更新する(S2420)。なお、いずれの場合も、分離した車群との間で状態の振動を起こさないように、新たな車群を除外リストに追加している(S2414)。
【0156】
通信リーダAから車両A〜Cを車群リストに含むHBパケットを受信した車両B,Cは、所属車群を構成する車両に変化があったことを認識して、所属車群情報を更新する。
【0157】
ここで車両Eは、受信機能が停止したことにより周囲の車両からの通信が受信できなくなる。したがって、車両Eでも自らの受信機能が停止したことを推定できる。そこで、車両Eは他の車両からのパケットを受信しなくても、車群メンバ状態から追従走行状態へと遷移することが好ましい。通信メンバは、自らの受信機能が停止した場合(S2808−YES)には、車群準備状態へと遷移し(S2820)、状態情報を編集する。また、元の車群を除外リストに追加する(S2822)。これにより、受信機能が途絶えた車両は、自らメンバを解除できる。
【0158】
このように、車群内のいずれかの車両で通信機能が停止した場合であっても、その位置で車群を分離して前方車群および後方車群を生成して車群協調走行が行える。
【0159】
[9]通信可能範囲外への移動
車群内の車両が通信可能範囲外へ移動した場合に、通信可能な車両同士で車群を維持するシナリオである。図19(A)(B)は、車両A〜Eの5台の車両で車群を形成している際に、車両A,B間の車間距離が開いて車両A,B間での通信ができなくなった場合を示す図である。車両Bは、先行車両からの通信を受信できなくなるので、先行車を特定することができなくなる(S2804−YES)。したがって、図14(B)に示すように車両Bは通信リーダへ遷移して、車群内で自車よりも後方に位置する車両を通信メンバとした新しい車群を形成する。これ以降の処理は上記[7]で説明した処理と同じであるため、詳細は省略する。
【0160】
なお、図19(A)(B)では通信リーダ(先頭車両)と2番目の車両との間で車間距離が開いた場合を説明したが、車群内の任意の車両間で車間距離が開いた場合も、先行車両を特定できなくなった車両が通信リーダに遷移することに代わりはない。
【0161】
[10]電波干渉の発生
電波干渉が発生した場合に、車群協調走行を行う車両台数を減らして通信量を抑制することで、通信品質を回復する制御である。
【0162】
図20(A)(B)は、車両A〜Gの7台の車両で構成される車群内で電波の干渉が発生した場合を説明する図である。電波干渉が発生すると車群内の多くの車両で電波を受信できなくなる。したがって、通信リーダは、車群リストにACK無しを多く含むMRパケットを同時に受信することになる。このように、通信リーダは、車群内の通信メンバが全体的に他車両からの通信をできなくなった場合に、電波干渉による受信障害が発生したと判断する。
【0163】
通信リーダが同時多発的な受信途絶を検知したときは、所属車群情報から最後尾車両を削除する(S2606−S2610)。この例では、車群最後尾の車両Gを通信メンバから除外して、車群外後続車両として登録する。そして、通信リーダは、新しい車群リストを含むHBパケットを生成してブロードキャスト通信する(S2612)。
【0164】
このHBパケットを受信した車両Gは、自車が属していた車群からのHBパケットであるにもかかわらず、自車両のIDがHBパケットに含まれないことから、自車両が車群から除外されたことを検知して車群準備状態へ遷移する(S2704−S2714−S2724−S2732)。
【0165】
なお、通信メンバである車両B〜Fは、車両AからのHBパケットを受信することで、車両Gが車群から除外されたことを認識できるので、状態情報を更新する。
【0166】
このようにして、車両Gと車両A〜Fは別の車群となるので、車両F,G間は通信ACCによる追従走行となり車間距離が開くので、電波干渉が軽減されることになる。なお、車両Gを車群から除外しても電波干渉が改善されない場合には、さらに次の最後尾車両を除外していくことで、最終的に電波干渉が軽減される。
【0167】
以上のように本実施形態によれば、車群内での通信量を削減することで、通信品質の向上すなわち通信途絶の抑制が可能となる。また、通信途絶が発生した場合であっても、重大な影響が及ぶ範囲を車群内に限定可能である。また、通信途絶が発生した場合に車群を分離することで、通信途絶が発生した車群内についても重大な影響がおよび範囲を限定可能である。
【0168】
なお、上記では例示的に実施形態を参照して本発明の説明を行ったが、本発明は上記で記した実施形態に限定して解釈するべきではない。たとえば、実施形態では通信リーダが車群の先頭である場合を例に説明しているが、通信リーダを先頭以外としても良い。また、通信リーダが先頭であっても先頭以外であっても、車群の前方に位置する車両を車群に合流するようにしても構わない。前方の車両を合流する場合も後方の車両を合流する場合と同様の処理により対処可能である。また、車群内で通信リーダが変更する場合も、新しい通信リーダがHBパケットにより自車両が通信リーダになったことを通知すればよい。
【0169】
また、上記の実施形態では、通信リーダと制御リーダが同一の車両である場合を例に説明しているが、必ずしも通信リーダと制御リーダとを同一の車両とする必要はない。たとえば、通信リーダを中央付近の車両(先頭車両以外の車両)とし、制御リーダを先頭車両とする形態が考えられる。通信リーダが上記の説明と同様の方法により車群の維持・管理を行い、制御リーダが車群の隊列走行を制御する。この場合、制御リーダが目標制御値を含む走行制御情報をブロードキャスト送信し、これを受信した通信リーダが車群メンバに走行制御情報を再度ブロードキャスト送信することで、車群内の各車両に走行制御情報を伝達する。このように、通信リーダと制御リーダとを別々の車両とした場合、メンバー離脱などの解散の影響が少なくなりロバスト性が向上する。また、通信リーダによる走行制御情報の転送により車群の範囲が広がるという利点もある。
【符号の説明】
【0170】
701 車両走行制御ECU
702 制御部
703 記憶部
704 タイマ
705 車車間通信装置
706 通信部
707 GPS装置
708 ミリ波レーダ
709 エンジンECU
710 ブレーキECU
711 ステアリングECU
【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向通信が可能な複数の車両から、1台の車両をリーダ、その他の車両をメンバとして車群を形成し、車群内の車両同士による通信を利用して隊列走行を行う隊列走行通信システムによる車群管理方法であって、
リーダが、定期的に情報を送信するステップと、
各メンバが、リーダから送信される情報に対して応答を返すステップと、
を含み、
リーダから送信される情報には、前サイクルにおける各メンバからの通信を受信できたか否かを示す受信情報が含まれ、
各メンバから送信される情報には、現サイクルにおけるリーダからの通信、および、前サイクルにおける他のメンバからの通信を受信できたか否かを示す受信情報が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報に含まれる受信情報に基づいて、送達確認を行い、
前記送達確認によって通信の双方向性が確認された車両で車群を形成および維持する
ことを特徴とする車群管理方法。
【請求項2】
各車両が定期的に送信する情報には、当該車両の位置、車群を構成する車両の識別子、車群を構成する各車両に対する受信応答が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報と、自車両が備えるセンサによって取得される情報とに基づいて、自律的に走行制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の車群管理方法。
【請求項3】
車群を構成する車両が定期的に送信する情報には、さらに、車群を構成する車両の車群内の走行順序も含まれる
ことを特徴とする請求項2に記載の車群管理方法。
【請求項4】
車群を構成する車両が定期的に送信する情報には、車群を構成する車両の識別子が、車群内の走行順序にしたがって列挙されている
ことを特徴とする請求項3に記載の車群管理方法。
【請求項5】
車群の先頭に位置する車両は、車群外の前方の車両に対して追従する走行制御を行い、
車群の先頭車両とその前方の車両との間の車間距離は、車群内での車間距離よりも長い
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項6】
各車両が送信する情報には、少なくとも当該車両の位置が含まれており、
各車両が前方車両の位置を測定可能な測距手段を有しており、
車両から送信される情報に含まれる位置と、測距手段によって測定される前方車両の位置とが一致するかによって、車両が連続しているか否かを判断し、
前記送達確認により通信の双方向性が確認され、かつ、連続している車両で車群を形成および維持する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項7】
リーダは、車群内の先頭車両である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項8】
車群を構成する車両の台数に上限が設けられている
ことを特徴とする請求項6または7に記載の車群管理方法。
【請求項9】
車群を構成していない2台の車両の間で、通信の双方向性および連続性が確認された場
合は、当該2台の車両で車群を形成する
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項10】
リーダは、車群内の先頭車両であり、
前記2台の車両のうち、前方車両がリーダとなり、後方車両がメンバとなる
ことを特徴とする請求項9に記載の車群管理方法。
【請求項11】
車群を構成している複数の第1の車両と車群を構成していない第2の車両との間で、通信の双方向性が確認され、かつ、
前記第1の車両のいずれかと前記第2の車両とが連続している判断された場合に、
前記第2の車両を前記車群に合流させる
ことを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項12】
リーダは、車群内の先頭車両であり、
前記車群内の最後尾車両と前記第2の車両とが連続していると判断された場合に、前記第2の車両を前記車群に合流させる
ことを特徴とする請求項11に記載の車群管理方法。
【請求項13】
第1の車群を構成している複数の第1の車両と第2の車群を構成している複数の第2の車両に関し、全ての車両間で通信の双方向性が確認され、かつ、前記第1の車両のいずれかと前記第2の車両のいずれかとが連続していると判断された場合に、
前記第1の車群と前記第2の車群を合流させる
ことを特徴とする請求項6〜12のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項14】
リーダは、車群内の先頭車両であり、
前記第1の車群の最後尾車両と前記第2の車両の先頭車両とが連続していると判断された場合に、前記第2の車群内の全ての車両を前記第1の車群のメンバとして合流させる
ことを特徴とする請求項13に記載の車群管理方法。
【請求項15】
車群内のいずれかの車両において、当該車両の前記測距手段によって測定される前方車両の位置が、他の車両から送信される情報に基づいて当該車両の2つ前の車両の位置と等しいと判断できる場合は、当該車両の前方に位置していた車両が車群から離脱したと判断し、この離脱した車両を車群から除く
ことを特徴とする請求項6〜14のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項16】
車群内のいずれかの車両が隊列走行を解除した場合には、当該車両より前方の車両からなる車群と、当該車両よりも後方の車両からなる車群との2つの車群に分離する
ことを特徴とする請求項6〜15のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項17】
車群内に他の車両と通信不可能な車両が現れた場合には、当該車両より前方の車両からなる車群と、当該車両よりも後方の車両からなる車群との2つの車群に分離する
ことを特徴とする請求項6〜16のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項18】
車群内に他の車両と通信不可能な車両が現れる場合とは、車群内に通信機能を有しない車両が割り込んだ場合であり、
車群内のいずれかの車両において、当該車両の測距手段によって測定される前方車両の位置が、他の車両から送信される情報から得られる車群内のいずれの車両の位置とも一致しない場合に、自車両の前方に通信機能を有しない車両が割り込んだと判断する
ことを特徴とする請求項17に記載の車群管理方法。
【請求項19】
車群内に他の車両と通信不可能な車両が現れる場合とは、車群内の車両の通信機能が停止した場合であり、
車群内の車両は、他の車両から送信される情報に含まれる受信情報に基づいて、車群内の車両の通信機能の停止を判断する
ことを特徴とする請求項17に記載の車群管理方法。
【請求項20】
車群内で同時多発的な通信途絶が発生した場合は、車群内のメンバを少なくとも1台車群から除外する
ことを特徴とする請求項6〜19のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項21】
リーダは、車群内の先頭車両であり、
車群内で同時多発的な通信途絶が発生した場合は、車群内の最後尾の車両を車群から除外する
ことを特徴とする請求項20に記載の車群管理方法。
【請求項22】
各車両が送信する情報には、車群を構成する車両の識別子が含まれており、
メンバは、リーダから送信される情報の中に自車両の識別子と同一の識別子が複数含まれているときに、自車両の識別子を再設定する
ことを特徴とする請求項6〜21のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項23】
各車両が送信する情報には、車群を構成する車両の識別子が、ビット数を短縮化した形式で含まれており、
メンバは、リーダから送信される情報の中に、自車両のビット数を短縮化した形式の識別子と同一の識別子が含まれているときは、自車両の識別子を再設定する
ことを特徴とする請求項22に記載の車群管理方法。
【請求項24】
それぞれが車載無線端末を備える複数の車両から構成される隊列走行通信システムであって、
複数の車両のうちの1台の車両をリーダ、その他の車両をメンバとして車群を形成し、
リーダが、定期的に情報を送信し、
各メンバが、リーダから送信される情報に対して応答を返し、
リーダから送信される情報には、前サイクルにおける各メンバからの通信を受信できたか否かを示す受信情報が含まれ、
各メンバから送信される情報には、現サイクルにおけるリーダからの通信、および、前サイクルにおける他のメンバからの通信を受信できたか否かを示す受信情報が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報に含まれる受信情報に基づいて、送達確認を行い、
前記送達確認によって通信の双方向性が確認された車両で車群を形成および維持する
ことを特徴とする隊列走行通信システム。
【請求項25】
それぞれが車載無線端末を備える複数の車両から構成される車群の隊列走行通信システムであって、
前記車群中の1台の車両を、隊列走行の制御を行う制御リーダとし、
前記車群中の前記制御リーダを除いた車両のうち1台の車両を、前記制御リーダから送信される制御情報を前記車群中の他車両に転送する通信リーダとする、
ことを特徴とする隊列走行通信システム。
【請求項1】
双方向通信が可能な複数の車両から、1台の車両をリーダ、その他の車両をメンバとして車群を形成し、車群内の車両同士による通信を利用して隊列走行を行う隊列走行通信システムによる車群管理方法であって、
リーダが、定期的に情報を送信するステップと、
各メンバが、リーダから送信される情報に対して応答を返すステップと、
を含み、
リーダから送信される情報には、前サイクルにおける各メンバからの通信を受信できたか否かを示す受信情報が含まれ、
各メンバから送信される情報には、現サイクルにおけるリーダからの通信、および、前サイクルにおける他のメンバからの通信を受信できたか否かを示す受信情報が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報に含まれる受信情報に基づいて、送達確認を行い、
前記送達確認によって通信の双方向性が確認された車両で車群を形成および維持する
ことを特徴とする車群管理方法。
【請求項2】
各車両が定期的に送信する情報には、当該車両の位置、車群を構成する車両の識別子、車群を構成する各車両に対する受信応答が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報と、自車両が備えるセンサによって取得される情報とに基づいて、自律的に走行制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の車群管理方法。
【請求項3】
車群を構成する車両が定期的に送信する情報には、さらに、車群を構成する車両の車群内の走行順序も含まれる
ことを特徴とする請求項2に記載の車群管理方法。
【請求項4】
車群を構成する車両が定期的に送信する情報には、車群を構成する車両の識別子が、車群内の走行順序にしたがって列挙されている
ことを特徴とする請求項3に記載の車群管理方法。
【請求項5】
車群の先頭に位置する車両は、車群外の前方の車両に対して追従する走行制御を行い、
車群の先頭車両とその前方の車両との間の車間距離は、車群内での車間距離よりも長い
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項6】
各車両が送信する情報には、少なくとも当該車両の位置が含まれており、
各車両が前方車両の位置を測定可能な測距手段を有しており、
車両から送信される情報に含まれる位置と、測距手段によって測定される前方車両の位置とが一致するかによって、車両が連続しているか否かを判断し、
前記送達確認により通信の双方向性が確認され、かつ、連続している車両で車群を形成および維持する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項7】
リーダは、車群内の先頭車両である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項8】
車群を構成する車両の台数に上限が設けられている
ことを特徴とする請求項6または7に記載の車群管理方法。
【請求項9】
車群を構成していない2台の車両の間で、通信の双方向性および連続性が確認された場
合は、当該2台の車両で車群を形成する
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項10】
リーダは、車群内の先頭車両であり、
前記2台の車両のうち、前方車両がリーダとなり、後方車両がメンバとなる
ことを特徴とする請求項9に記載の車群管理方法。
【請求項11】
車群を構成している複数の第1の車両と車群を構成していない第2の車両との間で、通信の双方向性が確認され、かつ、
前記第1の車両のいずれかと前記第2の車両とが連続している判断された場合に、
前記第2の車両を前記車群に合流させる
ことを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項12】
リーダは、車群内の先頭車両であり、
前記車群内の最後尾車両と前記第2の車両とが連続していると判断された場合に、前記第2の車両を前記車群に合流させる
ことを特徴とする請求項11に記載の車群管理方法。
【請求項13】
第1の車群を構成している複数の第1の車両と第2の車群を構成している複数の第2の車両に関し、全ての車両間で通信の双方向性が確認され、かつ、前記第1の車両のいずれかと前記第2の車両のいずれかとが連続していると判断された場合に、
前記第1の車群と前記第2の車群を合流させる
ことを特徴とする請求項6〜12のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項14】
リーダは、車群内の先頭車両であり、
前記第1の車群の最後尾車両と前記第2の車両の先頭車両とが連続していると判断された場合に、前記第2の車群内の全ての車両を前記第1の車群のメンバとして合流させる
ことを特徴とする請求項13に記載の車群管理方法。
【請求項15】
車群内のいずれかの車両において、当該車両の前記測距手段によって測定される前方車両の位置が、他の車両から送信される情報に基づいて当該車両の2つ前の車両の位置と等しいと判断できる場合は、当該車両の前方に位置していた車両が車群から離脱したと判断し、この離脱した車両を車群から除く
ことを特徴とする請求項6〜14のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項16】
車群内のいずれかの車両が隊列走行を解除した場合には、当該車両より前方の車両からなる車群と、当該車両よりも後方の車両からなる車群との2つの車群に分離する
ことを特徴とする請求項6〜15のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項17】
車群内に他の車両と通信不可能な車両が現れた場合には、当該車両より前方の車両からなる車群と、当該車両よりも後方の車両からなる車群との2つの車群に分離する
ことを特徴とする請求項6〜16のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項18】
車群内に他の車両と通信不可能な車両が現れる場合とは、車群内に通信機能を有しない車両が割り込んだ場合であり、
車群内のいずれかの車両において、当該車両の測距手段によって測定される前方車両の位置が、他の車両から送信される情報から得られる車群内のいずれの車両の位置とも一致しない場合に、自車両の前方に通信機能を有しない車両が割り込んだと判断する
ことを特徴とする請求項17に記載の車群管理方法。
【請求項19】
車群内に他の車両と通信不可能な車両が現れる場合とは、車群内の車両の通信機能が停止した場合であり、
車群内の車両は、他の車両から送信される情報に含まれる受信情報に基づいて、車群内の車両の通信機能の停止を判断する
ことを特徴とする請求項17に記載の車群管理方法。
【請求項20】
車群内で同時多発的な通信途絶が発生した場合は、車群内のメンバを少なくとも1台車群から除外する
ことを特徴とする請求項6〜19のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項21】
リーダは、車群内の先頭車両であり、
車群内で同時多発的な通信途絶が発生した場合は、車群内の最後尾の車両を車群から除外する
ことを特徴とする請求項20に記載の車群管理方法。
【請求項22】
各車両が送信する情報には、車群を構成する車両の識別子が含まれており、
メンバは、リーダから送信される情報の中に自車両の識別子と同一の識別子が複数含まれているときに、自車両の識別子を再設定する
ことを特徴とする請求項6〜21のいずれかに記載の車群管理方法。
【請求項23】
各車両が送信する情報には、車群を構成する車両の識別子が、ビット数を短縮化した形式で含まれており、
メンバは、リーダから送信される情報の中に、自車両のビット数を短縮化した形式の識別子と同一の識別子が含まれているときは、自車両の識別子を再設定する
ことを特徴とする請求項22に記載の車群管理方法。
【請求項24】
それぞれが車載無線端末を備える複数の車両から構成される隊列走行通信システムであって、
複数の車両のうちの1台の車両をリーダ、その他の車両をメンバとして車群を形成し、
リーダが、定期的に情報を送信し、
各メンバが、リーダから送信される情報に対して応答を返し、
リーダから送信される情報には、前サイクルにおける各メンバからの通信を受信できたか否かを示す受信情報が含まれ、
各メンバから送信される情報には、現サイクルにおけるリーダからの通信、および、前サイクルにおける他のメンバからの通信を受信できたか否かを示す受信情報が含まれ、
各車両は、他の車両から送信される情報に含まれる受信情報に基づいて、送達確認を行い、
前記送達確認によって通信の双方向性が確認された車両で車群を形成および維持する
ことを特徴とする隊列走行通信システム。
【請求項25】
それぞれが車載無線端末を備える複数の車両から構成される車群の隊列走行通信システムであって、
前記車群中の1台の車両を、隊列走行の制御を行う制御リーダとし、
前記車群中の前記制御リーダを除いた車両のうち1台の車両を、前記制御リーダから送信される制御情報を前記車群中の他車両に転送する通信リーダとする、
ことを特徴とする隊列走行通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2011−250021(P2011−250021A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119585(P2010−119585)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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