説明

車車間通信方法、車車間通信システムおよび車載通信装置

【課題】車車間通信において安全性の高い通信を簡易に実現できる技術を提供する。
【解決手段】送信元車両が、送信先車両との間であらかじめ交換された共通鍵を用いてデータを暗号化し、前記共通鍵のハッシュ値を算出し、暗号化されたデータと前記共通鍵のハッシュ値とを1つの送信データとして送信し、前記送信データを受信した車両が、受信したハッシュ値があらかじめ交換された共通鍵のハッシュ値と一致するか否かを判定し、受信したハッシュ値があらかじめ交換された共通鍵のハッシュ値と一致しない場合には、受信した前記送信データを他の車両に中継し、受信したハッシュ値があらかじめ交換された共通鍵のハッシュ値と一致する場合には、前記暗号化されたデータを前記共通鍵で復号化する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗号化された車車間通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、なりすましや改ざんや盗聴などを防止した安全な通信を行うための技術が知られている。その1つの方法として、送信者と受信者との間で異なる鍵を用いて暗号化・復号化する公開鍵暗号方式が知られている。
【0003】
公開鍵暗号方式では2つの鍵(鍵ペア)が使用される。一方は一般に公開される公開鍵であり、他方は本人のみが知っている秘密鍵である。鍵ペアには、一方の鍵から他方の鍵を導き出すことができないという特徴と、一方の鍵で暗号化したものは他方の鍵でしか復号化できないという特徴がある。このような特徴を利用して公開鍵暗号方式では以下のようにして通信の安全性を確保することができる。
【0004】
盗聴防止のためは、送信者は、送信するデータを送信相手の公開鍵を用いて暗号化してから送信する。この暗号化されたデータは、送信相手の秘密鍵によってのみ復号化可能である。したがって、送信相手以外の者は復号化ができず、第三者による送信データの盗聴を防止することができる。
【0005】
なりすましや改ざんを防止するためには、送信者は、送信するデータを自己の秘密鍵を用いて暗号化してから送信する。受信者は、データを受信した後、送信者の公開鍵を用いて復号化する。送信者の公開鍵で正しく復号化できれば、データの送信者はその秘密鍵を保有している者であることが保証され、なりすましや改ざんを防止することが可能である。
【0006】
さて、車両間で無線通信を行う方法には、路側機(基地局)を介して通信を行う車路車間通信と呼ばれる方法と、車両間で直接あるいは他の車両による中継を介して通信を行う車車間通信と呼ばれる方法が存在する。車車間通信では、路側機などのインフラ設備が存在しない場所においても、車両同士が自律的にネットワークを形成して通信を行うことが可能である。
【非特許文献1】熊谷誠治著、"続・誰も教えてくれなかったインターネット・セキュリティのしくみ"、日経BP社、pp93-134
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車車間通信において上記の公開鍵暗号方式による暗号化通信を実現しようとする場合、以下のような問題が生じる。公開鍵暗号方式では通信相手の公開鍵を認証局などのコンピュータから取得する必要があるが、路側機などのインフラ設備が存在せず外部のネットワークに接続されていない車車間通信システムでは、通信相手の公開鍵を取得することができない。
【0008】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車車間通信において安全性の高い通信を簡易に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、車両間で通信データを中継することによって通信する車車間通信システムにおける車車間通信方法であって、以下のようにして通信を行う

【0010】
送信元車両は、送信先車両との間で共有された共通鍵を用いて送信するデータ(コンテンツデータ)を暗号化する。また、送信元車両は、この共通鍵のハッシュ値を求める。ハッシュ値とは、与えられた原文から固定長の擬似乱数を生成するハッシュ関数によって生成された値のことである。ハッシュ値には、ハッシュ値から原文を求めることが困難であるという性質と、同一のハッシュ値となる異なる原文を求めることが困難であるという性質がある。なお、ハッシュ値は、メッセージダイジェストとも呼ばれる。
【0011】
送信元車両は、上記のようにして求めた、共通鍵によって暗号化されたデータと、共通鍵のハッシュ値とを1つの送信データとして送信する。
【0012】
この送信データを受信した車両は、受信したデータに含まれるハッシュ値が、共通鍵のハッシュ値と一致するか否かを判定する。受信したハッシュ値が共通鍵のハッシュ値と一致しない場合には、自車宛のデータではないということが分かるので、受信したデータを他の車両に中継(再送信)する。受信したハッシュ値が共通鍵のハッシュ値と一致する場合には、自車宛のデータであることが分かるので、受信したデータに含まれる暗号化されたデータを、あらかじめ交換された共通鍵を用いて復号化する。
【0013】
本発明によれば、共通鍵のハッシュ値のみが送信されるので、共通鍵自体が第三者に知られることがない。したがって、暗号化されたデータを第三者に盗聴されることを防止できる。また、共通鍵は送信元車両と送信先車両のみが知っている情報であるので、送信データにこの共通鍵のハッシュ値が含まれていることで、送信元車両のなりすましを防止することができる。このように、通信の安全性を確保することができる。
【0014】
また、受信したデータに含まれるハッシュ値が共通鍵のハッシュ値と異なる場合には、このデータが自車宛のデータではないと判断できる。そして、自車宛ではないデータを受信した車両がこのデータを他の車両に中継することで、送信されたデータが車車間通信システム内に伝搬していく。したがって、送信先車両が車車間通信システム内に存在する場合には、データが送信先車両まで到達する。
【0015】
なお、共通鍵は、送信元車両と送信先車両との間であらかじめ交換されたキーワードを用いて生成することができる。このキーワードの交換はどのような方法によって行っても良い。例えば、送信元車両と送信先車両の利用者(ドライバー)同士が直接会って口頭でキーワードを通知しあい、そのキーワードを車載端末に入力しても良い。また、携帯電話などの本発明における車車間通信システムとは異なる通信方式による通信(音声会話も含む)によってキーワードを通知しあい、そのキーワードを車載端末に入力しても良い。その他どのような方法によってキーワードを交換しても構わない。利用する共通鍵は、このあらかじめ交換されたキーワードそのものであっても良く、このキーワードから所定の方法(アルゴリズム)で算出したものであっても良い。
【0016】
さらに、共通鍵は、上述のキーワードと通信を行う時刻や車両が位置する場所に関する情報に基づいて生成することができる。このように、時刻や場所を共通鍵に含めることで暗号の強度をより強くすることができる。なお、時刻は、例えば、秒の単位でまるめることによって送受信車両間で時刻が食い違う可能性を低くすることができる。また、場所に関する情報としては、緯度・経度情報や、エリアごとに割り当てられたエリアIDを用いることができる。
【0017】
なお、本発明は、上記処理を実現するためのプログラム、または、上記処理を実現する車車間通信システムとして捉えることもできる。また、本発明は上記処理を行う車載通信
装置として捉えることもできる。
【0018】
例えば、本発明の一態様としての車車間通信システムは、暗号化されたデータを送信する送信元車両と、前記暗号化されたデータを受信する受信車両とから構成される車車間通信システムであって、前記送信元車両は、送信先車両との間で共有された共通鍵を用いてデータを暗号化する暗号化手段と、前記共通鍵のハッシュ値を算出するハッシュ値算出手段と、前記暗号化されたデータと前記共通鍵のハッシュ値とを1つの送信データとして送信する送信手段と、を備え、前記受信車両は、前記暗号化されたデータと前記共通鍵のハッシュ値とを含む前記送信データを受信する受信手段と、受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致するか否かを判定する判定手段と、受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致しない場合には、受信した前記送信データを他の車両に中継する中継手段と、受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致する場合には、前記暗号化されたデータを前記共通鍵で復号化する復号化手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一態様としての車載通信装置は、通信相手の車両との間であらかじめ共有された共通鍵を用いてデータを暗号化する暗号化手段と、前記共通鍵のハッシュ値を算出するハッシュ値算出手段と、前記暗号化されたデータと前記共通鍵のハッシュ値とを1つの送信データとして送信する送信手段と、他の車両から送信される暗号化されたデータと共通鍵のハッシュ値を含むデータを受信する受信手段と、受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致するか否か判定する判定手段と、受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致しない場合には、受信したデータを他の車両に中継する中継手段と、受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致する場合には、前記暗号化されたデータを前記共通鍵で復号化する復号化手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車車間通信システムにおいて安全な通信を簡易に実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
<システム概要>
図1は、本実施形態に係る車車間通信システムのシステム概要を示す図である。本実施形態に係る車車間通信システムでは、各車両に搭載された車載通信装置によってアドホック無線ネットワークが形成される。通信しようとする車両間の距離が離れており直接通信できない場合には、途中に存在する車両がデータを中継することで通信を行う。図1では、車両Aから車両Bへデータを送信する際に、車両X,Yを経由して車両Bまでデータが送信されている。
【0023】
本実施形態に係る車車間通信システムでは、車両X,Yなどの他の車両の中継を介して通信が成立するが、この際に、なりすましや盗聴などを防止した安全性の高い通信を以下のようにして実現する。
【0024】
<構成>
図2は、データの送信元車両(車両A)の機能ブロックと、データの送信先車両(車両B)またはデータを中継する車両(車両X,Y)(以下、これらの車両をまとめて、受信車両と呼ぶ)の機能ブロックを示す図である。送信元車両は、共通鍵記憶部11、暗号化部12、ハッシュ値算出部13、および送信部14を有する。受信車両は、共通鍵記憶部21、受信部22、判定部23、復号化部24、および転送部25を有する。
【0025】
なお、ここでは送信元車両と受信車両が有する機能が異なるとして説明しているが、実際には各車両は送信も受信も行えるように、上記で説明した全ての機能を有していることが好ましい。
【0026】
[送信車両]
送信車両が有する各機能部について、図3,4を参照しつつ説明する。図3は、送信車両がデータを送信する際の処理の流れを示すフローチャートである。図4は、送信車両がデータを送信する際の処理を説明する図である。
【0027】
まず、送信車両は受信車両との間で利用する共通鍵を、あらかじめ交換しておき、共通鍵記憶部11に記憶する。共通鍵の交換は、例えば、送信車両と受信車両の利用者が実際に会って口頭で行っても良く、携帯電話などによる通話で交換しても良い。共通鍵としては、任意のキーワード(パスワード)を用いて良い。例えば、送信するデータの内容をしめすキーワードを共通鍵として用いて良く、データファイルを送信する場合にはそのデータファイルのファイル名を共通鍵として用いても良い。また、これらのキーワードやファイル名などを基に送受信者間で共通のアルゴリズムによって生成(変換)したものを共通鍵として用いても良い。なお、共通鍵は送信者および受信者以外の第三者に対しては秘密にされる必要がある。
【0028】
暗号化部12は、送信するデータ102(図4参照)を共通鍵記憶部11に記憶されている共通鍵101を鍵として暗号化し、暗号文104を作成する(S10)。暗号化部12は共通鍵暗号方式を用いており、具体的には、DES、トリプルDES、RC4、AESなど、どのようなアルゴリズムを用いても構わない。
【0029】
ハッシュ値算出部13は、共通鍵記憶部11に記憶されている共通鍵101のハッシュ値103を算出する(S11)。ハッシュ値103は入力データである共通鍵101をハッシュ関数にかけることで算出できる。ハッシュ関数は、以下の条件を満たす必要がある。第一に、任意の桁数の入力データ(共通鍵101)から、一定の桁数のハッシュ値を出力することができること。第二に、出力されたハッシュ値から元のデータを求めることができないこと。第三に、元データのごく一部が変更された場合でも、出力されるハッシュ値は大きく変化すること。第四に、異なる元データから同一のハッシュ値が出力される可能性が低いこと。このような条件を満たすハッシュ関数として、例えば、SHA−1やMD5を用いることができる。
【0030】
送信部14は、暗号化部12によって暗号化された暗号文104と、ハッシュ値算出部13によって算出されたハッシュ値103とを1つのデータとして送信する(S12)。なお、送信部14が用いる無線通信方式は任意の無線通信方式を採用することができる。例えば、IEEE802.11系の無線LANや、IEEE802.16やIEEE802.20あるいは、DSRCなどを採用することができる。
【0031】
[受信車両]
次に、受信車両が有する各機能部について、図5,6を参照しつつ説明する。図5は、受信車両がデータを受信した際の処理の流れを示すフローチャートである。図6は、受信車両がデータを受信した際の処理を説明する図である。
【0032】
受信車両は、送信車両との間で利用する共通鍵を、上述したようにあらかじめ交換しておき、共通鍵記憶部21に記憶する。
【0033】
受信部22が送信車両からのデータを受信する(S20)と、判定部23は、受信デー
タに含まれる共通鍵が共通鍵記憶部21に記憶されている共通鍵と一致するか判定する。具体的には、判定部23は、共通鍵記憶部21に記憶されている共通鍵201(図6参照)のハッシュ値202を算出し(S21)、受信したデータに含まれるハッシュ値103と一致するか判定する(S22)。図6(a)に示すように、ハッシュ値103とハッシュ値202とが不一致の場合(S22−NO)には、このデータは自車に宛てて送信された暗号化データではないということが分かるので、転送部25によって周囲の車両に転送する(S23)。なお、共通鍵記憶部21に共通鍵が記憶されていない場合には、判定部23はハッシュ値の比較をすることなく自車に宛てて送信されたデータではないことを判定できる。
【0034】
一方、図6(b)に示すように、ハッシュ値103とハッシュ値202とが一致する場合(S22−YES)には、送信されたデータが自車宛に送信された暗号化データであるこということが判断できる。したがって、この場合は、復号化部24が受信したデータに含まれる暗号文104を共通鍵記憶部21に記憶されている共通鍵201を用いて復号化する(S24)。この復号化によって、送信車両が自車に宛てて送信したデータ102を得ることができる。
【0035】
なお、判定部23は、データを受信するたびに共通鍵記憶部21に記憶されている共通鍵201のハッシュ値202を求める必要はなく、あらかじめ共通鍵201のハッシュ値202を算出しておき共通鍵記憶部21に格納しておいても良い。
【0036】
<動作例>
本実施形態における車車間通信システムが図1の状況である場合の暗号化通信の動作例を図7を参照して説明する。
【0037】
まず、暗号化通信を行おうとする送信元車両Aと送信先車両Bのドライバーが携帯電話等で通話し、共通鍵となるキーワードを交換し、車載通信装置に入力し共通鍵記憶部に記憶させる(S100,S101)。
【0038】
送信元車両Aの暗号化部12は、交換した共通鍵を用いて送信データを暗号化する(S102)。また、送信元車両Aのハッシュ値算出部13は、交換した共通鍵のハッシュ値を算出する(S103)。そして、送信元車両Aの送信部14は、暗号文と共通鍵のハッシュ値をまとめて送信する(S104)。
【0039】
車両Aから送信されたデータ(暗号文とハッシュ値)は、近接する車両Xによって受信される(S105)。車両Xの判定部23は、受信した共通鍵のハッシュ値と、自車が共通鍵記憶部21に記憶している共通鍵のハッシュ値とが一致するか否かを判定する(S106)。ここでは、車両Xは車両Aが送信先としている車両ではないので、互いに同じ共通鍵を保有していない。したがって、受信した共通鍵のハッシュ値と共通鍵記憶部21に記憶している共通鍵のハッシュ値は一致しない。そこで、車両Xは、受信した暗号文とハッシュ値を転送する。
【0040】
車両Xによって転送されたデータは、車両Xに近接する車両Yによって受信される。車両Yが行う処理は、上述した車両Xが行う処理(S105〜S107)と同様であるため省略する。結局、車両Yも、車両Aの通信相手ではないため、受信した暗号文とハッシュ値を転送する。
【0041】
車両Yによって転送されたデータは、車両Yに近接する車両Bによって受信される(S108)。車両Bの判定部23は、受信した共通鍵のハッシュ値と自車が共通鍵記憶部21に記憶している共通鍵のハッシュ値とが一致するか否かを判定する(S109)。ここ
では、車両Aが送信先としている車両が車両Bであるため、車両Aと車両Bは同一の共通鍵を保有している。したがって、受信した共通鍵のハッシュ値と、車両Bが有する共通鍵のハッシュ値とは一致する。そこで、車両Bの復号化部24は、受信した暗号文を共通鍵記憶部21に記憶している共通鍵で復号化する(S110)ことで、車両Aが送信したデータの原文を取得することができる。
【0042】
<実施形態の作用・効果>
通信の際には、共通鍵のハッシュ値が送信されるだけで共通鍵自体は通信されないので、共通鍵が第三者に漏洩することがない。したがって、この共通鍵で暗号化されているデータが第三者によって解読される可能性も最小限にすることができる。このようにして盗聴を防止することが可能である。
【0043】
また、送受信者間のみが知っている共通鍵(のハッシュ値)を添付してデータを送信することによって、そのデータの送信者が正しい通信相手であることが判断できる。したがって、なりすましを防止することが可能である。
【0044】
また、第三者が、共通鍵のハッシュ値は変更せず、暗号文のみを変更することによって改ざんすることは可能である。しかしながら、改ざんされた暗号文を共通鍵で復号化した場合は、意味のないデータとなるため、改ざんされたことを検知できる。
【0045】
また、受信車両が期待している共通鍵のハッシュ値とは異なるハッシュ値が送信された場合に、その受信車両は受信データを転送することで、送信されたデータが車車間通信システム内の他の車両に伝搬し、目的とする車両まで送信される。このようにして、送信されたデータが通信相手の車両まで到達させることができる。
【0046】
<変形例1>
上記の実施形態では、送受信者間であらかじめ交換されたキーワードをそのまま共通鍵として利用していた。しかしながら、毎回同じ共通鍵を用いて通信を行うと共通鍵が解読される危険性が高まる。そこで、暗号強度を向上させるために、以下のようにして共通鍵を作成しても良い。
【0047】
第1の方法は、あらかじめ交換されたキーワードと通信を行う時刻に基づいて共通鍵を生成する方法である。この方法によれば、通信を行うたびに利用する共通鍵が変更される。また、通信を行う時刻を送受信者以外の者が知っている可能性は低い。したがって、共通鍵が解読される危険性を最小限とすることができる。
【0048】
第2の方法は、あらかじめ交換されたキーワードと送受信者が位置する位置情報に基づいて共通鍵を生成する方法である。位置情報としては、例えば、緯度・経度情報を用いることが考えられる。また、道路を複数のエリアに分けてエリアごとにエリアIDを定めておき、このエリアIDをキーワードを用いて共通鍵を生成する方法も考えられる。この第2の方法によっても、第1の方法と同様に通信の安全性を向上させることができる。
【0049】
第3の方法は、あらかじめ交換されたキーワードに、車載端末にあらかじめ埋め込まれたキーワードを付加したものを共通鍵として利用する方法である。同じ型の車載端末に同一にキーワードを埋め込んでおけば、型が共通の車載端末を持つ者同士で暗号化された通信を行うことができる。
【0050】
なお、上記の第1〜第3の方法は、組み合わせて利用することができる。
【0051】
<変形例2>
また、第三者による改ざんをより確実に検知するために、送信車両は送信するデータ(コンテンツデータ)の電子署名を付加して送信しても良い。ここで、電子署名は、送信するデータに共通鍵を付け加えたデータのハッシュ値とすることができる。送信先車両は、復号化したデータに共通鍵を付け加えたデータのハッシュ値と、電子署名として付加されたハッシュ値とを比較することで、改ざんが発生しているかをより確実に検知することができる。
【0052】
<変形例3>
また、上記実施形態では、自車宛ではないデータを受信したときに、常に周囲の車両に受信データを中継(再送)している。しかし、この方法では車両が密集している場合には輻輳が生じてしまう。そこで、一度受信したデータと同一のデータを受信した場合には、そのデータの再送しないことによって輻輳を抑制しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る車車間通信システムの概要を示す図である。
【図2】本実施形態における車載通信装置の機能ブロック構成を示す図である。
【図3】本実施形態における送信車両がデータを送信する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態における送信車両がデータを送信する際の処理を説明する図である。
【図5】本実施形態における受信車両がデータを受信した際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本実施形態における受信車両がデータを受信した際に行う処理を説明する図である。
【図7】本実施形態における暗号化通信の動作の例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
A 送信元車両
B 送信先車両
X,Y 中継車両
11 共通鍵記憶部
12 暗号化部
13 ハッシュ値算出部
14 送信部
21 共通鍵記憶部
22 受信部
23 判定部
24 復号化部
25 転送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両間で通信データを中継することによって通信する車車間通信システムにおける、暗号化された通信を行う車車間通信方法であって、
送信元車両が、
送信先車両との間で共有された共通鍵を用いてデータを暗号化し、
前記共通鍵のハッシュ値を算出し、
暗号化されたデータと前記共通鍵のハッシュ値とを1つの送信データとして送信し、
前記送信データを受信した車両が、
受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致するか否かを判定し、
受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致しない場合には、受信した前記送信データを他の車両に中継し、
受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致する場合には、前記暗号化されたデータを前記共通鍵で復号化する、
ことを特徴とする車車間通信方法。
【請求項2】
前記共通鍵は、送信元車両と送信先車両との間であらかじめ交換されたキーワードに基づいて生成されることを特徴とする請求項1に記載の車車間通信方法。
【請求項3】
前記共通鍵は、通信を行う時刻にも基づいて生成されることを特徴とする請求項2に記載の車車間通信方法。
【請求項4】
前記共通鍵は、送信元車両と送信先車両が位置する位置情報にも基づいて生成されることを特徴とする請求項2または3に記載の車車間通信方法。
【請求項5】
暗号化されたデータを送信する送信元車両と、前記暗号化されたデータを受信する受信車両とから構成される車車間通信システムであって、
前記送信元車両は、
送信先車両との間で共有された共通鍵を用いてデータを暗号化する暗号化手段と、
前記共通鍵のハッシュ値を算出するハッシュ値算出手段と、
前記暗号化されたデータと前記共通鍵のハッシュ値とを1つの送信データとして送信する送信手段と、
を備え、
前記受信車両は、
前記暗号化されたデータと前記共通鍵のハッシュ値とを含む前記送信データを受信する受信手段と、
受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致するか否かを判定する判定手段と、
受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致しない場合には、受信した前記送信データを他の車両に中継する中継手段と、
受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致する場合には、前記暗号化されたデータを前記共通鍵で復号化する復号化手段と、
を備えることを特徴とする車車間通信システム。
【請求項6】
通信相手の車両との間で共有された共通鍵を用いてデータを暗号化する暗号化手段と、
前記共通鍵のハッシュ値を算出するハッシュ値算出手段と、
前記暗号化されたデータと前記共通鍵のハッシュ値とを1つの送信データとして送信する送信手段と、
他の車両から送信される暗号化されたデータと共通鍵のハッシュ値を含むデータを受信する受信手段と、
受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致するか否か判定する判定手段と、
受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致しない場合には、受信したデータを他の車両に中継する中継手段と、
受信したハッシュ値が前記共通鍵のハッシュ値と一致する場合には、前記暗号化されたデータを前記共通鍵で復号化する復号化手段と、
を有することを特徴とする車載通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−60809(P2008−60809A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233985(P2006−233985)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】