説明

車軸で連結された脱着自在の主車輪を有する車椅子

【解決課題】本願発明は、飛行機、列車等の座席の間の狭い通路を走行できる車椅子を提供する。
【解決手段】前部に回動自在の前部キャスター11と後部に回動しない後部キャスター12を有し、座部19と座部の後部に背もたれ20と、座部の両サイドにアームレスト21を有する車椅子に、車軸26で連結された大径の主車輪13の前記車軸が着脱自在に軸着された車椅子であって、前記車軸を取り外すと大径の主車輪13が車椅子から取り外されると共に、前記アームレスト23が折り畳み可能となることを特徴とする車椅子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、飛行機、列車等の座席の間の狭い通路を走行できる車椅子に関する。より詳しくは、飛行機、列車等の座席の間の狭い通路を走行できるように、車椅子の大径の主車輪を車軸で連結して着脱自在とし、狭い通路では大径の主車輪を外し、アームレストを折り畳んで車椅子の幅を狭くし、狭い通路を走行できるようにした車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子の利用者は、乗り物に乗る際に入り口が広く、社内にも広いスペースのある電車等の場合は、駅員の介助の元で乗車することができる。しかし、飛行機や、新幹線のように、入り口も狭く、座席間の通路も狭い乗り物では、通常の車椅子は利用できず、介助者に多大な負担を掛けることになる。そのために、狭い通路でも走行できる車椅子が種々検討されている。
【0003】
特許文献1の請求項1には「車輪着脱機構を介してフレームに着脱自在に軸支されるとともに常には走行面に接地する後輪と、前記フレーム下部に設けられ前記後輪を走行面から離隔した位置へ上昇可能なリフトアップ装置と、を備え、前記リフトアップ装置は、前端部が車椅子のフレーム下部に枢着されて揺動可能に設けられた支持アームと、前記支持アームの自由端部の下部に設けられたリフトアップ車輪と、ペダル部を有し上端部が前記フレーム下部に枢着された第1リンクバーと、下端部が前記支持アームの自由端部に枢着され上端部が前記第1リンクバー下端部に枢着された第2リンクバーと、前記支持アームを前記フレーム下部方向へ回動付勢するばねと、を備え、前記リフトアップ車輪が、前記フレーム下部に接近した非接地位置と走行面に接地した接地位置との間を昇降可能に形成され、該接地位置において前記フレームの高さ位置を上昇可能に形成されてなることを特徴とする車椅子。」が開示されている。
【0004】
特許文献2の段落[0005]の課題を解決するための手段には、「本発明は、座部、背も垂れ、アームレスト、フットレストを装着した台座及び台座に装着した小径車輪を設けた車椅子において、前記小径車輪より径が大きく、着脱自在の大径車輪とより構成する、車椅子装置である。また本発明は、前述した車椅子装置において、大径車輪の着脱を行うため、上面形状を傾斜部と水平部とで構成する二本のレールからなるスロープレールを備えたことを特徴とする、車椅子装置である。また本発明は、前述した車椅子装置において、リクライニング機構を有する背も垂れと、前記背も垂れの両側部に設けたレールをスライドする座部とを備えたことを特徴とする、車椅子装置である。さらに本発明は、前述したいずれかの車椅子装置において、台座に対して座部は、少なくとも90度の平面回転を許容するよう構成したことを特徴とする、車椅子装置である。本発明は、前述したいずれかの車椅子装置の利用方法であって、大径車輪を着脱する場合、スロープレールに小径車輪を乗せ、大径車輪が床面に接触しない位置まで車椅子装置を登らせて大径車輪の着脱を行うことを特徴とする、車椅子装置の利用方法である。」と開示されている。
【0005】
特許文献3の段落[0007]の課題を解決するための手段には、「前記の課題を解決するため、請求項1の発明では、シート(座体)と、バックレスト(背もたれ)と、これらを支持する本体枠とを備えた車椅子において、本体枠の左右側部に、屋外用後輪(主輪)及びこれよりも小径の屋内用後輪の対と、屋外用後輪よりも小径の屋外用前輪及び屋内用前輪との対を、それら屋外用前後輪の群と屋内用前後輪の群とを選択的に使用できるように取り付けるという構成にした。」と記載され、
さらに段落[0008]に、「請求項2の発明はより好適な態様であり、この発明は、請求項1において、前記屋外用後輪は本体枠に対して着脱自在である一方、前記屋外用前輪と屋内用前輪とは、左右横長の軸心回りに回動させ得る支持部材に取り付けられており、支持部材の姿勢を変えることによって屋外用前輪と屋内用前輪とを選択的に接地できるようになっている。」と開示されている。
【0006】
上記のように、特許文献1では狭い場所でも走行できるように、大径の後輪を着脱自在にしたのに対し、特許文献2、及び3ではそれぞれ室内では屋外用の後輪を外して、屋外においては屋外用の後輪で走行できるように、後輪を着脱自在にした車椅子が開示されている。しかし、狭い通路を走行するためには、上記の車椅子でも十分ではなく、飛行機や列車の座席間等の狭い通路を走行できる車椅子の出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3818699号公報
【特許文献2】特開平11−197190号公報
【特許文献3】特開2004−073509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、飛行機、列車等の座席の間の狭い通路を走行できる車椅子を提供するものである。より詳しくは、飛行機、列車等の座席の間の狭い通路を走行できるように、通常の車椅子の大径の主車輪を着脱自在にするとともに、座部の両側面に着設されたアームレストを折り畳んで、狭い通路でも走行できる車椅子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は上記事実に鑑み、飛行機、列車等の座席の間の狭い通路を走行できるように、通常の車椅子の両側の大径の主車輪を車軸で連結して、着脱自在にするとともに、座部の両側に着設されたアームレストを折り畳んで狭い通路でも走行できる車椅子とした。
【0010】
本発明の特徴は、前部に回動自在の前部キャスターと後部に回動しない後部キャスターを有し、座部と座部の後部に背もたれと、座部の両サイドにタックルブレーキを着設したアームレストを有する車椅子に、車軸で連結された大径の主車輪の前記車軸が着脱自在に軸着された車椅子であって、前記車軸を取り外すと大径の両車輪が取り外されると共に、前記アームレストが折り畳み可能であることを特徴とする車椅子である。大径の主車輪を取り外すと、座部の両側に着設されたアームレストのフレームが回動可能となり、アームレストを回動させることにより、車椅子の幅がさらに狭くなって、新幹線、航空機等の通路を介助者により容易に通行することができる。
【0011】
本発明の別の特徴は、前記同様に車軸を取り外すと車軸に連結された左右の大径の主車輪が取り外されると共に、前記アームレストが車椅子の背もたれの後方に折り畳み可能となる車椅子である。大径の主車輪を取り外すと、座部の両側に着設されたアームレストのフレームが回動可能となり、アームレストを背もたれの後方に回動させることにより、車椅子の幅がさらに狭くなって、新幹線、航空機の通路を介助者により容易に通行することができる。
【0012】
本発明の別の特徴は、前記同様に車軸を取り外すと車軸に連結された左右の大径の主車輪が取り外されると共に、前記アームレストが車椅子の座部の下側に折り畳み可能となる車椅子である。大径の主車輪を取り外すと、座部の両側に着設されたアームレストのフレームが座部の下側に回動可能となり、アームレストを座部の下に回動させることにより、車椅子の幅がさらに狭くなって、新幹線、航空機の通路を介助者により容易に通行することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車軸で連結された脱着自在の主車輪を有する車椅子は、大径の主車輪を取り外すと、座部の両側に着設されたアームレストのフレームが回動可能となり、アームレストを回動させることにより、車椅子の幅がさらに狭くなって、新幹線、航空機等の通路を介助者により容易に通行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1の(A)は、本願発明の車椅子の側面図を示す。(B)は本願発明の車椅子をリフトアップしたの背面図を示す。(C)は、車軸で連結された大径の車輪を示す。
【図2】図2(A)は、車軸で連結された大径の車輪が軸止された状態を示す。図2(B)は、車軸で連結された大径の車輪を軸止め部から取り外し可能となった状態を示す。
【図3】図3(A)は大径の主車輪を外した車椅子のアームレストを背もたれの後方に折り畳んだ背面図を示す。図3(B)は大径の主車輪を外した車椅子のアームレストを背もたれの後方に折り畳んだ側面図を示す。
【図4】図4(A)は大径の主車輪を外した車椅子のアームレストを座部の下側に折り畳んだ正面図を示す。図4(B)は、大径の主車輪を外した車椅子のアームレストを座部の下側に折り畳んだ側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明の実施の態様についていくつかの好ましい形態を例示するが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することは意図するものではない。
【実施例1】
【0016】
図1(A)に示すように、本願発明の車椅子は、車椅子の下部フレーム16に回動自在の前部キャスター11と後部に回動しない後部キャスター12を着設し、座部19と座部の後部に背もたれ20と、座部19の両サイドにタックルブレーキ22を着設したアームレスト21と前部フレーム14にフットレスト22を有する車椅子に、車軸26で連結された大径の主車輪13の前記車軸26が着脱自在に軸着された車椅子である。該車椅子の後部に着設されたリフトアップレバー24を上げると車軸狭持部27、28が開いて前記車軸26が取り外し可能となる。車軸26を取り外すと車軸26の両側に軸着された大径の主車輪13が取り外されると共に、前記アームレスト21が折り畳み可能となる車椅子である。
【0017】
図1(B)に示すように、本発明の車椅子は前部に回動可能な前部キャスター11と、座部19と座部の後部の背もたれフレーム17に着設された背もたれ20と、座部19の両サイドにアームレスト21とその両側にハンドリム13aを備えた大径の主車輪13が車軸で連結されて着脱自在に軸着された車椅子の後部のリフトアップレバー24部分を示している。図1(B)に示すように、リフトアップレバー24は車椅子の後方に着設されており、介助者がリフトアップレバー24を足で蹴り上げるか、手で持ち上げると上下の車軸狭持部27、28が開いて、車軸の脱抜を可能になるものである。
【0018】
図1(C)は、車椅子の後部のリフトアップレバー24を介助者が手で持ち上げるか、足で蹴り上げて上下の車軸狭持部27、28を開いて、車椅子から取り外した車軸で連結された左右の大径の主車輪13を示している。
【0019】
図2(A)は、本発明の車椅子のリフトアップレバー24の部分を示している。脱着可能な左右の主車輪13は車軸26で連結されており、車軸上部狭持部27と車軸下部狭持部28によって上下から挟むようにして狭持されている。車軸上部狭持部27はリフトアップレバー24に連結され、車軸狭持部27、28の開閉を行っている。
【0020】
図2(B)は、後部キャスター12に着設されたフットレバー25を踏んで後部キャスター12を固定し、リフトアップレバー24を持ち上げると左右の車軸上部狭持部27が回動して、車軸24が脱抜可能となり、車軸24に連結された左右の主車輪13を取り外すことができる。
【実施例2】
【0021】
図3(A)は、大径の主車輪13を取り外した車椅子100のアームレスト21を背もたれ20の後方に折り畳んだ側面図を示している。アームレスト21にはタックルブレーキ22が着設されており、タックルブレーキ22もアームレスト21と共に後方に収納される。このようにアームレスト21を後方に折り畳むと、本発明の車椅子100の横幅は400mmとなり、航空機や新幹線等の列車の座席の間の狭い通路を介助者により容易に走行することができる。大径の主車輪を取り外した後の車椅子の横幅は前記の幅に限定されるものではなく、航空機や新幹線等の列車の座席の間の狭い通路を走行できる幅、例えば、350mm〜450mmの幅が望ましい。
【0022】
図3(B)は、前部に回動自在のキャスター11と後部の回動しない後部キャスター12を有し、座部19と座部の後部に背もたれ20と、座部の両サイドにアームレスト21を有する車椅子の側面図を示す。本願発明の車椅子100は車軸26で連結された大径の主車輪13は車軸上部狭持部27と車軸下部狭持部28により狭持されている。左右の車軸上部狭持部27に連結されたリフトアップレバー24を持ち上げると左右の車軸上部狭持部27が回動して前記車軸26が取り外し可能となり、車軸26を取り外すことによって車軸に連結された左右の大径の主車輪13が取り外される。左右の大径の主車輪13が取り外されると、左右のアームレスト21は、アームレスト21の軸着部21aから回動可能となり、車椅子の背もたれ20の後部に折り畳むことができる車椅子100である。
【実施例3】
【0023】
図4(A)は、大径の主車輪13を外した車椅子200のアームレスト21を車椅子の下に折り畳んだ正面図を示している。アームレスト21にはタックルブレーキ22が着設されており、タックルブレーキ22もアームレスト21と共に車椅子の座部19の下部に収納される。このような状態で本願発明の車椅子200の横幅は400mmとなり、航空機や新幹線等の列車の座席の間の狭い通路を介助者により容易に走行することができる。大径の主車輪13を取り外した後の車椅子200の横幅は前記の幅に限定されるものではなく、航空機や新幹線等の列車の座席の間の狭い通路を走行できる幅、例えば、350mm〜450mmの幅が望ましい。
【0024】
図4(B)は、前部に回動自在のキャスター11と後部に回動しない後部キャスター12を有し、座部19と座部の後部に背もたれ20と、座部の両サイドにアームレスト21を有する車椅子200の側面図を示す。本発明の車椅子200は車軸26で連結された大径の主車輪13は車軸上部狭持部27と車軸下部狭持部28により狭持されている。左右の車軸上部狭持部27に連結されたリフトアップレバー24を持ち上げると左右の車軸上部狭持部27が回動して前記車軸26が取り外し可能となり、車軸26を取り外すことによって車軸に連結された左右の大径の主車輪13が取り外される。左右の大径の主車輪13が取り外されると、左右のアームレスト21は、アームレスト21の軸着部21aから回動可能となり、車椅子の座部19の下に折り畳むことができる車椅子200である。
【符号の説明】
【0025】
100:脱着可能な大径の主車輪を有する車椅子のアームレストを背もたれの後方に折り畳み可能な車椅子。
200:脱着可能な大径の主車輪を有する車椅子のアームレストを座部の下側に折り畳み可能な車椅子。
11:回動可能な前部キャスター
12:後部キャスター
13:大径の主車輪
14:前部フレーム
15:上部フレーム
16:下部フレーム
17:背もたれフレーム
18:グリップ
19:座部
20:背もたれ
21:アームレスト
22:タックルブレーキ
23:フットレスト
24:リフトアップレバー
25:フットレバー
26:車軸
27:車軸上部狭持部
28:車軸下部狭持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部に回動自在の前部キャスターと後部に回動しない後部キャスターを有し、座部と座部の後部に背もたれと、座部の両サイドにタックルブレーキを着設したアームレストを有する車椅子に、車軸で連結された大径の主車輪の前記車軸が着脱自在に軸着された車椅子であって、前記車軸を取り外すと大径の両車輪が取り外されると共に、前記アームレストが折り畳み可能であることを特徴とする車椅子。
【請求項2】
前記車軸で連結された大径の主車輪の前記車軸が着脱自在に軸着された車椅子の、前記車軸を取り外すと大径の両車輪が取り外されると共に、前記アームレストが車椅子の背もたれの後部に折り畳み可能であることを特徴とする請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記車軸で連結された大径の主車輪の前記車軸が着脱自在に軸着された車椅子の、前記アームレストが車椅子の座部の下部に折り畳み可能であることを特徴とする請求項1に記載の車椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−161456(P2012−161456A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23793(P2011−23793)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000146113)株式会社松永製作所 (59)