説明

車軸検出装置

【課題】積雪時など路面部分の距離分布の計測精度が低下する場合であっても、車軸の検出精度の低下を防止できる。
【解決手段】車軸検出装置(10)は、路面と照射光軸が交わるように赤外線を照射する赤外線照射部(121)と、赤外線が照射された被写体からの反射光をそれぞれ受光して、被写体像を取得する複数の画像取得部(123)と、複数の画像取得部(123)でそれぞれ取得された複数の被写体像に基づいて、前記被写体までの距離分布を検出する距離分布検出部(126)と、被写体に車両が含まれない場合の該被写体までの距離分布である背景距離分布を記憶する背景距離分布記憶部(131)と、検出された距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出する車両距離分布抽出部(132)と、抽出された車両距離分布と記憶された背景距離分布とが位置的に連続している場合に、車軸ありと判定する判定手段と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有料道路の料金所などに設置され、当該料金所を通過する車両の車軸を検出するための車軸検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などの有料道路では、車両の車軸数に応じて通行料金が異なるため、車両の車軸を検出するための車軸検出装置が料金所に設置される。この車軸検出装置としては、路面に埋め込まれたセンサを車軸の両端に設けられた車輪が押圧することにより車軸数を検出する接触式のセンサ(以下、踏板マットという)が主流である(例えば、非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、上述のような踏板マットでは、センサを道路に埋設する必要があるため、機器の据え付け時や交換時において長時間の車両通行止めを行わなければならない。また、踏板マットでは、接触式のセンサが用いられるため、動作回数の増加により摩耗し、定期的な交換が必要となる。このため、踏板マットに代わる車軸検出装置として、非接触式のセンサも提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0004】
例えば、特許文献1の車軸検出装置は、レーザ光源と一次元受光センサとから構成される反射型光センサを用いて、三角測量の原理にて、図19に示すように、路面や走行車両(タイヤやボディ)までの距離分布を計測する。また、特許文献1の車軸検出装置は、図19に示すように計測された距離分布と図20A〜20Cに示すモデルデータとの比較結果に基づいて車両のタイヤ部分を検出し、タイヤ部分に接続される車軸を検出する。ここで、図20Aは、車軸検出装置の前方に車両が存在しない場合(すなわち、路面)の距離分布のモデルデータであり、図20Bは、車軸検出装置の前方に車両のタイヤ部分が存在する場合(すなわち、車両のタイヤ部分及び路面)の距離分布のモデルデータであり、図20Cは、車軸検出装置の前方に車両のボディ部分が存在する場合(すなわち、車両のボディ部分及び路面)の距離分布のモデルデータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−232587号公報
【特許文献2】特開2003−203291号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】富士時報 2010、Vol.83、No.2、P.124−127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の車軸検出装置では、路面に積雪がある場合など路面状態が通常ではない場合、三角測量の原理を用いた路面までの距離の計測精度が低下するため、図19に示すような距離分布(特に、路面部分に対応する距離分布)を計測できなくなってしまう。このように、従来の非接触式の車軸検出装置では、積雪時など路面部分の距離分布の計測精度が低下する場合、路面部分の距離分布が図20Bに示すモデルデータと一致しないことから、車両のタイヤ部分を検出できず、ひいては、車軸を検出できない場合があるという問題点があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、積雪時など路面部分の距離分布の計測精度が低下する場合であっても、車軸の検出精度の低下を防止可能な非接触式の車軸検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面に係る車軸検出装置は、路面と照射光軸が交わるように赤外線を照射する第1の照射手段と、前記第1の照射手段から赤外線が照射された被写体からの反射光をそれぞれ受光して、被写体像を取得する複数の取得手段と、前記複数の取得手段でそれぞれ取得された複数の被写体像に基づいて、前記被写体までの距離分布を検出する距離分布検出手段と、被写体に車両が含まれない場合の該被写体までの距離分布である背景距離分布を記憶する記憶手段と、前記距離分布検出手段によって検出された距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された車両距離分布と前記記憶手段で記憶された背景距離分布とが位置的に連続している場合に、車軸ありと判定する判定手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、距離分布検出手段によって検出された距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出し、抽出された車両距離分布と上記背景距離分布との位置的な連続性によって車軸の有無を判定する。このため、距離分布検出手段によって検出された距離分布のうち路面部分の距離分布は、車軸の有無の判定に用いられることがない。したがって、積雪等の影響により路面部分の距離分布の計測精度が低下する場合であっても、車軸の検出精度の低下を防止できる。
【0011】
本発明の第1側面に係る車軸検出装置においては、前記第1の照射手段とは前記路面を挟んで異なる側に設けられ、前記第1の照射手段とは異なる波長の赤外線を車幅方向に照射する第2の照射手段と、前記第1の照射手段と同じ側で前記第2の照射手段に前記路面を挟んで相対して設けられ、前記第2の照射手段から照射された赤外線の受光量に基づいて、前記路面上を通過する車両の有無を検出する車両通過検出手段と、を更に具備し、前記抽出手段は、前記車両通過検出手段によって前記車両が検出された場合に、前記距離分布検出手段によって検出された距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出してもよい。
【0012】
この構成によれば、車両通過検出手段によって車両が検出された場合に、距離分布検出手段によって検出された距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出する。したがって、抽出手段が、被写体に車両が含まれない距離分布に対して無駄な抽出処理を行うのを防止でき、処理効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の第1側面に係る車軸検出装置においては、前記記憶手段は、前記車両通過検出手段によって前記車両が検出されなかった場合に、前記距離分布検出手段によって検出された距離分布に記憶している背景距離分布を更新してもよい。
【0014】
この構成によれば、車両通過検出手段によって車両が検出されなかった場合に、記憶手段に背景距離分布が記憶される。したがって、記憶手段に、被写体に車両が含まれる場合の距離分布が背景距離分布として記憶されることによって、車軸の検出精度が低下するのを防止できる。
【0015】
本発明の第1側面に係る車軸検出装置においては、前記距離分布検出手段は、前記複数の取得手段でそれぞれ取得された前記複数の被写体像の画像データにおいて設定された各対応点までの距離の分布を距離分布として検出してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、積雪時など路面部分の距離分布の計測精度が低下する場合であっても、車軸の検出精度の低下を防止可能な非接触式の車軸検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る車軸検出装置の概要を説明するための図である。
【図2】本実施の形態に係る車軸検出装置の概要を説明するための図である。
【図3】本実施の形態に係る車軸検出装置(発光塔)の詳細機能構成図である。
【図4】本実施の形態に係る車軸検出装置(受光塔)の詳細機能構成図である。
【図5】本実施の形態に係る距離分布を説明するための図である。
【図6】本実施の形態に係る距離分布を説明するための図である。
【図7】本実施の形態に係る距離分布を説明するための図である。
【図8】本実施の形態に係る車軸検出を説明するための図である。
【図9】本実施の形態に係る車軸検出を説明するための図である。
【図10】本実施の形態に係る車軸検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本実施の形態に係る距離分布を説明するための図である。
【図12】本実施の形態に係る車両距離分布の取得方法を説明するための図である。
【図13】本実施の形態に係る車両距離分布の取得方法(続き)を説明するための図である。
【図14】本実施の形態に係る背景距離分布の取得方法を説明するための図である。
【図15】本実施の形態に係る背景距離分布の取得方法(続き)を説明するための図である。
【図16】本実施の形態に係る背景距離分布の取得方法(続き)を説明するための図である。
【図17】本実施の形態に係る車軸の検出方法を説明するための図である。
【図18】本実施の形態に係る車軸の検出方法による効果を説明するための図である。
【図19】従来の車軸検出装置を説明するための図である。
【図20】従来の車軸検出装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1及び2は、本実施の形態に係る車軸検出装置の概要を説明するための図である。図1に示すように、車軸検出装置10を構成する発光塔10a及び受光塔10bは、路面20の両側のアイランド21a及び21b上に路面20を挟んで相対して配置される。
【0019】
具体的には、車軸検出装置10は、発光塔10aから照射された第1の波長の赤外線が受光塔10bに到達する光量に基づいて発光塔10a及び10bの間を通過する車両の有無を検出する車両通過検出系11(後述)と、受光塔10bから照射された第2の波長の赤外線を受光した被写体からの反射光を受光して被写体までの距離分布を取得する距離分布検出系12(後述)と、取得した距離分布に基づいて車軸の検出処理を行う車軸検出系13(後述)とから構成される。
【0020】
図1に示すように、発光塔10a及び受光塔10bの間に車両が存在しない場合、発光塔10aからの第1の波長の赤外線は、路面20上を透過して受光塔10bに到達する。一方、図2に示すように、発光塔10a及び受光塔10bとの間に車両が存在する場合、発光塔10aからの第1の波長の赤外線は、車両によって遮光される。受光塔10bは、図1又は図2に示すような第1の波長の赤外線の光量変化に基づいて、発光塔10a及び受光塔10bの間の車両の有無を検出する。
【0021】
また、受光塔10bは、照射光軸が路面20と交わるように、第1の波長とは異なる第2の波長の赤外線を照射して、当該赤外線を受光した被写体からの反射光を受光して被写体像を取得する。図1に示すように、発光塔10a及び受光塔10bの間に車両が存在しない場合、受光塔10bは、路面20の被写体像(すなわち、車両を含まない被写体像)を受光する。一方、図2に示すように、発光塔10a及び受光塔10bとの間に車両が存在する場合、受光塔10bは、第2の波長の赤外線を受光した車両の被写体像を取得する。受光塔10bは、取得した被写体像の距離分布に基づいて、車軸の有無を検出する。
【0022】
次に、本実施の形態に係る構成される車軸検出装置の詳細機能構成について説明する。図3及び4は、本実施の形態に係る車軸検出装置の詳細機能構成図である。なお、図3及び4は、機能構成を模式的に示すものにすぎず、各構成が配置される位置関係を示すものではない。
【0023】
図3及び4に示すように、車両通過検出系11は、発光塔10a内に設けられる赤外線照射部111a及び111b、照明制御部112、受光塔10b内に設けられる赤外線受光部113a及び113b、車両通過検出部114から構成される。
【0024】
図3に示すように、発光塔10aに設けられる赤外線照射部111a及び111bは、路面20に対して垂直方向に直線状に並べて配置され、車幅方向でかつ路面20に対して平行に、第1の波長の赤外線を照射する。赤外線照射部111a及び111bは、例えば、赤外線LEDとコリメートレンズとを組み合わせて構成される。また、赤外線照射部111a及び111bは、トラックや乗用車など車種が異なっても車両の通過を検出できるように、各車種のボディ部分に対応する高さに設置されてもよい。なお、図3では、2つの赤外線照射部111a及び111bが設けられているが、赤外線照射部111の数は、これに限られるものではない。
【0025】
照明制御部112は、受光塔10bから照射される赤外線とは異なる波長(第1の波長)の赤外線が照射されるように赤外線照射部111a及び111bを制御する。具体的には、照明制御部112は、第1の波長の変調信号を赤外線照射部111a及び111bに入力する。
【0026】
図4に示すように、受光塔10bに設けられる赤外線受光部113a及び113bは、発光塔10aの赤外線照射部111a及び111bに相対するように設置される。赤外線受光部113a及び113bは、例えば、集光レンズ1131とフォトダイオード1132と信号処理回路1133から構成される。フォトダイオード1132から出力される電気信号は信号処理回路1133において検波増幅されて、車両通過検出部114に入力される。
【0027】
車両通過検出部114は、赤外線受光部113a及び113bからの入力信号に基づいて、発光塔10a及び受光塔10bの間の通過車両の有無を判別する。図1に示すように、発光塔10a及び受光塔10bの間に通過車両が存在しない場合、第1の波長の赤外線は赤外線受光部113a及び113bに到達するので、赤外線受光部113a及び113bにおける第1の波長の赤外線の受光量が増大する。一方、発光塔10a及び受光塔10bの間に通過車両が存在する場合、第1の波長の赤外線は通過車両によって遮光されるので、赤外線受光部113a及び113bにおける第1の波長の赤外線の受光量が低下する。そこで、車両通過検出部114は、赤外線受光部113a及び113bからの入力信号が示す第1の波長の赤外線の受光量に基づいて、発光塔10a及び受光塔10bの間の通過車両の有無を判別する。例えば、車両通過検出部114は、第1の波長の赤外線の受光量が所定値未満である場合、通過車両を検出する。車両通過検出部114は、当該検出結果を示す車両通過情報を距離分布検出系12の距離分布検出部126(後述)に出力する。
【0028】
距離分布検出系12は、受光塔10b内に設けられる赤外線照射部121a及び121b、照明制御部122、画像取得部123a及び123b、バンドパスフィルタ124a及び124b、A/D変換部125a及び125b、距離分布検出部126から構成される。
【0029】
受光塔10b内に設けられる赤外線照射部121a及び121bは、照射光軸が路面20と交わるように、所定角度傾けて配置され、第1の波長とは異なる第2の波長の赤外線を照射する。赤外線照射部121a及び赤外線照射部121bとしては、例えば、所定の配光角を有するハイパワー赤外線LEDモジュールなどが用いられる。なお、図4では、2つの赤外線照射部121a及び121bが設けられているが、赤外線照射部121の数は、これに限られるものではない。
【0030】
照明制御部122は、発光塔10aから照射される赤外線とは異なる波長(第2の波長)の赤外線が照射されるように赤外線照射部121a及び121bを制御する。具体的には、照明制御部122は、第2の波長の変調信号を赤外線照射部121a及び121bに入力する。
【0031】
画像取得部123a及び123bは、赤外線照射部121a及び121bの下方に、画像取得部123a及び123bのカメラ光軸が並行となるように所定の間隔で配置される。画像取得部123a及び123bは、それぞれ、赤外線照射部121a及び121bにより第2の波長の赤外線が照射された被写体からの反射光を受光して被写体像を取得する。画像取得部123a及び123bとしては、例えば、赤外線領域に感度を有するCCDカメラやCMOSカメラなどが用いられる。また、2つの画像取得部123a及び123bは、ステレオカメラとして機能する。なお、図4では、2つの画像取得部123a及び123bが設けられているが、画像取得部123の数は、これに限られるものではない。また、画像取得部123の位置は、赤外線照射部121の下方に限られるものではなく、例えば、赤外線照射部121の上方に設けられてもよいし、赤外線照射部121と画像取得部123とが上方から交互に配置されてもよい。
【0032】
具体的には、画像取得部123a及び123bは、それぞれ、カメラレンズ1231、受光素子1232、信号処理回路1233などから構成される。カメラレンズ1231の前方(路面20側)には、赤外線のみを透過して外乱光の影響を排除するバンドパスフィルタ124a及び124bが配置される。例えば、図4に示すように、赤外線照射部121a及び121bから照射された赤外線は、被写体(路面20や車両(不図示)など)によって反射される。当該被写体からの反射光は、バンドパスフィルタ124及びカメラレンズ1231を介して受光素子1232に撮像される。信号処理回路1233は、受光素子1232からの出力信号に基づいて被写体の撮像信号を生成する。
【0033】
A/D変換部125a及び125bは、画像取得部123a及び123bで生成された撮像信号をデジタル信号の画像データに変換し、距離分布検出部126に出力する。なお、画像取得部123a及び123bにおいて、デジタル信号が生成される場合(例えば、デジタルカメラが用いられる場合)は、A/D変換部125a及び125bは、省略されてもよい。また、図4では、A/D変換部125a及び125bが設けられているが、画像取得部123の数に対応してA/D変換部125の数が変更されてもよい。
【0034】
距離分布検出部126は、A/D変換部125a及び125bから入力された2つの画像データから複数の対応点を抽出し、各対応点までの距離を三角測量の原理を用いて演算する。ここで、対応点とは、ステレオカメラで取得された画像データ間において被写体の同じ部分を示す画素又は領域である。また、距離分布検出部126は、演算された各対応点までの距離の分布を距離分布として検出する。なお、距離分布検出部126は、三角測量の原理の代わりに、TOF(Time Of Flight)の原理を用いて被写体までの距離分布を検出してもよい。
【0035】
図5〜7は、本実施の形態に係る距離分布を説明するための図である。図5は、通過車両が被写体に含まれない場合に検出される距離分布の一例である。図5に示す場合、距離分布検出部126は、路面20を被写体とする画像データを取得し、路面20の各対応点までの距離を距離分布として検出する。また、図6は、通過車両のボディ部分が被写体に含まれる場合に検出される距離分布の一例である。図6に示す場合、距離分布検出部126は、通過車両のボディ部分と路面20とを被写体とする画像データを取得し、通過車両のボディ部分の各対応点までの距離と路面20の各対応点までの距離を距離分布として検出する。また、図7は、通過車両のタイヤ部分が被写体に含まれる場合に検出される距離分布の一例である。図7に示す場合、距離分布検出部126は、通過車両のタイヤ部分と路面20とを被写体とする画像データを取得し、通過車両のタイヤ部分の各対応点までの距離と路面20の各対応点までの距離を距離分布として検出する。
【0036】
また、距離分布検出部126は、検出した距離分布を示す距離分布情報を車軸検出系13の背景距離分布記憶部131(後述)又は車両距離分布抽出部132(後述)に出力する。具体的には、車両通過検出部114において通過車両が検出された場合、距離分布検出部126は、距離分布情報を車両距離分布抽出部132に出力する。一方、車両通過検出部114において通過車両が検出されなかった場合、距離分布検出部126は、距離分布情報を背景距離分布記憶部131に入力する。
【0037】
車軸検出系13は、受光塔10b内に設けられる背景距離分布記憶部131、車両距離分布抽出部132、車軸判定部133から構成される。
【0038】
背景距離分布記憶部131は、距離分布検出部126から入力された距離分布情報を最新の背景距離分布として記憶する。具体的には、背景距離分布記憶部131は、距離分布検出部126から入力された距離分布に基づいて、背景距離分布記憶部131に記憶されている背景距離分布情報を更新する。
【0039】
車両距離分布抽出部132は、距離分布検出部126から入力された距離分布情報を分析し、当該距離分布情報が示す距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出する。具体的には、車両距離分布抽出部132は、入力された距離分布情報が示す距離分布と背景距離分布記憶部131で記憶された背景距離分布(車両が存在しない場合の路面20の距離分布)とを比較して、車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出する。例えば、図6に示す距離分布情報が入力された場合、車両距離分布抽出部132は、路面20と交わるライン上で距離分布が連続する部分(すなわち、車両のボディに対応する部分)を車両距離分布として抽出する。図6において、抽出された車両距離分布は路面20と位置的に連続していない。また、図7に示す距離分布情報が入力された場合、車両距離分布抽出部132は、路面20と交わるライン上で距離分布が連続する部分(すなわち、車両のタイヤに対応する部分)を車両距離分布として抽出する。図7において、抽出された車両距離分布は路面20と位置的に連続している。なお、図6及び図7では、車両距離分布として、路面20と交わる直線ライン上の連続する距離分布を抽出しているがこれに限られるものではない。例えば、車両距離分布として、路面20と延長線が交わる所定領域内で所定密度以上の距離分布が抽出されてもよい。
【0040】
車軸判定部133は、車両距離分布抽出部132によって抽出された車両距離分布と背景距離分布記憶部131によって記憶されている背景距離分布との比較結果に基づいて、車軸の有無を判定する。具体的には、車軸判定部133は、上述の車両距離分布と背景距離分布とが位置的に連続しているか否かに基づいて、車軸の有無を判定する。
【0041】
図8及び9は、本実施の形態に係る車軸検出を説明するための図である。図8に示すように、車両距離分布抽出部132によって抽出された車両距離分布と背景距離分布記憶部131によって記憶されている背景距離分布とが空間位置的に連続していない場合、車軸判定部133は、被写体が車両のボディ部分であると判断する。一方、図9に示すように、車両距離分布抽出部132によって抽出された車両距離分布と背景距離分布記憶部131によって記憶されている背景距離分布とが空間位置的に連続している場合、車軸判定部133は、被写体が車両のタイヤ部分であると判断する。車両のタイヤ部分は車軸に設置されているので、車軸判定部133は、車両のタイヤ部分を検出することにより、車軸ありと判定する。
【0042】
次に、以上のように構成された車軸検出装置の動作について説明する。図10は、本実施の形態に係る車軸検出装置の動作を示すフローチャートである。以下のフローは、発光塔10aから第1の波長の赤外線が照射されるとともに、受光塔10bから第2の波長の赤外線が照射されることを前提とする。
【0043】
図10に示すように、受光塔10bの車両通過検出部114は、現在の車両通過情報を取得する(ステップS101)。上述のように、車両通過情報は、発光塔10aから照射された第1の波長の赤外線の受光量に基づいて検出される通過車両の有無を示すものである。
【0044】
受光塔の10bの距離分布検出部126は、現在の距離分布情報を取得する(ステップS102)。上述のように、距離分布情報は、受光塔10bから照射された第2の波長の赤外線の反射光に基づいて演算される各対応点までの距離の分布を示すものである。
【0045】
距離分布検出部126は、ステップS101で取得された車両通過情報に基づいて通過車両の有無を判断する(ステップS103)。通過車両が存在しないと判断された場合(ステップS103;No)、背景距離分布記憶部131は、距離分布検出部126から入力された距離分布情報を最新の背景距離分布として記憶する(ステップS104)。一方、通過車両が存在すると判断された場合(ステップS103;Yes)、車両距離分布抽出部132は、距離分布検出部126から入力された距離分布情報と背景距離分布記憶部131で記憶された背景距離分布とを比較して、車両距離分布を抽出する(ステップS105)。具体的には、車両距離分布抽出部132は、図8及び9に示すように、入力された距離分布情報が示す距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出する。
【0046】
車軸判定部133は、抽出された車両距離分布と背景距離分布記憶部131によって記憶されている背景距離分布とが位置的に連続しているか否かに基づいて、車軸の有無を検出する(ステップS106)。具体的には、図8に示すように、当該車両距離分布と当該背景距離分布とが位置的に連続していない場合、車軸判定部133は、車両のボディ部分であると判断する。一方、図9に示すように、当該車両距離分布と当該背景距離分布とが位置的に連続している場合、車軸判定部133は、車両のタイヤ部分であると判断し、車軸を検出する。
【0047】
このように、車軸判定部133は、距離分布検出部126で検出された距離分布のうち車両に対応する部分の距離分布である車両距離分布と、路面20の距離分布である背景距離分布とが位置的に連続するか否かによって、車軸を検出する。発光塔10a及び受光塔10bの間に車両のタイヤ部分が存在する場合、路面20の状態が通常であれば、図7に示すような距離分布が取得される。一方、同様の場合であっても、路面20上の積雪等の影響により路面20のコントラスト値が低下すると、図11に示すように、路面20上の距離分布が取得されず、路面20に対して垂直な距離分布のみが取得される。車軸判定部133は、車両に対応する部分の距離分布のみを車両距離分布として車軸の検出に用いるため、図11に示すように積雪等の影響により路面20の距離分布の演算精度が低下する場合であっても、車軸の検出精度の低下を防止できる。
【0048】
ここで、図12〜図18を参照し、車軸判定部133による車軸検出方法についてさらに詳述する。図12及び図13は、車両距離分布の取得方法を詳述するための図である。また、図14〜図16は、背景距離分布の取得方法を詳述するための図である。なお、図12〜図16において、横軸は、被写体の対象点までの検出距離を示し、縦軸は、被写体の対象点の相対的な高さを示すものとする。
【0049】
被写体に車両が存在する場合、被写体(すなわち、路面20及び車両)の距離分布が、例えば、図12Aに示される。図12Aにおいて、路面20に対応する距離データは、画像取得部123で撮像される路面20との高さが略一定となるため、所定高さ付近で分布する。一方、車両に対応する距離データは、画像取得部123で撮像された車両までの距離が略一定となるため、所定の検出距離付近で分布する。また、図12Aにおいては、路面20又は車両に対応する距離データの一部は、上記所定高さ付近又は上記所定距離付近以外で誤検出される。このような誤検出データは、車両の検出精度を低下させる原因となることから、図12Bに示されるように除去される。次に、図12Cに示すように、例えば、高さ方向に5cm単位、検出距離方向に250cm単位の領域が設定される。なお、高さ方向の領域単位は、車両のボディ部分と路面20との間の不連続部分が検出される程度の間隔に設定される。
【0050】
次に、図13Aに示すように、車軸距離分布抽出部132は、検出距離方向の領域(以下、検出距離領域という)単位で高さ方向に距離データ数を積算し、最大積算値が所定の閾値以上であるか否かによって車両の有無を判定する。例えば、図13Aでは、距離検出領域aの積算値が最大積算値であり当該最大積算値が所定の閾値以上であるので、車軸距離分布抽出部132は、距離検出領域aに車両が存在すると判定する。また、図13Bに示すように、車軸距離分布抽出部132は、距離検出領域aの距離データを抽出し、高さ方向の領域(以下、高さ領域という)単位で距離データ数を積算する。また、車軸距離分布抽出部132は、積算値が所定の閾値以上であるか否かによって、図13Cに示すように、距離検出領域aにおける高さ領域単位での車両の検出有無を二値化して、車両距離分布とする。
【0051】
一方、被写体に車両が存在しない場合、被写体(すなわち、路面20)の距離分布が、例えば、図14Aに示される。上述のように、路面20に対応する距離データは、所定高さ付近で分布する。また、図14Aにおいては、路面20に対応する距離データの一部は、上記所定高さ付近以外で誤検出される。このような誤検出データは、車軸の検出精度を低下させる原因となることから、図14Bに示されるように除去される。次に、図14Cに示すように、例えば、高さ方向に5cm単位、検出距離方向に250cm単位の領域が設定される。
【0052】
次に、図15Aに示すように、背景距離分布記憶部131は、検出距離領域単位で高さ方向に距離データ数を積算する。図15Aでは、最大積算値が所定の閾値を超えないので、車両が存在しないと判定する。また、図15Bに示すように、背景距離分布記憶部131は、高さ領域単位で検出距離方向に距離データ数を積算し、積算値が所定の閾値以上であるか否かによって、図16Aに示すように、路面20が存在する高さ領域bを検出する。さらに、背景距離分布記憶部131は、高さ領域bにおいて検出距離領域単位で高さ方向に距離データ数を積算し、積算値が所定の閾値以上であるか否かによって、図16Bに示すように、高さ領域bにおける検出距離単位での路面20の検出有無を二値化する。背景距離分布記憶部131は、検出結果を背景距離分布として記憶する。
【0053】
図17は、車軸の検出方法を説明するための図である。図17に示すように、車軸判定部133は、背景距離分布記憶部131で記憶される背景距離分布(図16B参照)と車両距離分布抽出部132で抽出された車両距離分布(図13C参照)とを突合し、背景距離分布と車両距離分布とが位置的に連続するか否かを判定する。車軸判定部133は、背景距離分布と車両距離分布とが位置的に連続する場合、車両のタイヤ部分であると判断し、タイヤ部分に接続される車軸を検出する。
【0054】
このような車軸の検出方法によれば、車軸は、背景距離分布と車両距離分布との位置的な連続性によって検出されるので、図18Aに示すように、路面20と車両との接触部分の距離データの抜けがなければ、路面20又は車両の距離データの一部が外乱光の影響により抜ける場合であっても、車軸有りと検出できる。したがって、外乱光の影響等による車軸の検出精度の低下を軽減できる。図12Bや図14Bを参照して説明したように誤検出データは除去されるので、図18Bに示すように、外乱光等の影響により距離データが誤検出される場合であっても、車軸の検出精度が低下するのを防止できる。
【0055】
なお、車軸判定部133は、背景距離分布と車両距離分布とが図17に示すように完全に連続しなくとも、両者の隙間が所定値未満(例えば、0cm〜5cmの1つの高さ領域)であれば、両者が位置的に連続していると判断し、車軸有りと検出してもよい。一方、車軸判定部110は、両者の隙間が上記所定値以上であれば、両者が位置的に連続しないと判断し、車両のボディ部分であると判断してもよい。
【0056】
本実施の形態に係る車軸検出装置10によれば、距離分布検出部126によって検出された距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出し、抽出された車両距離分布と上記背景距離分布との位置的な連続性によって車軸の有無を判定する。このため、距離分布検出部126によって検出された距離分布のうち路面部分の距離分布は、車軸の有無の判定に用いられることがない。したがって、積雪等の影響により路面部分の距離分布の計測精度が低下する場合であっても、車軸の検出精度の低下を防止できる。
【0057】
また、本実施の形態に係る車軸検出装置10によれば、車両通過検出部114によって車両が検出された場合に、距離分布検出部126によって検出された距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出する。したがって、車両距離分布抽出部132が、被写体に車両が含まれない距離分布に対して無駄な抽出処理を行うのを防止でき、処理効率を向上させることができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る車軸検出装置10によれば、車両通過検出部114によって車両が検出されなかった場合に、背景距離分布記憶部131に記憶している背景距離分布が更新される。したがって、背景距離分布記憶部131に、被写体に車両が含まれる場合の距離分布が背景距離分布として記憶されることによって、車軸の検出精度が低下するのを防止できる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…車軸検出装置、10a…発光塔、10b…受光塔、20…路面、21a…アイランド、21b…アイランド、11…車両通過検出系、12…距離分布検出系、13…車軸検出系、111、111a、111b…赤外線照射部、112…照明制御部、113、113a、113b…赤外線受光部、1131…集光レンズ、1132…フォトダイオード、1133…信号処理回路、114…車両通過検出部、121、121a、121b…赤外線照射部、122…照明制御部、123、123a、123b…画像取得部、1231…カメラレンズ、1232…受光素子、1233…信号処理回路、124、124a、124b…バンドパスフィルタ、125、125a、125b…A/D変換部、126…距離分布検出部、131…背景距離分布記憶部、132…車両距離分布抽出部、133…車軸判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と照射光軸が交わるように赤外線を照射する第1の照射手段と、
前記第1の照射手段から赤外線が照射された被写体からの反射光をそれぞれ受光して、被写体像を取得する複数の取得手段と、
前記複数の取得手段でそれぞれ取得された複数の被写体像に基づいて、前記被写体までの距離分布を検出する距離分布検出手段と、
被写体に車両が含まれない場合の該被写体までの距離分布である背景距離分布を記憶する記憶手段と、
前記距離分布検出手段によって検出された距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された車両距離分布と前記記憶手段で記憶された背景距離分布とが位置的に連続している場合に、車軸ありと判定する判定手段と、
を具備することを特徴とする車軸検出装置。
【請求項2】
前記第1の照射手段とは前記路面を挟んで異なる側に設けられ、前記第1の照射手段とは異なる波長の赤外線を車幅方向に照射する第2の照射手段と、
前記第1の照射手段と同じ側で前記第2の照射手段に前記路面を挟んで相対して設けられ、前記第2の照射手段から照射された赤外線の受光量に基づいて、前記路面上を通過する車両の有無を検出する車両通過検出手段と、を更に具備し、
前記抽出手段は、前記車両通過検出手段によって前記車両が検出された場合に、前記距離分布検出手段によって検出された距離分布から車両に対応する部分の距離分布を車両距離分布として抽出することを特徴とする請求項1に記載の車軸検出装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記車両通過検出手段によって前記車両が検出されなかった場合に、前記距離分布検出手段によって検出された距離分布に記憶している背景距離分布を更新することを特徴とする請求項2に記載の車軸検出装置。
【請求項4】
前記距離分布検出手段は、前記複数の取得手段でそれぞれ取得された前記複数の被写体像の画像データにおいて設定された各対応点までの距離の分布を距離分布として検出することを特徴とする請求項1から請求項3いずれかに記載の車軸検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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