説明

車軸駆動装置

【課題】作業車両の駆動源からの動力を摩擦変速装置から車軸に伝達する車軸駆動装置では、駆動側回転ディスクと従動側回転ディスクとの間は加圧されており、前後進切換時に回転方向が急に反転すると摩擦係合部の発熱等が大きくなる、という問題があった。
【解決手段】摩擦変速装置22は、入力軸38と、入力軸に支持する駆動側回転ディスク44と、入力軸38に直交配置の出力軸39と、出力軸39に支持しつつ駆動側回転ディスク44に周縁部45a・46aを摩擦係合する従動側回転ディスクを備え、従動側回転ディスクは、回転軸心38aを挟んで左側の前進ディスク45と、右側で前進ディスク45と反対方向に回転する後進ディスク46とから構成し、該後進ディスク46と前記前進ディスク45は出力軸39上に遊転配置すると共に、出力軸39を前進ディスク45と後進ディスク46の一方に係合させるディスク切換変速機構23を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に備えた駆動源からの動力を摩擦変速装置を介して車軸に伝達する車軸駆動装置に関し、特に、該車軸駆動装置の耐久性向上技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン等の駆動源からの動力を無段に変速して左右の車軸に伝達する摩擦式の変速装置(以下、「摩擦変速装置」とする)が知られている。
該摩擦変速装置とは、前記駆動源に連動連結される入力軸と、該入力軸に支持される駆動側回転ディスクと、前記入力軸と直交するように配設される出力軸と、該出力軸に支持される従動側回転ディスクとを備えており、前記駆動側回転ディスクと従動側回転ディスクのうちの一方のディスク面を他方の周縁部に摩擦係合させると共に、該摩擦係合部の相対位置を変化させることにより、前記出力軸から、変速と正逆切換が可能な出力が得られるようにしたものである。
このような摩擦変速装置を使って、乗用の除雪機や芝刈機等の作業車両の駆動輪に、前後進切換可能な変速動力を伝達する車軸駆動装置が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
該車軸駆動装置の摩擦変速装置では、駆動側回転ディスクのディスク面に従動側回転ディスクの周縁部が摩擦係合され、該摩擦係合部が駆動側回転ディスクの回転中心にある場合は、駆動側回転ディスクから従動側回転ディスクに回転動力が伝達されない中立状態となり、摩擦係合部が前記回転中心を挟んで径方向一側または径方向他側にある場合は、互いに回転方向が反対の回転動力が、駆動側回転ディスクから各側にある従動側回転ディスクに対して伝達される。例えば、径方向一側にある従動側回転ディスクに、車両前進方向の回転動力が伝達されると、該径方向一側から他側に移動した従動側回転ディスクには、車両後進方向の回転動力が伝達され、これにより、前進速度段・中立・後進速度段の間での変速操作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−36836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、動力伝達時に適切な摩擦係合状態を得る目的から、駆動側回転ディスクと従動側回転ディスクとの間は常時加圧されているため、車両の前後進切換の際に従動側回転ディスクを前記径方向一側から径方向他側に短時間で移動させると、移動途中での回転方向の急な反転にともなって摩擦係合部の発熱や損傷が激しくなり、両ディスク、特に従動側回転ディスクの耐久性が悪化する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、作業車両に備えた駆動源からの動力を摩擦変速装置を介して車軸に伝達する車軸駆動装置において、前記摩擦変速装置は、前記動力によって回転駆動する入力軸と、該入力軸に支持する駆動側回転ディスクと、前記入力軸に直交配置する出力軸と、該出力軸に支持しつつ前記駆動側回転ディスクのディスク面に周縁部を摩擦係合する従動側回転ディスクとを備え、該従動側回転ディスクは、前記駆動側回転ディスクの回転中心を挟んで、該駆動側回転ディスクの径方向一側に配置する正転ディスクと、径方向他側に配置して前記正転ディスクと反対方向に回転する逆転ディスクとから構成し、該逆転ディスクと前記正転ディスクとは前記出力軸上に遊転配置すると共に、該出力軸を前記正転ディスクと逆転ディスクの一方に係合させるディスク切換変速機構を備えたものである。
請求項2においては、前記出力軸を固定フレームに支持し、前記入力軸を可動フレームに支持し、該可動フレームは、前記固定フレームに対して、前記出力軸を中心に傾倒可能に連結すると共に、前記入力軸は、ベルト伝動装置のベルトを介して前記駆動源に連動連結しており、前記可動フレームに接続したクラッチ操作部材によって、クラッチ切時には、前記可動フレームを前記ベルトの弛緩方向に傾倒させて、駆動源から入力軸への動力伝達を遮断し、クラッチ入時には、前記可動フレームを、前記固定フレーム・可動フレーム間に張設する弾性部材により、前記ベルトの緊張方向に傾倒させて、駆動源から入力軸への動力伝達を行うクラッチ入切機構を設け、該クラッチ入切機構により、前記ディスク切換変速機構による係脱操作を可能とするものである。
請求項3においては、前記ディスク切換変速機構において、前記正転ディスクと逆転ディスクとの間の出力軸上に、該出力軸に対して相対回転不能かつ軸方向摺動可能な切換部材を備えると共に、前記正転ディスクと逆転ディスクのうちで軸方向位置を変更可能な可変ディスクには、弾性部材を付設しており、増速時には、前記切換部材を可変ディスクに係合させて軸方向外側に向かって押し出し、減速時には、前記弾性部材の弾性力により可変ディスクを切換部材と押圧一体化し、軸方向内側に向かって移動する切換部材と一緒に可変ディスクを引き戻すディスク押し引き構造を設け、該ディスク押し引き構造により、前記ディスク切換変速機構による変速操作を可能とするものである。
請求項4においては、前記ディスク切換変速機構において、前記正転ディスクと逆転ディスクとの間の出力軸上に、該出力軸に対して相対回転不能かつ軸方向摺動可能な切換部材を備えると共に、該切換部材の外周に設けた外周爪の間には、前記出力軸の径方向外側に向かって外周面から突出/退避自在な係止体を配置する一方、前記正転ディスクと逆転ディスクの内周には内周爪を設け、更に、両ディスクのうちで軸方向位置を変更可能な可変ディスクの内周爪には、前記係止体が嵌合可能な係止溝を形成しており、増速時には、前記外周爪と内周爪が嵌合した状態で、前記切換部材の外側面が可変ディスクを軸方向外側に向かって押し出し、減速時には、遠心力によって突出した前記係止体が係止溝に嵌合した状態で、該係止体の内側面が可変ディスクを軸方向内側に向かって引き戻すディスク押し引き構造を設け、該ディスク押し引き構造により、前記ディスク切換変速機構による変速操作を可能とするものである。
請求項5により、前記正転ディスクと逆転ディスクには、表面積増加のための凹凸部、ディスク前後に冷却風を導く貫通孔、及びフィンのうちの少なくとも一つを設けるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、前記従動側回転ディスクを構成する正転ディスクと逆転ディスクのいずれも、回転方向が変わることなく駆動側回転ディスクのディスク面に摩擦係合させると共に、前記ディスク切換変速機構によって、駆動源からの動力を駆動側回転ディスクから正転ディスクと逆転ディスクの一方を介して出力軸に伝達させることができ、従動側回転ディスクが単体の場合のように、車両の前後進切換等の際に摩擦係合部を加圧状態で径方向一側から径方向他側に短時間で移動させて回転方向が急に反転する、ということがなく、摩擦係合部の発熱や損傷を抑制することができ、両ディスク、特に従動側回転ディスクの耐久性を向上できる。
請求項2により、前記クラッチ入切機構によって、前記出力軸を正転ディスクと逆転ディスクの一方に係合させる際には、駆動源から入力軸への動力伝達を遮断して正転ディスクと逆転ディスクのいずれも無駆動状態にすることができ、正転ディスクと逆転ディスクの一方への出力軸の係合が可能となる。これにより、従来のように、駆動側回転ディスクのディスク面に対して従動側回転ディスクである正転ディスク・逆転ディスクを接触/離間させてクラッチ入切を行う場合と比べ、摩擦係合部の発熱や損傷を一層抑制し、両ディスクの耐久性を更に向上できる。
請求項3により、前記弾性部材を付設するだけの簡単な構造で、軸方向外側に向かって移動中にのみ可変ディスクと係合可能な切換部材に対し、該切換部材が軸方向内側に移動中であっても、可変ディスクを常に追従させることができ、部品点数の削減による部品コストの低減を図ることができる。
請求項4により、前記切換部材に係止体を組み込んだコンパクトな構造により、可変ディスクを、該可変ディスクと係合状態にある切換部材の移動に追従して軸方向内側に移動させることができ、弾性部材等の設置空間の省略による車軸駆動装置の小型化を図ることができる。
請求項5により、前記正転ディスクと逆転ディスクの冷却効率を高めることができ、摩擦係合部の発熱を一層抑制することができ、正転ディスクと逆転ディスクの耐久性を更に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係わる車軸駆動装置を備えた乗用芝刈機の全体構成を示す側面図である。
【図2】車軸駆動装置の背面一部断面図である。
【図3】同じく側面図であって、図3(a)は「クラッチ入」時の車軸駆動装置の側面図、図3(b)は「クラッチ切」時の車軸駆動装置の側面図である。
【図4】後進ディスクの斜視図である。
【図5】別形態の車軸駆動装置の背面一部断面図である。
【図6】中間速状態における別形態の車軸駆動装置の背面一部断面図である。
【図7】図5のA−A矢視断面図である。
【図8】切換ギア部の係合・移動プロセスを示す説明図であって、図8(a)は切換ギア部係合前の係合凹部近傍の側面断面図、図8(b)は切換ギア部の一部係合時の係合凹部近傍の側面断面図、図8(c)は係止体のカムボールが内周爪に乗り上げた時の係合凹部近傍の側面断面図、図8(d)は係止体のカムボールが係止溝に落ち込んだ時の係合凹部近傍の側面断面図である。
【図9】切換ギア部の移動・抜脱プロセスを示す説明図であって、図9(a)は係止体のカムボールが係止溝に落ち込んだ後に切換ギア部を減速側に摺動する時の係合凹部近傍の側面断面図、図9(b)は係止体のカムボールが内周爪に乗り上げ始めた時の係合凹部近傍の側面断面図、図9(c)は係止体のカムボールが内周爪に乗り上げた時の係合凹部近傍の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明に係わる車軸駆動装置2を備えた作業車両である乗用芝刈機1について、図1、図2により説明する。なお、該図1中の矢印Fで示す方向を乗用芝刈機1の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前進方向を基準とするものである。
【0009】
該乗用芝刈機1は、平面視矩形状の車体フレーム4を有し、該車体フレーム4における左右の側板部4a・4bの後部外側に、駆動輪としての左右の後輪5・5が配置される。該後輪5・5間には、本発明に係わる車軸駆動装置2が配置されて前記側板部4a・4bに支持されており、該車軸駆動装置2から左右の車軸36L・36Rを介して前記後輪5・5に走行動力が伝達されて、乗用芝刈機1を後輪駆動で走行できるようにしている。
【0010】
更に、前記車体フレーム4上には、前から順に、ステアリングカバー6、該ステアリングカバー6から上方に突出するステアリングコラム13、該ステアリングコラム13上端に回動可能に支持される操向ハンドル7、プラットフォーム8、運転席9、及びエンジン3が支持されており、該エンジン3の後部下方に、前記車軸駆動装置2が配置されている。
【0011】
加えて、前記運転席9の右側方には、変速レバー10が配置され、該変速レバー10は、前記車軸駆動装置2内で摩擦変速装置22に備えたディスク切換変速機構23に対し、図示せぬワイヤケーブル・ベルクランク等のリンク機構・シフトフォーク27を介して連係されており、該変速レバー10の傾倒操作を行うことにより、前記ディスク切換変速機構23が作動し、前記後輪5・5に無段の前進動力と一段の後進動力が伝達できるようにしている。
【0012】
そして、前記運転席9の前下方には、クラッチペダル56が配置され、該クラッチペダル56は、前記車軸駆動装置2に備えたクラッチ入切機構24に連係されており、該クラッチペダル56を踏み戻し操作することにより、前記摩擦変速装置22への動力伝達の断接が行えるようにしている。
【0013】
また、前記車体フレーム4の前端部の左右各端には、操向輪としての左右の前輪12・12が水平回動可能に支持される。そして、該左右の前輪12・12間を連結するリンク部中央に設けた図示せぬ枢支軸の上端は、ステアリングシャフト14の下端に連結され、該ステアリングシャフト14は、前記ステアリングコラム13内を通って、前記操向ハンドル7に連動連結されており、該操向ハンドル7の回動量および回動方向に基づいて、前記ステアリングシャフト14を介して、左右の前輪12・12の左右方向の向きを制御し、乗用芝刈機1の旋回操作が行えるようにしている。
【0014】
更に、前記車体フレーム4の下方で、前輪12・12と後輪5・5との間には、刈取作業を行うモア装置15が配置される。該モア装置15においては、モアデッキ16が、前記車体フレーム4の前部に、吊り下げリンク17を介して上下高さ調整可能に支持されると共に、該モアデッキ16内には、ブレード18、その駆動軸19、及び該駆動軸19上端に固設される従動プーリ20が内装されている。
【0015】
ここで、前記エンジン3とモア装置15・車軸駆動装置2との間には、ベルト伝動装置43が介設されている。該ベルト伝動装置43においては、前記エンジン3より垂設されたエンジン出力軸3aの下部に、上下の駆動プーリ28a・28bから成る2連プーリ28が固設され、このうちの下駆動プーリ28bと前記従動プーリ20とは、略同一水平面上に配置されると共に、該両プーリ20・28bとの間には、ベルト21が緊張状態で巻回されている。
【0016】
これにより、作業時には、エンジン3からのエンジン動力が、前記エンジン出力軸3a、下駆動プーリ28b、ベルト21、従動プーリ20、及び駆動軸19を介して、前記ブレード18に伝達され、該ブレード18を回転させて芝刈作業が行えるようにしている。
【0017】
更に、前記上駆動プーリ28aよりも後方で略同一平面上に、前記車軸駆動装置2にエンジン動力を入力する入力プーリ30が配置されると共に、該両プーリ30・28aとの間には、ベルト29が緊張状態で巻回されている。
【0018】
これにより、走行時には、エンジン3からのエンジン動力が、前記エンジン出力軸3a、上駆動プーリ28a、ベルト29、及び入力プーリ30を介して、前記車軸駆動装置2に伝達され、該車軸駆動装置2内の前記摩擦変速装置22により、前後進切換と変速が行えるようにしている。
【0019】
次に、前記車軸駆動装置2について、図1乃至図4により説明する。
該車軸駆動装置2においては、前記車体フレーム4の左右側板部4a・4b間に、背面視U字状の固定フレーム31が固設され、該固定フレーム31の左右の側板部31a・31bの上下略中央には、それぞれボス部材50a・50bが固設されている。そして、該ボス部材50a・50bに、前記車軸36L・36Rが、いずれもベアリング37を介して、それぞれ回動可能に支持される。
【0020】
更に、前記左の側板部31aの前端には、一対の半割部51a・51bから成るボス部材51が固設され、前記右の側板部31bの前端にも、一対の半割部52a・52bから成るボス部材52が固設されており、これら左右のボス部材51・52は、左右方向同一軸心上に配置される。そして、該ボス部材51・52に、前記摩擦変速装置22からの出力軸39が、前記車軸36L・36Rと略平行に、ブッシュ40を介して回動可能に支持されている。
【0021】
加えて、該出力軸39上で前記ボス部材51・52の内側には、ベアリング41を介して、ボス部材54a・54bが回動可能に配置され、該ボス部材54a・54bは、可動フレーム32の左右の側板部32a・32bの下端に固設されており、該可動フレーム32が、その下端の前記出力軸39を中心に、前記固定フレーム31に対して前後傾倒可能に構成されている。
【0022】
該可動フレーム32は、下方に開いた背面視U字状であって、左右の側板部32a・32bの上端間を連結する天板部32cには、平面視略中央位置にボス部材55が固設され、該ボス部材55に、前記摩擦変速装置22への入力軸38が、前記出力軸39と直交するように、ベアリング42を介して回動可能に支持されている。
【0023】
このような構成により、前記エンジン3から入力軸38までのベルト伝動装置43を操作する前記クラッチ入切機構24が形成され、該入力軸38から前記出力軸39にかけて、前記ディスク切換変速機構23を備えた摩擦変速装置22が配置され、更に、該出力軸39から車軸36L・36Rにかけて、減速ギア列33・減速装置34・差動装置35が順に配置されている。
【0024】
このうちのクラッチ入切機構24について説明する。
該クラッチ入切機構24において、前記ベルト伝動装置43の入力プーリ30が入力軸38の上端に固設されると共に、該入力軸38を軸支するボス部材55を固設した前記可動フレーム32は、前述の如く、出力軸39を中心に、前記固定フレーム31に対して前後傾倒可能に構成される。
【0025】
そして、該固定フレーム31の左の側板部31aには下係止片57が固設され、前記可動フレーム32の左の側板部32aにも上係止片58が固設され、これら上下の係止片57・58間には、クラッチバネ59が、前記出力軸39よりも後方位置において、緊張状態で介装されている。
【0026】
更に、前記可動フレーム32の側板部32aでボス部材54aの近傍には、規制ピン60が外方に突設される。前記可動フレーム32が後方に傾倒して入力軸38の回転軸心38aが鉛直になると、この規制ピン60が、前記固定フレーム31の側板部31aの上縁31a1に当接し、それ以上は可動フレーム32が後方に傾倒できないようにしている。
【0027】
これにより、常に、可動フレーム32が、クラッチバネ59の弾性力によって後方に付勢され、入力軸38が鉛直状態となる位置に保持されると共に、該入力軸38の入力プーリ30と前記エンジン出力軸3aの上駆動プーリ28aとの間に巻回された前記ベルト29を、緊張状態に保持することができる。
【0028】
ここで、前記クラッチペダル56は、前記車体フレーム4から延設した支軸4cに下端を前後回動可能に支持した側面視L字状のペダル本体部56aと、該ペダル本体部56aの下端より後斜め上方に突設したステー部56bとから構成される一方、前記可動フレーム32の天板部32cの前端からも、ステー部32dが前方に突設され、該両ステー部56c・32d間は、ワイヤケーブル61によって連動連結されている。
【0029】
このような構成において、前記クラッチペダル56の踏み操作を行うと、図3(b)に示すように、前記ステー部56bが前方に回動してワイヤケーブル61が前方に牽引され、前記クラッチバネ59の弾性力に抗して、前記可動フレーム32が、前記出力軸39を中心にして前方に傾倒する。すると、前記入力軸38の回転軸心38aも、位置62から位置63まで前方に傾倒し、前記エンジン出力軸3aの上駆動プーリ28aと入力軸38の入力プーリ30との間隔が短縮されてベルト29が弛緩状態となり、両プーリ28a・30間の動力伝達が行われなくなって「クラッチ切」となる。
【0030】
引き続き、前記クラッチペダル56の戻し操作を行うと、図3(a)に示すように、前記ワイヤケーブル61による前方への牽引力がなくなり、前記可動フレーム32が、前記クラッチバネ59の弾性力によって、前記出力軸39を中心にして後方に傾倒される。すると、前記入力軸38の回転軸心38aも、位置63から位置62まで後方に傾倒して元の位置に復帰し、両プーリ28a・30間の間隔が伸張されてベルト29が緊張状態となり、両プーリ28a・30間の動力伝達が再び可能となって「クラッチ入」となる。
【0031】
また、前記摩擦変速装置22について説明する。
該摩擦変速装置22は、前記入力軸38と、該入力軸38の下端に相対回転不能かつ軸心方向摺動可能にスプライン結合される駆動側回転ディスク44と、前記入力軸38に直交配置する前記出力軸39と、該出力軸39上に遊嵌される前進ディスク45・後進ディスク46と、該前進ディスク45・後進ディスク46の一方に出力軸39を係合するディスク切換変速機構23とを備える。
【0032】
そして、前記前進ディスク45・後進ディスク46は、出力軸39上に、前記駆動側回転ディスク44の回転中心となる前記回転軸心38aを挟んで左右に配置されると共に、その周縁部45a・46aは、前記駆動側回転ディスク44のディスク下面44aに常時当接されている。
【0033】
ここで、前記ボス部材55の下端面近傍の入力軸38上には、止め輪47が外嵌固定されると共に、前記駆動側回転ディスク44の上面には、入力軸38の周囲に凹部44cが形成され、該凹部44c内のバネ受け64と前記止め輪47との間には、入力軸38に巻回された付勢バネ49が、圧縮状態で介装されている。
【0034】
更に、前記駆動側回転ディスク44のディスク下面44a近傍の入力軸38上には、駆動側回転ディスク44抜け止め防止用の止め輪48が外嵌固定されると共に、該止め輪47は、前記ディスク下面44aに形成した凹部44d内に嵌入されている。
【0035】
これにより、前記入力軸38からの駆動側回転ディスク44の脱落を防止しつつ、該駆動側回転ディスク44のディスク下面44aを、従動側回転ディスクである前進ディスク45・後進ディスク46の各周縁部45a・46aに向けて常時付勢することができ、ディスク下面44aと各周縁部45a・46aとの接触部分(以下、「摩擦係合部」とする)における摩擦力を増加させて、摩擦変速装置22における動力伝達ロスを軽減させている。
【0036】
そして、前記ディスク切換変速機構23においては、出力軸39の右半部に、相対回転不能かつ軸心方向摺動可能に、摺動部材89がスプライン結合され、該摺動部材89は、左右の前進ディスク45・後進ディスク46間に配置される切換ギア部90と、該切換ギア部90から右方に延設されると共に前記後進ディスク46を周りに遊嵌した筒状の本体部91と、該本体部91の右端に拡径された係合部92とから構成される。
【0037】
該係合部92には、その外周に溝状のシフト凹部92aが形成され、該シフト凹部92aには、前記シフトフォーク27のフォーク状の先部27aが係合されると共に、該シフトフォーク27の基部27bは、シフト軸11に外嵌固定される。該シフト軸11は、前記固定フレーム31の左右の側板部31a・31b間に、前記出力軸39の軸心方向と同方向に摺動可能に横架されると共に、該シフト軸11の一端には、図示せぬベルクランクの一端が連結される。
【0038】
該ベルクランクの他端は、ワイヤケーブル等を介して前記変速レバー10に連係されており、該変速レバー10の傾倒操作を行うと、前記ベルクランクの一端が図示せぬ回転軸を中心に揺動してシフト軸11が左右動し、シフトフォーク27を介して摺動部材89が出力軸39上を摺動する。
【0039】
更に、前記後進ディスク46の外側面46bと該係合部92との間には、本体部91に巻回された保持バネ66が圧縮状態で介装されると共に、後進ディスク46の内側面46cの上端部は、前記入力軸38の下端より垂設した規制突部38bの右側面に当接されており、該規制突部38bと前記保持バネ66によって、後進ディスク46は、常に位置68に保持されている。
【0040】
一方、前記前進ディスク45の外側面45bで出力軸39の周囲には、凹部45dが形成され、該凹部45d内にバネ受け69が配置されると共に、前記出力軸39上で減速ギア列33の内側近傍にも、バネ受け70が相対回転可能かつ軸心方向摺動不能に遊嵌され、両バネ受け69・70間に、前記出力軸39に巻回された変速バネ67が、圧縮状態で介装されている。そして、前進ディスク45の内側面45cの上端部も、前記規制突部38bの左側面に当接されており、該規制突部38bと前記変速バネ67によって、前進ディスク45は、右方に向かって付勢された状態で、位置71から位置72まで移動できるようにしている。
【0041】
これにより、前進ディスク45を回転軸心38aの左側に位置させ、後進ディスク46を回転軸心38aの右側に位置させることができ、各回転ディスク45・46の回転方向は常に変化しない。
【0042】
加えて、前進ディスク45・後進ディスク46の各内側面45c・46cで出力軸39の周囲には、それぞれ係合凹部45e・46eが形成されている。該係合凹部45e・46eに前記摺動部材89の切換ギア部90が嵌入すると、該切換ギア部90の外周爪90bは、係合凹部45e・46eの内周に形成された各内周爪45e1・46e1に嵌合される。これにより、切換ギア部90を、前進ディスク45・後進ディスク46の一方に係合させることができ、前進ディスク45・後進ディスク46の回転動力が、切換ギア部90を備える摺動部材89を介して、前記出力軸39に伝達されるようにしている。
【0043】
以上のような構成において、前記摺動部材89の切換ギア部90が、前記入力軸38の回転軸心38aに相当する位置79にある場合は、切換ギア部90は前進ディスク45・後進ディスク46のいずれにも係合せず、該前進ディスク45・後進ディスク46は出力軸39上を遊転するだけであり、該出力軸39に動力が伝達されない中立状態Nとなる。
【0044】
この際、前進ディスク45は、位置79よりも左側の前記位置71にあって、前進方向の回転力が、駆動側回転ディスク44からこの前進ディスク45に伝達される一方、後進ディスク46は、位置79よりも右側の位置68にあって、後進方向の回転力が、駆動側回転ディスク44からこの後進ディスク46に伝達され、該後進ディスク46は前記前進ディスク45とは反対方向に回転する。
【0045】
そこで、前記クラッチペダル56の踏み操作を行い、可動フレーム32を前方に傾倒してベルト29を弛緩させると、「クラッチ切」となって入力軸38への動力伝達が遮断され、前進ディスク45・後進ディスク46のいずれの回転も停止して無駆動状態となる。そして、該無駆動状態中に、前記変速レバー10の傾倒操作を行い、前記切換ギア部90を左方に摺動させて前進ディスク45に係合させる。
【0046】
続いて、前記クラッチペダル56の戻し操作を行い、可動フレーム32を後方に傾倒してベルト29を緊張させると、「クラッチ入」となって入力軸38への動力伝達が再開され、前進ディスク45・後進ディスク46のいずれも回転を開始して駆動状態となるが、前進ディスク45の回転動力のみが、該前進ディスク45に係合済みの摺動部材89を介して、前記出力軸39に伝達される。この際、回転軸心38aから摩擦係合部までの半径方向距離(以下、「係合半径」とする)が最も短いため、該摩擦係合部における周速は最も遅くなり、前進ディスク45が駆動側回転ディスク44から受ける前進方向の回転力が最小となって、位置71では前進の最低速状態Fminとなる。
【0047】
増速時に、前記変速レバー10の傾倒操作を行い、前記切換ギア部90を左方に摺動させると、前記変速バネ67の弾性力に抗して、前進ディスク45の係合凹部45eが、前記切換ギア部90のギア側面90aによって左方に押動され、前進ディスク45が、前記位置71からディスク下面44aの最左端に相当する位置72まで移動する。その間、前記係合半径が増加し、摩擦係合部における周速も上昇していく。すると、前進ディスク45が駆動側回転ディスク44から受ける前進方向の回転力が無段で増加し、位置72では前進の最高速状態Fmaxとなる。
【0048】
減速時に、前記切換ギア部90を右方に摺動させても、前進ディスク45が前記変速バネ67の弾性力により右方に向かって付勢した状態にあるため、前進ディスク45と切換ギア部90とは押圧一体化されており、前進ディスク45の係合凹部45eから切換ギア部90が脱落することがなく、前進ディスク45は、切換ギア部90に常に追従するようにして、前記位置72から右方に移動する。そして、位置71に達すると、前述の如く、前進ディスク45の内側面45cの上端部が前記規制突部38bの左側面に当接し、それ以上は右方に移動できないようにしている。その間は、係合半径が減少し、摩擦係合部における周速も遅くなっていく。
【0049】
このように前記変速バネ67の弾性力を利用したディスク押し引き構造25によって、エンジン3からの回転動力は、前進の最高速状態Fmaxから最低速状態Fminの間で無段変速される。
【0050】
一方、前後進を切り換える場合は、まず、前記クラッチペダル56の踏み操作を行って「クラッチ切」とし、前進ディスク45・後進ディスク46のいずれの回転も停止させ、その後、前記変速レバー10の傾倒操作を行って前記切換ギア部90を右方に摺動させ、前進ディスク45の係合凹部45eから抜脱する。そして、該切換ギア部90は、そのまま後進ディスク46の係合凹部46eに嵌入して、後進ディスク46と係合させる。
【0051】
続いて、前記クラッチペダル56の戻し操作を行って「クラッチ入」とすると、後進ディスク46の回転動力のみが、係合済みの摺動部材89を介して出力軸39に伝達される。この際、係合半径は前記位置71と略同じで、かつ回転方向が前進ディスク45と反対方向となって、位置68では後進速状態Rとなる。
【0052】
つまり、このようにクラッチペダル56の踏み戻し操作と変速レバー10の傾倒操作を組み合わせることにより、前進走行時には、切換ギア部90を前進ディスク45に係合させて前進に切り換えた後、更に、切換ギア部90を左右に摺動して係合半径を変化させ、前進ディスク45の回転力を変化させる。これにより、摺動部材89を介して、出力軸39から出力される変速動力の回転速度を、無段で変更することができる。一方、後進走行時には、切換ギア部90を後進ディスク46に係合させて後進に切り換えることにより、該後進ディスク46には、前記前進ディスク45と反対方向の回転力を発生させ、摺動部材89を介して、出力軸39から後進方向の変速動力を出力させることができる。
【0053】
しかも、クラッチペダル56の踏み戻し操作によるクラッチ入切は、ベルト29の緊張/弛緩によって行うので、従来のように、駆動側回転ディスク44のディスク下面44aに前進ディスク45・後進ディスク46の周縁部45a・46aを接触/離間させてクラッチ入切を行う場合と比べ、摩擦係合部の発熱や損傷を軽減することができる。
【0054】
なお、このような摩擦係合部等から発生する熱に対しては、前記前進ディスク45の内側面45cに、複数の空冷凹部45gが設けられている。これにより、該空冷凹部45gの分だけ前進ディスク45の表面積が増加して、回転中の前進ディスク45自体の冷却性が向上すると共に、前記空冷凹部45gが空気抵抗となって風が発生し、その風の一部が、前記後進ディスク46に向かって冷却風として供給される。
【0055】
更に、前記後進ディスク46には、図4に示すように、円周上略等間隔に4個の冷却孔46gが軸心方向に穿孔されると共に、該各冷却孔46g内には、円周方向同方向に傾斜したフィン46hが内設されている。これにより、後進ディスク46回転中には、外側面46b・内側面46cのうちの一方から他方に向かって強い冷却風を流すことができ、このディスク前後に導かれる冷却風によって、摩擦変速装置22全体を冷却するようにしている。特に、この後進ディスク46の係合半径は一定なため、その回転力も一定となり、後進ディスク46によって発生する冷却風の風力変動が小さく、安定した冷却風を供給することができる。なお、本実施例では、フィン46hを冷却孔46g内に設けているが、後進ディスク46の外側面46b・内側面46c等に設けてもよく、後進ディスク46回転中に周辺部との干渉を回避できれば、フィン46hの設置位置は、特に限定されるものではない。
【0056】
また、前記減速ギア列33・減速装置34・差動装置35について説明する。
前記車軸36Lには2連ギア74が遊嵌され、該2連ギア74の左端の大径の入力ギア部74aが、前記出力軸39上で前記バネ受け70・ボス部材54a間に固設される小径の出力ギア75と常時噛合されており、該出力ギア75と前記入力ギア部74aとから減速ギア列33が構成される。
【0057】
ここで、前記固定フレーム31において、その左右の側板部31a・31bの下端間を連結する底板部31cの上面には、支持ステー76が立設され、該支持ステー76の上部には、ボルト78により、リングギアであるインターナルギア77の下端が締結固定されている。該インターナルギア77の軸心には、基部孔77bが開口され、該基部孔77bに、前記2連ギア74の軸部74cが、軸受け26を介して内挿支持されており、該2連ギア74が、前記車軸36Lとインターナルギア77とにより、内外から、回転可能に支持されている。
【0058】
そして、この2連ギア74の右端外周には、サンギア部74bが刻設されると共に、前記インターナルギア77の内周には、ギア部77aが刻設され、両ギア部74b・77aのいずれにも、遊星ギア83が常時噛合されている。該遊星ギア83は、遊星ギア軸82上に相対回転可能に外嵌され、該遊星ギア軸82は、前記差動装置35のデフケース80に相対回転不能に外嵌された遊星ギアキャリア81から、前記車軸36Lと平行に、左方に向かって延設されている。これにより、遊星ギア機構から成る減速装置34が構成される。
【0059】
前記デフケース80は、前記車軸36L・36Rと同一軸心を有するように、前記ボス部材50bに軸受け84を介して回動可能に支持されると共に、該デフケース45内には、前記車軸36L・36Rと直交するように、ピニオン軸85・85が配置され、該ピニオン軸85・85が、デフケース80と一体的に回転するようにしている。そして、ピニオン軸85・85の内端部には、ピニオン86・86が回動自在に配置され、該ピニオン86・86には、前記車軸36L・36Rの内端側に固定されたデフサイドギア87・87に噛合されている。これにより、左右の車軸36L・36R間を差動連結する差動装置35が構成される。
【0060】
以上のような構成により、前記摩擦変速装置22によって出力軸39から出力される変速動力は、前記減速ギア列33・減速装置34により減速された後、差動装置35に入力され、差動回転可能に左右の車軸36L・36Rに伝達される。
【0061】
すなわち、作業車両である乗用芝刈機1に備えた駆動源であるエンジン3からの動力を摩擦変速装置22を介して車軸36L・36Rに伝達する車軸駆動装置2において、前記摩擦変速装置22は、前記動力によって回転駆動する入力軸38と、該入力軸38に支持する駆動側回転ディスク44と、前記入力軸38に直交配置する出力軸39と、該出力軸39に支持しつつ前記駆動側回転ディスク44のディスク面であるディスク下面44aに周縁部45a・46aを摩擦係合する従動側回転ディスクを備え、該従動側回転ディスクは、前記駆動側回転ディスク44の回転中心である回転軸心38aを挟んで、該駆動側回転ディスク44の径方向一側である左側に配置する正転ディスクである前進ディスク45と、径方向他側である右側に配置して前記前進ディスク45と反対方向に回転する逆転ディスクである後進ディスク46とから構成し、該後進ディスク46と前記前進ディスク45とは前記出力軸39上に遊転配置すると共に、該出力軸39を前記前進ディスク45と後進ディスク46の一方に係合させるディスク切換変速機構23を備えたので、前記従動側回転ディスクを構成する前進ディスク45と後進ディスク46のいずれも、回転方向が変わることなく駆動側回転ディスク44のディスク下面44aに摩擦係合させると共に、前記ディスク切換変速機構23によって、エンジン3からの動力を駆動側回転ディスク44から前進ディスク45と後進ディスク46の一方を介して出力軸39に伝達させることができ、従動側回転ディスクが単体の場合のように、乗用芝刈機1の前後進切換等の際に摩擦係合部を加圧状態で左側から右側、または右側から左側に短時間で移動させて回転方向が急に反転する、ということがなく、摩擦係合部の発熱や損傷を抑制することができ、両ディスク、特に従動側回転ディスクである前進ディスク45・後進ディスク46の耐久性を向上できる。
【0062】
更に、前記出力軸39を固定フレーム31に支持し、前記入力軸38を可動フレーム32に支持し、該可動フレーム32は、前記固定フレーム31に対して、前記出力軸39を中心に傾倒可能に連結すると共に、前記入力軸38は、ベルト伝動装置43のベルト29を介して前記駆動源であるエンジン3に連動連結しており、前記可動フレーム32に接続したクラッチ操作部材であるクラッチペダル56によって、クラッチ切時には、前記可動フレーム32を前記ベルト29の弛緩方向である前方に傾倒させて、エンジン3から入力軸38への動力伝達を遮断し、クラッチ入時には、前記可動フレーム32を、前記固定フレーム31・可動フレーム32間に張設する弾性部材であるクラッチバネ59により、前記ベルト29の緊張方向である後方に傾倒させて、エンジン3から入力軸38への動力伝達を行うクラッチ入切機構24を設け、該クラッチ入切機構24により、前記ディスク切換変速機構23による係脱操作を可能とするので、前記クラッチ入切機構24によって、前記出力軸39を正転ディスクである前進ディスク45と逆転ディスクである後進ディスク46の一方に係合させる際には、エンジン3から入力軸38への動力伝達を遮断して前進ディスク45と後進ディスク46のいずれも無駆動状態にすることができ、前進ディスク45と後進ディスク46の一方への出力軸39の係合が可能となる。これにより、従来のように、駆動側回転ディスク44のディスク下面44aに対して従動側回転ディスクである前進ディスク45・後進ディスク46を接触/離間させることによりクラッチ入切を行う場合と比べ、摩擦係合部の発熱や損傷を一層抑制し、両ディスクの耐久性を更に向上できる。
【0063】
加えて、前記ディスク切換変速機構23において、前記正転ディスクである前進ディスク45と逆転ディスクである後進ディスク46との間の出力軸39上に、該出力軸39に対して相対回転不能かつ軸方向摺動可能な切換部材である切換ギア部90を備えると共に、前記前進ディスク45と後進ディスク46のうちで軸方向位置を変更可能な可変ディスクである前進ディスク45には、弾性部材である変速バネ67を付設しており、増速時には、前記切換ギア部90を前進ディスク45に係合させて軸方向外側である左側に向かって押し出し、減速時には、前記変速バネ67の弾性力により前進ディスク45を切換ギア部90と押圧一体化し、軸方向内側に向かって移動する切換ギア部90と一緒に前進ディスク45を引き戻すディスク押し引き構造25を設け、該ディスク押し引き構造25により、前記ディスク切換変速機構23による変速操作を可能とするので、前記変速バネ67を付設するだけの簡単な構造で、左側に向かって移動中にのみ前進ディスク45と係合可能な切換ギア部90に対し、該切換ギア部90が右側に移動中であっても、前進ディスク45を常に追従させることができ、部品点数の削減による部品コストの低減を図ることができる。
【0064】
更に、前記正転ディスクである前進ディスク45と逆転ディスクである後進ディスク46には、表面積増加のための凹凸部である空冷凹部45g、後進ディスク46前後に冷却風を導く貫通孔である冷却孔46g、及びフィン46hのうちの少なくとも一つを設けるので、前記前進ディスク45と後進ディスク46の冷却効率を高めることができ、摩擦係合部の発熱を一層抑制することができ、前進ディスク45と後進ディスク46の耐久性を更に向上できる。
【0065】
なお、以下では、前記車軸駆動装置2の別形態について説明するが、前記車軸駆動装置2と異なる点を中心に説明すると共に、各要素に用いた符号と同じ符号は、同一または同等の機能を有する要素を指すものであり、同じ符号を付した要素については、特に必要としない限り、その説明は省略する。
【0066】
次に、前記車軸駆動装置2の別形態である車軸駆動装置2Aについて、図5乃至図9により説明する。
該車軸駆動装置2Aは、前述の変速バネ67を使ったディスク押し引き構造25の代わりに、係止体88を使ったディスク押し引き構造25Aを用いることにより、車軸駆動装置2の小型化を図ったものである。
【0067】
該車軸駆動装置2Aの摩擦変速装置22Aに備えたディスク切換変速機構23Aにおいては、前記ディスク切換変速機構23と同様に、前記出力軸39A上に摺動部材93が相対回転不能かつ軸心方向摺動可能にスプライン結合される。そして、該摺動部材93は、左右の前進ディスク65・後進ディスク46間に配置される切換ギア部94と、該切換ギア部94から右方に延設されると共に前記後進ディスク46を周りに遊嵌した筒状の本体部95と、該本体部95の右端に拡径された係合部96とから構成される。
【0068】
このうちの切換ギア部94には、図7に示すように、その外周に外周爪94bが等間隔に形成され、隣接する該外周爪94bの間には、外周溝94cが等間隔に形成されている。更に、該外周溝94cのうち、外周で互いに離れた位置に略等間隔に設けたもの、本実施例では略120度離れた3箇所の外周溝94cに、案内孔94dが形成されている。
【0069】
該案内孔94dは、前記外周溝94c近傍に設けた浅い外孔部94eと、該外孔部94eよりも大径であって前記出力軸39Aまで貫通する深い内孔部94fとから成る二段孔であり、これら外孔部94e、内孔部94fは同一半径心上に配置される。そして、このような案内孔94dに、前記係止体88が挿入されている。
【0070】
該係止体88は、球状のカムボール88aと、該カムボール88aに一端が連結される支持ピン88bと、該支持ピン88bの他端が垂直に固設される円盤状の摺動ディスク88cとから構成され、該カムボール88a、支持ピン88b、摺動ディスク88cは、前記案内孔94d内に、該摺動ディスク88cの側面が摺動可能に挿入されている。
【0071】
そして、このうちのカムボール88aの外径は、該カムボール88aが前記外孔部94e内を摺動できるように設定されると共に、摺動ディスク88cの外径は、該摺動ディスク88cが前記内孔部94f内を摺動できるように設定されており、案内孔94d内における係止体88の円滑な移動を可能としている。
【0072】
更に、前記摺動ディスク88cの外径は、前記外孔部94eの内径よりも小さく設定されており、該外孔部94eから前記内孔部94fにかけて形成される段差部94gによって、摺動ディスク88cのそれ以上の外方への摺動が規制され、案内孔94dからの係止体88の抜け落ちを防止している。
【0073】
そして、このような切換ギア部94を嵌入する前進ディスク65よりも左方の出力軸39A上には、前記変速バネ67は巻回されていない。このため、変速バネ67に適切な弾性力を付与するための伸縮スペースが不要となり、出力軸39Aは前記出力軸3よりも短縮することができ、更に、前進ディスク65の外側面65bには、前記変速バネ67を受けるための凹部も不要となっている。
【0074】
一方、該前進ディスク65の内側面65cには、前記前進ディスク45とは同様、前記切換ギア部94を嵌入するための係合凹部65eが形成される。該係合凹部65eには、図8(a)に示すように、内周に等間隔に形成される内周爪65e1と、隣接する該内周爪65e1の間に設けた内周溝65e2とから構成され、前記内周爪65e1には、その左右略中央部に、前記係止体88のカムボール88aが嵌合可能な大きさの係止溝65e3が形成されている。
【0075】
以上のような構成において、図5に示すように、前記切換ギア部94が位置79にある場合は、該切換ギア部94は前進ディスク65・後進ディスク46のいずれにも係合せず、該前進ディスク65・後進ディスク46は出力軸39A上を遊転するだけであり、該出力軸39Aに動力が伝達されない中立状態Nとなっている。
【0076】
この際、前進ディスク65の摩擦係合部は、位置79よりも左側の位置71にあって、前進方向の回転力が前進ディスク65に伝達される一方、後進ディスク46の摩擦係合部は、位置79よりも右側の位置68にあって、後進方向の回転力が後進ディスク46に伝達され、該後進ディスク46は前記前進ディスク65と反対方向に回転する。
【0077】
続いて、前記クラッチペダル56の踏み操作を行うと、前述したようにして「クラッチ切」となって入力軸38への動力伝達が遮断され、前進ディスク65・後進ディスク46のいずれの回転も停止して無駆動状態となる。そして、該無駆動状態中に、前記変速レバー10の傾倒操作を行い、前記切換ギア部94を左方に摺動させて前進ディスク65に係合させる。
【0078】
この際の切換ギア部94の係脱・移動プロセスについて図8、図9により説明する。
まず、切換ギア部94を、図8(a)に示す中立状態Nの位置79から図8(b)に示す位置98まで移動させると、切換ギア部94の外周爪94bの一部が、係合凹部65eの内周溝65e2に嵌合すると共に、切換ギア部94の外周溝94cに設けた係止体88のカムボール88aが、係合凹部65eの内周爪65e1に当接した後、外孔部94e内に待避しながら、乗り上げを開始する。
【0079】
それから、切換ギア部94を、図8(b)に示す位置98から図8(c)に示す位置99まで移動させると、カムボール88aは、外孔部94e内に更に待避しながら、内周爪65e1の先端上に乗り上げ、更に、図8(d)に示す前記位置100まで移動させると、カムボール88aは、外孔部94eから突出しながら、係止溝65e3内に落ち込み、これにより、前進ディスク65に対する切換ギア部94の係合が完了する。
【0080】
続いて、前記クラッチペダル56の戻し操作を行うと、前述したように「クラッチ入」となって入力軸38への動力伝達が再開され、前進ディスク65・後進ディスク46のいずれも回転を開始して駆動状態となるが、前進ディスク65の回転動力のみが、該前進ディスク65に係合済みの摺動部材93を介して、前記出力軸39Aに伝達される。
【0081】
そして、増速時に、前記変速レバー10の傾倒操作を行い、前記切換ギア部94を左方に摺動させると、図8(d)に示すように、前進ディスク65の係合凹部65eが、前記切換ギア部94のギア側面94aによって、矢印101に示すように左方に押動される。すると、摩擦係合部は、図5、図6に示すように、前記位置71から位置97を通って位置72まで移動する。その間、前進ディスク65の前進方向の回転力が無段で増加し、位置97の中間速状態F1を通って位置72に達すると、前進の最高速状態Fmaxとなる。
【0082】
該最高速状態Fmaxでは、前進ディスク65と一体となって高速回転する切換ギア部94のカムボール88aが、遠心力によって外孔部94eから突出され、該突出力により、前進ディスク65の係止溝65e3内に強く押し込まれて嵌合する。
【0083】
このため、減速時に、前記切換ギア部94を右方に摺動させると、図9(a)に示すように、突出したままの前記カムボール88aにより、前記係止溝65e3が、矢印102に示すように右方に向かって押動されるため、前進ディスク65は切換ギア部94に追従して移動する。
【0084】
更に、前記切換ギア部94を右方に摺動させると、係合半径が小さくなって前進ディスク65の回転が減速され、図9(b)に示すように、位置97の中間速状態F1では、カムボール88aの突出力が減少する。このため、該カムボール88aは、外孔部94e内に待避しながら、係止溝65e3から内周爪65e1にかけて乗り上げを開始するが、該係止溝65e3・内周爪65e1は、依然として、前記カムボール88aにより、右方に向かって押動されるため、依然として、前進ディスク65は切換ギア部94に追従して移動する。
【0085】
続けて、前記切換ギア部94を右方に摺動させると、係合半径が更に小さくなって前進ディスク65の回転が減速され、位置71の前進の最低速状態Fminでは、カムボール88aの突出力が非常に小さくなる。この際、前述の如く、前進ディスク65は、その内側面65cの上端部が前記規制突部38bの側面に当接し、それ以上は右方に移動できないようにされているため、前記切換ギア部94を更に右方に摺動させると、図9(c)に示すように、切換ギア部94が係合凹部65eから抜け出ようとし、カムボール88aは、外孔部94e内を更に待避しながら、内周爪65e1の先端上に乗り上げる。
【0086】
更に、前記切換ギア部94を右方に摺動させると、カムボール88aは、内周爪65e1を乗り越え、その結果、位置79の中立状態Nでは、切換ギア部94と前進ディスク65との係合が外れることとなる。
【0087】
このように切換ギア部94に設けた係止体88を利用したディスク押し引き構造25Aによって、エンジン3からの回転動力は、前進の最高速状態Fmaxから最低速状態Fminの間で無段変速されるのである。なお、前後進の切り換え、前記減速ギア列33・減速装置34・差動装置35、及び前進ディスク65・後進ディスク46の空冷構造については、前記車軸駆動装置2と同様である。
【0088】
すなわち、前記ディスク切換変速機構23Aにおいて、前記正転ディスクである前進ディスク65と逆転ディスクである後進ディスク46との間の出力軸39A上に、該出力軸39Aに対して相対回転不能かつ軸方向摺動可能な切換部材である切換ギア部94を備えると共に、該切換ギア部94の外周に設けた外周爪94bの間には、前記出力軸39Aの径方向外側に向かって外周面である外周溝94cから突出/退避自在な係止体88を配置する一方、前記前進ディスク65と後進ディスク46の内周には内周爪65e1・46e1を設け、更に、両ディスクのうちで軸方向位置を変更可能な可変ディスクである前進ディスク65の内周爪65e1には、前記係止体88が嵌合可能な係止溝65e3を形成しており、増速時には、前記外周爪94bと内周爪65e1が嵌合した状態で、前記切換ギア部94の外側面が前進ディスク65を軸方向外側に向かって押し出し、減速時には、遠心力によって突出した前記係止体88が係止溝65e3に嵌合した状態で、該係止体88の内側面が前進ディスク65を軸方向内側に向かって引き戻すディスク押し引き構造25Aを設け、該ディスク押し引き構造25Aにより、前記ディスク切換変速機構23Aによる変速操作を可能とするので、前記切換ギア部94に係止体88を組み込んだコンパクトな構造により、前進ディスク65を、該前進ディスク65と係合状態にある切換ギア部94の移動に追従して軸方向内側に移動させることができ、弾性部材等の設置空間の省略による車軸駆動装置2Aの小型化を図ることができる。
【0089】
なお、該車軸駆動装置2Aの前進ディスク65にも、前記前進ディスク45と同様に、その内側面65cに、複数の空冷凹部65gが設けられており、該空冷凹部65gの分だけ前進ディスク65の表面積が増加して、前進ディスク65自体の冷却性が向上すると共に、その際に発生する風の一部が、前記後進ディスク46に向かって冷却風として供給される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、作業車両に備えた駆動源からの動力を摩擦変速装置を介して車軸に伝達する、全ての車軸駆動装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 乗用芝刈機(作業車両)
2・2A 車軸駆動装置
3 エンジン(駆動源)
22・22A 摩擦変速装置
23・23A ディスク切換変速機構
24 クラッチ入切機構
25・25A ディスク押し引き構造
29 ベルト
31 固定フレーム
32 可動フレーム
36L・36R 車軸
38 入力軸
38a 回転軸心
39・39A 出力軸
43 ベルト伝動装置
44 駆動側回転ディスク
44a ディスク下面(ディスク面)
45・65 前進ディスク(正転ディスク・可変ディスク)
45a・46a 周縁部
45g・65g 空冷凹部(凹凸部)
46 後進ディスク(逆転ディスク)
46b フィン
46e1・65e1 内周爪
46g 冷却孔(貫通孔)
56 クラッチペダル(クラッチ操作部材)
59 クラッチバネ(弾性部材)
65e3 係止溝
67 変速バネ(弾性部材)
88 係止体
90・94 切換ギア部(切換部材)
94b 外周爪
94c 外周溝(外周面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両に備えた駆動源からの動力を摩擦変速装置を介して車軸に伝達する車軸駆動装置において、前記摩擦変速装置は、前記動力によって回転駆動する入力軸と、該入力軸に支持する駆動側回転ディスクと、前記入力軸に直交配置する出力軸と、該出力軸に支持しつつ前記駆動側回転ディスクのディスク面に周縁部を摩擦係合する従動側回転ディスクとを備え、該従動側回転ディスクは、前記駆動側回転ディスクの回転中心を挟んで、該駆動側回転ディスクの径方向一側に配置する正転ディスクと、径方向他側に配置して前記正転ディスクと反対方向に回転する逆転ディスクとから構成し、該逆転ディスクと前記正転ディスクとは前記出力軸上に遊転配置すると共に、該出力軸を前記正転ディスクと逆転ディスクの一方に係合させるディスク切換変速機構を備えたことを特徴とする車軸駆動装置。
【請求項2】
前記出力軸を固定フレームに支持し、前記入力軸を可動フレームに支持し、該可動フレームは、前記固定フレームに対して、前記出力軸を中心に傾倒可能に連結すると共に、前記入力軸は、ベルト伝動装置のベルトを介して前記駆動源に連動連結しており、前記可動フレームに接続したクラッチ操作部材によって、クラッチ切時には、前記可動フレームを前記ベルトの弛緩方向に傾倒させて、駆動源から入力軸への動力伝達を遮断し、クラッチ入時には、前記可動フレームを、前記固定フレーム・可動フレーム間に張設する弾性部材により、前記ベルトの緊張方向に傾倒させて、駆動源から入力軸への動力伝達を行うクラッチ入切機構を設け、該クラッチ入切機構により、前記ディスク切換変速機構による係脱操作を可能とすることを特徴とする請求項1に記載の車軸駆動装置。
【請求項3】
前記ディスク切換変速機構において、前記正転ディスクと逆転ディスクとの間の出力軸上に、該出力軸に対して相対回転不能かつ軸方向摺動可能な切換部材を備えると共に、前記正転ディスクと逆転ディスクのうちで軸方向位置を変更可能な可変ディスクには、弾性部材を付設しており、増速時には、前記切換部材を可変ディスクに係合させて軸方向外側に向かって押し出し、減速時には、前記弾性部材の弾性力により可変ディスクを切換部材と押圧一体化し、軸方向内側に向かって移動する切換部材と一緒に可変ディスクを引き戻すディスク押し引き構造を設け、該ディスク押し引き構造により、前記ディスク切換変速機構による変速操作を可能とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車軸駆動装置。
【請求項4】
前記ディスク切換変速機構において、前記正転ディスクと逆転ディスクとの間の出力軸上に、該出力軸に対して相対回転不能かつ軸方向摺動可能な切換部材を備えると共に、該切換部材の外周に設けた外周爪の間には、前記出力軸の径方向外側に向かって外周面から突出/退避自在な係止体を配置する一方、前記正転ディスクと逆転ディスクの内周には内周爪を設け、更に、両ディスクのうちで軸方向位置を変更可能な可変ディスクの内周爪には、前記係止体が嵌合可能な係止溝を形成しており、増速時には、前記外周爪と内周爪が嵌合した状態で、前記切換部材の外側面が可変ディスクを軸方向外側に向かって押し出し、減速時には、遠心力によって突出した前記係止体が係止溝に嵌合した状態で、該係止体の内側面が可変ディスクを軸方向内側に向かって引き戻すディスク押し引き構造を設け、該ディスク押し引き構造により、前記ディスク切換変速機構による変速操作を可能とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車軸駆動装置。
【請求項5】
前記正転ディスクと逆転ディスクには、表面積増加のための凹凸部、ディスク前後に冷却風を導く貫通孔、及びフィンのうちの少なくとも一つを設けることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の車軸駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−87913(P2013−87913A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230872(P2011−230872)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】