説明

車載の電気機器のプロテクト構造

【課題】側方から衝突した際における、車体補強部材との衝突に伴う車載電子機器の破損の可能性を低減でき得るプロテクト構造を提供する。
【解決手段】操安ブレス24の周辺に設置されるインバータ20のプロテクト構造であって、側方から力を受けてインバータ20が車体補強部材側に移動した際に前記電子機器より先に操安ブレス24に接触するべく、インバータ20のうち操安ブレス24との対向面に取り付けられる保護部材30を備え、操安ブレス24の後側端部42rの締結解除に要する力は、前側端部42fの締結解除に要する力より小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体補強部材の周辺に設置される車載の電子機器のプロテクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には様々な電子機器が搭載される。車両衝突により、車両に多大な力が加わった際にも、こうした電子機器を保護するための技術が従来から多数提案されている。例えば、特許文献1には、車両衝突時に、後方への衝撃伝達を緩和するとともにハーネス類の断線を防止するために、衝突によりインバータがサスタワーに当接した際に、当該インバータがサスタワーにガイドされて回転移動するように設置する技術が開示されている。また、特許文献2−6にも、車両衝突時に、車載部品等の保護を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−097052号公報
【特許文献2】特開2006−262673号公報
【特許文献3】特開2009−154757号公報
【特許文献4】特開2005−262894号公報
【特許文献5】特開2007−290479号公報
【特許文献6】特許第4269848号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした技術の多くは、主に、車両前方が衝突した場合を想定しており、車両の側方がポールなどに衝突し、車両の側方から力を受ける場合について十分な想定がなされていない。
【0005】
例えば、ハイブリッド車においては、インバータなどの車載電子機器が、エンジンコンパートメントなどに設置されることがある。また、このエンジンコンパートメントのうち、電子機器より内部側には、車体の剛性補強のための部材、車体補強部材が設置されることがある。かかる状況において、車両の側方にポールなどが衝突し、車両が側方からの力を受けると、電子機器が車体補強部材に移動し、衝突する。この場合、車体補強部材は、通常、剛性が非常に高いため、衝突の衝撃を吸収できず、衝突してきた電子機器の壁面が破損するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明では、側方から衝突した際における、車体補強部材との衝突に伴う車載電子機器の破損の可能性を低減でき得るプロテクト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロテクト構造は、車体補強部材の周辺に設置される車載の電子機器のプロテクト構造であって、側方から力を受けて電子機器が車体補強部材側に移動した際に前記電子機器より先に前記車体補強部材に接触するべく、前記電子機器のうち前記車体補強部材との対向面に取り付けられる保護部材を備え、前記車体補強部材は、その両端が固定部材に締結されるとともに、その一端の締結解除に要する力が、他端の締結解除に要する力より小さい、ことを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記保護部材は、側方からの力を受けて接触した前記車体補強部材の移動方向をガイドするガイド部を備える。
【0009】
このガイド部は、前記車体補強部材との接触位置に設けられた窪み部であって、前記接触に伴い前記一端が締結解除された前記車体補強部材が他端を中心に回動するべく当該車体補強部材をガイドする窪みである、ことが望ましい。この場合、前記回動してきた前記車体補強部材と当接することで、前記車体補強部材の他端を中心とする回動量を規制するストッパが設けられている、ことも望ましい。
【0010】
他の好適な態様では、前記ガイド部は、前記車体補強部材との接触位置に設けられた傾斜部であって、前記接触に伴い前記一端が締結解除された前記車体補強部材の一端が傾斜部に沿って上方に移動するべく当該車体補強部材をガイドする傾斜部である。
【0011】
他の好適な態様では、前記車体補強部材の一端は、前記電子機器側の端部が開口された切り欠きに挿通された締結ネジにより固定部材に締結される。他の好適な態様では、前記保護部材は、一部が前記対向面に接触し、他の一部が前記対向面から離間した状態で前記電子機器に取り付けられる。他の好適な態様では、前記車体補強部材は、エンジンコンパートメント内において、サスタワーとダッシュパネルとを繋ぐ操安ブレスである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車体補強部材の一端が比較的小さい力でも締結解除され、移動することができるため、電子機器の逃げ場が形成される。その結果、車体補強部材との衝突に伴う車載電子機器の破損の可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エンジンコンパートメント内の構成を示す概略図である。
【図2】保護部材が取り付けられたインバータの概略斜視図である。
【図3】インバータ周辺の概略上面図である。
【図4】図3における概略B−B断面図である。
【図5】側方衝突により、インバータが車両内側に押された際の様子を示す図である。
【図6】第二実施形態の保護部材が取り付けられたインバータの概略斜視図である。
【図7】インバータ周辺の概略断面図である。
【図8】側方衝突により、インバータが車両内側に押された際の様子を示す図である。
【図9】他の保護部材が取り付けられたインバータの概略斜視図である。
【図10】他の保護部材が取り付けられたインバータの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、FR駆動のハイブリッド車両におけるエンジンコンパートメント10内の構成を示す概略図である。このエンジンコンパートメント10の略中央には、車両の動力源の一つであるエンジン12が設置されている。エンジン12の両側には、サスペンション装置の上部を支持するサスタワー14が設置されており、各サスタワー14の一隅には操安ブレス22,24が取り付けられている。操安ブレス22,24は、車体の剛性補強、特にエンジンコンパートメント10のねじれ剛性向上のために取り付けられる車体補強部材である。この操安ブレス22,24は、比較的、高剛性材料、例えば鋼材などからなる棒状部材で、その一端はサスタワー14の一隅に、他端はダッシュパネル16に接続された台座18にボルト締結されている。
【0015】
一つのサスタワー14とダッシュパネル16との間であって、操安ブレス24より外側の位置には、インバータ20が設置されている。このインバータ20は、車両の他の動力源であるモータに駆動信号を出力する電子機器で、高電圧線を介して高電圧バッテリに接続されている。
【0016】
ここで、こうしたインバータ20は、フェンダーやサスタワー14、ダッシュパネル16、エンジン12といった構造体に囲まれており、車両前方衝突時には、当該衝突力をサイドメンバが吸収する。そのため、車両前方衝突時に、インバータ20が大きな衝突荷重を受けることはなく、インバータ20の破損は生じにくい。
【0017】
一方、車両の側方にポール等の被衝突物100が衝突した際には、側方からの衝突荷重を、フェンダーでは吸収しきれず、インバータ20も衝突荷重を受けることがある。この場合、インバータ20は、車両内側へ押し出され、サスタワー14とダッシュパネル16間を繋ぐ操安ブレス24、続いてエンジン12へ衝突する。この操安ブレス24やエンジン12は、インバータ20に比較して剛性が高い。そのため、これら高剛性部材と衝突することで、インバータ20の壁面が破損する恐れがあった。特に、インバータ20と対向して設けられる操安ブレス24は、剛性向上を目的とする部材である関係上、剛性が非常に高い。そのため、側方衝突時には、操安ブレス24は、破損することなく残存し、インバータ20の逃げ場を塞ぐことになる。その結果、インバータ20は、進入してきた被衝突物100と高剛性の操安ブレス24とに挟まれ衝突荷重を受けることになる。
【0018】
本実施形態では、かかる側方衝突に伴う電子機器(インバータ20)の破損を生じにくくさせるために、インバータ20の側面に保護部材30を設けるとともに、操安ブレス24の構成を特殊なものとしている。以下、これについて図2〜図4を参照して説明する。
【0019】
図2は、保護部材30が取り付けられたインバータ20の概略斜視図である。図3は、インバータ20周辺の概略上面図である。また、図4は、図3における概略B−B断面図である。保護部材30は、インバータ20のうち、操安ブレス24と対向する側面に取り付けられる金属部材である。本実施形態のインバータ20には、操安ブレス24との対向面に略矩形の突出部20aが設けられている。保護部材30は、この突出部20aを覆うような形状となっている。すなわち、保護部材30は、金属板を略コ字状に折り曲げた本体部32と、当該本体部32の両端に接続された当接部33と、当該当接部33の上端に接続された締結部36と、を備えている。本体部32は、突出部20aを覆うような略コ字状となっており、その前面には水平方向に延びる断面略半円状のガイド溝34(窪み)が形成されている。このガイド溝34は、側方からの力を受けて当該保護部材30が操安ブレス24に接触した際に、操安ブレス24の移動方向をガイドするガイド部として機能するものである。このガイド溝34の径は、少なくとも操安ブレス24の径より大きくなっており、接触した際に、操安ブレス24が当該ガイド溝34にはまりこめるようになっている。また、図4から明らかなとおり、このガイド溝34は、操安ブレス24とほぼ同じ高さに設けられており、側方衝突によりインバータ20が操安ブレス24側に移動した際、当該ガイド溝34に操安ブレス24が当たるようになっている。また、同じ図4から明らかなとおり、本体部32の前面と突出部20aの前面との間には間隙が設けられており、保護部材30が操安ブレス24と衝突して力を受けたとしても、当該力が、即座に突出部20aの前面に伝達されることはない。
【0020】
当接部33は、本体部32の左右両端に接続された部位で、インバータ20側面と平行な平板状部位である。この当接部33は、保護部材30をインバータ20に取り付けた際に、インバータ20の側面に当接する部位である。保護部材30が操安ブレス24と衝突した際に、保護部材30が受けた力の一部は、この当接部33により分散されて、インバータ20側面に伝達される。
【0021】
締結部36は、当接部33の上端に接続された部位で、インバータ20上面と平行な平板状部位である。この締結部36には、締結ボルト(図示せず)が挿通される締結孔36aが形成されている。締結ボルトを、この締結孔36aに挿通された上でインバータ20上面に螺合させることで、保護部材30が、インバータ20にボルト締結される。
【0022】
次に、本実施形態において、インバータ20の近傍に設置される操安ブレス24の構成について説明する。既述したとおり、操安ブレス24は、車体の剛性向上のために設けられる部材で、高剛性材料からなる棒状部材である。この操安ブレス24の両端42f,42rは、固定部材として機能するサスタワー14およびダッシュパネル16に接続された台座18にボルト締結されている。操安ブレス24の両端42f,42rには、この締結用ボルトが挿通されるボルト挿通部が設けられている。ただし、本実施形態では、ボルト挿通部の形態を、両端で異ならせている。具体的には、サスタワー14と締結される前側端部42fには、ボルト挿通部として丸孔が形成されている。この丸孔に締結ボルトが挿通されることで、前側端部42fと締結ボルトが強固に係合する。そして、これにより、前側端部42fと締結ボルトの離間、ひいては、前側端部42fとサスタワー14との離間が防止される。一方、ダッシュパネル16と締結されている後側端部42rには、ボルト挿通部として、インバータ20側が開口された切り欠き44が形成されている。締結ボルトは、この切り欠き44に挿通されたうえでダッシュパネル16の座面に螺合締結される。ここで、後側端部42rにおいて、締結ボルトが挿通される切り欠き44は、インバータ20側に開口している。そのため、インバータ20側に関しては、締結ボルトと後側端部42rとの間に係合関係が形成されないことになる。その結果、車両内側方向の力を受けると、後側端部42rは、比較的簡単に、締結ボルトから離間、ひいては、ダッシュパネル16との締結解除されることになる。
【0023】
つまり、本実施形態では、操安ブレス24の両端のうち一方のみについて、固定部材との締結解除力を小さく設定している。かかる構成とすることで、インバータ20が操安ブレス24に押し付けられた際に、操安ブレス24の移動が許容され、ひいては、インバータ20の逃げ場が形成される。
【0024】
次に、本実施形態の作用について図5を参照して説明する。図5は、側方衝突により、インバータ20が車両内側(操安ブレス側)に押された際の様子を示す図である。車両の側方がポールなどの被衝突物100に衝突した場合、インバータ20は、車両内に進入してきた被衝突物100により押され、車両内側(図5における右側)へと移動する。ただし、インバータ20より内側には、サスタワー14とダッシュパネル16を繋ぐ操安ブレス24が設けられている。そのため、側方衝突により、インバータ20が車両内側に移動していくと、その側面が操安ブレス24に衝突することになる。
【0025】
本実施形態では、このインバータ20のうち操安ブレス24との対向面に、保護部材30を設けている。そのため、インバータ20の車両内側(操安ブレス24側)に移動した場合、当該保護部材30が、最初に操安ブレス24に当接し、操安ブレス24に押し付けられることになる。ここで、図4を用いて説明したとおり、保護部材30の前面に設けられたガイド溝34は、操安ブレス24とほぼ同じ高さとなっているため、操安ブレス24は、このガイド溝34に当接し、はまり込むことになる。また、操安ブレス24に押し付けられることで保護部材30が受ける荷重(操安ブレス24から受ける反力)は、当接部33を介してインバータ20の側面へと伝達される。当接部33はインバータ20の側面と面接触しているため、荷重も、この接触面全体に分散されて伝達されることになる。このように荷重が分散して伝達されることで、インバータ20の一部に過度な負荷がかかることが防止され、ひいては、インバータ20の破損が防止される。
【0026】
インバータ20が、さらに、車両内側へと移動していくと、操安ブレス24は、保護ブレスから更なる荷重を受けることになる。この荷重が一定以上になると、操安ブレス24とダッシュパネル16との締結が解除される。すなわち、既述したように、本実施形態では、後側端部42rにおいては、インバータ20側に開口した切り欠き44に締結ボルトが挿通されており、その係合力はインバータ20側に関しては小さい。そのため、車両内側方向の力を受けた場合、その力が比較的小さかったとしても、後側端部42rが締結ボルトから離間し、後側端部42rとダッシュパネル16との締結が解除される。
【0027】
ダッシュパネル16との締結が解除されることで、後側端部42rは、拘束されない自由端となり、インバータ20の押し付け力を受けて移動する。ここで、この時点において、操安ブレス24は、保護部材30のガイド溝34に当接し、はまり込んでいる。ガイド溝34に嵌り込んだ操安ブレス24は、その上下方向の移動がガイド溝34により疎外され、水平方向の移動のみが許容されることになる。また、後側端部42rは、締結解除された自由端である一方、前側端部42fは依然としてサスタワー14に締結固定された固定端である。そのため、インバータ20の押し付け力を受けると、操安ブレス24は、前側端部42fを中心として水平面内で回動することになる。このように操安ブレス24が水平面内で回動することで、インバータ20の逃げ場が形成される。そしてインバータ20が移動し逃げることで、インバータ20が被衝突物100からの衝突荷重を低減でき、インバータ20の破損を効果的に低減できる。
【0028】
なお、本実施形態では、操安ブレス24を水平面内で回動させることで、インバータ20の逃げ場を形成し、インバータ20の破損を防止している。しかし、この場合、回動した操安ブレス24が、さらに、他の部材(例えばエンジン12オイルの供給パイプなど)に当接し、当該他の部材を破損させる場合がある。そこで、かかる他部材の破損を防止するために、当該他部材の近傍に、回動してくる操安ブレス24の後側端部42rと当接して、当該後側端部42rのさらなる回動を規制するストッパ50を設けてもよい。
【0029】
次に、第二実施形態について、図6〜図8を参照して説明する。図6は、第二実施形態において、保護部材30を取り付けたインバータ20の概略斜視図である。図7は、インバータ20の周辺の概略断面図である。図8は、側方衝突により、インバータ20が車両内側に押された際の様子を示す図であり、図7におけるB方向からみた図である。
【0030】
第二実施形態においては、保護部材30の構成以外については、第一実施形態とほぼ同様であるため、保護部材30の構成を中心に説明する。第二実施形態における保護部材30は、第一実施形態の保護部材30と同様、本体部32、当接部33、および締結部36を備えている。当接部33は、本体部32の両端に接続し、インバータ20の側面に接触する平板状部位で、操安ブレス24との衝突荷重を分散してインバータ20側面に伝達する。締結部36は、当接部33の上端に接続され、インバータ20の上面に螺合締結される平板状部位である。
【0031】
本体部32は、略コ字状に折り曲げられた金属部材である。ただし、第一形態と異なり、本実施形態の本体部32の前面は、下方に近づくにつれ、インバータ20側面から離れるテーパ面38となっている。このテーパ面38が、衝突した操安ブレス24の移動方向をガイドするガイド部として機能する。
【0032】
図7に示すとおり、テーパ面38は、操安ブレス24と対向し得る位置に設けられている。また、本体部32の前面(テーパ面38)とインバータ20の突出部20aの前面との間には間隙が設けられており、保護部材30が操安ブレス24と衝突して力を受けたとしても、当該力が、即座に突出部20aの前面に伝達されることはない。
【0033】
操安ブレス24の構成は、第一実施形態とほぼ同様である。すなわち、操安ブレス24の前側端部42fは、当該前側端部42fに形成された丸孔に挿通された締結ボルトによりサスタワー14に締結される。また、操安ブレス24の後側端部42rは、当該後側端部42rに形成された切り欠き44に挿通された締結ボルトによりダッシュパネル16に締結されている。したがって、後側端部42rの締結解除力は、前側端部42fの締結解除力よりも小さくなっており、内側方向の力を受けたとき、後側端部42rのほうが先に締結解除される。
【0034】
この第二実施形態での作用について図8を参照して説明する。車両の側方がポールなどの被衝突物100に衝突した場合、インバータ20は、車両内に進入してきた被衝突物100により押され、車両内側へと移動する。ただし、インバータ20より内側には、サスタワー14とダッシュパネル16を繋ぐ操安ブレス24が設けられている。そのため、側方衝突により、インバータ20が車両内側に移動していくと、その側面が操安ブレス24に衝突することになる。
【0035】
本実施形態では、このインバータ20のうち操安ブレス24との対向面に、保護部材30を設けている。そのため、インバータ20の車両内側(操安ブレス24側)に移動した場合、当該保護部材30が、最初に操安ブレス24に当接し、操安ブレス24に押し付けられることになる。操安ブレス24に押し付けられることで保護部材30が受ける荷重(操安ブレス24から受ける反力)は、当接部33を介してインバータ20の側面に分散して伝達される。その結果、インバータ20の一部に過度な負荷がかかることが防止され、インバータ20が破損することが防止される。
【0036】
インバータ20が、さらに、車両内側へと移動していくと、操安ブレス24は、保護ブレスから更なる荷重を受けることになる。この荷重が一定以上になると、操安ブレス24とダッシュパネル16との締結が解除される。この締結解除により、自由端となった後側端部42rは、インバータ20の押し付け力を受けて移動することになる。
【0037】
ここで、この時点において、操安ブレス24は、保護部材30の前面であるテーパ面38に当接することになる。インバータ20が車両内側(操安ブレス24側)に移動していくと、このテーパ面38が操安ブレス24を押すことになる。テーパ面38により押された操安ブレス24は、図8に示すように、テーパ面38によって押し上げられ、上方へ移動していく。ただし、前側端部42fはサスタワー14に締結固定されているため、操安ブレス24は、前側端部42f近傍で、屈曲し、後側端部42rが上方へ移動していくことになる。そして、このように、操安ブレス24が上方へ移動していくことで、インバータ20の逃げ場が形成され、インバータ20が被衝突物100から受ける衝突荷重を緩和でき、インバータ20の破損を効果的に低減できる。また、本実施形態では、操安ブレス24が上方に移動するため、当該操安ブレス24と他部材とが干渉する可能性が低く、他部材の破損も防止できる。なお、この操安ブレス24の上方への移動、ひいては、操安ブレス24の屈曲を助長するために、前側端部42f近傍において、操安ブレス24を予め、小角度だけ屈曲させておくなどしていてもよい。
【0038】
いずれにしても、第一実施形態、第二実施形態で説明したように、操安ブレス24の一端の締結解除力を小さく設定するとともに、インバータ20側面に設置されて当該操安ブレス24に接触する保護部材30を設けることで、インバータ20に伝達される衝撃力を緩和することができ、インバータ20の破損を効果的に防止することができる。なお、これまで説明してきた構成は一例であり、車載の電子機器の側面に取り付けられる保護部材30と、一端が締結解除容易に取り付けられた車体補強部材と、を備えるのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、保護部材30を比較的幅広の構成としているが、側方衝突時にインバータ20より先に操安ブレス24に接触できるのであれば、幅細の構成であってもよい。また、保護部材30の取り付け位置も、側方衝突時にインバータ20より先に操安ブレス24に接触できるのであれば、インバータ20の側面形状や保護部材30の形状に応じて、適宜、変更されてもよい。したがって、例えば、図9に図示するような保護部材30を用いてもよい。この保護部材30は、上下方向に延びる幅細の金属平板を屈曲させて構成されるもので、その幅方向両端は手前側に、折り曲げられたリブを構成している。この保護部材30の下方端部は、垂直方向に延びており、インバータ20の側面に接触した状態で取り付けられる。したがって、この下方端部は、荷重を分散してインバータ20側面に伝達する当接部33として機能するとともにインバータ20に締結される締結部36としても機能する。また、保護部材30の略中央には、操安ブレス24が当接し、はまり込む溝部35が形成されている。この溝部35は、側方からの力を受けて接触した操安ブレス24の移動方向をガイドするガイド部として機能する。
【0040】
また、別の形態として図10に示すような保護部材30を用いてもよい。この保護部材30は、図9の保護部材30と同様に、上下方向に延びる幅細の金属平板を屈曲させて構成されるもので、その幅方向両端は手前側に、折り曲げられたリブを構成している。また、保護部材30の下方端部には、荷重を分散してインバータ20側面に伝達する当接部33、および、インバータ20に締結される締結部36として機能する部位が設けられている。また、保護部材30の略中央は、下方に近づくにつれインバータ20側面から離れるテーパ部39が形成されている。このテーパ部39は、側方からの力を受けて接触した操安ブレス24を上方にガイドするガイド部として機能する。
【0041】
また、上述した実施形態では、後側端部42rの締結解除力を小さくしているが、逆に、前側端部42fの締結解除力を小さくしてもよい。この場合であっても、インバータ20との衝突に伴って、操安ブレス24の一端が自由端になるため、操安ブレス24が移動することができ、結果としてインバータ20の逃げ場を形成することができる。また、本実施形態では、締結ボルトの挿通部を切り欠き44とすることで、締結解除力を小さくしているが、インバータ20の衝突力により締結を解除でき得るのであれば、他の構成でもよい。例えば、締結ボルトが挿通される丸孔の縁に切れ目を形成し、比較的小さい力で当該丸孔の周囲が破損するような構成としもよい。また、これまでの説明ではインバータ20と操安ブレス24を例に挙げて説明してきたが、車載の電子機器と、当該電子機器の周辺に設置され、衝突時に電子機器と衝突する恐れがある車体補強部材であれば、他の電子機器、車体補強部材に応用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 エンジンコンパートメント、12 エンジン、14 サスタワー、16 ダッシュパネル、18 台座、20 インバータ、22,24 操安ブレス、30 保護部材、32 本体部、33 当接部、34 ガイド溝、35 溝部、36 締結部、38 テーパ面、39 テーパ部、42f 前側端部、42r 後側端部、50 ストッパ、100 被衝突物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体補強部材の周辺に設置される車載の電子機器のプロテクト構造であって、
側方から力を受けて電子機器が車体補強部材側に移動した際に前記電子機器より先に前記車体補強部材に接触するべく、前記電子機器のうち前記車体補強部材との対向面に取り付けられる保護部材を備え、
前記車体補強部材は、その両端が固定部材に締結されるとともに、その一端の締結解除に要する力が、他端の締結解除に要する力より小さい、
ことを特徴とするプロテクト構造。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテクト構造であって、
前記保護部材は、側方からの力を受けて接触した前記車体補強部材の移動方向をガイドするガイド部を備えることを特徴とするプロテクト構造。
【請求項3】
請求項2に記載のプロテクト構造であって、
前記ガイド部は、前記車体補強部材との接触位置に設けられた窪み部であって、前記接触に伴い前記一端が締結解除された前記車体補強部材が他端を中心に回動するべく当該車体補強部材をガイドする窪みである、ことを特徴とするプロテクト構造。
【請求項4】
請求項3に記載のプロテクト構造であって、さらに、
前記回動してきた前記車体補強部材と当接することで、前記車体補強部材の他端を中心とする回動量を規制するストッパが設けられている、ことを特徴とするプロテクト構造。
【請求項5】
請求項2に記載のプロテクト構造であって、
前記ガイド部は、前記車体補強部材との接触位置に設けられた傾斜面であって、前記接触に伴い前記一端が締結解除された前記車体補強部材の一端が傾斜面に沿って上方に移動するべく当該車体補強部材をガイドする傾斜面である、ことを特徴とするプロテクト構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のプロテクト構造であって、
前記車体補強部材の一端は、前記電子機器側の端部が開口された切り欠きに挿通された締結ネジにより固定部材に締結される、ことを特徴とするプロテクト構造。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のプロテクト構造であって、
前記保護部材は、一部が前記対向面に接触し、他の一部が前記対向面から離間した状態で前記電子機器に取り付けられる、ことを特徴とするプロテクト構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のプロテクト構造であって、
前記車体補強部材は、エンジンコンパートメント内において、サスタワーとダッシュパネルとを繋ぐ操安ブレスである、ことを特徴とするプロテクト構造。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−188022(P2012−188022A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53466(P2011−53466)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】