説明

車載カメラの光軸変動量の測定方法

【課題】車両に搭載されたステレオカメラの温度変化による光軸変動量を精度良く測定する車載カメラの光軸変動量の測定方法を提供する。
【解決手段】第1カメラを回転位置が180度異なる通常位置と反転位置とに切り替えて、基準温度における第1カメラ及び第2カメラの撮像画像間でのターゲットの画像部分の視差である第1視差と第2視差を算出する第1,第2視差算出工程と、特定温度における第1カメラ及び第2カメラの撮像画像間での前記ターゲットの画像部分の視差である第3視差と第4視差を算出する第3,第4視差算出工程と、第1視差と第3視差の差分及び第2視差と第4視差の差分に基づいて、特定温度に変化したときの第1カメラ及び第2カメラの光軸変動量を算出する光軸変動量算出工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたステレオカメラの光軸変動量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載された左右の2台のカメラ(ステレオカメラ)により、車両周辺に存在する物体を検出する車両周辺監視装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された車両周辺監視装置においては、2台のカメラの視差に基づいて、車両と物体間の距離を算出している。
【0003】
2台のカメラは、車両の組み立て工場等において、両者の光軸が互いに平行になるように車両に取り付けられる。そして、視差の誤差を減少させるために、視差オフセット値α(2台のカメラの光軸が正確に平行状態とされた場合に、対象物を撮像して得られる視差dnに対して、2台のカメラの光軸が正確に平行状態となっていない場合に、同一の対象物を撮像して得られる視差の誤差)を測定し、この視差オフセット値αを用いて、車両と対象物間の距離を算出する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−6096号公報
【特許文献2】特開2006−184274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に搭載された2台のカメラの光軸は、温度の変化によるカメラ筐体やレンズの周辺構造の形状変化によって変動する(傾く)場合がある。そして、光軸が変動すると、2台のカメラの光軸の平行度が変化する。そのため、ステレオカメラの視差に基づいて物体の距離を精度良く検出するためには、温度変化による2台のカメラの光軸変動量が認識されている必要がある。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、車両に搭載されたステレオカメラの温度変化による光軸変動量を精度良く測定する車載カメラの光軸変動量の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、光軸を平行として車両に搭載された第1カメラ及び第2カメラについて、温度変化による該第1カメラ及び該第2カメラの光軸変動量を測定する車載カメラの光軸変動量の測定方法に関する。
【0008】
そして、前記第1カメラを光軸周りに回転させる構成を用いて、前記第1カメラを、回転位置が180度異なる通常位置と反転位置とに切り替え、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が所定の基準温度であるときに、前記第2カメラ及び前記通常位置とした前記第1カメラにより、前記第1カメラ及び前記第2カメラから所定距離だけ離れたターゲットを撮像して、前記第1カメラの撮像画像と前記第2カメラの撮像画像間における前記ターゲットの画像部分の視差である第1視差を算出する第1視差算出工程と、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が前記基準温度であるときに、前記第2カメラ及び前記反転位置とした前記第1カメラにより、前記ターゲットを撮像して、前記第1カメラの撮像画像と前記第2カメラの撮像画像間における前記ターゲットの画像部分の視差である第2視差を算出する第2視差算出工程と、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が前記基準温度と異なる特定温度であるときに、前記第2カメラ及び前記通常位置とした前記第1カメラにより、前記ターゲットを撮像して、前記第1カメラの撮像画像と前記第2カメラの撮像画像間における前記ターゲットの画像部分の視差である第3視差を算出する第3視差算出工程と、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が前記特定温度であるときに、前記第2カメラ及び前記反転位置とした前記第1カメラにより、前記ターゲットを撮像して、前記第1カメラの撮像画像と前記第2カメラの撮像画像間における前記ターゲットの画像部分の視差である第4視差を算出する第4視差算出工程と、前記第1視差と前記第3視差の差分、及び前記第2視差と前記第4視差の差分に基づいて、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が、前記基準温度から前記特定温度に変化したときの、前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸変動量を算出する光軸変動量算出工程とを含むことを特徴とする車載カメラの光軸変動量の測定方法(第1発明)。
【0009】
第1発明によれば、詳細は後述するが、前記第1カメラを前記通常位置として、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度を前記基準温度から前記特定温度に変化させると、前記第3視差は、前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸のずれに起因する量だけ、前記第1視差から変化する。
【0010】
また、前記第1カメラを前記反転位置として、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度を前記基準温度から前記特定温度に変化させると、前記第4視差は、前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸のずれに起因する量だけ、前記第2視差から変化する。そのため、前記第1視差と前記第3視差との差分、及び前記第2視差と前記第4視差との差分に基づいて、前記基準温度から前記特定温度への温度変化による前記所定距離での前記第1カメラと前記第2カメラの視差の変化量が特定される。
【0011】
そして、前記第1カメラを前記通常位置と前記反転位置に切り替えることにより、温度変化に応じた前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸の変動による、前記第1カメラと前記第2カメラの視差の変化を大きくすることができる(前記通常位置と前記反転位置の切り替え行わない場合と比べて2倍程度)。これにより、温度変化に応じた前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸の微量な変動を抽出し易くなるため、温度変化に応じた前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸変動量を精度良く算出することができる。
【0012】
さらに、前記第1カメラを前記通常位置と前記反転位置に切り替えることにより、一定の温度変化に対する前記第1カメラと前記第2カメラの視差の変化を大きくすることによって、温度変化と前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸変動量との関係を認識するために必要な温度変化の幅を小さくすることができる。そのため、温度変化と前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸変動量との関係を認識するために必要な、温度の変更に要する時間を短縮することができる。
【0013】
また、第1発明において、前記第1視差算出工程、前記第2視差算出工程、前記第3視差算出工程、前記第4視差算出工程、及び前記光軸変動量算出工程を、複数の異なる前記特定温度について実行することにより、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が、前記基準温度から前記複数の特定温度に変化したときの、前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸のずれ量を算出する工程を含むことを特徴とする(第2発明)。
【0014】
第2発明によれば、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が、前記基準温度から前記複数の特定温度に変化したときの、前記第1カメラと前記第2カメラの光軸変動量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1カメラ及び第2カメラの光軸変動量を算出する際の車両とターゲットの配置関係の説明図。
【図2】第1カメラ及び第2カメラの光軸変動量を算出する処理のフローチャート。
【図3】第1カメラの通常位置と反転位置の説明図。
【図4】第1カメラ及び第2カメラにより撮像されるターゲットの説明図。
【図5】第1カメラ及び第2カメラにより撮像されたターゲットの画像部分の視差の説明図。
【図6】温度変化による第1カメラ及び第2カメラの光軸変動の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の車載カメラの光軸変動量測定方法の実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
【0017】
図1を参照して、車両1は、車両1の中心線cに対して左右対称に配置された第1カメラ10L及び第2カメラ10R(ステレオカメラ)と、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの撮像画像に基づいて、車両1の前方に存在する歩行者等を監視する車両周辺監視装置11とを備えている。
【0018】
第1カメラ10Lと第2カメラ10Rは、同一物体を撮像したときの視差により、車両1と物体間の距離を算出するために、光軸を互いに平行として車両1に取り付けられる。しかしながら、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの温度が変化すると、それに伴って、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの筐体やレンズ周辺構造が熱膨張或いは熱収縮により変形する。その結果、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの光軸が、取り付け時の状態から変動して(光軸が傾く)、第1カメラ10Lと第2カメラ10Rの光軸の平行度が変化する。
【0019】
そして、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの視差によって、車両1と物体との距離を精度良く算出するためには、上記温度変化による第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの光軸変動量を、車両周辺監視装置11が認識している必要がある。
【0020】
そこで、工場(車両1の組立て工場、サービス工場等)で車両1に第1カメラ10L及び第2カメラ10Rと車両周辺監視装置11を搭載する際に、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの温度変化による光軸変動量を予め測定し、この測定による光軸変動量のデータを車両周辺監視装置11のメモリに保持する処理が実行される。
【0021】
第1カメラ10L及び第2カメラ10Rは、所定の基準温度Tb(例えば、25度)に制御された室内で、光軸を平行にして車両1に取り付けられる。そして、室内に設けられたダーゲット板20から所定距離L0だけ離れた位置に車両1を停車し、測定作業者により操作されるコンピュータ50を、車両周辺監視装置11と通信ケーブル30で接続して、光軸変動量の測定用プログラムをコンピュータ50で実行することによって行われる。
【0022】
コンピュータ50は、測定作業者により所定の測定開始操作がなされると、光軸変動量の測定開始を指示する制御信号を車両周辺監視装置11に送信する。この制御信号を受信した車両周辺監視装置11は、車両周辺監視モード(第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの撮像画像に基づいて、車両1の周辺に存在する物体を監視する通常の運転モード)から、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの光軸変動量の測定等を行うエイミングモードに切替わる。そして、車両周辺監視装置11は、図2に示したフローチャートによる処理を実行する。
【0023】
車両周辺監視装置11は、先ず、STEP1で、車両1が図1に示した規定位置に停車しているか否かを、車両1の停車位置を検出するセンサ(図示しない)からの検出信号の入力の有無、或いは、車両1を規定位置に停車した測定作業者によるコンピュータ50への確認入力の有無等により、判断する。そして、車両1が規定位置に停車しているときには、STEP2に進み、車両1が停車している室内の温度を基準温度Tbとして設定する。
【0024】
ここで、第1カメラ10Lは、図3(a)に示したように、第2カメラ10Rと同じ回転位置である通常位置と、図3(b)に示したように、通常位置から光軸周りに180度回転した反転位置とに、切り替える構成を有して車両1に取り付けられている。なお、通常位置と反転位置との切り替えは、車両1にアクチェータを備えて行ってもよく、測定者による手動操作によって行ってもよい。
【0025】
続くSTEP3で、車両周辺監視装置11は、「第1視差算出工程」を実行する。車両周辺監視装置11は、第1カメラ10Lを通常位置として、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rにより、ターゲット板20に設けられたターゲット21を撮像する。ターゲット21は、図4に示したように、黒の背景に複数の白点を水平方向に等間隔で配置したパターンとなっている。
【0026】
図5(a)は、通常位置での第1カメラ10Lの撮像画像ImL1と、第2カメラ10Rの撮像画像ImR1を画角の中心Ceを合わせて上下に重ねて示したものである。図中の矢印は、ターゲット21の同一の各白点に対応する画像部分を示している。
【0027】
車両周辺監視装置11は、第1カメラ10Lの撮像画像ImL1と第2カメラ10Rの撮像画像ImR1における画角の中心Ce付近の同一の白点に対応する画像部分間の視差PaNを、第1視差Ds1(図6参照)として算出する。なお、複数の白点についての視差を平均して、第1視差Ds1を算出してもよい。
【0028】
続くSTEP4で、車両周辺監視装置11は、「第2視差算出工程」を実行する。車両周辺監視装置11は、第1カメラ10Lを光軸周りに回転させて、反転位置に切り替える。そして、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rにより、ターゲット板20に設けられたターゲット21を撮像する。
【0029】
図5(b)は、反転位置での第1カメラ10Lの撮像画像ImL2と、第2カメラ10Rの撮像画像ImR2を、画角の中心Ceを合わせて上下に重ねたものである。図中の矢印は、ターゲット21の同一の各白点に対応する画像部分を示している。
【0030】
車両周辺監視装置11は、第1カメラ10Lの撮像画像ImL2と第2カメラ10Rの撮像画像ImR2における画角の中心Ce付近の同一の白点に対応する画像部分間の視差PaRを、第2視差Dh1(図6参照)として算出する。なお、複数の白点についての視差を平均して、第2視差Dh1を算出してもよい。
【0031】
続くSTEP5で、車両周辺監視装置11は、車両1が停車している室内の温度を特定温度Ts(例えば、30℃)に制御する。この制御は、コンピュータ50と通信可能に接続された空調機器に対して、車両周辺監視装置11からコンピュータ50を介して温調制御信号を送信して行う。或いは、車両周辺監視装置11からコンピュータ50に対して、空調機器を特定温度Tsに設定して作動させることを測定作業者に指示する表示画面の表示を要求する信号を送信して、測定作業者に空調機器を操作させるようにしてもよい。
【0032】
次のSTEP6で、車両周辺監視措置11は、コンピュータ50から送信される、室温が特定温度に維持されていることを示す信号の受信を待って、「第3視差算出工程」を実行する。
【0033】
車両周辺監視装置11は、上記「第1視差算出工程」と同様に、第1カメラ10Lを通常位置として、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rにより、ターゲット板20に設けられたターゲット21を撮像する。車両周辺監視装置11は、第1カメラ10Lの撮像画像と第2カメラ10Rの撮像画像における画角の中心付近の同一の白点に対応する画像部分間の視差を、第3視差Ds2(図6参照)として算出する。なお、複数の白点についての視差を平均して、第3視差Ds2を算出してもよい。
【0034】
続くSTEP7で、車両周辺監視装置11は、上記「第2視差算出工程」と同様に、第1カメラ10Lを反転位置として、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rにより、ターゲット板20に設けられたターゲット21を撮像する。車両周辺監視装置11は、第1カメラ10Lの撮像画像と第2カメラ10Rの撮像画像における画角の中心付近の同一の白点に対応する画像部分間の視差を、第4視差Dh2(図6参照)として算出する。なお、複数の白点についての視差を平均して、第4視差Dh2を算出してもよい。
【0035】
次のSTEP8で、車両周辺監視装置11は、「光軸変動量算出工程」を実行する。ここで、図6は、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの温度を基準温度Tbから特定温度Tsに変化させたときの、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの光軸の変動を示したものである。
【0036】
図6の上側は、第1カメラ10Lを通常位置としたときの第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの光軸の変動を示し、下側は、第1カメラ10Lを反転位置としたときの第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの光軸の変動を示している。
【0037】
図6において、60,64は基準温度Tbにおける第2カメラ10Rの光軸方向、61,65は特定温度Tsにおける第2カメラ10Rの光軸方向、aは基準温度Tbから特定温度Tsに変化したときの第2カメラ10Rの光軸変動量を示している。また、62は基準温度Tbにおける通常位置での第1カメラ10Lの光軸方向、63は特定温度Tsにおける通常位置での第1カメラ10Lの光軸方向、bは基準温度Tbから特定温度Tsに変化したときの第1カメラ10Lの光軸の変動を示している。
【0038】
また、図6において、66は基準温度Tbにおける反転位置での第1カメラ10Lの光軸方向、67は特定温度Tsにおける反転位置での第1カメラ10Lの光軸方向を示している。さらに、図6において、Ds1は「第1視差算出工程」で算出された第1視差を示し、Ds2は「第3視差算出工程」で算出された第3視差を示し、Dh1は「第2視差算出工程」で算出された第2視差を示し、Dh2は「第4視差算出工程」で算出された第4視差を示している。
【0039】
図6においては、第1カメラ10Lが通常位置であるときは、以下の式(1)が成立する。
【0040】
Ds2−Ds1 ={Ds1+(−a+b)}−Ds1 = −a+b ・・・・・ (1)
但し、Ds2:第3視差、Ds1:第1視差、a:第2カメラの光軸変動量、b:第1カメラの光軸変動量。
【0041】
また、第1カメラ10Lが反転位置であるときには、以下の式(2)が成立する。
【0042】
Dh2−Dh1 = {Dh1+(−a−b)}−Dh1 = −a−b ・・・・・ (2)
但し、Dh2:第4視差、Dh1:第2視差、a:第2カメラの光軸変動量、b:第1カメラの光軸変動量。
【0043】
上記式(1),式(2)により、以下の式(3),式(4)が得られる。
【0044】
(Ds2−Ds1)−(Dh2−Dh1) = 2b ・・・・・ (3)
(Ds2−Ds1)+(Dh2−Dh1) = −2a ・・・・・ (4)
そこで、車両周辺監視装置11は、上記式(3),式(4)に、STEP3の「第1視差算出工程」で算出した第1視差Ds1、STEP4の「第2視差算出工程」で算出した第2視差Dh1、STEP6の「第3視差算出工程」で算出した第3視差Ds2、及びSTEP7の「第4視差算出工程」で算出した第4視差Dh2を代入する。
【0045】
そして、車両周辺監視装置11は、上記式(3)の算出値を2で除して第2カメラ10Rの光軸変動量bを算出し、また、上記式(4)の算出値の絶対値を2で除して第1カメラ10Lの光軸変動量aを算出する。
【0046】
次のSTEP9で、車両周辺監視装置11は、第2カメラ10Rの光軸変動量aと第1カメラ10Lの光軸変動量bのデータをメモリに保持し、STEP10に進んで処理を終了する。
【0047】
車両周辺監視装置11は、車両周辺監視モードでの動作中に温度センサ(図示しない)により第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの温度を監視する。そして、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの温度が特定温度Tsになったときには、メモリに保持された第2カメラ10Rの光軸変動量a及び第1カメラ10Lの光軸変動量bのデータを用いて、第1カメラ10Lと第2カメラ10Rの視差を求めることで、車両1と物体との距離を精度良く算出することができる。
【0048】
また、複数の特定温度Tsについて、図2のフローチャートによる処理を行って、各特定温度Tsにおける第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの光軸変動量のデータをメモリに保持することで、幅広い温度変化に対応して、車両1と物体との距離を精度良く算出することができる。
【0049】
また、本実施形態では、車両周辺監視装置11にコンピュータ50を接続し、測定作業者がコンピュータ50を操作して、第1カメラ10L及び第2カメラ10Rの光軸変化量を測定するようにしたが、測定作業者が車両周辺監視装置11の操作部(タッチパネル付きディスプレイ等)を操作して、車両周辺監視装置11をエイミングモードに切り替えるようにしてもよい。この場合には、コンピュータ50を用意して車両周辺監視装置11に接続する必要がない。
【符号の説明】
【0050】
1…車両(自車両)、10L…第1カメラ、10R…第2カメラ、11…車両周辺監視装置、21…ターゲット、50…コンピュータ、a…第2カメラの光軸変動量、b…第1カメラの光軸変動量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を平行として車両に搭載された第1カメラ及び第2カメラについて、温度変化による該第1カメラ及び該第2カメラの光軸変動量を測定する車載カメラの光軸変動量の測定方法であって、
前記第1カメラを光軸周りに回転させる構成を用いて、前記第1カメラを、回転位置が180度異なる通常位置と反転位置とに切り替え、
前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が所定の基準温度であるときに、前記第2カメラ及び前記通常位置とした前記第1カメラにより、前記第1カメラ及び前記第2カメラから所定距離だけ離れたターゲットを撮像して、前記第1カメラの撮像画像と前記第2カメラの撮像画像間における前記ターゲットの画像部分の視差である第1視差を算出する第1視差算出工程と、
前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が前記基準温度であるときに、前記第2カメラ及び前記反転位置とした前記第1カメラにより、前記ターゲットを撮像して、前記第1カメラの撮像画像と前記第2カメラの撮像画像間における前記ターゲットの画像部分の視差である第2視差を算出する第2視差算出工程と、
前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が前記基準温度と異なる特定温度であるときに、前記第2カメラ及び前記通常位置とした前記第1カメラにより、前記ターゲットを撮像して、前記第1カメラの撮像画像と前記第2カメラの撮像画像間における前記ターゲットの画像部分の視差である第3視差を算出する第3視差算出工程と、
前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が前記特定温度であるときに、前記第2カメラ及び前記反転位置とした前記第1カメラにより、前記ターゲットを撮像して、前記第1カメラの撮像画像と前記第2カメラの撮像画像間における前記ターゲットの画像部分の視差である第4視差を算出する第4視差算出工程と、
前記第1視差と前記第3視差の差分、及び前記第2視差と前記第4視差の差分に基づいて、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が、前記基準温度から前記特定温度に変化したときの、前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸変動量を算出する光軸変動量算出工程と
を含むことを特徴とする車載カメラの光軸変動量の測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車載カメラの光軸変動量の測定方法において、
前記第1視差算出工程、前記第2視差算出工程、前記第3視差算出工程、前記第4視差算出工程、及び前記光軸変動量算出工程を、複数の異なる前記特定温度について実行することにより、前記第1カメラ及び前記第2カメラの温度が、前記基準温度から前記複数の特定温度に変化したときの、前記第1カメラ及び前記第2カメラの光軸変動量を算出する工程を含むことを特徴とする車載カメラの光軸変動量の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251980(P2012−251980A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127235(P2011−127235)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】