説明

車載ナビゲーション装置及びマップマッチング方法

【課題】高いマッチング精度でマップマッチングを行うことができるようにする。
【解決手段】自車が過去に通過した道路の情報を道路通過履歴として道路通過履歴記憶装置7に記憶させておき、ナビゲーションコントローラ1がマップマッチング処理を行って自車位置マークの表示位置を地図の道路位置上に修正する際に、道路通過履歴記憶装置7に記憶された道路通過履歴を考慮して、自車位置マークの表示位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図上の自車位置マークを道路位置上に修正するマップマッチング機能を有する車載ナビゲーション装置、及び車載ナビゲーション装置におけるマップマッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の現在位置を検出して、当該車両の現在位置を示す自車位置マークを地図上に重畳した画像を表示する車載ナビゲーション装置が普及している。この種の車載ナビゲーション装置では、一般に、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されるGPS信号に基づいて車両の絶対位置を求めるとともに、ジャイロセンサや車速センサなどの車載センサを用いた自立航法により車両の相対移動位置を求め、これら絶対位置と相対移動位置とから車両の現在位置を特定するようにしている。このとき、GPS信号の誤差や車載センサの検出誤差などに起因して、車両の現在位置が正しく検出されない場合があり、その結果、自車位置マークが地図の道路上から外れた位置に重畳表示される場合がある。このような地図上における自車位置マークのずれを修正するために、車載ナビゲーション装置では、通常、マップマッチングと呼ばれる処理を行って、自車位置マークの表示位置を地図の道路位置上に修正するようにしている。
【0003】
このマップマッチングの代表的な手法としては、検出した車両の現在位置から距離的に最も近い道路を、実際に車両が走行している道路であると推定して、当該道路上に自車位置マークを表示させる投影法や、車両が所定距離を進むたびにその所定距離における車両の走行軌跡を求め、車両の現在位置近傍に存在する道路の中から、車両の走行軌跡と最も近い形状を有する道路を、実際に車両が走行している道路であると推定して、当該道路上に自車位置マークを表示させるパターン法、さらには、これら投影法とパターン法とを組み合わせた手法などが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−159788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の運転者が複数の道路の中から進むべき道路を選択する場合には、運転者にとって馴染みのある道路があれば、運転者はその馴染みのある道路を車両の走行路として選択する傾向が強い。したがって、以上のようなマップマッチングを行う際に、運転者にとって馴染みのある道路がマッチングの候補として挙げられていれば、その道路が、実際に車両が走行している道路である可能性が高い。
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているような従来のマップマッチングの手法では、運転者にとって馴染みのある道路と他の道路とが特に区別されることなく同等に扱われるため、実際に車両が走行している道路以外の他の道路上に自車位置マークをミスマッチさせてしまうことが多く、十分なマッチング精度が得られないという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて創案されたものであって、高いマッチング精度でマップマッチングを行うことができる車載ナビゲーション装置及びマップマッチング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、車両が過去に通過した道路の情報を道路通過履歴として記憶しておき、車両の現在位置が表示対象の地図の道路位置と不一致の場合に車両の現在位置を示す自車位置マークの表示位置を地図の道路位置上に修正するにあたって、前記道路通過履歴を考慮して自車位置マークの表示位置を決定するようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車位置マークの表示位置を地図の道路位置上に修正する際に、車両が過去に通過した道路の情報である道路通過履歴が考慮されて自車位置マークの表示位置が決定されるので、高いマッチング精度でマップマッチングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した車載ナビゲーション装置の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
本発明を適用した車載ナビゲーション装置は、当該車載ナビゲーション装置が搭載された車両(以下、自車と呼ぶ。)の現在位置(自車位置)を検出して、この自車位置を示す自車位置マークを地図上に重畳した画像を表示し、自車位置が表示対象の地図の道路位置と不一致の場合には、自車位置マークの表示位置を地図の道路位置上に修正するマップマッチング機能を有するものである。そして、特に本発明を適用した車載ナビゲーション装置は、自車が過去に通過した道路の情報を道路通過履歴として記憶しておき、マップマッチングの際には、この道路通過履歴を考慮して自車位置マークの表示位置を決定することで、高いマッチング精度でマップマッチングを行えるようにした点に特徴を有している。以下、この本発明に特徴的な部分を中心に、本発明の実施形態としての車載ナビゲーション装置について具体的に説明する。
【0011】
本実施形態の車載ナビゲーション装置の概略構成を図1に示す。図1に示すように、本実施形態の車載ナビゲーション装置は、当該車載ナビゲーション装置全体の動作を統括的に制御するナビゲーションコントローラ1を主要な構成要素として備え、このナビゲーションコントローラ1の入力側に、GPS受信機2、車載センサ3、操作デバイス4、地図データ記憶装置5がそれぞれ接続され、ナビゲーションコントローラ1の出力側に表示装置6が接続された構成とされる。また、本実施形態の車載ナビゲーション装置は、当該車載ナビゲーション装置に特有の構成として、道路通過履歴を記憶するための道路通過履歴記憶装置7を備え、この道路通過履歴記憶装置7がナビゲーションコントローラ1に接続されている。なお、この道路通過履歴記憶装置7は、ナビゲーションコントローラ1内部の所定のメモリ領域を利用して実現するようにしてもよい。
【0012】
GPS受信機2は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)の衛星から送られる信号を受信するものである。また、車載センサ3は、自車に搭載された車速センサやジャイロセンサなどである。これらGPS受信機2により受信されたGPS信号や車載センサ3のセンサ検出値は、ナビゲーションコントローラ1に随時送られて、自車位置を特定するために用いられる。
【0013】
操作デバイス4は、自車の乗員が各種指示を入力するために用いられるユーザインターフェースであり、例えば各種操作ボタンやジョイスティック、タッチパネル式のスイッチなどからなる。この操作デバイス4を用いて入力された自車乗員からの指示は、ナビゲーションコントローラ1に随時送られる。
【0014】
地図データ記憶装置5は、本実施形態のナビゲーション装置で扱われる地図データを格納するものであり、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体を有している。ここで、地図データは、地図上の地点を示すノードデータや、各ノード間を連結する道路を示すリンクデータで構成され、各ノードデータは、その地点の位置座標や地点属性、地点名称等のデータを有し、各リンクデータは、リンクの始点及び終点の位置座標やリンク長、道路幅、道路属性、道路名称等のデータを有している。また、この地図データは、ナビゲーションコントローラ1で一度に処理可能なデータ単位(領域)毎に区分けされており、各区画毎に区画番号と緯度及び経度データが与えられて、各区画を一意に特定できるようなデータ構造となっている。
【0015】
この地図データ記憶装置5に記憶されている地図データは、ナビゲーションコントローラ1からの指令に基づいて適宜読み出されて、ナビゲーションコントローラ1へと送られる。なお、地図データ記憶装置5の記録媒体としては、上述したDVD以外にも、CD(Compact Disc)やメモリカード、ハードディスク等の様々な仕様の記録媒体が採用可能である。また、車載ナビゲーション装置が無線通信等によるデータ通信機能を有している場合には、地図データの配信サービスを行うサービスセンタ等からの地図データを取得して、ナビゲーションコントローラ1へと送る構成を採用してもよい。
【0016】
表示装置6は、ナビゲーションコントローラ1による制御のもとで、自車位置を示す自車位置マークを地図上に重畳した画像を表示するものであり、例えば、自車のセンターコンソールに設置された液晶ディスプレイや、自車のフロントガラスに映像を投影して表示させるプロジェクタなどが用いられる。
【0017】
道路通過履歴記憶装置7は、ナビゲーションコントローラ1による制御のもとで、自車が過去に通過した道路の情報を道路通過履歴として記憶するものである。具体的には、この道路通過履歴記憶装置7には、自車が過去に通過した道路毎に、当該道路に対する自車の通過回数や最終通過日といった情報が、道路通過履歴として記憶される。この道路通過履歴の情報は、ある道路を自車が通過していると判定されるごとに道路通過履歴記憶装置7に書き込まれ、更新される。
【0018】
ナビゲーションコントローラ1は、CPUやROM、RAMを備えたマイクロコンピュータを中心に、入出力バッファ回路やメモリ回路などを有するコントロールユニットとして構成される。このナビゲーションコントローラ1は、予めマイクロコンピュータのROMなどに記憶されたナビゲーション用のプログラムを実行してCPUで各種の演算処理を行うことで、本実施形態の車載ナビゲーション装置における各種動作を制御する制御機能を実現し、特に本発明に関わる部分として、自車位置特定部11、表示制御部12、マップマッチング処理部13、通過道路履歴書き込み部14の各機能を実現する。ナビゲーションコントローラ1におけるこれらの制御機能部では、以下のような処理が行われる。
【0019】
自車位置特定部11は、GPS受信機2からのGPS信号や車載センサ3からのセンサ検出値を取り込んで、GPS信号に基づく自車の絶対位置を、車載センサ3からのセンサ検出値を用いた自立航法によって補正して、自車位置を特定する。
【0020】
表示制御部12は、表示装置6に表示させる画像を作成して当該画像の画像データを表示装置6に供給することで、表示装置6の表示動作を制御する。具体的には、この表示制御部12は、地図データ記憶装置5に格納されている地図データを読み出して、当該地図データに基づいて自車位置周辺の地図を描画するとともに、自車位置特定部11で特定された自車位置をこの地図上で特定して、当該地図上の自車位置に自車位置マークを重畳した画像を作成する。このとき、表示制御部12は、マップマッチング処理部13において自車位置マークの表示位置を修正するマップマッチング処理が行われた場合には、修正後の表示位置に自車位置マークを重畳した画像を作成する。この表示制御部12で作成された画像の画像データは表示装置6に送られる。そして、表示装置6がこの画像データに基づいた表示処理を行うことで、表示装置6には、自車位置マークを地図上に重畳した画像が表示されることになる。
【0021】
マップマッチング処理部13は、自車位置特定部11で特定された自車位置が、表示制御部12で描画された表示対象の地図の道路位置と不一致の場合に、自車位置マークの表示位置を表示対象の地図の道路位置上に修正する。具体的には、このマップマッチング処理部13は、自車位置特定部11で特定された自車位置が表示対象の地図の道路位置上であるか否かを判定し、自車位置特定部11で特定された自車位置が表示対象の地図の道路位置上にないと判断した場合には、当該自車位置の周辺に存在する複数の道路をマッチング候補として抽出する。そして、マップマッチング処理部13は、例えば、所定時間における自車の動きと、マッチング候補として抽出された道路の形状との相関を求め、自車が走行している道路として最も確からしい道路をマッチング対象の道路として選択し、この道路上における所定の位置を自車位置マークの表示位置として決定する。
【0022】
このとき、特に本実施形態の車載ナビゲーション装置においては、マップマッチング処理部13が、マッチング候補として抽出された複数の道路の中からマッチング対象の道路を選択するに際して、道路通過履歴記憶装置7に記憶されている道路通過履歴の情報を読み出して、この道路通過履歴を考慮して、マッチング対象の道路を選択するようにしている。すなわち、マップマッチング処理部13は、マッチング候補として抽出された複数の道路のそれぞれについて道路通過履歴が記憶されているか否かを確認し、道路通過履歴が記憶されている道路に対しては、その道路通過履歴の情報を用いて、当該道路に対する自車の運転者の馴染み度合いを表す学習値を算出する。そして、マップマッチング処理部13は、道路通過履歴の情報に基づいて算出した学習値を、上述した自車の動きと道路形状との相関度合いを表すマッチングスコアに加算して最終的なスコアを求め、最も高いスコアが得られた道路をマッチング対象の道路として選択して、この道路上における所定の位置を自車位置マークの表示位置として決定する。
【0023】
マップマッチング処理部13による学習値の算出は、例えば以下のように行われる。すなわち、道路通過履歴記憶装置7には、上述したように、自車が過去に通過した道路毎に、当該道路に対する自車の通過回数や最終通過日といった情報が、道路通過履歴として記憶されている。マップマッチング処理部13は、これら自車の通過回数や最終通過日の情報を道路通過履歴記憶装置7から読み出して、これら自車の通過回数や最終通過日の情報に基づいて、下記計算式(1)により、学習値Xを算出する。なお、下記計算式(1)において、Yは当該道路に対する自車の通過回数、Zは当該道路に対する自車の最終通過日から現在までの経過日数であり、Aは第1の係数、Bは第1の係数よりも十分に小さな値である第2の係数である。これら第1の係数Aや第2の係数Bは、予めコンピュータを用いたシミュレーションなどを繰り返し行って求めた最適な値に設定しておけばよい。
【0024】
X=A・Σ(1/Y)−B・Z ・・・(1)
この計算式(1)を用いて算出される学習値Xは、日々変化する自車の運転者の道路に対する馴染み度合いを表したものとなり、道路に対する利用頻度が下がればその値も下がるようになっている。また、通過回数が多ければ学習値Xの値は大きくなるが、通過回数を重ねるたびにその増加量は減少するようになっている。
【0025】
なお、以上のような計算式(1)では、算出される学習値Xの値が極端に大きくなりすぎたり、マイナスの値が算出されたりする場合も考えられる。算出される学習値Xの値が極端に大きいと、自車の動きと相関度合いが高い形状の道路が他にマッチング候補として挙げられていても、利用頻度の高い道路のみがマッチング対象として選択されてしまうといった不都合が生じ、また、算出される学習値Xがマイナスの値となると、過去に通過した道路が逆にマッチング対象として選択されにくくなるといった不都合が生じる。
【0026】
そこで、マップマッチング処理部13は、道路通過履歴の情報を用いて算出する学習値に上限値及び下限値を設けるようにしている。すなわち、マップマッチング処理部13は、計算式(1)にて算出されるXの値が所定の閾値Cを上回る場合は、当該閾値Cを学習値とし、計算式(1)にて算出されるXの値が0未満の場合は、0を学習値とするようにしている。これにより、計算式(1)にて算出される学習値Xの値が極端に大きくなったりマイナスの値が算出されたりした場合の上述した不都合を有効に抑制し、最適な学習値を求めることができる。なお、閾値Cは、計算式(1)における第1の係数Aや第2の係数Bとともに、コンピュータを用いたシミュレーションなどで求めた最適な値に設定しておけばよい。
【0027】
道路通過履歴書き込み部14は、自車が現在通過している道路を特定して、その情報を道路通過履歴として道路通過履歴記憶装置7に書き込む処理を行う。具体的には、この道路通過履歴書き込み部14は、自車位置特定部11で特定された自車位置あるいはマップマッチング処理部13で修正された自車位置と一致する道路を特定し、当該道路についての道路通過履歴が道路通過履歴記憶装置7にすでに記憶されているか否かを確認する。そして、道路通過履歴書き込み部14は、当該道路についての道路通過履歴が道路通過履歴記憶装置7に記憶されていなければ、当該道路の道路通過履歴として、通過回数が1回である旨の情報と現在の日付を示す情報とを、当該道路を表すリンクの識別番号に対応付けて道路通過履歴記憶装置7に書き込む。また、道路通過履歴書き込み部14は、当該道路についての道路通過履歴が道路通過履歴記憶装置7にすでに記憶されていれば、当該道路の道路通過履歴として記憶されている通過回数の値をインクリメントするとともに、最終通過日の情報を現在の日付を示す情報で上書きし、当該道路についての道路通過履歴を更新する。
【0028】
図2は、以上のように構成される本実施形態の車載ナビゲーション装置において、自車位置マークを地図上に重畳した画像を表示装置6に表示させる際のナビゲーションコントローラ1による一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図2の処理フローは、所定の処理周期で繰り返し実行されるものである。なお、ここでは、ナビゲーションコントローラ1で表示対象となる地図を描画するために必要な所定範囲の地図データがすでに地図データ記憶装置5から読み出されて、ナビゲーションコントローラ1内部のメモリに格納されているものとして説明する。
【0029】
図2の処理フローがスタートすると、ナビゲーションコントローラ1は、まず、ステップS1において、GPS受信機2からのGPS信号や車載センサ3からのセンサ検出値を取り込んで、自車位置を特定する。そして、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS2において、ステップS1で特定した自車位置が表示対象の地図の道路位置上であるか否かによって、マップマッチング処理が必要かどうかを判断する。ここで、マップマッチング処理が必要と判断した場合には次のステップS3に進み、マップマッチング処理が不要と判断した場合には、ステップS8へと処理を移行する。
【0030】
ステップS3では、ナビゲーションコントローラ1は、表示対象の地図に含まれる道路の中でステップS1で特定された自車位置から所定距離内に存在する複数の道路を、マッチング候補の道路として抽出する。そして、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS4において、ステップS3で抽出した複数のマッチング候補の道路の中に、過去に通過した道路があるか否か、すなわち、道路通過履歴記憶装置7に道路通過履歴の情報が記憶されている道路があるか否かを確認し、マッチング候補の道路の中に過去に通過した道路があれば、次のステップS5において、当該道路についての道路通過履歴の情報を読み出して、道路通過履歴の情報を用いて当該道路に対する自車の運転者の馴染み度合いを表す学習値を算出する。
【0031】
そして、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS6において、ステップS3でマッチング候補として抽出した各道路について道路形状などに基づくマッチングスコアを算出するとともに、ステップS5において学習値を算出した道路については、算出したマッチングスコアに学習値を加算して最終的なスコアを求め、最も高いスコアが得られた道路をマッチング対象の道路として選択する。そして、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS7において、ステップS6で選択したマッチング対象の道路上における所定の位置を自車位置マークの表示位置として決定する。
【0032】
次に、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS8において、自車位置周辺の地図を描画するとともに、ステップS1で特定した自車位置、あるいはステップS8で決定した地図上の表示位置に自車位置マークを重畳した画像を作成して、その画像データを表示装置6に送る。これにより、表示装置6には、自車位置マークを地図上に重畳した画像が表示されることになる。
【0033】
その後、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS9において、自車位置マークの表示位置とされた道路、すなわち、自車が現在走行している道路であると判断した道路についての道路通過履歴の情報を道路通過履歴記憶装置7に書き込む処理を行って、ステップS1での処理へとリターンする。なお、ステップS9で自車が現在走行している道路であると判断した道路(リンク)が前回の処理周期において判断した道路(リンク)と同じであれば、重複した道路通過履歴の書き込みは行わずに、ステップS1での処理へとリターンする。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の車載ナビゲーション装置では、ナビゲーションコントローラ1がマップマッチング処理を行って自車位置マークの表示位置を地図の道路位置上に修正する際に、自車が過去に通過した道路の情報である道路通過履歴を考慮して自車位置マークの表示位置を決定するようにしているので、高いマッチング精度でマップマッチングを行うことができる。具体的な例を挙げて説明すると、例えば図3に示すように、自車が道路L1から互いに平行な道路L2と道路L3との何れかに進入した場合、自車の運転者にとって道路L2の方が道路L3よりも馴染みのある道路であれば、自車の運転者は進むべき道路として道路L2を選択する可能性が高く、自車は道路L2上を走行している可能性が高い。しかしながら、従来のマップマッチングの手法では、GPS信号や自立航法などにより求めた自車位置が道路L3よりである場合には、自車位置は道路L3上であると判定されて、図3(a)に示すように、自車位置マークが表示対象の地図における道路L3上に重畳表示されることになる。これに対して、本実施形態の車載ナビゲーション装置では、ナビゲーションコントローラ1がマップマッチング処理を行って自車位置マークの表示位置を地図の道路位置上に修正する際に、道路通過履歴の情報を考慮して自車位置マークの表示位置を決定するようにしているので、図3(b)に示すように、自車が走行している可能性の高い道路L2上に自車位置マークを重畳表示することができ、高いマッチング精度でマップマッチングを行うことができる。
【0035】
なお、以上説明した車載ナビゲーション装置は本発明の一適用例であり、本発明が以上の例に限定されるものではなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、上述した例では、自車が通過した道路全てを対象として道路通過履歴を記憶させるようにしているが、道路通過履歴の書き込みを、自車を目的地に誘導するための誘導経路を設定した場合に限定し、誘導経路として設定した道路についてのみ道路通過履歴を記憶させるようにしてもよい。すなわち、車載ナビゲーション装置は一般に誘導経路を設定する機能を有しており、誘導経路が設定されている場合には、マップマッチング処理を行う際に誘導経路として設定されている道路がマッチング対象として優先的に選択される。しかしながら、過去に誘導経路として設定した道路については、当該道路を頻繁に利用するようになれば自車の運転者は誘導経路として設定しなくとも目的地に到着できるようになり、誘導経路の設定を行わないようになる。このような場合、従来のマップマッチングの手法では、以降のマップマッチング処理においてマッチング候補として過去に誘導経路を設定した道路が挙げられたときに、自車が当該道路を走行している可能性が高くても当該道路が他の道路と同等に扱われて、ミスマッチの要因となる。これに対して、過去に誘導経路を設定した道路について道路通過履歴の情報を記憶させておき、この道路通過履歴を考慮したマップマッチング処理を行うようにすれば、過去に誘導経路として設定した道路を、誘導経路として設定している状態と同様に、マッチング対象として優先的に選択して正しい位置に自車位置マークを表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用した車載ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した車載ナビゲーション装置において、自車位置マークを地図上に重畳した画像を表示装置に表示させる際のナビゲーションコントローラによる一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】マップマッチング処理によって自車位置マークを地図の道路位置上に重畳表示する様子を説明する図であり、(a)は従来の手法によるマップマッチング処理の結果を示す図、(b)は本発明を適用した車載ナビゲーション装置によるマップマッチング処理の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ナビゲーションコントローラ
5 地図データ記憶装置
6 表示装置
7 道路通過履歴記憶装置
11 自車位置特定部
12 表示制御部
13 マップマッチング処理部
14 道路通過履歴書き込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
車両の現在位置を示す自車位置マークを、前記地図データに基づいて描画された地図上に重畳して表示する表示手段と、
車両の現在位置が前記表示手段に表示される地図の道路位置と不一致の場合に、前記自車位置マークの表示位置を前記地図の道路位置上に修正するマップマッチング手段と、
車両が過去に通過した道路の情報を道路通過履歴として記憶する道路通過履歴記憶手段とを備え、
前記マップマッチング手段は、前記道路通過履歴記憶手段に記憶された道路通過履歴を考慮して、前記自車位置マークの表示位置を決定することを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記道路通過履歴記憶手段は、前記道路通過履歴として、車両が過去に通過した道路毎に当該道路に対する車両の通過回数および最終通過日の情報を記憶し、
前記マップマッチング手段は、前記自車位置マークの修正位置の候補となる道路毎に、前記道路通過履歴記憶手段に記憶された通過回数および最終通過日の情報に基づいて当該道路に対する学習値を算出し、算出した学習値を用いて前記自車位置マークの表示位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記マップマッチング手段は、前記道路に対する車両の通過回数をY、最終通過日から現在までの経過日数をZとしたときに、下記の計算式に基づいて学習値Xを算出することを特徴とする請求項2に記載の車載ナビゲーション装置。
X=A・Σ(1/Y)−B・Z (ただし、Aは第1の係数、Bは第1の係数よりも小さな値である第2の係数)
【請求項4】
前記マップマッチング手段は、前記計算式にて算出されるXの値が所定の閾値を上回る場合は当該閾値を学習値とし、前記計算式にて算出されるXの値が0未満の場合は0を学習値とすることを特徴とする請求項3に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項5】
車両の現在位置を検出して、当該車両の現在位置を示す自車位置マークを、地図データに基づいて描画された地図上に重畳して表示するに際し、車両の現在位置が表示対象の地図の道路位置と不一致の場合に、前記自車位置マークの表示位置を前記地図の道路位置上に修正するマップマッチング方法において、
車両が過去に通過した道路の情報を道路通過履歴として記憶しておき、当該道路通過履歴を考慮して、前記自車位置マークの表示位置を決定することを特徴とするマップマッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−78519(P2007−78519A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266911(P2005−266911)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】