説明

車載ナビゲーション装置及び経路表示方法

【課題】車両を方向転換するか否かにかかわらず、推奨経路の表示を適切に行ってドライバによる車両の運転を補助できるようにする。
【解決手段】ナビゲーションコントローラ1が自車の現在位置から目的地までの推奨経路を探索するにあたって、自車の現在位置から車両前方に向かって進む経路である第1推奨経路L1と、自車の現在位置から車両後方に向かって進む経路である第2推奨経路L2との2通りの推奨経路を探索する。そして、第2推奨経路L2のコストが第1推奨経路L2のコストよりも小さい場合に、これら第1推奨経路L1を示す経路ラインと第2推奨経路L2を示す経路ラインとの双方を地図画像上に重畳したナビゲーション画像を表示装置に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を目的地に到着させるための推奨経路を探索して、探索した推奨経路を地図上で識別可能に表示する機能を有する車載ナビゲーション装置及び車載ナビゲーション装置における経路表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を目的地に到着させるための推奨経路を探索して、探索した推奨経路を地図上で識別可能に表示することで、ドライバによる車両の運転を補助する車載ナビゲーション装置が普及している。この種の車載ナビゲーション装置における推奨経路の探索は、車両の現在位置に最も近いリンクを計算開始リンクとし、目的地に最も近いリンクを計算終了リンクとして、計算開始リンクから計算終了リンクにつながる全てのリンクの組み合わせを求め、各リンクの組み合わせ毎にリンクコストを加算して、コストが最小となるリンクの組み合わせを推奨経路とするといった手法で行うのが一般的である。
【0003】
このとき、経路探索の基準となる計算開始リンクとしては、通常、現在位置における車両の向きを考慮して、車両前方に向かう方向のリンクが選ばれる。このため、現在位置で車両を方向転換させて逆向きに向かうような経路は、基本的には推奨経路の対象から外されることになる。
【0004】
しかしながら、例えば、車両の方向転換が容易に行えるような場所で経路探索を行ったような場合等においては、車両の向きとは逆方向に向かう経路の方がより短時間で目的地に到着できるのであれば、このような逆向きの経路を推奨経路として探索することが望まれる場合が多い。
【0005】
このような観点から、車両の向きとは逆方向に向かう経路も対象として、車両を目的地に到着させるための推奨経路を探索するようにした経路探索の手法も提案されている(例えば、特許文献1等を参照。)。特許文献1には、渋滞時の迂回経路の探索に着目し、渋滞時にドライバが迂回経路の探索を指示すると、車両の進行方向とは逆向きの経路も対象として迂回経路の探索を行う車載ナビゲーション装置が記載されている。
【特許文献1】特開平8−166246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載されている車載ナビゲーション装置をはじめ、車両の向きとは逆方向に向かう経路も対象として推奨経路の探索を行う従来の車載ナビゲーション装置においては、車両の向きとは逆方向に向かう経路のコストが最小であれば、この経路のみが推奨経路として選択されて、この逆向きの経路のみが地図上で識別可能に表示されることになる。このため、例えば、車両を現在位置にて方向転換することが困難な場合や、方向転換のような煩雑な運転操作をするのであれば多少時間がかかっても車両の向きに沿った経路で目的地に向かいたいとドライバが考えている場合などにおいては、ドライバの意向に沿った経路表示が行われないことになり、ドライバによる車両の運転を適切に補助することができないといった問題が生じる。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術の有する問題点を解消すべく創案されたものであって、車両を方向転換するか否かにかかわらず、推奨経路の表示を適切に行ってドライバによる車両の運転を補助することができる車載ナビゲーション装置及び経路表示方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、車両の現在位置から目的地までの推奨経路を探索するにあたって、車両の現在位置から車両前方に向かって進む第1推奨経路と、車両の現在位置から車両後方に向かって進む第2推奨経路とを探索し、第2推奨経路のコストが第1推奨経路のコストよりも小さい場合には、第1推奨経路と第2推奨経路との双方を地図上で識別可能に表示するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の現在位置から車両後方に向かって進む第2推奨経路のコストが、車両の現在位置から車両前方に向かって進む第1推奨経路のコストよりも小さい場合に、第1推奨経路と第2推奨経路との双方が地図上で識別可能に表示されるので、車両のドライバによる判断で進むべき経路を選択させることができ、ドライバによる車両の運転を適切に補助することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した車載ナビゲーション装置の具体的な一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
本発明を適用した車載ナビゲーション装置は、車両を目的地に到着させるための推奨経路を探索して、探索した推奨経路を地図上で識別可能に表示する機能を有するものであり、例えば図1に示すように、車載ナビゲーション装置全体の動作を統括的に制御するナビゲーションコントローラ1を主要な構成要素として備え、このナビゲーションコントローラ1の入力側に、GPS受信機2、車載センサ3、操作デバイス4、後方カメラ5、地図データ格納装置6がそれぞれ接続され、ナビゲーションコントローラ1の出力側に表示装置7が接続された構成とされる。
【0012】
GPS受信機2は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)の衛星から送られる信号を受信するものである。また、車載センサ3は、車両に搭載された車輪速センサやジャイロセンサなどである。これらGPS受信機2により受信されたGPS信号や車載センサ3のセンサ検出値は、ナビゲーションコントローラ1に随時送られて、本実施形態のナビゲーション装置を搭載する車両(以下、自車という。)の現在位置や方位を特定するために用いられる。
【0013】
操作デバイス4は、自車の乗員が各種指示を入力するために用いられるユーザインターフェースであり、例えば各種操作ボタンやジョイスティック、タッチパネル式のスイッチなどからなる。この操作デバイス4を用いて入力された自車乗員からの指示は、ナビゲーションコントローラ1に随時送られる。
【0014】
後方カメラ5は、自車に搭載されて自車後方の画像を撮影するものである。この後方カメラ5によって撮影された自車後方の画像は、必要に応じてナビゲーションコントローラ1に取り込まれ、自車を現在位置で方向転換することが可能かどうか判定する際の判定材料として用いられる。
【0015】
地図データ格納装置6は、本実施形態のナビゲーション装置で扱われる地図データを格納するものであり、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体を有している。ここで、地図データは、地図上の地点を示すノードデータや、各ノード間を連結する道路を示すリンクデータで構成され、各ノードデータは、その地点の位置座標や地点属性、地点名称等のデータを有し、各リンクデータは、リンクの始点及び終点の位置座標やリンク長、道路幅、道路属性、道路名称等のデータを有している。また、地図データには、これらノードデータやリンクデータの他に、コンビニエンスストアや駐車場などの施設に関する情報も付加情報として含まれている。
【0016】
この地図データ格納装置6に格納されている地図データは、ナビゲーションコントローラ1からの指令に基づいて適宜読み出されて、ナビゲーションコントローラ1へと送られる。なお、地図データ格納装置6の記録媒体としては、上述したDVD以外にも、CD(Compact Disc)やメモリカード、ハードディスク等の様々な仕様の記録媒体が採用可能である。また、車載ナビゲーション装置が無線通信等によるデータ通信機能を有している場合には、地図データの配信サービスを行うサービスセンタ等からの地図データを取得して、ナビゲーションコントローラ1へと送る構成を採用してもよい。
【0017】
表示装置7は、ナビゲーションコントローラ1による制御のもとで、ドライバの運転を補助するための各種ナビゲーション画像を表示するものであり、特に、本発明に関わるナビゲーション画像として、ナビゲーションコントローラ1において探索された推奨経路を示す経路ラインを地図上に重畳したナビゲーション画像を表示する。この表示装置7としては、例えば、自車のセンターコンソールに設置された液晶ディスプレイや、自車のフロントガラスに映像を投影して表示させるプロジェクタなどが用いられる。
【0018】
ナビゲーションコントローラ1は、CPUやROM、RAMを備えたマイクロコンピュータを中心に、入出力バッファ回路やメモリ回路などを有するコントロールユニットとして構成される。このナビゲーションコントローラ1は、予めマイクロコンピュータのROMなどに記憶されたナビゲーション用のプログラムを実行してCPUで各種の演算処理を行うことで、本実施形態の車載ナビゲーション装置における各種動作を制御する制御機能を実現し、特に本発明に関わる部分として、図2に示すように、現在位置・方位特定部11、目的地設定部12、経路探索部13、方向転換可否判定部14、折り返し地点検出部15、経路表示判定部16、ナビゲーション画像作成部17の各機能を実現する。ナビゲーションコントローラ1におけるこれらの制御機能部では、以下のような処理が行われる。
【0019】
現在位置・方位特定部11では、GPS受信機2からのGPS信号や車載センサ3からのセンサ検出値が取り込まれ、GPS信号に基づく自車の絶対位置および方位が車載センサ3からのセンサ検出値を用いた自立航法によって補正され、自車の正確な現在位置及び方位(自車が向いている方向)が特定される。
【0020】
目的地設定部12では、自車の乗員が操作デバイス4を用いて入力した目的地設定の指示に応じて、経路探索のための目的地が設定される。
【0021】
経路探索部13では、現在位置・方位特定部11で特定された現在位置を出発地として目的地設定部12で設定された目的地へと自車を走行させるために最適な推奨経路が探索される。具体的には、この経路探索部13は、地図データ格納装置6に格納されている地図データを読み出して、現在位置・方位特定部11で特定された自車の現在位置に最も近いリンクを計算開始リンクとし選択するとともに、目的地設定部12で設定された目的地に最も近いリンクを計算終了リンクとして選択して、計算開始リンクから計算終了リンクにつながる全てのリンクの組み合わせを求め、各リンクの組み合わせ毎にリンクコストを加算して、コストが最小となるリンクの組み合わせを推奨経路として抽出する。
【0022】
ここで、特に本実施形態の車載ナビゲーション装置では、この経路探索部13で推奨経路を探索する際に、自車の現在位置から車両前方に向かって進む経路である第1推奨経路L1と、自車の現在位置から車両後方に向かって進む経路である第2推奨経路L2との2通りの推奨経路が探索されるようにしている。すなわち、経路探索部13は、経路探索の基準となる計算開始リンクとして、自車前方に向かう方向のリンクと自車後方に向かう方向のリンクとの2つのリンクを選択する。そして、自車前方に向かう方向のリンクを計算開始リンクとしたときのコストが最小となるリンクの組み合わせを第1推奨経路L1として抽出し、自車後方に向かう方向のリンクを計算終了リンクとしたときのコストが最小となるリンクの組み合わせを第2推奨経路L2として抽出する。
【0023】
方向転換可否判定部14では、自車が現在位置において方向転換可能か否かが判定される。具体的には、この方向転換可否判定部14は、後方カメラ5によって撮影された自車後方の画像から自車後方を走行する後方車両を検出するとともに、連続する画像フレーム間での当該後方車両の位置の変化量から当該後方車両の自車近くに到達するまでの所要時間を予測する。そして、予測した所要時間と、自車が方向転換するのに要する平均的な時間とを比較して、自車が現在位置において方向転換可能か否かを判定する。また、方向転換可否判定部14は、地図データ格納装置6に格納されている地図データを読み出して、自車の現在位置の属性、すなわち、自車の現在位置が方向転換可能なコンビニエンスストアや駐車場などの施設であるのか、或いは道路上であるのか、道路上であれば道路種別や道幅、車線数、規制などの情報から方向転換可能な道路であるのかといった属性を判断し、このような自車の現在位置の属性も考慮して、方向転換可否を判定する。さらに、本実施形態の車載ナビゲーション装置が交通情報の配信サービスを行うサービスセンタ等からの交通情報を取得する機能を有している場合には、方向転換可否判定部14は、取得された交通情報から自車の現在位置における渋滞度合いなども考慮して、方向転換可否を判定することが望ましい。
【0024】
折り返し地点検出部15では、自車前方における所定の領域内で自車の方向転換が可能な折り返し地点が検出される。具体的には、この折り返し地点検出部15は、地図データ格納装置6に格納されている地図データを読み出して、自車が現在位置から前方に向かって走行したときに到達し得る所定領域内の地点であって、自車が方向転換することが可能なコンビニエンスストアや駐車場などの施設のうちで、自車の現在位置に最も近い地点を折り返し地点として検出する。ここで、所定の領域とは、自車の現在位置に近いと感じられる範囲の領域であり、例えば自車の現在位置から半径100mの範囲内の領域といったように、予め最適と思われる範囲を定めておくことで特定できる。
【0025】
経路表示判定部16では、経路探索部13で探索された第1推奨経路L1および第2推奨経路L2の表示/非表示が判定される。具体的には、この経路表示判定部16は、まず、自車の現在位置から車両前方に向かって進む経路である第1推奨経路L1のコストと、自車の現在位置から車両後方に向かって進む経路である第2推奨経路L2のコストとを比較して、第1推奨経路L1のコストの方が第2推奨経路L2のコストよりも小さければ、第1推奨経路L1のみを表示、第2推奨経路L2を非表示とする。また、経路表示判定部16は、第2推奨経路L2のコストの方が第1推奨経路L1のコストよりも小さければ、方向転換可否判定部14の判定結果を確認し、自車が現在位置において方向転換可能と判定されていれば、第1推奨経路L1と第2推奨経路L2の双方を表示とする。一方、方向転換可否判定部14で方向転換不可能と判定されている場合には、経路表示判定部16は、折り返し地点検出部15で検出された折り返し地点を第2推奨経路L2の経由地として付加し、この折り返し地点を経由地として付加した場合の第2推奨経路L2’のコストと第1推奨経路L1のコストとを比較する。そして、折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’のコストの方が第1推奨経路L1のコストよりも小さければ、第1推奨経路L1と折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’の双方を表示とし、折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’のコストよりも第1推奨経路L1のコストの方が小さい、或いは折り返し地点検出部15で折り返し地点が検出されていない場合には、第1推奨経路L1のみを表示、第2推奨経路L2(L2’)を非表示とする。
【0026】
ナビゲーション画像作成部17では、表示装置7に表示するナビゲーション画像として、経路表示判定部16で表示と判定された推奨経路を示す経路ラインを地図上に重畳したナビゲーション画像が作成される。具体的には、このナビゲーション画像作成部17は、地図データ格納装置6に格納されている地図データを読み出して、地図データに基づいて自車の現在位置周辺の地図画像を描画するとともに、経路表示判定部16で表示と判定された推奨経路の位置をこの地図画像上で特定し、当該地図画像上の推奨経路の位置に推奨経路であることを識別可能とする経路ラインを重畳して、ナビゲーション画像を作成する。このナビゲーション画像作成部17で作成されたナビゲーション画像の画像データは表示装置7に送られる。そして、表示装置7がこの画像データに基づいた表示処理を行うことで、表示装置7に、推奨経路を示す経路ラインを地図上に重畳したナビゲーション画像が表示されることになる。
【0027】
図3は、以上のように構成される本実施形態の車載ナビゲーション装置において、推奨経路を示す経路ラインを地図上に重畳したナビゲーション画像を表示装置7に表示させる際のナビゲーションコントローラ1による一連の処理の流れを示すフローチャートである。この図3の処理フローは、自車乗員によって操作デバイス4を用いて目的地設定、経路探索の指示が入力されることにより開始される。
【0028】
ナビゲーションコントローラ1は、自車乗員によって目的地設定、経路探索の指示が入力されると、まず、ステップS1において、GPS受信機2で受信されたGPS信号と車載センサ3で検出されたセンサ検出値とに基づいて、自車の現在位置および方位(自車の向き)を特定する。また、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS2において、操作デバイス4を用いた自車乗員の入力に基づいて、自車の目的地を設定する。
【0029】
次に、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS3において、地図データ格納装置6に格納されている地図データのうちで必要なデータを読み出して、読み出した地図データをRAMなどの内部メモリに一時的に格納する。そして、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS4において、ステップS3で読み出した地図データに基づいて、ステップS1で特定した自車の現在位置からステップS2で設定された目的地までの推奨経路として、自車の現在位置から車両前方に向かって進む経路である第1推奨経路L1と、自車の現在位置から車両後方に向かって進む経路である第2推奨経路L2との2通りの推奨経路を探索する。
【0030】
次に、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS5において、ステップS4で探索した第1推奨経路L1のコストと第2推奨経路L2のコストとを比較して、第2推奨経路L2のコストの方が第1推奨経路L1のコストよりも小さくなっているか否かを判定する。そして、第2推奨経路L2のコストの方が第1推奨経路L1のコストよりも小さいと判定した場合には、ナビゲーションコントローラ1は、次のステップS6において、後方カメラ5で撮影された自車後方の画像を取り込んで解析し、自車後方を走行する後方車両の検出などを行い、ステップS7において、この後方車両の自車への接近度合いや、自車の現在位置の属性などに応じて、自車が現在位置において方向転換可能か否かを判定する。
【0031】
このステップS7の判定の結果、現在位置での方向転換が可能であると判定した場合には、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS8において、自車の現在位置周辺の地図画像上に第1推奨経路L1を示す経路ラインと第2推奨経路L2を示す経路ラインとをそれぞれ重畳したナビゲーション画像の画像データを作成し、この画像データを表示装置7に供給する。これにより、表示装置7には、例えば図4に示すように、自車の現在位置P1周辺の地図画像上に、第1推奨経路L1を示す経路ラインと、第2推奨経路L2を示す経路ラインとが重畳されたナビゲーション画像が表示されることになる。
【0032】
一方、ステップS7の判定の結果、自車が現在位置において方向転換することが難しいと判定した場合には、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS9において、自車前方における所定の領域内に自車の方向転換が可能な地点が存在するか否かを判定して、このような地点が存在すれば現在位置に最も近い地点を折り返し地点とし、ステップS10において、この折り返し地点を経由地として付加した場合の第2推奨経路L2’のコストと第1推奨経路L1のコストとを比較して、折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’のコストの方が第1推奨経路L1のコストよりも小さいか否かを判定する。
【0033】
このステップS10の判定の結果、折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’のコストの方が第1推奨経路L1のコストよりも小さいと判定した場合には、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS11において、自車の現在位置周辺の地図画像上に第1推奨経路L1を示す経路ラインと、折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’を示す経路ラインとをそれぞれ重畳したナビゲーション画像の画像データを作成し、この画像データを表示装置7に供給する。これにより、表示装置7には、例えば図5に示すように、自車の現在位置P1周辺の地図画像上に、第1推奨経路L1を示す経路ラインと、折り返し地点P2を経由地として付加した第2推奨経路L2’を示す経路ラインとが重畳されたナビゲーション画像が表示されることになる。
【0034】
また、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS5で第2推奨経路L2のコストより第1推奨経路L1のコストの方が小さいと判定した場合や、ステップS9で自車前方における所定の領域内に自車の方向転換が可能な地点が存在しないと判定した場合、さらにはステップS10で折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’のコストよりも第1推奨経路L1のコストの方が小さいと判定した場合には、ステップS12へと処理を移行し、このステップS12において、自車の現在位置周辺の地図画像上に第1推奨経路L1を示す経路ラインを重畳したナビゲーション画像の画像データを作成し、この画像データを表示装置7に供給する。これにより、表示装置7には、自車の現在位置周辺の地図画像上に、第1推奨経路L1を示す経路ラインのみが重畳されたナビゲーション画像が表示されることになる。
【0035】
車載ナビゲーション装置では、表示装置7に以上のようなナビゲーション画像が表示されている状態で自車が走行を開始すると、自車の走行に伴って現在位置が変化することに応じて、表示装置7に表示されているナビゲーション画像が更新されることになる。ここで、第1推奨経路L1を示す経路ラインに加えて第2推奨経路L2を示す経路ライン、あるいは折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’を示す経路ラインを地図画像上に重畳したナビゲーション画像を表示させている場合には、ナビゲーションコントローラ1は、自車の走行に伴って変化する現在位置を監視して、ステップS13において、自車が第2推奨経路L2上を走行しているか否かを判定する。そして、自車が第2推奨経路L2上を走行していると判定した場合には、ステップS14において、第1の誘導経路L1を示す経路ラインの重畳表示を終了させる。これにより、その後は、第2推奨経路L2を示す経路ラインのみが地図画像上に重畳されたナビゲーション画像が表示装置7に表示されることになる。
【0036】
一方、自車が第1推奨経路L1上を走行していると判定(ステップS13で否定判定)した場合には、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS15において、自車の走行に伴って変化する第1推奨経路L1のコストと第2推奨経路L2のコスト、あるいは折り返し地点を経由地として追加した第2推奨経路L2’のコストとを比較して、第1推奨経路L1のコストが、第2推奨経路L2のコスト、あるいは折り返し地点を経由地として追加した第2推奨経路L2’のコスト以下となったか否かを判定する。そして、第1推奨経路L1のコストが、第2推奨経路L2のコスト、あるいは折り返し地点を経由地として追加した第2推奨経路L2’のコスト以下となった段階でステップS16へと処理を移行し、このステップS16において、第2の誘導経路L2を示す経路ライン、あるいは折り返し地点を経由地として追加した第2の推奨経路L2’を示す経路ラインの重畳表示を終了させる。これにより、その後は、第1推奨経路L1を示す経路ラインのみが地図画像上に重畳されたナビゲーション画像が表示装置7に表示されることになる。
【0037】
その後、表示装置7に以上のようなナビゲーション画像を表示させながら自車が走行を継続して目的地に近づくと、ナビゲーションコントローラ1は、ステップS17において自車の現在位置とステップS2で設定した目的地の位置情報とを比較して、自車が目的地に到着したか否かを判定する。そして、自車が目的地に到着したと判定されるまで表示装置7でのナビゲーション画像の表示を継続させ、自車が目的地に到着したと判定した段階で、表示装置7でのナビゲーション画像の表示を終了させて、一連の処理を終了する。
【0038】
以上、具体的な例を挙げて詳細に説明したように、本実施形態の車載ナビゲーション装置では、ナビゲーションコントローラ1が自車の現在位置から目的地までの推奨経路を探索するにあたって、自車の現在位置から車両前方に向かって進む経路である第1推奨経路L1と、自車の現在位置から車両後方に向かって進む経路である第2推奨経路L2との2通りの推奨経路を探索するようにしている。そして、第2推奨経路L2のコストが第1推奨経路L2のコストよりも小さいことを条件として、これら第1推奨経路L1を示す経路ラインと第2推奨経路L2を示す経路ラインとの双方を地図画像上に重畳したナビゲーション画像を表示装置7に表示させるようにしている。したがって、この車載ナビゲーション装置によれば、ナビゲーション画像を参照する自車のドライバに、第1推奨経路L1と第2推奨経路L2のうちで進むべき経路を自らの判断で選択させることができ、ドライバによる車両の運転を適切に補助することができる。
【0039】
また、本実施形態の車載ナビゲーション装置では、自車が現在位置において方向転換が可能か否かを判定して、現在位置での方向転換が可能であることも条件に加えて第1推奨経路L1を示す経路ラインと第2推奨経路L2を示す経路ラインとの双方を地図画像上に重畳したナビゲーション画像を表示装置7に表示させるようにすることで、方向転換が困難な場所での強引な方向転換を誘発するといった不都合を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態の車載ナビゲーション装置では、自車前方の所定の領域内で自車の方向転換が可能な折り返し地点を検出し、この折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’のコストが第1推奨経路L1のコストよりも小さい場合に、これら第1推奨経路L1を示す経路ラインと、折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’を示す経路ラインとの双方を地図画像上に重畳したナビゲーション画像を表示装置7に表示させるようにすることで、自車のドライバに、第1推奨経路L1と、折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’のうちで進むべき経路を自らの判断で選択させることができ、ドライバによる車両の運転を適切に補助することができる。
【0041】
以上、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明したが、以上の実施形態は本発明の一適用例を例示したものであり、本発明の技術的範囲は、以上の実施形態の説明で開示した内容に限定されるものではなく、これらの開示から容易に導き得る様々な代替技術も含まれることは勿論である。例えば、上述した車載ナビゲーション装置では、自車の現在位置から車両前方に向かって進む経路である第1推奨経路L1に加えて、自車の現在位置から車両後方に向かって進む経路である第2推奨経路L2も表示対象とするか否かの判定を、それぞれの経路のコストの比較によって行うようにしているが、より単純に、経路の長さの比較によって行うようにしてもよい。
【0042】
また、上述した車載ナビゲーション装置では、第2推奨経路L2のコストが第1推奨経路のコストよりも小さく、且つ、自車が現在位置において方向転換可能と判定された場合に、第1推奨経路L1と第2推奨経路L2との双方を地図上で識別可能に表示させるようにしているが、このような場合は、自車のドライバが進むべき経路として第2推奨経路L2を選択する可能性が高いことを考慮して、第1推奨経路L1は表示させずに、第2推奨経路L2のみを表示させるようにしてもよい。この場合には、第1推奨経路L1と第2推奨経路L2の双方を表示させる場合に比べて、ナビゲーション画像の見易さを向上させることができる。
【0043】
また、上述した車載ナビゲーション装置では、自車前方の所定の領域内で自車の方向転換が可能な折り返し地点が検出され、この折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’のコストが第1推奨経路L1のコストよりも小さい場合に、第1推奨経路L1と折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’との双方を地図上で識別可能に表示させるようにしているが、このような場合は、自車のドライバが進むべき経路として、折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’を選択する可能性が高いことを考慮して、第1推奨経路L1は表示させずに、折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’のみを表示させるようにしてもよい。この場合には、第1推奨経路L1と折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路L2’の双方を表示させる場合に比べて、ナビゲーション画像の見易さを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明を適用した車載ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーションコントローラの機能構成を示す機能ブロック図である。
【図3】推奨経路を示す経路ラインを地図上に重畳したナビゲーション画像を表示装置に表示させる際のナビゲーションコントローラ1による一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】自車の現在位置周辺の地図画像上に第1推奨経路を示す経路ラインと第2推奨経路を示す経路ラインとが重畳されたナビゲーション画像の一例を示す図である。
【図5】自車の現在位置周辺の地図画像上に第1推奨経路を示す経路ラインと折り返し地点を経由する第2推奨経路を示す経路ラインとが重畳されたナビゲーション画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ナビゲーションコントローラ
5 後方カメラ
6 地図データ格納装置
7 表示装置
13 経路探索部
14 方向転換可否判定部
15 折り返し地点検出部
16 経路表示判定部
17 ナビゲーション画像作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置から目的地までの推奨経路として、車両の現在位置から車両前方に向かって進む第1推奨経路と、車両の現在位置から車両後方に向かって進む第2推奨経路とを探索する経路探索手段と、
前記第2推奨経路のコストが前記第1推奨経路のコストよりも小さい場合に、前記第1推奨経路と前記第2推奨経路との双方を地図上で識別可能に表示する表示手段とを備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記第1推奨経路と前記第2推奨経路との双方を表示した後、車両が前記第2推奨経路上を走行していると判定されたときに、前記第1推奨経路の表示を終了することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記第1推奨経路と前記第2推奨経路との双方を表示した後、車両が前記第1推奨経路上を走行して、前記第1推奨経路のコストが前記第2推奨経路のコスト以下となったときに、前記第2推奨経路の表示を終了することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項4】
車両が現在位置において方向転換可能か否かを判定する方向転換可否判定手段を備え、
前記表示手段は、前記第2推奨経路のコストが前記第1推奨経路のコストよりも小さく、且つ、前記方向転換可否判定手段によって方向転換可能と判定された場合に、前記第1推奨経路と前記第2推奨経路との双方を表示することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項5】
車両前方の所定の領域内で車両の方向転換が可能な折り返し地点を検出する折り返し地点検出手段を備え、
前記表示手段は、前記折り返し地点を経由地として付加した場合の前記第2推奨経路のコストが前記第1推奨経路のコストよりも小さい場合に、前記第1の推奨経路と前記折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路との双方を表示することを特徴とする請求項1に記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項6】
車両の現在位置から目的地までの推奨経路として、車両の現在位置から車両前方に向かって進む第1推奨経路と、車両の現在位置から車両後方に向かって進む第2推奨経路とを探索する経路探索手段と、
車両が現在位置において方向転換可能か否かを判定する方向転換可否判定手段と、
前記第2推奨経路のコストが前記第1推奨経路のコストよりも小さく、且つ、前記方向転換可否判定手段によって方向転換可能と判定された場合に、前記第2推奨経路を地図上で識別可能に表示する表示手段とを備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項7】
車両の現在位置から目的地までの推奨経路として、車両の現在位置から車両前方に向かって進む第1推奨経路と、車両の現在位置から車両後方に向かって進む第2推奨経路とを探索する経路探索手段と、
車両前方の所定の領域内で車両の方向転換が可能な折り返し地点を検出する折り返し地点検出手段と、
前記折り返し地点を経由地として付加した場合の前記第2推奨経路のコストが前記第1推奨経路のコストよりも小さい場合に、前記折り返し地点を経由地として付加した第2推奨経路を地図上で識別可能に表示する表示手段とを備えることを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項8】
車両の現在位置から目的地までの推奨経路として、車両の現在位置から車両前方に向かって進む第1推奨経路と、車両の現在位置から車両後方に向かって進む第2推奨経路とを探索する経路探索ステップと、
前記経路探索ステップで探索された第2推奨経路のコストが第1推奨経路のコストよりも小さい場合に、前記第1推奨経路と前記第2推奨経路との双方を地図上で識別可能に表示する表示ステップとを有することを特徴とする経路表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−78532(P2007−78532A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267145(P2005−267145)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】