説明

車載レーダ装置

【課題】自車の走行に支障をきたす障害物と、障害になり得ない停止物とを精度よく区別して、衝突回避装置若しくは衝突被害軽減装置に於ける誤作動を防止させることのできる車載レーダ装置を得ることを目的とする。
【構成】所定の演算周期毎に前記物体の識別を行う物体識別部と、前記物体識別部が識別した前記物体と前記車両との間の相対的状態を判定するとともに、その判定結果に基づいて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方から他方へ切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されるレーダ装置、より詳しくは、ACC(Active Cruise Control)システムやプリクラッシュシステム等に使用される車載レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両同士若しくは車両と前方物体との衝突や車両の追突事故等を未然に防止する、若しくはこれらの衝突時に乗員に掛かる衝撃被害を軽減する装置として、自車と前方物体との衝突危険度を判断し、その衝突危険度に応じて所定の制御部を作動させることにより衝突回避または衝突時の被害軽減を図るようにした装置がいくつも提案されている。これらの従来の装置では、車両の前方物体を検出する部としてミリ波レーダやレーザーレーダ等の車載レーダ装置を用いるのが一般的である。
【0003】
例えば、ミリ波レーダは、前方物体と自車との相対距離や相対速度を検出することができる。このため、前方物体との相対速度と自車速度を比較することによって、その前方物体が移動している物体であるか、停止している物体であるかを識別することが可能である。この場合の停止している物体とは、その多くは停止車両、電柱や道路標識のポール、歩行者等、自車の走行にとっては障害に成り得る物体である。ところが、路上の標識板、マンホールの蓋や路上に転がった空き缶のように、その上部(若しくは下部)を通過しても自車の走行に全く支障を来さない物体も、検出した停止物体の中に含まれてしまう。
【0004】
しかしながら、ミリ波レーダの検知性能からすれば、物体の種類までも識別することは非常に困難であるため、ミリ波レーダを用いた前述の衝突被害軽減装置に於いて、実際には障害に成り得ない物体に応動して運転者の意図しないタイミングで衝突被害軽減装置が誤作動してしまう場合がある。
【0005】
これらの問題を解決する装置として、例えばレーザ光を上向きに照射する上方照射波の照射領域と、下向きに照射する下方照射波の照射領域とが一部重なり合うように前方に照射し、上方照射波と下方照射波とのそれぞれの反射強度から、照射波が反射した物体の種類を判定する物体検出装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−98220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、上方照射と下方照射の2方向に向けてレーザ光を照射させる機構的仕組みを必要とし、構造の複雑化やコストアップを招くことになる。更に、前方物体が自車の走行に支障を来さない停止物体であった場合でも、その材質や設置状態によっては、高い反射レベルを持つ物体となり得ることから、走行に支障を来たさない停止物であるかどうかを正確に識別できない恐れがある。
【0008】
この発明は、従来の装置に於ける前述のような課題を解消するためになされたもので、自車の走行に支障をきたす障害物と、障害になり得ない停止物とを精度よく区別して、衝突回避装置若しくは衝突被害軽減装置に於ける誤作動を防止させることのできる車載レーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車載レーダ装置は、車両に搭載され、前記車両の前方に電波を照射するとともに前記照射した電波が前記車両の前方に存在する物体から反射する反射波を受信し、前記受信した反射波に基づいて前記物体を検出する車載レーダ装置であって、前記反射波に基づいて前記車両と前記物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体の識別を行う物体識別部と、前記物体識別部が識別した前記物体と前記車両との間の相対的状態を判定するとともに、その判定結果に基づいて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方から他方へ切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備えるようにものである。
【0010】
又、この発明による車載レーダ装置は、車両に搭載され、前記車両の前方に電波を照射するとともに前記照射した電波が前記車両の前方に存在する物体から反射する反射波を受信し、前記受信した反射波に基づいて前記物体を検出する車載レーダ装置であって、前記反射波に基づいて前記車両と前記物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体が停止状態にある物体か否かの識別を行う物体識別部と、前記物体識別部が識別した停止状態にある物体と前記車両との相対位置状態に応じて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの何れか一方から他方に切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備え、前記状態判定部は、前記物体識別部により識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在し、前記停止状態にある物体と前記車両との間の距離が距離しきい値を下回る場合には、前記第1の角度検出部から前記第2の角度検出部に切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力するように前記切り替え制御を行なうようにしたものである。
【0011】
更に、この発明による車載レーダ装置は、車両に搭載され、前記車両の前方に電波を照射するとともに前記照射した電波が前記車両の前方に存在する物体から反射する反射波を受信し、前記受信した反射波に基づいて前記物体を検出する車載レーダ装置であって、前記反射波に基づいて前記車両と前記物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記反射波の入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体が停止状態にある物体か否かの識別を行う物体識別部と、前記物体識別部が識別した停止状態にある物体と前記車両との相対位置状態に応じて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの何れか一方から他方へ切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備え、前記状態判定部は、前記物判識別部により識別し
た停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在し、前記停止状態にある物体と前記車両との間の距離が複数の異なる値の距離しきい値を下回る毎に、前記第1の角度検出部に比べて前記第2の角度検出部により検出した前記入射角度の値を用いる前記演算周期の割合が高くなるように前記切り替え制御を行なうようにしたものである。
【0012】
又、この発明による車載レーダ装置は、車両に搭載され、前記車両の前方に電波を照射するとともに前記照射した電波が前記車両の前方に存在する物体から反射する反射波を受信し、前記受信した反射波に基づいて前記物体を検出する車載レーダ装置であって、前記反射波に基づいて前記車両と前記物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記反射波の入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体が停止状態にある物体か否かの識別を行う物体識別部と、前記物体識別部により識別した停止状態にある物体が、前記車両の走行に支障をきたす物体であるかを判定する障害物判定部と、前記物体識別部が識別した停止状態にある物体と前記車両との相対位置状態に応じて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの何れか一方から他方へ切り替えて、前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備え、前記状態判定部は、前記物体識別部により識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在するとき、前記車両が前記停止状態にある物体に接近する過程に於いて、前記障害物判定部が前記判定の結果の如何に関わらずその判定が確定した時点で、前記演算周期毎の前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部との前記切り替えを禁止し、前記第1の角度検出部のみにより検出した前記入射角度の値を前記物体識別部に入力するように前記切り替え制御を行なうようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
又、この発明による車載レーダ装置によれば、反射波に基づいて車両と物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体の識別を行う物体識別部と、前記物体識別部が識別した前記物体と前記車両との間の相対的状態を判定するとともに、その判定結果に基づいて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方から他方へ切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備えるようにしたので、第1の面方向の電波を受信して前方物体を幅広く検出する物体検出手法と、第2の面方向の電波を受信して特定対象の物体が障害物かどうか見分ける物体検出手法を、自車の前方の状況に応じて選択することができる。
【0014】
また、この発明による車載レーダ装置によれば、反射波に基づいて車両と物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体が停止状態にある
物体か否かの識別を行う物体識別部と、前記物体識別部が識別した停止状態にある物体と前記車両との相対位置状態に応じて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの何れか一方から他方に切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備え、前記状態判定部は、前記物体識別部により識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在し、前記停止状態にある物体と前記車両との間の距離が距離しきい値を下回る場合には、前記第1の角度検出部から前記第2の角度検出部に切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力するように前記切り替え制御を行なうようにしたので、車両前方の物体を幅広く検出する物体検出手法から特定の対象物が障害物か否かを見分ける物体検出手法へと即座に切り替えることができるため、接近する停止物体が障害物かどうか正確に判定することができる。
【0015】
更に、この発明による車載レーダ装置によれば、反射波に基づいて車両と物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記反射波の入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体が停止状態にある物体か否かの識別を行う物体識別部と、前記物体識別部が識別した停止状態にある物体と前記車両との相対位置状態に応じて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの何れか一方から他方へ切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備え、前記状態判定部は、前記物判識別部により識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在し、前記停止状態にある物体と前記車両との間の距離が複数の異なる値の距離しきい値を下回る毎に、前記第1の角度検出部に比べて前記第2の角度検出部により検出した前記入射角度の値を用いる前記演算周期の割合が高くなるように前記切り替え制御を行なうようにしたので、車両の前方の物体を幅広く検出する物体検出手法から特定の対象物が障害物か否かを見分ける物体検出手法へと重み付けを持つ切り替え制御が行われるため、車両の前方の物体の検出を継続しつつ、接近する停止物体が障害物か否かを正確に判定することができる。
【0016】
請求項8記載の発明によれば、反射波に基づいて前記車両と前記物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記反射波の入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体が停止状態にある物体か否かの識別を行う物体識別部と、前記物体識別部により識別した停止状態にある物体が、前記車両の走行に支障をきたす物体であるかを判定する障害物判定部と、前記物体識別部が識別した停止状態にある物体と前記車両との相対位置状態に応じて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの何れか一方から他方へ切り替えて、前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備え、前記状態判定部は、前記物体識別部により識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在するとき、前記車両が前記停止状態にある物体に接近する過程に於いて、前記障害物判定部が前記判定の結果の如何に関わらずその判定が確定した時点で、前記演算周期毎の前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部との前記切り替えを禁止し、前記第1の角度検出部のみにより検出した前記入射角度の値を前記物体識別部に入力するように前記切り替え制御を行なうようにしたので、障害物判定の結果
に関わらずその判定が確定した後は、前方の物体を広く検出する物体検出手法を実行することによって車両の前方の物体の検出遅れや未検出を回避することかできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1による車載レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による車載レーダ装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1による車載レーダ装置の動作を説明する説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による車載レーダ装置の動作を説明する説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2による車載レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
【図6】この発明の実施の形態2による車載レーダ装置に於ける、停止物に接近する状態と距離しきい値の関係を示すグラフである。
【図7】この発明の実施の形態2による車載レーダ装置に於ける、停止物に接近する状態と距離しきい値の関係を示すグラフである。
【図8】この発明の実施の形態3による車載レーダ装置に於ける、自車と前方物体との相対位置関係を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4による車載レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、この発明の実施の形態1による車載レーダ装置について説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による車載レーダ装置の構成を示すブロック図である。図1に於いて、車載レーダ装置は、送信アンテナ(図示せず)が送信するミリ波帯の電波が自車前方の物体に反射して戻ってくる反射電波を受信するためのレーダ受信部1と、レーダ受信部1からのレーダ信号を処理するレーダ信号処理部5と、レーダ信号処理部5からの信号に基づいて自車前方の物体を識別し、後述するように自車と物体との状態を判定する制御処理部10とから構成されている。
【0020】
レーダ受信部1は、路面と平行する第1の面としての水平面の方向の反射波を受信するための水平受信アンテナ3と、水平面の方向に対して直交する方向に延在する第2の面としての垂直面の方向の反射電波を受信するための垂直受信アンテナ2と、受信電波を処理する高周波回路部4により構成される。このレーダ受信部1は、後述する切り替え指示がない場合は水平受信アンテナ3により反射電波を受信するよう予め設定される。
【0021】
レーダ信号処理部5は、反射電波の発信元である前方物体と自車との距離と相対速度を検出する距離・相対速度検出部6と、垂直面方向の反射波の入射角を検出する垂直角度検出手部7と、水平面方向の反射波の入射角を検出する水平角度検出部8と、レーダ受信部1の出力信号を、垂直角度検出部7と水平角度検出部8の何れか一方に接続するための角度検出切り替え部9により構成される。
【0022】
レーダ信号処理部5は、高速フーリエ変換処理が可能なDSPやRAMやマイコン(CPU)等の装置を利用することによって実現する。又、前述の角度検出切り替え部9は、切り替え指示のない場合はレーダ受信部1の出力信号を第1の角度検出部としての水平角度検出部8へ接続するように予め設定される。尚、前述の距離、相対速度、入射角を算出
するには、反射波の振幅データや位相データを用いて求めることになるが、それらの算出方法についてはミリ波レーダ分野に於いて多くの技術が様々な媒体にて示されていることから、ここでの詳細説明は省略する。レーダ信号処理部5にて算出したデータは後段の制御処理部10へ入力される。
【0023】
制御処理部10は、物体識別部11と状態判定部12により構成される。物体識別部11では、自車と物体との距離、相対速度、反射電波の入射角度の夫々の情報を、1つの前方物体の持つ特性(パラメータ)情報となるよう統合・管理する。同時に、夫々の情報を距離データと角度データを用いて、直交座標(前後位置−左右位置)へと座標変換すれば、後段の状態判定処理が容易となる。
【0024】
状態判定部12では自車と前方物体との相対位置関係に基づいて、特定対象物体が存在するかどうかを常時判定する。ここで、特定対象物体とは、自車走行進路上に検出された停止状態の物体を意味する。状態判定部12は、特定対象物体を検出した場合、レーダ受信部1と角度検出切り替え部9に対して、夫々垂直受信アンテナ2と第2の角度検出部と
しての垂直角度検出部7に切り替えるよう切り替え指示信号を出力する。
【0025】
制御処理部10は、マイコン(CPU)の演算処理によって実現することができる。マイコンの処理は、所定の演算周期で動作を繰り返し続けるように設計される。車載用ミリ波レーダの場合、1演算周期が数10[msec]〜数100[msec]で動作しているものが一般的である。ただし、電波を送信してからレーダ信号処理部5の処理結果出力までの時間を要するため、1回の演算周期中に制御処理に割り当てられる処理時間は多くはない。
【0026】
図2は、この発明の実施の形態1による車載レーダ装置の動作を説明するフローチャートである。図2に於いて、ステップS21ではレーダ信号処理部5から出力される距離、相対速度、入射角度情報を取得する。前述の通り、水平受信アンテナ3によって反射電波を受信し、水平角度検出部8に於いて水平面方向の反射角度を算出するが、これらは前方に存在する物体を一応に幅広く検出することを目的とする検出手法であって、標準的にミリ波レーダは水平面方向に沿った物体検出を行う。
【0027】
次に、ステップS21にてレーダ信号処理部5より距離、相対速度、角度情報を取得した後に、ステップS22では物体識別処理の更新作業を実行する。同一物体における1演算周期毎のパラメータ変化量は小さいとの観点に基づいて、前回周期データと最新周期データを照らし合わせて関連付けすることにより更新作業は完了する。ステップS23では、極座標(距離−角度)から直交座標(前後位置−左右位置)へと座標変換する座標変換処理を実行する。ここでは、その座標変換処理の変換式は省略する。尚、ステップS22での物体識別処理の更新作業は、後段のステップS23での座標変換処理の後に実行するようにしてもよい。
【0028】
続いて、ステップS24に於いて、状態判定処理を実行する。図3は、この発明の実施の形態1による車載レーダ装置の動作を説明する説明図であり、ステップS23での座標変換処理の後の、自車と前方物体の相対位置関係を示した俯瞰図の一例である。図3に於いて、自車101は、自車走行進路300の上を前方に向けて走行しているが、自車101の前方には、自車走行進路300内の停止物体201、自車走行進路300外の停止物体202、203、204、205、及び移動物体401、402が存在している。
【0029】
図3に示す瞬間では、自車走行進路300内の前方に停止状態の物体体201を検出しているが、この状況のまま自車101が前進するに連れて自車101と停止物体201との間の距離が狭まることは明らかである。
【0030】
前述した通り、現状ミリ波レーダの検知性能に於いて、前方物体の大きさや重量を識別することは非常に困難である。その理由は、多くのミリ波レーダの物体認識方法は前方物体が反射する電波強度に応じた物体認識技術に基づいているからである。従って自車に対する障害物か否かに係わらず、路上の空き缶であっても反射電波強度が大きければ前方停止物体として認識される。
【0031】
従って、図2のステップS24での状態判定処理に於いて、水平受信アンテナ3により水平面方向の電波を受信し、水平角度検出部8により前方物体を幅広く検出するようにした物体検出手法により、自車走行進路300上に停止物体201を検出した場合は、ステップS25に於いてレーダ受信部1と角度検出切り替え部9に対して切り替え指示信号を出力する。これにより次の演算周期からは、垂直受信アンテナ2により反射電波を受信し、垂直角度検出部7により垂直面方向の反射角を検出するようにする。これは、前方物体を広く検出する手法から特定物体が障害物かどうか見分ける手法への切り替えを意味する。
【0032】
ここで、垂直面方向の入射角度検出に基づく障害物の判定方法について概略を説明する。図4は、この発明の実施の形態1による車載レーダ装置の動作を説明する説明図であり、(a)は、自車101の進行方向前方に障害物である停止車両2011が存在している場合、(b)は、自車101の進行方向前方に障害物ではない空き缶2012で存在している場合を示している。図4に於いて、自車101にはこの発明の実施の形態1による車載レーダ装置がレーダ取り付け高さH0にて取り付けられており、破線で示す垂直方向上限H1と垂直方向下限H2のレーダ電波範囲内でミリ波レーダを照射している。図4の(a)の場合は停止車両2011からのレーダ電波の反射エリアはR1であり、図4の(b)の場合は空き缶2012からのレーダ電波の反射エリアはR2、反射角はαである。
【0033】
この発明の実施の形態1による車載レーダ装置によれば、垂直面方向の入射角の検出により、レーダ取り付け高さH0を基準とする電波反射点の角度(仰角側角度をプラス、俯角側角度をマイナスとする)を算出することができる。例えば、図4の(a)に示す場合では、停止車両の後部全面が反射エリアR1となり、この反射エリアR1内の何れかの部分を反射角として検出する。一般的にはその反射角はレーダ取り付け高さH0付近になる。一方、図4の(b)に示す場合では、空き缶2012の高さ程度の反射エリアR2となり、その反射角αはマイナス側、つまり俯角側角度に検出される。
【0034】
さらに、図4に示す状態で前方物体に接近する場合について考察すると、(a)の場合では、電波反射点と電波受信位置(レーダ取り付け高さH0)に大きな変動がないため、自車101と停止車両2011との接近に伴う反射角の変化量は小さい。ところが(b)の場合では、自車101と空き缶2012との接近に伴い電波反射点はレーダ電波範囲の下限H2方向へと移動して反射角はマイナス側へ振れる。以上のことから、反射角がマイナス範囲内にあって、接近に伴い反射角がマイナス側に振れる物体は、障害物にならないものと判断できる。
【0035】
以上述べたように、この発明の実施の形態1による車載レーダ装置によれば、水平面方向の電波を受信して前方物体を幅広く検出する物体検出手法と、垂直面方向の電波を受信して特定対象の物体が障害物かどうか見分ける物体検出手法を、自車前方の状況に応じて選択して切り替えるようにしているので、接近する停止物体が障害物かどうか正確に判定することができる。
【0036】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による車載レーダ装置について説明する。図5は、この
発明の実施の形態2による車載レーダ装置の構成を示すブロック図である。ここで、図1と同一符号は夫々同一または相当部分を示すのでその説明は省略する。図5に於いて、停止物判定部13は、図2に於けるステップS22での物体識別処理11による物体識別処理の更新の際に、夫々の検出物体の持つ相対速度情報と自車速度情報とを比較して、両者が同等の値ならば検出物体を停止物体と判断する。
【0037】
走行進路推定部14は、車速情報とヨーレートセンサー情報(若しくは操舵角センサー情報)に基づいて、直線進路のみならず曲線進路を推定する。車速情報とヨーレート情報を用いた予測進路の算出方法は、一般的に知られているためここでは説明を省略する。走行進路推定部14による走行進路の推定によって、自車走行進路上の停止物体の存在を認識することができる。尚、車速やヨーレート情報等の車両特性に係わる情報は、CAN通信部やシリアル通信部を介して外部制御装置(図示せず)から取得することができる。
【0038】
図6の(a)は、例えば図4の(b)で示した自車101が停止物体である空き缶2012へ接近する状況を、横軸を経過時間、縦軸を物体間距離で表した図である。実線Xは、停止物体に接近中の距離軌跡を表し、物体間の距離が時間の経過と共に減少している(即ち接近している)ことを示している。図6の(b)は、水平方向検出と垂直方向検出のどちらの検出方法を選択するか示すもので、距離軌跡Xに対応して垂直角度検出部7と水平角度検出部8の何れを用いるかを演算周期単位の割合で表示している。つまり、垂直角度検出部7と水平角度検出部8の何れかを、例えば常時接続する場合は100%、10回の演算周期中に水平角度検出部8へ8回切り替え垂直角度検出部7に2回切り替えする場合は、水平方向検出は80[%]、垂直方向検出は20[%]となる。
【0039】
所定の距離しきい値Aは、例えば30[m]の固定値であり、図6では、物体間距離が30[m]まで水平角度検出部8に常時(100%)接続し、所定の距離しきい値Aである30[m]を下回った時点から垂直角度検出部7に常時(100%)接続する切り替え制御方法を示したものである。これによって、前方の停止物体と自車との距離が所定の距離しきい値Aを下回った時点で、前方物体を幅広く検出する物体検出手法である水平方向検出から特定対象が障害物か否かを見分ける物体検出手法である垂直方向検出へと即座に切り替えることができる。これによって、接近する停止物体が障害物か否かを正確に判定することができる。
【0040】
尚、距離しきい値Aは複数設定してもよい。図7は、この発明の実施の形態2による車載レーダ装置に於ける、停止物に接近する状態と距離しきい値の関係を示すグラフであり、3つの距離しきい値B、C、Dを設定した場合を示す。例えば3つの距離しきい値B、C、Dは、それぞれ60[m]、40[m]、20[m]に予め設定されており、物体間距離が距離しきい値B、C、Dを下回る毎に水平角度検出部8から垂直角度検出部7へと処理周期毎に切り替える割合を変化させる、つまり重み付けするようにしている。
【0041】
近距離になるに従って垂直角度検出部7に切り替える割合を高くするのは、次の理由による。即ち、図4の(b)に示すように空き缶2012が遠方にあった場合、反射エリアR2は極端に狭く空き缶2012の検出は困難である。又、自車101が空き缶2012に接近中であっても垂直面方向の角度変化量は微小のため、空き缶2012が障害物に該当するかどうか正確に判断することは難しい。更に、自車101の前方にスペースがある場合、他車が割り込んでくる可能性も十分にあることから、垂直方向の検知ばかりではなく、水平方向の検知の割合を残すことによって、自車前方の検出状況を更新させる必要がある。一方、空き缶2012等の路上落下物が近くにある場合、自車101がこれに接近するに従ってその路上落下物の検出がし易くなり、電波の反射角度の変化量も大きくなることから、路上落下物が障害物かどうか正確に判定することができる。
【0042】
以上のことから、自車の前方の停止物体との距離が1つ以上の所定の距離しきい値を下回る度に、前方物体を幅広く検出する物体検出手法である水平方向検出から、特定対象が障害物かどうか見分ける物体検出手法である垂直方向検出へと、重み付けを持つ切り替え制御が行われるため、前方物体の検出を継続しつつ接近する停止物体が障害物かどうかを正確に判定することができる。
【0043】
尚、距離しきい値は、固定値に限定せずに可変値であってもよい。例えば、車両に搭載された前述の衝突被害軽減装置の場合、前方停止物体との衝突の可能性を事前に予測してドライバーに対して警報を発するとき、自車と前方停止物体の間の相対速度と衝突予測時間(TTC)とに基づいて算出された警報作動距離を用いている。そこでこれと同様に、相対速度と所定の衝突予測時間とを用いて算出した距離しきい値を演算周期毎に算出するようにしてもよい。
【0044】
前述の距離しきい値の算出式は、例えば次式(1)のように表すことができる。

距離しきい値=相対速度[m/s]×(衝突予測時間[sec]+α[sec])
・・・・・・式(1)
ここで、αは停止物体が障害物かどうかを判定するために必要な判定時間である。
【0045】
つまり、式(1に示すように、衝突被害軽減装置の警報が作動する警報作動距離よりも(相対速度×α)[m]だけ遠方である距離の度合いに応じて垂直角度検出部7へ切り替える演算周期の割合を高くすることによって、警報が作動する前に障害物判定を完了することができるので、被害軽減装置に於ける誤作動回避が可能になる。このように、停止物体が障害物かどうか判定する場合に、停止物体と自車との相対速度に応じた距離しきい値を設定することによって、自車の走行状況に応じた適正なタイミングで切り替えが行われる。
【0046】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による車載レーダ装置について説明する。図8は、この発明の実施の形態3による車載レーダ装置に於ける、自車と前方物体との相対位置関係を示す説明図であり、前述の図2に於けるステップS23での標変換処理の後の、自車と前方物体の相対位置関係を示す俯瞰図の一例である。図8に示すように、自車走行進路300上に停止物体201が存在し、その距離よりも更に近い位置に移動物体403が存在する場合、停止物体201が障害物であるか否かに関わらず、他車が割り込んでくる可能性が十分に考えられる。
【0047】
前述の実施の形態1及び実施の形態2に示したとおり、停止物体が障害物かどうか判定するために水平方向検出から垂直方向検出に切り替えた場合、若しくは垂直方向検出の割合が高い状態にある場合には、水平方向検出により検出ができる筈の割り込み車の発見が遅れたり、検出自体を見逃してしまう可能性がある。しかし前述の衝突被害軽減装置に於いて、その装置の誤作動以上に避けねばならないのが装置の不作動である。
【0048】
従って、この発明の実施の形態3によれば、図8に示すように、自車前方の停止物体201より近距離に移動物体を検出する場合には、水平方向検出から垂直方向検出への切り替えを禁止する。又、既に垂直方向検出に切り替えが完了している場合、若しくは垂直角度検出部7への演算周期の割合が高くなるような切り替え制御が行われている場合には、即座に水平角度検出部8へ切り替える、若しくは水平方向検出の演算周期の割合が高くなるように段階的に切り替え制御を行う。
【0049】
このように、この発明の実施の形態3によれば、前述の切り替え制御中であるか非制御中であるかを問わず、自車前方への他車の割り込みの可能性が予測される場合は、水平方向検出を重視した処理を実行するため、割り込み車両を確実に検出することができる。
【0050】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4による車載レーダ装置について説明する。図9は、この発明の実施の形態4による車載レーダ装置の構成を示すブロック図である。ここで、図1及び図5と同一符号は夫々同一または相当部分を示すのでその説明は省略する。図9に於いて、15は障害物判定部であり、その障害物判定処理の概略については前述の実施の形態1の中で説明したとおりである。
【0051】
又、この実施の形態4に於いても、図6乃至図7にて説明したように、自車の走行進路上の停止物体に接近する過程に於いて、水平方向検出から垂直方向検出へ即座に、若しくは段階的に切り替えることによって、前方物体検出を継続しつつ接近する停止物体が障害物かどうかを正確に判定することができる。
【0052】
障害物判定部15により、前方物体が障害物か否かの判定が完了した場合、状態判定部12は判定結果に関わらず水平角度検出部8に即座に復帰させるよう角度検出部の切り替えを制御を行う。これにより、前方物体の検出遅れや未検出を回避することかできる。
【符号の説明】
【0053】
1 レーダ受信部 2 垂直受信アンテナ
3 水平受信アンテナ 4 高周波回路部
5 レーダ信号処理部 6 距離・相対速度検出部
7 垂直角度検出手部 8 水平角度検出部
9 角度検出切り替え部 10 制御処理部
11 物体識別部 12 状態判定部
101 自車 300 自車走行進路
201、202、203、204、205 停止物体
2012 空き缶 403 移動物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の前方に電波を照射するとともに前記照射した電波が前記車両の前方に存在する物体から反射する反射波を受信し、前記受信した反射波に基づいて前記物体を検出する車載レーダ装置であって、
前記反射波に基づいて前記車両と前記物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、
前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、
前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、
前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体の識別を行う物体識別部と、
前記物体識別部が識別した前記物体と前記車両との間の相対的状態を判定するとともに、その判定結果に基づいて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方から他方へ切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部と、
を備えたことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項2】
車両に搭載され、前記車両の前方に電波を照射するとともに前記照射した電波が前記車両の前方に存在する物体から反射する反射波を受信し、前記受信した反射波に基づいて前記物体を検出する車載レーダ装置であって、
前記反射波に基づいて前記車両と前記物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、
前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、
前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、
前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体が停止状態にある物体か否かの識別を行う物体識別部と、
前記物体識別部が識別した停止状態にある物体と前記車両との相対位置状態に応じて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの何れか一方から他方に切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備え、
前記状態判定部は、前記物体識別部により識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在し、前記停止状態にある物体と前記車両との間の距離が距離しきい値を下回る場合には、前記第1の角度検出部から前記第2の角度検出部に切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力するように前記切り替え制御を行なう、
ことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項3】
車両に搭載され、前記車両の前方に電波を照射するとともに前記照射した電波が前記車両の前方に存在する物体から反射する反射波を受信し、前記受信した反射波に基づいて前記物体を検出する車載レーダ装置であって、
前記反射波に基づいて前記車両と前記物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、
前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、
前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、
前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記反射波の入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体が停止状態にある物体か否かの識別を行う物体識別部と、
前記物体識別部が識別した停止状態にある物体と前記車両との相対位置状態に応じて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの何れか一方から他方へ切り替えて前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備え、
前記状態判定部は、前記物判識別部により識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在し、前記停止状態にある物体と前記車両との間の距離が複数の異なる値の距離しきい値を下回る毎に、前記第1の角度検出部に比べて前記第2の角度検出部により検出した前記入射角度の値を用いる前記演算周期の割合が高くなるように前記切り替え制御を行なう、
ことを特徴とする車載レーダ装置。
【請求項4】
前記距離しきい値は、予め設定された固定の距離しきい値である、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車載レーダ装置。
【請求項5】
前記距離しきい値は、前記距離・相対速度検出部により判定した停止状態にある物体と前記車両との間の相対速度に基づいて算出される可変の距離しきい値である、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車載レーダ装置。
【請求項6】
前記状態判定部は、前記物体識別部が識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在し、前記車両に対して前記停止状態にある物体までの距離より近い距離に移動状態にある物体が存在する場合には、前記第1の角度検出部から前記第2の角度検出部への切り替えを禁止し、前記第1の角度検出部のみにより検出した前記入射角度の値を前記物体識別部に入力するように前記切り替え制御を行なう、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうちの何れか一項に記載の車載レーダ装置。
【請求項7】
前記状態判定部は、前記物体識別部が識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在し、前記車両に対して前記停止状態にある物体までの距離より近い距離に移動状態にある物体が存在する場合には、前記第2の直角度検出部に比べて前記第1の角度検出部により検出した前記入射角度の値を用いる前記演算周期の割合が高くなるように前記切り替え制御を行なう、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうちの何れか一項に記載の車載レーダ装置。
【請求項8】
車両に搭載され、前記車両の前方に電波を照射するとともに前記照射した電波が前記車両の前方に存在する物体から反射する反射波を受信し、前記受信した反射波に基づいて前記物体を検出する車載レーダ装置であって、
前記反射波に基づいて前記車両と前記物体との間の距離及び相対速度を検出する距離・相対速度検出部と、
前記車両の走行する路面と平行する第1の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第1の角度検出部と、
前記第1の面と直交する第2の面の延在する方向の前記反射波の入射角度を検出する第2の角度検出部と、
前記距離・相対速度検出部が検出した前記距離及び相対速度の値と、前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの一方が検出した前記反射波の入射角度の値とが入力され、これらの入力された値を用いて所定の演算周期毎に前記物体が停止状態にある物
体か否かの識別を行う物体識別部と、
前記物体識別部により識別した停止状態にある物体が、前記車両の走行に支障をきたす物体であるかを判定する障害物判定部と、
前記物体識別部が識別した停止状態にある物体と前記車両との相対位置状態に応じて、次回の前記演算周期に於いて前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部とのうちの何れか一方から他方へ切り替えて、前記物体識別部に前記入射角度の値を入力する切り替え制御を行なう状態判定部とを備え、
前記状態判定部は、前記物体識別部により識別した停止状態にある物体が前記車両の走行進路上に存在するとき、前記車両が前記停止状態にある物体に接近する過程に於いて、前記障害物判定部が前記判定の結果の如何に関わらずその判定が確定した時点で、前記演算周期毎の前記第1の角度検出部と前記第2の角度検出部との前記切り替えを禁止し、前記第1の角度検出部のみにより検出した前記入射角度の値を前記物体識別部に入力するように前記切り替え制御を行なう、
ことを特徴とする車載レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202815(P2012−202815A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67527(P2011−67527)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】