Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
車載信号処理装置および信号処理方法
説明

車載信号処理装置および信号処理方法

【課題】車速センサが出力する車速パルスから車速や走行距離を計算する際に用いる係数を、車両上における電波の受信状態が悪い状況であっても直ちに決定可能にする。
【解決手段】車速パルス信号に基づき車速又は走行距離を算出する情報処理部110と、パルス信号の特性を表す速度パルス係数の情報を保持する不揮発性記憶部120と、車両に搭載されるオドメータが表示しているオドメータ数値の入力を受け付けるオドメータ数値入力部113と、互いに異なる2つの地点のそれぞれにおいて入力された2つのオドメータ数値の差分を表す第1の走行距離を算出し、前記2つの地点間の移動に関し入力された前記車速パルス信号と前記速度パルス係数とに基づいて第2の走行距離を算出し、前記第1の走行距離と第2の走行距離とに基づいて前記速度パルス係数を修正する速度パルス係数修正部110とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側から出力される車速パルス信号に基づいて車速および走行距離の少なくとも一方を算出する車載信号処理装置および信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、乗用車や業務用の各種車両には車速等の車両の情報を必要とする様々な車載器が搭載されている。例えば、業務用のトラック等の車両には、運行状態を表す車速等の情報を定期的に取得して自動的に記録するデジタルタコグラフや、事故などの際にカメラで撮影した画像や車速などの情報を記録するドライブレコーダが搭載されている。また、車速等の情報を取得してリアルタイムで表示する計器板ユニットも全ての車両に搭載されている。
【0003】
ところで、一般的な車両においては、車速の情報を得るために変速機の出力軸の近傍に車速センサが設置されている。この車速センサは、変速機の出力軸が所定量回動する毎に1つのパルス信号を出力する。従って、車速センサから出力されるパルス信号(すなわち車速パルス)のパルス周期や単位時間内のパルス数に基づいて現在の車速を把握したり、パルス数の計数により走行距離を把握することが可能である。
【0004】
また、4輪自動車のスピードメータの指示に関しては、JIS規格において、車速が60km/hの時に、車速センサの駆動回転速度が637rpmになるように規定されている。また、駆動軸1回転あたりの車速センサ発生パルス数が2、4、8、16、20、25のいずれかの値になるように規定されている。
【0005】
つまり、駆動軸1回転あたりの車速センサ発生パルス数は、それぞれの車両の仕様に応じて異なる可能性がある。例えば、このパルス数が4の車両とパルス数が8の車両とでは、同じ速度で走行している時であっても、車速パルスの周期が大きく異なる。また、例えば車両のタイヤのサイズ等が変化したり、長期間の走行による摩耗のためタイヤの外径が変化すると、車速パルスの周期と実際の車速との関係に変化が生じる。
【0006】
実際には、車両を製造するメーカが、該当車種を設計する際に、あるいは仕様を変更する際に、その車両に搭載する車速センサの特性、すなわち駆動軸1回転あたりの車速センサ発生パルス数を決定することになる。
【0007】
一方、例えば一般のユーザや企業等は、車両を購入した後で、この車両に様々な車載器、例えばカーナビゲーション装置、ドライブレコーダ、デジタルタコグラフなどを搭載する可能性がある。このような車載器は、それが搭載される車両の仕様を事前に把握しているわけではないため、車載器側が想定している車速パルスの特性と、実際に車両側から出力される車速パルスの特性とが一致しない可能性がある。その結果、車載器は間違った係数を用いて車両の速度あるいは走行距離を算出することになり、速度や走行距離を正しく認識できない状況になる。従って、何らかの方法で、実際に車両側から出力される車速パルスの特性と、車載器側が想定している車速パルスの特性とを整合させる必要がある。
【0008】
車両上の車速センサが出力する車速パルスに関し、駆動軸1回転あたりのパルス数を自動的に把握するための技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された車両運行管理システムにおいては、車両に搭載したGPS(Global Positioning System)受信機を用いて車両の現在位置を把握し、位置と時刻との演算により得られる速度情報を用いて前記パルス数を決定することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−133046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のようにGPSを利用する場合には、車両上で常に複数のGPS衛星からの電波を受信できる状態でなければならない。しかし、現実には車両が市街地で高層ビル群の間を走行する場合や、トンネル内を通行する場合や、高い樹木が立ち並ぶ森林を走行する場合などは、車両の上空からの電波が遮られる状態になり、一時的にGPSで現在位置を演算できない状態になる。
【0011】
つまり、特許文献1の技術では、車両上における電波の受信状態が良好な時でなければ、実際に車両側から出力されている車速パルスの特性が、想定している状態と一致しているかどうかを把握できず、車速や走行距離の計算に用いる係数を校正することができない。
【0012】
例えば、車両上に新たな車載器を搭載した時や、車両のタイヤを交換した時や、タイヤの摩耗によりタイヤの外径が変化したような場合には、車速や走行距離の計算に用いる係数を決定したりそれを校正する必要が生じる。しかし、車両上でGPSの電波を良好に受信できない場合には、必要な情報が得られないので運転者等が希望する時であっても直ちに係数を決定することができない。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車速センサが出力する車速パルスから車速や走行距離を計算する際に用いる係数を、車両上における電波の受信状態が悪い状況であっても直ちに決定することが可能な車載信号処理装置および信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車載信号処理装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 車両側から出力される車速パルス信号を入力する信号入力端子と、
前記信号入力端子に入力される車速パルス信号に基づいて車速および走行距離の少なくとも一方を算出する情報処理部と、
車速又は走行距離と前記車速パルス信号の特性との対応関係を表す速度パルス係数の情報を保持する不揮発性記憶部と、
車両に搭載されるオドメータが表示している値に相当するオドメータ数値の入力を受け付けるオドメータ数値入力部と、
互いに異なる2つの地点のそれぞれにおいて前記オドメータ数値入力部に入力された2つのオドメータ数値の差分を表す第1の走行距離を算出し、前記2つの地点間の移動に関し入力された前記車速パルス信号と前記速度パルス係数とに基づいて第2の走行距離を算出し、前記第1の走行距離と第2の走行距離とに基づいて前記速度パルス係数を修正する速度パルス係数修正部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の車載信号処理装置であって、
前記オドメータ数値入力部は、車両が実質的に走行を停止している状態に限って前記オドメータ数値の入力を受け付け、
前記速度パルス係数修正部は、車両が走行を停止している状態の2つの地点の間について、前記第1の走行距離および第2の走行距離を算出すること。
(3) 上記(1)に記載の車載信号処理装置であって、
車両の現在位置を表す位置情報を入力する位置情報入力部、を更に備え、
前記速度パルス係数修正部は、前記位置情報入力部が最新の位置情報を取得可能な状態であれば、前記位置情報の変化から算出される速度と、入力された前記車速パルス信号とに基づいて前記速度パルス係数を修正すること。
【0015】
上記(1)の構成の車載信号処理装置によれば、車両上において電波を受信できない状況であっても、運転者等が希望する時に、前記オドメータ数値に基づいて前記速度パルス係数を決定することができる。オドメータ(積算走行距離計)は自動車等のほとんどの車両に搭載されており、常に正しい走行距離を表示していると考えられるので、車両の状況の変化とは無関係にいつでも前記速度パルス係数を決定できる。
上記(2)の構成の車載信号処理装置によれば、車両の走行停止状態でのみ前記オドメータ数値が入力されるので、数値の読み取り及び入力の間に数値の変化が生じるのを防止でき、誤差の発生を抑制できる。
上記(3)の構成の車載信号処理装置によれば、車両の位置情報の変化に基づいて前記速度パルス係数を修正することにより、タイヤの交換や摩耗によるタイヤ径の変化に対しても、前記速度パルス係数を正しく校正することが可能である。
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係る信号処理方法は、下記(4)を特徴としている。
(4) 車両側から出力される車速パルス信号を入力し、前記車速パルス信号のパルス周期もしくはパルス数に基づいて車速および走行距離の少なくとも一方を算出する信号処理方法であって、
車速又は走行距離と前記車速パルス信号の特性との対応関係を表す速度パルス係数の情報を保持し、
車両に搭載されるオドメータが表示している値に相当するオドメータ数値の入力を受け付け、
互いに異なる2つの地点のそれぞれにおいて入力された2つのオドメータ数値の差分を表す第1の走行距離を算出し、
前記2つの地点間の移動に関し入力された前記車速パルス信号と前記速度パルス係数とに基づいて第2の走行距離を算出し、
前記第1の走行距離と第2の走行距離とに基づいて前記速度パルス係数を修正すること。
【0017】
上記(4)の構成の信号処理方法によれば、車両上において電波を受信できない状況であっても、運転者等が希望する時に、前記オドメータ数値に基づいて前記速度パルス係数を決定することができる。
【0018】
前述した目的を達成するために、本発明に係る信号処理プログラムは、下記(5)を特徴としている。
(5) 車両側から出力される車速パルス信号を入力し、前記車速パルス信号のパルス周期もしくはパルス数に基づいて車速および走行距離の少なくとも一方を算出するための所定のコンピュータが実行可能な信号処理プログラムであって、
車速又は走行距離と前記車速パルス信号の特性との対応関係を表す速度パルス係数の情報の初期値を決定するステップと、
車両に搭載されるオドメータが表示している値に相当するオドメータ数値の入力を受け付けるステップと、
互いに異なる2つの地点のそれぞれにおいて入力された2つのオドメータ数値の差分を表す第1の走行距離を算出するステップと、
前記2つの地点間の移動に関し入力された前記車速パルス信号と前記速度パルス係数とに基づいて第2の走行距離を算出するステップと、
前記第1の走行距離と第2の走行距離とに基づいて前記速度パルス係数を修正するステップと
を有すること。
【0019】
上記(5)の構成の信号処理プログラムをコンピュータで実行することにより、車両上において電波を受信できない状況であっても、運転者等が希望する時に、前記オドメータ数値に基づいて前記速度パルス係数を決定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車載信号処理装置および信号処理方法ならびに信号処理プログラムによれば、車速センサが出力する車速パルスから車速や走行距離を計算する際に用いる係数を、車両上における電波の受信状態が悪い状況であっても直ちに決定することが可能になる。オドメータは自動車等のほとんどの車両に搭載されており、常に正しい走行距離を表示していると考えられるので、車両の状況の変化とは無関係にいつでも前記速度パルス係数を決定できる。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施形態の車載信号処理装置の電気回路構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した車載信号処理装置の係数決定処理を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図1に示した車載信号処理装置の速度Vgps取得処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、図1に示した車載信号処理装置の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の車載信号処理装置および信号処理方法ならびに信号処理プログラムに関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0024】
<装置の構成>
本実施形態における車載信号処理装置100の電気回路構成例が図1に示されている。図1に示した車載信号処理装置100は、無線通信機能を搭載しており、様々な情報を収集するテレマティクス車載端末として機能するように構成されている。また、車両に搭載された車載信号処理装置100と車外に設置されたサーバ等との間で必要に応じてデータ通信を行うことができる。勿論、本発明は、テレマティクス車載端末以外の様々な車載器、例えばドライブレコーダ、デジタルタコグラフ、カーナビゲーション装置などに適用することも想定される。
【0025】
図1に示す構成例では、車載信号処理装置100の本体に、制御部110、通信モジュール111、GPSモジュール112、外部インタフェース(I/F)113、表示部114、電源部115、速度インタフェース116、回転インタフェース117、デジタル入力インタフェース118、外部インタフェース119、および不揮発性メモリ120が備わっている。
【0026】
制御部110は、マイクロコンピュータにより構成されている。このマイクロコンピュータは、予め組み込まれているプログラムを実行することにより、この車載信号処理装置100に必要とされる機能を実現するための制御を行う。制御部110の具体的な動作については後で説明する。
【0027】
通信モジュール111は、車両に搭載された通信アンテナ11と接続されており、通信アンテナ11を利用して無線通信を行うための機能を有している。具体的には、例えば移動体通信サービスを提供する通信設備の無線基地局との間でデータ通信を行い、この無線基地局を経由して所定のサーバとの間で通信することが可能である。
【0028】
GPSモジュール112は、車両に搭載されたGPSアンテナ12と接続されている。GPSモジュール112は、GPSアンテナ12により受信される複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波に基づき、計算を行って車両の現在位置を把握することができる。
【0029】
外部インタフェース113は、様々な外部機器を車載信号処理装置100に接続するための通信インタフェースである。図1に示した例では、操作部13が外部インタフェース113に接続してある。操作部13は、運転者や作業者からの入力操作を受け付け可能なテンキー等のボタンを備えている。
【0030】
表示部114は、液晶表示パネル等により構成されており、数値や文字などを必要に応じて表示することができる。表示部114は、車載信号処理装置100の動作状態などを運転者あるいは作業者に知らせるために利用される。
【0031】
電源部115は、車両のバッテリーなどが含まれる車両電源14と接続されている。すなわち、車両のエンジンキーの状態に連動して、車両電源14から電力が供給されると、電源部115は車載信号処理装置100の各部に所定の電力を供給する。
【0032】
速度インタフェース116は、車両に備わっている速度センサ15と接続されている。この速度センサ15は、車両の変速機の出力軸が所定量回動する毎に車速パルスを出力する。速度インタフェース116は、速度センサ15から出力される車速パルスの信号を制御部110の処理に適した信号に変換する。
【0033】
回転インタフェース117は、車両に備わっているエンジン回転センサ16と接続されている。このエンジン回転センサ16は、車両のエンジンの出力軸が所定量回動する毎に回転パルスを出力する。回転インタフェース117は、エンジン回転センサ16から出力される回転パルスの信号を制御部110の処理に適した信号に変換する。
【0034】
デジタル入力インタフェース118は、5つの独立したチャネルのデジタル入力を備えている。デジタル入力インタフェース118は車両側装置17と接続される。車両側装置17は、車両に搭載された様々なセンサの信号を車載信号処理装置100に出力することができる。
【0035】
外部インタフェース119は、様々な外部機器を車載信号処理装置100に接続するための通信インタフェースである。外部インタフェース119に接続される外部機器18の代表例として、ドライブレコーダ、デジタルタコグラフ、カーナビゲーション装置などが想定される。
【0036】
不揮発性メモリ120は、制御部110のマイクロコンピュータからのアクセスによりデータの書き込み及び読み出しを自在に行うことができる。不揮発性メモリ120は、外部からの電源電力の供給から遮断されてもデータを保持することができる。
【0037】
<装置の動作>
<速度パルス係数の説明>
図1に示した制御部110は、車載信号処理装置100を搭載した車両の走行速度(車速)や走行距離を算出する機能を内蔵している。すなわち、速度センサ15から出力される車速パルスの信号に、一定距離を走行する毎に1つのパルスが現れるので、車速パルスのパルス周期、あるいは一定時間内に現れたパルスの数と時間とに基づいて、車速を算出することができる。また、ある時点以降に現れたパルスの数を計数することにより、走行距離を算出することができる。
【0038】
実際には、車両の駆動軸1回転あたりの車速センサ発生パルス数を表す速度パルス係数Kpと実際に現れたパルスのパルス数あるいはパルス周期に基づいて、車速および走行距離を算出することになる。但し、実際に速度センサ15が出力する駆動軸1回転あたりのパルス数は、車種や仕様の違い等によって異なり、2、4、8、16、20、25のいずれかの値になる。従って、車両の製造後に搭載される車載信号処理装置100のような車載器においては、車載器側が想定している速度パルス係数Kpと実際の速度パルス係数とが必ずしも一致しない。また、タイヤの交換や摩耗によってタイヤ外径が変化すると、実際のパルス数あるいはパルス周期と車両の移動量との関係が変化し、算出される車速や走行距離に誤差が発生する。
【0039】
そこで、車載器側が想定している速度パルス係数Kpを実際の速度パルス係数と整合させる機能、及びタイヤ径の変化による計算誤差の発生を抑制するための機能を車載信号処理装置100が搭載している。
【0040】
<係数決定処理の説明>
図1に示した車載信号処理装置100における係数決定処理の内容が図2に示されている。図2に示した係数決定処理は、所定の条件を満たした時、例えば装置の電源が投入された直後、一定時間を経過した時、あるいは所定の命令が入力された時に制御部110のマイクロコンピュータにより実行される。図2に示した係数決定処理について以下に説明する。
【0041】
ステップS11では、制御部110は不揮発性メモリ120上に割り当てられている速度パルス係数Kpのデータを参照し、これが決定済みか否かを識別する。すなわち、車載信号処理装置100を工場から出荷して車両に搭載した直後には速度パルス係数Kpの値は決定されておらず無効な値(例えば0)が割り当てられているので、この速度パルス係数Kpの値が無効か否かを調べることにより、決定済みか否かを識別する。決定してなければS12に進み、決定済みであればS16に進む。
【0042】
ステップS12では、制御部110は車載信号処理装置100を搭載した車両が停車中か否かを識別する。例えば、所定時間以内に速度センサ15から入力される車速パルス信号にパルスが全く現れない状態であれば停車中であると認識し、次のS13に進む。
【0043】
ステップS13では、制御部110は車載信号処理装置100を取り付ける作業者あるいはユーザ(運転者等)からの係数の入力操作を受け付ける。すなわち、操作部13を操作することにより、不揮発性メモリ120上の速度パルス係数Kpを初期値に更新する。この初期値については、テンキー等を用いて想定される数値を直接入力してもよいし、予め用意された複数の候補(例えば2、4、8、16、20、25)の中からいずれかを選択してもよい。
【0044】
ステップS14では、制御部110は車載信号処理装置100を取り付ける作業者あるいはユーザ(運転者等)によるオドメータ数値Vod1の入力操作を受け付ける。ここで、作業者等は、車両の計器板上に配置されているオドメータ(積算走行距離計)の数値(車両の製造初期から現在までの走行距離)を目視で読み取り、この値をオドメータ数値Vod1として操作部13から入力することができる。入力されたオドメータ数値Vod1は、不揮発性メモリ120上に保存される。
【0045】
ステップS15では、制御部110は車速パルス数Npの計数を開始する。すなわち、これ以降に速度センサ15から入力される車速パルス信号のパルスの数を全て計数し、その積算値をNpとして不揮発性メモリ120上で保持する。また、ここで速度Vgpsの取得動作(図3に示した処理)を開始する。
【0046】
ステップS16では、GPS(Global Positioning System)を利用して計算される最新の車両の速度Vgpsが取得できているか否かを識別する。通常は速度Vgpsを取得できるが、例えば、高層ビルの谷間や、深い森林の中や、トンネル内などを車両が走行する時には、GPS衛星からの電波を受信できないため速度Vgpsが取得できない状態になる。速度Vgpsを取得できている場合は次のS17に進み、取得できていない場合はS19に進む。
【0047】
ステップS17では、制御部110は速度センサ15から入力される車速パルス信号のパルスの状態と、不揮発性メモリ120上の速度パルス係数Kpに基づいて最新の車両の速度Vpを算出する。例えば次式により算出できる。
Vp=(N1/Kp)K0/N2 [m/sec]
N1:一定時間N2(秒)内で検出されたパルスの数
Kp:係数、駆動軸1回転あたりのパルス数(初期値又は修正後の値)
K0:係数、駆動軸1回転あたりの車両移動距離(定数[m])
【0048】
ステップS18では、制御部110は、GPSにより得られた車両の速度VgpsとステップS17で車速パルス信号から得られた車両の速度Vpとに基づいて、最新の速度パルス係数Kp1を算出する。例えば次式を用いて算出できる。
Kp1=Kp・Vp/Vgps
【0049】
ステップS19では、制御部110は車載信号処理装置100を搭載した車両が停車中か否かを識別する。例えば、所定時間以内に速度センサ15から入力される車速パルス信号にパルスが全く現れない状態であれば停車中であると認識して次のS21に進む。停車中でなければS16に戻って処理を繰り返す。
【0050】
ステップS21では、制御部110はS15で係数を開始した車速パルス数Npの現在値を事前に定めた閾値Nminと比較し、(Np>Nmin)の条件を満たす場合は次のS22に進み、条件を満たさない場合はS16に戻って処理を繰り返す。
【0051】
ステップS22では、制御部110はユーザ(運転者等)によるオドメータ数値Vod2の入力操作を受け付ける。ここで、ユーザは、車両の計器板上に配置されているオドメータの数値(車両の製造初期から現在までの最新の走行距離)を目視で読み取り、この値をオドメータ数値Vod2として操作部13から入力することができる。
【0052】
ステップS23では、制御部110は次式により2種類の距離Dod、Dpをそれぞれ算出する。
Dod=Vod2−Vod1
Dp=(Np/Kp)K0
Dod:車両のオドメータにより求められた距離[m]
Dp:車速パルス信号のパルスの状態と速度パルス係数Kpにより求められた距離[m]
Np:車速パルス数の現在の計数値
K0:係数、駆動軸1回転あたりの車両移動距離(定数[m])
【0053】
ステップS24では、制御部110はS23で得られた2つの距離Dod、Dpに基づいて最新の速度パルス係数Kp1を算出する。例えば次式を用いて算出できる。
Kp1=Kp・Dp/Dod
【0054】
ステップS25では、制御部110は前述のS18で得られた速度パルス係数Kp1、あるいはS24で得られた速度パルス係数Kp1がこれまでの速度パルス係数Kpを修正するのにふさわしい適正な値か否かを識別する。
【0055】
例えば、速度パルス係数Kp、Kp1の差分が極めて小さく計算誤差の範囲内と見なしうる場合には、速度パルス係数Kpを修正する必要がないので次のS26の実行を省略してこの処理を終了する。また、速度パルス係数Kp、Kp1の差分がある程度大きく、且つ速度パルス係数Kp1の値が「2、4、8、16、20、25」のいずれかの整数に近い場合には、速度パルスKpがS13で割り当てた初期値のままである可能性が高いので、速度パルス係数Kp1を適正な値とみなして次のS26に進む。
【0056】
ステップS26では、制御部110は前述のステップS18又はS24で求めた速度パルス係数Kp1を用いて速度パルス係数Kpを修正する。すなわち、不揮発性メモリ120上の速度パルス係数Kpを速度パルス係数Kp1と同じ値に更新する。
【0057】
<速度Vgps取得処理の説明>
図1に示した車載信号処理装置の速度Vgps取得処理の内容が図3に示されている。すなわち、図2のステップS16で参照する速度Vgps を取得するために、図3の処理が制御部110によって実行される。図3の処理について以下に説明する。
【0058】
ステップS31では、制御部110はGPSモジュール112に接続されているGPSアンテナ12が複数のGPS衛星からの電波を受信しているか否かを識別する。電波を受信している場合は次のS32に進み、受信できない場合は受信できるまで待機する。
【0059】
ステップS32では、制御部110は前回の処理(S33)で算出した車両の現在位置P1を前回の位置P2として保存する。
【0060】
ステップS33では、GPSモジュール112が複数のGPS衛星からそれぞれ受信した電波と時刻とに基づいて最新の車両位置を計算により求める。この計算結果を最新の現在位置P1として保存する。
【0061】
ステップS34では、制御部110はS33で取得した最新の現在位置P1と、前回の位置P2との差分(位置の変化:距離)と、P2を取得してからP1を取得するまでの時間変化Δtとに基づき速度Vgpsを算出する。すなわち次式の計算を実行する。
Vgps=(P1−P2の距離)/Δt
【0062】
ステップS35では、制御部110はS34で信頼性の高い速度Vgpsを算出できたか否かを識別する。例えば、同時に電波を受信可能な衛星の数が少なく位置の計算誤差が大きい場合や、算出された速度Vgpsの値が係数の補正に適した所定の範囲内(例えば30〜100km/hの範囲)でなければ、計算に失敗したものとみなして次のS36に進む。速度Vgpsの算出に成功した場合はS31に戻って処理を繰り返す。
【0063】
ステップS36では、制御部110は速度Vgpsの算出に失敗したことが分かるようにエラー発生を記憶する。また、速度Vgpsの取得には、GPS衛星における演算により取得できる速度情報を利用してもよい。
【0064】
<具体例の動作の説明>
車載信号処理装置100の動作の具体例について、図4を参照しながら説明する。図4においては、車両に車載信号処理装置100を取り付けて運用を開始する時を時刻t1とし、この車両がしばらく走行した後の時刻t2で、GPS衛星からの電波を受信できない状態で速度パルス係数Kpを補正する場合を想定している。
【0065】
時刻t1においては、この車両が停車中の時に、制御部110の処理が図2のステップS11、S12、S13を通ってS14に進む。ここで、運転者あるいは作業者が計器板のオドメータの数値(例えば100km)を読み取り、操作部13を操作してこの数値を車載信号処理装置100に入力する。制御部110はステップS14で入力された数値をオドメータ数値Vod1として保存する。また、制御部110が車速パルス数Npの計数を開始する(S15)。
【0066】
時刻t1の後で予め定めた条件を満たす状態になると、制御部110が速度パルス係数設定要求を発生する。例えば図2に示した処理においては、車両が停車中で、且つ車速パルス数Npが閾値Nminを越えた時にこの要求が発生する。
【0067】
図4においては、時刻t2で速度パルス係数設定要求が発生している。ここで、運転者また作業者は表示部114におけるLED表示やメッセージの表示により速度パルス係数設定要求を認知し、所定の入力操作を行う。すなわち、運転者あるいは作業者が計器板のオドメータの数値(例えば200km)を読み取り、操作部13を操作してこの数値を車載信号処理装置100に入力する。
【0068】
制御部110は、ここで(S22)入力された数値をオドメータ数値Vod2として受け付ける。そして、2種類の距離Dod、Dpをそれぞれ算出する(S23)。距離Dodは2つのオドメータ数値Vod2、Vod1の差分であり、図4の例では100[km]として算出される。距離Dpは時刻t2における車速パルス数Npと現在の速度パルス係数Kpに基づいて計算され、図4の例では200[km]として算出される。
【0069】
制御部110は、時刻t2において、速度パルス係数Kpの補正に必要な最新の速度パルス係数Kp1を次式により算出する(S24)。
Kp1=Kp・Dp/Dod
【0070】
図4に示した例では、距離Dodが100km、距離Dpが200kmの場合を想定しており、時刻t1で速度パルス係数Kpに初期値として「4」が割り当てられた場合を想定しているので、速度パルス係数Kp1は「8」になる。
【0071】
また、距離Dod、Dpの比較により速度パルス係数Kpの補正が必要であり速度パルス係数Kp1が適正であるとみなすので、制御部110はステップS25からS26の処理に進み、速度パルス係数Kpを最新の速度パルス係数Kp1に更新(修正)する。つまり、図4の例では時刻t2における係数補正によって、速度パルス係数Kpは「4」から「8」に修正される。
【0072】
また、図4に示した例では時刻t2において車両上の車載信号処理装置100がGPS衛星からの電波を正しく受信できない状態を想定しているが、GPS衛星からの電波を受信できる場合には、図2のステップS17、S18が実行される。その場合は、GPSにより自動的に取得した位置情報に基づき、速度Vgpsが算出され、速度Vgps、Vpの比較により速度パルス係数Kp1が算出される。
【0073】
<車載信号処理装置100の利点>
車載信号処理装置100は、図4に示した時刻t2の場合のように、車両上でGPS衛星からの電波を受信できず車両の現在位置や速度Vgpsを特定できない状態であっても、距離Dod、Dpを算出し、これらに基づいていつでも速度パルス係数Kpの補正を行うことが可能である。従って、車両に搭載されている速度センサ15の仕様が不明な状況であっても、車載信号処理装置100が車速や走行距離の計算に用いる速度パルス係数Kpが速度センサ15の仕様に合うように自動的に補正することができる。
【0074】
また、車両上でGPS衛星からの電波を受信できる状況においては、車両の現在位置に基づいて算出した速度Vgpsと車速パルスに基づいて算出した車速Vpとに基づいて速度パルス係数Kpを補正することができる。これにより、タイヤの径の違いによって生じる車速や走行距離の計算誤差を減らすことができる。
【0075】
<車載信号処理装置100の変形の可能性>
図1に示した車載信号処理装置100は、それ自身の内部で車速や走行距離を算出する場合を想定しているが、車速や走行距離を算出する機能を車載信号処理装置100の外部に接続される車載器に搭載してもよい。その場合は、車載信号処理装置100が他の車載器に対して速度パルス係数Kpの情報を送信すれば、他の車載器は正しい速度パルス係数Kpに基づいて正しい車速や走行距離を算出できる。
【0076】
図1においては、本発明の特徴的な機能をテレマティクス車載端末として構成される車載信号処理装置100に搭載する場合を想定しているが、その他の車載器に搭載してもよい。例えば、ドライブレコーダ、デジタルタコグラフ、カーナビゲーション装置などの車載器は車速や走行距離の情報を把握する必要があるので、速度パルス係数Kpを決定しこれを自動的に補正する機能を搭載することが望まれる。
【0077】
なお、車載信号処理装置100が速度パルス係数Kpに初期値を割り当てる条件や、オドメータ数値Vod1、Vod2の各々の入力操作を受け付ける条件(S11,S12,S19,S21)については、必要に応じて適宜変更することが考えられる。また、制御部110が速度パルス係数Kpを補正する条件(S25)についても、必要に応じて適宜変更することが考えられる。
【0078】
また、もしも可能であるなら、計器板上のオドメータの表示値の情報を車載信号処理装置100がオドメータから自動的に取得し、運転者や作業者の入力操作を不要にすることも考えられる。
【符号の説明】
【0079】
11 通信アンテナ
12 GPSアンテナ
13 操作部
14 車両電源
15 速度センサ
16 エンジン回転センサ
17 車両側装置
18 外部機器
100 車載信号処理装置
110 制御部(情報処理部,速度パルス係数修正部)
111 通信モジュール
112 GPSモジュール(位置情報入力部)
113 外部インタフェース(オドメータ数値入力部)
114 表示部
115 電源部
116 速度インタフェース
117 回転インタフェース
118 デジタル入力インタフェース
119 外部インタフェース
120 不揮発性メモリ(不揮発性記憶部)
Vod1,Vod2 オドメータ数値
Kp,Kp1 速度パルス係数
Dod,Dp 走行距離
Vp,Vgps 車両の速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側から出力される車速パルス信号を入力する信号入力端子と、
前記信号入力端子に入力される車速パルス信号に基づいて車速および走行距離の少なくとも一方を算出する情報処理部と、
車速又は走行距離と前記車速パルス信号の特性との対応関係を表す速度パルス係数の情報を保持する不揮発性記憶部と、
車両に搭載されるオドメータが表示している値に相当するオドメータ数値の入力を受け付けるオドメータ数値入力部と、
互いに異なる2つの地点のそれぞれにおいて前記オドメータ数値入力部に入力された2つのオドメータ数値の差分を表す第1の走行距離を算出し、前記2つの地点間の移動に関し入力された前記車速パルス信号と前記速度パルス係数とに基づいて第2の走行距離を算出し、前記第1の走行距離と第2の走行距離とに基づいて前記速度パルス係数を修正する速度パルス係数修正部と
を備えることを特徴とする車載信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載信号処理装置であって、
前記オドメータ数値入力部は、車両が実質的に走行を停止している状態に限って前記オドメータ数値の入力を受け付け、
前記速度パルス係数修正部は、車両が走行を停止している状態の2つの地点の間について、前記第1の走行距離および第2の走行距離を算出する
ことを特徴とする車載信号処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車載信号処理装置であって、
車両の現在位置を表す位置情報を入力する位置情報入力部、を更に備え、
前記速度パルス係数修正部は、前記位置情報入力部が最新の位置情報を取得可能な状態であれば、前記位置情報の変化から算出される速度と、入力された前記車速パルス信号とに基づいて前記速度パルス係数を修正する
ことを特徴とする車載信号処理装置。
【請求項4】
車両側から出力される車速パルス信号を入力し、前記車速パルス信号のパルス周期もしくはパルス数に基づいて車速および走行距離の少なくとも一方を算出する信号処理方法であって、
車速又は走行距離と前記車速パルス信号の特性との対応関係を表す速度パルス係数の情報を保持し、
車両に搭載されるオドメータが表示している値に相当するオドメータ数値の入力を受け付け、
互いに異なる2つの地点のそれぞれにおいて入力された2つのオドメータ数値の差分を表す第1の走行距離を算出し、
前記2つの地点間の移動に関し入力された前記車速パルス信号と前記速度パルス係数とに基づいて第2の走行距離を算出し、
前記第1の走行距離と第2の走行距離とに基づいて前記速度パルス係数を修正する
ことを特徴とする信号処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−108761(P2013−108761A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251725(P2011−251725)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(501418498)矢崎エナジーシステム株式会社 (79)
【Fターム(参考)】