説明

車載充電ケーブル収納構造

【課題】車室内を平滑に形成して搭載した荷物の移動を容易にし、車載充電ケーブルのような長さを有する精密機器を、水や埃、乗員の足等が接触することを軽減できて、且つ容易に収納や取り出しを可能とする車載充電ケーブル収納構造を提供する。
【解決手段】フロアパネル6は車両の前後方向に配置された第一パネルと第二パネルとからなり、第一パネルはステップ4よりも上方に位置するとともに第二パネルは第一パネルよりも上方に位置し、第一パネルの上方に第二パネルと滑らかに連続するように第三パネルを配置し、第一パネルと第三パネルによって挟まれる空間に収納部9を設け、収納部9は車体側面側にのみ開放する開放部とこの開放部の一部を覆うバンド31を備え、収納体8を開放部より水平方向に沿ってスライドさせて収納部9へ出し入れを可能にするとともに、バンド31によって開放部の一部を覆うことで収納体8を収納部9に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車載充電ケーブル収納構造に係り、特に、電気自動車・プラグインハイブリッドなどの車両の動力源であるバッテリを充電するための充電ケーブルの収納を容易にした車載充電ケーブル収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源であるバッテリを備えた電気自動車・プラグインハイブリッドなどの車両においては、バッテリを充電するための充電ケーブルを車体に搭載している。充電ケーブルの収納は、日常的に使用するため、充電ケーブルの出し入れが容易であることと、車載時に容易に固定できることが必要である。
車体に充電ケーブルの収納場所が無い場合は、走行中などに充電ケーブルが移動したり、飛び出したりする。また、トランクルームの下に充電ケーブルを収納した場合は、出し入れがし難く、トランクルームに荷物が積載されていると、荷物をどけなければ出し入れができない。
【0003】
上記のような課題に対する従来技術として、特許文献1に開示されるものがある。上記特許文献1は、ボディ側部に形成した乗降口にフロアパネルよりも一段低いステップを持つ車両のフロア構造に関する技術である。詳しくは、車両の前記ステップを構成するパネルを延長し、その延長パネルと前記フロアパネルとで小物入れ収容空間を形成して、その小物入れ収容空間内に小物収容箱を引き出し可能に設けたものである。
これより、特許文献1は、フロアパネルよりも下方のデッドスペースを利用して、車室空間を狭めることなく小物類の収容部位を設け、この収納部位を利用して小物等を収納することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−125643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では、以下の問題がある。
(1).小物収容箱内に長さのある充電ケーブルを露出したまま収納すると、出し入れ作業中に小物入れ収容空間を形成するパネルと小物収容箱との間で充電ケーブルを挟み込み、充電ケーブルを破損するおそれがある。
(2).ステップは乗員の足を掛ける場所であり、乗員が乗降する際に乗員の足等が接触することで充電ケーブルの破損を招くおそれがある。同様に、ステップは乗員の足に付いた水や埃等が存在しやすい場所でもある。充電ケーブルには、その両端には水や埃を嫌う端子が付属しており、そのような水や埃等が存在しやすい箇所に充電ケーブルのような精密機器を収納することは充電ケーブルを故障させる原因につながり、好ましくない。さらに、ステップに溜まった埃等によって、小物収容箱の引き出しが困難になる可能性もある。引き出しが困難な状況下で小物収容箱の引き出しを無理に行うと、小物収容箱を破損させてしまうおそれがある。
(3).小物収容箱を引き出し可能に設けると、小物入れ収容空間を形成するパネルと小物収容箱との間で摩擦が発生する。小物入れ収容空間を形成するパネルは板金部品によって形成されており、摩擦によって板金部品が傷ついて板金部品の錆の発生を招くおそれがある。
【0006】
この発明は、車室内を平滑に形成して車室内に搭載した荷物の移動を容易にするとともに、車載充電ケーブルのような長さを有する精密機器を、水や埃、乗員の足等が接触することを軽減できて、且つ容易に収納や取り出しを可能とする車載充電ケーブル収納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車体側面に設けたドア開口に、ステップと車室内のフロア面を構成するフロアパネルとを備える車両と、前記車両の動力源であるバッテリと、前記バッテリを充電するための充電ケーブルと、前記充電ケーブルを収納する収納体と、前記収納体を収納する収納部と、を備えた車両の車載充電ケーブル収納構造において、前記フロアパネルは、前記車両の前後方向に配置された第一パネルと第二パネルとからなり、前記第一パネルは前記ステップよりも上方に位置するとともに前記第二パネルは前記第一パネルよりも上方に位置し、前記第一パネルの上方に前記第二パネルと滑らかに連続するように第三パネルを配置し、前記第一パネルと前記第三パネルによって挟まれる空間に前記収納部を設け、前記収納部は前記車体側面側にのみ開放する開放部と前記開放部の一部を覆うバンドを備え、前記収納体を前記開放部より水平方向に沿ってスライドさせて前記収納部へ出し入れを可能にするとともに、前記バンドによって前記開放部の一部を覆うことで前記収納体を前記収納部に保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車載充電ケーブル収納構造は、フロアパネル形状高さが車両の前後で異なる車両において、収納体を収納する収納部を設けることができるとともに、平坦なフロアを持つ車室を用意でき、その車室内に搭載した荷物の移動も容易になる。
この発明の車載充電ケーブル収納構造は、乗員が乗降する際に使用するステップよりも上方に充電ケーブルを収納する収納部を設けたので、充電ケーブルが被水することや充電ケーブルに乗員の足が接触するおそれを軽減でき、充電ケーブルの故障や損傷を軽減できる。
この発明の車載充電ケーブル収納構造は、充電ケーブルを収納部から出し入れする際には収納体ごと収納部から取り出すことで、充電ケーブルのような長さのあるものの出し入れが容易になる。
この発明の車載充電ケーブル収納構造は、収納部の一部をバンドによって覆うことで、充電ケーブルを入れる収納体を収納部に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車載充電ケーブル収納構造を備えた車両のドア開口側から見た斜視図である。(実施例)
【図2】図2は充電ケーブルの斜視図である。(実施例)
【図3】図3は収納体の斜視図である。(実施例)
【図4】図4は車両のドア開口部分の拡大斜視図である。(実施例)
【図5】図5は収納部周囲の各パネルのつながりを示す斜視図である。(実施例)
【図6】図6はトレイを上方から見た斜視図である。(実施例)
【図7】図7はトレイを下方から見た斜視図である。(実施例)
【図8】図8はトレイの固定状態を示す一部破断斜視図である。(実施例)
【図9】図9(A)〜(C)は収納体の出し入れの作業を示す斜視図である。(実施例)
【図10】図10は収納体を収納してバンドで固定した収納部の斜視図である。(実施例)
【図11】図11(A)はバンドの嵌合状態の正面図、図11(B)はバンドの離脱状態の正面図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図11は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は車両、2は車体、3はドア開口、4はステップ、5は車室、6はフロアパネルである。車両1は、車体2の側面に設けたドア開口3の下方に、ステップ4と車室5内のフロア面を構成するフロアパネル6とを備えている。この車両1は、バッテリの電力を動力源として走行する車両であり、前記バッテリを充電するための充電ケーブル7(図2参照)と、前記充電ケーブル7を収納する収納体8(図3参照)と、前記収納体8を収納する収納部9と、を備えている。
前記充電ケーブル7は、図2に示すように、ケーブル10の両端に、それぞれ充電機器側端子11と、車体側端子12とを備えている。前記収納体8は、図3に示すように、扁平な四角形状のバッグ様に形成された開閉可能な本体13からなり、本体13の側面に取っ手14を備えている。前記収納部9は、図4に示すように、ステップ4とフロアパネル6との間に設けられている。
【0012】
車両1の充電ケーブル7の収納構造は、図4に示すように、車体2の側面のドア開口3の下方にステップ4を備えている。ステップ4の上面には、車両幅方向の内側縁から車両1の前後方向に沿って車両上方に延びる第一縦壁15が存在する。第一縦壁15は、図5に示すように、車両前後方向の前側部分16と、段差部17を介して連続する後側部分18とからなり、前側部分16を後側部分18よりも低く形成している。第1縦壁15の前側部分16の上端には、第1縦壁15に接続して車両幅方向に沿って延びる第一パネル19が存在する。この第一パネル19は、ステップ4の上方に位置し、収納部9を設ける空間を形成する下方のパネルであり、フロアパネル6の一部である。収納部9は、ステップ4よりも上方に位置する構造となっている。これより、収納部9への被水や乗員の足の接触が発生することを軽減できる。
また、第一パネル19に接続して、第一パネル19の後端から車両幅方向に沿って上方に延びる第二縦壁20が存在する。第二縦壁20は、第一縦壁15の前側部分16と後側部分18との間の段差部17に接続している。さらに、第二縦壁20の上端から車両後方に延びる第二パネル21が存在する。第二パネル21は、第一パネル19よりも上方で、後方に配置されている。車両1のフロアパネル6は、第一パネル15と第二縦壁20と第二パネル21とから構成され、車両1のフロア面の形状は車両前側が一段下方に位置する形状となっている。
この実施例では、第一パネル19の上方に第三パネル22を車両幅方向に沿って配置し、第一パネル19と第三パネル22とによって挟まれる空間に収納部9を設けている。収納部9は、車体2のドア開口3を設けた側面側にのみ開放する開放部23を備えている。この第三パネル22は、第二パネル21と同一高さになるよう配置され、第二パネル21に接続する。これより、車室5は、第二パネル21と第三パネル22の上面が平滑となるように形成している。
【0013】
これにより、充電ケーブル7の収納構造は、第一パネル19と第三パネル22とで挟まれた空間に収納部9を設けることができる。収納部9は、車両1の側面側がドア開口3により開放しており、車両側面から収納部9への収納体8の出し入れを可能にしている。さらに、充電ケーブル7の収納構造は、第三パネル22によって車室5内のフロア形状が平坦になることで、第二パネル21及び第三パネル22の上面に置いた荷物等の移動を容易にしている。
さらに、収納部9は、車両進行方向左側、いわば助手席側に設けている。これより、他車両の走行のない歩道側より収納部9にアクセスでき、安全に充電ケーブル7を収納した収納体8を取り出しできる。これは、車両1が道路の進行方向に対して左側を通行する場合の例であって、右側通行の場合は運転席側に収納部9を設けることで対応可能である。また、収納体8は、水平方向に出し入れを行うので、収納部9の上部に荷物等が存在していても、問題なく収納体8を取り出すことが可能である。
また、充電ケーブル7を収納部9から出し入れする際には、収納体8ごと収納部9から取り出すことで、充電ケーブル7のような長さのあるものの出し入れが容易になる。さらに、収納部9の一部を後述するバンド31によって覆うことで、充電ケーブル7を入れる収納体8を収納部9に保持できる。
【0014】
前記収納部9には、材質が樹脂からなるトレイ24が設けられる。トレイ24の材質は、例えばポリプロピレンのような比較的軽量であって高い耐強度性能を備えるものであることが望ましい。また、トレイ24は、図6・図7に示すように、収納体8を載せる底面部25と、底面部25の周囲端部にその周囲端部の一部を除いて設けられた上方に延びる縦壁部26と、底面部25より収納体8を載せる面とは逆方向に突出して設けた凸部27と、底面部25に設けた固定孔28とを備えている。固定孔28は、収納体8をトレイ24内に保持するための後述するバンド31を取り付ける。トレイ24は、図8に示すように、凸部27を第一パネル15に当接させて固定している。
トレイ24は、底面部25の縦壁部26が設けられていない箇所を、収納体8を出し入れするための収納口29としている。図9(A)、(B)、(C)に示すように、この収納口29より水平方向に収納体8をスライドさせて出し入れを行う。トレイ24は樹脂製であるので、収納体8の出し入れも比較的容易に行うことができ、収納体8の取り出しによる車両1の傷つきの発生も防止できる。
【0015】
また、トレイ24の底面部25には、図7に示すように、収納体8を載せる面とは逆方向に突出する凸部27を備えている。各凸部27の上下方向長さは、図8に示すように、トレイ24を設置する第一パネル19の形状に合わせて設定され、凸部27の先端面が第一パネル29に当接する構成となっている。さらに、この凸部27の先端面には、孔30が設けられている。この孔30に挿通したボルト等によって、トレイ24を第一パネル19に固定している。なお、この実施例のトレイ24は、収納口29側の上下方向に長い2つの突部27及び最奥部の上下方向に長い1つの突部27を第一パネル19に固定している。他の上下方向に短い3つの突部27は、孔30を水抜きとしている。この凸部27は、第一パネル19の形状に合わせて凸部27の上下方向長さを設定することで、トレイ24の底面部25を自由に形成することができる。
これより、第一パネル19の形状によらず、トレイ24の底面部25を平面に設定できるとともに、トレイ24と第一パネル19との接点を凸部27の先端面のみとすることで、トレイ24と第一パネル19との不要な面当たりを避けることができ、トレイ24による第一パネル19の傷つき発生やトレイ24が第一パネル19に接触することでの音の発生の低減を図ることができる。また、凸部27を設けることで、トレイ24の剛性向上も図ることができる。なお、トレイ24の材質は、樹脂であることに限定しない。例えば金属製のトレイとしても良い。
【0016】
収納部9への収納体8の収納口である開放部23には、図10に示すように、その開放部23の一部を覆うようにバンド31が設けられる。バンド31は、開放部31の車両前後方向中央に上下方向に設けられる。バンド31は、その両端を車両1に固定するための固定構造を備えている。バンド31は、一端(下端)をトレイ24の底面部25に設けた固定孔28に装着して固定し、他端(上端)を第3パネル22にボルト等の締結部材を用いて固定している。
さらに、バンド31は、2つに分割できるよう、バンド31の中央に嵌合機構32を備えている。嵌合機構32は、図11に示すように、係止段部33と係止爪部34とからなる。嵌合機構32は、係止爪部33を係止段部34に押し込んで弾性係止することで(A)に示すように嵌合状態になり、この(A)の状態から、係止爪部33を矢印に示すように押し込んで係止段部34から引き抜くことで、図(B)に示すように離脱状態にすることができる。
このバンド31によって、収納部9の開放部23の一部が覆われて、収納体8を収納部9に保持でき、トレイ24からの収納体8の飛び出しを防止できる。トレイ24から収納体8を取り出すときは、バンド31の嵌合機構32の嵌合を解除してバンド31を2分割し、取り出す。
なお、収納体8に取っ手14が存在する場合は、収納体8の本体13と取っ手14との間にバンド31を通しても良い。これより、トレイ24内に収納した収納体8が、車両1の走行による振動等によってトレイ24内を移動することを軽減できる。また、トレイ24には、図6に示すように、中間と最奥部に固定孔35・36を設けている。この固定孔35・36は、図9に示すように、別部品37を固定するために使用する。例えば固定孔35・36にバンド31を取り付け、別部品37をトレイ24に固定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、充電ケーブルのような長さを有する精密機器を、水や埃、乗員の足等が接触することを軽減できて、且つ容易に収納や取り出しを可能とするものであり、充電ケーブルに限らず、着脱可能な車載機器や車体装備品の収納構造にも使用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 車両
2 車体
3 ドア開口
4 ステップ
6 フロアパネル
7 充電ケーブル
8 収納体
9 収納部
15 第一縦壁
19 第一パネル
20 第二縦壁
21 第二パネル
22 第三パネル
23 開放部
24 トレイ
25 底面部
26 縦壁部
28 固定孔
29 収納口
31 バンド
32 嵌合機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側面に設けたドア開口に、ステップと車室内のフロア面を構成するフロアパネルとを備える車両と、前記車両の動力源であるバッテリと、前記バッテリを充電するための充電ケーブルと、前記充電ケーブルを収納する収納体と、前記収納体を収納する収納部と、を備えた車両の車載充電ケーブル収納構造において、
前記フロアパネルは、前記車両の前後方向に配置された第一パネルと第二パネルとからなり、
前記第一パネルは前記ステップよりも上方に位置するとともに前記第二パネルは前記第一パネルよりも上方に位置し、
前記第一パネルの上方に前記第二パネルと滑らかに連続するように第三パネルを配置し、
前記第一パネルと前記第三パネルによって挟まれる空間に前記収納部を設け、
前記収納部は前記車体側面側にのみ開放する開放部と前記開放部の一部を覆うバンドを備え、
前記収納体を前記開放部より水平方向に沿ってスライドさせて前記収納部へ出し入れを可能にするとともに、前記バンドによって前記開放部の一部を覆うことで前記収納体を前記収納部に保持することを特徴とする車載充電ケーブル収納構造。
【請求項2】
前記収納部内の前記第一パネル上にトレイを設け、
前記トレイは前記収納体を載せる底面部と前記底面部より前記収納体を載せる面とは逆方向に突出して設けた凸部と前記底面部に設けた固定孔とを備え、
前記トレイは前記凸部を前記第一パネルに当接させて固定し、
前記バンドはその一端を前記固定孔に固定して前記開放部の一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載の車載充電ケーブル収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−136165(P2012−136165A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290479(P2010−290479)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】