説明

車載制御装置

【課題】 簡便な構成で凍結路を予測する車載制御装置を提供する。
【解決手段】 道路の交通情報を取得する交通情報取得手段と、当該道路を含む地域の気象情報を取得する気象情報取得手段と、取得した交通情報および気象情報から当該道路の凍結可能性を予測する凍結可能性予測手段と、を有することを特徴とする車載制御装置として提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結路を予測することを目的とした車載制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の走行に伴ってGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図と共に表示して、現在地から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する車両用ナビゲーション装置は、運転者の効率的で安全な運転に貢献している。
【0003】
近年のナビゲーション装置においては、単に目的地までの経路を探索するだけではなく、気象あるいは道路の状況を加味してより安全に走行可能な経路を探索するものがある。例えば、気象情報、地域、季節、時間、融雪施設、交通量等の情報に基づき、案内経路上に凍結路を含むことを避ける車両用ナビゲーション装置が考案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−205348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の例では、気象情報等のマクロな情報に基づいて経路探索を行なうため、ある地域の道路全てが凍結しているとして経路探索をしてしまう。そのため、出発地や目的地が積雪・凍結地域内にある場合には、その地域内全ての道路が一様に積雪・凍結しているとして経路案内を行なってしまう。したがって、同じ地域内に凍結している道路と凍結していない道路があっても、距離や交通量の情報のみに基づいた経路探索の結果、凍結している方の道路を選択してしまうという問題があった。
【0006】
また、従来の技術では、幅員の広い幹線道路,除雪が行き届いている道路,融雪剤を頻繁に撒く道路,スプリンクラーやロードヒーター等の融雪設備を備えている道路,交通量がある程度多い道路を凍結していない可能性が高いものとして経路探索を行なうが、これらの道路でも全く凍結しないというわけではないので、結果として凍結路を探索してしまうという問題もある。また、融雪設備の有無の情報を記憶するためには相応の記憶領域を必要とし、コスト上昇要因となる。また、その情報を常時最新のものに更新することは使用者の負担の増大につながる。
【0007】
上記問題を背景として、本発明の課題は、簡便な構成で凍結路を予測する車載制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための車載制御装置を提供するものである。即ち、請求項1によれば、道路の交通情報を取得する交通情報取得手段と、当該道路を含む地域の気象情報を取得する気象情報取得手段と、取得した交通情報および気象情報から当該道路の凍結可能性を予測する凍結可能性予測手段と、を有することを特徴とする車載制御装置として構成される。
【0009】
上記構成によって、融雪設備の有無の情報がなくてもリアルタイムに当該道路の凍結可能性を予測することが可能となる。よって、融雪設備の有無の情報を記憶するための記憶領域も不要でコストの上昇を伴わず本発明の構成を実現できる。また、その情報を常時最新のものに更新する必要もないため、使用者の負担は増大しない。さらに、積雪・凍結地域内で凍結している道路と凍結していない道路がある場合でも、道路毎あるいは区間毎の交通情報があれば、道路毎あるいは区間毎に凍結可能性を予測することが可能となる。
【0010】
請求項2によれば、本発明の車載制御装置における交通情報は当該道路における車両の交通量情報を含み、凍結可能性予測手段は交通量が所定の範囲内にない場合に当該道路が凍結していると予測する構成をとることができる。
【0011】
道路は凍結している場合、その道路を通行する車両は通常時よりも極端に少ないかノロノロ運転のいずれかである。単位時間あたりの交通容量は概ね道路の車線数あるいは道路種別から推定演算でき、交通量と交通容量とから渋滞の度合いを演算することができる。よって、上記構成により天候と交通量とによって該道路の凍結可能性を予測することが可能となる。
【0012】
請求項3によれば、本発明の車載制御装置における交通情報は当該道路における通行速度情報を含み、凍結可能性予測手段は通行速度が所定の範囲内にない場合に当該道路が凍結していると予測する構成をとることができる。
【0013】
凍結した道路を走行する車両の速度はノロノロ運転に近い。よって、上記構成により車両の通行速度が分かれば天候とによって該道路の凍結可能性を予測することが可能となる。
【0014】
請求項4によれば、本発明の車載制御装置における凍結可能性予測手段は、凍結可能性のランク付けを行なう構成をとることができる。
【0015】
凍結可能性は、気象情報に含まれる天候,気温と交通量あるいは通行速度の組み合わせによって異なる。これを数値化してランク付けを行なえば、精度よく凍結可能性の予測を行なうことが可能となる。
【0016】
請求項5によれば、本発明の車載制御装置は、凍結可能性の予測結果を記憶する記憶手段を有する構成をとることができる。
【0017】
上記構成によって、現在の交通情報および気象情報と過去の予測結果とにより精度よく該道路の凍結可能性を予測することができる。また、交通情報および気象情報を取得することができない場合でも、使用者は過去の予測結果を参照することで運転の参考とすることが可能となる。
【0018】
請求項6によれば、本発明の車載制御装置は、凍結可能性予測手段により当該道路の凍結が予測される場合、その旨を報知する報知手段を有する構成をとることができる。
【0019】
上記構成によって、使用者は予めどの道路の凍結が予測されるかを把握可能となり、凍結が予測される道路の回避あるいは凍結路を走行することで発生する遅れを見込んだ運転スケジュールの調整等を行なうことができ、安全かつ余裕のある運転が可能となる。
【0020】
請求項7によれば、本発明の車載制御装置は、車両の現在位置を検出する位置検出手段と、目的地を設定する目的地設定手段と、予測された凍結可能性のより低い道路を走行するように、現在位置から目的地までの案内経路を探索する経路探索手段と、を有する構成をとることができる。
【0021】
従来技術によって経路探索を行なう場合、凍結地域が案内経路の途中にあれば、その地域全体を回避することで凍結路を避けることができるが、出発地や目的地周辺が凍結地域に含まれる場合は凍結路を避けることができない。また、凍結地域を回避することができたとしても遠回りになってしまう。しかし、上記構成によって、出発地や目的地周辺が凍結地域に含まれる場合でも、渋滞はしていないが、ある程度の交通量があり、凍結が予測されない道路を探索して案内経路とすることで、凍結路を案内経路上に含むことを避けることができる。
【0022】
請求項8によれば、本発明の車載制御装置は、凍結可能性のランクを案内経路の探索条件として設定する探索条件設定手段を有し、経路探索手段は、設定された凍結可能性のランクよりも凍結可能性の低い道路を含む案内経路を探索する構成をとることができる。
【0023】
例えば、凍結路あるいは雪道の走行に慣れている、あるいはスタッドレスタイヤあるいはタイヤチェーン等の冬用装備のある場合は、凍結可能性のランクを高い道路でも走行が可能となるので探索経路の選択の幅が広がる。逆に、凍結路あるいは雪道の走行に慣れていない、あるいは冬用装備がない場合は、凍結可能性のランクを低く設定することでより安全な経路を探索することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
簡便な構成で凍結路を予測する車載制御装置を提供するという目的を、取得した交通情報および気象情報から当該道路の凍結可能性を予測する構成により実現した。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施の形態である車載制御装置について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の車載制御装置を適用した車両用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称する)100の全体構成を示すブロック図である。なお、本発明の適用範囲を車両用ナビゲーション装置に限定するものではない。ナビゲーション装置100は、位置検出器1,地図データ入力器6,操作スイッチ群7,リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11,音声案内などを行なう音声合成回路24およびスピーカ15,半導体記憶装置9,表示装置10,ハードディスク装置(HDD)21,これらの接続された制御回路8,リモコン端末12を備えている。
【0026】
本発明の位置検出手段である位置検出器1は、周知の地磁気センサ2,ジャイロスコープ3,距離センサ4,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部センサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0027】
地図データ入力器6は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む各種データを記憶媒体20から入力するための装置である。記憶媒体としては、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。
【0028】
地図データは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶すると共に、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標、距離、所要時間、道幅、車線数、制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点(分岐路)等を規定する情報であって、位置座標、右左折車線数、接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。
【0029】
操作スイッチ群7は、例えば表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられる。タッチスイッチは、表示装置10の画面上に縦横に微細に配置された赤外線センサ、赤外線センサが検出した指等の接触を電気信号に変えるパネル部分、電気信号を外部機器へ送るための信号処理回路、および、これらを制御するコントローラを含んで構成される。例えば指やタッチペンなどでその赤外線を遮断すると、その遮断した位置が2次元座標値(X,Y)として検出される。タッチスイッチとして、ガラス基盤と透明なフィルムにスペーサと呼ばれる隙間を介してX軸方向、Y軸方向に電気回路が配線し、フィルム上を使用者がタッチすると、押された部分の配線がショートして電圧値が変わるため、これを2次元座標値(X,Y)として検出する、いわゆる抵抗膜方式を用いてもよい。あるいは、透明な導電性基盤のガラス面に電気信号を受ける物質を塗布し、指をガラス面に近づけると静電容量の変化を電気信号としてセンサで検知する、いわゆる静電容量方式を用いてもよい。
【0030】
タッチスイッチの他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。また、音声認識ユニット30を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、音声認識ユニット30に接続されるマイク31から音声を入力することによって、その音声信号を周知の音声認識技術により音声認識処理して、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。音声認識ユニット30は、マイク31から入力された音声信号を適切なレベルに増幅する増幅器と、増幅後の音声信号をA/D変換した後、周知の隠れマルコフモデル等の音声認識アルゴリズムにより音声を識別するための音声信号処理装置(DSP:Digital Signal Processor)、音声を識別するための基準データが記憶されているメモリ等で構成されており、DSPにより音声信号がその音声に対応した数値情報に変換された後、制御回路8に送られる。これら操作本発明の目的地設定手段,探索条件設定手段であるスイッチ群7、リモコン端末12、および音声認識ユニット30,マイク31によって、種々の指示を入力することが可能である。
【0031】
本発明の交通情報取得手段,気象情報取得手段である送受信機13は、例えばVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)センタ14から道路交通情報および気象情報を受信するための装置である。
【0032】
また、通信ユニット19に携帯電話機17あるいは自動車電話機等の移動体通信機器を接続することによっても、外部ネットワークとの接続が可能で、インターネット等に接続することができる。さらに、ETC(自動料金収受システム,ETC:Electronic Toll Collection)車載器16と通信することにより、ETC車載器16がETC路上器から受信した料金情報などを本ナビゲーション装置100に取り込むことができる。また、ETC車載器16によって外部ネットワークと接続することも可能である。これら携帯電話機17あるいはETC車載器16を介してVICSセンタ14との通信を行なう構成をとってもよい。
【0033】
本発明の凍結可能性予測手段,経路探索手段である制御回路8は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。CPU81は、HDD21に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行なう。また、HDD21へのデータの読み書きの制御はCPU81によって行なわれる。A/D変換部86は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば位置検出器1などから制御回路8に入力されるアナログデータをCPU81で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【0034】
HDD21に地図データを記憶する構成をとってもよい。また、HDD21には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができる。これらのデータは、操作スイッチ群7およびリモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって内容の書き換えが可能である。また、地図データ入力器6を用いて記憶媒体20から地図データ等を読み込んでHDD21の内容を更新することも可能である。また、車内の他の制御装置との間でデータの遣り取りを行なう車内LAN(Local Area Network)22を介して受信したデータを記録する構成をとってもよい。
【0035】
本発明の記憶手段である半導体記憶装置9はフラッシュメモリ等の書き換え可能な半導体メモリによって構成され、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、半導体記憶装置9は、車両のアクセサリスイッチがオフ状態(即ち、ナビゲーション装置100がオフ状態)になっても、記憶内容が保持されるようになっている。
【0036】
また、半導体記憶装置9の代わりにナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをHDD21に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータを半導体記憶装置9とHDD21に分けて記憶してもよい。この場合、HDD21よりも半導体記憶装置9へのアクセス速度の方が速いため、読み書きの頻度が比較的多いものを半導体記憶装置9に記憶し、読み書きの頻度が比較的少ないものをHDD21に記憶するとよい。半導体記憶装置9に記憶された内容をHDD21にバックアップ保存するようにしてもよい。
【0037】
本発明の報知手段である表示装置10は周知のカラー液晶表示器で、例えばドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行なうためのドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、画素毎にトランジスタを付けて目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができるアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路8から送られる表示指示および表示画面データに基づいて表示を行なう。表示装置10の画面には位置検出器1から入力された車両の現在位置マークと、記憶媒体20から入力された地図データと、更に地図上に表示する誘導経路等付加データとを重ね合わせて表示すると共に、本画面に経路案内の設定および経路誘導中の案内や画面の切り換え操作を行なうためのメニューボタンが表示される。
【0038】
スピーカ15は制御回路8のI/O34に接続される周知の音声合成回路24に接続され、ナビプログラム21pの指令によって半導体記憶装置9あるいはHDD21に記憶されるデジタル音声データを音声合成回路24においてアナログ音声に変換されたものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき、必要に応じて繋ぎあわせる録音編集方式、音声波形を分析してパラメータに変換された形で蓄積し、それを繋ぎ合せて音声合成回路を駆動し音声を作り出すパラメータ編集方式、文字列あるいは音素記号列から、音声学的・言語学的規則に基づいて、音声を作り出す規則合成方式などがある。なお、スピーカ15および音声合成回路24が本発明の報知手段に相当する。
【0039】
車速センサ23は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路8に送るものである。制御回路8では、その車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置と所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する。車速データを車内LAN(Local Area Network)22を介して他の車載機器から取得する方法をとってもよい。
【0040】
外部データ入出力器26は、例えば取り外し可能な外部記憶装置と接続するための入出力回路,コネクタを含むものである。外部記憶装置を介して光磁気ディスク等に半導体記憶装置9あるいはHDD21に記憶されている内容の少なくとも一部をバックアップデータとして記憶することができる。
【0041】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム21pが起動されると、運転者が操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって、表示装置10上に表示されるメニューから目的地経路を表示装置10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0042】
即ち、運転者が表示装置10上の地図に基づいて目的地を入力すると、GPS受信機5から得られる衛星のデータに基づき車両の現在位置が求められ、該現在位置から目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示装置10上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、運転者に適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示装置10およびスピーカ15の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行なう。
【0043】
ダイクストラ法では、リンク情報,ノード情報,リンク間接続情報を用いて、現在地から各ノードに至るまでの経路評価値(経路計算コスト)を算出し、目的地までの全ての経路評価値の計算が終了した段階で、総評価値が最小となるリンクを接続して目的地までの経路を設定している。この場合の評価値は、道路長・道路種別・道路幅員・車線数・交差点での右左折・信号機の有無などに応じて設定されている。例えば、道路幅員が広いほど評価値が低く、車線数が多いほど評価値が低い。
【0044】
各リンクでの経路計算コストの計算は、例えば次式を用いて行われる。経路計算コスト=リンク長×道路幅員係数×道路種別係数×渋滞度。ここで、道路幅員係数とは道路幅に応じて設定される係数であり、道路種別係数とは有料道路等の道路種別に応じて設定される係数である。そして、渋滞度とは、その道路の渋滞度合に応じて設定される係数である。
【0045】
ナビゲーション装置100は前述のように操作スイッチ群7,リモコン端末12あるいはマイク31により使用者が目的地の位置を入力すると、現在地からその目的地までの誘導経路を形成し表示装置10の表示画面上に表示する。同時に、経路上の交差点等の分岐点等に対し、使用者を経路どおりに走行させるための案内対象点として設定する。制御回路8は設定された案内対象点に対し、車両がある一定距離まで近づいたときに音声により案内すべきポイントとして、案内実施点を決定する。案内実施点は、例えば、案内対象点が交差点の場合、一般道では700m手前,300m手前,100m手前、高速道路では2km手前,1km手前,500m手前といったように複数設定することができる。
【0046】
図2のフロー図を用いて、本発明の凍結路予測手段を用いた経路探索処理について説明する。なお、本処理はCPU81により実行されるナビプログラム21pに含まれ、ナビプログラム21pの他の処理とともに繰り返し実行される。
【0047】
まず、操作スイッチ群7,リモコン端末12,マイク31のいずれかによって、記憶媒体20に記憶されている地図データから、目的地とを設定する(S1)。目的地の探索方法は周知のものであるが、目的地の所在する地域から探索する方法,目的地の電話番号から探索する方法,五十音表から目的地の名称を探索する方法,あるいは使用者がよく利用する施設を半導体記憶装置9にメモリ地点として記憶されているものから探索する方法などがある。次いで、設定した目的地間での案内経路を探索する(S2)。
【0048】
探索された案内経路上に道路が凍結する可能性のある地域が含まれるかどうかを調べ、凍結する可能性のある地域が含まれない場合(S3:No)は探索された案内経路にしたがって経路案内を開始する(S7)。
【0049】
一方、凍結する可能性のある地域が含まれる場合(S3:Yes)は、凍結する可能性のある地域を回避可能かどうかを調べ、回避可能な場合(S4:Yes)には凍結する可能性のある地域を回避した経路を再探索し(S6)、その探索された案内経路にしたがって経路案内を開始する(S7)。
【0050】
凍結する可能性のある地域を回避できない場合(S4:No)には、該地域であっても凍結する可能性のある道路を回避した経路を探索し(S5)、その探索された案内経路にしたがって経路案内を開始する(S7)。
【0051】
図3のフロー図を用いて、凍結する可能性のある道路を回避した経路を探索する処理について説明する。なお、本処理は図2のフロー図におけるステップS5の詳細に相当する。まず、凍結路回避モードに設定されている場合(S11:Yes)、案内経路およびその周辺を含む地域の気象情報を取得する(S12)。なお、気象情報には、少なくとも天候および気温に関する情報が含まれている。
【0052】
次に案内経路およびその周辺を含む地域の交通情報を取得する(S13)。交通情報には車両の交通量の情報および車両の通行速度の情報のうち、少なくとも一つが含まれている。
【0053】
気象情報および交通情報は送受信装置13を介してVICSセンタ14から取得する。また、使用者がテレビあるいはラジオの放送から入手した情報を操作スイッチ群7等によって入力してもよい。また、通信ユニット19および携帯電話機17を用いてインターネット等の外部ネットワーク経由で各情報を取得してもよい。
【0054】
そして、取得した気象情報および交通情報に基づいて凍結路の予測を行なう(S14)。まず、気象情報が道路の凍結が予測される条件を満たすか調べる。例えば、気象情報が以下のいずれかに該当すれば道路の凍結が予測されると判定する。
(1)雪あるいはみぞれの天候である。
(2)雪あるいはみぞれの天候が予想される。
(3)天候は雪ではないが積雪がある。
(4)現在の気温が氷点下である。
【0055】
また、気象情報として最近の統計情報を入手可能な場合には上記の条件に加えて以下の条件を用いてもよい。
(4)当日の気温変化率が所定の値を上回り、当該道路を走行時には氷点下になることが予想される。
(5)過去2週間の降雪量が所定値を上回る。
(6)過去3日間の平均気温が所定値を下回る。
【0056】
気象情報が道路の凍結が予測される条件を満たす場合、当該道路の交通情報から凍結が予測されるか調べる。凍結の予測は以下のように行なう。
(1)交通量に基づく予測:単位時間あたりの交通容量は概ね道路の車線数あるいは道路種別から推定演算でき、交通量が交通容量の100%を下回る場合は当該道路の法定速度前後で走行可能である。交通量が交通容量の100%を上回ると渋滞が発生する。そこで、上記天候条件下で渋滞が発生している場合は当該道路が凍結していると予測する。また、上記条件下で交通量が交通容量の例えば10%を下回る場合も、凍結のため交通量が少ないと見なして当該道路が凍結していると予測する。
(2)通行速度に基づく予測:通行速度が当該道路の法定速度から所定の範囲にある場合には渋滞していないと判断し、例えば20km/hのような所定の速度を下回る場合には渋滞と判断する。そこで、上記天候条件下で渋滞が発生している場合は当該道路が凍結していると予測する。
【0057】
通勤時,行楽期間のように渋滞が予想される時間帯,期間については、渋滞と判定する閾値を下げてもよい。例えば、通行速度で渋滞を判定する場合は、通常20km/hを下回る場合に渋滞と判断するものを10km/hを下回る場合に渋滞と判断する。
【0058】
凍結可能性のランク付けを行なってもよい。記憶媒体20の地図データに含まれる道路情報あるいはリンク情報を参照し、北側斜面の道路,傾斜が急な道路,橋などは、通常の凍結可能性を1とした場合に、1あるいは2を加算するものである。また、交通量の交通容量に対する割合、通行速度をランク付けのパラメータとしてもよい。例えば、交通量が交通容量の20%の場合は1を加算,以下5%減る毎に1を加算、交通容量の80%を5%増える毎に1を加算する。また、通行速度が20km/hの場合には1を加算,以下5km/h減少する毎に1を加算する。
【0059】
また、気象情報を用いて凍結予測のランク付けを行なってもよい。例えば、天候が雪の場合は凍結可能性に1を加算、積雪が5cmの場合はさらに1を加算するものである。
【0060】
そして、上記予測された凍結可能性を、半導体記憶装置9の所定の領域に記憶する(S15)。また、凍結予測のランクを、記憶媒体20の地図データに含まれる道路情報あるいはリンク情報に当該リンクのコスト情報として記憶してもよい。HDD21に記憶してもよい。
【0061】
凍結可能性の予測は、車両が凍結地域を走行する時間帯を予測し、その時間帯に予想される交通情報および気象情報によって予測を行なってもよい。位置検出器で検出される車両の現在位置と車速センサ23で検出される車両の速度とから、車両の所定距離を走行する平均速度を求める。そして、車両の現在位置と凍結地域との距離を算出し、その距離と平均速度とから凍結地域を走行する時間帯を予測することができる。時間帯が予測できれば天気情報から当該時間帯の凍結地域における天候を予測することができる。交通量あるいは走行速度についても、取得する交通情報から得られる交通量あるいは走行速度の推移から当該時間帯の交通量あるいは走行速度を予測することが可能である。
【0062】
そして、上記予測の結果、凍結路が全くないと予測された、あるいは凍結が予測される道路を回避可能な経路が一つ以上ある場合(S16:Yes)には、凍結が予測される道路を含まない条件で最適な経路を探索する(S18)。
【0063】
一方、凍結が予測される道路を回避できない場合(S16:No)には、凍結可能性のランクがより低い道路を選択して経路を探索する(S17)。凍結可能性のランクが記憶媒体20に記憶されるリンク情報に当該リンクのコスト情報として記憶されている場合は、経路計算コストの最も低い案内経路が凍結していても比較的走行しやすい経路となる。
【0064】
上記で経路を探索する場合、除雪が実施される頻度が高い,融雪剤が頻繁に撒かれる,スプリンクラーやロードヒーター等の融雪設備を備えている等の条件を加味してもよい。これらの情報は記憶媒体20に記憶されるリンク情報に含めてもよいし半導体記憶装置9あるいはHDD21の所定の領域に記憶してもよい。
【0065】
半導体記憶装置9に記憶された凍結のランク情報は、以降の経路探索に用いられる。また、その記憶内容は同じ道路に対する凍結可能性のランクが計算されるたびに更新される。更新の方法は、新たな値に書き換える方法、過去3回の値との平均値を新たなランク情報とする方法などがある。
【0066】
凍結路回避モードは使用者によって設定/解除可能である。また、季節,日時あるいは現在走行中の地域に応じて自動的に凍結路回避モードへの移行/解除を行なうようにしてもよい。例えば、沖縄では一年を通じて凍結路回避モードには移行しない。また、北海道では10月〜3月の間は凍結路回避モードとなる。東京都心は12月〜2月の日入1時間前〜日出1時間後の間が凍結路回避モードとなる。
【0067】
日付および時刻の情報は、日時データを生成するための周知の時計ICを制御回路8に内蔵して用いる方法、GPS受信機5よりGPS信号を取得して該GPS信号に含まれる日時データを用いる方法、VICSセンタ14との通信データに含まれる日時データを用いる方法、ETC車載器16とETC路上機との通信で得られる日時データを取得する方法等のいずれを用いてもよい。また、日出・日入の時刻は記憶媒体20あるいはHDD21の所定の領域に記憶される。
【0068】
表示装置10の表示画面に表示される地図上で、凍結が予測される道路を他の道路と表示色あるいは表示意匠を変えて表示するようにしてもよい。例えば、凍結が予測される道路は他の道路よりも明度を下げる、あるいは凍結が予測される道路の表示色を黒系統の色とする等して、地図上にはあたかも道路が存在しないように表示させ、使用者が凍結が予測される道路以外の道路を選択して走行するように誘導可能とする。また、案内経路上に凍結が予測される区間が含まれ、その区間に接近した際に凍結が予測される旨のメッセージをポップアップウィンドウ等で表示してもよい。スピーカ15から音声メッセージを送出してもよい。
【0069】
経路探索の条件として予め凍結可能性のランクを設定し、設定された凍結可能性のランクよりも低いすなわち凍結しにくいと予想される道路を含むように案内経路を探索するようにしてもよい。そして、探索された案内経路の区間毎の凍結可能性のランクに応じて色分け表示を行なう。経路探索の条件としての凍結可能性のランクの設定は、使用者によって行なうことができる。
【0070】
また、上記経路探索によって複数の経路が探索された場合には、使用者によってどの案内経路を用いるか選択可能である。この場合、区間毎に凍結可能性が色分け表示されているので、案内経路を選択する際の目安とすることができる。
【0071】
図4は表示装置10に表示される経路探索結果の一例である。車両Cが目的地まで走行する場合、従来技術による経路探索では道路の凍結の有無にかかわらず幅員の広い道路Bを通る経路R2が探索される。一方、本発明の経路探索では、道路Bの凍結が予測される場合には、凍結が予測されない道路Aを通る経路R1が探索される。そして、道路Bは他の道路と表示色あるいは表示意匠を変えて表示される。
【0072】
上記の実施の形態において、凍結路回避モードの設定/解除などの使用者による各種設定は以下のように行なう。使用者が操作スイッチ群7あるいはリモコン端末12の操作、あるいはマイク31からの音声入力によって、表示装置10上に表示されるメニューから機能設定メニューを表示装置10に表示させ、その中から凍結路予測に関する設定画面を選択して表示させる。そして、それぞれの項目について選択・設定を行なう。選択・設定された内容は、外部メモリ9あるいはHDD21の所定の領域に記憶される。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図2】凍結路予測手段を用いた経路探索処理を説明するためのフロー図。
【図3】凍結路予測処理を説明するためのフロー図。
【図4】経路探索結果の表示例を示す図。
【符号の説明】
【0075】
1 位置検出器(位置検出手段)
7 操作スイッチ群(目的地設定手段,探索条件設定手段)
8 制御回路(凍結可能性予測手段,経路探索手段)
9 半導体記憶装置(記憶手段)
10 表示装置(報知手段)
12 リモコン端末(目的地設定手段,探索条件設定手段)
13 送受信装置(交通情報取得手段,気象情報取得手段)
24 音声合成回路(報知手段)
15 スピーカ(報知手段)
20 記憶媒体
21 ハードディスク装置(HDD)
30 音声認識ユニット(目的地設定手段,探索条件設定手段)
31 マイク(目的地設定手段,探索条件設定手段)
100 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の交通情報を取得する交通情報取得手段と、
当該道路を含む地域の気象情報を取得する気象情報取得手段と、
前記取得した交通情報および気象情報から当該道路の凍結可能性を予測する凍結可能性予測手段と、
を有することを特徴とする車載制御装置。
【請求項2】
前記交通情報は当該道路における車両の交通量情報を含み、前記凍結可能性予測手段は前記交通量が所定の範囲内にない場合に当該道路が凍結していると予測するものである請求項1に記載の車載制御装置。
【請求項3】
前記交通情報は当該道路における通行速度情報を含み、前記凍結可能性予測手段は前記通行速度が所定の範囲内にない場合に当該道路が凍結していると予測するものである請求項1または2に記載の車載制御装置。
【請求項4】
前記凍結可能性予測手段は、前記凍結可能性のランク付けを行なうものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項5】
前記凍結可能性の予測結果を記憶する記憶手段を有するものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項6】
前記凍結可能性予測手段により当該道路の凍結が予測される場合、その旨を報知する報知手段を有するものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項7】
車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
目的地を設定する目的地設定手段と、
前記予測された凍結可能性のより低い道路を走行するように、前記現在位置から前記目的地までの案内経路を探索する経路探索手段と、
を有するものである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項8】
前記凍結可能性のランクを前記案内経路の探索条件として設定する探索条件設定手段を有し、
前記経路探索手段は、前記設定された凍結可能性のランクよりも凍結可能性の低い道路を含む案内経路を探索するものである請求項7に記載の車載制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−228020(P2006−228020A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42555(P2005−42555)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】