説明

車載受信装置

【課題】車両の走行中においても、受信データの受信品質を維持しながら、電力消費を低減させること。
【解決手段】本発明の車載受信装置(1)は、車両に設置した複数のアンテナに対応して設けられた複数の受信系統(10)と、前記複数の受信系統(10)で受信した受信信号を合成して受信データを復調する復調処理回路(20)と、受信品質に影響を与える複数の影響項目が予め定められ、影響項目が示す受信状況に対応させて必要受信系統数を決める重みづけ係数が影響項目毎に設定され、車両走行中に前記各影響項目が示す受信状況からそれぞれの重みづけ係数を決定し、決定した重みづけ係数を用いて現在の通信環境での必要受信系統数を算出する算出部(60)と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタルテレビジョン放送受信用のダイバーシチ装置に適用可能な車載受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上波デジタル放送受信用の車載受信装置が開発されている。かかる車載受信装置では、アンテナ、アンプ、チューナーを有する受信系統が複数設けられ、当該複数の受信系統から出力された受信信号を最大比合成して受信データが生成され、生成された受信データに基づいて地上波デジタル放送の再生が行なわれる(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような車載受信装置では、車両の停止中においては、車両の移動に伴うフェージング等の影響が少なくなることから、全ての受信系統の受信信号を合成せずとも所望の受信品質の受信データを得ることが可能である。そこで、上述の車載受信装置では、車両の停止中において、一部の受信系統に対する電源供給を制限する。この結果、上述の車載受信装置では、車両の停止中においては、全受信系統に対する電源供給を維持する場合と比較して電力消費を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−161691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の車載受信装置では、車両の走行中においては、所望の受信品質の受信データを得るために全受信系統に対する電源供給を維持し続けるため、電力消費を低減させることができないという問題点があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、車両の走行中においても、受信データの受信品質を維持しながら、電力消費を低減させることが可能な車載受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車載受信装置は、車両に設置した複数のアンテナに対応して設けられた複数の受信系統と、前記複数の受信系統で受信した受信信号を合成して受信データを復調する復調部と、受信品質に影響を与える複数の影響項目が予め定められ、影響項目が示す受信状況に対応させて必要受信系統数を決める重みづけ係数が影響項目毎に設定され、車両走行中に前記各影響項目が示す受信状況からそれぞれの重みづけ係数を決定し、決定した重みづけ係数を用いて現在の通信環境での必要受信系統数を算出する算出部と、を具備することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、受信品質に影響を与える複数の影響項目が予め定められ、影響項目が示す受信状況に対応させて必要受信系統数を決める重みづけ係数が影響項目毎に設定され、車両走行中に各影響項目が示す受信状況からそれぞれの重みづけ係数を決定し、決定した重みづけ係数を用いて現在の通信環境での必要受信系統数を算出する。このため、車両の走行中において通信環境が刻々と変化する場合であっても、現在の通信環境に対応した必要受信系統数の受信系統に対して電源供給を継続することができ、受信データの受信品質を維持しながら、電力消費を低減させることができる。
【0009】
上記車載受信装置において、前記算出部によって算出された必要受信系統数を前記複数の受信系統の総数から減算した数の受信系統に対する電源供給を制限する電源制御部を具備してもよい。
【0010】
上記車載受信装置において、前記影響項目は、前記車両の移動速度と、前記受信系統で受信された受信信号のC/N(Carrier to Noise Ratio)と、前記受信系統で受信された受信信号の電界強度と、前記受信系統でのマルチパス数と、を含んでもよい。
【0011】
この構成によれば、影響項目として、車両の走行中における移動速度、各受信系統における受信信号のC/N及び電界強度、各受信系統における受信信号の合成結果に基づいて推定されたマルチパス数が用いられる。このため、車両の移動速度が相対的に低くても、ビル陰等、受信品質が悪化し易い場合には、必要受信系統数を増加させることができる。
【0012】
上記車載受信装置において、前記算出部は、前記複数の受信系統の総数をn、前記移動速度に応じた重みづけ係数をWsp、前記受信状況として検出された前記C/Nの重みづけ係数をWcn、前記受信状況として検出された前記電界強度の重みづけ係数をWef、前記受信状況として検出された前記マルチパスの重みづけ係数をWmpとする場合、必要受信系統数BRを、
BR=n*(Wsp+Wmp+Wef+Wcn)/4
を用いて算出してもよい。
【0013】
上記車載受信装置において、前記複数の受信系統には、それぞれ、前記アンテナからの出力信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路からの出力信号を中間周波数信号に変換するチューナーとが設けられてもよい。
【0014】
上記車載受信装置において、前記複数の受信系統における前記受信信号を合成して取得された前記受信データを復号する復号回路と、前記復号回路で復号された受信データを再生する再生装置と、を更に具備し、前記再生装置は、前記車両の後部座席用に設置されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、車両の走行中においても、受信データの受信品質を維持しながら、電力消費を低減させることが可能な車載受信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る車載受信装置の構成図である。
【図2】本実施の形態に係る受信系統総数に対する重みづけ係数を説明するための図である。
【図3】本実施の形態に係る必要受信系統数を説明するための図である。
【図4】本実施の形態に係る必要受信系統数の算出動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施の形態に係る車載受信装置は、車両に搭載され、地上デジタルテレビジョン放送などの放送信号を受信する車載受信装置である。
【0018】
図1は、本実施の形態の車載受信装置の構成図である。図1に示すように、車載受信装置1は、複数の受信系統10〜10と、複数の受信系統10〜10における受信信号をそれぞれ復調して合成する復調部20と、復調部20で合成された受信データを復号する復号回路30と、復号回路30で復号された受信データを再生する再生装置40と、車載受信装置1が搭載される車両の移動速度を検出する移動速度検出部50と、複数の受信系統10〜10のうちの必要受信系統数を算出する算出部60と、複数の受信系統10〜10に対する電源供給を制御する電源制御部70と、から構成される。
【0019】
複数の受信系統10〜10は、それぞれ、アンテナ11〜11から出力される受信信号を増幅するアンプ12〜12(増幅回路)と、アンプ12〜12とチューナー14〜14とを接続する電線に対して電源電圧を印加するアンプDCサプライ13〜13と、アンプDCサプライ13〜13に接続され、アンプ12〜12で増幅された増幅信号を選局及び中間周波数信号に変換するチューナー14〜14と、チューナー14〜14から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するADC(アナログデジタルコンバーター)15〜15と、を備えて構成される。
【0020】
アンテナ11〜11とアンプ12〜12とは、車載受信装置1の筐体外に配置される。このように、アンプ12〜12が筐体外に設けられる場合でも、アンプ12〜12にアンプDCサプライ13〜13が直接接続されているので、アンプ12〜12に対する電源供給を行うことができる。以下、複数の受信系統10〜10を区別しない場合は、受信系統10と総称する。
【0021】
復調部20は、各ADC15から出力された受信信号を合成し、合成信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)や、マルチパスの打ち消し処理、デ・マッピング処理等を行う。
【0022】
また、復調部20は、C/N(Carrier to Noise Ratio)検出部21と、電界強度検出部22と、伝送路推定部23と、を含む。C/N検出部21は、電源供給が行なわれている各受信系統10で受信された受信信号のC/Nを検出する。電界強度検出部22は、電源供給が行なわれている各受信系統10で受信された受信信号の電界強度を検出する。伝送路推定部23は、電源供給が行なわれている各受信系統10で受信された受信信号に基づいてマルチパス数を推定する。
【0023】
復号回路30は、復調部20に接続されており、復調部20から入力された受信データを復号し、再生装置40に出力する。再生装置40は、ディスプレーやスピーカ等から構成されており、復号回路30から入力された受信データを再生する。再生装置40は、車両の運転手の運転に影響を与えることがないように、例えば、後部座席に設置されてもよい。
【0024】
移動速度検出部50は、車両の走行中における移動速度を検出する。移動速度検出部50は、例えば、車両に設置された速度計や、ナビゲーション装置からの入力信号に基づいて、車両の走行中における移動速度を検出する。
【0025】
算出部60は、車両の走行中における必要受信系統数を算出する。ここで、必要受信系統数とは、複数の受信系統10〜10の総数(以下、受信系統総数という)のうち電源供給を行う受信系統10の数である。具体的には、算出部60は、車両の走行中における上記受信データが所望の受信品質を満たすように、影響項目の値に応じて重みづけ係数を決定し、決定した重みづけ係数を用いて現在の通信環境での必要受信系統数を算出する。
【0026】
ここで、影響項目とは、上記受信データの受信品質に影響を与える項目であり、例えば、移動速度検出部50で検出される移動速度と、C/N検出部21で検出されたC/N(Carrier to Noise Ratio)と、電界強度検出部22で検出された電界強度と、伝送路推定部23で推定されたマルチパス数のような複数の項目が用いられる。これらの各影響項目の値によって、電源供給が行なわれている受信系統10における受信状況が示される。また、上述の重みづけ係数は、各影響項目が示す受信状況に対応した必要受信系統数を決定するためのものである。各影響項目の重みづけ係数は、各影響項目が示す受信状況に応じて決定される。
【0027】
図2は、各影響項目が示す受信状況に応じた重みづけ係数を説明するための図である。また、図2においては、影響項目として、例えば、移動速度検出部50で検出される移動速度、C/N検出部21で検出されるC/N、電界強度検出部22で検出される電界強度、伝送路推定部23で推定されるマルチパス数を用いる例を示している。なお、C/N検出部21では、受信系統10毎に受信信号のC/Nが検出されるので、これらの平均値が影響項目として用いられてもよい。同様に、電界強度検出部22では、受信系統10毎に受信信号の電界強度が検出されるので、これらの平均値が影響項目として用いられてもよい。以下において、影響項目として用いるC/Nとは、受信系統10毎の受信信号のC/Nの平均値を示し、影響項目として用いる電界強度は受信系統10毎に受信信号の電界強度の平均値を示すものとして説明を行う。また、図2の横軸は、各影響項目の値を示し、縦軸は、影響項目毎の重みづけ係数を示すものとする。
【0028】
図2に示すように、影響項目としての移動速度が相対的に大きくなるにつれて、移動速度に応じた重みづけ係数(以下、移動速度係数という)Wspは大きくなるように設定される。これは、移動速度が大きくなるにつれ、フェージング等の影響を受け易くなることから、受信系統数を増加させる必要があるためである。なお、図2に示すように、移動速度が所定値以下の場合、移動速度係数Wspを緩やかに増加させ、移動速度が所定値を超える場合、移動速度係数Wspを急激に増加させてもよい。これは、移動速度が所定値以下の場合、フェージング等の影響は大きく変化しないためである。
【0029】
また、影響項目としてのマルチパス数が相対的に大きくなるにつれて、マルチパス数に応じた重みづけ係数(以下、マルチパス係数という)Wmpは大きくなるように設定される。これは、マルチパス数が大きくなるにつれ、シンボル間干渉により受信状況が悪化することから、受信系統数を増加させる必要があるためである。なお、図2に示すように、マルチパス数が所定値以下の場合、マルチパス係数Wmpを急激に増加させ、マルチパス数が所定値を超える場合、マルチパス係数Wmpを緩やかに増加させてもよい。これは、マルチパス数が所定値を超えると、受信状況に与える影響は大きく変化しなくなるためである。
【0030】
また、C/Nが相対的に大きくなるにつれて、C/Nに応じた重みづけ係数(以下、C/N係数という)Wcnは小さくなるように設定される。これは、C/Nが大きくなるにつれ、受信状況は良好となるため、受信系統数を削減可能であるためである。なお、図2に示すように、C/Nが所定値以下の場合、C/N係数Wcnを一定(例えば、1)とし、C/Nが所定値を超える場合、C/N係数Wcnを徐々に削減してもよい。これは、C/Nが所定値以下の場合、所望の受信状況は満たされないことから、受信系統数を維持する必要があるためである。
【0031】
また、電界強度が相対的に大きくなるにつれて、電界強度に応じた重みづけ係数(以下、電界強度係数という)Wefは小さくなるように設定される。これは、電界強度が大きくなるにつれ、受信状況は良好となるため、受信系統数を削減可能であるためである。
【0032】
以上のように、算出部60は、各影響項目の受信状況に応じた重みづけ係数を決定し、決定された重みづけ係数をそれぞれ受信系統総数に乗算して、影響項目毎の必要受信系統数を算出する。
【0033】
図3は、影響項目毎の必要受信系統数を説明するための図である。また、図3の横軸は、各影響項目の値を示し、縦軸は、影響項目毎の必要受信系統数を示すものとする。なお、図3では、算出された必要受信系統数が小数点以下を有する場合は、切り上げられた値が示されている。
【0034】
図3に示すように、移動速度が相対的に大きくなるにつれて、移動速度係数Wspが大きく設定されるので(図2参照)、移動速度に応じた必要受信系統数Nspは大きくなる。例えば、移動速度がxである場合、図2に示すように移動速度係数Wspは略0.2に設定されるので、移動速度(ここでは、x)に応じた必要受信系統数Nspは、移動速度係数Wsに受信系統総数nを乗算した0.2nである。なお、図示しないが、マルチパス数に応じた必要受信系統数Nmpについても、移動速度に応じた必要受信系統数Nspと同様に、マルチパス数が相対的に大きくなるにつれて、大きくなる。
【0035】
一方、C/N係数が相対的に大きくなるにつれて、C/N係数Wcnは小さく設定されるので(図2参照)、C/Nに応じた必要受信系統数Ncnは小さくなる。図示しないが、電界強度に応じた必要受信系統数Nefについても、C/Nに応じた必要受信系統数Ncnと同様に、電界強度が相対的に大きくなるにつれて、小さくなる。
【0036】
以上のように、算出部60は、各影響項目が示す受信状況に応じた重みづけ係数を受信系統総数nに乗算して、影響項目毎の必要受信系統数を算出する。また、算出部60は、算出した影響項目毎の必要受信系統数を影響項目数で除算して、車両の走行中における必要受信系統数を算出する。
【0037】
例えば、必要受信系統数BRは、受信系統総数をn、移動速度係数をWsp、C/N係数をWcn、電界強度係数をWef、マルチパス係数をWmp、影響項目数Ninf(ここでは、4)とすると、以下の式(1)で算出される。
BR=(n*Wsp+n*Wcn+n*Wef+n*Wmp)/Ninf
…式(1)
【0038】
或いは、必要受信系統数BRは、受信系統総数をn、移動速度係数をWsp、C/N係数をWcn、電界強度係数をWef、マルチパス係数をWmp、影響項目数Ninf(ここでは、4)とすると、以下の式(2)で算出されてもよい。
BR=n*(Wsp+Wmp+Wef+Wcn)/Ninf
…式(2)
【0039】
なお、式(1)(2)において、受信系統数は、整数であることから、算出された必要受信系統数BRが小数点以下を有する場合は、切り上げられてもよい。
【0040】
電源制御部70は、算出部60によって算出された必要受信系統数BRを受信系統総数Nから減算した数の受信系統10に対する電源供給を制限する。具体的には、電源制御部70は、C/N検出部21によって検出された各受信系統10におけるC/N又は電界強度検出部22によって検出された各受信系統10における電界強度に基づいて、電源供給を制限する受信系統10を決定する。なお、電源制御部70は、受信系統10に対する電源供給を制限する際に、当該受信系統10に対する電源供給を完全に遮断してもよいし、完全に遮断しなくとも必要最低限の電源供給を維持してもよい。
【0041】
例えば、電源制御部70は、最も悪いC/Nを有する受信系統10から順番に、受信系統総数Nから必要受信系統数BRを減算した数の受信系統を、電源供給を制限する受信系統10として決定してもよい。また、電源制御部70は、最も悪い電界強度を有する受信系統10から順番に、受信系統総数Nから必要受信系統数BRを減算した数の受信系統10を、電源供給を制限する受信系統10として決定してもよい。また、電源制御部70は、C/N及び電界強度の双方を考慮して、電源供給を制限する受信系統10を決定してもよい。
【0042】
また、電源制御部70は、決定された受信系統10のアンプDCサプライ13に対して、アンプ12に対する電源供給を制限するように指示する。また、電源制御部70は、決定された受信系統10のチューナー14及びアナログデジタルコンバーター15に対する電源供給を制限する。
【0043】
次に、以上のように構成された車載受信装置1の動作について説明する。図4は、車載受信装置1における動作を示すフローチャートである。なお、図4に示すフローは、必要受信系統数を時間的に変更できるように、所定の時間間隔で繰り返されてもよい。必要受信系統数を動的に変更することにより、車両の走行中において刻々と変化する場合であっても、車両の通信環境に応じた数の受信系統10に電源供給を行うことができる。
【0044】
図4に示すように、算出部60は、各影響項目が示す受信状況を取得する(ステップS101)。上述のように、影響項目とは、複数の受信系統から出力された受信信号を合成して取得される受信データの受信品質に影響を与える各種項目であり、例えば、車両の移動速度、マルチパス数、各受信系統10におけるC/N及び電界強度などである。以下では、各影響項目が示す受信状況として、C/N検出部21におけるC/Nの検出値、電界強度検出部22における電界強度の検出値、伝送路推定部23におけるマルチパス数の推定値、移動速度検出部50おける移動速度の検出値が取得されるものとして説明を行う。
【0045】
算出部60は、取得した各影響項目が示す受信状況に応じた重みづけ係数を決定する(ステップS102)。図2を参照して説明したように、移動速度検出部50によって検出された移動速度に応じた移動速度係数Wsp、C/N検出部21によって検出されたC/Nに応じたC/N係数Wcn、電界強度検出部22によって検出された電界強度係数Wef、伝送路推定部23によって推定されたマルチパス数に応じたマルチパス係数Wmpがそれぞれ決定される。
【0046】
算出部60は、決定された影響項目毎の重みづけ係数を用いて現在の通信環境での必要受信系統数を算出する(ステップS103)。具体的には、算出部60は、受信系統総数に対してステップS102で決定された重みづけ係数を乗算して、必要受信系統数を算出する。例えば、算出部60は、上述の式(1)又は式(2)を用いて、最低受信系統数を算出してもよい。
【0047】
電源制御部70は、C/N検出部21によって検出された各受信系統10におけるC/N又は電界強度検出部22によって検出された各受信系統10における電界強度に基づいて、電源供給を制限する受信系統10を決定する(ステップS104)。具体的には、電源制御部70は、最も悪いC/Nを有する受信系統から順番に、受信系統総数から必要受信系統数を減算した数の受信系統を、電源供給を制限する受信系統10として決定してもよい。また、電源制御部70は、最も悪い電界強度を有する受信系統から順番に、受信系統総数から必要受信系統数を減算した数の受信系統を、電源供給を制限する受信系統10として決定してもよい。また、電源制御部70は、C/N及び電界強度の双方を考慮して、電源供給を制限する受信系統10を決定してもよい。
【0048】
電源制御部70は、ステップS104で決定された受信系統10のアンプ12、チューナー14、アナログデジタルコンバーター15に対する電源供給を停止する(ステップS105)。
【0049】
本実施の形態に係る車載受信装置1によれば、受信品質に影響を与える複数の影響項目が予め定められ、影響項目が示す受信状況に対応させて必要受信系統数を決める重みづけ係数が影響項目毎に設定され、車両走行中に各影響項目が示す受信状況からそれぞれの重みづけ係数を決定し、決定した重みづけ係数を用いて現在の通信環境での必要受信系統数を算出する。このため、車両の走行中において通信環境が刻々と変化する場合であっても、必要受信系統数の受信系統10に対して電源供給を継続することができ、受信データの受信品質を維持しながら、電力消費を低減させることができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る車載受信装置1によれば、影響項目として、前記車両の走行中における移動速度、各受信系統10で受信された受信信号のC/N及び電界強度、各受信系統10でのマルチパス数が用いられる。このため、車両の移動速度が相対的に低くても、ビル陰等、受信品質が悪化し易い場合には、必要受信系統数を増加させることができる。例えば、受信系統総数が10本である場合、移動速度係数Wspが0.2であり、移動速度に応じた必要受信系統数が2本になる場合でも、C/N係数が1、電界強度係数が0.8、マルチパス係数が0.8となるような場合、必要受信系統数は、7本となる。このように、影響項目として、移動速度以外に、C/N、電界強度、マルチパス数などの受信状態を考慮することにより、必要受信系統数を適切に算出できる。
【0051】
また、本実施の形態に係る車載受信装置1によれば、C/N検出部21によって検出されたC/N又は/及び電界強度検出部22によって検出された電界強度が悪い受信系統10から順番に、電源供給を制限することを決定する。したがって、電源供給を行う受信系統10を必要受信系統総数まで減らしても、受信データの所望の受信状況を維持することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。上記実施の形態における各構成要素の配置、大きさなどは適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…車載受信装置
10…受信系統
11…アンテナ
12…アンプ
13…アンプDCサプライ
14…チューナー
15…ADC
20…復調部
21…C/N検出部
22…電界強度検出部
23…伝送路推定部
30…復号回路
40…再生装置
50…移動速度検出部
60…算出部
70…電源制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置した複数のアンテナに対応して設けられた複数の受信系統と、
前記複数の受信系統で受信した受信信号を合成して受信データを復調する復調部と、
受信品質に影響を与える複数の影響項目が予め定められ、影響項目が示す受信状況に対応させて必要受信系統数を決める重みづけ係数が影響項目毎に設定され、車両走行中に前記各影響項目が示す受信状況からそれぞれの重みづけ係数を決定し、決定した重みづけ係数を用いて現在の通信環境での必要受信系統数を算出する算出部と、
を具備することを特徴とする車載受信装置。
【請求項2】
前記算出部によって算出された必要受信系統数を前記複数の受信系統の総数から減算した数の受信系統に対する電源供給を制限する電源制御部を具備することを特徴とする請求項1記載の車載受信装置。
【請求項3】
前記影響項目は、前記車両の移動速度と、前記受信系統で受信された受信信号のC/N(Carrier to Noise Ratio)と、前記受信系統で受信された受信信号の電界強度と、前記受信系統でのマルチパス数と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の車載受信装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記複数の受信系統の総数をn、前記移動速度に応じた重みづけ係数をWsp、前記受信状況として検出された前記C/Nの重みづけ係数をWcn、前記受信状況として検出された前記電界強度の重みづけ係数をWef、前記受信状況として検出された前記マルチパスの重みづけ係数をWmpとする場合、必要受信系統数BRを、
BR=n*(Wsp+Wmp+Wef+Wcn)/4
を用いて算出することを特徴とする請求項3に記載の車載受信装置。
【請求項5】
前記複数の受信系統には、それぞれ、前記アンテナからの出力信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路からの出力信号を中間周波数信号に変換するチューナーとが設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車載受信装置。
【請求項6】
前記複数の受信系統における前記受信信号を合成して取得された前記受信データを復号する復号回路と、
前記復号回路で復号された受信データを再生する再生装置と、を更に具備し、
前記再生装置は、前記車両の後部座席用に設置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の車載受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58851(P2013−58851A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195109(P2011−195109)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】