説明

車載器、料金収受システム、及び車両の位置推定方法

【課題】公衆に用いられる無線LANアクセスポイントによる車両の位置の推定が困難な場所であっても、無線LANアクセスポイントを用いた車両の位置を推定することを目的とする。
【解決手段】課金エリアには、独自無線LANアクセスポイントが、公衆に用いられる公衆無線LANアクセスポイントを補うように設置されている。車載器20は、公衆無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる公衆無線LAN−IDと、公衆無線LAN設置位置データベースに基づいて、車両の位置を推定し、独自無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる独自無線LAN−IDと、独自無線LAN設置位置データベースに基づいて、車両の位置を推定する。そして、選択部30が、公衆無線LAN−IDから推定された車両の位置、及び独自無線LAN−IDから推定された車両の位置の何れか一方を、車両の現在位置として選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器、料金収受システム、及び車両の位置推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が複数のGPS(Global Positioning System)衛星から送信された電波をアンテナで受信し、内蔵されたGPS測位装置により車両の位置及び走行方向を認識し、該車両が課金エリアに入ると、料金を支払う車載器が開発されている。
しかしながら、GPS測位装置を用いた車両の位置計測は、GPS衛星から送信された電波を受信することで位置を推定するため、トンネル等のGPS衛星から送信された電波を受信できない場所では、車両の位置を推定することができない。また、ビルの谷間等の電波が反射する場所や、利用可能なGPS衛星の数が少なくなる場所では、位置の推定精度が低下するという問題があった。
【0003】
この問題を解消するため、GPS衛星から送信された電波を用いて位置を推定する代わりに、所謂Wi−Fi(Wireless Fidelity)と呼ばれる無線LAN(Local Area Network)による主にインターネット接続を目的として設置された無線LANアクセスポイント(以下、「公衆無線LANアクセスポイント」という。)が送信する電波を用いて位置を推定する技術が開発されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
公衆無線LANアクセスポイントが送信する電波を用いた位置の推定方法としては、例えば、以下のような方法がある。
都市部に多数点在する公衆無線LANアクセスポイントが送信する電波には、一意に識別可能な固有のIDが含まれており、対応する無線LAN端末であれば、誰でも電波を捉えて該IDを識別できる。そこで、公衆無線LANアクセスポイントが送信する電波を用いた位置推定サービスを提供する事業者(以下、「位置推定サービス会社」という。)が、この公衆無線LANアクセスポイントのIDと公衆無線LANアクセスポイントの設置位置を示す位置情報を対応付けたデータベースを作成する。
【0005】
なお、上記データベースの作成方法には、例えば以下のような方法がある。
アンテナを搭載した車両で都市部を走行し、公衆無線LANアクセスポイントが送信する電波を捕捉し、予め特定されている位置情報と結びつけデータベースに登録する。公衆無線LANアクセスポイントの所有者自身がIDと位置情報をデータベースに登録する。公衆無線LANアクセスポイントが送信する電波とGPS衛星が送信する電波の両方を受信可能であって、位置を推定する端末にデータベース登録する機能を持たせ、該端末の所有者がデータベースに登録する。
【0006】
そして、位置推定サービスの利用者は、所持する無線LAN端末で公衆無線LANアクセスポイントが送信する電波を受信し、そのIDに基づいて、位置推定サービス会社のデータベースを参照し、自身の位置を得る。なお、データベースの参照方法は、無線LAN端末に予めデータベースをダウンロードし、ダウンロードしたデータベースを参照する方法や、データベースを位置推定サービス会社が所有するサーバに記憶させ、位置の推定を行う毎に、例えばインターネット経由でサーバに記憶されているデータベースを参照する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−519495号公報
【特許文献2】特表2010−509571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、トンネル内やアンダーパス等の公衆無線LANアクセスポイントが設置されていない場所、又は公衆無線LANアクセスポイントが稠密に設置されていない場所では、公衆無線LANアクセスポイントが送信する電波を用いた車両の位置の推定ができない場合がある。
さらに、公衆無線LANアクセスポイントが新たに設置されても、設置した者(事業者)と位置推定サービス会社とが異なる場合は、データベースへの登録が遅れる場合がある。このような場合は、利用者は新たに設置された公衆無線LANアクセスポイントを反映した位置推定サービスの提供を迅速に受けることができない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、公衆に用いられる無線LANアクセスポイントによる車両の位置の推定が困難な場所であっても、無線LANアクセスポイントを用いた車両の位置の推定ができる車載器、料金収受システム、及び車両の位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の車載器、料金収受システム、及び車両の位置推定方法は以下の手段を採用する。
【0011】
すなわち、本発明に係る車載器は、無線LAN(Local Area Network)アクセスポイントから送信される電波に含まれる、無線LANアクセスポイントを識別するための識別信号を用いて車両の位置を推定する車載器であって、公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波、及び該第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された前記第1の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第1の識別信号と、該第1の識別信号と前記第1の無線LANアクセスポイントの設置位置とを対応付けた第1位置情報に基づいて、車両の位置を推定する第1推定手段と、前記受信手段によって受信された前記第2の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第2の識別信号に基づいて、車両の位置を推定する第2推定手段と、前記第1推定手段によって推定された車両の位置、及び前記第2推定手段によって推定された車両の位置の何れか一方を、車両の現在位置として選択する選択手段と、を備える。
【0012】
本発明によれば、受信手段によって、公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波、及び第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波が受信される。
第1の無線LANアクセスポイントとは、主にインターネット接続を目的として設置され、公衆の場で使用可能な無線LANアクセスポイントであり、第2の無線LANアクセスポイントとは、車両の位置を推定するため設置された無線LANアクセスポイントである。なお、第1の無線LANアクセスポイントと第2の無線LANアクセスポイントとは、設置の目的が異なるものの、その構造及び機能は同様である。そのため、第2の無線LANアクセスポイントは、インターネット接続するために用いられることも可能である。
【0013】
また、「第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイント」とは、第1の無線LANアクセスポイントが稠密に設置されていない領域に対して第2の無線LANアクセスポイントを設置することをいう。
第1推定手段によって、受信手段で受信された第1の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第1の識別信号と、第1位置情報に基づいて、車両の位置が推定される。第1位置情報とは、第1の識別信号と該第1の無線LANアクセスポイントの設置位置とを対応付けた情報であり、設置位置は、緯度及び経度によって示される。
一方、第2推定手段によって、受信手段で受信された第2の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第2の識別信号に基づいて、車両の位置が推定される。
そして、選択手段によって、第1推定手段で推定された車両の位置、及び第2推定手段で推定された車両の位置の何れか一方が、車両の現在位置として選択される。
【0014】
このように、本発明は、公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波を用いて車両の位置の推定を行うので、公衆に用いられる無線LANアクセスポイントによる車両の位置の推定が困難な場所であっても、無線LANアクセスポイントを用いた車両の位置の推定ができる。
【0015】
また、本発明の車載器は、前記選択手段が、前記受信手段によって前記第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波のみが受信された場合、前記第1推定手段によって推定された車両の位置を車両の現在位置として選択し、前記受信手段によって前記第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波のみが受信された場合、前記第2推定手段によって推定された車両の位置を車両の現在位置として選択し、前記受信手段によって前記第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波と共に前記第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波が受信された場合、車両の位置の推定精度がより高い電波に含まれる識別信号に基づいて推定された車両の位置を車両の現在位置として選択してのよい。
【0016】
本発明によれば、受信手段で第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波のみが受信された場合、選択手段によって、第1推定手段で推定された車両の位置が、車両の現在位置として選択される。また、受信手段で第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波のみが受信された場合、選択手段によって、第2推定手段で推定された車両の位置が、車両の現在位置として選択される。
そして、受信手段で第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波と共に第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波が受信された場合、選択手段によって、車両の位置の推定精度がより高い電波に含まれる識別信号に基づいて推定された車両の位置が、車両の現在位置として選択される。
【0017】
このように、本発明は、第1の無線LANアクセスポイント及び第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波の受信状態に応じて、第1推定手段又は第2推定手段で推定された車両の位置の何れか一方を選択するので、車両の位置の推定精度をより高くできる。
【0018】
また、本発明の車載器は、前記第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波及び前記第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波に基づいた車両の位置の推定精度が、所定精度以下となる領域を示した情報を記憶した記憶手段を備え、前記選択手段が、選択した車両の位置が前記記憶手段に記憶された前記情報により示される領域に含まれる場合、車両の現在位置として、過去に推定された車両の複数の位置に基づいて算出された車両の位置を選択してもよい。
【0019】
本発明によれば、無線LANアクセスポイントから送信される電波に基づいた車両の位置の推定精度が所定精度以下となる領域を示した情報が、記憶手段に記憶される。
そして、選択手段は、選択した車両の位置が上記情報により示される領域に含まれる場合、車両の現在位置として、過去に推定された車両の複数の位置に基づいて算出された車両の位置を選択する。
すなわち、選択手段は、第1の無線LANアクセスポイント又は第2の無線LANアクセスポイントから送信された電波によって推定された車両の位置が、上記所定精度以下の領域内の場合、推定された車両の位置は、推定精度が低く、実際の車両の位置とは異なる可能性があると判定する。
なお、過去に推定された車両の複数の位置とは、現在時から所定時間前の間における車両の複数の位置である。そして、該複数の位置から車両の進行方向及び速度が算出され、前回推定された車両の位置並びに算出された車両の進行方向及び速度に基づいて、車両の現在の位置を算出する。
【0020】
このように、本発明は、無線LANアクセスポイントから送信される電波に基づいた車両の位置の推定精度が低い場合、過去に推定された車両の複数の位置に基づいて算出された車両の位置を、車両の現在位置として選択するので、車両の位置の推定精度をより高くできる。
【0021】
また、本発明の車載器は、前記第2推定手段が、前記受信手段によって受信された前記第2の識別信号と、前記第2の識別信号と前記第2の無線LANアクセスポイントの設置位置とを対応付けた第2位置情報に基づいて、車両の位置を推定してもよい。
【0022】
本発明によれば、受信手段によって受信された電波を送信した第2の無線LANアクセスポイントの設置位置を車両の位置と推定するので、簡易な構成で車両の位置を推定することができる。
【0023】
また、本発明の車載器は、前記第2の識別信号が、自身を含む電波を送信した前記第2の無線LANアクセスポイントの設置位置を示す設置位置情報を含み、前記第2推定手段は、前記第2の識別信号に含まれる前記設置位置情報に基づいて車両の位置を推定してもよい。
【0024】
本発明によれば、第2の識別信号のみから車両の位置を推定するので、より簡易な構成で車両の位置を推定することができる。
【0025】
一方、本発明に係る料金収受システムは、公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントと、前記第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントと、請求項1から請求項5の何れか1項記載の車載器を備え、該車載器で推定された位置に基づいて、課金が行われる対象となる予め定められた領域の入退出に関する入退出情報を送信する車両と、前記車両から送信された前記入退出情報を受信し、該入退出情報に基づいて該入退出情報を送信した前記車両に対して課金を行う情報処理装置と、を備える。
【0026】
本発明によれば、公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波を用いて車両の位置の推定を行うので、公衆に用いられる無線LANアクセスポイントによる車両の位置の推定が困難な場所であっても、無線LANアクセスポイントを用いた車両の位置の推定ができる。
【0027】
また、本発明に係る車両の位置推定方法は、無線LAN(Local Area Network)アクセスポイントから送信される電波に含まれる、無線LANアクセスポイントを識別するための識別信号を用いて車両の位置を推定する車両の位置推定方法であって、公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波、及び該第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波を受信する第1工程と、受信された前記第1の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第1の識別信号と、該第1の識別信号と前記第1の無線LANアクセスポイントの設置位置とを対応付けた第1位置情報に基づいて、車両の位置を推定し、受信された第2の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第2の識別信号に基づいて、車両の位置を推定する第2工程と、前記第1の識別信号から推定された車両の位置、及び前記第2の識別信号から推定された車両の位置の何れか一方を、車両の現在位置として選択する第3工程と、を含む。
【0028】
本発明によれば、公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波を用いて車両の位置の推定を行うので、公衆に用いられる無線LANアクセスポイントによる車両の位置の推定が困難な場所であっても、無線LANアクセスポイントを用いた車両の位置の推定ができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、衆に用いられる無線LANアクセスポイントによる車両の位置の推定が困難な場所であっても、無線LANアクセスポイントを用いた車両の位置の推定ができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る料金収受システムを示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る公衆無線LANアクセスポイントと独自無線LANアクセスポイントの設置位置を示す模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車載器の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る位置情報選択プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る独自無線LANアクセスポイント及び車載器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明に係る車載器、料金収受システム、及び車両の位置推定方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る料金収受システム10の全体構成図である。
料金収受システム10は、課金(ロードプライシング(道路課金))が行われる対象となる予め定められたエリア(領域)である課金エリアAを走行する車両12に対して、課金を行うシステムである。
【0033】
車両12は、車載器を搭載しており、車載器は、課金エリアA内及び課金エリアAの周辺に設置されている無線LANアクセスポイント14から送信される、無線LANアクセスポイント14を識別するための識別信号を用いて車両12の位置を推定し、現在の位置を示す位置情報を生成する。なお、位置情報は、車両12の位置を緯度及び経度で示したものである。そして、車載器は、生成した位置情報に基づいた、課金エリア内の走行に関する走行情報を課金センター16へ送信する。
【0034】
課金センター16は、情報処理装置18を備える。情報処理装置18は、受信した位置情報に基づいて、課金エリアAを走行した車両12に対して課金を行う。なお、課金センター16は、課金エリアA内に設けられていてもよし、課金エリアA外に設けられていてもよい。
【0035】
ここで、車両12は、主にインターネット接続を目的として設置された無線LANアクセスポイント(以下、「公衆無線LANアクセスポイント」という。)14Aが送信する電波を用いて位置を推定する。しかし、トンネル内やアンダーパス等の公衆無線LANアクセスポイント14Aが設置されていない場所、又は公衆無線LANアクセスポイント14Aが稠密に設置されていない場所では、公衆無線LANアクセスポイントが送信する電波を用いた車両12の位置の推定ができない場合がある。
【0036】
そこで、図2に示すように、本第1実施形態に係る料金収受システム10では、公衆無線LANアクセスポイント14Aが設置されていない場所又は稠密に設置されていない場所に対して、主に車両12の位置を推定するための無線LANアクセスポイント(以下、「独自無線LANアクセスポイント」という。)14Bを設置する。
なお、独自無線LANアクセスポイント14Bは、その設置目的は異なるものの、公衆無線LANアクセスポイント14Aと構造及び機能は同様であり、独自無線LANアクセスポイント14Bは、インターネット接続するために用いられることも可能である。
【0037】
そして、公衆無線LANアクセスポイント14A及び独自無線LANアクセスポイント14Bが送信する電波には、一意に識別可能な固有のID(識別信号)が含まれており、対応する無線LAN端末(本第1実施形態では、車載器)であれば、IDを識別できる。なお、以下の説明において、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波に含まれるIDを公衆無線LAN−IDといい、独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波に含まれるIDを独自無線LAN−IDという。
また、公衆無線LANアクセスポイント14Aを設置する事業者と、独自無線LANアクセスポイント14Bを設置する事業者は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
公衆無線LANアクセスポイント14Aが設置されている領域を、公衆無線LAN位置推定エリアといい、独自無線LANアクセスポイント14Bが設置されている領域(公衆無線LANアクセスポイント14Aと独自無線LANアクセスポイント14Bとが混在して設置されている領域を含む)を、独自無線LAN位置推定エリアという。
【0038】
図3は、車両12に搭載される車載器20の構成を示すブロック図である。
車載器20は、受信部22、ID識別部24、公衆無線LAN車両位置推定部26、独自無線LAN車両位置推定部28、選択部30、走行経路導出部32、課金エリア入退出判定部34、及び送信部36を備える。
【0039】
受信部22は、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波及び独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波を受信する。
【0040】
ID識別部24は、受信部22によって受信された電波からIDを検出し、検出したIDが公衆無線LAN−ID及び独自無線LAN−IDの何れであるかを識別する。ID識別部24は、検出したIDが公衆無線LAN−IDである場合、公衆無線LAN−IDを公衆無線LAN車両位置推定部26へ出力し、検出したIDが独自無線LAN−IDである場合、独自無線LAN−IDを独自無線LAN車両位置推定部28へ出力する。
【0041】
公衆無線LAN車両位置推定部26は、入力された公衆無線LAN−IDと、公衆無線LAN設置位置記憶部38に記憶されている公衆無線LAN設置位置データベースに基づいて、車両12の位置を推定する。
公衆無線LAN設置位置データベースとは、公衆無線LANアクセスポイント14A毎の公衆無線LAN−IDと該公衆無線LANアクセスポイント14Aの設置位置とを対応付けた情報である。なお、設置位置は、緯度及び経度によって示される。
このため、公衆無線LAN車両位置推定部26は、入力された公衆無線LAN−IDに対応した設置位置を読み出し、読み出した設置位置を車両12の位置として推定する。そして、公衆無線LAN車両位置推定部26は、推定した車両12の位置を示す情報(以下、「公衆無線LAN−車両位置情報」という。)を選択部30へ出力する。
【0042】
なお、公衆無線LAN設置位置データベースは、公衆無線LANアクセスポイント14Aが送信する電波を用いた位置推定サービスを提供する事業者(位置推定サービス会社)によって作成されたデータベースである。このため、公衆無線LAN設置位置記憶部38に記憶される公衆無線LAN設置位置データベースは、位置推定サービス会社によって配信される情報に基づいて、適宜更新されることとなる。
【0043】
また、公衆無線LAN車両位置推定部26は、受信した公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波の信頼度を導出する。電波の信頼度は、例えば、公衆無線LANアクセスポイント14からの推定した車両12の位置までの距離、電波の受信強度(以下、「電波受信強度」という。)の変動の度合い、及びS/N比の少なくとも一つの検出値から導出される。例えば、公衆無線LANアクセスポイント14から推定した車両12の位置までの距離が短いほど信頼度が高く、電波受信強度の変動の度合いが小さいほど信頼度は高く、S/N比が小さいほど信頼度は高い。なお、上記検出値を複数足し合わせて信頼度を導出してもよいし、所定の検出値に重み付けをして複数足し合わせて信頼度を導出してもよい。
そして、導出した信頼度と共に電波受信強度は、電波情報として公衆無線LAN−車両位置情報に含まれる。
【0044】
独自無線LAN車両位置推定部28は、入力された独自無線LAN−IDと、独自無線LAN設置位置記憶部40に記憶されている独自無線LAN設置位置データベースに基づいて、車両12の位置を推定する。
独自無線LAN設置位置データベースとは、独自無線LANアクセスポイント14B毎の独自無線LAN−IDと該独自無線LANアクセスポイント14Bの設置位置とを対応付けた情報である。なお、設置位置は、緯度及び経度によって示される。
このため、独自無線LAN車両位置推定部28は、入力された独自無線LAN−IDに対応した設置位置を読み出し、読み出した設置位置を車両12の位置として推定する。そして、独自無線LAN車両位置推定部28は、推定した車両12の位置を示す情報(以下、「独自無線LAN−車両位置情報」という。)を選択部30へ出力する。
【0045】
なお、独自無線LAN設置位置データベースは、独自無線LANアクセスポイント14Bを設置した専用事業者によって作成された、独自無線LAN−IDと独自無線LANアクセスポイント14Bの設置位置とを対応付けたデータベースである。
このため、独自無線LAN設置位置記憶部40に記憶される独自無線LAN設置位置データベースは、専用事業者によって送信される情報に基づいて、適宜更新されることとなる。
ここで、公衆無線LANアクセスポイント14は、複数の異なる事業者等によって設置される場合があるため、位置推定サービス会社による公衆無線LAN設置位置データベースの更新が、実際に公衆無線LANアクセスポイント14が設置された時期よりも遅れる場合がある。一方、独自無線LAN設置位置データベースは、独自無線LANアクセスポイント14Bを設置した専用事業者によって作成されるため、遅れなく、独自無線LAN設置置情報が更新される。
なお、上述した、公衆無線LANアクセスポイント14Aと位置推定サービス会社との関係、及び独自無線LANアクセスポイント14Bと専用事業者との関係は一例である。
【0046】
また、独自無線LAN車両位置推定部28は、公衆無線LAN車両位置推定部26と同様に、受信した独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波の信頼度を導出する。そして、導出した信頼度と共に電波受信強度は、電波情報として独自無線LAN−車両位置情報に含まれる。
【0047】
選択部30は、入力された公衆無線LAN−車両位置情報により示される車両12の位置、及び独自無線LAN−車両位置情報により示される車両12の位置の何れか一方を、車両12の現在位置として選択する。
なお、本第1実施形態に係る選択部30は、受信部22によって公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波のみが受信された場合、公衆無線LAN車両位置推定部26によって推定された車両12の位置を、車両12の現在位置として選択する。
また、選択部30は、受信部22によって独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波のみが受信された場合、独自無線LAN車両位置推定部28によって推定された車両12の位置を、車両12の現在位置として選択する。
さらに、選択部30は、受信部22によって公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波と共に、独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波が受信された場合、車両12の位置の推定精度がより高い電波に含まれるIDに基づいて推定された車両12の位置を、車両12の現在位置として選択する。
そして、選択部30は、選択した現在位置を現在位置情報として、走行経路導出部32へ出力する。
【0048】
位置推定精度記憶部42は、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波や独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波に基づいた車両12の位置の推定精度が所定精度以下となる低精度領域を示した推定精度計測データベースを記憶している。低精度領域とは、電波の信頼度や電波受信強度が低い領域、公衆無線LANアクセスポイント14A又は独自無線LANアクセスポイント14Bが複数のビルが立ち並ぶ領域に設置されており、送信される電波がビルに反射することによって、複数の経路から同じ電波を受信することで、相互に干渉し精度が低下する領域である。
なお、低精度領域は、公衆無線LANアクセスポイント14A及び独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波を、実際に計測することによって予め特定され、特定された低精度領域に基づいて推定精度計測データベースが作成される。
【0049】
そして、選択部30は、公衆無線LANアクセスポイント14A又は独自無線LANアクセスポイント14Bから送信された電波によって推定された車両12の位置が、低精度領域内の場合、推定された車両12の位置は、推定精度が低く、実際の車両12の位置とは異なる可能性があると判定する。
【0050】
走行経路導出部32は、入力された現在位置情報に基づいて、車両12の走行経路を導出する。具体的には、走行経路導出部32は、現在位置情報により示される緯度及び経度と現在位置情報が推定された時間とを関連付けることにより、車両12の位置の経時変化を求めることで、車両12の走行経路を導出する。導出された走行経路は、走行経路情報として走行経路記憶部44へ記憶される。なお、走行経路導出部32は、現在位置情報が入力される毎に、走行経路情報を更新する。
また、走行経路導出部32は、選択部30から出力された現在位置情報を課金エリア入退出判定部34へ出力する。
【0051】
課金エリア入退出判定部34は、入力された現在位置情報により示される車両12の現在位置に基づいて、車両12が課金エリアに入退出したか否かを判定する。
具体的には、課金エリア入退出判定部34は、課金エリア情報記憶部46に記憶されている課金エリアAを緯度及び経度で示した課金エリア情報と現在位置情報とを比較し、車両12が課金エリアA外から課金エリアA内へ進入した位置と時間を特定し、車両12が課金エリアA内から課金エリアA外へ退出した位置と時間を特定する。そして、課金エリア入退出判定部34は、車両12が課金エリアAを退出した場合に、車両12が課金エリアAに進入した時刻、車両12が課金エリアAから退出した時刻、及び車両12が課金エリアA内を走行した距離等の課金エリアの入退出に関する情報(以下、「入退出情報」という。)を送信部36へ出力する。
【0052】
送信部36は、入力された入退出情報を課金センター16へ送信する。
課金センター16は、受信した入退出情報に基づいて、該入退出情報を送信した車両12(車両12の利用者)に対して、課金エリアAの道路利用料金として課す課金額を算出する。なお、算出された課金額は、例えば、予め登録されている車両12の利用者の金融機関の口座番号の口座から引き落とされる。
【0053】
次に、本第1実施形態に係る車載器20の作用を説明する。
なお、以下の作用の説明においては、受信部22が、公衆無線LANアクセスポイント14A及び独自無線LANアクセスポイント14Bの少なくとも一方から送信された電波を受信し、選択部30が現在位置情報を走行経路導出部32へ出力するまでを説明する。
【0054】
まず、受信部22が公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波のみを受信した場合について説明する。
受信部22が、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波を受信すると、ID識別部24を介して、公衆無線LAN−IDが公衆無線LAN車両位置推定部26へ送信される。
公衆無線LAN車両位置推定部26は、入力された公衆無線LAN−IDと、公衆無線LAN設置位置記憶部38に記憶されている公衆無線LAN設置位置データベースに基づいて、車両12の位置を推定し、公衆無線LAN−車両位置情報を選択部30へ出力する。
【0055】
ここで、選択部30は、公衆無線LAN−車両位置情報により示される車両12の位置が、位置推定精度記憶部42に記憶されている推定精度計測データベースにより示される低精度領域に含まれている場合、現在位置算処理を実行する。
【0056】
現在位置算出処理は、過去に推定された車両12の複数の位置に基づいて、車両12の位置を算出する処理である。過去に推定された車両12の複数の位置とは、現在時から所定時間前の間における車両12の複数の位置であり、走行経路記憶部44に記憶されている走行経路情報から読み出される。
そして、現在位置算出処理は、読み出した複数の位置から車両12の運動情報(車両12の進行方向及び速度)を算出し、前回推定された車両12の位置情報及び算出した運動情報に基づいて、車両12の位置を算出する。
【0057】
選択部30は、現在位置算出処理を実行した場合、現在位置算出処理によって算出した車両12の位置を、車両12の現在位置として選択する。
そして、選択部30は、選択した現在位置を示す現在位置情報を走行経路導出部32へ出力する。
【0058】
一方、受信部22が独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波のみを受信した場合については、上述した受信部22が公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波のみを受信した場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0059】
次に、受信部22が、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波と共に独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波を受信した場合について説明する。
受信部22が公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波と共に独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波を受信した場合、公衆無線LAN車両位置推定部26で公衆無線LAN−IDに基づいて車両12の位置が推定され、独自無線LAN車両位置推定部28で独自無線LAN−IDに基づいて車両12の位置が推定される。
そして、選択部30に、公衆無線LAN車両位置推定部26から公衆無線LAN−車両位置情報が入力されると共に、独自無線LAN車両位置推定部28から独自無線LAN−車両位置情報が入力されると、選択部30は、位置情報選択処理を実行する。
【0060】
図4は、位置情報選択処理が実行される場合に、選択部30によって実行される位置情報選択プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、位置情報選択プログラムは選択部30が備える記憶手段の所定領域に予め記憶されている。
【0061】
まず、ステップ100では、入力された公衆無線LAN−車両位置情報から所定情報を読み出す。該所定情報とは、公衆無線LAN車両位置推定部26が推定した車両12の位置、並びに、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信された電波の信頼度及び電波受信強度である。
【0062】
次の、ステップ102では、入力された独自無線LAN−車両位置情報から所定情報を読み出す。該所定情報とは、独自無線LAN車両位置推定部28が推定した車両12の位置、並びに、独自無線LANアクセスポイント14Bから送信された電波の信頼度及び電波受信強度である。
なお、ステップ100とステップ102の処理の順番は逆でもよいし、同時でもよい。
【0063】
次のステップ104では、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信された電波の信頼度及び電波受信強度、並びに独自無線LANアクセスポイント14Bから送信された電波の信頼度及び電波受信強度の全てが予め定められた閾値以下であるか否かを判定し、肯定判定の場合は、ステップ106へ移行し、否定判定の場合は、ステップ108へ移行する。
【0064】
ステップ106では、現在位置算出処理を実行し、現在位置算出処理によって算出された車両12の位置を現在位置として選択し、ステップ114へ移行する。
【0065】
ステップ108では、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信された電波の信頼度及び電波受信強度と、独自無線LANアクセスポイント14Bから送信された電波の信頼度及び電波受信強度とを比較し、信頼度及び電波受信強度の高い電波に含まれるIDに基づいて推定された車両12の位置を現在位置として選択する。
なお、一方の電波が他方の電波よりも信頼度が高いものの、電波受信強度が他方の電波よりも低い場合は、例えば、信頼度の高い電波に含まれるIDに基づいて推定された車両12の位置を現在位置として選択してもよいし、電波受信強度の高い電波に含まれるIDに基づいて推定された車両12の位置を現在位置として選択してもよい。
【0066】
次のステップ110では、推定精度計測データベースに基づいた照会処理を行う。すなわち、ステップ108で選択された現在位置と推定精度計測データベースにより示される低精度領域とを照会する。
【0067】
次のステップ112では、現在位置が低精度領域に含まれるか否かを判定し、肯定判定の場合は、ステップ106へ移行し、否定判定の場合は、ステップ114へ移行する。
ステップ112からステップ106へ移行した場合は、ステップ108で選択した車両12の位置を現在位置として選択せずに、現在位置算出処理によって算出された車両12の位置を現在位置として選択する。
【0068】
ステップ114では、走行経路導出部32へ選択した現在位置を示す現在位置情報を出力し、本プログラムを終了する。
【0069】
以上説明したように、本第1実施形態に係る車載器20は、受信部22が公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波、及び公衆無線LANアクセスポイント14Aを補うように設置された独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波を受信する。そして、公衆無線LAN車両位置推定部26が、受信した公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信された電波に含まれる公衆無線LAN−IDと、公衆無線LAN設置位置データベースに基づいて、車両12の位置を推定する。一方、独自無線LAN車両位置推定部28が、受信された独自無線LANアクセスポイント14Bから送信された電波に含まれる独自無線LAN−IDと、独自無線LAN設置位置データベースに基づいて、車両12の位置を推定する。
その後、選択部30が、公衆無線LAN車両位置推定部26によって推定された車両12の位置、及び独自無線LAN車両位置推定部28によって推定された車両12の位置の何れか一方を、車両12の現在位置として選択する。
【0070】
これにより、本第1実施形態に係る車載器20は、公衆無線LANアクセスポイント14Aによる車両12の位置の推定が困難な場所であっても、車両12の位置の推定ができる。
【0071】
なお、本第1実施形態に係る車載器20は、受信部22によって受信された電波を送信した独自無線LANアクセスポイント14Bの設置位置を車両12の位置と推定するので、簡易な構成で車両12の位置を推定することができる。
【0072】
また、本第1実施形態に係る選択部30は、受信部22で公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波のみが受信された場合、公衆無線LAN車両位置推定部26で推定された車両12の位置を、車両12の現在位置として選択する。また、選択部30は、受信部22で独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波のみが受信された場合、独自無線LAN車両位置推定部28で推定された車両12の位置を、車両12の現在位置として選択する。
そして、受信部22で公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波と共に独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波が受信された場合、選択部30は、車両12の位置の推定精度がより高い電波に含まれるIDに基づいて推定された車両12の位置を、車両12の現在位置として選択する。
【0073】
このように、本第1実施形態に係る車載器20は、公衆無線LANアクセスポイント14A及び独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波の受信状態に応じて、公衆無線LAN車両位置推定部26又は独自無線LAN車両位置推定部28で推定された車両12の位置の何れか一方を選択するので、車両12の位置の推定精度をより高くできる。
【0074】
また、本第1実施形態に係る車載器20は、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波及び独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波に基づいた車両12の位置の推定精度が、所定精度以下となる低精度領域を示した推定精度計測データベースを記憶した位置推定精度記憶部42を備えている。そして、選択部30は、選択した車両12の位置が推定精度計測データベースにより示される低精度領域に含まれる場合、車両12の現在位置として、過去に推定された車両12の複数の位置に基づいて算出された車両12の位置を選択する。
【0075】
このように、本発明は、公衆無線LANアクセスポイント14Aから送信される電波及び独自無線LANアクセスポイント14Bから送信される電波に基づいた車両12の位置の推定精度が低い場合、過去に推定された車両12の複数の位置に基づいて算出された車両12の位置を、車両12の現在位置として選択するので、車両12の位置の推定精度をより高くできる。
【0076】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0077】
本第2実施形態に係る料金収受システム10の構成は、図1に示される第1実施形態に係る料金収受システム10の構成と同様であるので説明を省略する。
なお、本第2実施形態に係る独自無線LAN−IDは、自身を含む電波を送信した独自無線LANアクセスポイント14Bの設置位置を示す設置位置情報を含んだSSID(Service Set ID)とされる。なお、独自無線LANアクセスポイント14Bの設置位置は、緯度及び経度により示される。
また、以下の説明において、設置位置情報を含む独自無線LAN−IDを独自無線LAN−SSIDという。
【0078】
図5に、本第2実施形態に係る独自無線LANアクセスポイント14B及び車載器20の構成を示す。なお、図5における図3と同一の構成部分については図3と同一の符号を付して、その説明を省略する。
独自無線LANアクセスポイント14Bは、位置情報記憶部50、時刻情報出力部52、暗号鍵記憶部54、暗号化処理部56、及び送信部58を備える。
【0079】
位置情報記憶部50は、独自無線LANアクセスポイント14Bの設置位置を示す設置位置情報を記憶している。
【0080】
時刻情報出力部52は、現在の時刻を示す時刻情報を暗号化処理部56へ出力する。
【0081】
暗号鍵記憶部54は、暗号化を行うための鍵となる鍵情報を記憶している。
【0082】
暗号化処理部56は、位置情報記憶部50から設置位置情報を読み出し、読み出した設置位置情報と共に入力された時刻情報を、暗号鍵記憶部54に記憶されている鍵情報を用いて暗号化した独自無線LAN−SSIDを生成する。
ここで、車載器20に偽造されたSSIDが送信されることが想定される。しかし、本第2実施形態のように、独自無線LANアクセスポイント14Bが、設置位置情報に時刻情報を付加した独自無線LAN−SSIDを送信するので、本第2実施形態に係る車載器20が、該時刻情報の有無によって、偽造されたSSIDと独自無線LAN−SSIDとを区別でき、SSIDの偽造防止の効果が得られる。
なお、暗号化の方法としては、従来既知の暗号化の方法の何れを用いてもよい。
【0083】
送信部58は、暗号化処理部56によって生成された独自無線LAN−SSIDを送信する。
【0084】
一方、車載器20が備える独自無線LAN車両位置推定部28は、暗号鍵記憶部60及び復号化処理部62を備える。
【0085】
暗号鍵記憶部60は、暗号鍵記憶部54に記憶されている暗号鍵に応じた鍵情報を記憶している。
【0086】
復号化処理部62は、受信部22で受信され、ID識別部24を介して入力された独自無線LAN−SSIDを暗号鍵記憶部60に記憶されている暗号鍵を用いて復号化する。
さらに、独自無線LAN車両位置推定部28は、復号化されたSSIDに時刻情報が含まれているか否かを識別する該SSIDが、独自無線LANアクセスポイント14Bから送信されたものであるか否かを判定する。なお、受信したSSIDに時効く情報が含まれていない場合、すなわち、受信したSSIDが偽造されたものであると判定された場合、車載器20は、送信部58を介して、受信したSSIDが偽造されたものであることを示す情報を課金センター16等へ通知する。
そして、独自無線LAN車両位置推定部28は、独自無線LAN−SSIDを復号化することによって得られた設置位置情報により示される独自無線LANアクセスポイント14Bの設置位置を、車両12の位置と推定する。
【0087】
以上説明したように、本第2実施形態に係る独自無線LANアクセスポイント14Bは、設置位置を示す設置位置情報を独自無線LAN−SSIDに含んで送信し、本第2実施形態に係る車載器20は、独自無線LAN−SSIDのみから車両12の位置を推定するので、本第1実施形態に係る車載器20のように独自無線LAN設置位置記憶部40を備える必要がないため、より簡易な構成で車両の位置を推定することができる。
また、第1実施形態のように、車載器20は、独自無線LAN設置位置データベースを必要としないため、独自無線LANアクセスポイント14Bが設置されてからすぐに、独自無線LANアクセスポイント14Bを用いた車両12の位置の推定を行える。
【0088】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10 料金収受システム
12 車両
14A 公衆無線LANアクセスポイント
14B 独自無線LANアクセスポイント
16 課金センター
20 車載器
22 受信部
26 公衆無線LAN車両位置推定部
28 独自無線LAN車両位置推定部
30 選択部
42 位置推定精度記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN(Local Area Network)アクセスポイントから送信される電波に含まれる、無線LANアクセスポイントを識別するための識別信号を用いて車両の位置を推定する車載器であって、
公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波、及び該第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記第1の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第1の識別信号と、該第1の識別信号と前記第1の無線LANアクセスポイントの設置位置とを対応付けた第1位置情報に基づいて、車両の位置を推定する第1推定手段と、
前記受信手段によって受信された前記第2の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第2の識別信号に基づいて、車両の位置を推定する第2推定手段と、
前記第1推定手段によって推定された車両の位置、及び前記第2推定手段によって推定された車両の位置の何れか一方を、車両の現在位置として選択する選択手段と、
を備えた車載器。
【請求項2】
前記選択手段は、前記受信手段によって前記第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波のみが受信された場合、前記第1推定手段によって推定された車両の位置を車両の現在位置として選択し、前記受信手段によって前記第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波のみが受信された場合、前記第2推定手段によって推定された車両の位置を車両の現在位置として選択し、前記受信手段によって前記第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波と共に前記第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波が受信された場合、車両の位置の推定精度がより高い電波に含まれる識別信号に基づいて推定された車両の位置を車両の現在位置として選択する請求項1記載の車載器。
【請求項3】
前記第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波及び前記第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波に基づいた車両の位置の推定精度が、所定精度以下となる領域を示した情報を記憶した記憶手段
を備え、
前記選択手段は、選択した車両の位置が前記記憶手段に記憶された前記情報により示される領域に含まれる場合、車両の現在位置として、過去に推定された車両の複数の位置に基づいて算出された車両の位置を選択する請求項1又は請求項2記載の車載器。
【請求項4】
前記第2推定手段は、前記受信手段によって受信された前記第2の識別信号と、前記第2の識別信号と前記第2の無線LANアクセスポイントの設置位置とを対応付けた第2位置情報に基づいて、車両の位置を推定する請求項1から請求項3の何れか1項記載の車載器。
【請求項5】
前記第2の識別信号は、自身を含む電波を送信した前記第2の無線LANアクセスポイントの設置位置を示す設置位置情報が含まれ、
前記第2推定手段は、前記第2の識別信号に含まれる前記設置位置情報に基づいて車両の位置を推定する請求項1から請求項3の何れか1項記載の車載器。
【請求項6】
公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントと、
前記第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントと、
請求項1から請求項5の何れか1項記載の車載器を備え、該車載器で推定された位置に基づいて、課金が行われる対象となる予め定められた領域の入退出に関する入退出情報を送信する車両と、
前記車両から送信された前記入退出情報を受信し、該入退出情報に基づいて該入退出情報を送信した前記車両に対して課金を行う情報処理装置と、
を備えた料金収受システム。
【請求項7】
無線LAN(Local Area Network)アクセスポイントから送信される電波に含まれる、無線LANアクセスポイントを識別するための識別信号を用いて車両の位置を推定する車両の位置推定方法であって、
公衆に用いられる第1の無線LANアクセスポイントから送信される電波、及び該第1の無線LANアクセスポイントを補うように設置された第2の無線LANアクセスポイントから送信される電波を受信する第1工程と、
受信された前記第1の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第1の識別信号と、該第1の識別信号と前記第1の無線LANアクセスポイントの設置位置とを対応付けた第1位置情報に基づいて、車両の位置を推定し、受信された第2の無線LANアクセスポイントから送信された電波に含まれる第2の識別信号に基づいて、車両の位置を推定する第2工程と、
前記第1の識別信号から推定された車両の位置、及び前記第2の識別信号から推定された車両の位置の何れか一方を、車両の現在位置として選択する第3工程と、
を含む車両の位置推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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