説明

車載器及び料金収受システム

【課題】車両の位置を精度よく補正すること。
【解決手段】車両に搭載されるとともに、課金対象エリアの料金所に設置されている料金収受装置との間で課金に関する情報を授受する車載器50であって、料金収受装置に設けられるアンテナの設置位置の情報とアンテナの識別情報とを対応付けた地図情報を記憶する車載器記憶装置25と、車両の位置情報を取得するGPS受信機24とを具備し、料金収受装置の付近を通過した場合に、料金収受装置からアンテナの識別情報を取得し、取得したアンテナの識別情報及び地図情報に基づいて推定される車両の位置と、GPS受信機24から取得される位置情報に基づいて推定される車両の位置とが一致していない場合に、取得したアンテナの識別情報から推定される車両の位置に基づいて、GPS受信機24から取得した位置情報を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器及び料金収受システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大都市中心部への過剰な自動車の乗り入れによる交通渋滞、大気汚染などを緩和する対策として、都市部に課金対象エリアを設け、この課金対象エリアに進入する車両に対して一定額の課金を行う、いわゆるロードプライシングが実現されている。ロードプライシングでは、例えば、課金対象エリアの各出入口に、課金用の無線通信装置が設置されたガントリが設けられており、車両がガントリを通過する場合に課金処理が行われる。また、課金方法としては、例えば、車載器に挿入されたプリペイドカードの残高から一定額の料金を差し引き、その残額をプリペイドカードに残高として更新記録する方法や、予め登録されている利用者の銀行口座から自動的に一定の料金が差し引かれる方法などが採用されている。
【0003】
また、道路の利用料を自動的に徴収するシステムとして、ETC(Electronic toll Collection)システムが知られている。このETCシステムは、料金所に設置された路側無線機と車両に搭載される車載器との間で無線通信を行うことにより、料金を自動徴収することができるようにしたものである。
こうしたロードプライシングに関する料金収受システムやETCシステムにおいて、既存の課金対象エリアを拡張した場合における、料金徴収の方法が検討されている。
例えば、特許文献1では、車載器が、GPS受信機により取得される位置情報に基づいて拡張課金対象エリアに進入したか否かを検知し、この検出結果を既存の課金対象エリアに進入する際に、課金対象エリアに設置された料金収受装置に通知することにより、料金収受装置側から拡張課金対象エリアにおける道路利用料金を徴収させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−9731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような料金収受システムは、不正に操作する利用者により道路利用料金が正しく支払われない場合があるため、不正を検出するために、車両の位置情報を把握する必要がある。車両の位置情報は、例えば、車載器のGPS受信機により取得される情報に基づいて推定されるが、上記特許文献1では、GPS受信機から取得した位置の情報が本来の位置よりずれていても、ずれを検出することができず、車両の位置を補正することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車両の位置を精度よく補正することのできる車載器及び料金収受システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、車両に搭載されるとともに、課金対象エリアの料金所に設置されている料金収受装置との間で課金に関する情報を授受する車載器であって、前記料金収受装置に設けられるアンテナの設置位置の情報と該アンテナの識別情報とを対応付けた地図情報を記憶する記憶手段と、前記車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、を具備し、前記料金収受装置の付近を通過した場合に、該料金収受装置から前記アンテナの識別情報を取得し、取得した前記アンテナの識別情報及び前記地図情報に基づいて推定される前記車両の位置と、前記位置情報取得手段から取得される前記位置情報に基づいて推定される前記車両の位置とが一致していない場合に、取得した前記アンテナの識別情報から推定される前記車両の位置に基づいて、前記位置情報取得手段から取得した前記位置情報を補正する車載器を提供する。
【0008】
このような構成によれば、車両に搭載され、課金対象エリアの料金所に設置される料金収受装置との間で課金に関する情報を授受する車載器は、料金収受装置の付近を通過すると、その料金収受装置から料金収受装置のアンテナの識別情報を取得する。車載器においてアンテナの識別情報が取得されると、記憶手段に記憶された地図情報に含まれる料金収受装置のアンテナの設置位置とアンテナの識別情報とに基づいて、車両の位置が推定される。この料金収受装置から取得したアンテナの識別情報に基づいて推定された車両の位置と、位置情報取得手段から取得される位置情報から推定される車両の位置とが比較され、車両の位置が一致していない場合には、位置情報取得手段から取得された位置情報が補正される。このように、料金収受装置側から推定される車両の位置と、位置情報取得手段から推定される車両の位置とを比較し、一致していない場合に、位置情報取得手段から取得される位置情報を補正するので、位置情報取得手段から得られる位置情報の精度を保つことができる。
【0009】
上記車載器において、広域無線を利用するための広域通信機を介して、前記料金収受装置の上位装置であるセンタ機と通信可能に接続されており、かつ、専用狭帯域無線を利用するための専用狭帯域無線機を介して、前記料金収受装置と通信可能に接続されている場合に、前記地図情報は、前記広域通信機、前記専用狭帯域無線機、及び前記広域通信機以外に前記センタ機と通信可能に接続させる発行保守機器のうち、少なくともいずれか1つから取得可能とされていることとしてもよい。
地図情報は、広域通信機、専用狭帯域無線機、及び発行保守機器のいずれかを介して車載器側にダウンロードされるようになっているので、車載器は料金収受装置の設置位置を特定する情報を容易に取得することができる。
【0010】
上記車載器の前記地図情報において、前記料金収受装置から取得した前記アンテナの識別情報に対応する前記料金収受装置の前記アンテナの設置位置の情報が含まれていない場合に、前記広域通信機を介して前記センタ機から最新の前記地図情報を取得することとしてもよい。
車載器に備えられる地図情報において、料金収受装置から取得したアンテナの識別情報に対応する料金収受装置の情報(設置位置)が含まれていない場合には、最新の地図情報を得ることにより、最新の料金収受装置の位置を車載器側で簡便に把握することができる。
【0011】
上記車載器の前記地図情報の前記アンテナの設置位置の情報は、演算に基づいて前記車両の位置を得るための相対的な位置を示す情報、または前記車両の位置を特定する絶対的な位置を示す情報であることとしてもよい。
アンテナの設置位置の情報は、演算に基づいて車両の位置を得るための相対的な位置、または車両の位置を直接特定する絶対的な位置であることにより、確実に車両の位置を特定することができる。
【0012】
上記車載器の前記アンテナの識別情報は、新旧を識別するための新旧識別情報を含んでおり、前記料金収受装置から取得した前記アンテナの識別情報の前記新旧識別情報と、前記地図情報に含まれる前記アンテナの識別情報の前記新旧識別情報とが一致していない場合には、前記広域通信機を介して前記センタ機から最新の前記地図情報を取得することとしてもよい。
料金収受装置から得たアンテナの識別番号と地図情報に含まれるアンテナの識別番号との新旧識別情報が一致していなければ最新の地図情報を取得するので、車載器には最新の地図情報が備えられる。これにより、料金収受装置の最新の正確な設置位置の情報が得られる。
【0013】
上記車載器において、前記料金収受装置の前記アンテナから前記アンテナの識別情報とともに、前記アンテナの設置位置の情報を取得することとしてもよい。
これにより、車載器において、料金収受装置の設置位置の情報が簡便に取得できる。
【0014】
上記車載器の前記料金収受装置から、設置位置の情報を取得した場合に、前記地図情報に含まれる前記料金収受装置の設置位置の情報と置き換えることとしてもい。
料金収受装置の物理的位置が変更されて設置位置に変更がある場合には、車載器の地図情報に含まれる料金収受装置の設置位置の情報を簡便に更新することができる。
【0015】
本発明は、前記アンテナの識別情報は、新旧を識別するための新旧識別情報を含んでおり、前記料金収受装置から取得した前記アンテナの識別情報の前記新旧識別情報と、前記地図情報に含まれる前記アンテナの識別情報の前記新旧識別情報とが一致していない場合には、前記広域通信機を介して前記センタ機から最新の前記地図情報を取得する請求項2から請求項4のいずれかに記載の車載器と、前記車載器から、最新の前記地図情報の取得要求に応じて、最新の前記地図情報を前記車載器に出力する前記センタ機と、を具備する料金収受システムであって、前記センタ機は、最新の前記地図情報のうち、前記車載器の前記地図情報に含まれる前記アンテナの識別番号の前記新旧識別情報が異なる前記アンテナに対応する情報のみを、最新の前記地図情報として前記車載器に出力する料金収受システムを提供する。
【0016】
車載器は、料金収受装置から取得したアンテナの識別番号の新旧識別情報が、地図情報に含まれるアンテナの識別番号に対応する新旧識別情報と異なる場合に、新旧識別情報の異なるアンテナに対応するアンテナの識別番号とアンテナの設置位置の情報とをセンタ機から取得する。これにより、センタ機から車載器に最新の地図情報を出力する場合に、通信媒体にかかる負荷を低減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、車両の位置を精度よく補正することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る料金収受システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る料金収受システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】課金対象エリアの進入車線を路肩側から見たときの図である。
【図4】図3に示した車両検知器の下方に敷設されているマーキングの一例を示した図である。
【図5】車両が通過したときの図4に示したマーキングの様子を示した図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車載器の概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るセンタ機の概略構成を示すブロック図である。
【図8】車載器が課金対象エリアを通過する場合について説明した図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る車載器の動作を簡潔に説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る車載器及び料金収受システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る料金収受システム1の全体構成図である。
図1に示すように、料金収受システム1は、ロードプライシングの対象エリアである課金対象エリアAの境界を通過する全ての道路において、車両3が、課金対象エリアAに進入、および/または課金対象エリアAから退出することを検出する料金収受装置(図示略)が設けられている。例えば、料金収受装置は、課金対象エリアAへ車両3が進入する進入車線、および課金対象エリアAから車両3が退出する退出車線にそれぞれ対応して設けられており、対応する進入車線および退出車線を通過する車両3に搭載されている車載器との間で、車載器の情報を授受する。
【0020】
図2は、料金収受システムの概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、料金収受装置2は、第1アンテナ5、カメラ6、車両検知器7、第2アンテナ8を備えている。更に、料金収受装置2は、第1アンテナ5に接続される第1アンテナ制御機9、カメラ6に接続されるカメラ制御機10、車両検知器7に接続される車両検知制御機11、第2アンテナ8に接続される第2アンテナ制御機12を備えている。更に、料金収受装置2は、統括制御機13、統括制御機13に接続される環境制御機14、統括制御機13に接続される通信制御機15を備えている。上記第1アンテナ制御機9、カメラ制御機10、車両検知制御機11、第2アンテナ制御機12および統括制御機13は、バス16を介して互いに接続されており、情報の授受が可能な状態とされている。また、通信制御機15は、上位の装置であるセンタ機17と通信可能に接続されている。
【0021】
上記構成を有する料金収受装置2において、第1アンテナ5、カメラ6、車両検知器7、および第2アンテナ8は、課金対象エリアAの境界における走行道路をまたいで配置される門型の支持柱に取り付けられている。図3は、走行車線を側方から見た図である。第1アンテナ5および第2アンテナ8は、対応する走行車線を走行する車両3の車載器からの信号を受信しやすいように設置されている。例えば、第1アンテナ5、および第2アンテナ8は、アンテナビームが対応する走行車線に向けられるように設置されている。
【0022】
また、第1アンテナ5および第2アンテナ8は、車載器が課金対象エリアAのエリア境界付近を通過する場合の車載器の情報を取得する。具体的には、第1アンテナ5および第2アンテナ8は、車両が拡張課金対象エリアB(詳細は後述する)から課金対象エリアAに進入した時点、および/または車両が課金対象エリアAから拡張課金対象エリアBに退出する時点において、車載器に対して要求信号を出力し、車載器から車載器の識別情報を取得する。車載器の識別情報とは、入退出した時点の時刻(例えば、年月日)、予め車載器に割り当てられている車載器番号、車載器のICカードインタフェースに挿入されているICカード番号等である。また、第1アンテナ5と第2アンテナ8とは、約10mから15mの距離をあけて設置されている。これは、車載器が第1アンテナ5から受信した信号(例えば、車載器の識別情報の要求信号)に応じて、車載器が応答信号を第2アンテナ8に出力するまでの処理時間を確保することを目的としたものである。
また、第1アンテナ5および第2アンテナ8は、自身のアンテナの識別情報を車載器に送信する。
【0023】
カメラ6は、不正車両が検出された場合に、その不正車両のナンバープレートを撮影するためのものである。不正車両とは、例えば、車載器を搭載していない車両、車種に対応する車載器を搭載していない車両、車載器にICカードが挿入されていない車両、徴収する金額よりもICカードに記録されている残高が少なく課金が正常に行えなかった車両、偽造された車載器や偽造されたICカードを搭載している車両等である。これらの不正車両か否かの判定は、第1アンテナ5および第2アンテナ8により車載器から取得された車載器の識別情報等に基づいて行われるが、不正車両の判定方法についての詳細は後述する。
車両検知器7は、車両3が通過したことを検出する。例えば、車両検知器7の下方の道路には、図4に示すように縞模様のマーキングがされている。車両検知器7は、この縞模様を上方からモニタしており、この縞模様が図5に示すように、正常に検出できなくなった場合に、車両3の通過を検知する。
【0024】
また、図1に示すように、課金対象エリアAの外側には、新たに設定された拡張課金対象エリアBが設定されている。例えば、この拡張課金対象エリアBは、もともと存在していた課金対象エリアAを拡張したいという要望等があった場合に、事後的に設定されるエリアである。この拡張課金対象エリアBは、課金対象エリアAを取り囲むように設けられていても良いし、その一部が課金対象エリアAと接するように設けられていてもよいし、また、課金対象エリアAに接することなく、別個に設けられるエリアであっても良い。
拡張課金対象エリアBには、上述した課金対象エリアAのように、エリア境界における進入車線および退出車線に料金収受装置が設置されていない。その代わりに、車両3に搭載された車載器によって、その入退出を検出するようになっている。
【0025】
図6は、本実施形態に係る車載器の概略構成を示すブロック図である。図6に示すように、車載器50は、車両電源21および内蔵電池22に接続される電源回路23、第1広域通信機32、GPS衛星から位置情報に関する情報を取得して現在位置を検出するGPS受信機(位置情報取得手段)24、種々の情報を記憶する車載器記憶装置(記憶手段)25、制御部26、料金収受装置2の第1アンテナ5,第2アンテナ8等と通信を行う通信部27、表示部28、ブザー、LEDなどの報知部29、ICカードが挿入されるICカード挿入部30、およびICカード挿入部30に設けられるICカードインターフェース(図6では「ICカードI/F」として示す)31、補正部33、及び通信ポート34を備えている。
【0026】
図6において、GPS受信機24等の各種構成要素は必ずしも車載器50内に内蔵されていなくてもよい。例えば、各構成要素が情報の授受が可能な状態で構成されていれば良い。一例としては、GPS機能を有する携帯端末装置を外部端子を介して接続し、この携帯端末装置が備えるGPS機能をGPS受信機24として利用するような構成態様をとることが可能である。
第1広域通信機32は、外部の装置と通信を行うものであり、例えば、料金収受装置2の上位装置であるセンタ機17(図2参照)と通信可能に接続される。
【0027】
電源回路23は主に車両電源21から供給される電圧を車載器50に適した電圧に制御し、車載器50を構成する各部に供給する。内蔵電池22は、車両電源21からの電源供給が遮断された場合でも、通信を行う程度の電力が確保できるよう設けられている。
車載器記憶装置25には、課金対象エリアA外に設定された拡張課金対象エリアBの地図情報が格納されている。また、車載器記憶装置25の地図情報は、料金収受装置2に設けられるアンテナの設置位置の情報とアンテナの識別情報とが対応付けられて格納されている。
【0028】
また、この車載器記憶装置25には、車両の所有者情報、車種情報、車両ID等を含む車両情報、車両の現在位置情報、車載器の識別情報、ICカードから読み出された残高情報およびカード情報等、後述する課金額の算出および不正車両の判定に必要となる情報が保存されている。また、車両3の現在位置情報とは、制御部26において、地図情報とGPS受信機24から取得した位置情報とに基づいて推定される車両3の現在の位置を示す情報である。
【0029】
ICカード挿入部30に挿入されるICカードは、例えば、接触型のICカードであり、フラッシュメモリやMPUなどが搭載されたICチップを内蔵している。このICカードには、カードID番号等のカード情報の他、残高、使用履歴等が記憶されている。ICカードに記録されている情報は、ICカードインターフェース31を介して、制御部26による読み出し、書き込みが可能とされている。
【0030】
このような車載器50において、ICカード挿入部30にICカードが挿入されると、制御部26は、ICカードインターフェース31を介してICカードに記録されているICカード情報および残高を読み出して車載器記憶装置25に書き込むとともに、残高を表示部28に一定時間(例えば、10秒程度)、表示させる。また、制御部26は、ICカードから正常に情報を読み取ることができた場合には、正常動作をユーザに知らせるために報知部29を作動させる。これにより、例えば、報知部29がブザーであった場合には、ブザーがなり、また、LEDなどであれば、点灯することで正常である旨を報知する。
一方、制御部26は、ICカードから情報を読み取れなかった場合には、エラーである旨を表示部28に表示させるとともに、報知部29を作動させることにより、エラーである旨をユーザに報知し、ICカードの再挿入などを促す。なお、報知部29による報知の態様は、正常時と異常時とで異なる。
【0031】
制御部26は、料金収受装置2から要求信号を取得すると、車載器記憶装置25に格納されている車載器50の識別情報と車両情報とを読み出すとともに、これらを要求信号に対する応答信号として料金収受装置2に出力する。また、制御部26は、料金収受装置2から要求信号を取得すると、車両3が、拡張課金対象エリアBから課金対象エリアAに進入した場合の進入の情報、および/または課金対象エリアAから拡張課金対象エリアBに退出した場合の退出の情報である入退出情報を検出し、第1広域通信機32を介してセンタ機17に出力する。また、制御部26は、入退出情報とともに、入退出情報を検出する際に用いた現在位置情報と、車両情報とをセンタ機17に出力する。
【0032】
図7に示されるように、センタ機17は、第2広域通信機18、不正判定部(不正判定手段)19、および算出部20を備えている。第2広域通信機18は、外部の装置と通信を行うものであり、例えば、車載器と通信可能に接続するためのものである。この第2広域通信機18は、本実施形態においてはセンタ機17に内蔵されていることとして説明するが、これに限定されず、例えば、携帯電話機などの移動通信端末をセンタ機17に設けられた接続端子を介して接続し、用いることとしても良い。
【0033】
不正判定部19は、料金収受装置2から取得した車載器の識別情報と車両情報とに基づく車両3の入退出の情報、および第2広域通信機18を介して車載器から取得した車両3の入退出情報に基づいて、不正(例えば、通過した経路を改竄する等)を行った車両(以下、「不正車両」という)か否かを判定する。
図8に示されるように、拡張課金対象エリアBと課金対象エリアAとのエリア境界において、料金収受装置2x,2y,2zが設けられている場合を例に挙げて説明する。センタ機17の不正判定部19は、料金収受装置2yが車両3(例えば、車両ID「C」とする)から受信した応答信号を検出し、この応答信号に基づいて、料金収受装置2yを介して課金対象エリアAから退出したことを検出している。この場合に、不正判定部19は、第2広域通信機18を介して取得した入退出情報のうち、車両ID「C」に対応付けられた入退出情報を検出する。
【0034】
ここで、第2広域通信機18を介して不正判定部19が取得した車両ID「C」に対応付けられた入退出情報は、GPSによって検出された実際の車両位置に基づいて決定されているので、不正判定部19は、この入退出情報から推定される車両ID「C」の車両3の車両位置と、料金収受装置側から取得した応答信号に基づく車両位置とを比較する。上述した双方から取得した情報に基づいて、検出(推定)された車両位置が一致しているかを判定する。判定の結果、一致していない場合(例えば、入退出情報では料金収受装置2zの位置を検出している等)には、不正判定部19は、車両3から出力された応答信号が不正に改竄されている等の状態が推定されるため、車両ID「C」の車両を不正車両であると判定する。
【0035】
さらに、不正判定部19は、料金収受装置2から取得した応答信号により、車両3が車種に対応した車載器50を備えているか否かに基づいて、不正車両か否かを判定する。例えば、車両情報では、車種としてトラック等の「大型」である旨を示しているにも関わらず、車載器の識別情報から検出される車種の情報は軽自動車等の「小型」である場合には、実際の車種と異なる車載器を搭載していることとして、不正車両であると判定する。
このように、不正判定部19は、上記のように不正車両か否かの判定結果を算出部20に出力する。
【0036】
算出部20は、取得した入退出情報に基づいて、車両3の利用者の道路利用料金として車両利用者に課す課金額を算出する。また、算出部20は、不正判定部19から取得した不正車両か否かの判定結果に基づいた課金額を算出する。例えば、算出部20は、不正車両でないと判定された車両3に対しては、割引等の特典を適用した課金額を算出し、不正車両であると判定された車両3に対しては、不正車両に関する情報を記録するブラックリストに登録するとともに、割引等の特典を適用しない課金額を算出する。
【0037】
また、具体的には、算出部20は、不正車両に関する情報が登録されるブラックリスト34、拡張課金対象エリアBに関する課金情報が登録された第1課金テーブル(第1課金情報)35、課金対象エリアAに関する課金情報が登録された第2課金テーブル(第2課金情報)36、を記憶するセンタ機記憶装置37と、車載器50から受信した入退出情報に基づいて、車載器50を搭載している車両3の課金額を決定する金額決定部38とを備えている。
【0038】
第1課金テーブル35には、例えば、車種(大型、中型、小型などの別)に応じて徴収する金額が第1課金額として登録されている。例えば、小型なら0.8ドル、中型なら1ドル、大型なら2ドルなどのように登録されている。
また、第2課金テーブル36には、上述のように、車種に対応して金額が登録されているとともに、更に、拡張課金対象エリアBに進入していた場合に徴収する金額と、進入していなかった場合に徴収する金額とに分けられた第2課金額が登録されている。例えば、中型車両において、拡張課金対象エリアBに進入していた場合には0.5ドル、進入していなかった場合には1ドルが登録されている。
このように、拡張課金対象エリアBに進入していた場合と進入していなかった場合とで金額を異ならせ、経路や距離等に応じた割引等の特典を適用した金額を設定することで、拡張課金対象エリアBを通過してきた車両3の運転手等に対してお得感を与えることができる。
【0039】
補正部33は、料金収受装置の付近を通過した場合に、料金収受装置からアンテナの識別情報を取得し、取得したアンテナの識別情報及び地図情報に基づいて推定される車両の位置と、GPS受信機24から取得される位置情報に基づいて推定される車両3の位置とが一致していない場合に、取得したアンテナの識別情報から推定される車両3の位置に基づいて、GPS受信機24から取得した位置情報を補正する。
【0040】
通信ポート34は、外部の装置と通信を行うためのインタフェースであり、例えば、無線または有線の通信媒体と接続可能とされている。本実施形態においては、通信ポートから有線ネットワーク(例えば、イーサネット)で発行保守機器と接続されていることとする。また、発行保守機器35は、センタ機17と通信可能に接続されており、センタ機17との通信可能に接続するための媒体は特に限定されない。
【0041】
次に、車両3が拡張課金対象エリアBに進入した後に、課金対象エリアAに進入する場合の上記車載器50の動作内容について、図6および図9を用いて説明する。
図9に示すように、車載器50のGPS受信機24は、走行中において複数のGPS衛星から現在位置に関する位置情報を取得している。GPS受信機24は、取得した位置情報を制御部26に出力すると、制御部26は、これら位置情報と車載器記憶装置25に格納されている地図情報とに基づいて車両3の現在位置情報を検出するとともに、車載器記憶装置25に格納する。続いて、車両3が料金収受装置2の付近を通過することにより、制御部26は、料金収受装置2の第1アンテナ5から要求信号を受信すると、車載器記憶装置25に格納されている現在位置情報に基づいて、車両3の入退出情報を検出する。
【0042】
例えば、車載器記憶装置25において記憶されている現在位置情報が「拡張課金対象エリアB」であり、第1アンテナ5から要求信号を受信した後に、制御部26によって新たな現在位置情報が「課金対象エリアA」であると検出された場合には、車両3が「拡張課金対象エリアBから課金対象エリアAに進入」したことを検出し、これを入退出情報とする。また、例えば、車載器記憶装置25において記憶されている現在位置情報が「課金対象エリアA」であり、第1アンテナ5から要求信号を受信した後に、制御部26によって新たな現在位置情報が「拡張課金対象エリアB」であると検出された場合には、車両3が「課金対象エリアAから拡張課金対象エリアBに退出」したことを検出し、これを入退出情報とする。
【0043】
制御部26は、このように検出された入退出情報(例えば、「拡張課金対象エリアBから課金対象エリアAに進入」)を第1広域通信機32を介してセンタ機17に出力する。
センタ機17は、第2広域通信機18を介して取得した入退出情報に基づいて、車両3の利用者から徴収する道路利用料金としての課金額を決定し、決定した課金額の情報を車載器50に対して送信する。車載器50の制御部26は、第1広域通信機32を介して課金額の情報を受信すると、ICカードに記録されている残高から、取得した課金額の情報に応じた金額を差し引き、その残高をICカードに残高として更新記録する。
【0044】
次に、上述した車載器50が、車両(車載器)の位置の情報を補正する場合の動作について説明する。
車両3が料金収受装置2の付近を通過した場合に、料金収受装置2に設けられる第1アンテナ5から、車載器50に対し、アンテナの識別情報が送信される。車載器50の制御部26は、取得した料金収受装置2のアンテナ(例えば、第1アンテナ5)の識別情報と、記憶装置25から読み出した地図情報とを補正部33に出力する。地図情報には、料金収受装置2に設けられるアンテナの設置位置の情報とアンテナの識別情報とが対応付けられているので、補正部33において、地図情報と取得したアンテナの識別情報とに基づいて、車載器50の第1現在位置が推定される。
【0045】
また、車載器50のGPS受信機24からは位置情報が取得されており、補正部33において、この位置情報に基づいて車載器50の第2現在位置が推定される。さらに、補正部33は、第1現在位置と第2現在位置とを比較し、不一致である場合には、第1現在位置に基づいて、第2現在位置を補正することにより、GPS受信機24からの位置情報を補正する。これにより、車載器50が検出する位置精度を向上させることができる。
【0046】
また、料金収受装置2が、工事等により設置位置が変更される場合や、新たに料金収受装置2が設置された場合等には、車載器50の記憶装置25に格納されている地図情報に登録されている料金収受装置2の位置情報は、古い情報となり、位置情報が正しく補正できない場合がある。そのため、車載器50は、位置情報を補正する前に、車載器50の記憶装置25に備えられる地図情報が、最新の情報であるか否かを判定し、最新の地図情報が車載器50に備えられていない場合には、最新の地図情報を取得することが好ましい。
【0047】
例えば、地図情報が最新の情報であるか否かを判定する場合には、料金収受装置2のアンテナ(例えば、第1アンテナ5)の識別情報に、バージョン番号等のアンテナの設置位置の新旧識別情報(例えば、いつの時点における情報であるかを示す更新情報)を含ませておき、このアンテナの設置位置の新旧識別情報(更新情報)が、料金収受装置2側から取得した場合と、地図情報から読み出した場合とで一致するか否かを判定する。一致していない場合には、車載器50は、地図情報に含まれる最新の地図情報をセンタ機より取得する。また、上記のようにバージョン番号等の新旧識別情報(更新情報)が一致しない場合だけでなく、取得したアンテナの識別情報が、地図情報から得られない場合に、最新の地図情報を取得することとしてもよい。
【0048】
なお、上記では、車載器50が最新の地図情報を取得する場合に、センタ機に備えられる地図情報の全体をダウンロードすることとして説明していたが、これに限定されない。例えば、車載器50側でダウンロード対象として選定されたアンテナの識別情報に対する位置情報の情報を車載器50からセンタ機に通知し、センタ機において、地図情報全体のうちから、通知されたアンテナの識別情報に対応する位置情報の情報のみを出力させることとしてもよい。このように、センタ機と車載器50との間において、選定されたアンテナの識別情報に対応する位置情報だけを授受することによって、センタ機と車載器50との間の通信負荷を低減することができる。
【0049】
また、車載器50は、第1広域通信機32、専用狭帯域無線機(DSRC;Dedicated Short Range Communication)、及び第1広域通信機以外にセンタ機と通信可能に接続させる発行保守機器のうち少なくともいずれか1つから、料金収受装置2の正しい設置位置情報を有する最新の地図情報をダウンロードする。これにより、車載器50は料金収受装置2の設置位置を特定する情報を、複数の経路から容易に取得することができる。
【0050】
以上説明してきたように、本実施形態に係る車載器50及び料金収受装置2によれば、車両3に搭載され、課金対象エリアAの料金所に設置される料金収受装置との間で課金に関する情報を授受する車載器50は、料金収受装置2の付近を通過すると、その料金収受装置2から料金収受装置2のアンテナの識別情報を取得する。車載器50においてアンテナの識別情報が取得されると、記憶装置25に記憶された地図情報に含まれる料金収受装置2のアンテナの設置位置とアンテナの識別情報とに基づいて、車両3の位置が推定される。この料金収受装置2から取得したアンテナの識別情報に基づいて推定された車両の位置と、GPS受信機24から取得される位置情報から推定される車両の位置とが比較され、車両の位置が一致していない場合には、GPS受信機24から取得された位置情報が補正される。このように、料金収受装置2側から推定される車両の位置と、GPS受信機24から推定される車両の位置とを比較し、一致していない場合に、GPS受信機24から取得される位置情報を補正するので、GPS受信機24から得られる位置情報の精度を保つことができる。
【0051】
なお、本実施形態における地図情報のアンテナの設置位置の情報を示す位置情報は、演算に基づいて車両の位置を得るための相対的な位置を示す情報であってもよいし、車両の位置を特定する絶対的な位置を示す情報であってもよいこととする。このように、アンテナの設置位置の情報は、相対的な位置であっても、絶対的な位置であっても、確実に車両の位置を特定することができる。
【0052】
〔変形例〕
上記実施形態においては、アンテナの識別情報の更新情報(例えば、バージョン番号)に基づいて、記憶装置25に備えられる地図情報が、最新情報か否かを判定し、最新でない場合には、外部からダウンロードすることによって、最新の地図情報を得ることとしていたが、車載器50の最新の地図情報の取得方法はこれに限定されない。
【0053】
例えば、料金収受装置2から出力されるアンテナの識別情報に、アンテナの設置位置の情報を含むこととしてもよい。このような場合に、アンテナの設置位置の情報を含むアンテナの識別情報を取得した車載器50は、車載器記憶装置25に格納されている地図情報のうち、取得したアンテナの識別情報に対応するアンテナの設置位置の情報を変更する。または、アンテナの識別情報とともに取得したアンテナの設置位置の情報と、車載器記憶装置25に格納されているアンテナの識別情報に対応するアンテナの設置位置の情報とにおいて、予め所定の条件に基づく優先順位を設定しておき、その優先順位に基づいて、地図情報を更新することとしてもよい。
このように、車載器50側で、アンテナの更新情報を比較する時間を短縮することができ、アンテナの設置位置の情報を、速やかに得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 料金収受システム
3 車両
17 センタ機
18 第2広域通信機
24 GPS受信機
25 車載器記憶装置
32 第1広域通信機
33 補正部
34 通信ポート
35 発行保守機器
50 車載器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるとともに、課金対象エリアの料金所に設置されている料金収受装置との間で課金に関する情報を授受する車載器であって、
前記料金収受装置に設けられるアンテナの設置位置の情報と該アンテナの識別情報とを対応付けた地図情報を記憶する記憶手段と、
前記車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、を具備し、
前記料金収受装置の付近を通過した場合に、該料金収受装置から前記アンテナの識別情報を取得し、取得した前記アンテナの識別情報及び前記地図情報に基づいて推定される前記車両の位置と、前記位置情報取得手段から取得される前記位置情報に基づいて推定される前記車両の位置とが一致していない場合に、取得した前記アンテナの識別情報から推定される前記車両の位置に基づいて、前記位置情報取得手段から取得した前記位置情報を補正する車載器。
【請求項2】
広域無線を利用するための広域通信機を介して、前記料金収受装置の上位装置であるセンタ機と通信可能に接続されており、かつ、専用狭帯域無線を利用するための専用狭帯域無線機を介して、前記料金収受装置と通信可能に接続されている場合に、
前記地図情報は、
前記広域通信機、前記専用狭帯域無線機、及び前記広域通信機以外に前記センタ機と通信可能に接続させる発行保守機器のうち、少なくともいずれか1つから取得可能とされている請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
前記地図情報において、前記料金収受装置から取得した前記アンテナの識別情報に対応する前記料金収受装置の前記アンテナの設置位置の情報が含まれていない場合に、前記広域通信機を介して前記センタ機から最新の前記地図情報を取得する請求項2に記載の車載器。
【請求項4】
前記地図情報の前記アンテナの設置位置の情報は、演算に基づいて前記車両の位置を得るための相対的な位置を示す情報、または前記車両の位置を特定する絶対的な位置を示す情報である請求項1または請求項2に記載の車載器。
【請求項5】
前記アンテナの識別情報は、新旧を識別するための新旧識別情報を含んでおり、
前記料金収受装置から取得した前記アンテナの識別情報の前記新旧識別情報と、前記地図情報に含まれる前記アンテナの識別情報の前記新旧識別情報とが一致していない場合には、前記広域通信機を介して前記センタ機から最新の前記地図情報を取得する請求項2から請求項4のいずれかに記載の車載器。
【請求項6】
前記料金収受装置の前記アンテナから前記アンテナの識別情報とともに、前記アンテナの設置位置の情報を取得する請求項1から請求項5のいずれかに記載の車載器。
【請求項7】
前記料金収受装置から、設置位置の情報を取得した場合に、前記地図情報に含まれる前記料金収受装置の設置位置の情報と置き換える請求項6に記載の車載器。
【請求項8】
前記アンテナの識別情報は、新旧を識別するための新旧識別情報を含んでおり、前記料金収受装置から取得した前記アンテナの識別情報の前記新旧識別情報と、前記地図情報に含まれる前記アンテナの識別情報の前記新旧識別情報とが一致していない場合には、前記広域通信機を介して前記センタ機から最新の前記地図情報を取得する請求項2から請求項4のいずれかに記載の車載器と、前記車載器から、最新の前記地図情報の取得要求に応じて、最新の前記地図情報を前記車載器に出力する前記センタ機と、を具備する料金収受システムであって、
前記センタ機は、最新の前記地図情報のうち、前記車載器の前記地図情報に含まれる前記アンテナの識別番号の前記新旧識別情報が異なる前記アンテナに対応する情報のみを、最新の前記地図情報として前記車載器に出力する料金収受システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−170629(P2011−170629A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33900(P2010−33900)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)