車載器
【課題】 傾き動作が可能なディスプレイ部を備えた車載器において、車両の走行時等の振動音の発生を減少させる。
【解決手段】
車載器は、画像表示面を有するディスプレイ部と、ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、ディスプレイ部の傾き動作を行うためのスライダ部と、ディスプレイ部と前記スライダ部とを回転可能に接続するヒンジ部と、を備えている。そして、ディスプレイ部の下方部には、前記ヒンジ部の回転軸の周囲の間隙を偏らせる方向に力を発生させる弾性部材が配されている。また、ディスプレイ部の上方部には、インナーエスカッションの内壁面の溝の縁と接触するテーパ面を有するローラ部を備え、ローラ部には、テーパ面と内壁面の間の距離を引き離す方向に力を発生させる弾性部材が配されている。
【解決手段】
車載器は、画像表示面を有するディスプレイ部と、ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、ディスプレイ部の傾き動作を行うためのスライダ部と、ディスプレイ部と前記スライダ部とを回転可能に接続するヒンジ部と、を備えている。そして、ディスプレイ部の下方部には、前記ヒンジ部の回転軸の周囲の間隙を偏らせる方向に力を発生させる弾性部材が配されている。また、ディスプレイ部の上方部には、インナーエスカッションの内壁面の溝の縁と接触するテーパ面を有するローラ部を備え、ローラ部には、テーパ面と内壁面の間の距離を引き離す方向に力を発生させる弾性部材が配されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載器の中には、画像表示面を有するディスプレイ部の傾きを変更可能なものがある。このような車載器では、ディスプレイ部を支持する部材がヒンジ機構やスライド機構により結合し、部材間の位置関係の変位により、ディスプレイ部の傾き動作を実現している(特許文献1等参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−309388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヒンジ機構やスライド機構で部材間が結合されている場合、その部分の部材の間には、スムーズな動作のため、所定のクリアランスが設けられている。そのため、車両の走行時の振動等によりディスプレイ部が振動すると、部材同士が衝突して振動音が発生してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、傾き動作が可能なディスプレイ部を備えた車載器において、車両の走行時の振動音の発生を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明では、可動部が有する隙間について、弾性素材を用いて加圧することで、部材間の容易な衝突を回避する。
【0007】
例えば、本願発明の車載器は、画像表示面を有するディスプレイ部と、前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、前記ディスプレイ部の傾き動作を行うためのスライダ部と、前記ディスプレイ部と前記スライダ部とを、回転可能に接続するヒンジ部と、を備え、前記ディスプレイ部の下方部には、前記ヒンジ部の回転軸の周囲の間隙を偏らせる方向に力を作用させる弾性部材が配されている、ことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態が適用された車載器1について、図1〜13を参照して説明する。なお、図1〜13は、車載器1の全ての構成を示すものではなく、理解容易のため、適宜、構成の一部を省略して描いている。
【0009】
図1は、車載器1の外観の斜視図である。なお、画像表示面が、向かって左手前に配置するようにしている。図2は、図1と同様の向きに車載器1を配置した場合の外観の斜視図であり、ディスプレイ部100が傾いた状態、すなわちディスプレイ部100が開いた状態を示す。図3は、車載器1の分解斜視図である。図4は、ディスプレイ部100の外観の斜視図である。図5は、ディスプレイ部100のディスプレイ支持部取付け部120を拡大した外観の斜視図である。図6は、ディスプレイ部100のディスプレイ支持部取付け部120に取り付けられた状態の板バネ140の斜視図である。図7は、板バネ140の外観の斜視図である。図8と図9は、板バネ140の作用を説明するための図である。図10は、ディスプレイ部100の右側上部を上方(図3のZ方向)から見た外観図である。図11は、テーパローラの作用を説明するための図である。図12は、ディスプレイ部100の左側上部を上方(図3のZ方向)から見た外観図である。図13は、ストレートローラの作用を説明するための図である。
【0010】
なお、以下において、「右」及び「左」は、画像表示面を手前にして置いたときを基準とする。
【0011】
図1〜図3に示すように、車載器1は、画像表示面を備えるディスプレイ部100と、筐体200と、スライド部300と、インナーエスカッション400と、を備えて構成される。
【0012】
ディスプレイ部100は、扁平直方体形状のケース内に、ディスプレイ基板を格納している。ディスプレイ部100の画像表示面には、液晶パネルなどの表示装置の他に、つまみ160等、各種の操作ボタンが配置されている。なお、ディスプレイ部100の正面の一部及び側面は、樹脂製のケース104で覆われている。
【0013】
ディスプレイ部100の右側の側面であるディスプレイ部右側面101の上方には、右側ローラ部110が設けられている(図3参照)。また、ディスプレイ部100の左側の側面であるディスプレイ部左側面103の上方には、左側ローラ部150が設けられている。また、ディスプレイ部右側面101の下方と、ディスプレイ部左側面103の下方とには、それぞれにディスプレイ支持部取付け部120が設けられている。
【0014】
筐体200は、ディスプレイ部100側の面が開放した箱型の部材である。筐体200内には、CDやDVDのドライブユニット、ハードディスク、各種処理を行うための回路基板等が格納されている。
【0015】
また、図示しないが、筐体200には、スライド部300がスライド移動を行うためのガイドとなるレールと、スライド移動の駆動源となるモータと、モータの駆動力をスライド部300に伝えるギア等が配置されている。
【0016】
スライド部300は、筐体200内のレールに沿ってスライドするアーム部320と、ディスプレイ部100とヒンジ結合しディスプレイ部100を支持するディスプレイ支持部310とを備えている(図3参照)。アーム部320は、ギアを介してモータと連結しており、モータの駆動方向に応じて、インナーエスカッション300の主面に直交する方向(図3のX方向)にスライド移動する。
【0017】
ディスプレイ支持部310には、ディスプレイ部100のディスプレイ支持部取付け部120に対向する部分に、ネジ貫通孔311が設けられている(図4参照)。ネジ125は、ネジ貫通孔311を貫通して、ディスプレイ支持部取付け部120に結合している。これにより、ヒンジ機構が構成され、ディスプレイ部100は、ネジ125の軸を中心に回転可能である。
【0018】
一方、ディスプレイ部右側面101の上方に設けられた右側ローラ部110は、インナーエスカッション400の右側の壁面である右側壁面430の内側に設けられた上下方向に延びる溝である右側壁面溝431に嵌り込んでいる。また、ディスプレイ部左側面103の上方に設けられた左側ローラ部150は、インナーエスカッション400の左側の壁面である左側壁面410の内側に設けられた上下方向に延びる溝である左側壁面溝411に嵌り込んでいる(図3参照)。
【0019】
したがって、ディスプレイ部100の上方部分は、上下方向の移動に制限され、インナーエスカッション400と近接した位置を保持したまま上下方向に移動する(図2参照)。
【0020】
インナーエスカッション400は、ディスプレイ部100を筐体200に収納するための部材であり、ディスプレイ部100の画像表示面の背面側の形状に対応した箱型をしている。インナーエスカッション400は、矩形の主面と、その4つの辺に結合した上下左右の壁面とからなる。主面は、ディスプレイ部100の収納時においてディスプレイ部100の背面と対向する面である。上下左右の4つの壁面は、ディスプレイ部100の収納時にディスプレイ部100の左右上下の側面と対向する面である。
【0021】
インナーエスカッション400の左右の内壁面410、430には、ディスプレイ部100の左右の側面103、101にそれぞれ設けられた左側ローラ部150と、右側ローラ部110とが嵌り込み、かつ上下のみにスライド移動を制限する左側壁面溝411、右側壁面溝431が設けられている(図3参照)。ディスプレイ部100がチルト動作を行うときは、ディスプレイ部100の左側ローラ部150と、右側ローラ部110とは、それぞれ左側壁面溝411、右側壁面溝431に沿って上方向又は下方向にスライド移動する。
【0022】
また、インナーエスカッション400には、CDやDVDなどのディスクの挿入、摘出を行うことができるディスク挿入部401が設けられている。また、インナーエスカッション400には、スライド部300のアーム部320がくぐり抜けるためのスライド部材口450が設けられている(図3参照)。
【0023】
インナーエスカッション400は、筐体200のディスプレイ部100側の口型の開放部分に嵌めこまれている。
【0024】
すなわち、ディスプレイ部100のチルト動作時は、スライド部300の画像表示面方向への突出に従って、ディスプレイ部100の下方部分は、インナーエスカッション400から引き離される。一方、ディスプレイ部100の上方部分はインナーエスカッション400と接近したまま下方向に移動するので、ディスプレイ部100は、徐々に水平に近づくように傾けられる。これにより、ディスク挿入部401が露出し、ユーザは、CDやDVDの交換を行うことができる。
【0025】
本実施形態の車載器1は、概略以上のように構成されるが、さらに次の特徴的な構成を備えている。
【0026】
上記のように、車載器1は、ディスプレイ部100のチルト動作のため、ヒンジ機構を介して部材が結合している部分がある(図4参照)。かかる機構のスムーズな動作のために、かかる部分の部材間には、所定の隙間(クリアランス)が確保されている。すなわち、ヒンジ機構においては、ネジ125とネジ貫通孔311との間において、所定の隙間が存在する。
【0027】
このような隙間は、ヒンジ機構のスムーズな動作のためには必要である。しかし、一方で、車両の走行中の振動等により、ディスプレイ部100が振動し、これらの部材同士が反復して衝突する現象が生じるため、低級音等の振動音の発生の原因となる。
【0028】
そこで、本実施形態の車載器1においては、かかる隙間によるディスプレイ部100の微振動を制限する機構を設けている。
【0029】
具体的には、図5に示すように、ディスプレイ部右側面101と、ディスプレイ部左側面103には、ディスプレイ支持部取付け部120の傍に、板バネ140が取り付けられている。
【0030】
図6に示すように、板バネ140は、ディスプレイ部右側面101の内側から取り付けられており、ディスプレイ部右側面101に設けられたスリット状の穴である切り欠き部105から板バネの作用部144がディスプレイ部右側面101から突出している。なお、切り欠き部105は、ディスプレイ部右側面101の部材により構成されるディスプレイ部100の内部の空隙と、ディスプレイ部100の外部との間を貫通する間隙である。
【0031】
板バネ140は、図7に示すように、L字型またはV字型に折れる面を有する弾性部材である。板バネ140は、取付け孔141、142を備える。板バネ140は、ディスプレイ部右側面101の内側の下部に、取付け孔141、142を貫通する2本のネジ(板バネ取付けネジ147)によりネジ止め結合されている。なお、板バネ140は、ネジ止めに限らず、取付け孔141、142に貫通するかしめ部材により、かしめ固定されていてもよいし、板バネ140をディスプレイ部右側面101の内側に設けた所定のはめ込み部材にはめ込まれることで固定されてもよい。
【0032】
板バネ140は、ディスプレイ部右側面101の内側と結合する板バネ緩衝部143と、かかる板バネ緩衝部143から所定の角度で切り欠き部105の間隙を貫通する方向に曲げられた板バネ作用部144と、からなる(図7参照)。板バネ緩衝部143には、取付け孔141、142が設けられている。
【0033】
板バネ140の形状は、図7に示すように、長方形の板の長辺のほぼ中央部から直角に突き出た凸部を有するいわゆるT字形状である。突き出た凸部の先端が上記のようにV字型に一方向に折り返されて板バネ作用部144となっている。
【0034】
板バネ作用部144と板バネ緩衝部143とがなすV字型の傾斜の角度は、鋭角である。例えば45〜90°程度(例えば60°)の鋭角であることが望ましい。鋭角であれば、板バネ140の板バネ作用部144に接触するディスプレイ支持部310から受けた力により生ずる板バネ緩衝部143の変形により、板バネ作用部144がディスプレイ支持部310との接触を維持できなくなることを防止できる。
【0035】
なお、板バネ140は、ディスプレイ支持部310をネジ125によりディスプレイ支持部取付け部120へ取り付けた際に、ディスプレイ支持部310の縁であるディスプレイ支持部縁312が板バネ作用部144を圧迫するようにその形状及び配置が調整されている。
【0036】
また、ディスプレイ支持部310の先端付近の縁であるディスプレイ支持部縁312の形状は、ネジ貫通孔311の中心点を中心とする円弧状となっている(図9参照)。
【0037】
図8を用いて、板バネ140の作用について説明する。
【0038】
図8(a)に示すように、ディスプレイ部100にディスプレイ支持部310を取り付ける前の状態では、ディスプレイ部右側面101の切り欠き部105から図の上方(ディスプレイ部100の外側に向かう方向)に板バネ作用部144が突き出ている。
【0039】
図8(b)に示すように、ディスプレイ部100にディスプレイ支持部310を取り付けた状態では、ディスプレイ部右側面101の切り欠き部105から図の上方(ディスプレイ部100の外側に向かう方向)に板バネ作用部144が突き出ており、ディスプレイ支持部310が板バネ作用部144を図8(b)における左側方向に圧迫するようにネジ125によりディスプレイ右側面101に取り付けられている。
【0040】
この状態では、板バネ緩衝部143が撓むことで、板バネ作用部144はディスプレイ支持部310をネジ125の方向に押す力を発生させ、ディスプレイ支持部310はネジ125の方向に押し戻される。そのため、ディスプレイ支持部310のネジ貫通孔311の縁とネジ125との間のクリアランス(間隙)128が所定の方向(図8(b)においては右側方向)に偏り、ディスプレイ支持部310等の部材の容易な振動を制限する。その結果、部材同士の衝突が抑制され、振動音が減少する。
【0041】
図9を用いて、ディスプレイ部100の開閉時の板バネ140の作用の変化を説明する。
【0042】
図9(a)は、ディスプレイ部100を閉じた状態、すなわちディスプレイ部100がインナーエスカッション400に収納された状態を示している。この状態において、板バネ140の板バネ作用部144はディスプレイ支持部310の縁であるディスプレイ支持部縁312をネジ125の方向(図9(a)における右向きの方向)に加圧している。
【0043】
図9(b)は、ディスプレイ部100を開いた状態、すなわちスライド部300が筐体200から突き出てディスプレイ部100が傾いた状態を示している。この状態においても、板バネ140の板バネ作用部144は、ディスプレイ支持部310の縁であるディスプレイ支持部縁312をネジ125の方向(図9(b)における右下向きの方向)に図9(a)と同じ力で加圧している。ディスプレイ支持部縁312がネジ貫通孔311の中心点を中心とする円弧状であることから、ディスプレイ支持部縁312が板バネ140を圧迫する力、すなわち板バネ140の板バネ作用部144が発生させる力がディスプレイ部100の開閉動作中にほぼ均一に保たれるためである。
【0044】
すなわち、ディスプレイ部100の開閉の際にも、板バネ140の板バネ作用部144はディスプレイ支持部310の縁であるディスプレイ支持部縁312をネジ125方向に一定の力で押すことができ、ディスプレイ支持部縁312とネジ125間の容易な衝突の発生を抑制することができる。
【0045】
なお、板バネ140は、上記の作用を奏するものであれば、その材質に制限はないが、通常は金属で構成することができる。
【0046】
以上、ディスプレイ部右側面101についての説明を行ったが、ディスプレイ部左側面103においても、板バネ140がディスプレイ部右側面101と同様に取り付けられており、同様の作用効果を発揮する。
【0047】
次に、ディスプレイ部100の上部をインナーエスカッション400に取り付けている右側ローラ部110と、左側ローラ部150と、における振動音の抑止について説明する。
【0048】
図10は、ディスプレイ部100の右側上部を上方(図3のZ方向)から見た外観図である。図下側が、ディスプレイの画像表示面である。
【0049】
ディスプレイ部上側面102の、背面寄りの部分に、ディスプレイ部右側面101よりも先端が突き出た右側ローラ部110が取り付けられている。
【0050】
ディスプレイ部100が、インナーエスカッション400に取り付けられている状態について、右側ローラ部110と、インナーエスカッション400の右側壁面430とを拡大して図11に示す。
【0051】
図11において、右側ローラ部110は、ディスプレイ部100に固定されるローラ支持部114と、ローラ支持部114の中心軸を回転軸として回転可能に取り付けられたローラ回転部と、により構成される。
【0052】
ローラ回転部は、ローラ支持部114との距離が変位可能に取り付けられている。具体的には、ローラ支持部114とローラ回転部との間には、ローラ支持部114とローラ回転部との距離を遠ざける方向に働く力を発生させる巻きバネ115が取り付けられている。
【0053】
ローラ回転部は、ローラ支持部114から近い順に、第一の円筒部であるローラ鍔部111と、テーパ部112と、第二の円筒部であるローラ先端部113と、が結合した形状である。
【0054】
テーパ部112は、ローラ支持部114から遠いほど先細りとなる円錐台形状をしており、第二の円筒部であるローラ先端部113の半径は、円錐台形状のテーパ部112の細い側の端の半径と同じである。
【0055】
なお、ローラ鍔部111と、テーパ部112と、ローラ先端部113とは、樹脂で一体に形成されているが、これに限らず、例えば互いに接着されてもよいし、独立して回転可能に取付けられてもよい。
【0056】
また、図11に示すように、円錐台形状のテーパ部112の斜面に、インナーエスカッション400の右側壁面430に設けられた右側壁面溝431の溝の縁である縁431eがエッジ接触するよう、右側ローラ部110は形状及び配置が調整されている。
【0057】
このようにすることで、右側壁面溝431の縁431eがテーパ部112にエッジ接触する状態でローラ鍔部111が回転軸を中心に自由に回転するため、右側ローラ部110は右側壁面溝431に沿って上下動(図11においては図手前方向への動作)をすることができる。つまり、右側ローラ部110とインナーエスカッション400の右側壁面430の間で発生する摩擦力を抑えることができる。
【0058】
また、巻きバネ115がローラ鍔部111を右側壁面溝431側へ押し付ける力を発生させるため、テーパ部112と右側壁面溝431の溝の縁431eとの間に発生する部材同士の衝突が抑制され、振動音が減少する。
【0059】
図12は、ディスプレイ部100の右側上部を上方(図3のZ方向)から見た外観図である。図下側が、ディスプレイの画像表示面である。
【0060】
ディスプレイ部上側面102の、背面寄りの部分に、ディスプレイ部左側面103よりも先端が突き出た左側ローラ部150が取り付けられている。
【0061】
ディスプレイ部100が、インナーエスカッション400に取り付けられている状態について、左側ローラ部150と、インナーエスカッション400の左側壁面410とを拡大して図13に示す。
【0062】
図13において、左側ローラ部150は、ディスプレイ部100に固定される円筒状のローラ支持部153と、ローラ支持部153の中心軸を回転軸として回転可能に取り付けられたローラ回転部と、により構成される。
【0063】
ローラ回転部は、支持部153から近い順に、第一の円筒部であるローラ鍔部151と、第二の円筒部であるローラ先端部152と、が結合した形状である。ローラ先端部152の半径は、第一の円筒部であるローラ鍔部151の半径と同じである。
【0064】
なお、ローラ鍔部151のローラ支持部153から遠い面の外周部は面取りされ、テーパ状となっている。
【0065】
なお、ローラ鍔部151と、ローラ先端部152とは、樹脂で一体に形成されているが、これに限らず、例えば互いに接着されてもよいし、独立して回転可能に取付けられてもよい。
【0066】
また、図13に示すように、ローラ先端部152の先端の面152sに、インナーエスカッション400の左側壁面410に設けられた左側壁面溝411の溝の底411bが接触するよう、左側ローラ部150は形状及び配置が調整されている。
【0067】
このようにすることで、左側壁面溝411の底411bがローラ先端部152の先端152sに接触する状態でローラ鍔部151が回転軸を中心に自由に回転するため、左側ローラ部150は左側壁面溝411に沿って上下動(図13においては図手前方向への動作)をすることができる。つまり、左側ローラ部150とインナーエスカッション400の左側壁面410の間で発生する摩擦力を抑えることができる。
【0068】
また、右側ローラ部110に取り付けられた巻きバネ115により、左側ローラ部150のローラ支持部153を左側壁面溝411側へ押し付ける力を受けるため、ローラ先端部152の先端152sと左側壁面溝411の底411bとの間に発生する部材同士の衝突が抑制され、振動音が減少する。
【0069】
以上、本願発明の一実施形態について説明した。
【0070】
上記実施形態によれば、チルト動作可能なディスプレイ部を備える車載器において、振動音の発生を減少させることができる。
【0071】
また、右側ローラ部110の巻きバネ115と、ディスプレイ部100の左右のそれぞれの側面に取り付けられた板バネ140と、の3点でディスプレイ部100の振動を緩衝するため、右側ローラ部110のテーパ部112と、ディスプレイ支持部310の取り付けが安定し、3点で支持する構成を実現できる。すなわち、本実施形態の車載器1は、ディスプレイ部100を3点で支持することにより、衝撃や振動に強い構造を有するといえる。
【0072】
なお、上記実施形態は、様々な変形が可能である。例えば、図7に示した板バネ140の形状、配置(例えば、ディスプレイ部100の開閉動作に伴う回転に従属せず常に一定の方向に加圧するように回転可能に取り付ける等)は、適宜選択することができる。
【0073】
また、図11に示した巻きバネ115の代わりに、他の弾性部材、例えばゴム等を用いてもよい。その際には、接触面にゴムの摩擦力を軽減する素材(樹脂や金属等の滑りをよくする部材)で覆うようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、右側ローラ部110にテーパ部112を備えるテーパローラを用いている(図11参照)が、左側ローラ部150にテーパローラを用いるようにしてもよいし、右側ローラ部110と左側ローラ部150との両方にテーパローラを用いるようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態においては、テーパ部112を備える右側ローラ部110に巻きバネ115が取付けられている(図11参照)が、これに限られない。すなわち、テーパ部112を備えない左側ローラ部150に巻きバネ115が取り付けられるようにしてもよいし、右側ローラ部110と左側ローラ部150との両方をテーパローラとして巻きバネ115を取り付けてもよい。
【0076】
なお、上記実施形態においては、ディスプレイ支持部310に設けられたネジ貫通孔311とネジ125との間隙を板バネ140で加圧する構成と(図9参照)、右側ローラ部110にテーパ部112を設けて右側壁面溝431の縁431eとテーパ部112がエッジ接触する構成(図11参照)と、右側ローラ部110に弾性体である巻きバネ115を設けて右側ローラ部110を右側壁面溝431側に加圧する構成(図11参照)と、を含んでいる。
【0077】
このうち、いずれかの任意の構成を一つだけ適用してもよいし、複数の構成を組み合わせて適用しても良い。例えば、板バネで加圧する構成と、エッジ接触する構成とを適用しても良いし、板バネで加圧する構成と、右側ローラ部を加圧する構成とを適用しても良い。また、エッジ接触する構成と、右側ローラ部を加圧する構成とを適用しても良い。
【0078】
望ましくは、全ての構成を適用することであるが、それぞれの部材の大きさ、重さ、位置、コスト、等によりどの構成を採用するか決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】車載器の斜視図。
【図2】車載器の斜視図。
【図3】車載用ディスプレイ装置の分解斜視図。
【図4】ディスプレイ部の外観図。
【図5】ディスプレイ部の外観図。
【図6】ディスプレイ部の外観図。
【図7】板バネの外観図。
【図8】板バネの作用を説明するための図。
【図9】板バネの作用を説明するための図。
【図10】ディスプレイ部の外観図。
【図11】テーパローラの作用を説明するための図。
【図12】ディスプレイ部の外観図。
【図13】ストレートローラの作用を説明するための図。
【符号の説明】
【0080】
1…車載器、100…ディスプレイ部、101…ディスプレイ部右側面、102…ディスプレイ部上側面、103…ディスプレイ部左側面、104…ケース、105…切り欠き部、110…右側ローラ部、111…ローラ鍔部、112…テーパ部、113…ローラ先端部、114…ローラ支持部、115…巻きバネ、120…ディスプレイ支持部取付け部、125…ネジ、130…突起部、140…板バネ、141、142…取付け孔、143…板バネ緩衝部、144…板バネ作用部、147…板バネ取付けネジ、150…左側ローラ部、151…ローラ鍔部、152…ローラ先端部、153…ローラ支持部、160…つまみ、200…筐体、300…スライド部材、310…ディスプレイ支持部、311…ネジ貫通孔、312…ディスプレイ支持部縁、320…アーム部、400…インナーエスカッション、401…ディスク挿入部、410…左側壁面、411…左側壁面溝、411b…底、420…上側壁面、430…右側壁面、431…右側壁面溝、431e…縁、440…下側壁面、450…スライド部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載器の中には、画像表示面を有するディスプレイ部の傾きを変更可能なものがある。このような車載器では、ディスプレイ部を支持する部材がヒンジ機構やスライド機構により結合し、部材間の位置関係の変位により、ディスプレイ部の傾き動作を実現している(特許文献1等参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−309388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヒンジ機構やスライド機構で部材間が結合されている場合、その部分の部材の間には、スムーズな動作のため、所定のクリアランスが設けられている。そのため、車両の走行時の振動等によりディスプレイ部が振動すると、部材同士が衝突して振動音が発生してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、傾き動作が可能なディスプレイ部を備えた車載器において、車両の走行時の振動音の発生を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明では、可動部が有する隙間について、弾性素材を用いて加圧することで、部材間の容易な衝突を回避する。
【0007】
例えば、本願発明の車載器は、画像表示面を有するディスプレイ部と、前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、前記ディスプレイ部の傾き動作を行うためのスライダ部と、前記ディスプレイ部と前記スライダ部とを、回転可能に接続するヒンジ部と、を備え、前記ディスプレイ部の下方部には、前記ヒンジ部の回転軸の周囲の間隙を偏らせる方向に力を作用させる弾性部材が配されている、ことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態が適用された車載器1について、図1〜13を参照して説明する。なお、図1〜13は、車載器1の全ての構成を示すものではなく、理解容易のため、適宜、構成の一部を省略して描いている。
【0009】
図1は、車載器1の外観の斜視図である。なお、画像表示面が、向かって左手前に配置するようにしている。図2は、図1と同様の向きに車載器1を配置した場合の外観の斜視図であり、ディスプレイ部100が傾いた状態、すなわちディスプレイ部100が開いた状態を示す。図3は、車載器1の分解斜視図である。図4は、ディスプレイ部100の外観の斜視図である。図5は、ディスプレイ部100のディスプレイ支持部取付け部120を拡大した外観の斜視図である。図6は、ディスプレイ部100のディスプレイ支持部取付け部120に取り付けられた状態の板バネ140の斜視図である。図7は、板バネ140の外観の斜視図である。図8と図9は、板バネ140の作用を説明するための図である。図10は、ディスプレイ部100の右側上部を上方(図3のZ方向)から見た外観図である。図11は、テーパローラの作用を説明するための図である。図12は、ディスプレイ部100の左側上部を上方(図3のZ方向)から見た外観図である。図13は、ストレートローラの作用を説明するための図である。
【0010】
なお、以下において、「右」及び「左」は、画像表示面を手前にして置いたときを基準とする。
【0011】
図1〜図3に示すように、車載器1は、画像表示面を備えるディスプレイ部100と、筐体200と、スライド部300と、インナーエスカッション400と、を備えて構成される。
【0012】
ディスプレイ部100は、扁平直方体形状のケース内に、ディスプレイ基板を格納している。ディスプレイ部100の画像表示面には、液晶パネルなどの表示装置の他に、つまみ160等、各種の操作ボタンが配置されている。なお、ディスプレイ部100の正面の一部及び側面は、樹脂製のケース104で覆われている。
【0013】
ディスプレイ部100の右側の側面であるディスプレイ部右側面101の上方には、右側ローラ部110が設けられている(図3参照)。また、ディスプレイ部100の左側の側面であるディスプレイ部左側面103の上方には、左側ローラ部150が設けられている。また、ディスプレイ部右側面101の下方と、ディスプレイ部左側面103の下方とには、それぞれにディスプレイ支持部取付け部120が設けられている。
【0014】
筐体200は、ディスプレイ部100側の面が開放した箱型の部材である。筐体200内には、CDやDVDのドライブユニット、ハードディスク、各種処理を行うための回路基板等が格納されている。
【0015】
また、図示しないが、筐体200には、スライド部300がスライド移動を行うためのガイドとなるレールと、スライド移動の駆動源となるモータと、モータの駆動力をスライド部300に伝えるギア等が配置されている。
【0016】
スライド部300は、筐体200内のレールに沿ってスライドするアーム部320と、ディスプレイ部100とヒンジ結合しディスプレイ部100を支持するディスプレイ支持部310とを備えている(図3参照)。アーム部320は、ギアを介してモータと連結しており、モータの駆動方向に応じて、インナーエスカッション300の主面に直交する方向(図3のX方向)にスライド移動する。
【0017】
ディスプレイ支持部310には、ディスプレイ部100のディスプレイ支持部取付け部120に対向する部分に、ネジ貫通孔311が設けられている(図4参照)。ネジ125は、ネジ貫通孔311を貫通して、ディスプレイ支持部取付け部120に結合している。これにより、ヒンジ機構が構成され、ディスプレイ部100は、ネジ125の軸を中心に回転可能である。
【0018】
一方、ディスプレイ部右側面101の上方に設けられた右側ローラ部110は、インナーエスカッション400の右側の壁面である右側壁面430の内側に設けられた上下方向に延びる溝である右側壁面溝431に嵌り込んでいる。また、ディスプレイ部左側面103の上方に設けられた左側ローラ部150は、インナーエスカッション400の左側の壁面である左側壁面410の内側に設けられた上下方向に延びる溝である左側壁面溝411に嵌り込んでいる(図3参照)。
【0019】
したがって、ディスプレイ部100の上方部分は、上下方向の移動に制限され、インナーエスカッション400と近接した位置を保持したまま上下方向に移動する(図2参照)。
【0020】
インナーエスカッション400は、ディスプレイ部100を筐体200に収納するための部材であり、ディスプレイ部100の画像表示面の背面側の形状に対応した箱型をしている。インナーエスカッション400は、矩形の主面と、その4つの辺に結合した上下左右の壁面とからなる。主面は、ディスプレイ部100の収納時においてディスプレイ部100の背面と対向する面である。上下左右の4つの壁面は、ディスプレイ部100の収納時にディスプレイ部100の左右上下の側面と対向する面である。
【0021】
インナーエスカッション400の左右の内壁面410、430には、ディスプレイ部100の左右の側面103、101にそれぞれ設けられた左側ローラ部150と、右側ローラ部110とが嵌り込み、かつ上下のみにスライド移動を制限する左側壁面溝411、右側壁面溝431が設けられている(図3参照)。ディスプレイ部100がチルト動作を行うときは、ディスプレイ部100の左側ローラ部150と、右側ローラ部110とは、それぞれ左側壁面溝411、右側壁面溝431に沿って上方向又は下方向にスライド移動する。
【0022】
また、インナーエスカッション400には、CDやDVDなどのディスクの挿入、摘出を行うことができるディスク挿入部401が設けられている。また、インナーエスカッション400には、スライド部300のアーム部320がくぐり抜けるためのスライド部材口450が設けられている(図3参照)。
【0023】
インナーエスカッション400は、筐体200のディスプレイ部100側の口型の開放部分に嵌めこまれている。
【0024】
すなわち、ディスプレイ部100のチルト動作時は、スライド部300の画像表示面方向への突出に従って、ディスプレイ部100の下方部分は、インナーエスカッション400から引き離される。一方、ディスプレイ部100の上方部分はインナーエスカッション400と接近したまま下方向に移動するので、ディスプレイ部100は、徐々に水平に近づくように傾けられる。これにより、ディスク挿入部401が露出し、ユーザは、CDやDVDの交換を行うことができる。
【0025】
本実施形態の車載器1は、概略以上のように構成されるが、さらに次の特徴的な構成を備えている。
【0026】
上記のように、車載器1は、ディスプレイ部100のチルト動作のため、ヒンジ機構を介して部材が結合している部分がある(図4参照)。かかる機構のスムーズな動作のために、かかる部分の部材間には、所定の隙間(クリアランス)が確保されている。すなわち、ヒンジ機構においては、ネジ125とネジ貫通孔311との間において、所定の隙間が存在する。
【0027】
このような隙間は、ヒンジ機構のスムーズな動作のためには必要である。しかし、一方で、車両の走行中の振動等により、ディスプレイ部100が振動し、これらの部材同士が反復して衝突する現象が生じるため、低級音等の振動音の発生の原因となる。
【0028】
そこで、本実施形態の車載器1においては、かかる隙間によるディスプレイ部100の微振動を制限する機構を設けている。
【0029】
具体的には、図5に示すように、ディスプレイ部右側面101と、ディスプレイ部左側面103には、ディスプレイ支持部取付け部120の傍に、板バネ140が取り付けられている。
【0030】
図6に示すように、板バネ140は、ディスプレイ部右側面101の内側から取り付けられており、ディスプレイ部右側面101に設けられたスリット状の穴である切り欠き部105から板バネの作用部144がディスプレイ部右側面101から突出している。なお、切り欠き部105は、ディスプレイ部右側面101の部材により構成されるディスプレイ部100の内部の空隙と、ディスプレイ部100の外部との間を貫通する間隙である。
【0031】
板バネ140は、図7に示すように、L字型またはV字型に折れる面を有する弾性部材である。板バネ140は、取付け孔141、142を備える。板バネ140は、ディスプレイ部右側面101の内側の下部に、取付け孔141、142を貫通する2本のネジ(板バネ取付けネジ147)によりネジ止め結合されている。なお、板バネ140は、ネジ止めに限らず、取付け孔141、142に貫通するかしめ部材により、かしめ固定されていてもよいし、板バネ140をディスプレイ部右側面101の内側に設けた所定のはめ込み部材にはめ込まれることで固定されてもよい。
【0032】
板バネ140は、ディスプレイ部右側面101の内側と結合する板バネ緩衝部143と、かかる板バネ緩衝部143から所定の角度で切り欠き部105の間隙を貫通する方向に曲げられた板バネ作用部144と、からなる(図7参照)。板バネ緩衝部143には、取付け孔141、142が設けられている。
【0033】
板バネ140の形状は、図7に示すように、長方形の板の長辺のほぼ中央部から直角に突き出た凸部を有するいわゆるT字形状である。突き出た凸部の先端が上記のようにV字型に一方向に折り返されて板バネ作用部144となっている。
【0034】
板バネ作用部144と板バネ緩衝部143とがなすV字型の傾斜の角度は、鋭角である。例えば45〜90°程度(例えば60°)の鋭角であることが望ましい。鋭角であれば、板バネ140の板バネ作用部144に接触するディスプレイ支持部310から受けた力により生ずる板バネ緩衝部143の変形により、板バネ作用部144がディスプレイ支持部310との接触を維持できなくなることを防止できる。
【0035】
なお、板バネ140は、ディスプレイ支持部310をネジ125によりディスプレイ支持部取付け部120へ取り付けた際に、ディスプレイ支持部310の縁であるディスプレイ支持部縁312が板バネ作用部144を圧迫するようにその形状及び配置が調整されている。
【0036】
また、ディスプレイ支持部310の先端付近の縁であるディスプレイ支持部縁312の形状は、ネジ貫通孔311の中心点を中心とする円弧状となっている(図9参照)。
【0037】
図8を用いて、板バネ140の作用について説明する。
【0038】
図8(a)に示すように、ディスプレイ部100にディスプレイ支持部310を取り付ける前の状態では、ディスプレイ部右側面101の切り欠き部105から図の上方(ディスプレイ部100の外側に向かう方向)に板バネ作用部144が突き出ている。
【0039】
図8(b)に示すように、ディスプレイ部100にディスプレイ支持部310を取り付けた状態では、ディスプレイ部右側面101の切り欠き部105から図の上方(ディスプレイ部100の外側に向かう方向)に板バネ作用部144が突き出ており、ディスプレイ支持部310が板バネ作用部144を図8(b)における左側方向に圧迫するようにネジ125によりディスプレイ右側面101に取り付けられている。
【0040】
この状態では、板バネ緩衝部143が撓むことで、板バネ作用部144はディスプレイ支持部310をネジ125の方向に押す力を発生させ、ディスプレイ支持部310はネジ125の方向に押し戻される。そのため、ディスプレイ支持部310のネジ貫通孔311の縁とネジ125との間のクリアランス(間隙)128が所定の方向(図8(b)においては右側方向)に偏り、ディスプレイ支持部310等の部材の容易な振動を制限する。その結果、部材同士の衝突が抑制され、振動音が減少する。
【0041】
図9を用いて、ディスプレイ部100の開閉時の板バネ140の作用の変化を説明する。
【0042】
図9(a)は、ディスプレイ部100を閉じた状態、すなわちディスプレイ部100がインナーエスカッション400に収納された状態を示している。この状態において、板バネ140の板バネ作用部144はディスプレイ支持部310の縁であるディスプレイ支持部縁312をネジ125の方向(図9(a)における右向きの方向)に加圧している。
【0043】
図9(b)は、ディスプレイ部100を開いた状態、すなわちスライド部300が筐体200から突き出てディスプレイ部100が傾いた状態を示している。この状態においても、板バネ140の板バネ作用部144は、ディスプレイ支持部310の縁であるディスプレイ支持部縁312をネジ125の方向(図9(b)における右下向きの方向)に図9(a)と同じ力で加圧している。ディスプレイ支持部縁312がネジ貫通孔311の中心点を中心とする円弧状であることから、ディスプレイ支持部縁312が板バネ140を圧迫する力、すなわち板バネ140の板バネ作用部144が発生させる力がディスプレイ部100の開閉動作中にほぼ均一に保たれるためである。
【0044】
すなわち、ディスプレイ部100の開閉の際にも、板バネ140の板バネ作用部144はディスプレイ支持部310の縁であるディスプレイ支持部縁312をネジ125方向に一定の力で押すことができ、ディスプレイ支持部縁312とネジ125間の容易な衝突の発生を抑制することができる。
【0045】
なお、板バネ140は、上記の作用を奏するものであれば、その材質に制限はないが、通常は金属で構成することができる。
【0046】
以上、ディスプレイ部右側面101についての説明を行ったが、ディスプレイ部左側面103においても、板バネ140がディスプレイ部右側面101と同様に取り付けられており、同様の作用効果を発揮する。
【0047】
次に、ディスプレイ部100の上部をインナーエスカッション400に取り付けている右側ローラ部110と、左側ローラ部150と、における振動音の抑止について説明する。
【0048】
図10は、ディスプレイ部100の右側上部を上方(図3のZ方向)から見た外観図である。図下側が、ディスプレイの画像表示面である。
【0049】
ディスプレイ部上側面102の、背面寄りの部分に、ディスプレイ部右側面101よりも先端が突き出た右側ローラ部110が取り付けられている。
【0050】
ディスプレイ部100が、インナーエスカッション400に取り付けられている状態について、右側ローラ部110と、インナーエスカッション400の右側壁面430とを拡大して図11に示す。
【0051】
図11において、右側ローラ部110は、ディスプレイ部100に固定されるローラ支持部114と、ローラ支持部114の中心軸を回転軸として回転可能に取り付けられたローラ回転部と、により構成される。
【0052】
ローラ回転部は、ローラ支持部114との距離が変位可能に取り付けられている。具体的には、ローラ支持部114とローラ回転部との間には、ローラ支持部114とローラ回転部との距離を遠ざける方向に働く力を発生させる巻きバネ115が取り付けられている。
【0053】
ローラ回転部は、ローラ支持部114から近い順に、第一の円筒部であるローラ鍔部111と、テーパ部112と、第二の円筒部であるローラ先端部113と、が結合した形状である。
【0054】
テーパ部112は、ローラ支持部114から遠いほど先細りとなる円錐台形状をしており、第二の円筒部であるローラ先端部113の半径は、円錐台形状のテーパ部112の細い側の端の半径と同じである。
【0055】
なお、ローラ鍔部111と、テーパ部112と、ローラ先端部113とは、樹脂で一体に形成されているが、これに限らず、例えば互いに接着されてもよいし、独立して回転可能に取付けられてもよい。
【0056】
また、図11に示すように、円錐台形状のテーパ部112の斜面に、インナーエスカッション400の右側壁面430に設けられた右側壁面溝431の溝の縁である縁431eがエッジ接触するよう、右側ローラ部110は形状及び配置が調整されている。
【0057】
このようにすることで、右側壁面溝431の縁431eがテーパ部112にエッジ接触する状態でローラ鍔部111が回転軸を中心に自由に回転するため、右側ローラ部110は右側壁面溝431に沿って上下動(図11においては図手前方向への動作)をすることができる。つまり、右側ローラ部110とインナーエスカッション400の右側壁面430の間で発生する摩擦力を抑えることができる。
【0058】
また、巻きバネ115がローラ鍔部111を右側壁面溝431側へ押し付ける力を発生させるため、テーパ部112と右側壁面溝431の溝の縁431eとの間に発生する部材同士の衝突が抑制され、振動音が減少する。
【0059】
図12は、ディスプレイ部100の右側上部を上方(図3のZ方向)から見た外観図である。図下側が、ディスプレイの画像表示面である。
【0060】
ディスプレイ部上側面102の、背面寄りの部分に、ディスプレイ部左側面103よりも先端が突き出た左側ローラ部150が取り付けられている。
【0061】
ディスプレイ部100が、インナーエスカッション400に取り付けられている状態について、左側ローラ部150と、インナーエスカッション400の左側壁面410とを拡大して図13に示す。
【0062】
図13において、左側ローラ部150は、ディスプレイ部100に固定される円筒状のローラ支持部153と、ローラ支持部153の中心軸を回転軸として回転可能に取り付けられたローラ回転部と、により構成される。
【0063】
ローラ回転部は、支持部153から近い順に、第一の円筒部であるローラ鍔部151と、第二の円筒部であるローラ先端部152と、が結合した形状である。ローラ先端部152の半径は、第一の円筒部であるローラ鍔部151の半径と同じである。
【0064】
なお、ローラ鍔部151のローラ支持部153から遠い面の外周部は面取りされ、テーパ状となっている。
【0065】
なお、ローラ鍔部151と、ローラ先端部152とは、樹脂で一体に形成されているが、これに限らず、例えば互いに接着されてもよいし、独立して回転可能に取付けられてもよい。
【0066】
また、図13に示すように、ローラ先端部152の先端の面152sに、インナーエスカッション400の左側壁面410に設けられた左側壁面溝411の溝の底411bが接触するよう、左側ローラ部150は形状及び配置が調整されている。
【0067】
このようにすることで、左側壁面溝411の底411bがローラ先端部152の先端152sに接触する状態でローラ鍔部151が回転軸を中心に自由に回転するため、左側ローラ部150は左側壁面溝411に沿って上下動(図13においては図手前方向への動作)をすることができる。つまり、左側ローラ部150とインナーエスカッション400の左側壁面410の間で発生する摩擦力を抑えることができる。
【0068】
また、右側ローラ部110に取り付けられた巻きバネ115により、左側ローラ部150のローラ支持部153を左側壁面溝411側へ押し付ける力を受けるため、ローラ先端部152の先端152sと左側壁面溝411の底411bとの間に発生する部材同士の衝突が抑制され、振動音が減少する。
【0069】
以上、本願発明の一実施形態について説明した。
【0070】
上記実施形態によれば、チルト動作可能なディスプレイ部を備える車載器において、振動音の発生を減少させることができる。
【0071】
また、右側ローラ部110の巻きバネ115と、ディスプレイ部100の左右のそれぞれの側面に取り付けられた板バネ140と、の3点でディスプレイ部100の振動を緩衝するため、右側ローラ部110のテーパ部112と、ディスプレイ支持部310の取り付けが安定し、3点で支持する構成を実現できる。すなわち、本実施形態の車載器1は、ディスプレイ部100を3点で支持することにより、衝撃や振動に強い構造を有するといえる。
【0072】
なお、上記実施形態は、様々な変形が可能である。例えば、図7に示した板バネ140の形状、配置(例えば、ディスプレイ部100の開閉動作に伴う回転に従属せず常に一定の方向に加圧するように回転可能に取り付ける等)は、適宜選択することができる。
【0073】
また、図11に示した巻きバネ115の代わりに、他の弾性部材、例えばゴム等を用いてもよい。その際には、接触面にゴムの摩擦力を軽減する素材(樹脂や金属等の滑りをよくする部材)で覆うようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、右側ローラ部110にテーパ部112を備えるテーパローラを用いている(図11参照)が、左側ローラ部150にテーパローラを用いるようにしてもよいし、右側ローラ部110と左側ローラ部150との両方にテーパローラを用いるようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態においては、テーパ部112を備える右側ローラ部110に巻きバネ115が取付けられている(図11参照)が、これに限られない。すなわち、テーパ部112を備えない左側ローラ部150に巻きバネ115が取り付けられるようにしてもよいし、右側ローラ部110と左側ローラ部150との両方をテーパローラとして巻きバネ115を取り付けてもよい。
【0076】
なお、上記実施形態においては、ディスプレイ支持部310に設けられたネジ貫通孔311とネジ125との間隙を板バネ140で加圧する構成と(図9参照)、右側ローラ部110にテーパ部112を設けて右側壁面溝431の縁431eとテーパ部112がエッジ接触する構成(図11参照)と、右側ローラ部110に弾性体である巻きバネ115を設けて右側ローラ部110を右側壁面溝431側に加圧する構成(図11参照)と、を含んでいる。
【0077】
このうち、いずれかの任意の構成を一つだけ適用してもよいし、複数の構成を組み合わせて適用しても良い。例えば、板バネで加圧する構成と、エッジ接触する構成とを適用しても良いし、板バネで加圧する構成と、右側ローラ部を加圧する構成とを適用しても良い。また、エッジ接触する構成と、右側ローラ部を加圧する構成とを適用しても良い。
【0078】
望ましくは、全ての構成を適用することであるが、それぞれの部材の大きさ、重さ、位置、コスト、等によりどの構成を採用するか決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】車載器の斜視図。
【図2】車載器の斜視図。
【図3】車載用ディスプレイ装置の分解斜視図。
【図4】ディスプレイ部の外観図。
【図5】ディスプレイ部の外観図。
【図6】ディスプレイ部の外観図。
【図7】板バネの外観図。
【図8】板バネの作用を説明するための図。
【図9】板バネの作用を説明するための図。
【図10】ディスプレイ部の外観図。
【図11】テーパローラの作用を説明するための図。
【図12】ディスプレイ部の外観図。
【図13】ストレートローラの作用を説明するための図。
【符号の説明】
【0080】
1…車載器、100…ディスプレイ部、101…ディスプレイ部右側面、102…ディスプレイ部上側面、103…ディスプレイ部左側面、104…ケース、105…切り欠き部、110…右側ローラ部、111…ローラ鍔部、112…テーパ部、113…ローラ先端部、114…ローラ支持部、115…巻きバネ、120…ディスプレイ支持部取付け部、125…ネジ、130…突起部、140…板バネ、141、142…取付け孔、143…板バネ緩衝部、144…板バネ作用部、147…板バネ取付けネジ、150…左側ローラ部、151…ローラ鍔部、152…ローラ先端部、153…ローラ支持部、160…つまみ、200…筐体、300…スライド部材、310…ディスプレイ支持部、311…ネジ貫通孔、312…ディスプレイ支持部縁、320…アーム部、400…インナーエスカッション、401…ディスク挿入部、410…左側壁面、411…左側壁面溝、411b…底、420…上側壁面、430…右側壁面、431…右側壁面溝、431e…縁、440…下側壁面、450…スライド部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示面を有するディスプレイ部と、
前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、
前記ディスプレイ部の傾き動作を行うためのスライダ部と、
前記ディスプレイ部と前記スライダ部とを、回転可能に接続するヒンジ部と、を備え、
前記ディスプレイ部の下方部には、前記ヒンジ部の回転軸の周囲の間隙を偏らせる方向に力を作用させる弾性部材が配されている、
ことを特徴とする車載器。
【請求項2】
請求項1に記載の車載器であって、
前記スライダ部は、前記インナーエスカッションの主面に対して直交方向にスライド移動可能である、
ことを特徴とする車載器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載器であって、
前記ディスプレイ部の上方部には、前記インナーエスカッションの内壁側面に設けられた溝の縁と接触するテーパ面を有するローラ部が配されている、
ことを特徴とする車載器。
【請求項4】
請求項3に記載の車載器であって、
前記ローラ部は前記ディスプレイ部の上方部の左右に配されており、そのうち少なくとも一つのローラ部には、前記テーパ面と前記インナーエスカッションの内壁側面との間の距離を引き離す方向に力を作用させる第二の弾性部材が配されている、
ことを特徴とする車載器。
【請求項5】
請求項4に記載の車載器であって、
前記第二の弾性部材は、巻きバネである、
ことを特徴とする車載器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載された車載器であって、
前記ヒンジ部は、前記スライダ部のディスプレイ部支持部材に設けられた貫通孔を貫通するねじを前記回転軸としており、前記回転軸の周囲の間隙は、前記ねじと前記貫通孔との間隙である、
ことを特徴とする車載器。
【請求項7】
請求項6に記載された車載器であって、
前記スライダ部のディスプレイ部支持部材の先端は、前記貫通孔の中心点を中心とする円弧状の形状である、
ことを特徴とする車載器。
【請求項8】
請求項6または7に記載の車載器であって、
前記ディスプレイ部の下方部の弾性部材は、板バネであり、
前記板バネは、前記スライダ部のディスプレイ部支持部材の先端の円弧状の縁に接触し、前記ねじを、前記板バネの位置の反対方向に押し付ける方向に加圧するよう配されている、
ことを特徴とする車載器。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載された車載器であって、
前記ディスプレイ部の下方部の弾性部材は、板バネである、
ことを特徴とする車載器。
【請求項10】
請求項9に記載の車載器であって、
前記板バネは、鋭角に折り曲げられた面を有する、
ことを特徴とする車載器。
【請求項11】
請求項10に記載の車載器であって、
前記板バネは、前記ディスプレイ部の下方部の側面から、鋭角に折り曲げられた面の一部が突き出るよう配されている、
ことを特徴とする車載器。
【請求項1】
画像表示面を有するディスプレイ部と、
前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、
前記ディスプレイ部の傾き動作を行うためのスライダ部と、
前記ディスプレイ部と前記スライダ部とを、回転可能に接続するヒンジ部と、を備え、
前記ディスプレイ部の下方部には、前記ヒンジ部の回転軸の周囲の間隙を偏らせる方向に力を作用させる弾性部材が配されている、
ことを特徴とする車載器。
【請求項2】
請求項1に記載の車載器であって、
前記スライダ部は、前記インナーエスカッションの主面に対して直交方向にスライド移動可能である、
ことを特徴とする車載器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載器であって、
前記ディスプレイ部の上方部には、前記インナーエスカッションの内壁側面に設けられた溝の縁と接触するテーパ面を有するローラ部が配されている、
ことを特徴とする車載器。
【請求項4】
請求項3に記載の車載器であって、
前記ローラ部は前記ディスプレイ部の上方部の左右に配されており、そのうち少なくとも一つのローラ部には、前記テーパ面と前記インナーエスカッションの内壁側面との間の距離を引き離す方向に力を作用させる第二の弾性部材が配されている、
ことを特徴とする車載器。
【請求項5】
請求項4に記載の車載器であって、
前記第二の弾性部材は、巻きバネである、
ことを特徴とする車載器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載された車載器であって、
前記ヒンジ部は、前記スライダ部のディスプレイ部支持部材に設けられた貫通孔を貫通するねじを前記回転軸としており、前記回転軸の周囲の間隙は、前記ねじと前記貫通孔との間隙である、
ことを特徴とする車載器。
【請求項7】
請求項6に記載された車載器であって、
前記スライダ部のディスプレイ部支持部材の先端は、前記貫通孔の中心点を中心とする円弧状の形状である、
ことを特徴とする車載器。
【請求項8】
請求項6または7に記載の車載器であって、
前記ディスプレイ部の下方部の弾性部材は、板バネであり、
前記板バネは、前記スライダ部のディスプレイ部支持部材の先端の円弧状の縁に接触し、前記ねじを、前記板バネの位置の反対方向に押し付ける方向に加圧するよう配されている、
ことを特徴とする車載器。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載された車載器であって、
前記ディスプレイ部の下方部の弾性部材は、板バネである、
ことを特徴とする車載器。
【請求項10】
請求項9に記載の車載器であって、
前記板バネは、鋭角に折り曲げられた面を有する、
ことを特徴とする車載器。
【請求項11】
請求項10に記載の車載器であって、
前記板バネは、前記ディスプレイ部の下方部の側面から、鋭角に折り曲げられた面の一部が突き出るよう配されている、
ことを特徴とする車載器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−83237(P2010−83237A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252386(P2008−252386)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】
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