説明

車載器

【課題】セキュリティを十分に確保しつつ、コンテンツ情報の適切な配信を可能とする車載器を提供する。
【解決手段】センター装置から事業者コードの通知情報を受信すると、車載器の制御部が正規の配信事業者毎に生成されて記憶部に記憶されているアップリンク情報を参照し、これらアップリンク情報に含まれる事業者コードと、受信した事業者コードとを照合する(ステップS8)。そして、一致した場合のみ当該一致した事業者コードに対応するアップリンク情報を記憶部から読み出してDSRC(登録商標)部の記憶部のアップリンク情報記憶領域に書き込む(ステップS9)。コンテンツ情報の配信におけるセキュリティを向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ情報を配信するのに用いられる車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置のような車載器では、DSRC(登録商標)(Dedicated Short Range Communication)等を利用して路上に設置された路側無線装置と狭域無線通信を行い、当該路側無線装置を介してセンター装置から情報提供を受けることが可能となっている(例えば、特許文献1、2参照)。すなわち、車両が路側無線装置の通信範囲内にある間のみ、車両の車載器と路側無線装置との双方向通信が可能となり、この間にセンター装置が路側無線装置を介して、広告情報等の各種コンテンツ情報を配信するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−101578号公報
【特許文献2】特開2004−279509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンテンツ情報の配信に際しては、できるだけ配信する情報の内容を車内のユーザに合わせるため、ユーザの嗜好性や今までに視聴した広告等、コンテンツ情報の配信に関する情報をセンター装置に提供するしくみとなっている。具体的には、車載器のメモリ等に特定の記憶領域を設けてコンテンツ情報の配信に関する情報を書き込んでおき、センター装置からこの領域内の情報にアクセスして、コンテンツ情報の配信に関する情報を取得できる構成としている。センター装置は取得した情報を元に車内のユーザに適したコンテンツ情報を編成して配信する。
【0005】
従来、コンテンツ情報の配信事業者は複数あるため、上記車載器の特定の記憶領域へは何れの配信事業者のセンター装置からでもアクセスできるようになっていた。
しかしながら、コンテンツ情報の配信に関する情報は、ユーザの個人情報ともいえるため、制限なくアクセスできるような構成はセキュリティ上、好ましくない。
【0006】
本発明の課題は、コンテンツ情報の配信におけるセキュリティを向上させることであり、本発明によれば、セキュリティを十分に確保しつつ、コンテンツ情報の適切な配信を可能とする車載器を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、路側無線装置を介して、コンテンツ情報を配信するセンター装置との通信を行う通信手段と、前記センター装置に提供するアップリンク情報を記憶するための記憶領域を有する記憶手段と、前記通信手段を介して前記コンテンツ情報の配信事業者を特定する特定情報が受信された場合に、前記配信事業者の特定情報に基づいて前記配信事業者が契約している配信事業者であるか否かを判断して、契約している配信事業者である場合は、前記契約している配信事業者の特定情報に応じたアップリンク情報を、前記記憶領域に書き込む制御動作を行う制御手段と、を備える車載器である。
【0008】
上記の車載器において、前記制御手段は、前記契約している配信事業者が複数ある場合に、前記受信された配信事業者の特定情報に応じたアップリンク情報を前記配信事業者毎に前記記憶領域に書き込むよう制御動作することが好ましい。
【0009】
上記の車載器において、前記制御手段は、前記アップリンク情報を前記記憶領域に書き込んだ後に、前記通信手段を介して前記アップリンク情報の削除の要求情報を受信した場合には、前記記憶領域に記憶されたアップリンク情報を削除するよう制御動作することが好ましい。
【0010】
上記の車載器において、前記制御手段は、前記アップリンク情報を前記記憶領域に書き込んだ後に、前記記憶領域に記憶されたアップリンク情報が前記通信手段により前記路側無線装置を介して前記センター装置へ送信された場合には、前記記憶領域からアップリンク情報を削除するよう制御動作することが好ましい。
【0011】
上記の車載器において、前記制御手段は、前記アップリンク情報を前記記憶領域に書き込んだ後に、前記センター装置からのコンテンツ情報の配信が一定時間途絶えた場合、又は前記路側無線装置との通信が一定時間途絶えた場合には、前記記憶領域に記憶されたアップリンク情報を削除するよう制御動作することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、正規の配信事業者と判断した時点でアップリンク情報を書き込み、当該アップリンク情報の読み出しを可能とするので、正規の配信事業者以外の第三者によりアップリンク情報が無制限に読み出されることを防止することができ、コンテンツ情報の配信におけるセキュリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における配信システムのシステム構成を示す図である。
【図2】図1の路側無線装置の路側エリアを説明する図である。
【図3】図1の車載器の機能的構成を示す図である。
【図4】アップリンク情報記憶領域に記憶されるアップリンク情報の例を示す図である。
【図5】配信システムにおける処理の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、構成を説明する。
図1に、本実施形態における車載器を含む配信システム100のシステム構成を示す。
配信システム100は、図1に示すように、車両Cに搭載された車載器10、路側無線装置20、センター装置30を含んで構成され、センター装置30が路側無線装置20を介して車載器10にコンテンツ情報を配信する。コンテンツ情報とは、ユーザに提供するテキスト情報、画像情報、音情報等であり、その内容としては例えば店舗の広告や駐車場、医療施設の案内等、様々なものが挙げられる。
【0015】
路側無線装置20は路上や駐車場等に複数設置され、各路側無線装置20はネットワークNを介してセンター装置30と接続されている。また、路側無線装置20と、路上を走行する車両Cの車載器10とは無線通信が可能である。
【0016】
以下、各構成装置について詳細に説明する。
センター装置30は、コンテンツ情報を記憶し、これを車載器10に配信する。センター装置30としては、配信制御を行う制御部、路側無線装置20と通信を行う通信部、コンテンツ情報を記憶する記憶部を備えたコンピュータ端末等を適用可能である。
【0017】
なお、図1では1台のセンター装置30のみ示したが、コンテンツ情報を配信する配信事業者は複数あり、センター装置30は配信事業者毎に備えられるものである。
【0018】
センター装置30は、コンテンツ情報の配信事業者に個別に付与されている事業者コードを記憶している。また、ユーザはコンテンツ情報の配信サービスに加入する契約を行う際、会員登録を行うので、センター装置30はこの会員登録されたユーザの氏名、住所等の特定情報の他、ユーザが所有する車載器10の車載器ID等の情報をユーザ毎にデータベース化して記憶する。
【0019】
路側無線装置20は、図2に示すように本体装置20aとアンテナ20bとから構成されている。路側無線装置20は、道路脇や道路上方に設置されたアンテナ20bから、到達距離が限定されたDSRC(登録商標)の電波を放射して、路側無線装置20近傍に路側エリアZを形成する。この路側エリアZ内にある車両Cの車載器10とだけ双方向狭域無線通信が可能となる。以下、路側無線装置20と車載器10間の狭域無線通信を路車間通信という場合がある。
【0020】
DSRC(登録商標)は、5.8GHz帯域の電波を使った通信方式であり、その通信範囲は例えば数メートルから数十メートルである。路側無線装置20からのDSRC(登録商標)の送信出力は何れも同じ程度に設定されているので、複数の路側無線装置20がそれぞれ形成する路側エリアZは設置場所に関係なく、ほぼ一定である。
【0021】
本体装置20aは、車載器10とセンター装置30間の情報のやりとりを仲介するための処理を行う。すなわち、アンテナ20bを介して車載器10から受信された情報をセンター装置30に転送し、センター装置30から送信されたコンテンツ情報を車載器10へ転送する。本体装置20aは、情報処理や通信制御を行う制御部、記憶部等を備えたコンピュータ端末を適用することができる。
【0022】
車載器10は、車両Cに搭載され、案内経路への誘導のための処理等を行うナビゲーション機能の他、DSRC(登録商標)によるETC(Electronic Toll Collection System)利用のための処理を行う機能等を有している。
車載器10は、図3に示すように、カーナビ部1、VICSモジュール2、DSRC(登録商標)部3、制御部4を備えて構成されている。
【0023】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、記憶部1fに記憶された制御プログラムとの協働により各種演算を行う他、各部の集中制御を行う。
例えば、路側無線装置20との路者間通信を行う際にはDSRC(登録商標)部3の通信動作を制御する。なお、DSRC(登録商標)部3の制御にあたってはDSRC(登録商標)部3のDSRC(登録商標)制御部3aとの協働により制御を行う。また、DSRC(登録商標)部3を介してセンター装置30から受信したコンテンツ情報の保存、表示制御等を行う。
【0024】
カーナビ部1は、カーナビ制御部1a、現在地検出部1b、地図記憶部1c、入力部1d、表示部1e、記憶部1f等を備えて、車両Cを案内経路へ誘導するための処理を行う。
カーナビ制御部1aは、現在地検出部1bから取得した現在地の情報及び地図記憶部1cに記憶された地図情報等に基づいて、車両Cの現在地から入力部1dを介して設定された目的地までの案内経路を算出する。そして、地図記憶部1cに記憶されている地図情報を用いて算出した案内経路へ誘導するための地図画面を生成し、表示部1eにより表示させる。
【0025】
現在地検出部1bは、GPSアンテナ、角度センサ、方位センサ、距離センサ等の各種センサを備え、これらセンサによる検出結果に基づいて車両Cの現在地を検出する。GPSアンテナは、GPS衛星から送信されるGPS信号を検出する。また、角度センサは移動方向の変化量を示す車の加速度(単位時間あたりの水平方向への回転速度)を検出し、方位センサは地磁気の検出を行い、車両の絶対方位を検出する。現在地検出部1bは、これらセンサから取得した各検出結果に基づいて車両の現在地を示す現在地情報(経度、緯度等の情報)を生成し、カーナビ制御部1aに出力する。
【0026】
地図記憶部1cは、メモリやDVD等の記録媒体から構成され、案内表示に必要な地図情報、VICSモジュール2を介して受信されるガイド情報(道路情報、渋滞情報等)等を記憶している。
【0027】
入力部1dは、操作キーや表示部1eと一体に構成されるタッチパネル等から構成されている。入力部1dは、これらの操作に対応する操作信号を生成し、制御部31に出力する。
表示部1eは、モニタを備え、制御部4の制御に従ってモニタ上に各種情報を表示する。例えば、設定画面や地図画面、センター装置10から受信したコンテンツ情報の表示画面等である。
【0028】
記憶部1fは、メモリから構成され、制御部4やカーナビ制御部1aにより実行される制御プログラム、プログラムの実行に必要なパラメータやデータ等を記憶している。また、記憶部1fは、センター装置30に提供するアップリンク情報を記憶するとともに、センター装置30から受信したコンテンツ情報を記憶する。ユーザがコンテンツ情報の配信について契約をした配信事業者(以下、正規の配信事業者という。)が複数ある場合には、アップリンク情報は各配信事業者に応じた内容で制御部4によりそれぞれ生成され、記憶部1fに記憶される。アップリンク情報は最新の内容となるように制御部4が常に更新を行って記憶部1fに保存させる。アップリンク情報の詳細については後述する。
【0029】
VICSモジュール2は、光通信用、FM通信用、2.4GHz電波通信用のアンテナをそれぞれ備え、VICSセンターと光通信、FM通信、電波通信を行う。VICSモジュール2はVICSセンターから渋滞情報や道路交通情報等を受信し、制御部31に出力する。
【0030】
DSRC(登録商標)部3は、DSRC(登録商標)によるETC利用のための処理や、センター装置30からコンテンツ情報を受信するための通信処理等を行う。
DSRC(登録商標)部3は、図3に示すようにDSRC(登録商標)制御部3a、通信部3b、記憶部3c、ETC処理部3e、ICカードI/F3fを備えて構成されている。
【0031】
DSRC(登録商標)制御部3aは、CPU、RAM等から構成され、記憶部3cに記憶されている制御プログラムとの協働によりDSRC(登録商標)部3の各部の動作を制御する。
例えば、ETCによる決済を行う際には、通信部3bの通信動作を制御してETC基地局(ETC決済を行うためにETCゲート付近等に設けられる無線基地局)と決済情報の送受信を行わせる。また、ETC処理部3eにより決済情報の書込処理を行わせる。
また、センター装置30からコンテンツ情報を受信する際には、制御部4の指示に従って記憶部3cのアップリンク情報記憶領域Mに記憶されている情報を、通信部3bにより路側無線装置20に送信させる一方、通信部3bにより路側無線装置20を介してコンテンツ情報を受信した場合にはこれを制御部4に出力する。
【0032】
通信部3bは、車両Cのダッシュボード上でフロントガラス近傍に固設されたアンテナを備え、このアンテナを介して路側無線装置20やETC基地局等と、DSRC(登録商標)の電波の送受信を行う。
【0033】
記憶部3cは、DSRC(登録商標)制御部3aにより実行される制御プログラム等を記憶している。
また、記憶部3cにはアップリンク情報記憶領域Mが設けられている。アップリンク情報記憶領域Mは、図4に示すようにセンター装置30に情報を提供するために専用に設けられた記憶領域であり、図4に示すアップリンク情報m1の他、車載器10の特性情報(図示せず)が記憶される。
【0034】
特性情報とは、車載器10の機器特性に関する情報をいう。特性情報には、車載器10の車載器ID、車載器10が対応できる言語、地図の測地系、著作権管理技術、表示部1eのディスプレイの解像度、SVG(Scalable Vector Graphics)の対応性、コンテンツ情報を蓄積可能な記憶容量等の情報が含まれる。なお、車載器IDは各車載器10に固有の識別情報である。
【0035】
アップリンク情報とは、センター装置30においてどのような内容のコンテンツ情報を配信するかを決定する際に参考となる情報である。アップリンク情報には、配信事業者の特定情報、車両Cの目的地情報、経由地情報、累計走行距離情報、過去の立ち寄り地情報、ユーザの嗜好ジャンル情報、広告視聴履歴情報等が含まれる。
【0036】
配信事業者の特定情報は、ユーザが予めコンテンツ情報の配信について契約した配信事業者を特定する情報であり、例えば事業者コード、事業者名等である。
車両Cの目的地情報は、カーナビ部1で設定された目的地の緯度、経度の情報であり、経由地情報はカーナビ部1で設定された目的地までの誘導経路において経由する地点の緯度、経度の情報である。また、累計走行距離情報は出発地点から現在地までの車両Cの累計走行距離の情報であり、過去の立ち寄り地情報は過去に車両Cが停車した(つまり車載器10の電源がON又はOFFされた)地点の緯度、経度の情報及び時刻情報である。
【0037】
嗜好ジャンル情報は、予め配信事業者が準備したジャンルのうち、ユーザが設定したジャンルの情報である。例えば、ショッピング、グルメ、暮らし等のジャンルが準備されている場合、ユーザがグルメを設定した場合にはこのグルメのジャンルの情報が記憶される。
広告視聴情報は、センター装置30から配信された広告情報の情報コード及びその広告情報のうち、実際に表示部1eに表示される等して再生された広告情報の情報コード、その再生時の時刻情報である。
【0038】
ETC処理部3eは、ICカードI/F3fに挿抜されるIC付きクレジットカード又はデビットカード等に対して決済情報等の読み書きを行う。
ICカードI/F3fは、上記クレジットカード等のスロットを備え、このスロットに挿入されたクレジットカード等のICとETC処理部3eの間で情報のやりとりを仲介する。
【0039】
次に、動作について説明する。
図5は、コンテンツ情報を配信する際におけるセンター装置30、路側無線装置20、車載器10の各装置における処理の流れを説明するフローチャートである。
図5に示すように、まず車両Cのエンジンが起動し、車載器10の電源が投入されると(ステップS1)、制御部4は車載器10の特性情報を生成し、記憶部3cのアップリンク情報記憶領域Mに書き込む(ステップS2)。特性情報は、予めセンター装置30との間で取り決められている項目について制御部4が表示部1e等の各部に問い合わせて取得したり、予め記憶部1fに記憶されている情報を読み出す等して取得する。そして、取得された情報を制御部4がコード化し、アップリンク情報記憶領域Mの対応する領域に当該コードを書き込む(図4参照)。なお、実際には書込を指示する制御情報をDSRC(登録商標)制御部3aに出力し、このDSRC(登録商標)制御部3aがアップリンク情報記憶領域Mに書き込む。
【0040】
その後、車両Cが走行を開始し、路側無線装置20の路側エリアZに進入すると(エリアイン)、路側無線装置20は車両Cを検出し、車載器10のDSRC(登録商標)部3とDSRC(登録商標)通信による接続処理を開始する(ステップS31、S32)。すなわち、DSRC(登録商標)の電波を送出し、車載器10からの応答が得られると、通信路を確立する。通信路を確立すると、路側無線装置20はセンター装置30に対し接続が完了した旨の通知情報を送信する(ステップS41)。一方、車載器10のDSRC(登録商標)部3は制御部4に対し接続が完了した旨の通知情報を出力する(ステップS42)。
【0041】
次いで、路側無線装置20が車載器10のDSRC(登録商標)部3に対し、アップリンク情報記憶領域M内の情報の送信要求を行うと、DSRC(登録商標)部3はアップリンク情報記憶領域Mに書き込まれている特性情報を路側無線装置20に送信する(ステップS5)。特性情報は路側無線装置20を介してセンター装置30に送信される。
センター装置30は、受信した特性情報に含まれる車載器IDを元に車載器10のユーザが配信サービスの会員か否かを判断する(ステップS6)。
【0042】
会員データベースに登録されている配信サービスの全会員の車載器IDのうち、受信した車載器IDと一致するものがなく、非会員であると判断すると(ステップS6;N)、非会員用のコンテンツ情報を路側無線装置20を介して車載器30に送信する(ステップS61)。非会員用のコンテンツ情報とは、電車の遅延情報、納税通知情報等の公共の広告情報等の一般向けの内容の情報である。車載器30ではコンテンツ情報が記憶部1fに保存される(ステップS14)。
一方、一致する車載器IDがあれば会員であると判断して(ステップS6;Y)、配信事業者の事業者コードの通知情報を路側無線装置20に送信する(ステップS7)。
【0043】
路側無線装置20を介して事業者コードの通知情報が受信されると、車載器10の制御部4は記憶部1fに記憶されているアップリンク情報に含まれる事業者コードと、通知された事業者コードとを照合する(ステップS8)。一致する事業者コードがある場合(ステップS8;Y)、受信された事業者コードの配信事業者は正規の配信事業者であると判断し、制御部4は当該事業者コードに対応するアップリンク情報を記憶部1fから読み出してアップリンク情報記憶領域Mに書き込む(ステップS9)。前述のようにアップリンク情報は各配信事業者に応じて制御部4が生成し、更新を行っているので、配信事業者に応じた内容かつ最新の内容となっている。
【0044】
一方、センター装置30はデフォルトのコンテンツ情報を路側無線装置20を介して車載器10に配信する(ステップS10)。デフォルトのコンテンツ情報とは、非会員用のコンテンツ情報と同様に公共の広告情報等の一般向けの内容の情報である。車載器10では記憶部1fに配信されたコンテンツ情報が保存される。
また、センター装置30は車載器10に対し定期的にポーリングを行って(ステップS11)、アップリンク情報記憶領域Mに書き込まれたアップリンク情報を要求する。
【0045】
DSRC(登録商標)部3は、制御部4によりアップリンク情報の書き込みが行われると、センター装置30からのポーリングに応じて、アップリンク情報記憶領域Mに記憶されているアップリンク情報を、路側無線装置20を介してセンター装置30に送信する(ステップS12)。
【0046】
センター装置30は、送信されたアップリンク情報を元に、ユーザに応じたコンテンツ情報をマルチフォーマットで編成し、路側無線装置20を介して車載器10に配信する(ステップS13)。マルチフォーマットとは予めコンテンツ情報の配信用に定められたフォーマットをいい、配信する情報の項目、コード等を定めたものである。
例えば、センター装置30は、アップリンク情報に含まれる目的地情報及び嗜好ジャンル情報を元に目的地周辺のグルメ情報を編成したり、累積走行距離情報を元にオイル交換等が可能な店舗の広告情報を編成する。
【0047】
車載器10では受信したコンテンツ情報を制御部4が記憶部1fに保存させる(ステップS14)。保存されたコンテンツ情報は、後に表示指示があったり、表示すべき地点に車両が到達したりすると、制御部4の表示制御によって表示部1e上に順次表示されることとなる。なお、非会員の場合は(ステップS6;N)、非会員用のコンテンツ情報のみが記憶部1fに保存され、事業者コードが一致しない場合には(ステップS8;N)、デフォルトのコンテンツ情報のみが保存されることとなる。
【0048】
その後、センター装置30が配信すべきコンテンツ情報を全て配信すると、配信終了を通知するメッセージ情報を、路側無線装置20を介して車載器10に対し送信する(ステップS15)。この配信終了のメッセージ情報はユーザに対しエリアアウトを促すためのものである。その後、車載器10の制御部4は、一定時間センター装置30からのコンテンツ情報の配信が途絶えると、配信を終了したと判断してDSRC(登録商標)制御部3aによりアップリンク情報記憶領域M内のアップリンク情報を削除させる制御を行う(ステップS16)。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、アップリンク情報記憶領域Mに無条件にアップリンク情報を書き込むのではなく、正規の配信事業者の事業者コードと、センター装置30から送信される事業者コードとが一致した時点で、アップリンク情報の書込を行う。これにより、契約した正規の事業者以外の第三者によりアップリンク情報が無制限に読み出されることを防止することができ、コンテンツ情報の配信におけるセキュリティを向上させることができる。
【0050】
また、正規の配信事業者が複数いる場合は、その配信事業者に応じたアップリンク情報を書き込むので、ある配信事業者用のアップリンク情報を他の配信事業者が容易に取得できない構成とすることができ、正規の配信事業者間においてもアップリンク情報へのアクセスを制限することができる。よって、よりセキュリティが向上する。また、配信事業者毎にアップリンク情報を用意することでコンテンツ情報の内容を最適化することができる。
【0051】
また、アップリンク情報を削除することにより、当該アップリンク情報が第三者に無制限に読み出されることを防止することができる。
【0052】
また、センター装置30から一定時間コンテンツ情報の配信が途絶えたと判断すると、書き込んだアップリンク情報の削除を行う。よって、コンテンツ情報の配信を終了した時点で、アップリンク情報を削除することができ、それ以後第三者によりアップリンク情報が読み出されることを防止することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、車載器10の制御部4がコンテンツ情報の配信終了を判断して、アップリンク情報を削除することとしたが、センター装置30がアップリンク情報を削除することとしてもよい。つまり、センター装置30からアップリンク情報の削除の要求情報を車載器10に送信し、この要求情報を受けて車載器10の制御部4の制御によりアップリンク情報記憶領域M内のアップリンク情報を削除する。これにより、センター装置30で必要なアップリンク情報を読み出し終えたタイミングで、当該アップリンク情報を削除することができ、セキュリティの向上を図ることが可能である。また、コンテンツ情報の配信終了をユーザが判断して、手動でアップリンク情報を削除しても良い。
【0054】
また、アップリンク情報がDSRC(登録商標)部3によりセンター装置10に送信された時点で、DSRC(登録商標)制御部3aによりアップリンク情報を削除する構成としてもよい。また、路側無線装置20とのDSRC(登録商標)通信が一定時間途絶えたかどうかを制御部4が監視し、一定時間途絶えた場合には路側無線装置20の路側エリアZ外に車両Cが移動した(つまり、エリアアウトした)と判断して、アップリンク情報を削除することとしてもよい。何れにもおいても、アップリンク情報を削除することにより、第三者によって読み出されることを防止することができる。
【0055】
また、事業者コードを用いて契約をした正規の事業者かどうかを判断していたが、これに限らず、事業者を特定できるのであれば事業者名等の他の特定情報を用いて判断してもよい。
【符号の説明】
【0056】
100 配信システム
10 車載器
1 カーナビ部
1d 入力部
1e 表示部
1f 記憶部
3 DSRC(登録商標)部
3a DSRC(登録商標)制御部
3b 通信部
3c 記憶部
M アップリンク情報記憶領域
4 制御部
20 路側無線装置
30 センター装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側無線装置を介して、コンテンツ情報を配信するセンター装置との通信を行う通信手段と、
前記センター装置に提供するアップリンク情報を記憶するための記憶領域を有する記憶手段と、
前記通信手段を介して前記コンテンツ情報の配信事業者を特定する特定情報が受信された場合に、前記配信事業者の特定情報に基づいて前記配信事業者が契約している配信事業者であるか否かを判断して、契約している配信事業者である場合は、前記契約している配信事業者の特定情報に応じたアップリンク情報を、前記記憶領域に書き込む制御動作を行う制御手段と、
を備える車載器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記契約している配信事業者が複数ある場合に、前記受信された配信事業者の特定情報に応じたアップリンク情報を前記配信事業者毎に前記記憶領域に書き込むよう制御動作する請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記アップリンク情報を前記記憶領域に書き込んだ後に、前記通信手段を介して前記アップリンク情報の削除の要求情報を受信した場合には、前記記憶領域に記憶されたアップリンク情報を削除するよう制御動作する請求項1又は2に記載の車載器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記アップリンク情報を前記記憶領域に書き込んだ後に、前記記憶領域に記憶されたアップリンク情報が前記通信手段により前記路側無線装置を介して前記センター装置へ送信された場合には、前記記憶領域からアップリンク情報を削除するよう制御動作する請求項1又は2に記載の車載器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記アップリンク情報を前記記憶領域に書き込んだ後に、前記センター装置からのコンテンツ情報の配信が一定時間途絶えた場合、又は前記路側無線装置との通信が一定時間途絶えた場合には、前記記憶領域に記憶されたアップリンク情報を削除するよう制御動作する請求項1又は2に記載の車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51695(P2013−51695A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−216321(P2012−216321)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2009−526390(P2009−526390)の分割
【原出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】