説明

車載地図表示装置、サーバ装置、車両用地図表示システム

【課題】道路を走行した場合に車両で消費または回収されるエネルギー量をユーザに分かりやすく知らせる。
【解決手段】ナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、地図を表示モニタ16に表示し、その地図中に含まれる道路の中から表示対象リンクを選択する。そして、車両が表示対象リンクを走行したときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出し、算出した電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量に基づく電力消費・回生マークを、表示モニタ16に表示した地図上で表示対象リンクの位置に重ねて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて使用される車載地図表示装置と、複数の車両との間で情報の送受信が可能なサーバ装置と、これらの車載地図表示装置およびサーバ装置を有する車両用地図表示システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンにより発電機を駆動してバッテリの充電を行うと共に、車両減速時の回生エネルギーを利用した回生発電によってもバッテリを充電可能とした車両用の発電システムが知られている。このような発電システムにおける発電時の燃料消費量を低減するための技術として、特許文献1には、ナビゲーションシステムの地図情報に基づいて車両における将来の回生発電区間と回生発電量を予測し、その予測結果に基づいて発電機の発電量を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−182838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年では、電気またはそれ以外のエネルギーを消費して走行用の運動エネルギーを発生すると共に、その運動エネルギーの少なくとも一部を回収して蓄積可能なエネルギー、たとえば電気エネルギーに変換することで、これを再利用可能な回生エネルギーとして蓄積する車両が実用化されている。こうした車両には、たとえば、電気エネルギーを利用するEV(Electric Vehicle)や、ガソリン等の燃料を燃焼して得られるエネルギーと電気エネルギーとを併用するHEV(Hybrid Electric Vehicle)などが知られている。こうした車両では、走行する道路の勾配や混雑度合いなどの状況に応じて、消費されるエネルギー量や回収される回生エネルギー量が変化する。そのため、車両を運転しているユーザは、なるべく消費されるエネルギー量が少なく、またより多くのエネルギー量を回収できるような道路を通りたいと考える。しかし、特許文献1に記載された技術では、車両における将来の回生発電区間と回生発電量を予測することはできるが、道路を走行した場合に車両において消費または回収されるエネルギー量をユーザに分かりやすく知らせることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車載地図表示装置は、車両に搭載され、車両は、エネルギーを消費して車両が走行するための運動エネルギーを発生すると共に、運動エネルギーの少なくとも一部を回収して再利用可能な回生エネルギーを蓄積し、車載地図表示装置は、地図を表示装置に表示する地図表示手段と、地図中に含まれる道路の中から対象道路を選択する対象道路選択手段と、車両が対象道路を走行したときに予測されるエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出する予測量算出手段と、予測量算出手段により算出されたエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量に基づくマークを地図上で対象道路の位置に重ねて表示する消費・回生マーク表示手段とを備えるものである。
本発明によるサーバ装置は、複数の車両との間で情報の送受信が可能であって、複数の車両の各々は、エネルギーを消費して当該車両が走行するための運動エネルギーを発生し、運動エネルギーの少なくとも一部を回収して再利用可能な回生エネルギーを蓄積し、当該車両が走行した道路に対するエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を検出してサーバ装置へ送信し、サーバ装置は、複数の車両の各々より送信される、当該車両が走行した道路に対するエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を受信し、受信したエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量に基づいて、複数の車両のうちいずれか少なくとも1つが過去に走行したことのある各道路についてエネルギー収支履歴データを記録し、エネルギー収支履歴データに基づいて、複数の車両のうちいずれか少なくとも1つが過去に走行したことのある道路の中から選択された対象道路についてのエネルギー収支情報を、複数の車両の各々へ送信するものである。
本発明による車両用地図表示システムは、複数の車両との間で情報の送受信が可能なサーバ装置と、複数の車両の各々に搭載される複数の車載地図表示装置とを有し、複数の車両の各々は、エネルギーを消費して当該車両が走行するための運動エネルギーを発生すると共に、運動エネルギーの少なくとも一部を回収して再利用可能な回生エネルギーを蓄積し、複数の車載地図表示装置の各々は、地図を表示装置に表示する地図表示手段と、当該車載地図表示装置を搭載している搭載車両が走行した道路に対するエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を検出する検出手段と、検出手段により検出されたエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量をサーバ装置へ送信する送信手段と、地図中に含まれる道路の中から対象道路を選択する対象道路選択手段と、対象道路についてのエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を示すエネルギー収支情報をサーバ装置へ要求する要求手段と、要求手段による要求に応じてサーバ装置より送信されるエネルギー収支情報を受信する受信手段と、受信手段により受信されたエネルギー収支情報に基づいて、搭載車両が対象道路を走行したときに予測されるエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出する予測量算出手段と、予測量算出手段により算出されたエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量に基づくマークを地図上で対象道路の位置に重ねて表示する消費・回生マーク表示手段とを備え、サーバ装置は、複数の車載地図表示装置の各々より送信される、搭載車両が走行した道路に対するエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を受信し、受信したエネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量に基づいて、複数の車両のうちいずれか少なくとも1つが過去に走行したことのある各道路についてエネルギー収支履歴データを記録し、複数の車載地図表示装置の各々からの要求に応じて、エネルギー収支履歴データに基づいて、対象道路についてのエネルギー収支情報を当該車載地図表示装置へ送信するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、道路を走行した場合に車両で消費または回収されるエネルギー量をユーザに分かりやすく知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態による車載地図表示装置の適用例であるナビゲーション装置を含む車載システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図3】地図画面の例を示す図である。
【図4】図3の地図画面に対応する電力消費・回生マップの例を示す図である。
【図5】図3よりも小さい縮尺の地図画面の例を示す図である。
【図6】図5の地図画面に対応する電力消費・回生マップの例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態によるナビゲーション装置において実行される電力収支履歴記録処理のフローチャートである。
【図8】第1の実施の形態によるナビゲーション装置において実行される電力消費・回生マップ表示処理のフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態によるナビゲーション装置において実行される電力収支履歴記録処理のフローチャートである。
【図10】第2の実施の形態によるナビゲーション装置において実行される電力消費・回生マップ表示処理のフローチャートである。
【図11】第3の実施の形態による車両用地図表示システムの構成を示す図である。
【図12】図11の車両用地図表示システムにおける車載システムの構成を示すブロック図である。
【図13】第3の実施の形態によるナビゲーション装置において実行される消費・回収電力情報送信処理のフローチャートである。
【図14】第3の実施の形態によるナビゲーション装置において実行される電力消費・回生マップ表示処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
本発明の一実施の形態による車載地図表示装置について以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態による車載地図表示装置の適用例であるナビゲーション装置を含む車載システムの構成を示すブロック図である。図1において、EVである車両100には、ナビゲーション装置1、車両制御装置2、バッテリ3、電力変換装置4および電気モータ5が搭載されている。
【0009】
バッテリ3は、電気モータ5を駆動するための電力を供給する。バッテリ3から供給される電力を用いて電気モータ5が駆動することにより、車両100は走行する。また、車両100の減速時には電気モータ5が発電機として作用し、回生発電による電力が発生する。この回生発電によって得られた電力は、バッテリ3において蓄積される。電力変換装置4は、バッテリ3と電気モータ5との間で授受されるこれらの電力を相互に利用可能な形式に変換する。たとえば、バッテリ3から供給される直流電力を所望の交流電力に変換して電気モータ5へ出力すると共に、電気モータ5において回生発電により得られた交流電力を所望の直流電力に変換してバッテリ3へ出力する。
【0010】
車両制御装置2は、車両100の走行状態や、バッテリ3の状態、電気モータ5の状態などを監視し、その監視結果に基づいて電力変換装置4の動作を制御する。この車両制御装置2の制御により電力変換装置4が動作することで、車両100の走行状態に応じてバッテリ3と電気モータ5との間で適切に電力の授受が行われる。これにより、バッテリ3に蓄積された電気エネルギーを消費して、車両100が走行するための運動エネルギーを電気モータ5による発生することができる。また、車両100の運動エネルギーの少なくとも一部を電気モータ5により回収して、再利用可能な回生エネルギーとしての電気エネルギーをバッテリ3に蓄積することができる。
【0011】
ナビゲーション装置1は、地図データに基づいて地図を表示すると共に、設定された目的地までの推奨経路を探索し、車両100をその目的地まで案内することができる。さらに、車両制御装置2からバッテリ3の残量を示すバッテリ残量情報を取得し、そのバッテリ残量情報に基づいて、バッテリ3の残量、すなわち車両100においてバッテリ3により蓄積されている電気エネルギーの量を求めることができる。なお、バッテリ3の残量は、たとえば、完全放電状態である0%から満充電状態である100%までのいずれかの値をとるSOC(State Of Charge)によって表される。このバッテリ3の残量に基づいてナビゲーション装置1が行う処理の具体的な内容については、後で詳しく説明する。
【0012】
図2は、ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、制御部10、振動ジャイロ11、車速センサ12、ハードディスク(HDD)13、GPS(Global Positioning System)受信部14、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)情報受信部15、表示モニタ16、スピーカ17および入力装置18を備えている。
【0013】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD13に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、目的地を設定する際の目的地の検索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、車両100の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、音声出力処理などが制御部10によって実行される。なお、車両制御装置2から出力されたバッテリ残量情報は制御部10に入力され、制御部10が行う後述のような処理において使用される。
【0014】
振動ジャイロ11は、車両100の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ12は、車両100の走行速度を検出するためのセンサである。これらのセンサにより車両100の運動状態を所定の時間間隔ごとに検出することにより、制御部10において車両100の移動方向および移動量が求められる。
【0015】
HDD13は不揮発性の記録媒体であり、制御部10において上記のような処理を実行するための制御プログラムや地図データなどが記録されている。HDD13に記録されているデータは、必要に応じて制御部10の制御により読み出され、制御部10が実行する様々な処理や制御に利用される。
【0016】
HDD13に記録された地図データは、経路計算データと、道路データと、背景データとを含む。経路計算データは、目的地までの推奨経路を探索する際などに用いられるデータである。道路データは、道路の形状や種別などを表すデータである。道路データにおいて、各道路は後述するようにノードや形状補間点と呼ばれる点を複数繋げることによって構成されている。背景データは、地図の背景を表すデータである。なお、地図の背景とは、地図上に存在する道路以外の様々な構成物である。たとえば、河川、鉄道、緑地帯、各種構造物などが背景データによって表される。
【0017】
地図データにおいて各道路の最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間にそれぞれ対応する複数のリンクによって構成されており、リンク単位で経路計算データおよび道路データが表現されている。なお、道路データにおいて各リンクの両端には、座標情報がそれぞれ設定されたノードと呼ばれる点が設けられている。また、各リンクの途中には形状補間点と呼ばれる点が必要に応じて設けられている。各形状補間点には、ノードと同様に座標情報がそれぞれ設定されている。これらの点を順に繋げることにより、道路データにおいて道路の形状が表される。
【0018】
一方、経路計算データには、各道路区間に対応するリンクごとに、車両100が当該道路区間を走行する際の通過所要時間等に応じたリンクコストが設定されている。このリンクコストに基づいて、予め設定された経路探索条件に応じたリンクの組合せを求めることにより、ナビゲーション装置1において推奨経路の探索が行われる。たとえば、移動時間の短さを最優先として経路探索を行うような経路探索条件が設定されている場合は、出発地から目的地までの通過所要時間が最小となるリンクの組合せが推奨経路として求められる。
【0019】
なお、上記ではナビゲーション装置1において地図データがHDD13に記録されている例を説明したが、これらをHDD以外の記録媒体に記録することとしてもよい。たとえば、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカードなどに記録された地図データを用いることができる。すなわち、本実施の形態によるナビゲーション装置では、どのような記録媒体を用いてこれらのデータを記憶してもよい。
【0020】
GPS受信部14は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、車両100の現在位置を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻に関する情報が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて、車両100の現在位置を制御部10において算出することができる。このGPS信号に基づく車両100の現在位置の算出結果と、前述の振動ジャイロ11および車速センサ12の各検出結果に基づく移動方向および移動量の算出結果とにより、制御部10において所定時間ごとに車両100の現在位置を検出するための位置検出処理が実行され、車両100の現在位置が検出される。
【0021】
VICS情報受信部15は、図示しないVICSセンターからナビゲーション装置1に対して送信されるVICS情報を受信する。このVICS情報をVICS情報受信部15が受信することにより、渋滞情報を始めとする様々な道路交通情報がナビゲーション装置1において取得される。VICS情報受信部15により受信されたVICS情報は、制御部10に出力され、渋滞情報の表示や推奨経路の探索などに利用される。
【0022】
なお、VICSセンターからナビゲーション装置1へのVICS情報の送信は、主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや、主に一般道路上に設置されている光ビーコン、またはFM多重放送によって行われる。電波ビーコンや光ビーコンは、その設置地点付近を通過する車両に対して、電波あるいは光(赤外線)により局所的にVICS情報を送信するものである。これに対して、FM多重放送では比較的広い地域に対してVICS情報を送信することができる。
【0023】
表示モニタ16は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ16により、地図画面の表示や推奨経路の案内表示などが行われる。表示モニタ16に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ16は、たとえば車両100のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0024】
スピーカ17は、制御部10の制御により様々な音声情報を出力する。たとえば、推奨経路に従って車両100を目的地まで案内するための経路案内用の音声や、各種の警告音などがスピーカ17から出力される。
【0025】
入力装置18は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザは、入力装置18を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、推奨経路の探索条件を設定したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置18は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、入力装置18を表示モニタ16と一体化されたタッチパネルとしてもよい。
【0026】
ユーザが入力装置18を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、前述のようにして検出された車両100の現在位置を出発地として、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算による経路探索処理を行う。この処理により、出発地から目的地まで至る推奨経路を探索する。さらにナビゲーション装置1は、たとえば色を変える等の方法により、表示モニタ16に表示された地図上において他の道路と識別可能な形態で探索された推奨経路を表示する。そして、推奨経路に従って所定の画像情報や音声情報を表示モニタ16やスピーカ17から出力することにより、車両100を目的地まで案内する。
【0027】
次に、ナビゲーション装置1において表示される地図画面について説明する。ナビゲーション装置1は、車両走行時の電力消費量または回生発電による電力蓄積量を道路ごとに予測し、その予測結果を地図上に重ねて表示することができる点に特徴を有している。以下では、このようにして表示される地図画面を電力消費・回生マップと称する。
【0028】
図3は、ナビゲーション装置1の表示モニタ16において表示される通常の地図画面の例を示している。図3の地図画面では、カーマーク20が示す車両100の現在位置を中心とする所定範囲の地図が表示されている。
【0029】
図3の地図画面には、電力消費・回生マップを表示するためのアイコン21が表示されている。このアイコン21をユーザが入力装置18の操作により選択すると、図4のような電力消費・回生マップが表示モニタ16において表示される。
【0030】
図4の電力消費・回生マップには、図3の地図画面上に重畳して、符号30〜49に示すような電力消費・回生マークが表示されている。符号30、32、35、36、37、38、41、42、44、45、46および48の各マークは、対応する各道路区間を車両100が走行すると電力が消費されることを示している。一方、符号31、33、34、39、40、43、47および49の各マークは、対応する各道路区間を車両100が走行すると回生発電によって電力が蓄積されることを示している。これらの電力消費・回生マーク30〜49には、対応する各道路区間の双方向についてそれぞれ表示されている。また、電力消費・回生マーク30〜49には、電力消費量または電力蓄積量の目安を示すための数値がそれぞれ付されており、この数値が大きいものほど、対応する道路区間を車両100が走行したときに予測される電力消費量または電力蓄積量が大きいことを示している。
【0031】
図5は、図3よりも小さい縮尺、すなわちより広域側の地図画面の例を示している。この地図画面でも図3と同様に、カーマーク20が示す車両100の現在位置を中心とする所定範囲の地図が表示されている。さらに、電力消費・回生マップを表示するためのアイコン21も表示されている。
【0032】
アイコン21をユーザが入力装置18の操作により選択すると、図6のような電力消費・回生マップが表示モニタ16において表示される。これを図4の電力消費・回生マップと比較すると、符号30、31、36、37、38、39、40、41の各電力消費・回生マークについては、両方の電力消費・回生マップにおいて共通である。一方、図4のマーク32、34と、マーク33、35とは、図6ではそれぞれ併合されており、先の2つはマーク50に、後の2つはマーク51にそれぞれ置き換えられている。同様に、マーク42、44はマーク52に、マーク43、45はマーク53に、マーク46、48はマーク54に、マーク47、49はマーク55に、図6においてそれぞれ置き換えられている。また、図6の電力消費・回生マップでは、図4においては地図範囲外であった各道路に対して、符号56〜67に示すような電力消費・回生マークが表示されている。
【0033】
上記のように、図4よりも縮尺の小さい図6の電力消費・回生マップでは、比較的短い道路区間に対応する電力消費・回生マーク同士を併合している。これにより、電力消費・回生マップの縮尺を小さくしても電力消費・回生マークが一定の長さ以上となるようにして、煩雑で見づらい画面表示となるのを防止している。
【0034】
なお、車両100におけるバッテリ3の残量、すなわち車両100においてバッテリ3により蓄積されている電気エネルギーの量が所定値未満となったときに、図4または6のような電力消費・回生マップを自動的に表示してもよい。このときさらに、車両100の周辺に位置する充電施設の位置を地図上に表示したり、最寄りの充電施設を自動的に目的地に設定して経路探索を行い、車両100をその充電施設まで案内したりしてもよい。このようにすれば、バッテリ3の残量が少なくなったときに、電力消費をなるべく抑えて車両100を充電するようにユーザを促すことができる。
【0035】
次に、図4および6に例示した電力消費・回生マップを表示するための処理について説明する。図7は、電力消費・回生マップを表示するために用いる電力収支履歴をナビゲーション装置1においてHDD13に記録する際に実行される電力収支履歴記録処理のフローチャートである。図8は、電力消費・回生マップを表示モニタ16において表示する際に実行される電力消費・回生マップ表示処理のフローチャートである。これらのフローチャートはいずれも、制御部10において所定周期ごとに実行される。
【0036】
先に図7の電力収支履歴記録処理のフローチャートについて説明する。ステップS10において、制御部10は、車両100の現在位置を検出する。ここでは前述のように、GPS受信部14により受信されたGPS信号や、振動ジャイロ11および車速センサ12の各検出結果などに基づいて、車両100の現在位置を検出する。
【0037】
ステップS20において、制御部10は、ステップS10で検出した車両100の現在位置と、HDD13に記録されている地図データとに基づいて、車両100がいずれかのノードを通過したか否かを判定する。車両100がノードを通過していなければステップS10へ戻り、いずれかのノードを通過したらステップS30へ進む。
【0038】
ステップS30において、制御部10は、車両制御装置2からバッテリ残量情報を取得する。このバッテリ残量情報は、前述のようにバッテリ3の残量を示すものであり、制御部10からの要求に応じて車両制御装置2より出力される。このステップS30を実行することにより、車両100がノードを通過する度に、その時点のバッテリ残量情報が制御部10において取得される。
【0039】
ステップS40において、制御部10は、ステップS30で取得したバッテリ残量情報に基づいて、車両100が走行したリンクに対する消費電力量または回収電力量を検出する。ここでは、最新のバッテリ残量情報(最後に通過したノードに対して取得したバッテリ残量情報)と、前回のバッテリ残量情報(1つ前に通過したノードに対して取得したバッテリ残量情報)とに基づいて、両ノード間をつなぐリンクを車両100が走行したときのバッテリ3の残量変化量を算出する。そして、算出した残量変化量がマイナスである場合、すなわちバッテリ残量が減少した場合は、その残量変化量を車両100の消費電力量とする。他方、算出した残量変化量がプラスである場合、すなわちバッテリ残量が増加した場合は、その残量変化量を車両100の回収電力量とする。このようにして、車両100が走行した道路に対する電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量をリンク単位で検出する。
【0040】
ステップS50において、制御部10は、ステップS40で検出した消費電力量または回収電力量に基づいて、電力収支履歴データをHDD13に記録する。ここでは、検出した消費電力量または回収電力量の値を示す情報と、その消費電力量または回収電力量に対応するリンクを特定するための情報、たとえば地図データにおいて予め定められたリンク番号とを互いに関連付けし、それらの情報を電力収支履歴データとしてHDD13に記録する。このとき他の情報、たとえば日時などの情報をさらに付加してもよい。これにより、車両100が過去に走行した各リンクについて、そのときの消費電力量または回収電力量を示す電力収支履歴データがHDD13において記録される。なお、車両100が同一のリンクを過去に複数回走行している場合は、その走行回数に応じた分だけの電力収支履歴データがHDD13に記録される。
【0041】
ステップS50を実行したら、制御部10はステップS10へ戻る。その後は上記のような処理を繰り返し行う。以上説明したようにして、図7の電力収支履歴記録処理がナビゲーション装置1の制御部10において実行される。
【0042】
次に図8の電力消費・回生マップ表示処理のフローチャートについて説明する。ステップS110において、制御部10は、図7のステップS100と同様に車両100の現在位置を検出する。
【0043】
ステップS120において、制御部10は、ステップS110で検出した現在位置に基づいて地図範囲を決定する。ここでは、たとえば現在位置を中心とする所定の範囲を地図範囲として決定する。
【0044】
ステップS130において、制御部10は、HDD13に記録されている地図データに基づいて、ステップS120で決定した地図範囲内の地図を表示モニタ16に表示する。なお、この地図の縮尺は、ユーザが入力装置18を操作することによって任意の縮尺とすることができる。これにより、図3や図5に示すような地図画面が表示される。
【0045】
ステップS140において、制御部10は、電力消費・回生マップを表示するか否かを判定する。ここでは、前述のような電力消費・回生マップの表示条件に基づいて判定を行う。すなわち、たとえば図3や図5に示したようなアイコン21がユーザによって選択された場合や、車両100におけるバッテリ3の残量が所定値未満となった場合に、電力消費・回生マップを表示すると判定してステップS150へ進む。一方、これらの表示条件を満たさない場合はステップS110へ戻る。
【0046】
ステップS150において、制御部10は、電力消費・回生マップにおいて電力消費・回生マークの表示対象とするリンクを選択する。ここでは、ステップS130で表示した地図中に含まれるリンクのうち、図7のステップS50によって電力収支履歴データが記録されている各リンク、すなわち車両100が過去に走行したことのある道路に対応する各リンクを表示対象リンクとして選択する。なお、電力収支履歴データにおけるバラツキ等の影響を排除するために、一定の走行回数以上の電力収支履歴データが記録されていないリンクを表示対象リンクから除外してもよい。また、電力消費・回生マップがスクロールされた場合の表示をスムーズに行うために、地図範囲外のリンクからも表示対象リンクを選択するようにしてもよい。
【0047】
ステップS160において、制御部10は、ステップS150で選択した各表示対象リンクについて記録されている電力収支履歴データをHDD13から読み出す。これにより、各表示対象リンクにおける消費電力量または回収電力量の情報を取得する。
【0048】
ステップS170において、制御部10は、ステップS160で読み出した電力収支履歴データに基づいて、車両100が各表示対象リンクを走行した場合の予測消費電力量または予測回収電力量を算出する。ここでは、たとえば、読み出した電力収支履歴データが示す車両100の走行回ごとの消費電力量または回収電力量を各表示対象リンクについてそれぞれ平均化することで、各表示対象リンクの予測消費電力量または予測回収電力量を算出する。なお、表示対象リンクの双方向に対して電力収支履歴データが記録されている場合は、それぞれの電力収支履歴データに基づいて、表示対象リンクの双方向について予測消費電力量または予測回収電力量を算出する。これにより、車両100が各表示対象リンクを走行したときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出する。
【0049】
ステップS180において、制御部10は、ステップS130で表示した地図の縮尺に基づいて、電力消費・回生マークを表示するための最小区間距離を設定する。ここでは、前述のように地図の縮尺に関わらず電力消費・回生マークが一定の長さ以上で表示されるようにするため、地図の縮尺が小さいほど長い距離を最小区間距離として設定する。たとえば、地図の縮尺が2万5千分の1であれば200mを最小区間距離として設定し、地図の縮尺が1万2千5百分の1であれば100mを最小区間距離として設定する。これ以外にも、地図の縮尺に応じて任意の最小区間距離を設定することができる。
【0050】
ステップS190において、制御部10は、ステップS150で選択した表示対象リンクの中に、ステップS180で設定した最小区間距離未満のリンクがあるか否かを判定する。表示対象リンクの中に最小区間距離未満のリンクがある場合はステップS200へ進み、ない場合はステップS210へ進む。
【0051】
ステップS200において、制御部10は、最小区間距離未満の表示対象リンクを隣接する他の表示対象リンクと併合する。なお、当該リンクが複数の表示対象リンクと隣接している場合は、その中で車両100の進行方向と対応する方向に隣接する表示対象リンクや、なるべく短い表示対象リンクを併合対象とすることが好ましい。これにより、最小区間距離未満の表示対象リンクについては、他の表示対象リンクと併合して最小区間距離以上となるようにする。最小区間距離未満である全ての表示対象リンクを他の表示対象リンクと併合したら、ステップS210へ進む。
【0052】
ステップS210において、制御部10は、ステップS150で選択した各表示対象リンクについて、ステップS170で算出した予測消費電力量または予測回収電力量に基づく電力消費・回生マークをそれぞれ表示する。ここでは、ステップS130で表示した地図上で各表示対象リンクの位置に重ねて、電力を消費する場合と電力を回収する場合とでそれぞれ異なる表示形態の電力消費・回生マークを表示する。このとき、各電力消費・回生マークが表す道路の方向が分かるように、矢印等を用いて各電力消費・回生マークを表示する。また、電力消費量または電力蓄積量の目安を示すための数値を各電力消費・回生マークに付して表示する。なお、前述のようにステップS170において双方向の予測消費電力量または予測回収電力量が算出された表示対象リンクがある場合は、その表示対象リンクの双方向について電力消費・回生マークをそれぞれ表示する。これにより、図4または図6に示すような電力消費・回生マップが表示モニタ16において表示される。
【0053】
ステップS210を実行したら、制御部10はステップS110へ戻る。その後は上記のような処理を繰り返し行う。以上説明したようにして、図8の電力消費・回生マップ表示処理がナビゲーション装置1の制御部10において実行される。
【0054】
以上説明した本発明の第1の実施の形態によれば、次の(1)〜(6)のような作用効果を奏することができる。
【0055】
(1)ナビゲーション装置1は、制御部10において電力消費・回生マップ表示処理を行うことにより、地図を表示モニタ16に表示し(ステップS130)、その地図中に含まれる道路の中から表示対象リンクを選択する(ステップS150)。そして、車両100が表示対象リンクを走行したときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出し(ステップS170)、算出した電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量に基づく電力消費・回生マークを、表示モニタ16に表示した地図上で表示対象リンクの位置に重ねて表示する(ステップS210)。このようにしたので、表示対象リンクの道路を走行した場合に車両100で消費または回収されるエネルギー量をユーザに分かりやすく知らせることができる。
【0056】
(2)ナビゲーション装置1は、制御部10において電力収支履歴記録処理を行うことにより、車両100が走行した道路に対する電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を検出し(ステップS40)、その電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量に基づく電力収支履歴データをHDD13に記録する(ステップS50)。また、電力消費・回生マップ表示処理を行う際に、制御部10は、ステップS150において、地図中に含まれるリンクのうち車両100が過去に走行したことのあるリンクを表示対象リンクとして選択する。こうして選択した表示対象リンクについて、HDD13に記録された電力収支履歴データをステップS160で読み出し、その電力収支履歴データに基づいて、車両100が表示対象リンクを走行したときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量をステップS170で算出する。このようにしたので、車両100が表示対象リンクを走行したときの電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を過去の実績に基づいて正確に予測することができる。
【0057】
(3)制御部10は、電力消費・回生マップ表示処理において、電力消費・回生マップを表示するか否かを判定し(ステップS140)、表示すると判定したときに、ステップS210を実行して電力消費・回生マークを表示する。このステップS140の判定では、車両100におけるバッテリ3の残量が所定値未満となったときに肯定判定を行うようにすることができる。このようにすれば、バッテリ3の残量が少なくなったときに、電力消費・回生マップを自動的に表示して、電力消費をなるべく抑えて車両100を充電するようにユーザを促すことができる。
【0058】
(4)表示対象リンクの双方向に対して電力収支履歴データが記録されている場合、制御部10はステップS170において、その表示対象リンクの双方向について、車両100が走行したときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出する。また、ステップS210において、その表示対象リンクの双方向について電力消費・回生マークをそれぞれ表示する。このようにしたので、車両100が表示対象リンクをどちらの方向に走行したとしても、そのときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を分かりやすく表示することができる。特に、勾配が大きい等の理由から、走行方向による消費電力量や回収電力量の差が大きい道路を表示対象リンクとした場合に、その差を分かりやすく表示することができる。
【0059】
(5)制御部10は、電力消費・回生マップ表示処理において、最小区間距離を設定する(ステップS180)。この最小区間距離に満たないリンクについては、他のリンクと併合して(ステップS200)、ステップS210で電力消費・回生マークを表示するようにした。これにより、細かい電力消費・回生マークが密集して表示され、煩雑で見づらい画面表示となるのを防止することができる。
【0060】
(6)制御部10は、ステップS180において、地図の縮尺に応じて最小区間距離を設定するようにした。これにより、地図の縮尺に関わらず、電力消費・回生マークが一定の長さ以上で表示されるようにすることができる。
【0061】
−第2の実施の形態−
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施形態では、道路の混雑度を考慮して電力消費・回生マップの表示を行う車載地図表示装置について、図1、2に示したナビゲーション装置1における適用例を用いて説明する。なお、本実施形態による車載システムの構成およびナビゲーション装置1の構成は、図1、2に示したものとそれぞれ同一である。
【0062】
本実施形態によるナビゲーション装置1では、図4および6に例示したような電力消費・回生マップを表示するために、図9、10のフローチャートに示す処理を制御部10により実行する。図9は、図7に替えて実行される電力収支履歴記録処理のフローチャートであり、図10は、図8に替えて実行される電力消費・回生マップ表示処理のフローチャートである。なお、これらのフローチャートにおいて、図7、8の各フローチャートとそれぞれ同一の処理を実行する処理ステップについては、共通のステップ番号を付している。以下の説明では、図7、8と共通のステップ番号が付された処理ステップの内容については、特に必要が無い限りその説明を省略する。
【0063】
最初に図9のフローチャートについて説明する。ステップS41において、制御部10は、車両100が走行したリンク、すなわちステップS40で消費電力量または回収電力量を検出したリンクに対して、道路の混雑度を判断する。ここでは、たとえば、VICS情報受信部15により受信されたVICS情報に基づいて、当該リンクに対する混雑度が「順調」、「混雑」、「渋滞」のいずれに該当するかを判断することにより、混雑度の判断を行う。あるいは、車両100の走行速度、電気モータ5の回転状態、ブレーキ操作状態などに基づいて、当該リンクに対する混雑度を判断してもよい。
【0064】
ステップS51において、制御部10は、ステップS40で検出した消費電力量または回収電力量に基づいて、電力収支履歴データをHDD13に記録する。このとき、ステップS41で判断した混雑度ごとに分類して、電力収支履歴データの記録を行う。これにより、車両100が過去に走行したことのある各リンクについて、その走行回数および混雑度の種類に応じた電力収支履歴データがHDD13において記録される。たとえば、混雑度が「順調」である場合の走行回数に応じた電力収支履歴データと、混雑度が「混雑」である場合の走行回数に応じた電力収支履歴データと、混雑度が「渋滞」である場合の走行回数に応じた電力収支履歴データとが、HDD13においてそれぞれ記録される。
【0065】
ステップS51を実行したら、制御部10はステップS10へ戻る。その後は上記のような処理を繰り返し行う。以上説明したようにして、図9の電力収支履歴記録処理がナビゲーション装置1の制御部10において実行される。
【0066】
次に図10の電力消費・回生マップ表示処理のフローチャートについて説明する。ステップS151において、制御部10は、ステップS150で選択した各表示対象リンクの中からいずれかの表示対象リンクを選択する。
【0067】
ステップS152において、制御部10は、ステップS151で選択した表示対象リンクに対する混雑度を判断する。ここでは、図9のステップS41と同様の方法を用いて、混雑度の判断を行うことができる。
【0068】
ステップS153において、制御部10は、ステップS151で選択した表示対象リンクについて、ステップS152で判断した混雑度に対応する電力収支履歴データがHDD13において記録されているか否かを判定する。当該電力収支履歴データがHDD13において記録されている場合はステップS161へ進み、記録されていない場合はステップS162へ進む。
【0069】
ステップS153からステップS161へ進んだ場合、ステップS161において、制御部10は、ステップS151で選択した表示対象リンクについて、ステップS152で判断した混雑度に対応する電力収支履歴データをHDD13から読み出す。これにより、当該表示対象リンクにおける消費電力量または回収電力量の情報を取得する。ステップS161を実行したらステップS171へ進む。
【0070】
ステップS171において、制御部10は、ステップS161で読み出した電力収支履歴データに基づいて、車両100が当該表示対象リンクを走行した場合の予測消費電力量または予測回収電力量を算出する。ここでは、図8のステップS170と同様の方法により、予測消費電力量または予測回収電力量の算出を行う。ステップS171を実行したらステップS173へ進む。
【0071】
一方、ステップS153からステップS162へ進んだ場合、ステップS162において、制御部10は、ステップS151で選択した表示対象リンクについて、ステップS152で判断した混雑度とは異なる他の混雑度の電力収支履歴データをHDD13から読み出す。ここでは、当該表示対象リンクに関して電力収支履歴データが記録されている混雑度を選択し、その電力収支履歴データをHDD13から読み出す。なお、ステップS152の判断結果とは異なる複数種類の混雑度について電力収支履歴データが記録されている場合は、そのうちいずれかを選択して読み出してもよいし、全ての電力収支履歴データを読み出してもよい。これにより、当該表示対象リンクにおける消費電力量または回収電力量の情報を取得する。ステップS162を実行したらステップS172へ進む。
【0072】
ステップS172において、制御部10は、ステップS162で読み出した電力収支履歴データに基づいて、車両100が当該表示対象リンクを走行した場合の予測消費電力量または予測回収電力量を算出する。ここでは、ステップS152の判断結果とは異なる混雑度の電力収支履歴データをステップS162において読み出していることから、図8のステップS170とは別の方法を用いることで、予測消費電力量または予測回収電力量の算出を行う。ステップS172を実行したらステップS173へ進む。
【0073】
たとえば、読み出した電力収支履歴データが示す車両100の走行回ごとの消費電力量または回収電力量の平均値を求め、その平均値に対して所定の補正係数を乗算することにより、予測消費電力量または予測回収電力量を算出する。このときの補正係数の値は、ステップS152で判断した混雑度と、ステップS162で電力収支履歴データを読み出した混雑度とに基づいて決定することができる。たとえば、ステップS152の判断結果が「混雑」であり、ステップS162で「順調」の電力収支履歴データを読み出した場合は、その電力収支履歴データから求めた平均値よりも消費電力量は大きくなり、また回収電力量は小さくなると予想される。したがって、消費電力量に対しては1以上の値、たとえば1.2を補正係数として設定し、回収電力量に対しては1未満の値、たとえば0.8を補正係数として設定する。同様に、ステップS152の判断結果が「渋滞」であり、ステップS162で「順調」の電力収支履歴データを読み出した場合は、消費電力量に対してはたとえば1.5を補正係数として設定し、回収電力量に対してはたとえば0.6を補正係数として設定する。これ以外にも、ステップS152で判断した混雑度とステップS162で電力収支履歴データを読み出した混雑度との組合せに応じて、様々な補正係数を設定することができる。
【0074】
なお、補正係数として設定する値は上記の例に限定されない。また、補正係数を設定する以外の方法により予測消費電力量または予測回収電力量を算出してもよい。ステップS162で読み出した電力収支履歴データに基づいて、車両100が当該表示対象リンクを走行した場合の予測消費電力量または予測回収電力量を算出することができるものであれば、どのような方法を用いてもよい。
【0075】
ステップS173において、制御部10は、ステップS151により全ての表示対象リンクを選択したか否かを判定する。まだ選択していない表示対象リンクがある場合はステップS151へ戻り、未選択の表示対象リンクの中からいずれかをステップS151において選択した後、その表示対象リンクについて上述したような処理を繰り返す。一方、全ての表示対象リンクを選択済みである場合は、ステップS180へ進む。
【0076】
ステップS180以降において、制御部10は、図8で説明したのと同様の処理を各ステップにおいて実行する。なお、ステップS210では、各表示対象リンクについて、ステップS171またはS172で算出した予測消費電力量または予測回収電力量に基づいて、電力消費・回生マークをそれぞれ表示する。これにより、図4または図6に示すような電力消費・回生マップが表示モニタ16において表示される。
【0077】
以上説明した本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した(1)〜(6)の各作用効果に加えて、さらに次の(7)のような作用効果を奏することができる。
【0078】
(7)ナビゲーション装置1は、制御部10において電力収支履歴記録処理を行うことにより、車両100が走行した道路の混雑度を判断し(ステップS41)、その混雑度ごとに分類して電力収支履歴データをHDD13に記録する(ステップS51)。また、電力消費・回生マップ表示処理を行うことにより、表示対象リンクの混雑度を判断し(ステップS152)、当該表示対象リンクに対してその混雑度に対応する電力収支履歴データがHDD13において記録されているか否かを判定する(ステップS153)。この判定の結果により、当該電力収支履歴データがHDD13において記録されている場合は、その電力収支履歴データをHDD13から読み出し(ステップS161)、これに基づいて、車両100が表示対象リンクを走行したときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出する(ステップS171)。また、当該電力収支履歴データがHDD13において記録されていない場合は、当該表示対象リンクの他の混雑度に対応する電力収支履歴データをHDD13から読み出し(ステップS162)、これに基づいて、車両100が表示対象リンクを走行したときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出する(ステップS172)。このようにしたので、車両100が表示対象リンクを走行したときの電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量について、混雑度を考慮した精度の高い予測を行うことができる。
【0079】
−第3の実施の形態−
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施形態では、各車両に搭載された車載地図表示装置とサーバ装置とを無線通信により接続して各車両の電力収集履歴データをサーバ装置に記録し、その電力収集履歴データに基づいて電力消費・回生マップの表示を各車載地図表示装置において行う車両用地図表示システムおよび車載地図表示装置について説明する。
【0080】
図11は、本実施形態による車両用地図表示システムの構成を示す図である。この車両用地図表示システムには、車両100、200および300と移動体通信網400を介してそれぞれ接続される電力収集履歴管理サーバ500が設けられている。
【0081】
車両100、200および300は、各々が走行した道路に対して消費電力量または回収電力量を検出し、その検出結果を表す情報を消費・回収電力情報として電力収集履歴管理サーバ500へ逐次送信する。電力収集履歴管理サーバ500は、各車両から送信された消費・回収電力情報を受信し、その内容に基づいて電力収集履歴データの管理を行う。また、車両100、200および300は、電力消費・回生マップの表示を行う際に、電力収集履歴管理サーバ500に対して電力収支情報を要求する。電力収集履歴管理サーバ500は、各車両からの要求に応じて、記録されている電力収集履歴データに基づいて電力収支情報を生成し、各車両へと送信する。各車両は、電力収集履歴管理サーバ500から送信された電力収支情報を受信し、これに基づいて電力消費・回生マップの表示を行う。なお、図11では、車両100のみについて、電力収集履歴管理サーバ500への消費・回収電力情報の送信および電力収集履歴管理サーバ500からの電力収支情報の受信を図中に示しているが、他の車両200、300でも同様である。
【0082】
図12は、図11の車両用地図表示システムにおける車載システムの構成を示すブロック図である。図12において、車両100には、図1と同様にナビゲーション装置1、車両制御装置2、バッテリ3、電力変換装置4および電気モータ5が搭載されている。さらに、通信端末6も車両100に搭載されている。なお、ナビゲーション装置1の構成は、図2に示したものと同様である。
【0083】
通信端末6は、ナビゲーション装置1の制御によって動作し、図11の移動体通信網400との間で無線通信を行う。移動体通信網400には、図11に示すように電力収集履歴管理サーバ500が接続されている。すなわちナビゲーション装置1は、通信端末6および移動体通信網400を介して電力収集履歴管理サーバ500と接続され、消費・回収電力情報を電力収集履歴管理サーバ500へ送信したり、電力収集履歴管理サーバ500から電力収支情報を受信したりする。
【0084】
なお、図12では車両100に搭載されている車載システムの構成を例示したが、車両200および300に搭載されている車載システムもこれと同様の構成を有している。すなわち、図12に示すような車載システムが各車両において搭載されている。そして、各車両のナビゲーション装置1から消費・回収電力情報が電力収集履歴管理サーバ500へ送信されると共に、電力収集履歴管理サーバ500から送信された電力収支情報が各車両のナビゲーション装置1において受信される。
【0085】
本実施形態によるナビゲーション装置1では、図4および6に例示したような電力消費・回生マップを表示するために、図13、14のフローチャートに示す処理を制御部10により実行する。図13は、図7の電力収支履歴記録処理に替えて実行される消費・回収電力情報送信処理のフローチャートであり、図14は、図8に替えて実行される電力消費・回生マップ表示処理のフローチャートである。なお、これらのフローチャートにおいて、図7、8の各フローチャートとそれぞれ同一の処理を実行する処理ステップについては、共通のステップ番号を付している。以下の説明では、図7、8と共通のステップ番号が付された処理ステップの内容については、特に必要が無い限りその説明を省略する。
【0086】
最初に図13の消費・回収電力情報送信処理のフローチャートについて説明する。ステップS52において、制御部10は、ステップS40で検出した消費電力量または回収電力量の情報を、消費・回収電力情報として電力収集履歴管理サーバ500へ送信する。このとき、通信端末6と移動体通信網400との間で無線通信が行われることにより、ナビゲーション装置1から電力収集履歴管理サーバ500に対して消費・回収電力情報が送信される。
【0087】
ステップS52を実行したら、制御部10はステップS10へ戻る。その後は上記のような処理を繰り返し行う。以上説明したようにして、図13の消費・回収電力情報送信処理がナビゲーション装置1の制御部10において実行される。
【0088】
電力収集履歴管理サーバ500は、ステップS52でナビゲーション装置1から送信された消費・回収電力情報を受信する。そして、受信した消費・回収電力情報が表す消費電力量または回収電力量に基づいて、図7のステップS50と同様にして電力収支履歴データを記録する。電力収集履歴管理サーバ500には、電力収支履歴データを記録するための記録装置として、たとえばHDDなどの記録装置が設けられている。この記録装置において電力収支履歴データの記録を行う。
【0089】
以上説明したような電力収集履歴管理サーバ500における電力収支履歴データの記録は、各車両のナビゲーション装置1から電力収集履歴管理サーバ500へ消費・回収電力情報が送信される度ごとに行われる。その結果、車両100、200および300のうちいずれか少なくとも1つが過去に走行したことのある各道路について、電力収支履歴データが電力収集履歴管理サーバ500において記録される。
【0090】
次に図14の電力消費・回生マップ表示処理のフローチャートについて説明する。ステップS154において、制御部10は、電力消費・回生マップにおいて電力消費・回生マークの表示対象とするリンクを選択する。ここでは、図8のステップS150とは異なり、ステップS130で表示した地図中に含まれるリンクの全てを表示対象リンクとして選択する。このとき、たとえば細街路等の所定の道路種別のリンクや、予め対象外の設定がされているリンクなどを除いて、表示対象リンクを選択してもよい。
【0091】
ステップS163において、制御部10は、ステップS154で選択した各表示対象リンクについての電力収支情報の送信を電力収集履歴管理サーバ500に対して要求する。この電力収支情報の送信要求は、ナビゲーション装置1から通信端末6および移動体通信網400を介して電力収集履歴管理サーバ500へ送信される。
【0092】
電力収集履歴管理サーバ500は、ステップS163でナビゲーション装置1から電力収支情報の送信要求が行われると、その要求に応じて、記録装置に記録されている電力収支履歴データの中から、各表示対象リンクの電力収支履歴データを抽出する。そして、抽出した電力収支履歴データを電力収支情報としてナビゲーション装置1へ送信する。
【0093】
なお、ナビゲーション装置1から電力収支情報を要求された表示対象リンクの中に、いずれの車両も過去に走行したことがないリンクがある場合、そのリンクについての電力収支履歴データは電力収集履歴管理サーバ500において記録されていない。したがって、このような場合には、当該リンクに対する電力収支情報は電力収集履歴管理サーバ500からナビゲーション装置1へ送信されない。
【0094】
ステップS164において、制御部10は、ステップS163の送信要求に応じて電力収集履歴管理サーバ500から送信される電力収支情報を受信する。これにより、各表示対象リンクについての電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を示す電力収支情報を電力収集履歴管理サーバ500より受信する。
【0095】
ステップS174において、制御部10は、ステップS164で受信した電力収支情報に基づいて、車両100が各表示対象リンクを走行した場合の予測消費電力量または予測回収電力量を算出する。ここでは、受信した電力収支情報が表す電力収支履歴データの内容に基づいて、図8のステップS170と同様の方法により、各表示対象リンクの予測消費電力量または予測回収電力量を算出する。これにより、車両100が各表示対象リンクを走行したときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出する。
【0096】
ステップS180以降において、制御部10は、図8で説明したのと同様の処理を各ステップにおいて実行する。なお、ステップS210では、各表示対象リンクについて、ステップS174で算出した予測消費電力量または予測回収電力量に基づいて、電力消費・回生マークをそれぞれ表示する。これにより、図4または図6に示すような電力消費・回生マップが表示モニタ16において表示される。
【0097】
以上説明した本発明の第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した(1)、(3)〜(6)の各作用効果に加えて、さらに次の(8)、(9)のような作用効果を奏することができる。
【0098】
(8)ナビゲーション装置1は、制御部10において電力消費・回生マップ表示処理を行うことにより、表示対象リンクを選択し(ステップS154)、その表示対象リンクについての電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を示す電力収支情報を電力収集履歴管理サーバ500へ要求する(ステップS163)。この要求に応じて、電力収集履歴管理サーバ500は、記録されている電力収支履歴データに基づいて、表示対象リンクについての電力収支情報をナビゲーション装置1へ送信する。するとナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、電力収集履歴管理サーバ500から送信された電力収支情報を受信し(ステップS164)、その電力収支情報に基づいて、車両100が表示対象リンクを走行したときに予測される電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を算出する(ステップS174)。このようにしたので、各車両の過去の実績に基づいて、車両100が表示対象リンクを走行したときの電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を正確に予測することができる。
【0099】
(9)ナビゲーション装置1は、制御部10において消費・回収電力情報送信処理を行うことにより、車両100が走行した道路に対する電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を検出し(ステップS40)、その電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を電力収集履歴管理サーバ500へ送信する(ステップS52)。このようにしたので、電力収集履歴管理サーバ500において、各車両の過去の実績に基づく電力収支履歴データを記録することができる。
【0100】
−変形例−
以上説明した各実施の形態は、それぞれ次のように変形することもできる。
【0101】
(第1変形例)
上記第3の実施の形態では、道路の混雑度を考慮せずに電力消費・回生マップの表示を行う車両用地図表示システムおよび車載地図表示装置について説明したが、道路の混雑度を考慮して電力消費・回生マップの表示を行うようにしてもよい。すなわち、車両100がリンクを走行すると、ナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、当該リンクに対して消費電力量または回収電力量を検出すると共に道路の混雑度を判断し、その道路の混雑度を示す情報を付加して、消費電力量または回収電力量の検出結果を表す消費・回収電力情報を電力収集履歴管理サーバ500へ送信する。このとき道路の混雑度の判断には、第2の実施の形態で説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0102】
道路の混雑度を示す情報が付加された消費・回収電力情報をナビゲーション装置1から受信すると、電力収集履歴管理サーバ500は、その消費・回収電力情報が表す消費電力量または回収電力量に基づいて、電力収支履歴データを記録装置に記録する。このとき、消費・回収電力情報に付加された情報から道路の混雑度を特定し、その混雑度ごとに分類して、第2の実施の形態で説明したのと同様に電力収支履歴データの記録を行う。こうした処理を各車両について行うことにより、各車両が過去に走行したことのある各リンクについて、その走行回数および混雑度の種類に応じた電力収支履歴データが電力収集履歴管理サーバ500において記録される。
【0103】
ナビゲーション装置1から電力収支情報の送信要求があると、電力収集履歴管理サーバ500は、その要求に応じて、記録装置に記録されている電力収支履歴データの中から、各表示対象リンクの電力収支履歴データを抽出する。このとき、当該時点における各表示対象リンクの混雑度を電力収集履歴管理サーバ500において判断し、その混雑度に対応する電力収支履歴データを各表示対象リンクについて抽出する。あるいは、各表示対象リンクの混雑度の判断をナビゲーション装置1において行い、その判断結果を電力収支情報の要求と共にナビゲーション装置1から電力収集履歴管理サーバ500へ送信するようにしてもよい。そして、抽出した電力収支履歴データを電力収支情報としてナビゲーション装置1へ送信する。
【0104】
上記のようにして電力収集履歴管理サーバ500から送信された電力収支情報を受信したら、ナビゲーション装置1は、第3の実施の形態で説明したのと同様の処理を行う。すなわち、受信した電力収支情報が表す電力収支履歴データの内容に基づいて各表示対象リンクの予測消費電力量または予測回収電力量を算出し、その予測消費電力量または予測回収電力量に基づいて、各表示対象リンクに対する電力消費・回生マークを表示する。これにより、図4または図6に示すような電力消費・回生マップが表示モニタ16において表示される。
【0105】
以上説明した第1変形例によれば、ナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、車両100が走行した道路の混雑度を示す情報を付加して、検出した電気エネルギーの消費量または回生エネルギーの蓄積量を電力収集履歴管理サーバ500へ送信する。したがって、電力収集履歴管理サーバ500において、混雑度ごとに分類して電力収支履歴データの記録を行うことができる。また、ナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、表示対象リンクの混雑度に対応する電力収支情報を電力収集履歴管理サーバ500より受信する。したがって、道路の混雑度を考慮して電力消費・回生マップの表示を行うことができる。
【0106】
(第2変形例)
上記第3の実施の形態および第1変形例において、ナビゲーション装置1は、車両100の種類に応じた電力収支情報を電力収集履歴管理サーバ500から受信するようにしてもよい。この場合、ナビゲーション装置1の制御部10は、図13のステップS52で消費・回収電力情報を送信する際に、たとえば車両100が属するセグメントの情報など、車両100の車種情報を合わせて送信する。このようにすれば、電力収集履歴管理サーバ500において、車種ごとに分類して電力収支履歴データを記録することができる。
【0107】
また、ナビゲーション装置1の制御部10は、図14のステップS163において電力収支情報の送信要求を行うときに、車両100の車種情報を合わせて送信する。ナビゲーション装置1から電力収支情報の送信要求があると、電力収集履歴管理サーバ500は、その要求に応じて、記録装置に記録されている電力収支履歴データの中から、各表示対象リンクの電力収支履歴データを抽出する。このとき、送信要求と共に送信された車種情報から車両100の種類を特定し、その種類に応じた電力収支履歴データを各表示対象リンクについて抽出する。そして、抽出した電力収支履歴データを電力収支情報としてナビゲーション装置1へ送信する。
【0108】
以上説明した第2変形例によれば、車両100の種類に応じた電力収支情報を電力収集履歴管理サーバ500からナビゲーション装置1へ送信することができる。この電力収支情報に基づいて、ナビゲーション装置1において電力消費・回生マップの表示を行うことにより、車両100にとって最適な電力消費・回生マップを提供することができる。
【0109】
(第3変形例)
上記各実施の形態では、バッテリ3の残量変化量に基づいて車両100の消費電力量または回収電力量を検出する例を説明したが、他の方法で消費電力量または回収電力量を検出してもよい。たとえば、電気モータ5の回転速度や、電気モータ5における消費電力量または発電量を所定周期ごとに検出し、その検出結果に基づいて車両100の消費電力量または回収電力量を検出してもよい。
【0110】
(第4変形例)
上記各実施の形態では、リンク単位で電力収支履歴データの記録および電力消費・回生マップの表示を行う例を説明したが、他の道路区間単位でこれらを行ってもよい。たとえば、所定距離ごとに予め区切られた道路区間単位や、一つの上り坂または下り坂に対応する道路区間単位などを対象として、電力収支履歴データの記録および電力消費・回生マップの表示を行うことができる。
【0111】
(第5変形例)
上記各実施の形態では、HDD13から読み出した電力収支履歴データ、または電力収集履歴管理サーバ500から受信した電力収支情報に基づいて、車両100が各表示対象リンクを走行した場合の予測消費電力量または予測回収電力量を算出し、その算出結果を用いて電力消費・回生マップを表示する例を説明した。しかし、予測消費電力量または予測回収電力量の算出結果を電力消費・回生マップの表示以外に利用してもよい。たとえば、目的地までの合計消費電力が最も少ないと予測される経路の探索などに利用することができる。
【0112】
(第6変形例)
上記の各実施の形態および各変形例は、それぞれを任意に組み合わせて用いることができる。たとえば、ナビゲーション装置1が電力収集履歴管理サーバ500と接続可能な場合は、第3の実施の形態、第1変形例または第2変形例で説明したような方法で電力消費・回生マップの表示を行うようにする。その一方で、車両100がトンネル内などを走行しており、ナビゲーション装置1が電力収集履歴管理サーバ500と接続できないような状況のときには、第1または第2の実施の形態で説明したような方法で電力消費・回生マップの表示を行うようにする。なお、このようにする場合は、ナビゲーション装置1において電力収支履歴データをHDD13に記憶すると共に、各車両のナビゲーション装置1から電力収集履歴管理サーバ500へ消費・回収電力情報をそれぞれ送信することにより、電力収集履歴管理サーバ500においても電力収支履歴データを記録することが好ましい。
【0113】
(第7変形例)
上記各実施の形態および各変形例では、EVである車両100に搭載されているナビゲーション装置1を例として説明したが、ナビゲーション装置1が搭載される車両はEVに限定されない。たとえば、ガソリン等の燃料を燃焼することで得られるエネルギーと電気エネルギーとを併用して走行用の運動エネルギーを発生すると共に、回生発電によって得られた電気エネルギーを蓄積するHEVにおいても、本発明を適用可能である。なお、この場合には、消費電力量と燃料消費量とを合算したエネルギー消費量を用いて各処理を行うことが好ましい。あるいは、他のエネルギーを利用する車両においても本発明を適用可能である。すなわち、本発明による車載地図表示装置は、エネルギーを消費してその車両が走行するための運動エネルギーを発生すると共に、運動エネルギーの少なくとも一部を回収して再利用可能な回生エネルギーを蓄積するものである限り、どのような車両において搭載されていてもよい。
【0114】
(第8変形例)
上記各実施の形態および各変形例では、ナビゲーション装置1における適用例を説明したが、ナビゲーション装置以外の車載地図表示装置において適用してもよい。地図データを記憶しており、その地図データに基づいて車両に搭載された表示モニタに地図を表示するものである限り、どのような車載地図表示装置についても本発明を適用可能である。
【0115】
なお、以上説明した各実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0116】
1:ナビゲーション装置、2:車両制御装置、3:バッテリ、4:電力変換装置、
5:電気モータ、6:通信端末、10:制御部、11:振動ジャイロ、
12:車速センサ、13:HDD、14:GPS受信部、15:VICS情報受信部、
16:表示モニタ、17:スピーカ、18:入力装置、100:車両、
500:電力収集履歴管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載地図表示装置であって、
前記車両は、エネルギーを消費して前記車両が走行するための運動エネルギーを発生すると共に、前記運動エネルギーの少なくとも一部を回収して再利用可能な回生エネルギーを蓄積し、
前記車載地図表示装置は、
地図を表示装置に表示する地図表示手段と、
前記地図中に含まれる道路の中から対象道路を選択する対象道路選択手段と、
前記車両が前記対象道路を走行したときに予測される前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を算出する予測量算出手段と、
前記予測量算出手段により算出された前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量に基づくマークを前記地図上で前記対象道路の位置に重ねて表示する消費・回生マーク表示手段とを備えることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載地図表示装置において、
前記車両が走行した道路に対する前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量に基づくエネルギー収支履歴データを記録する履歴記録手段とをさらに備え、
前記対象道路選択手段は、前記地図中に含まれる道路のうち前記車両が過去に走行したことのある道路を前記対象道路として選択し、
前記予測量算出手段は、前記履歴記録手段に記録されたエネルギー収支履歴データに基づいて、前記車両が前記対象道路を走行したときに予測される前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を算出することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載地図表示装置において、
道路の混雑度を判断する混雑度判断手段をさらに備え、
前記履歴記録手段は、前記車両が走行した道路に対して前記混雑度判断手段により判断された混雑度ごとに分類して前記エネルギー収支履歴データを記録し、
前記予測量算出手段は、
前記対象道路に対して前記混雑度判断手段により判断された混雑度に対応するエネルギー収支履歴データが前記履歴記録手段において記録されている場合は、当該エネルギー収支履歴データに基づいて、前記車両が前記対象道路を走行したときに予測される前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を算出し、
前記対象道路に対して前記混雑度判断手段により判断された混雑度に対応するエネルギー収支履歴データが前記履歴記録手段において記録されていない場合は、前記対象道路の他の混雑度に対応するエネルギー収支履歴データに基づいて、前記車両が前記対象道路を走行したときに予測される前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を算出することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記対象道路についての前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を示すエネルギー収支情報を外部のサーバ装置より受信する受信手段をさらに備え、
前記予測量算出手段は、前記受信手段により受信されたエネルギー収支情報に基づいて、前記車両が前記対象道路を走行したときに予測される前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を算出することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載地図表示装置において、
前記車両が走行した道路に対する前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を前記サーバ装置へ送信する送信手段とをさらに備えることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車載地図表示装置において、
前記送信手段は、前記車両が走行した道路の混雑度を示す情報を付加して、前記検出手段により検出された前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を前記サーバ装置へ送信することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記受信手段は、前記対象道路の混雑度に対応する前記エネルギー収支情報を前記サーバ装置より受信することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記受信手段は、前記車両の種類に応じた前記エネルギー収支情報を前記サーバ装置より受信することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記消費・回生マーク表示手段は、前記車両において蓄積されている前記エネルギーの残量が所定値未満となったときに、前記マークを表示することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記予測量算出手段は、前記対象道路の双方向について、前記車両が走行したときに予測される前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を算出し、
前記消費・回生マーク表示手段は、前記対象道路の双方向について前記マークをそれぞれ表示することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記予測量算出手段は、前記対象道路について予め設定されたリンク単位で、前記車両が走行したときに予測される前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を算出し、
前記消費・回生マーク表示手段は、所定の最小区間距離に満たないリンクについては、他のリンクと併合して前記マークを表示することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車載地図表示装置において、
前記地図の縮尺に応じて前記最小区間距離を設定することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項13】
複数の車両との間で情報の送受信が可能なサーバ装置であって、
前記複数の車両の各々は、
エネルギーを消費して当該車両が走行するための運動エネルギーを発生し、
前記運動エネルギーの少なくとも一部を回収して再利用可能な回生エネルギーを蓄積し、
当該車両が走行した道路に対する前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を検出して前記サーバ装置へ送信し、
前記サーバ装置は、
前記複数の車両の各々より送信される、当該車両が走行した道路に対する前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を受信し、
受信した前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量に基づいて、前記複数の車両のうちいずれか少なくとも1つが過去に走行したことのある各道路についてエネルギー収支履歴データを記録し、
前記エネルギー収支履歴データに基づいて、前記複数の車両のうちいずれか少なくとも1つが過去に走行したことのある道路の中から選択された対象道路についてのエネルギー収支情報を、前記複数の車両の各々へ送信することを特徴とするサーバ装置。
【請求項14】
複数の車両との間で情報の送受信が可能なサーバ装置と、前記複数の車両の各々に搭載される複数の車載地図表示装置とを有し、
前記複数の車両の各々は、エネルギーを消費して当該車両が走行するための運動エネルギーを発生すると共に、前記運動エネルギーの少なくとも一部を回収して再利用可能な回生エネルギーを蓄積し、
前記複数の車載地図表示装置の各々は、
地図を表示装置に表示する地図表示手段と、
当該車載地図表示装置を搭載している搭載車両が走行した道路に対する前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を前記サーバ装置へ送信する送信手段と、
前記地図中に含まれる道路の中から対象道路を選択する対象道路選択手段と、
前記対象道路についての前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を示すエネルギー収支情報を前記サーバ装置へ要求する要求手段と、
前記要求手段による要求に応じて前記サーバ装置より送信されるエネルギー収支情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信されたエネルギー収支情報に基づいて、前記搭載車両が前記対象道路を走行したときに予測される前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を算出する予測量算出手段と、
前記予測量算出手段により算出された前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量に基づくマークを前記地図上で前記対象道路の位置に重ねて表示する消費・回生マーク表示手段とを備え、
前記サーバ装置は、
前記複数の車載地図表示装置の各々より送信される、前記搭載車両が走行した道路に対する前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量を受信し、
受信した前記エネルギーの消費量または前記回生エネルギーの蓄積量に基づいて、前記複数の車両のうちいずれか少なくとも1つが過去に走行したことのある各道路についてエネルギー収支履歴データを記録し、
前記複数の車載地図表示装置の各々からの要求に応じて、前記エネルギー収支履歴データに基づいて、前記対象道路についてのエネルギー収支情報を当該車載地図表示装置へ送信することを特徴とする車両用地図表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−154782(P2012−154782A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13846(P2011−13846)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】