説明

車載地図表示装置及び地図データ記憶装置並びに地図データのデータ構造

【課題】多数の仕向け国のそれぞれの事情に適合した地図を表示することができる車載地図表示装置の提供。
【解決手段】車載地図表示装置としてのナビゲーション装置10は、国毎に依存することの無い地図データを記憶する汎用データ記憶手段40と、国によって見解の異なる地図データであって、該国毎に特別に作成された地図データを記憶する国依存データ記憶手段40と、車両の仕向け国を判断する仕向け国判断手段12と、前記汎用データ記憶手段から、汎用データを取得すると共に、前記国依存データ記憶手段から、前記仕向け国判断手段により判断された仕向け国に係る国依存データを取得するデータ取得手段12とを備え、前記データ取得手段により取得された各データを用いて、地図をディスプレイ14上に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載地図表示装置及び地図データ記憶装置並びに地図データのデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第1の地域を主とし前記第1の地域に隣接する第2の地域を従とした地図情報を記憶する第1の記憶媒体と前記第2の地域を主とし前記第1の地域を従とした地図情報を記憶する第2の記憶媒体を切り替えて前記いずれかの記憶媒体に記憶される地図情報を再生する記憶媒体再生装置と、現在位置を検出する位置検出手段と、表示手段と、該表示手段に前記記憶媒体再生装置より再生された地図情報と前記位置検出手段より検出された現在位置を表示させる制御回路とを有するナビゲーション装置において、前記制御回路は、現在位置が前記第1の地域から前記第2の地域へ移動するときに前記記憶媒体再生装置の再生を前記第1の記憶媒体から前記第2の記憶媒体へ切り替えさせることを特徴とするナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−213444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、地図は、本来的には、事実を表すものであるので、国間で見解の相違が生ずるものでないはずである。しかしながら、現在の国際情勢においては、国境紛争等があり、国境線の表示位置等が問題となることがある。これに対して、仕向け国毎に地図データを一から作り分けることは、かかる問題を解決できるものの、多数の仕向け国毎に地図データを作り分けることは一般的に煩雑で非効率である。
【0004】
そこで、本発明は、かかる問題を鑑み、地図データの汎用性を高めつつ、多数の仕向け国のそれぞれの事情に適合した地図を表示することができる車載地図表示装置及び地図データ記憶装置並びに地図データのデータ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、車載地図表示装置に関し、国毎に依存することの無い地図データを記憶する汎用データ記憶手段と、
国によって見解の異なる地図データであって、該国毎に特別に作成された地図データを記憶する国依存データ記憶手段と、
車両の仕向け国を判断する仕向け国判断手段と、
前記汎用データ記憶手段から、汎用データを取得すると共に、前記国依存データ記憶手段から、前記仕向け国判断手段により判断された仕向け国に係る国依存データを取得するデータ取得手段とを備え、
前記データ取得手段により取得された各データを用いて、ディスプレイ上に地図を表示することを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る車載地図表示装置において、
仕向け国に関連する情報を入力する入力手段を更に備え、
前記仕向け国判断手段は、前記入力手段を介して入力される仕向け国に関連する情報に基づいて、前記仕向け国を判断することを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、車載地図表示装置に関し、国毎に依存することの無い地図データを記憶する汎用データ記憶手段と、
国によって見解の異なる地図データであって、該国毎に特別に作成された地図データを記憶する国依存データ記憶手段と、
車両が走行している国を検出する走行国検出手段と、
前記汎用データ記憶手段から、汎用データを取得すると共に、前記国依存データ記憶手段から、前記走行国検出手段により検出された走行国に係る国依存データを取得するデータ取得手段とを備え、
前記データ取得手段により取得された各データを用いて、ディスプレイ上に地図を表示することを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第1又は3の発明に係る車載地図表示装置において、
前記国依存データは、国によって見解の異なる国境線を表すデータ、国によって見解の異なる領土の名称を表すデータ、又は、地図として表示されることに対して国によって見解の異なる地物に関するデータであることを特徴とする。
【0009】
第5の発明は、第1の発明に係る車載地図表示装置において、
車両が走行している国を検出する走行国検出手段を更に備え、
前記仕向け国判断手段は、前記走行国検出手段により検出された走行国を、前記仕向け国と判断することを特徴とする。
【0010】
第6の発明は、第1の発明に係る車載地図表示装置において、
車両が走行している国を検出する走行国検出手段と、
前記国依存データ記憶手段から、前記走行国検出手段により検出された走行国に係る国依存データを取得する第2データ取得手段と、
前記走行国検出手段により検出された走行国と、前記仕向け国判断手段により判断された仕向け国とが一致するか否かを判定する判定手段とを更に備え、
前記走行国と前記仕向け国とが一致しない場合には、前記仕向け国と前記走行国との間で見解の異なる地図データについては、前記仕向け国に係る国依存データを用い、前記走行国と前記仕向け国以外の国との間で見解の異なる地図データについては、前記走行国に係る国依存データを用いて、ディスプレイ上に地図を表示することを特徴とする。
【0011】
第7の発明は、地図データ記憶装置に関し、国毎に依存することの無い複数国に係る地図データと、国によって見解の異なる地図データであって、該国毎に特別に作成された複数国に係る地図データとが分離した形態で記憶されていることを特徴とする。
【0012】
第8の発明は、地図データのデータ構造に関し、記憶媒体に記憶される地図データを含み、
該地図データは、国毎に依存することの無い汎用データと、国によって見解の異なる国依存データであって、該国毎に特別に作成された国依存データとを含み、
外部入力手段を介して国が指定された場合に、該指定された国に係る国依存データが読み出し可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地図データの汎用性を高めつつ、多数の仕向け国のそれぞれの事情に適合した地図を表示することができる車載地図表示装置及び地図データ記憶装置並びに地図データのデータ構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0015】
図1は、本実施例による車載地図表示装置の主要構成の一実施例を示す構成図である。本実施例の車載地図表示装置は、ナビゲーション装置10として具現化されており、このナビゲーション装置10は、ナビゲーションECU(電子制御ユニット)12と、ディスプレイ14と、ユーザインターフェース16と、地図データベース18(以下、「地図DB18」と略す)と、GPS(Global Positioning System)受信機30と、地図データソースデータベース40(以下、「地図データソースDB40」と略す)と、を備える。
【0016】
ナビゲーションECU12は、ハードウェア構成としては、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータより構成されている。
【0017】
ナビゲーションECU12は、後述の地図DB18内の地図データやGPS受信機30からの位置情報等に基づいて、経路探索、経路案内、施設検索、地図描画等のような各種処理を実行する。
【0018】
ディスプレイ14は、例えば液晶ディスプレイであってよく、車室内の適切な位置に配置される。例えば、ディスプレイ14は、インストルメントパネルに配置される。ディスプレイ14上には、後述の地図DB18内の地図データに基づいて描画された地図が表示される。また、ディスプレイ14上には、操作メニュー画像や車載カメラの撮像画像、TV映像等が表示されてもよい。
【0019】
ユーザインターフェース16は、例えばリモコンやディスプレイ14上のタッチスイッチなどの入力手段を含む。本例では、ユーザ又はメーカー(ディーラーを含む)は、ユーザインターフェース16を介して、車両の仕向け国に関する情報(以下、「仕向け国情報」という)を入力する。入力された仕向け国情報は、ナビゲーションECU12のアクセス可能な所定のメモリ(好ましくは不揮発性メモリ)に記憶される。仕向け国情報は、メーカーにより車両出荷前(製造工程中)に入力されてもよいし、最終ユーザへの引渡し前にディーラーにより入力されてもよいし、引渡し後にユーザにより入力されてもよい。尚、ナビゲーションECU12は、仕向け国情報が未だ記憶されていない場合には、例えばディスプレイ14上に、仕向け国情報を入力するようにメッセージ等を出力することとしてもよい。仕向け国情報は、仕向け国を直接的に表す情報であってもよいし、間接的に表す情報であってもよい。仕向け国情報は、例えば、車体番号のような、他の情報と一体となっている情報であってもよい。
【0020】
地図DB18は、書き込み可能(好ましくは書き換え可能な)不揮発性のメモリ(補助記憶装置)で構成され、例えばハードディスクドライブで構成されてよい。地図DB18には、後に詳説する態様で、地図データが記憶される。
【0021】
GPS受信機30は、GPSアンテナ(図示せず)を介して、衛星からの電波を受信して、車両の位置を測位し、その測位結果を車両位置情報としてナビゲーションECU12に供給する。尚、測位方法は、単独測位や相対測位(干渉測位を含む。)等の如何なる方法であってもよい。この際、測位結果は、車速センサやジャイロセンサ等の各種センサ(図示せず)の出力や、ビーコン受信機及びFM多重受信機(図示せず)を介して受信される各種情報に基づいて補正されてよい。また、測位結果は、公知のマップマッチング技術により、不定期的に、地図DB18内の地図データを用いて適宜補正されてよい。
【0022】
地図データソースDB40は、例えばROMのような、書き換え不能なメモリで構成されてもよい。この場合、メモリは、ナビゲーションECU12内のROMであってもよいし、或いは、着脱可能な形式のメモリ(例えばSDカード)であってもよい。但し、地図データソースDB40を構成するメモリは、ナビゲーションECU12が無線通信又は有線通信を介して直接的に若しくは間接的にアクセス可能なメモリであれば如何なる構成であってもよく、例えば車両外部にあるセンタ内のメモリ(サーバー)であってもよい。この場合、センタ内のメモリは、好ましくは、書き換え可能なメモリであり、所定の管理者の管理の下、地図データソースDB40内の地図データは事後的な編集や修正が可能とされてよい。
【0023】
地図データソースDB40には、地図DB18内の地図データの元となる複数国の地図データが記憶されている。即ち、地図DB18内の地図データは、地図データソースDB40内の地図データの一部から構成される。ここでは、一例として、地図データソースDB40内の地図データは、隣接するA国,B国,C国の3カ国の地図データを含むものとする。
【0024】
図2は、地図データソースDB40に記憶される地図データの構造を示す図である。地図データは、図2に示すように、経路探索用データ、経路案内用データ、施設検索用データ、地図描画用データ、及び、その他のデータを含む。地図描画用データは、線分列データ群、文字列データ群、及び、表示記号データ群を含む。
【0025】
線分列データ群は、道路や建物等の地物や地形を構成する各種線を2次元的若しくは3次元的に描画するためのデータ群であり、複数の線分列データからなる。一の線分列データは、描画位置を表す座標列、描画態様を表す描画属性、及び、描画する線分の属性を表すデータ属性を含む。データ属性は、例えば国境線を表す線分列データを識別できるような態様で付与されてよい
文字列データ群は、地図に付される文字(地名や名称)を描画するためのデータ群であり、複数の文字列データからなる。一の文字列データは、描画位置を表す座標、文字列、書体やサイズ等の描画態様を表す描画属性を含む。
【0026】
表示記号データ群は、地図に付される記号(例えばガソリンスタンドのような各種施設等を表す記号)を描画するためのデータ群であり、複数の表示記号データからなる。一の表示記号データは、描画位置を表す座標、及び、記号の種別を表す記号IDを含む。
【0027】
本実施例では、その特徴的な構成として、地図データソースDB40に記憶される地図データは、国毎に依存することの無いデータ(以下、「汎用データ」という)と、国によって見解の異なるデータ(以下、「国依存データ」という)とからなる。地図データソースDB40には、地図データのうちの、汎用データと、国依存データとが分離した形態で記憶されている。汎用データと国依存データは、階層構造(例えば汎用データを上位層とし、国依存データを下位層とする階層構造)で記憶されていてもよいし、それぞれ別の特定の記憶領域又は記憶装置に記憶されていてもよい。また、各国に係る国依存データは、その国に紐付けられた形態で記憶される。例えば、各国に係る国依存データは、国別に付与されたアドレスに対応付けて、国別に割り当てられた記憶領域にそれぞれ記憶され、アドレスを指定することで、当該アドレスに対応する国に係る全ての国依存データを読み出すことができるようにする。
【0028】
図2に示す例では、地図描画用データに関して汎用データと国依存データが作成されて記憶されている。即ち、地図描画用データは、汎用描画データと、国依存描画データとからなる。汎用描画データと、国依存描画データとは、データ構造自体は同一であってよく、それぞれ、線分列データ群、文字列データ群、及び、表示記号データ群を含んでよい。図2に示す例では、国依存データは、A国用の描画データ、B国用の描画データ、及び、C国用の描画データを含む。
【0029】
ここで、各国に係る国依存データは、その国の主張・言い分に沿うように作成されて記憶される。例えば、図3に示すように、A国とB国の国境線についてA国とB国の間で見解の相違があり、B国とC国の国境線についてB国とC国の間で見解の相違がある場合を想定する。この場合、A国がB国に対して主張する国境線A2を描画するためのデータが、A国用の描画データとして記憶される。同様に、B国がA国及びC国に対して主張する国境線B2,B3を描画するためのデータが、B国用の描画データとして記憶される。同様に、C国がB国に対して主張する国境線C2を描画するためのデータが、C国用の描画データとして記憶される。
【0030】
また、例えば公用語がA国とB国の間で異なる場合、A国用の描画データは、A国とB国の間で見解の相違のある境界領域R1に関する文字列データについて、A国の公用語で作成され記憶されてよい。同様に、B国用の描画データは、境界領域R1に関する文字列データについて、B国の公用語で作成され記憶されてよい。また、例えば境界領域R1内の地物(都市や道路、施設等)の名称がA国とB国の間で異なる場合、A国用の描画データは、A国で用いられる名称で作成され記憶され、B国用の描画データは、B国で用いられる名称で作成され記憶されてよい。また、国家機密や宗教等の事情により、境界領域R1内に、A国の当局が表示して欲しくない地物が存在し、当該地物をB国の当局が表示して欲しい場合、A国用の描画データは、当該地物に係る描画データを含まず、B国用の描画データは、当該地物に係る描画データを含むようにしてもよい。尚、B国とC国の間で見解の異なる境界領域R2についても同様であってよい。
【0031】
また、A国用の描画データは、B国とC国の間で見解の異なる境界領域R2(国境線を含む)に関して、B国用の描画データ及びC国用の描画データのいずれか一方を含んでよい。いずれを含むかは、A国の当局の意向や、A国とB国及びC国の間の友好関係等に基づいて判断され、予め決定されていてよいし、図9を参照して後述する態様で決定されてもよい。同様に、C国用の描画データは、A国とB国の間で見解の異なる境界領域R1(国境線を含む)に関して、A国用の描画データ及びB国用の描画データのいずれか一方を含んでよい。同様に、いずれを含むかは、C国の当局の意向や、C国とA国及びB国の間の友好関係等に基づいて判断され、予め決定されていてよいし、図9を参照して後述する態様で決定されてもよい。
【0032】
一方、汎用データは、国毎に依存することの無いデータ(即ち国間で見解が相違しないデータ)であるので、事実に基づいて適切に作成されて記憶される。例えば、図3に示すように、A国とB国の間で、線分A1及びB2で画成される領域Aが、A国の領土であることに見解の相違が無い場合、領域A内の地図データ(国境線A1に係る線分列データを含む)は、汎用データとして作成・記憶される。この際、領域Aに関する文字列データについて、A国の公用語で描画されるように作成され記憶されてよい。同様に、B国とA国及びC国との間で見解の相違の無いB国の領域B(線分A2,B1,C2で画成される領域)内の地図データ(国境線B1に係る線分列データを含む)は、汎用データとして作成・記憶される。この際、領域Bに関する文字列データについて、B国の公用語で描画されるように作成され記憶されてよい。同様に、C国とB国毎に依存することの無いC国の領域C(線分B3,C1で画成される領域)内の地図データ(国境線C1に係る線分列データを含む)は、汎用データとして作成・記憶される。この際、領域Cに関する文字列データについて、C国の公用語で描画されるように作成され記憶されてよい。
【0033】
図4は、地図データソースDB40内の地図データに基づいて、地図DB18内の地図データを構築するための処理の一例の流れを示すフローチャートである。図4に示す処理は、ユーザインターフェース16を介して指示が入力された場合に、ナビゲーションECU12により実現される。この指示は、例えば、車両製造工程におけるナビゲーション装置10の実装時に、メーカーにより入力されることや、仕向け国の変更があった場合に事後的に入力されることが想定される。或いは、この指示は、メーカー等による仕向け国情報の入力をトリガとして実行されてもよい。
【0034】
ステップ100では、ナビゲーションECU12は、所定のメモリから仕向け国情報を読み出す。
【0035】
ステップ102では、ナビゲーションECU12は、上記ステップ100で読み出した仕向け国情報から仕向け国を判断する。
【0036】
ステップ104では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、汎用データを全て読み込んで、地図DB18内に格納する。
【0037】
ステップ106では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、複数の国に係る国依存データの中から、上記ステップ102で判断した仕向け国に対応する国依存データだけを読み出して、地図DB18内に格納する。これにより、地図DB18内には、汎用データと、仕向け国に対応する国依存データとが格納・記憶されることになる。尚、ステップ104及び106の処理は、逆の順序で実行されてもよい。
【0038】
図5は、図4の処理により構築された地図DB18内の地図データの構造を示す図である。ここでは、一例として、仕向け国がA国である場合の地図データの構造が示されている。地図DB18内には、図2に示した地図データソースDB40内の地図データのうち、汎用データとA国に係る対応する国依存データとが記憶されている。このようにして地図DB18内に地図データが記憶されると、以後、上述の如くナビゲーションECU12は、地図DB18内に地図データ(汎用データとA国に係る対応する国依存データとを組み合わせた地図データ)に基づいて、例えばディスプレイ14上に地図を描画する等の各種の機能を実現することになる。
【0039】
図6は、ディスプレイ14上に描画された地図画面を概略的に示す図であり、図6(A)は、地図DB18内に、汎用データとA国に係る国依存データとが格納・記憶されている場合の地図画面を示し、図6(B)は、地図DB18内に、汎用データとB国に係る国依存データとが格納・記憶されている場合の地図画面を示す。
【0040】
仕向け国がA国である場合には、図6(A)に示すように、A国が主張する国境線A2(図3参照)が描画され、図示されていないが、領域R1(図3参照)についても、A国の意向に沿った形式で描画されることになる。また、仕向け国がB国である場合には、図6(B)に示すように、B国が主張する国境線B2(図3参照)が描画され、図示されていないが、領域R1、R2(図3参照)についても、B国の意向に沿った形式で描画されることになる。
【0041】
このように、本実施例によれば、地図データソースDB40内の地図データを、国毎に依存することの無い地図データ(汎用データ)と、国によって見解の異なる地図データ(国依存データ)とに分離して構築しておくことで、仕向け国の事情に適合した地図データを、地図DB18内に格納することができると共に、地図データソースDB40内の地図データを、複数の仕向け国に対して共通に利用することができる。これにより、地図データソースDB40内の地図データの汎用性を高めると共に、仕向け国の意向に沿った適切な地図データを効率的に地図DB18内に構築することができる。
【0042】
図7は、地図DB18内の地図データを構築するための処理のその他の一例の流れを示すフローチャートである。図7に示す処理は、特に上述の仕向け国情報が取得不能である場合に特に好適である。図7に示す処理は、上述の図4と同様のタイミングで実行されてもよいし、定期的に実行されてもよい。
【0043】
ステップ200では、ナビゲーションECU12は、GPS受信機30から車両位置情報を取得する。
【0044】
ステップ202では、ナビゲーションECU12は、取得した車両位置情報に基づいて、車両の走行している国(以下、「走行国」という)を検出する。
【0045】
ステップ204では、ナビゲーションECU12は、上記ステップ202で検出した走行国を仕向け国と判断する。
【0046】
ステップ206では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、汎用データを全て読み込んで、地図DB18内に格納する。
【0047】
ステップ208では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、複数の国に係る国依存データの中から、上記ステップ204で判断した仕向け国に対応する国依存データだけを読み出して、地図DB18内に格納する。これにより、地図DB18内には、汎用データと、仕向け国(走行国)に対応する国依存データとが格納・記憶されることになる。尚、ステップ206及び208の処理は、逆の順序で実行されてもよい。
【0048】
尚、上記ステップ202において、ナビゲーションECU12は、現在の車両の走行国を検出してもよいし、過去の車両位置情報の履歴に基づいて、車両の主たる走行国を検出してもよい。主たる走行国を検出する場合には、頻繁に2カ国以上を走行する車両に対しても、仕向け国を精度よく推定することができる。
【0049】
図7に示す処理によれば、仕向け国情報が取得不能である場合や、仕向け国情報が不正確となった場合(例えば、車両販売後に中古車として異なる国に輸出された場合で、仕向け国情報が更新されない場合)でも、現状の走行国に適合した地図データを地図DB18内に構築することができる。
【0050】
図8は、地図DB18内の地図データを構築するための処理のその他の一例の流れを示すフローチャートである。図8に示す処理は、上述の仕向け国とは関係なく走行国に依存して地図データを構築する点に特徴を有する。図8に示す処理は、上述の図4と同様のタイミングで実行されてもよいが、好ましくは、走行国が変化することを想定して定期的に実行される。
【0051】
ステップ300では、ナビゲーションECU12は、GPS受信機30から車両位置情報を取得する。
【0052】
ステップ302では、ナビゲーションECU12は、取得した車両位置情報に基づいて、車両の走行している国(即ち走行国)を検出する。
【0053】
ステップ304では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、汎用データを全て読み込んで、地図DB18内に格納する。
【0054】
ステップ306では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、複数の国に係る国依存データの中から、上記ステップ302で検出した走行国に対応する国依存データだけを読み出して、地図DB18内に格納する。これにより、地図DB18内には、汎用データと、走行国に対応する国依存データとが格納・記憶されることになる。尚、ステップ304及び306の処理は、逆の順序で実行されてもよい。
【0055】
図8に示す処理によれば、走行国が変化する場合に、現状の走行国に適合した地図データを地図DB18内に構築することができる。例えば、走行国がA国からB国に変化した場合には、地図DB18内のデータは、汎用データとA国に対応する国依存データとからなる状態から、汎用データとB国に対応する国依存データとからなる状態に変化することになる。尚、この場合、A国からB国への走行国の変化は、A国に対応する国依存データ(即ちA国が主張する国境線A2)に基づいて判断されてよいし、B国に対応する国依存データ(即ちB国が主張する国境線B2)に基づいて判断されてもよい。
【0056】
図9は、地図DB18内の地図データを構築するための処理のその他の一例の流れを示すフローチャートである。
【0057】
ステップ400では、ナビゲーションECU12は、所定のメモリから仕向け国情報を読み出す。
【0058】
ステップ401では、ナビゲーションECU12は、上記ステップ400で読み出した仕向け国情報から仕向け国を判断する。
【0059】
ステップ402では、ナビゲーションECU12は、GPS受信機30から車両位置情報を取得する。
【0060】
ステップ404では、ナビゲーションECU12は、取得した車両位置情報に基づいて、車両の走行している国(走行国)を検出する。
【0061】
ステップ406では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、汎用データを全て読み込んで、地図DB18内に格納する。
【0062】
ステップ408では、ナビゲーションECU12は、上記ステップ404で検出した走行国が、上記ステップ401で判断した仕向け国と一致するか否かを判定する。走行国が仕向け国と一致する場合には、ステップ410に進み、走行国が仕向け国と一致しない場合には、ステップ412に進む。
【0063】
ステップ410では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、複数の国に係る国依存データの中から、仕向け国に対応する国依存データだけを読み出して、地図DB18内に格納する。この場合、地図DB18内には、汎用データと、仕向け国に対応する国依存データとが記憶されることになる。
【0064】
ステップ412では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、複数の国に係る国依存データの中から、上記ステップ401で判断した仕向け国に対応する国依存データを読み出す。
【0065】
ステップ414では、ナビゲーションECU12は、地図データソースDB40内から、複数の国に係る国依存データの中から、上記ステップ404で検出した走行国に対応する国依存データを読み出す。
【0066】
ステップ416では、ナビゲーションECU12は、仕向け国及び走行国に対応する両国依存データを適切に合成して、合成したデータを、地図DB18内に格納する。具体的には、仕向け国と走行国の間の境界領域については、仕向け国に対応する国依存データを採用し、走行国と他の国の境界領域については、走行国に対応する国依存データを採用して、合成データを生成する。例えば、仕向け国がA国であり、走行国がB国である場合には、A国とB国の境界領域R1(図3参照)については、A国用の描画データを地図DB18内に格納し、B国とC国の境界領域R2(図3参照)については、B国用の描画データを地図DB18内に格納する。この場合、地図DB18内には、汎用データと、合成データとが記憶されることになる。
【0067】
図10は、図9の処理に関連した地図画面を概略的に示す図であり、図10(A)は、仕向け国がA国であり且つ走行国がA国である場合の地図画面(ステップ410の処理に関連して得られる地図画面)を示し、図10(B)は、仕向け国がA国であるが走行国がB国である場合の地図画面(ステップ416の処理に関連して得られる地図画面)を示す。
【0068】
ここでは、A国用の描画データは、図10(A)に示すように、B国とC国の境界領域R2については、C国用の描画データを含んでいるものとする。従って、例えばB国とC国の国境線は、図10(A)に示すように、C国が主張する位置に描画されている。図10の処理によれば、走行国がA国からB国に移行すると、上記のステップ416の処理により、B国とC国の境界領域R2(図3参照)については、C国用の描画データからB国用の描画データに変更される。この結果、図10(B)に示すように、例えばB国とC国の国境線は、図10(A)に示すように、B国が主張する位置に描画される。このように、図10に示す処理によれば、仕向け国を最も重視しつつ、走行国の事情を配慮した形態の地図データを地図DB18内に構築することができる。
【0069】
尚、以上説明した実施例においては、添付の特許請求の範囲における「汎用データ記憶手段」及び「国依存データ記憶手段」は、地図データソースDB40により実現されており、同特許請求の範囲における「仕向け国判断手段」は、ナビゲーションECU12が図4のステップ102、図7のステップ204又は図9のステップ401の処理を実行することにより実現されており、同特許請求の範囲における「データ取得手段」は、ナビゲーションECU12が図4のステップ104及び106、図7のステップ206及び208、、図8のステップ304及び306、又は、図9のステップ406及びステップ412又はステップ410の処理を実行することにより実現されており、同特許請求の範囲における「入力手段」は、ユーザインターフェース16により実現されており、同特許請求の範囲の請求項3及び5における「走行国検出手段」は、ナビゲーションECU12が図7のステップ202又は図8のステップ302の処理を実行することにより実現されており、同特許請求の範囲の請求項6における「走行国検出手段」は、ナビゲーションECU12が図9のステップ404の処理を実行することにより実現されており、同請求項における「第2データ取得手段」は、ナビゲーションECU12が図9のステップ414の処理を実行することにより実現されており、同請求項における「判定手段」は、ナビゲーションECU12が図9のステップ408の処理を実行することにより実現されている。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0071】
例えば、上述した実施例では、好ましい実施例として、地図データソースDB40内の地図データは、上述の如く、一旦、地図DB18内に記憶されてから(間接的に)利用されている。これにより、地図データソースDB40へのアクセス頻度(処理負荷)を低減しつつ、ナビゲーションECU12の描画用ソフトウェアを仕向け国毎に変更する必要を無くしている。しかしながら、描画用ソフトウェアにより上述と同様に仕向け国(又は走行国)を判断し、描画時に仕向け国(又は走行国)に応じた国依存データを選択して使用することしてもよい。この場合、地図DB18を無くし、地図データソースDB40が地図データソースDB40に直接アクセスする構成も可能である(即ち、地図データソースDB40を地図DB18の代わりに用いる構成も可能である)。また、RAMのようなメモリ(主記憶装置)を、地図DB18に代えて用いてもよい。
【0072】
また、上述した実施例において、仕向け国情報は、ユーザの発話をピックアップするマイクを介して入力されてもよい。この場合、マイクを介してピックアップした発話データが音声認識され、仕向け国が判断されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施例による車載地図表示装置の主要構成の一実施例を示す構成図である。
【図2】地図データソースDB40に記憶される元データの構造を示す図である。
【図3】汎用データと国依存データの説明図である。
【図4】地図データソースDB40内の地図データに基づいて、地図DB18内の地図データを構築するための処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図4の処理により構築された地図DB18内の地図データの構造を示す図である。
【図6】図6(A)は、汎用データとA国に係る国依存データとに基づいて描画された地図画面を示す図であり、図6(B)は、同汎用データとB国に係る国依存データとに基づいて描画された地図画面を示す図である。
【図7】地図DB18内の地図データを構築するための処理のその他の一例の流れを示すフローチャートである。
【図8】地図DB18内の地図データを構築するための処理のその他の一例の流れを示すフローチャートである。
【図9】地図DB18内の地図データを構築するための処理のその他の一例の流れを示すフローチャートである。
【図10】図10(A)は、仕向け国がA国であり且つ走行国がA国である場合の地図画面を示し、図10(B)は、仕向け国がA国であるが走行国がB国である場合の地図画面を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
10 ナビゲーション装置
12 ナビゲーションECU
14 ディスプレイ
16 ユーザインターフェース
18 地図DB
30 GPS受信機
40 地図データソースDB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
国毎に依存することの無い地図データを記憶する汎用データ記憶手段と、
国によって見解の異なる地図データであって、該国毎に特別に作成された地図データを記憶する国依存データ記憶手段と、
車両の仕向け国を判断する仕向け国判断手段と、
前記汎用データ記憶手段から、汎用データを取得すると共に、前記国依存データ記憶手段から、前記仕向け国判断手段により判断された仕向け国に係る国依存データを取得するデータ取得手段とを備え、
前記データ取得手段により取得された各データを用いて、ディスプレイ上に地図を表示することを特徴とする、車載地図表示装置。
【請求項2】
仕向け国に関連する情報を入力する入力手段を更に備え、
前記仕向け国判断手段は、前記入力手段を介して入力される仕向け国に関連する情報に基づいて、前記仕向け国を判断する、請求項1に記載の車載地図表示装置。
【請求項3】
国毎に依存することの無い地図データを記憶する汎用データ記憶手段と、
国によって見解の異なる地図データであって、該国毎に特別に作成された地図データを記憶する国依存データ記憶手段と、
車両が走行している国を検出する走行国検出手段と、
前記汎用データ記憶手段から、汎用データを取得すると共に、前記国依存データ記憶手段から、前記走行国検出手段により検出された走行国に係る国依存データを取得するデータ取得手段とを備え、
前記データ取得手段により取得された各データを用いて、ディスプレイ上に地図を表示することを特徴とする、車載地図表示装置。
【請求項4】
前記国依存データは、国によって見解の異なる国境線を表すデータ、国によって見解の異なる領土の名称を表すデータ、及び、地図として表示されることに対して国によって見解の異なる地物に関するデータのうちの少なくともいずれか1つである、請求項1又は3に記載の車載地図表示装置。
【請求項5】
車両が走行している国を検出する走行国検出手段を更に備え、
前記仕向け国判断手段は、前記走行国検出手段により検出された走行国を、前記仕向け国と判断する、請求項1に記載の車載地図表示装置。
【請求項6】
車両が走行している国を検出する走行国検出手段と、
前記国依存データ記憶手段から、前記走行国検出手段により検出された走行国に係る国依存データを取得する第2データ取得手段と、
前記走行国検出手段により検出された走行国と、前記仕向け国判断手段により判断された仕向け国とが一致するか否かを判定する判定手段とを更に備え、
前記走行国と前記仕向け国とが一致しない場合には、前記仕向け国と前記走行国との間で見解の異なる地図データについては、前記仕向け国に係る国依存データを用い、前記走行国と前記仕向け国以外の国との間で見解の異なる地図データについては、前記走行国に係る国依存データを用いて、ディスプレイ上に地図を表示する、請求項1に記載の車載地図表示装置。
【請求項7】
国毎に依存することの無い複数国に係る地図データと、国によって見解の異なる地図データであって、該国毎に特別に作成された複数国に係る地図データとが分離した形態で記憶されていることを特徴とする、地図データ記憶装置。
【請求項8】
記憶媒体に記憶される地図データを含み、
該地図データは、国毎に依存することの無い汎用データと、国によって見解の異なる国依存データであって、該国毎に特別に作成された国依存データとを含み、
外部入力手段を介して国が指定された場合に、該指定された国に係る国依存データが読み出し可能とされていることを特徴とする、地図データのデータ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−281353(P2008−281353A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123528(P2007−123528)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】