説明

車載地図表示装置

【課題】環状交差点の先に繋がっている道路の様子を容易に把握できる地図を表示する。
【解決手段】ナビゲーション装置は、環状交差点に自車両が進入すると、その環状交差点に接続されている道路のうち自車両の直前に接続されている道路を地図データにおいて選択し、当該環状交差点と選択した道路との位置関係に基づいてオフセット方向を決定し、決定したオフセット方向に基づいて、当該環状交差点と選択した道路との接続点を少なくとも含む地図範囲を決定する。こうして決定した地図範囲を有する接続道路地図40を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて使用される地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環状交差点における車両の進行方向をユーザにとって分かりやすく案内するための様々な地図表示方法が提案されている。たとえば特許文献1には、環状交差点を拡大した地図上に車両の脱出経路となる分岐路の方向を示す矢印を重畳表示することで、その分岐路が車両から見てどの方向に存在するかをユーザが容易に把握できるようにしたナビゲーション装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−115530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両を運転しているユーザは、環状交差点を通過した後の車両の進行方向を確認するために、環状交差点の先に繋がっている道路の様子を把握したいと考えることがある。しかし、特許文献1に記載されたような地図表示方法では、環状交差点から分岐路へ進むときの方向が矢印で示されるのみであるため、そこから先の道路の様子を把握するのはユーザにとって困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車載地図表示装置は、座標情報がそれぞれ設定された複数の点を繋げて構成される道路の情報を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、複数の道路が接続されている環状交差点に車両が接近したか否かを判定する接近判定手段と、接近判定手段により車両が接近したと判定された環状交差点に接続されている複数の道路のうち少なくともいずれか1つの道路を地図データにおいて選択する道路選択手段と、環状交差点と道路選択手段により選択された道路との位置関係に基づいてオフセット方向を決定するオフセット方向決定手段と、オフセット方向決定手段により決定されたオフセット方向に基づいて、環状交差点と道路選択手段により選択された道路との接続点を少なくとも含む地図範囲を決定する地図範囲決定手段と、地図データに基づいて、地図範囲決定手段により決定された地図範囲を有する第1の地図を車両に搭載された表示手段に表示させる地図表示制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、環状交差点の先に繋がっている道路の様子を容易に把握できる地図を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態による車載地図表示装置の適用例であるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】案内中の車両が環状交差点に近づいたときの地図画面の表示例を示す図である。
【図3】案内中の車両が環状交差点に進入した直後の地図画面の表示例を示す図である。
【図4】案内中の車両が環状交差点内を走行しているときの地図画面の表示例を示す図である。
【図5】案内中の車両が環状交差点内を走行しているときの他の地図画面の表示例を示す図である。
【図6】案内中でない車両が環状交差点に進入する前の地図画面の表示例を示す図である。
【図7】案内中でない車両が環状交差点に進入した直後の地図画面の表示例を示す図である。
【図8】案内中でない車両が環状交差点内を走行しているときの地図画面の表示例を示す図である。
【図9】案内中でない車両が環状交差点内を走行しているときの他の地図画面の表示例を示す図である。
【図10】本発明による処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態による車載地図表示装置の適用例であるナビゲーション装置について以下に説明する。図1のブロック図にその構成を示すナビゲーション装置1は、制御部10、振動ジャイロ11、車速センサ12、ハードディスクドライブ(HDD)13、GPS(Global Positioning System)受信部14、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)情報受信部15、表示モニタ16、スピーカ17および入力装置18を備えている。なお、ナビゲーション装置1は、車両に搭載されて使用されるものである。
【0009】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD13に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、目的地を設定する際の目的地の検索処理、設定された目的地までの推奨経路の探索処理、自車両の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、音声出力処理などが制御部10によって実行される。
【0010】
振動ジャイロ11は、自車両の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ12は、自車両の走行速度を検出するためのセンサである。これらのセンサにより自車両の運動状態を所定の時間間隔ごとに検出することにより、制御部10において自車両の移動方向および移動量が求められる。
【0011】
HDD13は不揮発性の記録媒体であり、制御部10において上記のような処理を実行するための制御プログラムや地図データなどが記録されている。HDD13に記録されているデータは、必要に応じて制御部10の制御により読み出され、制御部10が実行する様々な処理や制御に利用される。
【0012】
HDD13に記録された地図データは、経路計算データと、道路データと、背景データとを含む。経路計算データは、目的地までの推奨経路を探索する際などに用いられるデータである。道路データは、道路の形状や種別などを表すデータである。道路データにおいて、各道路は後述するようにノードや形状補間点と呼ばれる点を複数繋げることによって構成されている。背景データは、地図の背景を表すデータである。なお、地図の背景とは、地図上に存在する道路以外の様々な構成物である。たとえば、河川、鉄道、緑地帯、各種構造物などが背景データによって表される。
【0013】
地図データにおいて各道路の最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、各道路は所定の道路区間にそれぞれ対応する複数のリンクによって構成されており、リンク単位で経路計算データおよび道路データが表現されている。なお、道路データにおいて各リンクの両端には、座標情報がそれぞれ設定されたノードと呼ばれる点が設けられている。また、各リンクの途中には形状補間点と呼ばれる点が必要に応じて設けられている。各形状補間点には、ノードと同様に座標情報がそれぞれ設定されている。これらの点を順に繋げることにより、道路データにおいて道路の形状が表される。
【0014】
一方、経路計算データには、各道路区間に対応するリンクごとに、車両が当該道路区間を走行する際の通過所要時間等に応じたリンクコストが設定されている。このリンクコストに基づいて、予め設定された経路探索条件に応じたリンクの組合せを求めることにより、ナビゲーション装置1において推奨経路の探索が行われる。たとえば、移動時間の短さを最優先として経路探索を行うような経路探索条件が設定されている場合は、出発地から目的地までの通過所要時間が最小となるリンクの組合せが推奨経路として求められる。
【0015】
なお、上記ではナビゲーション装置1において地図データがHDD13に記録されている例を説明したが、これらをHDD以外の記録媒体に記録することとしてもよい。たとえば、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカードなどに記録された地図データを用いることができる。すなわち、本実施の形態によるナビゲーション装置では、どのような記録媒体を用いてこれらのデータを記憶してもよい。
【0016】
GPS受信部14は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、自車両の現在位置を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻に関する情報が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて、自車両の現在位置を制御部10において算出することができる。このGPS信号に基づく自車両の現在位置の算出結果と、前述の振動ジャイロ11および車速センサ12の各検出結果に基づく移動方向および移動量の算出結果とにより、制御部10において所定時間ごとに自車両の現在位置を検出するための位置検出処理が実行され、自車両の現在位置が検出される。
【0017】
VICS情報受信部15は、図示しないVICSセンターからナビゲーション装置1に対して送信されるVICS情報を受信する。このVICS情報をVICS情報受信部15が受信することにより、渋滞情報を始めとする様々な道路交通情報がナビゲーション装置1において取得される。VICS情報受信部15により受信されたVICS情報は、制御部10に出力され、渋滞情報の表示や推奨経路の探索などに利用される。
【0018】
なお、VICSセンターからナビゲーション装置1へのVICS情報の送信は、主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや、主に一般道路上に設置されている光ビーコン、またはFM多重放送によって行われる。電波ビーコンや光ビーコンは、その設置地点付近を通過する車両に対して、電波あるいは光(赤外線)により局所的にVICS情報を送信するものである。これに対して、FM多重放送では比較的広い地域に対してVICS情報を送信することができる。
【0019】
表示モニタ16は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ16により、地図画面の表示や推奨経路の案内表示などが行われる。表示モニタ16に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ16は、たとえば自車両のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0020】
スピーカ17は、制御部10の制御により様々な音声情報を出力する。たとえば、推奨経路に従って自車両を目的地まで案内するための経路案内用の音声や、各種の警告音などがスピーカ17から出力される。
【0021】
入力装置18は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザは、入力装置18を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、推奨経路の探索条件を設定したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置18は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、入力装置18を表示モニタ16と一体化されたタッチパネルとしてもよい。
【0022】
ユーザが入力装置18を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、前述のようにして検出された自車両の現在位置を出発地として、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算による経路探索処理を行う。この処理により、出発地から目的地まで至る推奨経路を探索する。さらにナビゲーション装置1は、たとえば色を変える等の方法により、表示モニタ16に表示された地図上において他の道路と識別可能な形態で探索された推奨経路を表示する。そして、推奨経路に従って所定の画像情報や音声情報を表示モニタ16やスピーカ17から出力することにより、自車両を目的地まで案内する。
【0023】
次に本発明の特徴について説明する。本発明による車載地図表示装置は、環状交差点に対する地図の表示方法に特徴を有している。これをナビゲーション装置1において適用した具体例を以下に図2〜9を参照して説明する。なお、環状交差点とは、環状の道路に対して放射状に複数の道路が接続されている交差点のことであり、ランナバウト(ラウンドアバウト、roundabout)またはロータリーとも呼ばれる。放射状の道路のうちいずれかを通って環状交差点に進入した自車両は、環状の道路を所定の方向に走行して次に進むべき道路が接続されている地点まで到達し、その地点から当該道路へと脱出することで、環状交差点を通過することができる。
【0024】
自車両が環状交差点に近づくと、ナビゲーション装置1は、その環状交差点の先に繋がっている道路の様子をユーザが容易に把握できるようにするための地図を表示モニタ16に表示する。この地図表示は、推奨経路に従って自車両を目的地まで案内している場合としていない場合とで、それぞれ異なる内容で行われる。
【0025】
自車両を目的地まで案内している場合の地図画面の例を図2〜5に示す。この場合、自車両が環状交差点に近づくと、最初に図2に示すような地図画面が表示モニタ16において表示される。この地図画面は左右に2分割されており、左側の画面には、環状交差点を拡大および簡略化して示した交差点拡大図20が表示されている。一方、右側の画面には、自車両の位置に応じて地図範囲が設定された環状交差点付近の地図30が所定の地図縮尺で表示されている。交差点拡大図20と地図30には、推奨経路が他の道路とは異なる色や異なる太さの線を用いてそれぞれ表示されると共に、自車両の位置を示す自車位置マーク21がそれぞれ重ねて表示されている。また、地図30の上には、縮尺を示すスケール31も表示されている。
【0026】
自車両が環状交差点に進入すると、次に図3に示すような地図画面が表示モニタ16において表示される。この地図画面では、図2と同様の交差点拡大図20および地図30に加えて、さらに環状交差点に接続されている道路の様子を表すための地図(以下、接続道路地図と称する)40が表示されている。なお、図2と比べて図3の交差点拡大図20は、自車両の移動に応じて自車位置マーク21の表示位置および表示方向が変化している。一方、地図30は、自車両の移動に応じて地図範囲および自車位置マーク21の表示方向が変化している。交差点拡大図20および地図30の向きは、自車両の進行方向に関わらず固定されている。ここでは交差点拡大図20および地図30の向きを固定して自車位置マーク21の表示方向を変化させるようにしたが、これとは反対に、自車位置マーク21の表示方向を固定して交差点拡大図20および地図30のいずれか少なくとも一方の向きを変化させてもよい。
【0027】
図3に示すように、接続道路地図40は、環状交差点の略中心が地図範囲の中心に一致する位置を基準として、そこから画面の上方向に向かってオフセットされている。すなわち、環状交差点よりも下側にある部分がより多く表示されるように地図範囲が設定されている。これにより、環状交差点に接続されている各道路のうち、自車両の前方において次に環状交差点に接続されている道路、ここでは符号41に示す道路がなるべく多く地図範囲内に含まれるようにしている。
【0028】
接続道路地図40のオフセット方向は、環状交差点と道路41との位置関係に基づいて決定することができる。すなわち、図3から分かるように、道路41は全体的に見て環状交差点から画面下方向に向かってより多く延びているため、制御部10において、これとは反対の上方向をオフセット方向に決定する。こうして決定されたオフセット方向にしたがって、接続道路地図40をオフセットして表示する。
【0029】
また、接続道路地図40において、自車両の前方で環状交差点に接続されている道路のうち自車両から近い順に3つの道路、ここでは前述の道路41および道路42、43については、各々が別々の表示形態により、他の道路とは異なる表示形態でそれぞれ表示される。すなわち、図3の例では、道路41、42および43がそれぞれ異なる種類の点線を用いて表示されており、他の道路は実線で表示されている。なお、ここでは点線の種類を変えることで各道路の表示形態を変化させることとしたが、他の方法により各道路の表示形態を変化させてもよい。たとえば、線の色、輝度、太さなどを変えることにより、各道路の表示形態を互いに変化させることができる。
【0030】
なお、接続道路地図40の地図縮尺は、地図30よりも小さい地図縮尺、すなわちより広域側の地図縮尺とすることが好ましい。これにより、環状交差点からオフセット方向と反対側に延びる各道路を地図30よりも広い範囲について接続道路地図40にそれぞれ表示することができる。したがって、これらの各道路の様子をユーザにとって把握しやすくすることができる。
【0031】
自車両が環状交差点内を走行して道路41との接続点を通過すると、次に図4に示すような地図画面が表示モニタ16において表示される。この地図画面における接続道路地図40は、図3のものとは異なり、画面の左上方向に向かってオフセットされている。こうしたオフセット方向の変更は、自車両が環状交差点と道路41との接続点を通過したことで、自車両の前方において次に環状交差点に接続されている道路が道路41から道路42へと変更したためである。すなわち、道路42は全体的に見て環状交差点から画面右下方向に向かってより多く延びているため、これとは反対の左上方向に接続道路地図40がオフセットして表示される。このように、自車両が環状交差点内を走行して他の道路との接続点を通過すると、その度ごとに制御部10においてオフセット方向の決定に用いる対象道路を変えてオフセット方向を決定し直す。その結果、オフセット方向が変化した場合は、接続道路地図40の地図範囲を変更する。
【0032】
また、図4の接続道路地図40では、道路42、43および44が図3の道路41、42および43とそれぞれ同じ表示形態でそれぞれ表示されている。すなわち、環状交差点と道路41との接続点を通過した後の自車両の位置から近い順に3つの道路42、43および44が選択され、それぞれが図3と同様に他の道路とは異なる表示形態で接続道路地図40に表示される。
【0033】
さらに自車両が環状交差点内を走行すると、図5に示すような地図画面が表示モニタ16において表示される。この地図画面における接続道路地図40は、自車両の前方において次に環状交差点に接続されている道路45が環状交差点から延びている方向とは反対に、画面の右下方向に向かってオフセットされている。また、自車両から近い順に3つの道路45、46および47が他の道路とはそれぞれ異なる表示形態で表示されている。
【0034】
自車両が環状交差点を通過した後は、以上説明したような地図画面の表示が終了され、通常の地図画面、すなわち地図30が表示モニタ16において画面全体に表示され、交差点拡大図20や接続道路地図40は表示されない地図画面へと戻る。
【0035】
次に、自車両を目的地まで案内していない場合の地図画面の例を図6〜9に示す。この場合、自車両が環状交差点に進入する前には、図6に示すような地図画面が表示モニタ16において表示される。この地図画面と図2の地図画面とを比べると、図6では図2の交差点拡大図20が表示されておらず、環状交差点付近の地図30のみが画面全体に表示されている。なお、自車両を目的地まで案内していない場合は推奨経路が設定されていないため、図6の地図30において推奨経路は表示されない。この点は図7〜9の各地図画面における地図30でも同様である。
【0036】
自車両が環状交差点に進入すると、次に図7に示すような地図画面が表示モニタ16において表示される。この地図画面は左右に2分割されており、左側の画面には図3と同様の接続道路地図40が、右側の画面には図3と同様の地図30がそれぞれ表示されている。なお、図3のものと比べて図7の接続道路地図40は、画面範囲に応じてより広い地図範囲を有している。
【0037】
自車両が環状交差点内を走行して道路41との接続点を通過すると、次に図8に示すような地図画面が表示モニタ16において表示される。この地図画面には、図4と同様の接続道路地図40と地図30が左右にそれぞれ表示されている。なお、図7で説明したのと同様に、図4のものと比べて図8の接続道路地図40は、画面範囲に応じてより広い地図範囲を有している。
【0038】
さらに自車両が環状交差点内を走行すると、図9に示すような地図画面が表示モニタ16において表示される。この地図画面には、図5と同様の接続道路地図40と地図30が左右にそれぞれ表示されている。なお、図7および8で説明したのと同様に、図5のものと比べて図9の接続道路地図40は、画面範囲に応じてより広い地図範囲を有している。
【0039】
自車両が環状交差点を通過した後は、以上説明したような地図画面の表示が終了され、通常の地図画面、すなわち図6のように地図30が表示モニタ16において画面全体に表示された地図画面へと戻る。
【0040】
以上説明したような地図画面を表示するための処理のフローチャートを図10に示す。このフローチャートは、ナビゲーション装置1において制御部10により実行されるものである。
【0041】
ステップS10において、制御部10は、自車両が環状交差点に近づいたか否かを判定する。この判定は、制御部10において所定時間ごとに実行される前述の位置検出処理によって検出された自車両の現在位置と、HDD13に記憶されている地図データとに基づいて行われる。自車両が走行している道路の前方に環状交差点が接続されており、自車両の現在位置からその環状交差点までの距離が所定値未満であれば、制御部10は自車両が環状交差点に近づいたと判定してステップS20へ進む。
【0042】
ステップS20において、制御部10は、自車両を目的地まで案内中であるか否かを判定する。ナビゲーション装置1において目的地の設定および推奨経路の探索が既に行われており、その推奨経路に従って自車両を目的地まで案内中の場合、制御部10はステップS30へ進む。一方、自車両を目的地まで案内中ではない場合、制御部10はステップS30をとばしてステップS40へ進む。
【0043】
ステップS30において、制御部10は、ステップS10で自車両が近づいたと判定された環状交差点の交差点拡大図を表示モニタ16に表示させる。これにより、たとえば図2の交差点拡大図20が表示モニタ16において表示される。
【0044】
ステップS40において、制御部10は、ステップS10で自車両が近づいたと判定された環状交差点について、自車両がその環状交差点に進入したか否かを判定する。この判定もステップS10と同様に、制御部10において所定時間ごとに実行される位置検出処理によって検出された自車両の現在位置と、HDD13に記憶されている地図データとに基づいて行われる。自車両がそれまで走行していた道路と環状交差点との接続点を自車両が通過したら、制御部10は自車両が環状交差点に進入したと判定してステップS50へ進む。
【0045】
ステップS50において、制御部10は、環状交差点に対して自車両の直前に接続されている道路、すなわち自車両の前方において次に環状交差点に接続されている道路を、HDD13に記録されている地図データにおいて選択する。これにより、たとえば図3、7の道路41が地図データにおいて選択される。
【0046】
ステップS60において、制御部10は、ステップS50で選択した道路を構成するノードや形状補間点の中から、オフセット方向の算出に用いる対象点を抽出する。ここでは、たとえば当該道路と環状交差点との接続点から所定範囲内、たとえば500m以内にある当該道路のノードと形状補間点を全て対象点として抽出することができる。または、その接続点から近い順に当該道路の所定数、たとえば3つのノードと形状補間点を対象点として抽出するようにしてもよい。これらの抽出方法を組み合わせて使用してもよい。なお、対象点を抽出する範囲や数は、接続道路地図40の縮尺や道路の形状などに基づいて決定されることが好ましい。
【0047】
ステップS70において、制御部10は、ステップS60で抽出した各対象点の座標情報がそれぞれ表す位置に基づいて、ステップS50で選択した道路が環状交差点から延びている方向を算出する。ここでは、たとえば、地図データに基づいて環状交差点の略中心の位置を求め、この中心位置に対して各対象点が位置する方向をそれぞれ算出する。そして、各対象点について算出された方向を所定数の基準方向、たとえば8つの基準方向にそれぞれ分類し、最も多くの対象点が分類された基準方向を、ステップS50で選択した道路が環状交差点から延びている方向として求める。
【0048】
たとえば、環状交差点の中心位置Cの座標を(X,Y)、対象点Pの位置座標を(X,Y)とそれぞれ表す。ここで、nは1以上の整数であり、対象点の数に応じてnがとりうる値の範囲が決定される。このようにした場合、中心位置Cに対する対象点Pの方向を表す角度θは、以下の式(1)により求められる。
【0049】
θ=tan−1{(Y−Y)/(X−X)} ・・・(1)
【0050】
上記の式(1)により求められたθと、各基準方向に対応して予め定められた各基準角度とを比較し、θの値に最も近い基準角度を求めることで、対象点Pの方向を分類することができる。たとえば、基準方向を8方向とした場合は、0°,45°,90°,135°,180°,225°,270°および315°のように各基準角度を設定することができる。そして、たとえばθ=40°である場合、これに最も近い基準角度である45°に対象点Pの方向を分類することができる。
【0051】
以上説明したようにして、全ての対象点Pについて角度θをそれぞれ算出し、各算出結果を基準角度とそれぞれ比較することで、各対象点Pの方向を基準方向に応じて分類することができる。こうして分類された対象点Pの数が最も多い基準角度の方向が、ステップS50で選択した道路が環状交差点から延びている方向として求められる。
【0052】
ステップS80において、制御部10は、ステップS70で算出した方向に基づいてオフセット方向を決定する。ここでは、ステップS70で算出した方向と反対の方向、すなわちステップS50で選択した道路が環状交差点から延びている方向と反対の方向をオフセット方向として決定する。このようにすることで、環状交差点の略中心の位置と、ステップS60で抽出した各対象点の座標情報がそれぞれ表す位置とに基づいて、オフセット方向を決定することができる。すなわち、環状交差点とステップS50で選択した道路との位置関係に基づいてオフセット方向を決定することができる。
【0053】
ステップS90において、制御部10は、ステップS80で決定したオフセット方向に基づいて地図範囲を決定する。ここでは、環状交差点の略中心が地図範囲の中心からオフセット方向に所定距離だけずれた位置となるように地図範囲を決定する。なお、このとき環状交差点とステップS50で選択した道路との接続点が少なくとも含まれるような地図範囲とすることが好ましい。
【0054】
ステップS100において、制御部10は、HDD13に記憶されている地図データに基づいて、ステップS90で決定した地図範囲を有する接続道路地図を表示モニタ16に表示させる。これにより、たとえば図3、7の接続道路地図40が表示モニタ16において表示される。
【0055】
ステップS110において、制御部10は、自車両が環状交差点を通過したか否かを判定する。この判定もステップS10およびS40と同様に、制御部10において所定時間ごとに実行される位置検出処理によって検出された自車両の現在位置と、HDD13に記憶されている地図データとに基づいて行われる。自車両が環状交差点をまだ走行中である場合、制御部10はステップS120へ進む。一方、自車両が環状交差点から接続されている道路のいずれかに進入したら、制御部10は自車両が環状交差点を通過したと判定してステップS130へ進む。
【0056】
ステップS120において、制御部10は、環状交差点に接続されているいずれかの道路における接続点を自車両が通過したか否かを判定する。接続点を通過したら制御部10はステップS50へ戻り、前述のような処理を再び行う。これにより、自車両の前方において次に環状交差点に接続されている道路が改めてステップS50において選択され、その選択結果に基づいて接続道路地図40が更新される。一方、接続点をまだ通過していなければ、制御部10はステップS110へ戻る。
【0057】
ステップS130において、制御部10は、ステップS100で表示した接続道路地図40を表示モニタ16から消去する。さらに、ステップS30において交差点拡大図20を表示していた場合は、その交差点拡大図も表示モニタ16から消去する。これにより、環状交差点に接近する前に表示されていた通常の地図画面へと戻る。ステップS130を実行したらステップS10へ戻り、自車両が次の環状交差点に近づくまで待機する。
【0058】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、次の作用効果を奏することができる。
【0059】
(1)ナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、複数の道路が接続されている環状交差点に自車両が接近したか否かを判定し(ステップS10)、接近したと判定した環状交差点に自車両が進入すると、その環状交差点に接続されている道路のうち自車両の直前に接続されている道路を地図データにおいて選択する(ステップS50)。そして、当該環状交差点とステップS50で選択した道路との位置関係に基づいてオフセット方向を決定し(ステップS80)、決定したオフセット方向に基づいて、当該環状交差点とステップS50で選択した道路との接続点を少なくとも含む地図範囲を決定する(ステップS90)。こうして決定した地図範囲を有する接続道路地図40を、HDD13に記憶された地図データに基づいて表示モニタ16に表示させる(ステップS100)。このようにしたので、環状交差点の先に繋がっている道路の様子を容易に把握できる接続道路地図を表示モニタ16において表示することができる。
【0060】
(2)制御部10は、ステップS50で選択した道路を構成する複数のノードおよび形状補間点のうち、いずれか少なくとも1つを地図データにおいて対象点として抽出する(ステップS60)。ステップS80では、環状交差点の略中心の位置と、ステップS60で抽出した各対象点の座標情報がそれぞれ表す位置とに基づいて、オフセット方向を決定する。すなわち、これらの各位置に基づいて、ステップS50で選択した道路が環状交差点から延びている方向を算出し(ステップS70)、その方向と反対の方向をステップS80においてオフセット方向として決定するようにした。これにより、ステップS50で選択した道路がなるべく多く地図範囲内に含まれるようにオフセット方向を決定することができる。
【0061】
(3)ステップS60では、ステップS50で選択した道路を構成する複数のノードおよび形状補間点のうち、その道路と環状交差点との接続点から所定範囲内にあるノードおよび形状補間点、またはその接続点から近い順に所定数のノードおよび形状補間点を、地図データにおいて対象点として抽出することができる。このようにすれば、表示される接続道路地図の縮尺や道路の形状などに応じて対象点の抽出範囲または抽出数を決定し、オフセット方向を決定するのに適切な対象点を抽出することができる。
【0062】
(4)ステップS50では、自車両の前方において次に環状交差点に接続されている道路を選択するようにした。これにより、次の道路を曲がるべきか否かの判断に役立つ接続道路地図をユーザに提供することができる。
【0063】
(5)ステップS100で表示モニタ16に表示される接続道路地図40において、自車両の前方で環状交差点に接続されている道路のうち自車両から近い順に所定数の道路については、他の道路とは異なる表示形態で表示される。さらに、これらの道路は互いに異なる表示形態でそれぞれ表示される。このようにしたので、自車両がこれから進行可能な道路を接続道路地図においてユーザに容易に判断させることができる。
【0064】
(6)制御部10は、ステップS40で自車両が環状交差点に進入したと判定すると、ステップS100において接続道路地図40を表示する。その後、ステップS110で自車両が環状交差点を通過したと判定すると、表示した接続道路地図40を表示モニタ16から消去する(ステップS130)。このようにして、自車両が環状交差点を走行しているときに接続道路地図40を表示モニタ16に表示させるようにしたので、その表示タイミングを状況に応じて適切に制御することができる。
【0065】
(7)制御部10は、接続道路地図40と、自車両の現在位置に応じた地図範囲を有する地図30とを表示モニタ16に同時に表示させる。このとき、地図30よりも小さい地図縮尺で接続道路地図40を表示モニタ16に表示させるようにした。これにより、自車両周囲の道路の様子と、環状交差点の先に繋がっている道路の様子とを、ユーザに同時に把握させることができる。
【0066】
−変形例−
以上説明した実施の形態は、次のように変形することもできる。
【0067】
(変形例1)ステップS50において、自車両の前方において次に環状交差点に接続されている道路以外の道路を選択してもよい。たとえば、目的地までの推奨経路が予め設定されており、その推奨経路に基づいて自車両が目的地まで案内されているときに、その推奨経路が環状交差点を通っているような場合は、当該環状交差点から先に続く推奨経路の道路をステップS50において選択することができる。このようにすれば、自車両が環状交差点を通過した後に進むべき道路を主な対象として接続道路地図を表示し、その道路の様子をユーザに事前に把握させることができる。あるいは、これ以外の道路を選択してもよいし、複数の道路を同時に選択してもよい。すなわちステップS50では、予め設定された任意の選択条件に応じて、環状交差点に接続されている複数の道路のうち少なくともいずれか1つの道路を地図データにおいて選択することができる。
【0068】
(変形例2)上記のような接続道路地図の表示方法を環状交差点以外の交差点において適用してもよい。複数の道路が接続されており、自車両がその交差点内を走行することで各接続道路との接続点に順次到達可能な交差点である限り、同様の地図表示方法が適用可能である。
【0069】
(変形例3)上記実施の形態ではナビゲーション装置1における適用例を説明したが、ナビゲーション装置以外の車載地図表示装置において適用してもよい。地図データを記憶しており、その地図データに基づいて車両に搭載された表示モニタに地図を表示するものである限り、どのような車載地図表示装置についても本発明を適用可能である。
【0070】
なお、以上説明した実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1:ナビゲーション装置、10:制御部、11:振動ジャイロ、12:車速センサ、
13:HDD、14:GPS受信部、15:VICS情報受信部、16:表示モニタ、
17:スピーカ、18:入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標情報がそれぞれ設定された複数の点を繋げて構成される道路の情報を含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
複数の道路が接続されている環状交差点に車両が接近したか否かを判定する接近判定手段と、
前記接近判定手段により前記車両が接近したと判定された環状交差点に接続されている前記複数の道路のうち少なくともいずれか1つの道路を前記地図データにおいて選択する道路選択手段と、
前記環状交差点と前記道路選択手段により選択された道路との位置関係に基づいてオフセット方向を決定するオフセット方向決定手段と、
前記オフセット方向決定手段により決定されたオフセット方向に基づいて、前記環状交差点と前記道路選択手段により選択された道路との接続点を少なくとも含む地図範囲を決定する地図範囲決定手段と、
前記地図データに基づいて、前記地図範囲決定手段により決定された地図範囲を有する第1の地図を前記車両に搭載された表示手段に表示させる地図表示制御手段とを備えることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載地図表示装置において、
前記道路選択手段により選択された道路を構成する複数の点のうちいずれか少なくとも1つの点を前記地図データにおいて抽出する抽出手段をさらに備え、
前記オフセット方向決定手段は、前記環状交差点の略中心の位置と、前記抽出手段により抽出された各点の座標情報がそれぞれ表す位置とに基づいて、前記オフセット方向を決定することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載地図表示装置において、
前記抽出手段は、前記道路選択手段により選択された道路を構成する複数の点のうち、前記接続点から所定範囲内にある点または前記接続点から近い順に所定数の点を前記地図データにおいて抽出することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記道路選択手段は、前記車両の前方において次に前記環状交差点に接続されている道路を選択することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
予め設定された推奨経路に基づいて前記車両を案内する車両案内手段をさらに備え、
前記道路選択手段は、前記推奨経路が前記環状交差点を通るときに、前記環状交差点から先に続く前記推奨経路の道路を選択することを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記地図表示制御手段は、前記第1の地図において、前記車両の前方で前記環状交差点に接続されている道路のうち前記車両から近い順に所定数の道路については、他の道路とは異なる表示形態で前記表示手段に表示させることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車載地図表示装置において、
前記地図表示制御手段は、前記第1の地図において、前記所定数の道路を互いに異なる表示形態で前記表示手段にそれぞれ表示させることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記地図表示制御手段は、前記車両が前記環状交差点内を走行しているときに前記第1の地図を前記表示手段に表示させることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の車載地図表示装置において、
前記地図表示制御手段は、前記第1の地図と、前記車両の現在位置に応じた地図範囲を有する第2の地図とを前記表示手段に同時に表示させることを特徴とする車載地図表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車載地図表示装置において、
前記地図表示制御手段は、前記第2の地図よりも小さい地図縮尺で前記第1の地図を前記表示手段に表示させることを特徴とする車載地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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