説明

車載情報システム

【課題】個人が所有するモバイル機器を用いてネットワーク接続された複数の車載機器にアクセスできる車載情報システムを提供する。
【解決手段】車内LAN7に接続された複数の車載機器1、2、3、4、5と、車内LANに接続されて外部と通信する外部通信ユニット6と、外部通信ユニットに通信で接続することにより複数の車載機器にアクセスする複数のモバイル機器8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に適用される車載情報システムに関し、特に車載情報システムの利便性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載情報システムの1つとして、車内LAN(Local Area Network)に、例えばナビゲーション装置、モニタ、AV(Audio Visual)機器といった複数の車載機器を接続し、これら複数の車載機器が相互に通信しながらナビゲーション、または、映画または音楽の鑑賞などを可能にした車載情報システムが開発されている。
【0003】
しかしながら、現状では、複数のモニタが接続された車載情報システムは少ない。特に、定員が7〜8名といった多人数が乗車可能な乗用車では、座席が例えば3列に配置されており、最後部の座席から前方に取り付けられているモニタを見たり、操作することは困難である。その一方、通常は車両を1人または2名程度の乗車人数で使用し、後部座席にほとんど人が乗ることのない車両にとっては、使用頻度の低い後部座席にまでモニタを取り付けるのは不経済である。
【0004】
そこで、外部の機器を利用して車載情報システムの利便性を高める技術が開発されている。例えば、特許文献1は、乗車前に車外のモバイル機器から車載のナビゲーション装置に対して目的地または経由地などを設定できる車載情報システムを開示している。
【0005】
【特許文献1】特開2003−329474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示された技術では、車載のナビゲーション装置に対して単一の利用者からの通信を前提としており、乗車中の複数の利用者からの通信を想定していない。したがって、乗車中の複数の利用者が通信により車載情報システムにアクセスできる技術の開発が望まれている。
【0007】
この発明は、上述した要請に応えるためになされたものであり、その課題は、個人が所有するモバイル機器を用いてネットワーク接続された複数の車載機器にアクセスできる車載情報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明に係る車載情報システムは、車内LANに接続された複数の車載機器と、車内LANに接続されて外部と通信する外部通信ユニットと、外部通信ユニットに通信で接続することにより複数の車載機器にアクセスする複数のモバイル機器とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る車載情報システムによれば、外部から持ち込んだモバイル機器を外部通信ユニットに通信で接続することにより、車内LANに接続されている複数の車載機器にアクセスし、これらの車載機器に表示される情報を入手したり、また、これらの車載機器を操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る車載情報システムの構成を示すブロック図である。この車載情報システムは、ナビゲーション装置1、表示制御装置2、アンプ3、AV機器4、車載カメラ5および外部通信ユニット6といった車載機器が車内LAN7に接続されて構成されている。なお、図1に示す車載情報システムは、リング型LANを用いた場合を示しているが、図2に示すようなバス型LANを用いることもできる。なお、LANとしては、ケーブルを用いた有線LANまたは無線LANを使用することができる。また、複数の車載機器の間は、Bluetoothを用いて接続するように構成することもできる。
【0011】
ナビゲーション装置1は、経路探索または経路案内といったナビゲーション機能を実現するための処理を実行する。このナビゲーション装置1による処理結果は、車内LAN7を介して表示制御装置2、アンプ3および外部通信ユニット6に送られる。
【0012】
表示制御装置2には、モニタ2aが接続されている。表示制御装置2は、ナビゲーション装置1、AV機器4、車載カメラ5および外部通信ユニット6から車内LAN7を介して送られてくる映像信号に基づき描画信号を生成し、モニタ2aに送る。モニタ2aは、この発明における「ナビゲーション装置のモニタ」に対応し、表示制御装置2から送られてくる描画信号に基づき映像を表示する。
【0013】
アンプ3にはスピーカ3aが接続されている。アンプ3は、ナビゲーション装置1、AV機器4または外部通信ユニット6から車内LAN7を介して送られてくる音声信号を増幅し、スピーカ3aに送る。スピーカ3aは、アンプ3から送られてくる増幅された音声信号に応じて音を発生する。
【0014】
AV機器4は、例えばDVD(Digital Versatile Disk)プレーヤー、DTV(Digital Television)またはゲーム機などから構成されている。DVDプレーヤーは、装着されたDVDに記録されているデータを再生して映像信号および音声信号を生成し、表示制御装置2、アンプ3および外部通信ユニット6に送る。DTVは、受信した電波に基づき映像信号および音声信号を生成し、表示制御装置2、アンプ3および外部通信ユニット6に送る。ゲーム機は、記録媒体に記録されたデータを再生して映像信号および音声信号を生成し、表示制御装置2、アンプ3および外部通信ユニット6に送る。
【0015】
車載カメラ5は、自車の周囲を撮影する。この撮影により得られた画像は、映像信号として表示制御装置2に送られる。
【0016】
外部通信ユニット6には、複数のモバイル機器8がケーブル、赤外線、または、例えばBluetoothといった微弱電波などを用いた通信方式によって接続される。外部通信ユニット6は、外部のモバイル機器8との間で行われる有線通信、赤外線通信または微弱電波による通信を制御する。モバイル機器8としては、パーソナルコンピュータ、携帯電話またはPDA(Personal Digital Assistant)などを用いることができる。
【0017】
現在、広く使用されているBluetoothの通信速度は、およそ1〜3Mbpsである。これに対し、AV機器4として使用されるワンセグ(DTV)は128〜192kbps、ビデオCDは1150〜1374kbps、DVD−Videoは9.8Mbps、フルセグ(DTV)は15Mbpsである。したがって、外部通信ユニット6と複数のモバイル機器8とをBluetoothで接続する場合は、ワンセグ(DTV)およびビデオCDのデータはそのまま送信可能であるが、DVD−Videoおよびフルセグ(DTV)のデータは、圧縮処理または間引き処理が行われる。
【0018】
この場合、Bluetoothの代わりに、外部通信ユニット6と複数のモバイル機器8とを、現在普及しつつあるUWB(Ultra Wide Band)と呼ばれる無線通信方式を用いて接続すれば、DVD−Videoおよびフルセグ(DTV)のデータもそのまま送信可能である。
【0019】
なお、モバイル機器8は、カードスロットなどを利用して外部通信ユニット6に接続するように構成することもできる。また、外部通信ユニット6は、いずれかの車載機器に内蔵するように構成することもできるし、いずれかの車載機器にコネクタなどを用いて取り付けるように構成することもできる。
【0020】
次に、外部通信ユニット6の詳細を説明する。図3は、外部通信ユニット6の構成を示すブロック図である。この外部通信ユニット6は、LAN通信制御部11、モバイル通信制御部12、一時記憶部13、ID管理部14、表示データ生成部15および状態管理部16から構成されている。
【0021】
LAN通信制御部11は、車内LAN7に接続されている車載機器との間の通信を制御する。具体的には、LAN通信制御部11は、車載機器から車内LAN7を介して送られてくるデータを受信して状態管理部16に送るとともに、状態管理部16から送られてくるデータを、車内LAN7を介して車載機器に送信する。
【0022】
モバイル通信制御部12は、複数のモバイル機器8との間の通信を制御する。具体的には、モバイル通信制御部12は、複数のモバイル機器8からのデータを受信して状態管理部16に送るとともに、状態管理部16から送られてくるデータを複数のモバイル機器8に送信する。
【0023】
一時記憶部13は、状態管理部16から送られてくるデータを一時的に記憶する。この一時記憶部13に記憶されているデータは、状態管理部16によって読み出される。ID管理部14は、複数のモバイル機器8の各々に付与された固有番号(ID)を管理する。このID管理部14に記憶されているIDは、状態管理部16によって読み出される。
【0024】
表示データ生成部15は、状態管理部16から送られてくるデータに基づき表示データを生成する。この表示データ生成部15で生成された表示データは、状態管理部16に送られる。状態管理部16は、LAN通信制御部11、モバイル通信制御部12、一時記憶部13、ID管理部14および表示データ生成部15を制御する。この状態管理部16で行われる処理の詳細は後述する。
【0025】
上記のように構成される外部通信ユニット6の動作を、「車載機器からモバイル機器へのデータ送信手順」と「モバイル機器から車載機器へのコマンド送信手順」とに分けて説明する。
【0026】
(1)車載機器からモバイル機器へのデータ送信手順
(1−1)LAN通信制御部11は、車内LAN7に接続されている車載機器からのデータを受信する。
(1−2)LAN通信制御部11は、受信したデータを状態管理部16へ送る。
(1−3)状態管理部16は、車内LAN7に接続されている車載機器のいずれから送られてきたデータであるかを判別し、そのデータを一時記憶部13に送って車載機器毎に記憶する。
(1−4)状態管理部16は、モバイル機器8から受信要求があった場合に、該当するデータを一時記憶部13から読み出し、モバイル通信制御部12を経由して、受信要求を行ったモバイル機器8に送信する。なお、受信要求を行ったモバイル機器8が複数存在する場合、受信要求の数だけ上述した処理が繰り返される。また、受信要求を行ったモバイル機器8が1つだけしか存在しない場合、車載機器から受け取ったデータを一時記憶部13に記憶することなく、そのまま受信要求を行ったモバイル機器8に送るように構成できる。また、受信要求を行ったモバイル機器8が存在しない場合、受信したデータを一時記憶部13に格納せずに終了し、次のデータの受信待ちに戻るように構成できる。
(1−5)受信要求を行ったモバイル機器にデータを送信した後、一時記憶部13に記憶されている送信済みのデータを消去する。この際、実際の動作としては、次のデータを受信した時に送信済みのデータに上書きし、データの消去動作を省略することもできる。
【0027】
(2)モバイル機器から車載機器へのコマンド送信手順
(2−1)モバイル通信制御部12は、モバイル機器8からのデータを受信する。
(2−2)モバイル通信制御部12は、受信したモバイル機器8からのデータを状態管理部16に送る。
(2−3)状態管理部16は、ID管理部14を参照してモバイル機器8のIDを確認し、受信したデータの内容およびモバイル機器8毎に管理している状態(モード)に応じて、表示データ生成部15で作成した画面データをモバイル機器8に送信し、または、一時記憶部13に記憶されている該当する車載機器のデータをモバイル機器8に送信し、または、該当する車載機器に対して操作要求を送信する。
(2−4)状態管理部16は、モバイル機器8から送信されてくるコマンドなどに応じて、モバイル機器8毎に管理している状態(モード)を更新する。
【0028】
ところで、モバイル機器8として携帯電話が用いられる場合は、携帯電話の表示部の表示領域が小さいので、例えばナビゲーション装置1で表示する地図をそのまま表示することは困難である。そこで、モバイル機器8として携帯電話が用いられる場合は、簡易画像を表示するように構成できる。
【0029】
図4は、簡易画像を表示するための外部通信ユニット6aの構成を示すブロック図である。この外部通信ユニット6aは、上述した外部通信ユニット6にデータ蓄積部17が追加されて構成されている。データ蓄積部17は、モバイル機器8用の簡易地図データを記憶している。
【0030】
状態管理部16は、ナビゲーション装置1からLAN通信制御部11を介して現在位置データを受信すると、この現在位置データによって示される位置の周辺の簡易地図データをデータ蓄積部17から表示データ生成部15を介して読み出し、モバイル通信制御部12を介してモバイル機器8に送信する。これにより、モバイル機器8(携帯電話)の表示部に簡易地図が表示される。なお、モバイル機器8から現在位置データが得られる場合は、その現在位置データによって示される位置の周辺の簡易地図データをデータ蓄積部17から表示データ生成部15を介して読み出し、モバイル通信制御部12を介してモバイル機器8に送信するように構成できる。
【0031】
なお、簡易地図データは、ナビゲーション装置1の内部に保持するように構成することもできる。この構成の場合、外部通信ユニット6は、モバイル機器8から地図データ表示の要求があると、その要求をナビゲーション装置1に送信する。地図データ表示の要求を受信したナビゲーション装置1は、自己が検出した現在位置の周辺の簡易地図データをモバイル用データ蓄積部(図示は省略する)から抽出し、外部通信ユニット6を介してモバイル機器8に送信する。
【0032】
次に、上記のように構成される、この発明の実施の形態1に係る車載情報システムの動作を説明する。
【0033】
図5は、この車載情報システムが適用された車室内のイメージを示す。複数のモバイル機器8と通信するための外部通信ユニット6は、車内LAN7に接続されており、車内LAN7を経由して、ナビゲーション装置(ナビ)1、モニタ2a、アンプ3、AV機器(DVD、DTV)4および車載カメラ5といった車載機器との間でデータの送受信を行うことができる。
【0034】
例えば、AV機器4としてのDVDプレーヤーでDVDを再生してモニタ2aで視聴している場合に、DVDプレーヤーからモニタ2aに送信されているデータを外部通信ユニット6で取得してモバイル機器8に送信することにより、車載のモニタ2aに表示される映像と同じ映像をモバイル機器8の表示部に表示させることができる。また、車載のモニタ2aでDVD以外の映像、例えば、ナビゲーション装置1、AV機器4としてのDTV、車載カメラ5などの映像が表示されている場合には、モバイル機器8から外部通信ユニット6および車内LAN7を経由して、DVDプレーヤーを操作し、DVDプレーヤーから外部通信ユニット6のみにDVDのデータを送信し、外部通信ユニット6は、DVDのデータをモバイル機器8に送信することにより、車載のモニタ2aに表示されている映像に影響を与えずに、モバイル機器8の表示部にDVDの映像を表示させることができる。
【0035】
次に、上述した車載情報システムの動作の概要を、シーケンス図を参照しながら説明する。図6は、ナビゲーション装置1で発生された情報をモバイル機器8に表示させる場合の通常時の動作を示すシーケンス図である。
【0036】
まず、外部通信ユニット6とモバイル機器8の通信のためのIDを一致させる操作が行われる。これにより、モバイル機器8に付与されたIDが外部通信ユニット6のID管理部14に格納される。モバイル機器8が携帯電話の場合は、IDとして、例えば電話番号を用いることができる。以下、モバイル機器8と外部通信ユニット6の間の通信は、このIDが一致する場合にのみ許可される。
【0037】
上記の操作が完了すると、モバイル機器8から外部通信ユニット6に対して操作画面要求が送信される。外部通信ユニット6は、操作画面要求に対する応答として、操作可能な車載機器を示す情報を含む初期操作画面の情報をモバイル機器8に送信する。これにより、モバイル機器8の表示部には、図7に示すような初期操作画面が表示される。この初期操作画面の例では、「Navigation」、「カメラ」、「DVD」および「DTV」が表示されており、それぞれナビゲーション装置1、車載カメラ5、AV機器4としてのDVDプレーヤーおよびAV機器4としてのDTVが操作可能であることを示している。なお、図7中の「モバイル通信」は初期操作画面のタイトルであり、「終了」はモバイル機器8と外部通信ユニット6との間の通信を終了させるために使用される。この初期操作画面が表示されている状態で、利用者は機器選択を行う。
【0038】
モバイル機器8は、初期操作画面の中の「Navigation」、「カメラ」、「DVD」または「DTV」のいずれかが選択されると、選択された車載機器を示す情報を、機器選択の情報として外部通信ユニット6に送信する。外部通信ユニット6は、機器選択の情報に対する応答として、この機器選択の情報によって選択された車載機器の操作画面の情報を、機器別操作画面の情報としてモバイル機器8に送信する。これにより、モバイル機器8の表示部には、図8に示すような操作画面が表示される。この操作画面は、図7に示す初期操作画面において「Navigation」が選択された場合の例を示しており、「現在地」、「目的地」、「経路」、「VICS」および「周辺施設」が表示される。これらはナビゲーション装置1に実行させることができる機能を示している。なお、図7中の「Navigation」は操作画面のタイトルであり、「戻る」は前の画面(初期操作画面)に戻ることを指示するために使用される。この操作画面が表示されている状態で、利用者は機能選択を行う。
【0039】
モバイル機器8は、「現在地」、「目的地」、「経路」、「VICS」または「周辺施設」のいずれかが選択されると、選択された機能を示す情報を情報要求として外部通信ユニット6に送信する。外部通信ユニット6は、モバイル機器8から受け取った情報要求を選択された車載機器(この場合は、ナビゲーション装置1)に送る。車載機器は、情報要求に対する応答として、自己のステータスを外部通信ユニット6に送信し、その後、データを外部通信ユニット6に送信する。
【0040】
外部通信ユニット6は、車載機器から順次に送信されてくるステータスおよびデータをモバイル機器8に送信する。これにより、モバイル機器8の表示部には、図9に示すような画面が表示される。この画面は、図8に示す操作画面において「現在地」が選択された場合の例を示しており、自車の現在位置を表す自車マークとともに現在位置の周辺の地図が表示される。
【0041】
次に、AV機器4としてのDVDプレーヤーで発生された情報をモバイル機器8に表示させる場合の通常時の動作を、図10に示すシーケンス図を参照しながら説明する。
【0042】
外部通信ユニット6とモバイル機器8の通信のためのIDを一致させる操作から初期操作画面が表示されるまでの動作は、上述したナビゲーション装置1の情報をモバイル機器8に表示させる場合の動作と同じである。
【0043】
モバイル機器8は、初期操作画面の中の「DVD」が選択されると、選択された車載機器、つまりDVDプレーヤーを示す情報を機器選択の情報として外部通信ユニット6に送信する。外部通信ユニット6は、機器選択の情報に対する応答として、この機器選択の情報によって選択された車載機器、つまりDVDプレーヤーが動作可能状態にあれば、その旨を表す操作画面の情報を、機器別操作画面の情報としてモバイル機器8に送信する。これにより、モバイル機器8の表示部には、図11の下部に示すような操作ボタンを有する画面が表示される。操作ボタンは、DVDプレーヤーの動作を指示するために使用される。なお、図11中の「DVD」は操作画面のタイトルである。この画面が表示されている状態で、利用者はDVDプレーヤーを操作する。
【0044】
モバイル機器8は、操作画面の中の操作ボタンのいずれかが操作されると、操作された機能を表す情報を情報要求として外部通信ユニット6に送信する。外部通信ユニット6は、モバイル機器8から受け取った情報要求を、選択された車載機器(この場合はAV機器4としてのDVDプレーヤー)に送る。車載機器は、情報要求に対する応答として、ステータスを外部通信ユニット6に送信し、その後、操作ボタンに応じたデータ、例えばDVDを再生することにより得られたデータを外部通信ユニット6に送信する。
【0045】
外部通信ユニット6は、車載機器から送信されてくるステータスおよびデータを順次にモバイル機器8に送信する。これにより、モバイル機器8の表示部には、操作された操作ボタンに対応する画面が表示される。例えば、操作ボタンの中のプレイボタン(>)が操作された場合は、DVDプレーヤーに装着されているDVDを再生した画面が表示部に表示される。この際、図11に示すように、当該モバイル機器8が「優先」であることを表すために、操作ボタンが表示されるとともに優先ボタンが非表示にされる。この状態で、利用者はDVDプレーヤーを操作することができる。その後、モバイル機器8は、応答として、表示を完了した旨を外部通信ユニット6に送信する。以下、データの受信、表示および応答が繰り返し実行され、モバイル機器8の表示部に映像が表示される。
【0046】
なお、モバイル機器8から情報要求が外部通信ユニット6を介して車載機器(AV機器4としてのDVDプレーヤー)に送られた場合に、車載機器が既に他のモバイル機器8によって使用されている状態であれば、車載機器は、情報要求に対する応答として、既に使用中である旨のステータスを外部通信ユニット6に送信し、その後、既に使用中であるモバイル機器8に送信しているデータと同じデータを外部通信ユニット6に送信する。
【0047】
外部通信ユニット6は、車載機器から送信されてくるステータスおよびデータを順次にモバイル機器8に送信する。これにより、モバイル機器8の表示部には、他のモバイル機器8の表示部に表示されている映像と同じ映像が表示される。この際、図12に示すように、当該モバイル機器8が「非優先」であることを表すために、操作ボタンが非表示にされるとともに優先ボタンが表示にされる。この状態では、利用者はDVDプレーヤーを操作することができない。その後、モバイル機器8は、応答として、表示を完了した旨を外部通信ユニット6に送信する。以下、データの受信、表示および応答が繰り返し実行され、モバイル機器8の表示部には、他のモバイル機器8の表示部に表示される映像と同じ映像が表示される。
【0048】
なお、車載機器を「優先」として使用しているモバイル機器8の接続が解除された場合、または、他の車載機器を使用するように変更された場合、「非優先」のモバイル機器8が順次に繰り上げられて「非優先」のモバイル機器8の中の最上位のものが「優先」となる。また、「非優先」のモバイル機器8が優先ボタンを操作して「優先」を要求することにより、「優先」を入れ替えることもできる。
【0049】
また、上記では、モバイル機器8から、ナビゲーション装置1およびAV機器4としてのDVDプレーヤーにアクセスする場合について説明したが、他の車載機器についてもほぼ同様の制御を行うことができる。また、車載機器から得られたデータに基づきモバイル機器8の画面に映像を表示する場合について説明したが、車載機器から得られるデータには、音声データまたは文字データなども含めることができる。また、モバイル機器8内に保存されているデータを車載機器に送信し、出力するように構成することも可能である。
【0050】
次に、上述した機能を実現するための外部通信ユニット6の詳細な動作を説明する。図13は、外部通信ユニット6の状態管理部16で実行されるメイン処理を示すフローチャートである。
【0051】
このメイン処理では、まず、初期設定が行われる(ステップST11)。この初期設定では、外部通信ユニット6の内部が初期化されるとともに、外部通信ユニット6とモバイル機器8の通信のためのIDを一致させる操作に対応した処理、つまり、モバイル機器8に付与されたIDを外部通信ユニット6のID管理部14に格納する処理が行われる。
【0052】
次いで、電源制御が行われる(ステップST12)。次いで、モバイル通信処理が行われる(ステップST13)。すなわち、外部通信ユニット6は、モバイル機器8との間の通信を行うための処理を実行する。このモバイル通信の詳細は後述する。次いで、車載機器通信処理が行われる(ステップST14)。すなわち、外部通信ユニット6は、車載機器との間の通信を行うための処理を実行する。この車載機器通信の詳細は後述する。その後、シーケンスはステップST12に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0053】
次に、メイン処理のステップST13で行われるモバイル通信処理の詳細を、図14に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0054】
モバイル通信処理では、まず、モバイル通信受信が行われる(ステップST21)。すなわち、外部通信ユニット6のモバイル通信制御部12は、モバイル機器8から送られてくるデータを受信して状態管理部16に送る。
【0055】
次いで、ID確認が行われる(ステップST22)。すなわち、状態管理部16は、ステップST21で受信したデータの送信元のモバイル機器8のIDがID管理部14に格納されているIDに一致するかを調べる。このステップST22において、IDが確認できない、つまり不一致の場合は、シーケンスはメイン処理にリターンする。
【0056】
一方、ステップST22において、IDが確認できると、次いで、操作画面要求であるかどうかが調べられる(ステップST23)。すなわち、状態管理部16は、モバイル通信制御部12から送られてくるデータが操作画面要求であるかどうかを調べる。このステップST23において、操作画面要求であることが判断されると、初期操作画面送信が行われる(ステップST24)。すなわち、状態管理部16は、操作画面要求に対する応答として、操作可能な車載機器を示す情報を含む初期操作画面の情報を、モバイル通信制御部12を介してモバイル機器8に送信する。その後、シーケンスはメイン処理にリターンする。
【0057】
上記ステップST23において、操作画面要求でないことが判断されると、次いで、機器選択情報であるかどうかが調べられる(ステップST25)。すなわち、状態管理部16は、モバイル通信制御部12から送られてくるデータが機器選択情報であるかどうかを調べる。このステップST25において、機器選択情報であることが判断されると、機器別操作画面送信が行われる(ステップST26)。すなわち、状態管理部16は、機器選択情報に対する応答として、この機器選択情報によって選択された車載機器の操作画面の情報を、機器別操作画面の情報としてモバイル通信制御部12を介してモバイル機器8に送信する。その後、シーケンスはメイン処理にリターンする。
【0058】
上記ステップST25において、機器選択情報でないことが判断されると、次いで、ナビコマンドであるかどうかが調べられる(ステップST27)。すなわち、状態管理部16は、モバイル通信制御部12から送られてくるデータが、ナビゲーション装置1に対するコマンドであるかどうかを調べる。このステップST27において、ナビコマンドであることが判断されると、ナビコマンド送信が行われる(ステップST28)。すなわち、状態管理部16は、ステップST21で受信したデータ、つまりナビコマンドを、LAN通信制御部11を介してナビゲーション装置1に送信する。その後、シーケンスはメイン処理にリターンする。
【0059】
上記ステップST27において、ナビコマンドでないことが判断されると、次いで、優先状態であるかどうかが調べられる(ステップST29)。すなわち、状態管理部16は、該当のモバイル機器に優先権があるか確認する。このステップST29において、優先状態でないことが判断されると、次いで、優先切替要求であるかどうかが調べられる(ステップST30)。すなわち、状態管理部16は、モバイル通信制御部12から送られてくるデータが、車載機器の優先状態の切り替えを要求するデータであるかどうかを調べる。
【0060】
このステップST30において、優先切替要求でないことが判断されると、シーケンスはメイン処理にリターンする。一方、ステップST30において、優先切替要求であることが判断されると、優先切替処理が行われる(ステップST31)。すなわち、状態管理部16は、自己の内部に記憶しているモバイル機器8の優先順位を切り替える。その後、シーケンスはメイン処理にリターンする。
【0061】
上記ステップST29において、優先状態であることが判断されると、次いで、DVDコマンドであるかどうかが調べられる(ステップST32)。すなわち、状態管理部16は、モバイル通信制御部12から送られてくるデータが、AV機器4としてのDVDプレーヤーに対するコマンドであるかどうかを調べる。このステップST32において、DVDコマンドであることが判断されると、DVDコマンド送信が行われる(ステップST33)。すなわち、状態管理部16は、ステップST21で受信したデータ、つまりDVDコマンドを、LAN通信制御部11を介してAV機器4としてのDVDプレーヤーに送信する。その後、シーケンスはメイン処理にリターンする。
【0062】
上記ステップST32において、DVDコマンドでないことが判断されると、他の処理が行われる(ステップST34)。すなわち、上述した車載機器以外の車載機器、つまりAV機器4としてのDTV、車載カメラ5に対する処理が、上記と同様の手順で行われる。その後、シーケンスはメイン処理にリターンする。なお、図14において、点線で囲んだ部分は、DVDの例でDTV等、他の機器の場合、「DVD」がそのまま置き替わり、「他の処理」の枠に入る。
【0063】
次に、メイン処理のステップST14で行われる車載機器通信処理の詳細を、図15に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0064】
車載機器通信処理では、まず、車載機器通信受信が行われる(ステップST41)。すなわち、外部通信ユニット6のLAN通信制御部11は、車載機器から送られてくるデータを受信して状態管理部16に送る。
【0065】
次いで、ナビ(ナビゲーション装置1)からのデータであるかどうかが調べられる(ステップST42)。すなわち、状態管理部16は、LAN通信制御部11から送られてくるデータが、ナビゲーション装置1から送られてきたデータであるかどうかを調べる。このステップST42において、ナビからのデータでないことが判断されると、シーケンスはステップST45に進む。
【0066】
一方、ステップST42において、ナビからのデータであることが判断されると、次いで、ID確認が行われる(ステップST43)。すなわち、状態管理部16は、データの要求元のモバイル機器8のIDがID管理部14に格納されているIDに一致するかを調べる。このステップST43において、IDが確認できない、つまり不一致の場合は、シーケンスはステップST45に進む。
【0067】
一方、ステップST43において、IDが確認できた、つまり一致した場合は、ナビデータ送信が行われる(ステップST44)。すなわち、状態管理部16は、ステップST41で受信したデータを、モバイル通信制御部12を介してモバイル機器8に送信する。その後、シーケンスは、メイン処理にリターンする。
【0068】
ステップST45においては、DVD(AV機器4としてのDVDプレーヤー)からのデータであるかどうかが調べられる。すなわち、状態管理部16は、LAN通信制御部11から送られてくるデータが、AV機器4としてのDVDプレーヤーから送られてきたデータであるかどうかを調べる。このステップST45において、DVDからのデータであることが判断されると、次いで、ID確認が行われる(ステップST46)。すなわち、状態管理部16は、ID管理部14から1つのIDを抽出し、データの要求元のモバイル機器8のIDに一致するかを調べる。このステップST46において、IDが確認できた、つまり一致した場合は、DVDデータ送信が行われる(ステップST47)。すなわち、状態管理部16は、ステップST41で受信したデータを、モバイル通信制御部12を介して、IDの一致が確認できたモバイル機器8に送信する。一方、ステップST46において、IDが確認できない、つまり不一致の場合は、ステップST47の処理はスキップされる。
【0069】
次いで、全IDの確認が完了したかどうかが調べられる(ステップST48)。すなわち、状態管理部16は、ID管理部14に格納されているすべてのIDに対する処理が完了したかどうかを調べる。このステップST48において、全IDの確認を完了していないことが判断されると、次いで、次のIDが抽出される(ステップST49)。すなわち、状態管理部16は、ID管理部14から次のIDを抽出する。その後、シーケンスはステップST46に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0070】
一方、ステップST48において、全IDの確認を完了したことが判断されると、シーケンスは、メイン処理にリターンする。以上のステップST46〜ST49の処理により、複数のモバイル機器8に対し、1つのDVDプレーヤーで再生した映像を送信することができる。
【0071】
上記ステップST45において、DVDからのデータでないことが判断されると、他の処理が行われる(ステップST50)。すなわち、上述した車載機器以外の車載機器、つまりAV機器4としてのDTV、車載カメラ5に対する処理が、上記と同様の手順で行われる。その後、シーケンスはメイン処理にリターンする。なお、図15において、点線で囲んだ部分は、DVDの例でDTV等、他の機器の場合、「DVD」がそのまま置き替わり、「他の処理」の枠に入る。
【0072】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る車載情報システムによれば、外部から持ち込んだモバイル機器8を外部通信ユニット6に通信で接続することにより、車内LAN7に接続されている複数の車載機器にアクセスし、これらの車載機器に表示される情報を入手したり、また、これらの車載機器を操作することができる。したがって、車両の所有者は該車両の全座席にモニタなどを取り付けることなく、乗車者が所有するモバイル機器8を車内に持ち込むことにより、車載機器に表示される情報を簡易に入手できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムの他の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムで使用される外部通信ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムで使用される外部通信ユニットの簡易画面を表示するための構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムが適用された車室内のイメージを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおいて、ナビゲーション装置で発生された情報をモバイル機器に表示させる動作を示すシーケンス図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおいて表示される初期操作画面の例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおいて表示されるナビゲーション装置の操作画面の例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおいて表示されるナビゲーション装置の現在地表示画面の例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおいて、DVDプレーヤーで発生された情報をモバイル機器に表示させる動作を示すシーケンス図である。
【図11】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおいて表示されるDVDプレーヤーの優先時の画面の例を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおいて表示されるDVDプレーヤーの非優先時の画面の例を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおけるメイン処理を示すフローチャートである。
【図14】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおけるメイン処理で実行されるモバイル通信処理を示すフローチャートである。
【図15】この発明の実施の形態1に係る車載情報システムにおけるメイン処理で実行される車載機器通信処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1 ナビゲーション装置、2 表示制御装置、2a モニタ、3 アンプ、3a スピーカ、4 AV機器、5 車載カメラ、6 外部通信ユニット、7 車内LAN、8 モバイル機器、11 LAN通信制御部、12 モバイル通信制御部、13 一時記憶部、14 ID管理部、15 表示データ生成部、16 状態管理部、17 データ蓄積部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内LANに接続された複数の車載機器と、
前記車内LANに接続されて外部と通信する外部通信ユニットと、
前記外部通信ユニットに通信で接続することにより前記複数の車載機器にアクセスする複数のモバイル機器
とを備えた車載情報システム。
【請求項2】
複数の車載機器は、ナビゲーション装置を含み、
外部通信ユニットは、前記ナビゲーション装置から受信したモニタに表示される映像を表す映像信号を送信し、
複数のモバイル機器の各々は、前記外部通信ユニットから送信される映像信号を受信し、該映像信号に基づき映像を表示する
ことを特徴とする請求項1記載の車載情報システム。
【請求項3】
外部通信ユニットは、ナビゲーション装置から受信したモニタに表示される画像を簡略化した簡易画像を表す映像信号を送信し、
複数のモバイル機器の各々は、前記外部通信ユニットから送信される映像信号を受信し、該映像信号に基づき簡易画像を表示する
ことを特徴とする請求項2記載の車載情報システム。
【請求項4】
複数の車載機器は、AV(Audio Visual)機器を含み、
外部通信ユニットは、前記AV機器で再生された画像を表す映像信号および音声を表す音声信号を送信し、
複数のモバイル機器の各々は、前記AV機器から送信される映像信号に基づく映像を表示するとともに、音声信号に基づく音声を出力する
ことを特徴とする請求項2記載の車載情報システム。
【請求項5】
複数のモバイル機器の各々は、車内LANに接続された複数の車載機器を制御するための制御信号を外部通信ユニットに送信し、
前記外部通信ユニットは、前記複数のモバイル機器の各々から受信した制御信号に応じて、前記車内LANに接続された複数の車載機器の中の1つを制御する
ことを特徴とする請求項1記載の車載情報システム。
【請求項6】
複数のモバイル機器の各々は固有番号を有し、
外部通信ユニットは、前記固有番号に応じて制御範囲を決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の車載情報システム。
【請求項7】
外部通信ユニットと複数のモバイル機器との間の通信は、有線通信、赤外線通信または微弱電波による通信によって行われる
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の車載情報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−143732(P2011−143732A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112752(P2008−112752)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.VICS
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】