説明

車載情報端末

【課題】最新の道路交通情報を必要な状況において入手することができる車載情報端末を提供する。
【解決手段】VICS情報が必要であるか不要であるかを判定し(ステップS3〜S7)、必要であると判定された場合は、VICS情報配信サーバに対してVICS要求を発信する(ステップS8)。そして、発信したVICS要求に応じてVICS情報配信サーバから配信される広域VICS情報を受信する(ステップS9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路交通情報を道路地図上に表示するナビゲーション装置などの車載情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
渋滞状況や通行規制状況など、各種の道路交通情報を提供する道路交通情報通信システム(VICS)が実用化されている。このシステムでは、VICSセンターにおいて収集した各種の道路交通情報(VICS情報)を、電波ビーコン、光ビーコン、FM多重放送などにより車載機へ送信する。車載機では、受信したVICS情報の内容を画面表示するなどの方法によって車両内のユーザへ提供する。
【0003】
しかし、上記のVICSにおいてVICSセンターから提供されるVICS情報は、都道府県単位など一定の地域に限られているため、地域外のVICS情報を得ることができないという問題がある。そこで、このようなVICSの問題点を解決するものとして、たとえば特許文献1に開示される装置が知られている。この装置では、広範囲のVICS情報を交通情報センターに蓄積し、携帯電話などを用いて車両から交通情報センターに接続することで、VICSセンターからVICS情報が通常提供される地域よりも外にある地域についても、VICS情報を得られるようにしている。
【0004】
さらに特許文献1に開示される装置では、交通情報センターに接続するときの通信費を抑えるため、長時間通常のVICS情報を取り込んでいないときに交通情報センターにアクセスして広範囲のVICS情報を取り込むようにしている。また、既に取り込まれたVICS情報に有用な情報が存在しないときや大渋滞時等には、交通情報センターへのアクセス間隔を長くするようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−365066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような条件でVICS情報を取り込んだ場合、最新のVICS情報を必要な状況において得られない可能性がある。たとえば、目的地までの経路上に渋滞が発生した場合には、最新のVICS情報を入手して渋滞を回避するルートを探索する必要がある。しかし、このように最新のVICS情報が必要な状況であっても、特許文献1に開示される装置では交通情報センターへのアクセスが行われないため、最新のVICSを入手することができないという問題がある。そこで、最新の道路交通情報を必要な状況において入手することができる車載の情報端末が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明による車載情報端末は、道路交通情報が必要であるか不要であるかを判定する判定手段と、判定手段により道路交通情報が必要であると判定された場合、無線通信手段を用いて公衆通信回線網と接続することにより、道路交通情報を配信するために設置されたサーバ手段に対して道路交通情報の要求を発信する要求発信手段と、要求発信手段から発信された要求に応じてサーバ手段より公衆通信回線網と無線通信手段を介して配信される道路交通情報を受信する受信手段とを備えるものである。
請求項2の発明は、請求項1の車載情報端末において、設定された目的地までの推奨経路を探索する推奨経路探索手段と、推奨経路上を自車両が走行しているときに、現在地から目的地まで推奨経路とは異なる別経路を探索する別経路探索手段とをさらに備え、判定手段は、別経路探索手段により別経路が探索されなかった場合は、道路交通情報が不要であると判定するものである。
請求項3の発明は、請求項2の車載情報端末において、判定手段は、推奨経路と別経路が現在地から所定距離内において同一の道路を通っている場合は、道路交通情報が不要であると判定するものである。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの車載情報端末において、設定された目的地の方向に通行規制が行われている場所があるか否かを判定する通行規制判定手段をさらに備え、判定手段は、通行規制判定手段により設定された目的地の方向に通行規制が行われている場所があると判定された場合は、道路交通情報が必要であると判定するものである。
請求項5の発明は、請求項4の車載情報端末において、通行規制判定手段は、FM放送により送信された道路交通情報に基づいて通行規制が行われている場所を判断し、その場所が現在地と目的地に基づいて設定された所定の地域内に含まれている場合には、設定された目的地の方向に通行規制が行われている場所があると判定するものである。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの車載情報端末において、自車両が渋滞地域を走行中であるか否かを判定する渋滞地域判定手段をさらに備え、判定手段は、渋滞地域判定手段により自車両が渋滞地域を走行中ではないと判定された場合は、道路交通情報が不要であると判定するものである。
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかの車載情報端末において、自車両の平均車速を検出する車速検出手段をさらに備え、判定手段は、車速検出手段により検出された平均車速が所定値以下である場合は、道路交通情報が必要であると判定するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、道路交通情報が必要であるか不要であるかを判定し、必要であると判定された場合は公衆通信回線網と接続して道路交通情報の要求を発信し、その要求に応じて配信される道路交通情報を受信することとした。このようにしたので、最新の道路交通情報を必要な状況において入手することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態によるナビゲーションシステムを図1に示す。車両100に搭載されている車載機1は、推奨経路を探索して道路地図を表示することにより車両100を目的地まで誘導する、いわゆるカーナビゲーション装置の一種である。車載機1には通信端末2が接続されている。通信端末2は、車載機1からの制御によって移動体通信網3と無線接続される。移動体通信網3には、VICS情報配信サーバ4が接続されている。すなわち、車載機1からの制御によって、通信端末2と移動体通信網3を介して、車載機1とVICS情報配信サーバ4が接続される。
【0010】
なお、通信端末2と移動体通信網3が無線接続される際には、不図示の無線基地局が用いられる。この無線基地局は、その周囲の所定の通信エリア内にある通信端末2と無線通信することが可能であり、全国各地に散在している。また、車載機1と通信端末2との接続には、ケーブル等による有線接続に限らず、たとえば赤外線などの無線接続を用いてもよい。通信端末2には、たとえば携帯電話などが用いられる。
【0011】
VICS情報配信サーバ4は、不図示のVICSセンターから全国のVICS情報を逐次入手し、これを記録している。なお、ここでいうVICSセンターとは、財団法人道路交通情報通信システムセンターのことである。また、VICS情報とは、このVICSセンターより供給される各種の道路交通情報、たとえば渋滞情報や通行規制情報などのことである。
【0012】
前述のように通信端末2と移動体通信網3を介して車載機1とVICS情報配信サーバ4が接続されると、車載機1からVICS情報配信サーバ4に対して、VICS情報の送信要求(以下、VICS要求という)の発信が行われる。このVICS要求の発信は、目的地までの推奨経路が設定されているときに、通常は一定時間ごとに行われる。しかし、VICS情報を必要とする状況ではないと車載機1において判断した場合には、VICS要求の発信は行われない。この点については、後で詳しく説明する。
【0013】
車載機1から発信されたVICS要求がVICS情報配信サーバ4において受信されると、それに応じて、VICS情報配信サーバ4に記録されているVICS情報が車載機1へ配信される。ここで、VICS情報配信サーバ4から配信されるVICS情報は、後で説明するようにVICS情報配信サーバ4を介さずにVICSセンターから車載機1へFM放送によって直接送信される通常のVICS情報とは異なり、現在地付近の一定地域、たとえば同一都道府県内のものには限られない。このことより、VICS情報配信サーバ4から配信されるVICS情報のことを以降では広域VICS情報と称する。また、上記の通常のVICS情報のことを以降では狭域VICS情報と称する。
【0014】
VICS情報配信サーバ4から上記のように移動体通信網3と通信端末2を介して配信される広域VICS情報を、車載機1において受信する。車載機1はこうして受信した広域VICS情報に基づいて、設定された推奨経路付近の渋滞状況や通行規制状況等を道路地図上に重ねて表示したりすることにより、ユーザに各種の道路交通情報を提供する。さらに、後で説明するように推奨経路の再探索を行うことにより、推奨経路の途中に渋滞が発生している場合には、その渋滞を回避するような新たな推奨経路を必要に応じて設定する。
【0015】
なお、VICS情報にはレベル1〜レベル3の3段階のレベルがあり、VICS情報を車載機1において表示したときの表示形態はVICS情報のレベルによって異なる。レベル1のVICS情報では、文字によって内容が表される。たとえば、渋滞地点名や渋滞距離、ある地点間の所要時間などを表現した文章が、レベル1のVICS情報として表示される。レベル2の場合は、簡易図形(道路線形を簡易的な図形で表したもの)を用いてその内容が表現される。たとえば、特定の道路の渋滞箇所を赤やオレンジ色などによって簡易図形上に表した画像が、レベル2のVICS情報として表示される。
【0016】
以上説明したように、レベル1とレベル2のVICS情報の表示は、道路地図とは組み合わされずに単独で行われる。一方、レベル3のVICS情報は、道路地図と組み合わされてその内容が表される。たとえば、赤やオレンジ色などの矢印を道路に沿って表示することで各道路の渋滞状況を示したり、通行止めや車線規制などの通行規制を示すためのマークを道路上に表示したりする。すなわち、前述したようにVICS情報に基づいて各種の道路交通情報を道路地図上に重ねて表示するためには、レベル3のVICS情報が用いられ、レベル1とレベル2のVICS情報は用いられない。
【0017】
図2は、車載機1の構成を示すためのブロック図である。車載機1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、入力装置17、FM放送受信部18およびディスクドライブ19を有している。ディスクドライブ19には、地図データが記録されたDVD−ROM20が装填される。
【0018】
制御回路11は、マイクロプロセッサおよびその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行することにより、後で説明するような各種の処理や制御を行う。制御回路11には通信端末2が接続されており、制御回路11によって通信端末2を制御することで、車載機1から図1のVICS情報配信サーバ4に対してVICS要求の発信が行われる。このVICS要求に応じてVICS情報配信サーバ4から配信される広域VICS情報は、通信端末2を経由して制御回路11へ出力される。
【0019】
現在地検出装置14は、自車両(車両100)の現在地を検出する装置であり、たとえば、自車両の進行方位を検出する振動ジャイロ14a、車速を検出する車速センサ14b、GPS衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ14c等からなる。車載機1は、この現在地検出装置14により検出される自車両の現在地に基づいて、後述する経路探索開始点を決定することができる。
【0020】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを一時的に格納する。この画像データは、道路地図を表示するための道路地図描画用データや各種の図形データ等からなり、DVD−ROM20に記録されている地図データやVICS情報配信サーバ4から配信された広域VICS情報などに基づいて、制御回路11において作成される。制御回路11により作成された画像データが画像メモリ15に出力されることによって、表示モニタ16に道路地図が表示され、さらに、その道路地図上に様々な道路交通情報が表示される。
【0021】
入力装置17は、車両の目的地や経由地(以下、これらを合わせて単に目的地という)をユーザが設定したりするための各種入力スイッチを有している。この入力装置17は、操作パネルやリモコンなどによって実現される。ユーザは、表示モニタ16に表示される画面指示に従って入力装置17を操作することにより、地名や地図上の位置などを指定して目的地を設定することができる。
【0022】
FM放送受信部18は、不図示のVICSセンターからFM放送によって直接送信される狭域VICS情報を受信する。FM放送受信部18において受信された狭域VICS情報は、広域VICS情報と同様に制御回路11に出力された後、これに基づいて道路地図上に各種の道路交通情報を表示するための画像データが作成される。なお、前述の広域VICS情報とは異なり、VICSセンターから直接送信される狭域VICS情報では、現在地付近の一定地域、たとえば同一都道府県内に関する道路交通情報しか送信されない。
【0023】
VICSセンターから車載機1への狭域VICS情報の送信は、上記のFM放送だけでなく、主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや、主に一般道路上に設置されている光ビーコンによっても行われる。電波ビーコンや光ビーコンは、その設置地点付近を通過する車両に対して、電波あるいは光により局所的にVICS情報を送信するものである。一般的に、電波ビーコンや光ビーコンから送信されるVICS情報では、詳細な内容の道路交通情報が局所的に提供される。一方、FM放送によるVICS情報では、それよりも比較的広い範囲の一定の地域、たとえば同一都道府県内についての道路交通情報が提供される。
【0024】
車載機1は、VICS情報配信サーバ4を経由しないでVICSセンターから直接送信される狭域VICS情報については、電波ビーコンや光ビーコンからは受信せず、FM放送のみをFM放送受信部18によって受信する。なお、電波ビーコンや光ビーコンから送信されるVICS情報によって提供されるような詳細な道路交通情報については、広域VICS情報の中に含まれているため、電波ビーコンや光ビーコンからのVICS情報を受信しなくても車載機1において提供を受けることができる。
【0025】
ディスクドライブ19は、装填されたDVD−ROM20より、道路地図を表示するための地図データを読み出す。この地図データには、ルート探索に用いられる経路計算データや、交差点名称および道路名称など、推奨経路に従って自車両を目的地まで誘導するために用いられる経路誘導データ、さらに道路を表す道路データなどが含まれている。また、河川や鉄道、地図上の各種施設等(ランドマーク)など、道路以外の地図形状を表す背景データなども地図データに含まれている。
【0026】
道路データにおいて、道路区間を表す最小単位はリンクと呼ばれており、各道路は複数のリンクによって構成されている。リンク同士を接続している点はノードと呼ばれ、このノードはそれぞれに位置情報(座標情報)を有している。このノードの位置情報によって、リンク形状、すなわち道路の形状が決定される。各リンクに対応して、自車両の通過所要時間を表すためのリンクコストと呼ばれる値が前述の経路計算データにおいて設定されている。なお、ここではDVD−ROMを用いた例について説明しているが、DVD−ROM以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより、地図データを読み出すこととしてもよい。
【0027】
ユーザが入力装置17を操作して目的地を設定すると、車載機1は現在地検出装置14により検出された現在地を経路探索開始点として、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算を行うことにより、現在地から目的地までのルート探索を行う。ルート探索の結果求められた推奨経路は、その表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、他の道路とは区別して道路地図上に表される。これにより、ユーザは推奨経路を表示モニタ16に表示された道路地図上において認識することができる。また、この推奨経路に従って自車両が走行できるよう、車載機1はユーザに対して画像や音声などによる進行方向指示を行うことにより、自車両を誘導する。このように、道路地図を表示して推奨経路に従って自車両を目的地まで誘導することにより、目的地までのルート案内が行われる。
【0028】
上記のルート探索は、広域VICS情報または狭域VICS情報によって提供される渋滞情報を用いて、道路の渋滞状況を考慮した上で行われる。すなわち、目的地までに複数のルートを設定可能な場合は、それぞれの道路の渋滞状況を加味した上で各リンクのリンクコストの値を設定してルート探索を行い、目的地までのリンクコストが最小となる経路を推奨経路に設定する。
【0029】
次に、VICS要求を車載機1から発信するときの処理内容について説明する。前述したように、車載機1からVICS情報配信サーバ4へのVICS要求の発信は、通常は目的地までの推奨経路が設定されているときに一定時間ごとに行われているが、VICS情報を必要とする状況ではないと判断された場合には行われない。このとき車載機1の制御回路11では、図3に示すフローチャートが一定時間ごとに実行される。
【0030】
図3のフローチャートについて以下に説明する。ステップS1では、前述のルート探索によって目的地までの推奨経路が設定されているか否かを判定する。推奨経路が設定されている場合は次のステップS2へ進む。推奨経路が設定されていない場合は、図3の処理フローを終了する。この場合には、推奨経路が設定されていないため車載機1からのVICS要求の発信は行われない。
【0031】
ステップS2では、設定されている推奨経路とは異なる別の経路を現在地から目的地まで探索する。以降の説明では、ここで探索される経路を別経路と称する。この別経路は、推奨経路を探索したときとは異なる経路探索条件に基づいて探索することができる。たとえば、推奨経路の探索が有料道路優先で行われていた場合には、別経路を一般道路優先で探索する。あるいは、推奨経路と同じ経路探索条件で経路探索を行い、その結果推奨経路の次に適しているものとして探索された経路を別経路としてもよい。すなわち、目的地までのリンクコストの合計が推奨経路の次に小さい経路を、別経路に設定してもよい。
【0032】
ステップS3では、ステップS2で別経路が探索されたか否かを判定する。別経路が探索されなかった場合、すなわちステップS2で探索した経路が推奨経路と一致している場合は、図3の処理フローを終了する。このように、途中の道路状況に関わらず目的地までの推奨経路が1つしか設定できないような場合には、VICS情報が不要であると判定して今回の起動タイミングでは車載機1からのVICS要求の発信を行わない。一方、推奨経路とは異なる別経路が探索された場合は、次のステップS4へ進む。
【0033】
なお、ステップS2において前述のように、目的地までのリンクコストの合計が推奨経路の次に小さい経路を別経路として設定した場合は、別経路と推奨経路のリンクコストの合計値の差分に基づいて、ステップS3の判定処理を行うことができる。すなわち、別経路と推奨経路のリンクコストの合計値の差分が所定値以上である場合は、ステップS3において別経路が探索されなったものと判定する。このようにすることで、別経路として探索された経路のリンクコストの合計が推奨経路よりも大幅に大きく、推奨経路の代わりにその別経路を通って目的地まで行くことが非現実的であるような場合には、別経路が探索されなかったものと判定してVICS要求の発信を行わないようにすることができる。
【0034】
ステップS4では、推奨経路とステップS2で探索した別経路が現在地から所定距離内(たとえば100km以内)で一致しているか否かを判定する。所定距離内で一致している場合、すなわち現在地から所定距離内において推奨経路と別経路が同一の道路を通っているような場合は、図3の処理フローを終了する。このように、推奨経路と別経路の分岐点が現在地から遠くにあるため、その分岐点に近づくまでしばらくの間はVICS情報が不要となるような場合には、VICS情報が不要であると判定して今回の起動タイミングでは車載機1からのVICS要求の発信を行わない。一方、推奨経路と別経路が現在地から所定距離内で一致していない場合は、次のステップS5へ進む。なお、このステップS4の判定条件を満たす場合、推奨経路と別経路は全体としては一致していないが、現在地から所定距離内の範囲では一致していることになる。
【0035】
ステップS5では、目的地の方向に通行規制が行われている場所があるか否かを判定する。通行規制が行われている場所がある場合は、道路交通情報が必要であるとしてステップS8へ進み、ない場合は次のステップS6へ進む。なお、このときFM放送受信部18によって受信された狭域VICS情報に基づいて、通行規制がどの場所で行われているかが判断される。そして、その場所が現在地と目的地に基づいて設定された所定の地域、たとえば現在地と目的地を焦点とする楕円形の地域内に含まれている場合には、目的地の方向に通行規制が行われている場所があると判定する。
【0036】
ステップS6では、自車両が渋滞地域を走行中であるか否かを判定する。渋滞地域を走行中であると判定した場合は、次のステップS7へ進み、ステップS7において自車両の平均車速が所定値以下であるか否かを判定する。平均車速が所定値以下である場合は、VICS情報が必要であるとして次のステップS8へ進む。一方、ステップS6において渋滞地域を走行中ではないと判定した場合や、ステップS7において自車両の平均車速が所定値以下でないと判定した場合は、ステップS8へは進まずに図3の処理フローを終了する。この場合にもVICS情報が不要であると判定されたことになり、今回の起動タイミングでは車載機1からVICS要求の発信は行われない。
【0037】
上記のステップS6において自車両が渋滞地域を走行中であるか否かは、自車両の現在地から所定範囲内に含まれている地図データ中のVICSリンク数や道路密度から判断することができる。ここでいうVICSリンク数とはVICSリンクの数であり、VICSリンクとは、前述の各リンクとVICS情報によって送信される渋滞情報とを対応付けるためものである。すなわち、VICSリンク数が大きいほど渋滞する可能性がある道路が多く存在することになるため、VICSリンク数が所定値以上となる場合は自車両が渋滞地域を走行中であると判定することができる。また、道路密度についても同様に、所定値以上となる場合には自車両が渋滞地域を走行中であると判定することができる。
【0038】
以上説明したステップS3〜S7の各判定処理により、VICS情報が必要であるか不要であるかの判定が行われる。
【0039】
ステップS8では、接続されている通信端末2を制御することにより、図1のVICS情報配信サーバ4に対してVICS要求の発信を行う。このVICS要求では、推奨経路の周辺についてのVICS情報を要求する。ステップS9では、ステップS8において発信されたVICS要求に応じてVICS情報配信サーバ4から配信される広域VICS情報を受信する。
【0040】
ステップS10では、ステップS9で受信した広域VICS情報を用いて推奨経路の再探索を行う。その結果、それまで探索されていた推奨経路よりも最適な、すなわちリンクコストの合計がより小さな経路が探索された場合には、その経路を新たな推奨経路として設定し、以降の自車両の案内を行う。次のステップS11では、ステップS9で受信した広域VICS情報により、道路地図上に表示された道路交通情報表示の更新を行う。ステップS11を実行した後は図3の処理フローを一旦終了し、次の起動タイミングまで待機する。
【0041】
以上説明したようにして、VICS情報を必要とする状況ではないと判断された場合には、車載機1からVICS情報配信サーバ4へVICS要求を発信しないようにすることができる。これにより、無駄な広域VICS情報が配信されるのを防いで、通信料金の低減を図ることができる。
【0042】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)VICS情報が必要であるか不要であるかを判定し(ステップS3〜S7)、必要であると判定された場合は、VICS情報配信サーバ4に対してVICS要求を発信する(ステップS8)。そして、発信したVICS要求に応じてVICS情報配信サーバ4から配信される広域VICS情報を受信する(ステップS9)こととした。このようにしたので、最新の道路交通情報を表すためのVICS情報を必要な状況において入手することができる。
【0043】
(2)推奨経路とは異なる別経路が探索されなかった場合は、VICS情報が不要であると判定して(ステップS3)VICS要求を発信しないこととした。このようにしたので、途中の道路状況に関わらず目的地までの推奨経路が1つしか設定できないためVICS情報が不要である場合に、無駄な通信料が発生するのを防ぐことができる。
【0044】
(3)推奨経路と探索された別経路が現在地から所定距離内において同一の道路を通っている場合は、VICS情報が不要であると判定して(ステップS4)VICS要求を発信しないこととした。このようにしたので、推奨経路と別経路の分岐点が現在地から遠くにあるためしばらくの間はVICS情報が不要である場合に、無駄な通信料が発生するのを防ぐことができる。
【0045】
(4)目的地の方向に通行規制が行われている場所がある場合は、VICS情報が必要であると判定して(ステップS5)、VICS要求を発信することとした(ステップS8)。このようにしたので、進行方向の通行規制によって渋滞状況の変化が予想される場合に最新の道路交通情報を入手することができる。
【0046】
(5)自車両が渋滞地域を走行中ではない場合は、VICS情報が不要であると判定して(ステップS6)VICS要求を発信しないこととした。このようにしたので、渋滞する可能性の低い地域を走行しているためVICS情報が不要である場合に、無駄な通信料が発生するのを防ぐことができる。
【0047】
(6)自車両の平均車速が所定値以下の場合は、VICS情報が必要であると判定して(ステップS7)、VICS要求を発信することとした(ステップS8)。このようにしたので、渋滞が発生した場合に最新の道路交通情報を入手することができる。
【0048】
なお、上記の実施の形態では、ステップS3〜S7の各判定処理によりVICS情報が必要であるか不要であるかの判定を行っていたが、これらの判定処理の全てを行う必要はなく、いずれかを省略してもよい。また、実行する順番を互いに入れ替えてもよい。図3のフローチャートに示した内容は一例であって、どのような組み合わせで各判定処理を実行してもよい。
【0049】
上記実施の形態では、ナビゲーション装置において、DVD−ROMなどの記憶メディアに記録された地図データに基づいて経路探索を行い、探索された推奨経路にしたがって自車両を案内する例について説明しているが、本発明はこの内容には限定されない。たとえば、携帯電話などによる無線通信を用いて、地図データを情報配信センターからダウンロードする通信ナビゲーション装置などにおいても、本発明を適用できる。
【0050】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も、本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーションシステムを示す図である。
【図2】車載機の構成を示すブロック図である。
【図3】VICS要求を車載機から発信するときに実行される処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 車載機
2 通信端末
3 移動体通信網
4 VICS情報配信サーバ
11 制御回路
12 ROM
13 RAM
14 現在地検出装置
15 画像メモリ
16 表示モニタ
17 入力装置
18 FM放送受信部
19 ディスクドライブ
20 DVD−ROM
100 自車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路交通情報が必要であるか不要であるかを判定する判定手段と、
前記判定手段により道路交通情報が必要であると判定された場合、無線通信手段を用いて公衆通信回線網と接続することにより、道路交通情報を配信するために設置されたサーバ手段に対して道路交通情報の要求を発信する要求発信手段と、
前記要求発信手段から発信された要求に応じて前記サーバ手段より前記公衆通信回線網と無線通信手段を介して配信される道路交通情報を受信する受信手段とを備えることを特徴とする車載情報端末。
【請求項2】
請求項1の車載情報端末において、
設定された目的地までの推奨経路を探索する推奨経路探索手段と、
前記推奨経路上を自車両が走行しているときに、現在地から前記目的地まで前記推奨経路とは異なる別経路を探索する別経路探索手段とをさらに備え、
前記判定手段は、前記別経路探索手段により別経路が探索されなかった場合は、道路交通情報が不要であると判定することを特徴とする車載情報端末。
【請求項3】
請求項2の車載情報端末において、
前記判定手段は、前記推奨経路と前記別経路が現在地から所定距離内において同一の道路を通っている場合は、道路交通情報が不要であると判定することを特徴とする車載情報端末。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの車載情報端末において、
設定された目的地の方向に通行規制が行われている場所があるか否かを判定する通行規制判定手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記通行規制判定手段により設定された目的地の方向に通行規制が行われている場所があると判定された場合は、道路交通情報が必要であると判定することを特徴とする車載情報端末。
【請求項5】
請求項4の車載情報端末において、
前記通行規制判定手段は、FM放送により送信された道路交通情報に基づいて通行規制が行われている場所を判断し、その場所が現在地と前記目的地に基づいて設定された所定の地域内に含まれている場合には、設定された目的地の方向に通行規制が行われている場所があると判定することを特徴とする車載情報端末。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの車載情報端末において、
自車両が渋滞地域を走行中であるか否かを判定する渋滞地域判定手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記渋滞地域判定手段により自車両が渋滞地域を走行中ではないと判定された場合は、道路交通情報が不要であると判定することを特徴とする車載情報端末。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの車載情報端末において、
自車両の平均車速を検出する車速検出手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記車速検出手段により検出された平均車速が所定値以下である場合は、道路交通情報が必要であると判定することを特徴とする車載情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−23093(P2006−23093A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199071(P2004−199071)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】