説明

車載情報端末

【課題】 車両が所定の位置に接近すると起動するアプリケーションをユーザが容易に取捨選択できる車載情報端末を得る。
【解決手段】 アプリケーションを記憶するアプリケーション記憶部3と、外部装置または記録媒体からアプリケーションと起動条件データをダウンロードするデータ転送部2と、アプリケーション記憶部3から起動条件データを読み出して算出する車両の現在位置と各対象地点との距離と起動距離と起動の優先度とに基づいて起動候補となるアプリケーションを選択する起動候補選択部42と、対象地点が、車両の現在位置から起動距離以上離れ、かつ起動距離に一定距離を加えた加算距離以内であって優先度が最も高いアプリケーションを起動抑制候補として選択する起動抑制候補選択部43と、起動抑制候補選択部43による選択と起動候補選択部42による選択との比較結果に応じてアプリケーションを起動するアプリケーション起動部44とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両が所定の位置に接近すると所定の動作を行うアプリケーションを自動的に起動する車載情報端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載情報端末としては、例えばカーナビゲーションシステムがある。現在のカーナビゲーションシステムは、地図および現在地の表示、経路探索、経路案内、施設検索などの主要な機能の他に様々な便利な機能があり、その一つとして、ある所定の地点に車両が接近すると所定のアプリケーションが自動的に起動し、画面表示や音声再生を行う機能がある。
【0003】
代表的なものとしては、例えば交差点案内機能がある(例えば、特許文献1参照)。これは、例えば車載情報端末が作成した案内経路に従って走行している場合、右左折すべき交差点が接近してくると、交差点案内アプリケーションが自動的に起動し、運転者に対して曲がるべき交差点の位置を示す画面表示と、音声による案内を行う機能である。
【0004】
別の例としては、ユーザが設定した地点に車両が接近すると情報を通知する機能がある(例えば、特許文献2参照)。これは、ユーザが設定した地点に車両が接近すると、対応する音声を再生するものである。
【0005】
また別の例としては、案内経路途上の同一種別施設への接近を通知する機能がある(例えば、特許文献3参照)。これは、例えば車載情報端末が作成した案内経路に従って走行している場合、ユーザが指定した種類の施設(ガソリンスタンドやコンビニエンスストアなど)に接近すると画面に情報を表示し、音声を出力して案内を行うものである。
【0006】
以上のようなアプリケーションは全ての車載情報端末が有しているわけではない。すなわち、メーカは機種ごとに必要と思われるアプリケーションのみを付加するので、ユーザは付加されているアプリケーションの中から選択して利用することしかできず、付加されていないアプリケーションを追加したい場合でも容易に追加することができない。また、機種によってはバージョンアップなどによりアプリケーションを付加できるものもあるが、この場合は新たなアプリケーションが全て追加されてしまい、ユーザが必要とするアプリケーションのみを追加することはできない。また、バージョンアップにはユーザが必要としている機能が含まれていないこともある。
【0007】
一方、ユーザが容易にアプリケーションを追加できるようにした試みとして、従来のカーナビゲーションシステムの機能の一部をAPI(Application Program Interface)として公開し、このAPIを使用したアプリケーションをインターネットからダウンロードして追加できるようにしたものがある。APIには車両の現在地を取得する機能が含まれており、これを一定時間間隔ごとに実行してアプリケーション内部に保持された所定の位置、あるいはAPIによって車載情報端末から取得できる所定の位置と比較することにより、接近したときにアプリケーションに所定の動作を実行させることができる。
【0008】
しかしながら、このような仕組みで複数のアプリケーションを動作させると、各アプリケーションが個々に車載情報端末から位置情報を取得するため、システムの負荷が増加するという問題がある。また、車載情報端末にあらかじめ付加されているアプリケーションとユーザが付加したアプリケーション、あるいはユーザが付加した2またはそれ以上のアプリケーションが、同時あるいは近接した時間間隔で起動してしまい、ディスプレイの表示が重なり合ったり音声再生が交錯したりして正しく動作しない場合がある。
【0009】
【特許文献1】特開平06−186051号公報
【特許文献2】特開平09−264753号公報
【特許文献3】特開2003−148978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の車載情報端末は上記のように構成されているので、ある所定の地点に車両が接近すると所定の動作を行うアプリケーションを、ユーザが容易に取捨選択することができないという課題があった。また、アプリケーションを追加することができても、システムの負荷を増大させる場合や、起動するタイミングによって正しく動作しない場合があるという課題があった。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、車両が所定の位置に接近すると所定の動作を行うアプリケーションを、ユーザが容易に取捨選択することができる車載情報端末を得ることを目的とする。また、複数のアプリケーションに対してそれぞれが起動するタイミングを適切に制御し、正しく動作する車載情報端末を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る車載情報端末は、1または複数のアプリケーションを記憶するアプリケーション記憶手段と、1または複数のアプリケーションと、当該各アプリケーションに付随する対象地点の情報を含む起動条件データとを格納する外部装置または記録媒体から、アプリケーションおよびその起動条件データをアプリケーション記憶手段にダウンロードするダウンロード手段と、一定期間ごとに車両の現在位置を取得すると共に、アプリケーション記憶手段から起動条件データを読み出して、車両の現在位置と各対象地点との距離を算出し、当該各距離と、アプリケーションを起動させる車両と対象地点との距離である起動距離と、起動の優先度とに基づいて前記アプリケーション記憶手段から起動候補となるアプリケーションを選択する起動候補選択手段と、アプリケーション記憶手段に記憶されるアプリケーションのうち、対象地点が、車両の現在位置から起動距離以上離れ、かつ当該起動距離に一定距離を加えた加算距離以内であって、優先度が最も高いアプリケーションを起動抑制候補として選択する起動抑制候補選択手段と、起動抑制候補選択手段が選択したアプリケーションの優先度と、起動候補選択手段が選択したアプリケーションの優先度とを比較し、比較結果に応じてアプリケーションを起動するアプリケーション起動手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、車載情報端末が、1または複数のアプリケーションを記憶するアプリケーション記憶手段と、1または複数のアプリケーションと、当該各アプリケーションに付随する対象地点の情報を含む起動条件データとを格納する外部装置または記録媒体から、アプリケーションおよびその起動条件データをアプリケーション記憶手段にダウンロードするダウンロード手段と、一定期間ごとに車両の現在位置を取得すると共に、アプリケーション記憶手段から起動条件データを読み出して、車両の現在位置と各対象地点との距離を算出し、当該各距離と、アプリケーションを起動させる車両と対象地点との距離である起動距離と、起動の優先度とに基づいて前記アプリケーション記憶手段から起動候補となるアプリケーションを選択する起動候補選択手段と、アプリケーション記憶手段に記憶されるアプリケーションのうち、対象地点が、車両の現在位置から起動距離以上離れ、かつ当該起動距離に一定距離を加えた加算距離以内であって、優先度が最も高いアプリケーションを起動抑制候補として選択する起動抑制候補選択手段と、起動抑制候補選択手段が選択したアプリケーションの優先度と、起動候補選択手段が選択したアプリケーションの優先度とを比較し、比較結果に応じてアプリケーションを起動するアプリケーション起動手段とを備えるように構成したので、車両が対象地点に所定の距離範囲内に接近すると起動するアプリケーションをユーザが容易に追加することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による車載情報端末の構成を示すブロック図である。図に示すように、車載情報端末は、外部入出力部(ダウンロード手段)1、データ転送部(ダウンロード手段)2、アプリケーション記憶部(アプリケーション記憶手段)3、アプリケーション実行部4、機能制御部5、ディスプレイ6、スピーカ7、内部状態保持部8、地図データベース部9を備える。
【0015】
外部入出力部1は、リムーバブルメディア(例えばCD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなど)にアクセスするインタフェース機器、または携帯電話などの通信機器を内蔵する。データ転送部2は、外部入出力部1を利用して、リムーバブルメディアや情報配信センターなどから車両が所定の位置に接近すると所定の動作を行うアプリケーションをダウンロードする。
【0016】
アプリケーション記憶部3は、データ転送部2によりダウンロードされたアプリケーションを記憶する。アプリケーション実行部4は、アプリケーション記憶部3に記憶されるアプリケーションを実行する。機能制御部5は、アプリケーション実行部4の指示に応じて、アプリケーションが描画した画面データをディスプレイ6に出力したり、アプリケーションが指示した音声をスピーカ7に出力したりする。ディスプレイ6は、アプリケーションが描画した画面データを表示する。スピーカ7はアプリケーションが指示した音声データを再生して出力する。
【0017】
内部状態保持部8は、車載情報端末の内部状態、例えば、車両の現在地の緯度経度、目的地または経由地の情報、経路案内に関する地点の情報、ユーザが任意に登録している地点の情報等を保持する。地図データベース部9は、地図データを保持し、リムーバブルメディア(外部入出力部1が内蔵するものと共用してもよい)またはハードディスクに保持される。アプリケーション実行部4はアプリケーションを実行する際に、内部状態保持部8および地図データベース部9の保持内容を参照する。
【0018】
また、図示はしていないが、車載情報端末は、上記構成の他に各種プログラムを実行するマイクロプロセッサ、ROMやRAMなどのメモリ、画面描画用のグラフィックチップやフレームバッファ、ユーザがシステムを操作するためのスイッチやマイク、外部インフラストラクチャに対するインタフェースとしてのGPS、FM多重放送、電波ビーコン、光ビーコンなどの受信機、車両の正確な位置を検出するためのジャイロセンサ、車速パルスカウンタなどを搭載している。この実施の形態1の車載情報端末は、上記の構成により車両が所定の位置に接近すると所定の動作を行うアプリケーションを自動的に起動する。
【0019】
次に、動作について説明する。
車載情報端末のアプリケーション記憶部3には、アプリケーションは何も保持されていないか、1または複数のアプリケーションがあらかじめ記憶されている。ユーザは新たなアプリケーションまたはあらかじめ記憶されているアプリケーションとは異なるアプリケーションの使用を希望する場合には、外部からアプリケーションをダウンロードする。すなわち、ユーザが車載情報端末を操作してアプリケーションのダウンロード要求を入力すると、データ転送部2が取得し外部入出力部1を利用してDVD−ROM等のリムーバブルメディアからアプリケーションをダウンロードする。あるいは、インターネットを介して情報配信センターなどからアプリケーションをダウンロードする。なお、データ転送部2は、ダウンロード可能なアプリケーションが複数存在する場合は、機能制御部5を利用して、実際にダウンロードするアプリケーションをユーザが選択するための操作画面をディスプレイ6に表示する。
【0020】
データ転送部2は、ユーザが所望するアプリケーションをダウンロードすると、そのアプリケーションをアプリケーション記憶部3に格納する。アプリケーション記憶部3には複数のアプリケーションが記憶可能であり、リスト形式で記憶される。ユーザはアプリケーションをダウンロード時にリストの何番目として追加するかが選択可能であるが、特に選択されない場合にはリストの最後尾に追加される。
【0021】
図2はアプリケーション実行部4の構成を示すブロック図である。図に示すように、アプリケーション実行部4は、位置参照部(起動候補選択手段)41、起動候補選択部(起動候補選択手段)42、起動抑制候補選択部(起動抑制候補選択手段)43、アプリケーション起動部(アプリケーション起動手段)44を備える。ここで、アプリケーション実行部4はアプリケーションを起動するための条件となる起動条件データを参照する。図3は、起動条件データの例を示す図である。起動条件データは、各アプリケーションに付随し、Location、Start、End、Priority、Valid−From、Valid−Until、Vendorの項目を有する。
【0022】
Locationは、所定の位置、すなわち車両が当該位置に一定距離以内に接近したときにアプリケーションを起動する地点の緯度・経度または施設の種別を示す。Startは、車両が所定の位置または施設にどれだけの距離以内に接近したときに起動するかを表す値、Endは、所定の位置または施設からどれだけの距離以上離れたときに終了するかを表す値、Priorityは優先順位を示す値を示す。Valid−FromおよびValid−Untilは、有効期間を示す年月日と時刻であり、Vendorはアプリケーションの作成者に関する情報である。Locationは必須であるが、他の情報は必須ではなく値が設定されていなくてもよい。
【0023】
図4はアプリケーション実行部4による処理の流れを示すフローチャートである。この図を参照してアプリケーションの実行動作について説明する。
車載情報端末が起動されると、アプリケーション実行部4の位置参照部41は一定の時間間隔、例えば1秒ごとに内部状態保持部8に保持される車両の現在地を参照する(ステップST1)。続いて前回の参照時からの走行距離を算出し、一定距離、例えば100m以上進んでいるか否かを判断する(ステップST2)。進んでいない場合はステップST1に戻る。一定距離以上進んでいた場合は、位置参照部41は起動候補選択部42に対して起動候補となるアプリケーションの選択指示を出す。
【0024】
起動候補選択部42は、指示に応じてアプリケーション記憶部3に記憶されているアプリケーションをリスト順に参照し、各々の有効期間をチェックする。すなわち、起動条件に、1)Valid−FromおよびValid−Untilが共に設定されていない場合、2)Valid−Fromが設定されておりその日時が現在の日時よりも古い場合、3)Valid−Untilが設定されておりその日時が現在の日時よりも新しい場合、4)Valid−FromとValid−Untilが共に設定されており現在の日時がValid−FromとValid−Untilとで示される期間内にある場合、のいずれかの場合のみ、そのアプリケーションを有効なものとして選択する(ステップST3)。なお、この実施の形態1では一定の距離間隔でアプリケーションの起動をチェックするようにしたが、これにより一定の時間間隔ごとにチェックする場合よりもシステムの負荷を減らすことができる。ただし、一定の時間間隔ごとにチェックを実施するようにしても差し支えない。
【0025】
起動候補選択部42は、リスト内に有効期間内のものが選択されたか否かを判定し(ステップST4)、選択されなかった場合はステップST1に戻る。一方、1または複数選択された場合は、各々の起動条件データに基づいて起動タイミングをチェックする。チェックに際してLocationの値とStartの値が参照される。ここで、Locationとして緯度経度が記述されていれば、その位置を以降の処理に使用する。以下、この位置を対象地点と呼ぶ。緯度経度の組が複数記述されている場合は、それらを全て対象地点とする。
【0026】
Locationとして施設の種別が記述されているときは、起動候補選択部42は地図データベース部9の地図データを用いて指定された種別に該当する施設を検索し、その位置を対象地点とする。地図データから複数の施設が検索された場合は、それらすべてを対象地点とする。また、施設の種別が複数指定されている場合は、それらによって地図データから検索される施設の位置すべてを対象地点とする。もし、地図データから該当する施設が一つも検索されない場合は、ステップST1に戻る。
【0027】
Locationとして目的地や経由地であることを示す値、経路案内に関する地点であることを示す値、あるいはユーザが任意に登録している地点の名称やIDが記述されている場合は、起動候補選択部42は内部状態保持部8を参照し、記述された位置に該当する地点を取得して、対象地点とする。複数の地点の名称あるいはIDが記述されている場合は、それらすべてを対象地点とする。もし、記述されている地点が取得できない場合は、ステップST1に戻る。
【0028】
Startには距離が単位付きで指定されているものとし、以下この値を起動距離と呼ぶ。Startの値が指定されていない場合は、ある固定の値(例えば100m)を起動距離として使用する。
【0029】
起動候補選択部42は、ステップST4で選択された1または複数の有効なアプリケーションについて、各々の対象地点が車両の現在地を中心として起動距離を半径とする円内に入っている場合、また当該アプリケーションが複数の対象地点を持つ場合はそれらのうちのいずれかが範囲に入っている場合は、当該アプリケーションを起動候補として選択する(ステップST5)。
【0030】
起動候補が一つも選択されない場合はステップST1に戻る。起動候補が一つのみ選択されている場合は、ステップST8に進む。起動候補が複数選択された場合は、優先度が最も高いアプリケーションを起動候補として選択し(ステップST7)、ステップST8に進む(ステップST6)。ここで、優先度の比較にはPriorityとVendorが使用される。Priorityは優先される度合いを示す数値であり、例えば1から10の10段階で指定される。Priorityが指定されていない場合は1とする。Vendorはアプリケーションの作成者または配布者または配布責任者を示す名前または名称であり、これによって特定のVendorが作成また配布しているアプリケーションの優先度を変更するために使用する。例えば「A」という名前が指定されていればPriorityの値に1を加算し、これを当該アプリケーションの優先度とする。また、例えば「B」という名前が指定されていればPriorityの値に2を加算し、これを当該アプリケーションの優先度とする。このような、Vendorの値に対応する加算値は、起動候補選択部42がテーブル形式で保持する。テーブルに存在しないVendorの値が指定されている場合や、値が指定されていない場合にはPriorityの値そのものを当該アプリケーションの優先度とする。以上の手順により、各々のアプリケーションの優先度の値を決定し、比較する。優先度が同じ値の時はリストの上位にあるアプリケーションを選択する。
【0031】
ここで、優先度の高いアプリケーションとそれよりも優先度の低いアプリケーションが起動されうる位置がごく近くである場合には、二つのアプリケーションが相次いで起動する可能性がある。このような場合に、優先度の高いアプリケーションを優先的に起動させるために、以下のような処理を行う。起動候補選択部42は、起動候補のアプリケーションを選択すると、起動抑制候補選択部43に起動抑制候補選択の指示を出す。起動抑制候補選択部43は指示に応じて、ステップST4で選択された各々のアプリケーションに対し、起動距離に以下に述べるような加工をして起動抑制候補を選択する(ステップST8)。すなわち、優先度が高いアプリケーションは、その起動距離にある一定の値(例えば50m)を加算する。あるいは、優先度に応じた値(例えば優先度が1の時は0m、2の時は10m、3の時は30m等)を加算する。あるいは、内部状態保持部8が保持する車両の速度から、今後のある一定時間を通過するのに要すると考えられる時間(例えば10秒)に当たる距離を計算し、これを加算する。あるいは、これら三つの手法の組み合わせにより加算距離を計算する。以降、この値を起動抑制距離と呼ぶ。
【0032】
ステップST4で選択された1または複数のアプリケーションのそれぞれについて、その対象地点が車両の現在地を中心として起動抑制距離を半径とする円内に入っており、かつ中心を同じくして起動距離を半径とする円内に入っていない場合、また当該アプリケーションが複数の対象地点を持つ場合は、それらのうちのいずれかが同様の条件を満たす場合は、当該アプリケーションを起動抑制候補として選択する。
【0033】
起動抑制候補が一つも選択されないときはステップST10に進む。起動候補が一つだけ選択されたときはステップST9に進む。起動抑制候補が複数選択されたときは、起動候補を選択した際と同様の手順で、最も優先度の高いアプリケーションを起動抑制候補として選択し、ステップST9に進む。起動候補と起動抑制候補の優先度を比較し、両者が同じ時あるいは起動候補の優先度が高い場合はステップST10に進む(ステップST9)。起動抑制候補の優先度が高い場合はステップST1に戻る。起動抑制候補選択部43は、起動抑制候補のチェックが終了したら、アプリケーション起動部44に起動指示を出す。以上の手順によって、優先度の低いアプリケーションが優先度の高いアプリケーションよりもわずかの時間だけ先に起動してしまうのを防ぐことができる。
【0034】
アプリケーション起動部44は指示に応じて、すでに起動しているアプリケーションがあるか否かをチェックする(ステップST10)。起動しているアプリケーションがない場合には、起動候補のアプリケーションを起動する(ステップST13)。起動しているアプリケーションがある場合には、起動中のアプリケーションの優先度と起動候補の優先度を比較し(ステップST11)、起動候補の優先度の方が高い場合は、現在起動しているアプリケーションを終了し(ステップST12)、起動候補のアプリケーションを起動して(ステップST13)、ステップST1に戻る。両者が同じか現在起動しているアプリケーションの優先度が高い場合は何もせずステップST1に戻る。
【0035】
ここで、アプリケーションが起動している間、位置参照部41は起動のチェックと同様の手順で、アプリケーションの終了に関する条件をチェックする。チェックにはLocationの値とEndの値が参照される。Locationの値はすでに述べたアプリケーション起動のチェックの際と同様に扱う。Endの値には距離が単位付きで指定されているものとし、以下この値を終了距離と呼ぶ。Endの値が指定されていない場合は、ある固定の値(例えば0m)を終了距離として使用する。
【0036】
図5は位置参照部41によるアプリケーション終了に関する条件チェックの処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、図4のステップST1からステップST2の間で行われるものである。この図を参照してアプリケーションの終了に関する条件チェックの動作について説明する。
【0037】
まず、位置参照部41は現在起動しているアプリケーションが起動時に参照した対象地点が、車両の現在地を中心として終了距離を半径とする円内に入っているか否かを判断し(ステップST21)、入っている場合は位置参照部41はそのアプリケーションを終了させる。一方、車両が対象地点にいったん接近した場合でも終了距離の円内に入らずに離れていく場合が考えられる。このため、位置参照部41は、終了条件のチェックの度に当該地点への距離を計算し、最短の値を保持しておく(ステップST22)。続いて、当該地点から車両までの距離が、最短の値よりもある一定の距離(例えば10m)離れると(ステップST23)、アプリケーションを終了させる(ステップST25)。そうでない場合には、最短の値になった時刻よりある一定の時間(例えば10秒)経過したとき(ステップST24)、アプリケーションを終了させる(ステップST25)。
【0038】
機能制御部5は、アプリケーション起動部44の指示の下、アプリケーションが描画した画面データをディスプレイ6に表示したりアプリケーションが保持あるいは指示した音声をスピーカ7に出力して再生させる。
【0039】
以上のように、この実施の形態1によれば、外部からアプリケーションをダウンロードし、それに付随する起動条件データを参照しながら車両の位置に応じてアプリケーションを起動するようにしたので、車両が対象地点に接近すると所定の動作を行うアプリケーションをユーザが容易に追加することができる効果を奏する。また、車両の位置のチェックを個々のアプリケーションで行わずにアプリケーション実行部4の位置参照部41が行うようにしたので、システムの負荷が増大したり、起動するタイミングによっては正しく動作しないということを防ぐことができる効果が得られる。
【0040】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2による車載情報端末の構成を示すブロック図である。この車載情報端末は、実施の形態1の図1で示した車載情報端末が、さらにデータ編集部(編集手段)10を備えたものである。データ編集部10は、アプリケーション記憶部3に記憶されるアプリケーションおよびそれに付随する起動条件データをユーザに編集をさせる手段である。
【0041】
上記実施の形態1では、データ転送部2によりダウンロードされたアプリケーションをアプリケーション記憶部3に格納するものについて示したが、この実施の形態2ではユーザがデータ編集部10を利用して、アプリケーション記憶部3に記憶されるアプリケーションおよびその起動条件データを編集できるようにした。
【0042】
すなわち、ユーザが車載情報端末を操作してアプリケーションの編集要求を入力すると、データ編集部10がアプリケーション記憶部3に記憶されるアプリケーションおよびそれに付随する起動条件データを収集する。これにより、データ編集部10は機能制御部5を利用して、ユーザからの編集指示を受け付けてアプリケーションを削除したり、起動条件の各値を変更したり、リストの順序を入れ換えるなどの受付処理を実施する。
【0043】
以上のように、この実施の形態2によれば、車載情報端末がデータ編集部10を備えるようにしたので、アプリケーション記憶部3に記憶されるアプリケーションをユーザが容易に削除したり、起動条件を変更したりすることができる効果を奏する。
【0044】
実施の形態3.
この実施の形態3では、上記実施の形態1,2に示した構成の車載情報端末において、データ転送部2がアプリケーションをダウンロードする際、あるいはアプリケーション実行部4がアプリケーションを実行する際、そのアプリケーションが適正なアプリケーションであるか否かを確認する確認手段を備えるようにした。
【0045】
具体的には、外部入出力部1およびデータ転送部2を介してリムーバブルメディアまたは情報配信センターなどからダウンロードされるアプリケーションに、例えば実行可能な車載情報端末の機種情報をフラグなどによって予め記述しておく。あるいは、例えば正しく動作することが事前に確認されているかどうかを示すフラグを予め記述しておく。ここで当該フラグは当該車載情報端末用のアプリケーションを作成する際に、予め指定された確認用のツールを用いてアプリケーションが正しく動作することを確認し、その際にアプリケーション内に自動的に記述されるようにしておくこととする。あるいは例えばアプリケーションのバイナリデータをある一定の方法で計算してメッセージダイジェストと呼ばれるバイナリデータが改ざんされていないかを確認するための値を生成し、アプリケーション内に予め記述しておく。あるいは例えばアプリケーションに公開鍵暗号方式などに基づく作成者あるいは配布者あるいは配布責任者を確認するための情報(一般に「署名」と呼ばれる)を付加しておく。データ転送部2またはアプリケーション実行部4のアプリケーション起動部44は確認手段としてチェックプログラムを備え、アプリケーションをダウンロードする際またはアプリケーションを実行する際にチェックプログラムを実行して、そのアプリケーション内に記述されているフラグなどをチェックして、アプリケーションが車載情報端末において実行可能であるか否か、またはアプリケーションを実行しても安全であるか否かを確認する。
【0046】
データ転送部2は、チェックしたアプリケーションが適正なアプリケーションである場合に限り、そのアプリケーションをアプリケーション記憶部3に格納する。適正なアプリケーションでない場合は、機能制御部5を利用して、アプリケーションを格納するか否かをユーザが選択するための操作画面をディスプレイ6に表示し、ユーザが格納すると判定した場合に限り、そのアプリケーションをアプリケーション記憶部3に格納するようにしてもよい。アプリケーション起動部44はチェックしたアプリケーションが適正なアプリケーションである場合に限り、アプリケーションを実行するようにする。適正なアプリケーションでない場合は、機能制御部5を利用して、アプリケーションを実行するか否かをユーザが選択するための操作画面をディスプレイ6に表示し、ユーザが実行すると判定した場合に限り、そのアプリケーションを実行するようにしてもよい。
【0047】
以上のように、この実施の形態3によれば、データ転送部2またはアプリケーション実行部4のアプリケーション起動部44が確認手段を備えるようにしたので、不適正なアプリケーションのダウンロードや実行を防止することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態1による車載情報端末の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のアプリケーション実行部の構成を示すブロック図である。
【図3】アプリケーション実行部がアプリケーションを起動する際に参照する条件データの例を示す図である。
【図4】アプリケーション実行部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】アプリケーションの終了に関する条件チェックの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2による車載情報端末の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0049】
1 外部入出力部、2 データ転送部(ダウンロード手段)、3 アプリケーション記憶部(アプリケーション記憶手段)、4 アプリケーション実行部、5 機能制御部、6 ディスプレイ、7 スピーカ、8 内部状態保持部、9 地図データベース部、10 データ編集部(データ編集手段)、41 位置参照部(起動候補選択手段)、42 起動候補選択部(起動候補選択手段)、43 起動抑制候補選択部(起動抑制候補選択)、44 アプリケーション起動部(アプリケーション起動手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が対象地点に所定の距離範囲内に接近すると所定の動作を行うアプリケーションを起動する車載情報端末において、
1または複数のアプリケーションを記憶するアプリケーション記憶手段と、
1または複数のアプリケーションと、当該各アプリケーションに付随する前記対象地点の情報を含む起動条件データとを格納する外部装置または記録媒体から、アプリケーションおよびその起動条件データを前記アプリケーション記憶手段にダウンロードするダウンロード手段と、
一定期間ごとに車両の現在位置を取得すると共に、前記アプリケーション記憶手段から起動条件データを読み出して、車両の現在位置と各対象地点との距離を算出し、当該各距離と、アプリケーションを起動させる車両と対象地点との距離である起動距離と、起動の優先度とに基づいて前記アプリケーション記憶手段から起動候補となるアプリケーションを選択する起動候補選択手段と、
前記アプリケーション記憶手段に記憶されるアプリケーションのうち、対象地点が、車両の現在位置から起動距離以上離れ、かつ当該起動距離に一定距離を加えた加算距離以内であって、優先度が最も高いアプリケーションを起動抑制候補として選択する起動抑制候補選択手段と、
前記起動抑制候補選択手段が選択したアプリケーションの優先度と、前記起動候補選択手段が選択したアプリケーションの優先度とを比較し、比較結果に応じてアプリケーションを起動するアプリケーション起動手段とを備えたことを特徴とする車載情報端末。
【請求項2】
アプリケーション記憶手段に記憶されるアプリケーションまたは起動条件データに対する編集指示を受け付けて、指示内容に基づいてアプリケーションまたは起動条件データを編集する編集手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の車載情報端末。
【請求項3】
ダウンロード手段またはアプリケーション起動手段が、前記アプリケーションをダウンロードする際またはアプリケーションを起動する際に、各アプリケーションに予め記述される確認のための情報を読み出して、当該車載情報端末での実行が安全であるか否かを確認し、安全であるアプリケーションのみをダウンロードまたは実行させる確認手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車載情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−23171(P2006−23171A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200867(P2004−200867)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】