説明

車載携帯電話システム、車載携帯電話通信方法、携帯端末及び車載機器

【課題】既に各種の端末に装備されている、或いはこれから装備されるブルートゥース機能を応用することにより、車輌内での携帯電話の使用を抑制する。
【解決手段】遠距離通信と近距離通信とが可能な携帯端末と、前記携帯端末との間での近距離通信が可能な前記移動体内に搭載した車載機器とを有し、前記車載機器は、前記携帯端末が近距離通信する相手先となる自装置の種別を示す情報を近距離通信によって前記携帯端末に出力する種別提供手段を有している。前記携帯端末は、前記情報提供手段からの情報を得て、自携帯端末による近距離通信先が前記車載機器であるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段からの出力を得て、前記自携帯端末と前記車載機器とが接続状態にあるか否かを監視する監視手段と、前記監視手段から接続状態を示す情報を得て、携帯端末本体の操作を無効にする操作制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載携帯電話システム、車載携帯電話通信方法、携帯端末及び車載機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路交通法では、運転中の携帯電話の使用を禁止しているが、未だに運転中に携帯電話が使用されているのは事実である。運転中での携帯電話の使用を回避する技術として、ハンズフリー電話装置が開発されている(例えば、特許文献1)。また、車輌の道案内をするカーナビゲーション装置には、携帯端末の機能の一部を使って、カーナビゲーション装置を遠隔する技術が開発されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−286779号公報
【特許文献2】特開2003−134559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された前記ハンズフリー装置は、運転中に携帯電話を手にとって通話を可能とするものである。しかし、携帯端末には、音声による通話を行う機能ばかりでなく、それ以外にも多数の機能を備えており、これら通話以外の機能は、例えハンズフリー状態であっても使用可能である。今日、携帯端末においては、音声による通話よりも電子メールを使用する頻度が高くなっている。前記ハンズフリー装置は、走行する車輌内での通話の利便性を向上するものであっても、音声による通話以外の通話、例えば電子メールによる通話では、ハンズフリー機能が発揮されず、運転中での携帯電話の使用を抑制することはできないものである。
【0005】
また、特許文献2に開示された技術では、車輌を運転する運転者と同乗者とによって携帯端末によるカーナビゲーション装置の遠隔操作が制限されることとなる。しかし、前記カーナビゲーション装置の遠隔操作には、携帯端末の一部の機能が用いられているものであり、その携帯端末の通信機能を全面的に制限するものではなく、運転中での携帯電話の使用を抑制することはできないものである。
【0006】
特許文献2には、携帯電話の着信或いは発信操作の有効・無効を判断することが開示されている。そして、特許文献2では、携帯電話を操作する者が自動車の運転者と同一であるか否かを照会する情報と、電位検出部で検出した電位データとを車載機器に送信し、前記車載機器において、携帯端末の操作者と運転者との同一性を判断して、前記携帯電話の着信或いは発信操作を有効・無効を規制するようにしている。
【0007】
しかし、特許文献2では、携帯電話を握った操作者の電位データを取得しているものであるから、同乗者と運転者との電位データが同一であった場合には、同乗者と運転者とを区別することができなくなるという課題が残されている。
【0008】
また、特許文献2では、電位に代えて、指紋や虹彩、或いは静脈パターン等の人体情報を使用することにより、同乗者と運転者とを区別する方式が開示されているが、これらの方式は、カーナビゲーション装置及び携帯電話が保有している機能を有効に利用することなく、新たな構成を組み込む必要があり、システムの構築に必要なコストがアップし、或いは装置のサイズを小型化する妨げになるという課題が残されている。
【0009】
ところで、最近では、ブルートゥース(Bluetooth)機能を備えてハンズフリー装置として使用できるカーナビゲーション装置も普及しつつある。一方、携帯電話でも、ブルートゥース機能を備えた機種が多く開発されている。これらの機器に装備されたブルートゥース機能を利用することにより、車輌内での携帯電話本体の操作を無効にすることは可能である。
【0010】
本発明の目的は、既に各種の端末に装備されている、或いはこれから装備されるブルートゥース機能を応用することにより、車輌内での携帯電話本体の操作を無効にするようにした車載携帯電話システム、車載携帯電話通信方法、及び車載携帯電話システムに最適な携帯端末及び車載機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る車載携帯電話システムは、移動体内の携帯端末による通信を可能にした車載携帯電話システムであって、
遠距離通信と近距離通信とが可能な携帯端末と、前記携帯端末との間での近距離通信が可能な前記移動体内に搭載した車載機器とを有し、
前記車載機器は、前記携帯端末が近距離通信する相手先となる自装置の種別を示す情報を近距離通信によって前記携帯端末に出力する種別提供手段を有し、
前記携帯端末は、前記情報提供手段からの情報を得て、自携帯端末による近距離通信先が前記車載機器であるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段からの出力を得て、前記自携帯端末と前記車載機器とが接続状態にあるか否かを監視する監視手段と、前記監視手段から接続状態を示す情報を得て、携帯端末本体の操作を無効にする操作制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
以上では、本発明を車載携帯電話システムとして構築した場合について記述したが、これに限られるものではない。本発明は、車載携帯電話システムに用いる携帯端末或いは車載機器、さらには本発明の車載携帯電話システムを用いて移動体内からの遠距離通信を行う車載携帯電話通信方法として構築してもよいものである。
【0013】
本発明を車載携帯電話システムに用いる携帯端末として構築した場合、本発明に係る携帯端末は、車載携帯電話システムにおける移動体内での通信操作が可能な携帯端末であって、
前記携帯端末は、遠距離通信が可能であると共に、前記移動体に搭載した車載機器との間での近距離通信が可能であり、前記車載機器の種別を示す情報を得て、自携帯端末による近距離通信先が前記車載機器であるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段からの出力を得て、前記自携帯端末と前記車載機器とが接続状態にあるか否かを監視する監視手段と、前記監視手段から接続状態を示す信号を得て、携帯端末本体の操作を無効にする操作制御手段とを有する構成として構築する。
【0014】
本発明を車載携帯電話システムに用いる車載機器として構築した場合、本発明に係る車載携帯電話システムの車載機器は、車載携帯電話システムの携帯端末と組み合わせて用いられる、移動体に搭載した車載機器であって、
前記車載機器は、前記携帯端末との間での近距離通信が可能なものであり、
前記車載機器は、前記移動体内に搭載され、前記携帯端末が近距離通信する相手先となる自装置の種別を示す情報を近距離通信によって前記携帯端末に出力する種別提供手段を有する構成として構築する。
【0015】
本発明の車載携帯電話システムを用いて通信を行う車載携帯電話通信方法として構築した場合、本発明に係る車載携帯電話通信方法は、移動体の機影対端末による通信を行う車載携帯電話通信方法であって、
遠距離通信と近距離通信とが可能な携帯端末と、前記携帯端末との間での近距離通信が可能な前記移動体内に搭載した車載機器とを有し、
前記携帯端末が近距離通信する相手先となる前記車載機器の種別を示す情報を近距離通信によって前記携帯端末で受信し、
前記携帯端末側において、前記車載機器から前記種別の情報を得て、自携帯端末による近距離通信先が前記車載機器であるか否かを判断し、前記判断結果に基づいて、前記自携帯端末と前記車載機器とが接続状態にあるか否かを監視し、前記監視による接続状態を示す情報を得て、携帯端末本体の操作を無効にする構成として構築する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既に各種の端末に装備されている、或いはこれから装備されるブルートゥース機能を含む近距離通信を応用することにより、車輌内での携帯端末本体の操作を無効にすることにより、携帯端末の使用を抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る車載携帯電話システムを示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る車載携帯電話システムを用いて車載携帯電話通信方法を実行する場合を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態2に係る車載携帯電話システムを示す構成図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る車載携帯電話システムを用いて車載携帯電話通信方法を実行する場合を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る車載携帯電話システムは図1に示す様に、移動体内の携帯端末による通信を可能にした車載携帯電話システムであって、遠距離通信と近距離通信とが可能な携帯端末1と、前記携帯端末1との間での近距離通信が可能な前記移動体内に搭載した車載機器2とを有している。
【0020】
以下の説明では、前記車載機器2として、車輌を運行する際の補助機器であるカーナビゲーション装置(以下、カーナビという)を用いた例を説明するが、車載機器2としては、カーナビに限られるものではなく、車輌を運行する際の補助機器であって、運転者が自由にアクセスして操作可能な機器であれば、いずれのものであってもよい。カーナビ以外の車輌機器2としては、例えばテレビジョン装置があり、このテレビジョン装置はリモコン(ブルートゥース機能)を使用してチャンネルの切替や電源のON,OFFを行うことがある。前記リモコンとして携帯端末が使用される場合がある。本発明の実施形態では、近距離通信の機能、例えばブルートゥース機能を応用するものであるから、このテレビジョン装置も車載機器2の一種として使用できることとなる。また、近距離通信の一例として、ブルートゥース機能を例に挙げたが、これに限られるものではない。近距離通信としては、ブルートゥース機能以外にも、IrDA(Infraid Data Association)を用いることができるものであり、近距離通信としては、微弱電波を用いて近距離(例えば10m以下)での通信を行うものであれば、いずれのものであってもよい。以下の説明では、近距離通信としてブルートゥース機能を利用した例を説明する。また携帯端末による遠距離通信とは、携帯端末が移動網(或いは携帯電話網)にアクセスして、音声或いは電子メールなどの情報を遠距離まで通信する汎用の携帯電話が行う通信携帯を意味している。
【0021】
図1に示す本発明の実施形態1では、携帯端末1にはブルートゥース送受信部11とブルートゥース制御部12とを装備し、カーナビ2にはブルートゥース送受信部21とブルートゥース制御部22とを装備することにより、携帯端末1とカーナビ2との間における近距離通信を可能にしている。なお、携帯端末1内のブルートゥース送受信部11及びブルートゥース制御部12は、新たに携帯端末1に装備してもよく、携帯端末相互間における近距離通信でのデータの遣り取り(赤外線通信)や、駅改札口のゲートとの間で行われている近距離通信でのデータの遣り取り等のために既に装備されている近距離通信の機能を利用するようにしてもよいものである。
【0022】
図1に示す本発明の実施形態1では、さらに、前記カーナビ2には、前記携帯端末1が近距離通信する相手先となる自装置の種別を示す情報を近距離通信によって前記携帯端末1に出力する種別提供部26を有している。図示した例では、前記種別提供部26は、前記種別情報をブルートゥース制御部22及びブルートゥース送受信部21を通して前記携帯端末1ブルートゥース送受信部11及びブルートゥース制御部12に送信することにより、前記種別情報を前記携帯端末1に提供している。なお、前記カーナビ2に装備したブルートゥース送受信部21及びブルートゥース制御部22は、自動車の走行に伴う情報(例えば自動車の速度、移動距離など)を取得する場合や、カーナビ2を遠隔操作する遠隔信号などを送受信する場合などに用いられる。また、前記カーナビ2の操作制御部23は、カーナビ2の動作させる操作部24、表示部25の表示制御を行う。また、前記カーナビ2の表示部25には、道路地図や現在位置を示すマークなどが表示される。前記カーナビ2に装備した構成要素21〜25は、ブルートゥース機能を装備したカーナビ2であれば、必ず備えている構成要素である。
【0023】
前記携帯端末1は、前記種別提供部26からの情報を得て、自携帯端末による近距離通信先が前記車載機器であるか否かを判断する判断部18と、前記判断部18からの出力を得て、前記自携帯端末1と前記車載機器2とが接続状態にあるか否かを監視する監視部19と、前記監視部19から接続状態を示す情報を得て、携帯端末本体の操作を無効にする操作制御部17とを有している。また、前記携帯端末1は、前記判断部18による判定結果と前記監視部19による監視状態とをそれぞれ記憶させるブルートゥース接続状態記憶部13、カーナビ接続状態記憶部14とを備えている。図1では、前記ブルートゥース接続状態記憶部13と前記カーナビ接続状態記憶部14とを別個に設けた例を示しているが、これらを1つの記憶部に集約して、その記憶領域を管理することにより、前記判断部18による判定結果と前記監視部19による監視状態とをそれぞれ記憶させるようにしてもよいものである。前記操作制御部17が携帯端末本体の操作を無効にするとは、携帯端末1による遠距離通信が全て認められないということではなく、携帯端末1による遠距離通信を使用したハンズフリーを利用した通信、或いはカーナビ2が情報を得るために携帯端末1の通信機能を使用する場合などの操作は認められていることを意味する。また、電子メールの編集や画像の閲覧などは携帯端末1による遠距離通信機能を使用していないものであるが、運転時に非常に危険な行為であり、これらの行為は、上述した様に携帯端末本体の操作を無効にするにより、抑制している。また、携帯端末本体の操作を無効にするには、携帯端末1の機能を実行するための操作キーなどを固定して、それらのキーなどによる携帯端末1への操作指令の入力を停止させる。
【0024】
前記ブルートゥース制御部12及び操作制御部17のためにCPU(或いはマイクロプロセッサ)を用いて、このCPUにプログラムを実行させることにより、ブルートゥース制御部12の機能と、前記判断部18が、前記種別提供部26からの情報を得て、自携帯端末による近距離通信先が前記車載機器であるか否かを判断する機能と、前記監視部19が前記判断部18からの出力を得て、前記自携帯端末と前記車載機器とが接続状態にあるか否かを監視する機能と、前記操作制御部17が、前記監視部19から接続状態を示す情報を得て、携帯端末本体の操作を無効にする機能とを実行させることにより、ソフトウェア上で前記ブルートゥース制御部12と前記判断部18と前記監視部19と前記操作制御部17とを実現するようにしている。図1では、ソフトウェア上で前記ブルートゥース制御部12と前記判断部18と前記監視部19と前記操作制御部17とを実現することに代えて、前記ブルートゥース制御部12と前記判断部18と前記監視部19と前記操作制御部17とをハードウェアとして構築した場合を想定して、前記判断部18及び前記監視部19を図示している。以下の説明では、前記判断部18及び前記監視部19をハードウェアとして構築した場合に基づいて説明する。
【0025】
次に、本発明の実施形態1に係る車載電話通信システムを用いることにより、移動体内からの携帯端末本体の操作を無効にする車載携帯電話通信方法を実行する場合を図1及び図2に基づいて説明する。
【0026】
近距離通信及び遠距離通信が可能な携帯端末1を携えて運転者が移動体例えば自動車に乗り込んで運転席に着席すると、カーナビ2のブルートゥース送受信部21に対する携帯端末1のブルートゥース送受信部11の距離が接近し、カーナビ2のブルートゥース制御部22と携帯端末1のブルートゥース制御部12との相互間における近距離通信が可能となり、カーナビ2のブルートゥース制御部22及びブルートゥース送受信部21と携帯端末1のブルートゥース送受信部11及びブルートゥース制御部12との相互間に近距離通信の伝送系が形成される。
【0027】
前記伝送系が確立した際、カーナビ2のブルートゥース制御部22は、前記携帯端末1が近距離通信する相手先となる自装置の種別を示す情報を自カーナビ2の種別提供部26から受け取り、その受け取った前記種別情報を自カーナビ2のブルートゥース送受信部21に出力する。前記自カーナビ2のブルートゥース送受信部21は、前記種別情報を近距離通信によって携帯端末1に向けて送る。
【0028】
前記携帯端末1のブルートゥース送受信部11は、前記カーナビ2のブルートゥース送受信部21から送られた前記種別情報を受信し、これを自携帯端末1のブルートゥース制御部12に出力する。前記携帯端末1のブルートゥース送受信部12は、受信した前記種別情報を判断部18に出力する。
【0029】
前記判断部18は、前記ブルートゥース送受信部12から前記種別情報に基づいて、自携帯端末1による近距離通信先が前記カーナビ2であるか否かを判断する、すなわち近距離通信のブルートゥース接続であるか否かを判断する(図2のステップ201,202)。もし、前記判断部18は、ブルートゥース接続でないと判断した場合(図2のステップ202)、前記ブルートゥース制御部12から次の種別情報が送られてくるまで待機する。
【0030】
前記判断部18は、ブルートゥース接続であると判断した場合(図2のステップ201)、その判断結果を前記ブルートゥース制御部12に出力する。前記ブルートゥース制御部12は、前記判断部18がブルートゥース接続であると判断した場合、その判断結果として“ブルートゥース接続状態が接続中である”という情報をブルートゥース接続状態記憶部13に記憶させる(図2のステップ203)。
【0031】
監視部19は、前記ブルートゥース接続状態記憶部13にアクセスしてその記憶情報を逐次読み出す。前記監視部19は、前記ブルートゥース接続状態記憶部13にアクセスして、“ブルートゥース接続状態が接続中である”との情報を読み出した場合、前記判断部18からの出力を得て、前記自携帯端末1と前記カーナビ2とが接続状態にあるか否かを監視する。前記ブルートゥース制御部12は、前記監視部19が自携帯端末1とカーナビ2との接続であることを監視している場合、その監視結果として“カーナビ接続状態である”という情報をカーナビ接続状態記憶部14に記憶させる(図2のステップ206)。前記ブルートゥース制御部12は、前記監視部19が自携帯端末1とカーナビ2との接続であるとして監視していない場合、処理を、ブルートゥース接続を解除させるか否かの処理に移行させる(図2のステップ208,209)。
【0032】
操作制御部17は、前記カーナビ接続状態記憶部14にアクセスしてその記憶情報を逐次読み出す。前記操作制御部17は、前記カーナビ接続状態記憶部14にアクセスして、“カーナビ接続状態が接続中である”との情報を読み出した場合、前記監視部19からの出力を得て、携帯端末本体の操作を無効にする。具体的には、前記操作制御部17は、自携帯端末1の表示部16に“操作ロック中”の表示をすることを制御するとともに、自携帯端末1の操作部15を制御する(図2のステップ207)。前記自携帯端末1の操作部15が前記操作制御部17によって制御されると、携帯端末本体の操作が無効になって操作部15による入力が不可能となる、すなわち携帯端末本体の操作を無効になる。なお、カーナビ2の操作を携帯端末の機能の一部を利用して近距離通信によって行う場合があるが、前記近距離通信のうち、カーナビ2の種別提供部26からの情報を取得するための近距離通信の伝送系を除いて、その他の近距離通信を、操作制御部17による操作部15の制御により停止するようにしてもよいものである。
【0033】
運転者は車輌を目的地まで走行させると、運転席を離れるものである。運転者が運転席を離れると、カーナビ2に対する携帯端末1の距離が近距離通信によるエリアを逸脱するため、カーナビ2と携帯端末1との相互間でのブルートゥース接続が切れることとなる。このような状態となると、前記携帯端末1のブルートゥース制御部12は、カーナビ2からの近距離通信による情報を取得できなくなる(図2のステップ208)。
【0034】
したがって、前記携帯端末1の判断部18は、前記カーナビ2とのブルートゥース接続ではないと判断し(図2のステップ211)、前記監視部19は、前記カーナビ2との接続状態が断絶したとする(図2のステップ210)。これにより、前記ブルートゥース接続状態記憶部13及びカーナビ接続状態記憶部14にそれぞれ前記カーナビ2との近距離通信に必要な情報が記憶されていないこととなる。
【0035】
前記操作制御部17は、前記カーナビ接続状態記憶部14にアクセスして、その記憶情報を読み出すが、運転者が運転席を離れた状態では、前記操作制御部17がカーナビ接続状態記憶部14をアクセスしても携帯端末本体の操作を無効にするための情報が皆無であるため、前記操作制御部17は、携帯端末1の操作部15と表示部16との制限を解除する(図2のステップ212)。
【0036】
これにより、前記携帯端末1の表示部16に表示されていた“操作ロック中”の文字が消えて、携帯端末本体の操作を無効にすることが解除されるため、ユーザ(運転者)は、携帯端末本体の操作、例えばキーボタンを操作して、携帯端末1で移動網(或いは携帯電話網)にアクセスし、その移動網(或いは携帯電話網)を利用して相手方と通常に遠距離通信を行う。もし、前記操作制御部17がカーナビ接続状態記憶部14をアクセスして、携帯端末本体の操作を無効にするという情報が存在する場合には、携帯端末1の操作部15と表示部16との制限を維持する(図2のステップ209)。
【0037】
以上のように、本発明の実施形態1によれば、既に各種の端末に装備されている、或いはこれから装備されるブルートゥース機能を含む近距離通信を応用することにより、車輌内での携帯端末の使用を抑制することができる。したがって、自動車に搭載されたブルートゥース機能付きカーナビが搭載された移動体である例えば自動車に乗った場合に携帯端末の操作を無効にすることができ、法律で禁止されている運転中の携帯電話の操作を抑制することが可能となり、事故防止等に貢献できるものである。
【0038】
また、カーナビの操作を携帯端末の機能の一部を利用して近距離通信によって行う場合があるが、前記近距離通信のうち、カーナビの種別提供部からの情報を取得するための近距離通信の伝送系を除いて、その他の近距離通信を、操作制御部による操作部の制御により携帯端末本体の操作を無効にすることができ、さらに自動車内での携帯端末を使用して行われる通信をより有効に抑制することができる。
【0039】
また、本発明の実施形態1において、車載携帯電話システムに用いる携帯端末或いは車載機器として構築することにより、これらの端末の機能を増加させることができ、しかも、法律で禁止されている運転中の携帯電話操作を抑制することが可能な機器として価値を増すことができる。なお、携帯端末として携帯電話を使用することが想定されるが、近距離通信と遠距離通信の機能をもつ端末であれば、携帯電話以外の端末を前記携帯端末として用いることができるものである。
【0040】
(実施形態2)
以上説明した本実施形態1では、運転者以外に同乗者がいる場合、或いは自動車を路肩に停止させて携帯端末による遠距離通信を行っても支障がない場合でも、携帯端末本体の操作が無効にされてしまうことになる。そこで、上述した問題に対処した例を本発明の実施形態2として説明する。
【0041】
前記カーナビ2は、自動車の速度や移動距離の情報を取得して、GPS(Global Positioning System)用衛星から受信した信号に前記情報に基づく補正等を行って現在の位置を割り出す機能を装備している。本発明の実施形態2では、前記カーナビ2の機能を利用して上述した問題に対処している。なお、本発明の実施形態2を説明するにあたっては、実施形態1と相違する点について説明する。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0042】
前記カーナビ2が自動車の速度が“零”であるという情報を取得した場合、このことは自動車が停止したことを示すものであり、しかも、その停止時間が継続する場合には、自動車を路肩に停止させて例えば休憩を取っていることなどが想定できる。
【0043】
そこで、本発明の実施形態2では、前記カーナビ2に操作許可/操作不許可部27を設けている。前記操作許可/操作不許可部27は、前記カーナビ2から自動車の速度情報を得て、その情報から自動車が停止している状態を検出し、かつその停止時間をタイマで計測することにより、操作許可信号又は操作不許可信号をカーナビ2のブルートゥース制御部22に出力する。前記停止時間と比較する閾値は、経験則に従って携帯端末1による遠距離通信等を行うのに必要な時間等を加味して設定する。
【0044】
従って、本発明の実施形態2において、前記操作許可/操作不許可部27は、前記カーナビ2から自動車の速度情報を得て、その情報から自動車が停止している状態を検出し、かつその停止時間をタイマで計測することにより、その停止時間が閾値以下である場合には操作不許可信号を、閾値を越えている場合には操作許可信号をカーナビ2のブルートゥース制御部22に出力する。
【0045】
前記ブルートゥース制御部22は、前記操作許可/操作不許可部27が出力した前記操作許可信号或いは前記操作不許可信号をブルートゥース送受信部21に通して携帯端末1に送る。
【0046】
前記携帯端末1のブルートゥース制御部12は、前記カーナビ2から前記操作許可信号或いは前記操作不許可信号を前記監視部19に出力する。
【0047】
自動車が停止している状態であっても、運転者が携帯端末1を携えて運転席に着席している限りは、前記カーナビ2と前記携帯端末1との間には近距離通信の伝送系が確立されているから、前記監視部19は、前記カーナビ2と前記携帯端末1との間が近距離通信状態にあるとして、カーナビ接続状態が接続中である情報をカーナビ接続状態記憶部14に記憶させている。このため、自動車が停止して携帯端末による遠距離通信等が可能であっても、その運転者は携帯端末1を使って遠距離通信等を行うことはできない。
【0048】
そこで、本発明の実施形態2では、前記カーナビ2の前記操作許可/操作不許可部27が出力した前記操作許可信号或いは前記操作不許可信号を前記携帯端末1のブルートゥース制御部12で取得し、その操作許可信号或いは操作不許可信号を前記監視部19に供給している。
【0049】
前記監視部19は、ブルートゥース制御部12から操作不許可信号を受け入れた際に、カーナビ接続状態が接続中である情報を前記カーナビ接続状態記憶部14に記憶させる(図4のステップ214)。また前記監視部19が、ブルートゥース制御部12から操作許可信号を受け入れた際に、カーナビ接続状態が接続中である情報は、前記カーナビ接続状態記憶部14から消失する(図4のステップ210、ステップ211)。
【0050】
前記操作制御部17は、前記カーナビ接続状態記憶部14にアクセスして、その記憶情報を読み出すが、ブルートゥース制御部12から操作許可信号を受け入れた際には、前記操作制御部17がカーナビ接続状態記憶部14をアクセスしても、携帯端末本体の操作を無効にするための情報が皆無であるため、前記操作制御部17は、携帯端末1の操作部15と表示部16との制限を解除する(図4のステップ212)。
【0051】
これにより、前記携帯端末1の表示部16に表示されていた“操作ロック中”の文字が消えて、ユーザ(運転者)は、携帯端末1で移動網(或いは携帯電話網)にアクセスし、その移動網(或いは携帯電話網)を利用して相手方と通常に通信等を行う。
【0052】
前記監視部19が、ブルートゥース制御部12から操作不許可信号を受け入れた際に、カーナビ接続状態が接続中である情報を前記カーナビ接続状態記憶部14に記憶させる。また、前記操作制御部17は、カーナビ接続状態記憶部14をアクセスして、携帯端末本体の操作を無効にするための情報が存在する場合には、携帯端末1の操作部15と表示部16との制限を維持する(図2のステップ207)。
【0053】
以上のように本発明の実施形態2によれば、自動車を路肩に停止させて携帯端末による遠距離通信を行っても支障がないなどの場合に、携帯端末本体の操作を無効にする抑制を解除することができ、運転者は携帯する携帯端末を使って車輌内から遠距離通信等を行うことができる。
【0054】
以上説明した実施形態では、前記操作許可/操作不許可部27は、前記カーナビ2から自動車の速度情報を得て、その情報から自動車が停止している状態を検出し、かつその停止時間をタイマで計測することにより、操作許可信号又は操作不許可信号を出力するようにしたが、これに限られるものではない。
【0055】
自動車内に着席した運転者と同乗者との車載機器であるカーナビ2に対する位置及び距離は異なるものである。この場合でも、運転者と同乗者とが携帯する携帯端末1は、それぞれの近距離通信機能の1つであるブルートゥース機能を使って1台のカーナビ2にブルートゥース接続状態となっている。また、距離に着目した場合、同乗者の携帯端末1及び運転者の携帯端末1と1台のカーナビ2に対する距離は異なるものであり、前記カーナビ2における近距離通信による電界強度は、同乗者の携帯端末1と運転者の携帯端末1とで異なるものである。距離関係からすると、同乗者の携帯端末1に対応する電界強度は、運転者の携帯端末1に対応する電界強度よりも低いものである。
【0056】
そこで、前記操作許可/操作不許可部27は、同乗者の携帯端末1及び運転者の携帯端末1による近距離通信での電界強度の差異を検出して、同乗者の携帯端末1の操作許可信号を、運転者の携帯端末1に操作不許可信号をそれぞれ出力するようにしてもよいものである。このようにすれば、運転者以外の同乗者が自動車内で携帯端末1による遠距離通信を行うことができる。
【0057】
また、前記操作許可/操作不許可部27は、同乗者の携帯端末1及び運転者の携帯端末1による近距離通信での電界強度の差異を検出して、同乗者の携帯端末1の操作許可信号を、運転者の携帯端末1に操作不許可信号をそれぞれ出力するようにしたが、これに限られるものではない。
【0058】
上述したように、運転者と同乗者とは着席する位置に着目した場合、同乗者の携帯端末1及び運転者の携帯端末1と1台のカーナビ2に対する位置は異なるものである。そこで、前記操作許可/操作不許可部27は、同乗者の携帯端末1及び運転者の携帯端末1の着席位置を検出して、同乗者の携帯端末1の操作許可信号を、運転者の携帯端末1に操作不許可信号をそれぞれ出力するようにしてもよいものである。このようにすれば、運転者以外の同乗者が所有する携帯端末本体の操作を無効にされることはなく、自動車内で携帯端末1による遠距離通信などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、法律で禁止されている運転中の携帯端末の操作を抑制することが可能となり、事故防止等に貢献できるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 携帯端末
2 カーナビゲーション装置(車載機器)
12 ブルートゥース送受信部
18 判断部18(判断手段)
19 監視部(監視手段)
26 種別提供部(種別提供部)
27 操作許可/操作不許可部(操作許可/操作不許可部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体内の携帯端末による通信を可能にした車載携帯電話システムであって、
遠距離通信と近距離通信とが可能な携帯端末と、前記携帯端末との間での近距離通信が可能な前記移動体内に搭載した車載機器とを有し、
前記車載機器は、前記携帯端末が近距離通信する相手先となる自装置の種別を示す情報を近距離通信によって前記携帯端末に出力する種別提供手段を有し、
前記携帯端末は、
前記情報提供手段からの情報を得て、自携帯端末による近距離通信先が前記車載機器であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段からの出力を得て、前記自携帯端末と前記車載機器とが接続状態にあるか否かを監視する監視手段と、
前記監視手段から接続状態を示す情報を得て、携帯端末本体の操作を無効にする操作制御手段とを有することを特徴とする車載携帯電話システム。
【請求項2】
前記操作制御手段は、前記自携帯端末が前記車載機器との間で近距離通信状態である際に、前記自携帯端末の表示部に携帯端末本体の操作無効を表示する機能を有するものである請求項1に記載の車載携帯電話システム。
【請求項3】
前記車載機器は、前記車載機器に対する前記携帯端末の距離或いは位置に応じて操作許可信号/操作不許可信号を近距離通信により相手先の携帯端末に提供する操作許可/操作不許可手段を有し、
前記携帯端末の前記監視手段は、前記操作許可/操作不許可手段から提供される前記操作許可信号/操作不許可信号を参照して前記接続状態を監視するものである請求項1に記載の車載携帯電話システム。
【請求項4】
車載携帯電話システムにおける移動体内での通信操作が可能な携帯端末であって、
前記携帯端末は、遠距離通信が可能であると共に、前記移動体に搭載した車載機器との間での近距離通信が可能であり、
前記車載機器の種別を示す情報を得て、自携帯端末による近距離通信先が前記車載機器であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段からの出力を得て、前記自携帯端末と前記車載機器とが接続状態にあるか否かを監視する監視手段と、
前記監視手段から接続状態を示す信号を得て、携帯端末本体の操作を無効にする操作制御手段とを有することを特徴とする携帯端末。
【請求項5】
前記操作制御手段は、前記自携帯端末が前記車載機器との間で近距離通信状態である際に、前記自携帯端末の表示部に携帯端末本体の操作無効を表示する機能を有するものである請求項4に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記携帯端末の前記監視手段は、前記車載機器から提供される操作許可信号/操作不許可信号を参照して前記接続状態を監視するものである請求項4に記載の携帯端末。
【請求項7】
車載携帯電話システムの携帯端末と組み合わせて用いられる、移動体に搭載した車載機器であって、
前記車載機器は、前記携帯端末との間での近距離通信が可能なものであり、
前記車載機器は、前記移動体内に搭載され、前記携帯端末が近距離通信する相手先となる自装置の種別を示す情報を近距離通信によって前記携帯端末に出力する種別提供手段を有することを特徴とする車載携帯電話システムの車載機器。
【請求項8】
前記車載機器は、前記車載機器に対する前記携帯端末の距離或いは位置に応じて操作許可信号/操作不許可信号を近距離通信により相手先の携帯端末に提供する操作許可/操作不許可手段を有する請求項7に記載の車載携帯電話システの車載機器。
【請求項9】
移動体内の携帯端末による通信を行う車載携帯電話通信方法であって、
遠距離通信と近距離通信とが可能な携帯端末と、前記携帯端末との間での近距離通信が可能な前記移動体内に搭載した車載機器とを有し、
前記携帯端末が近距離通信する相手先となる前記車載機器の種別を示す情報を近距離通信によって前記携帯端末で受信し、
前記携帯端末側において、前記車載機器から前記種別の情報を得て、自携帯端末による近距離通信先が前記車載機器であるか否かを判断し、
前記判断結果に基づいて、前記自携帯端末と前記車載機器とが接続状態にあるか否かを監視し、
前記監視による接続状態を示す情報を得て、携帯端末本体の操作を無効にすることを特徴とする車載携帯電話通信方法。
【請求項10】
前記自携帯端末が前記車載機器との間で近距離通信状態である際に、前記自携帯端末の表示部に携帯端末本体の操作無効を表示する請求項9に記載の車載携帯電話通信方法。
【請求項11】
前記車載機器側から、前記車載機器に対する前記携帯端末の距離或いは位置に応じて操作許可信号/操作不許可信号を近距離通信により相手先の携帯端末に提供し、
前記携帯端末側において、前記操作許可信号/操作不許可信号を参照して前記接続状態を監視する請求項9に記載の車載携帯電話通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−239283(P2010−239283A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83176(P2009−83176)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】