説明

車載機のトレイローディング機構

【課題】ディスクトレイが車室内に時間的、スペース的に大きく出張ることがなく、ディスクトレイが筐体内に搬送される過程で、車体振動等によりディスクトレイからディスクが外れることがないローディング機構を提供する。
【解決手段】筐体1から突出自在なディスクトレイ3と、ディスクトレイの上方に開口したディスク挿入口と、ディスク挿入口から所定の挿入位置までディスク15が挿入されたことを検知するセンサ4と、センサがディスクを検知したとき、ディスクの真下位置までディスクトレイを突出させる突出機構9と、該突出したディスクトレイに移載したディスクをディスクトレイ3と一体にローディングするとき、該ディスクトレイにディスクを固定する固定手段11,12,13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVD等のディスクをローディングする車載機のトレイローディング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車載用のCD/DVDプレイヤー等において、ディスクのローディング/イジェクトは、ディスクをゴムローラとアッパーシャーシの間に挟み込んで筐体内に搬送するものが主流となっている(例えば、特許文献1参照)。しかし、ディスクを挟み込む方式では、ディスクの表面性の違い、挟み込み力のバラツキ、異物の捲き込み等によりディスク表面に傷つきの可能性を完全に排除することができない。
一方、ディスクトップPC等にあっては、従来、ディスクをディスクトレイに載せて筐体内にローディングするものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−140849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のトレイローディング機構を車載機に採用した場合には、イジェクトボタンを押して飛び出したディスクトレイにディスクを搭載し、再度イジェクトボタンを押すまではディスクトレイが筐体から外に飛び出したままとなるため、車室内にトレイが大きく出張ったままとなって、スペースを占有する欠点がある。また、ディスクトレイが筐体内に搬送される過程で、車体振動等によりディスクがディスクトレイから外れ、円滑なローディングを行えない等の欠点がある。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、ディスクトレイがディスクを待ち受けているとき、車室内にトレイが大きく出張るままとなることがなく、車室内スペースを有効利用でき、ディスクトレイが筐体内に搬送される過程で、車体振動等によりディスクトレイからディスクが外れることがない構造を有した車載機のトレイローディング機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、筐体から突出自在なディスクトレイと、前記ディスクトレイの上方に開口したディスク挿入口と、前記ディスク挿入口から所定の挿入位置までディスクが挿入されたことを検知するセンサと、前記センサがディスクを検知したとき、少なくとも該ディスクの真下位置まで前記ディスクトレイを突出させる突出機構とを備えている。
本発明では、センサがディスクを検知したときのみに、突出機構が、ディスクの真下位置までディスクトレイを突出させる。
そのため、ディスクトレイは、ディスクを掬い取れる最低限の突出形状を、ディスクローディングが必要となる直前まで排出しないこととなり、車室内の限られたスペースを節約し、例えば車室内の人の動作を阻害することがない。
この場合において、前記突出機構により突出されたディスクトレイに移載したディスクを前記ディスクトレイに固定する固定手段を備えてもよい。
この構成では、ディスクトレイが筐体内に搬送される過程で、車体振動等によりディスクトレイからディスクが外れることがない。
【0006】
前記固定手段は複数の爪機構を備えてもよい。
この爪機構が、例えば挿入するディスクの先端側に当接する位置と、ディスクの後端側に当接する位置とに設けられ、各爪機構がばねで付勢される形態であれば、ユーザが、ばね力に抗して、先端側の爪機構を押し退けて、ディスクをディスクトレイ上に載置するだけで、該ディスクは、先端側の爪機構のばね付勢力で押し戻されて、該爪機構と、後端側に位置する爪機構との間に、簡単に固定できる。
この場合において、前記ディスクトレイは前半側がディスク形状と一致する同心円となっていてもよい。
この形態では、ディスクトレイが余分に車室内の空間に突出することがなく、従来のトレイローディング機構のようにディスクを待ち受けて、ディスクトレイが車室内に大きく出張っていることがなく、省スペース化がはかれる。
また、前記突出機構は前記ディスクトレイに一体化したラックと、前記ラックに噛み合うピニオンと、前記ピニオンを駆動する駆動モータとを備えていてもよい。
前記ラックは前記ディスクトレイの後半部の一辺に形成されていてもよい。
これら構成では、突出機構を簡単に形成でき、省スペース化がはかれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ディスクを待ち受けて、ディスクトレイが車室内に大きく出張ったままとなることがなく、ディスクトレイが筐体外で占有するスペースと時間を最小限にして、車室内スペースを有効に利用できる。
また、ディスクトレイを筐体内に搬送する過程で、固定手段を用いてディスクトレイにディスクを固定すれば、自動車走行等による振動、衝撃等によりディスクがディスクトレイから外れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】Aは、一実施の形態を示す車載機の平面図、Bは、端面図である。
【図2】トレイローディングの動作を説明する図である。
【図3】トレイローディングの動作を説明する図である。
【図4】トレイローディングの動作を説明する図である。
【図5】トレイローディングの動作を説明する図である。
【図6】Aは、爪機構の平面図、Bは、同じく側面図である。
【図7】Aは、爪機構の平面図、Bは、同じく側面図である。
【図8】Aは、爪機構の側面図、Bは、解除された爪機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づき説明する。
図1Aは、CD/DVDプレイヤー等の車載音響機器を示す平面図、図1Bは、同車載音響機器を正面から見た図である。1は筐体を示しており、この筐体1には、筐体1から外に突出自在なディスクトレイ3と、このディスクトレイ3と共に筐体1内にローディングされるディスクをチャッキングして演奏するクランプ機構5とが設けられている。
また、図1Bに示すように、ディスクトレイ3の上方には、筐体1の前面に横長に開口したディスク挿入口7が設けられている。
ディスクトレイ3は、図1Aに示すように、前半部3Aがディスク形状と一致する同心円となっており、後半部3Bが略矩形の枠状となっている。
ディスクトレイ3の前半部3Aには、ディスクの外形よりも一回り大きく形成したディスク収容凹部3Cが設けられ、このディスク収容凹部3Cの中央には、クランプ機構5を露出させるように、略V字状の切欠き3Dが設けられている。枠状の後半部3Bの一辺には、ラック3Eが形成され、ラック3Eに噛み合うピニオン3Fが駆動モータ9の出力軸に取り付けられている。
【0010】
筐体1はアッパーシャーシ1Aを含み、その裏面には、図2に示すように、挿入されるディスク15に対応し、3つのセンサ4A,4B,4Cが配置されている。センサ4A,4B,4Cは、ディスク15が、ディスク挿入口7から所定の挿入位置(ディスク挿入位置)まで挿入されたことを検知する。センサ4A,4B,4C全てがディスク15を検知すると、駆動モータ9が駆動し、ピニオン3Fが回転し、ラックとピニオンの機構(突出機構)によって、ディスクトレイ3が矢印A方向に移動し、最終的に、図3に示すように、筐体1からディスク15の真下位置まで突出する。
本構成では、ディスクトレイ3の突出位置が、上記ディスク挿入位置に対応した位置であり、ディスク15をディスクトレイ3が掬い取れる最低限の突出量となっているため、車室内の省スペース化がはかれる。
また、前半部3Aが、ディスク形状と一致する同心円となっているため、ディスクトレイ3の最大突出位置において、ディスクトレイ3がディスク外形よりも出張ることが少なく、車室内の省スペース化がはかれる。
【0011】
ディスクトレイ3には、3つの爪機構(固定手段)11〜13が設けられている。爪機構11〜13は、ディスク15を、ディスクトレイ3と一体にローディングするときに、該ディスク15を、ディスクトレイ3上に固定する。
この実施の形態では、図3に示すように、ディスクトレイ3の前半部3Aと後半部3Bの境界近傍に、左右一対の爪機構12,13が設けられ、ディスクトレイ3の前半部3Aの最前端に、一つの爪機構11が設けられている。
左右一対の爪機構12,13は、矢印B,Cの方向に各々ばね付勢されており、ユーザは、ディスク15の挿入先端を、各々の爪機構12,13に押し当てて、上記ばね力に抗し、爪機構12,13を、図4に示すように、矢印D,Eの方向に押し退けるようにして、ディスク15をディスクトレイ3上に載せる。
ディスク15を載せた後に、ユーザが手を離すと、爪機構12,13がばね力で、ディスク15を押し返し、この爪機構12,13、及び最前端の爪機構11により、ディスク15がディスクトレイ3上に固定される。
【0012】
また、ディスクトレイ3が、図3に示すように、ディスク15の真下位置まで突出すると、タイマーが計時を開始する。そして、所定時間(例えば5〜10sec)が経過すると、駆動モータ9が逆回転し、ピニオン3Fが逆回転して、ラックとピニオンの作用によって、ディスクトレイ3が矢印F方向に移動し、図5に示すように、ディスク15が、筐体1内にローディングされる。ローディング完了位置では、クランプ機構5が上昇し、ディスク15をクランプし、爪機構11,12,13が解除され、ディスク15が演奏される。なお、ローディングの開始は、タイマー計時でなく、開始ボタンを設け、これを押動することで開始しても良いし、ディスクトレイ15を押し込むことによって開始するようにしても良い。
【0013】
図6、図7は、爪機構12,13の構造を示す。
なお、爪機構12,13は、ほぼ等しい構造であるので、以下では、爪機構13について説明し、爪機構12の説明を省略する。
図6は、図3に示すディスク挿入位置での爪機構13を示す。すなわち、爪機構13は、ディスク15の先端で押し退けられた状態にある。爪機構13は、図6A、図6Bに示すように、ディスクトレイ3の上に突出したディスク保持爪13Aと、ディスク保持爪13Aの下端に一体化され、ディスクトレイ3の下に突出したボス13Bとを備えている。ディスク保持爪13Aには、耳片13Cが一体化し、耳片13Cがピン13Dにより、ディスクトレイ3に回動自在に支持されている。ボス13Bは、ディスクトレイ3の弓形孔3Gを貫通し、弓形孔3G内を移動自在である。
【0014】
図7A、図7Bは、図5に示すローディング完了位置での爪機構13を示す。
この位置では、爪機構13が解除されており、ディスク15は、クランプ機構5によりクランプされ、演奏が可能な状態にある。
このローディング完了位置では、ボス13Bの下方に突起部材17が位置し、この突起部材17は、クランプ機構5に支持されている。
このローディング完了位置では、クランプ機構5が上昇し、ディスク15をクランプすると同時に、突起部材17が矢印Gの方向に上昇し、この突起部材17の先端傾斜面17Aが、ボス13Bを矢印Hの方向に押し退ける。また同時に、ボス13Bを矢印Iの方向に回動させる。この際、ボス13Bが弓形孔3G内を矢印Hの方向に移動し、かつボス13Bが矢印Iの方向に回動することで、ディスク保持爪13Aが、ディスク15から離れて、爪機構13が解除される。
【0015】
図8は、最前端の爪機構11の構造を示す。
図8Aは、図3に示すディスク挿入位置での爪機構11を示し、この状態では、ディスク15の外周縁15Aが、爪機構11にクランプされている。
すなわち、この爪機構11は、ディスク15の外周縁15Aを、ディスクトレイ3と協働して狭持する保持爪11Aを備えている。保持爪11Aには支持軸11Bが固着され、この支持軸11Bはディスクトレイ3を貫通して、このディスクトレイ3の裏側に延在し、支持軸11Bの鍔部11Cと、ディスクトレイ3との間には、保持爪11Aを下方に付勢する付勢ばね11Dが介装されている。
ディスク挿入位置では、ディスク15が、爪機構12,13により押し退けられ、ディスク15の外周縁15Aが、付勢ばね11Dのばね力に抗し、ディスクトレイ3と保持爪11Aの間に進入して狭持される。
【0016】
図8Bは、図5に示すローディング完了位置での爪機構11を示す。
この位置では、爪機構11が解除されており、ディスク15は、クランプ機構5によりクランプされ、演奏が可能な状態にある。
このローディング完了位置では、鍔部11Cの下方に突起19が位置し、この突起19は、クランプ機構5に支持されている。
このローディング完了位置では、クランプ機構5が上昇し、ディスク15をクランプすると同時に、突起19が矢印Jの方向に一体に上昇し、この突起19が、付勢ばね11Dのばね力に抗し、鍔部11Cを上方に押し上げる。これにより、保持爪11Aがディスク15から離れ、爪機構11が解除される。
【0017】
本実施の形態では、センサ4A,4B,4Cがディスク15を検知したとき、突出機構が、ディスク15の真下位置までディスクトレイ3を突出させるため、ディスクトレイ3が車室内に時間的、スペース的に余分に突出することがなく、ディスクトレイ3がディスク15を待ち受けているとき、車室内にトレイ3が大きく出張ることがなく、スペースを有効利用できる。また、突出したディスクトレイ3に移載したディスク15を、ディスクトレイ15と一体にローディングするとき、該ディスクトレイ3にディスク15を固定する固定手段を備えたため、ディスクトレイ3が筐体内に搬送される過程で、車体振動等によりディスクトレイ3からディスク15が外れることがない。
【0018】
上記爪機構11,12,13が、例えば挿入するディスク15の先端側に当接する位置と、ディスクの後端側に当接する位置とに設けられ、各爪機構がばねで付勢される形態であれば、ユーザが、ばね力に抗して、先端側の爪機構12,13を押し退けて、ディスク15をディスクトレイ3上に載置するだけで、該ディスク15は、先端側の爪機構12,13のばね付勢力で押し戻されて、該爪機構12,13と、後端側に位置する爪機構11との間に、簡単に固定できる。
また、突出機構は、ディスクトレイ3に一体化したラック3Eと、ラック3Eに噛み合うピニオン3Fと、ピニオン3Fを駆動する駆動モータ9とで構成され、ラック3Eは、ディスクトレイ3の後半部3Bの一辺に形成されているため、この突出機構を、簡単に形成でき、省スペース化がはかれる。
【0019】
以上、一実施の形態に基づいて、本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。上記実施の形態では、ユーザが、手動によりディスクトレイ3にディスク15を装着しているが、例えば、ユーザが手を離すと、ディスク15が自由落下してディスクトレイ3に装着されても良い。
【符号の説明】
【0020】
1 筐体
3 ディスクトレイ
3E ラック(突出機構)
3F ピニオン(突出機構)
4A,4B,4C センサ
5 クランプ機構
7 ディスク挿入口
9 駆動モータ(突出機構)
15 ディスク
11,12,13 爪機構(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体から突出自在なディスクトレイと、前記ディスクトレイの上方に開口したディスク挿入口と、前記ディスク挿入口から所定の挿入位置までディスクが挿入されたことを検知するセンサと、前記センサがディスクを検知したとき、少なくとも該ディスクの真下位置まで前記ディスクトレイを突出させる突出機構とを備えたことを特徴とする車載機のトレイローディング機構。
【請求項2】
前記突出機構により突出されたディスクトレイに移載したディスクを前記ディスクトレイに固定する固定手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車載機のトレイローディング機構。
【請求項3】
前記固定手段は複数の爪機構を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の車載機のトレイローディング機構。
【請求項4】
前記ディスクトレイは前半側がディスク形状と一致する同心円となっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車載機のトレイローディング機構。
【請求項5】
前記突出機構は前記ディスクトレイに一体化したラックと、前記ラックに噛み合うピニオンと、前記ピニオンを駆動する駆動モータとを備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車載機のトレイローディング機構。
【請求項6】
前記ラックは前記ディスクトレイの後半部の一辺に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の車載機のトレイローディング機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−257535(P2010−257535A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107438(P2009−107438)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】