説明

車載用の空調制御装置

【課題】ドアの開閉状態を検出しなくとも、ドアの閉まり性を良好にできる車載用の空調制御装置を提供することにある。
【解決手段】外気導入口、内気導入口、およびこれら導入口からの空気の導入を切り替える内外気切替ダンパを備えた空調ユニット1を制御するための車載用の空調制御装置20において、キースイッチ32がオン位置にある時にバッテリ31からの電力で起動するとともに、キースイッチ32がオン位置にあるかまたはオフ位置にあるかを判定するキースイッチ判定手段41と、キースイッチ32がオフ位置にある場合に、内外気切替ダンパを外気導入口と車両内部とを連通させる連通位置にする内外連通モード指示手段43とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設機械等の車両に搭載される空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両に搭載される空調ユニットとして、内気導入口、外気導入口、および種々の方向に向けて開口した調和空気吹出口、空気導入用のブロワ、空気の導入元を切り替える内外気切替ダンパ、調和空気の吹出先を切り替える吹出口切替ダンパなどを備えたものが知られている。このような空調ユニットは通常、調和空気の風量、導入元、あるいは吹出先を制御する空調制御装置に電気的に接続されており、前述したブロワやダンパ類が空調制御装置によって制御される。
【0003】
一方近年では、車内の気密性の向上に伴い、車両のドアを閉める際に、車内の空気が圧縮され、その反力でドアが閉め難くなるということが指摘されている。そこで、ドアを開けた場合には、空調ユニットの内気導入口と外気導入口とを連通させるように内外気切替ダンパを制御し、これによってドアを閉めるにあたっての空気の排出流路を十分に確保し、ドアを閉め易くすることが提案されている(特許文献1,2)。
【0004】
また、これら特許文献1,2での提案によれば、ドアを閉めた後には、ダンパ位置を元の位置に戻すということも行われる。さらに、特許文献1,2によれば、ドアの開閉状態の検出をドアスイッチによって行うこととしているが、ドアスイッチに限らず、ドアに加速度センサを取り付け、加速度センサでの検出結果に基づいてドアが開き側に動いているのか、あるいは閉じ側に動いているのかを判断することも提案されている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】実開平3−72007号公報
【特許文献2】実開平6−32121号公報
【特許文献3】特開平10−147139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、建設機械のように、砂塵の舞う建設現場で作業を行う車両では、砂塵がキャブ(運転室)内に入り込まないようにするため、空調装置を用いて積極的に外気を導入し、キャブ内を加圧気味にすることが行われる。すなわち、キャブ内を加圧する必要性からも、建設機械でのキャブの気密性は、乗用車の気密性よりも高く設定され、このことによって各部の隙間等から砂塵がキャブ内に入り込まないようになっている。
【0007】
しかし、キャブ内の気密性が高いと、ドアを閉める際の反力が一層大きくなり、ドアがより閉め難くなる。このため、建設機械においても、特許文献1〜3で提案されているように、ドアを閉めるにあたっては、空調ユニットの内気導入口と外気導入口とを連通させることが行われる。しかも、建設機械のキャブに設けられたドアは、キャブの容積の割には大きいため、閉め難くさが顕著であり、そのような導入口を連通させてドアの閉まり性を改善することは、必須になりつつある。
【0008】
ところが、特許文献1〜3の提案では、ドアスイッチや加速度センサによりドアの開閉状態を検出することになっている。このため、ドアスイッチには常時、バッテリからの電源が供給されており、建設機械の場合のように、苛酷な条件での現場作業を強いられる車両においては、バッテリからの電源ラインが損傷しやすく、メンテナンスが容易ではないうえ、損傷した電源ラインからの漏電により、バッテリあがりが生じるという問題がある。
【0009】
これに対して、ドアスイッチ等の電源を、車両に搭載された制御装置から得るようにすることも考えられる。しかしながら、制御装置は通常、エンジンスタート用のキースイッチがオンの状態で起動するため、キースイッチがオフの状態では、ドアスイッチに電源を供給できない。こうなると、建設機械のオペレータがキースイッチを抜いて車両から離れる場合などには、ドアの開閉状態を検出することができず、ドアの開閉状態に基づいて内気導入口と外気導入口とを連通させたり、元の設定に戻したりといった制御ができないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、ドアの開閉状態を検出しなくとも、ドアの閉まり性を良好にできる車載用の空調制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る車載用の空調制御装置は、外気導入口、内気導入口、およびこれら導入口からの空気の導入を切り替える内外気切替ダンパを備えた空調ユニットを制御するための車載用の空調制御装置であって、キースイッチがオン位置にある時に起動するとともに、キースイッチがオン位置にあるかまたはオフ位置にあるかを判定するキースイッチ判定手段と、キースイッチがオフ位置にある場合に、前記内外気切替ダンパを前記外気導入口と車両内部とを連通させる連通位置にする内外連通モード指示手段とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の車載用の空調制御装置においては、前記内外気切替ダンパを前記連通位置にする前の現在位置を判定する現在モード判定手段と、この現在モード判定手段で判定された前記現在位置を記憶する記憶手段と、前記キースイッチがオン位置にあると前記キースイッチ判定手段が判定した場合に、前記記憶手段に記憶された前記現在位置を呼び出して、前記内外気切替ダンパを前記現在位置に戻す導入モード戻し手段とを備えていることが望ましい。
【0013】
本発明の車載用の空調装置においては、前記車両のドアの開閉に応じてオンオフするドアスイッチが電気的に接続され、前記ドアスイッチのオンオフ状態に基づいてドアの開閉状態を判定するドアスイッチ判定手段を備え、前記内外連通モード指示手段は、前記ドアが開いた状態にあると前記ドアスイッチ判定手段が判定した場合に、前記内外気切替ダンパを前記連通位置にすることが望ましい。
ここでのドアスイッチは、キースイッチがオン位置にある場合に起動する空調制御装置に電気的に接続されることから、オン位置にある状態でのみ電力が供給され、スイッチとして機能する。
【0014】
本発明の車載用の空調制御装置においては、前記導入モード戻し手段は、前記ドアが閉じていると前記ドアスイッチ判定手段が判定した場合に、前記記憶手段に記憶された現在位置を呼び出して、前記内外気切替ダンパを前記現在位置に戻すことが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上において、本発明によれば、キースイッチ判定手段および内外連通モード指示手段を設けることにより、キースイッチがオフ位置ある時には、内外気切替ダンパを車両内部と外気導入口とを連通させる位置するため、キースイッチがオフ位置であることにより、ドアスイッチ等が機能しないような構成の車両であっても、キースイッチをオフ位置にして車両から離れる場合などのドア閉め時にあっては、車両内の空気を外気導入口を介して逃がすことができ、ドアの閉まり性を向上させることができる。
【0016】
また、現在モード判定手段、記憶手段、および導入モード戻し手段を設ける場合には、再度キースイッチをオン位置にした場合など、内外気切替ダンパを元の設定位置に戻すことができ、人手により元に戻すといった煩わしさを解消できる。
【0017】
さらに、ドアスイッチおよびドアスイッチ判定手段を設ける場合には、キースイッチがオン位置にある状態において、ドアが開いたことを検出することで、内外気切替ダンパを連通位置にさせるといった制御も実施でき、より実用的な空調制御装置を提供できる。
【0018】
そして、ドアが閉じた時には、導入モード戻し手段により、連通位置にあった内外気切替ダンパを元の設定位置に戻すので、この場合でも人手による操作を不要にでき、利便性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る空調制御装置20によって制御される空調ユニット1を示す模式図、図2は、空調制御装置20を示す機能ブロック図である。
図1において、空調ユニット1は、油圧ショベルやホイールローダ、ブルドーザといった建設機械のキャブに搭載されるものであり、空気の導入口として外気導入口2および内気導入口3を備え、調和空気の吹出口として、デフロスタ吹出口4、顔側吹出口5、足下吹出口6を備えている。
【0020】
導入口2,3および吹出口4〜6の間には、上流側からそれぞれブロワ7、エバポレータ8、およびヒータコア9が配置されている。また、互いに近接する外気導入口2および内気導入口3側には、空気の導入元を切り替える内外気切替ダンパ11が設けられている。この内外気切替ダンパ11は、サーボモータ12を有するアクチュエータによって駆動される。
【0021】
内外気切替ダンパ11において、図1中の実線で示すダンパ位置では、外気導入口2側から空気が導入され、2点鎖線で示す位置では、内気導入口3側から空気が導入されて調和空気がキャブ内を循環する。図中の破線で示す位置は中立位置であり、後述するが、図示しないキャブのドアが閉められる際には、内外気切替ダンパ11が中立位置である内外連通モードとされて、外気導入口2および内気導入口3とを連通させ、ドアの閉まり性の向上が図られる。
【0022】
さらに、エバポレータ8およびヒータコア9の間には、エアミックスダンパ13が設けられ、吹出口4〜6側には、3つの吹出ダンパ14,15,16がそれぞれ設けられている。吹出ダンパ14がデフロスタ吹出口4に対応し、吹出ダンパ15が顔側吹出口5に対応し、吹出ダンパ16が足下吹出口6に対応している。
【0023】
エアミックスダンパ13は、サーボモータ17を有するアクチュエータで駆動され、各吹出ダンパ14〜16は、サーボモータ18を有するアクチュエータによって同時に駆動される。ただし、このような空調ユニット1の構成は、本発明に係る空調制御装置で制御される空調ユニットの一例であり、以上に説明した構成に限定されるものではない。
【0024】
そして、空調ユニット1においては、サーボモータ12,17,18を駆動させての各ダンパ11,13,14〜16の位置や、ブロワ7の回転速度等は、図2に示す内気センサ、外気センサ、水温センサ、および日射センサからの検出信号に基づき、キャブ内が設定温度になるように、空調制御装置20によってフィードバック制御される。フィードバック信号は、例えば各ダンパ13,14〜16の位置制御にあっては、その回動軸等に設けられた図示しないポテンショメータからの検出信号である。すなわち、本実施形態での空調制御装置20は、キャブ内が設定温度となるように機器類を制御する、いわゆるオートエアコン用の制御装置である。
【0025】
このような空調制御装置20は、図2に示すように、電源制御回路21、モニタ制御部22、空調制御部23、および内外連通制御部24を備えている。これらの電源制御回路21や各制御部22〜24は、コンピュータを構成する適宜なハードウェア、およびコンピュータで実行されるコンピュータプログラム等のソフトウェアからなる。
【0026】
電源制御回路21は、図示しないエンジンのスタータ用キースイッチ32からのオン信号をトリガとして、バッテリ31からの電力に基づいて各制御部22〜24の起動に必要な電力を生成し、供給する。一方、電源制御回路21は、キースイッチ32がオン位置からオフ位置に切り換わると、各制御部22〜24をソフトウェアにより自動的にダウンさせ、この後に各制御部22〜24への電力供給を停止する。ダウンさせた場合のように、キースイッチ32がオフ位置にある時には、電源制御回路21には、バッテリ31からの電力が常時待ち受け電源として供給される。
【0027】
このような電源制御回路21には、キースイッチ32の他、キャブのドアの閉まり位置に対応して設けられたドアスイッチ33が電気的に接続されている。ドアスイッチ33には、バッテリ31から直接的にではなく、空調制御装置20の電源制御回路21を介して電力が供給されている。
【0028】
このため、本実施形態では、キースイッチ32がオン位置にある時に、電源制御回路21にてドアスイッチ33に要する電力が生成、供給され、ドアスイッチ33のオンオフ状態が通電状態や電圧レベルのハイロー等によって検出され、ドアの開閉状態を検出可能である。反対に、キースイッチ32がオフ位置にあり、待ち受け状態にあるときは、ドアスイッチ33にも電力が供給されず、ドアスイッチ33がオンの状態(ドアが開いている状態)なのか、オフの状態(ドアが閉まっている状態)なのかを検出することができない。
【0029】
しかして、このような構成のままでは、オペレータがエンジンを停止させた場合などに、ドアが開いているのか、または閉まっているのかを判断することができない。このため、開いている時には空調ユニット1の内外気切替ダンパ11を中立位置の内外連通モードにし、よって外気導入口2および内気導入口3を連通させ、ドアを閉めた際の閉まり性を向上させる、といったことが行えず、また、ドアを閉めた後に元の設定にダンパ位置を戻す、といったこともできない。そこで、本実施形態の空調制御装置20では、内外連通制御部24が設けられているのであるが、これについては後述する。
【0030】
モニタ制御部22は、空調制御部23と協働して設定温度の表示、現在の調和空気の吹出先の表示、空気の導入元(外気導入または内気循環)の表示、風量の表示等を行う。従って、モニタ制御部22には、種々の情報を表示するモニタパネル34が接続され、このようなモニタパネル34には、オペレータが任意に温度設定可能の温度設定スイッチ35や、空調ユニット1および空調制御装置20をオートエアコンとして使用する場合に操作するオートスイッチ36が設けられている。
【0031】
空調制御部23は、各種センサ(内気センサ、外気センサ、水温センサ、日射センサ)からの検出信号を基本情報として、各ダンパ11,13,14〜16のサーボモータ12,17,18の駆動信号、およびブロワ7の駆動信号を生成するとともに、各ダンパ11,13,14〜16に関しては、ポテンショメータからのフィードバック信号と目標位置に対する駆動信号との偏差に基づいて、キャブ内が設定温度となるように、適切に位置制御される。
【0032】
また、基本情報のうち、モニタパネル34への表示に使用される情報、各駆動信号等から判断される現状の調和空気の吹出先に関する情報、あるいは空気の導入元に関する情報は、CAN(Controller Area Network)を通してモニタ制御部22に送信され、必要に応じてモニタパネル34に表示される。また、これに対し、モニタパネル34を介してモニタ制御部22に入力される温度設定スイッチ35での設定情報や、オートスイッチ36のオンオフ情報は、CANを通して空調制御部23に送信され、前述した駆動信号の生成に用いられる。
【0033】
なお、これらのモニタ制御部22および空調制御部23の機能としては、従来の建設機械や乗用車等に用いられる空調制御装置が有する機能と略同じであるため、ここでのさらなる説明を省略し、以下には内外連通制御部24について説明する。
【0034】
内外連通制御部24は、キースイッチ判定手段41、ドアスイッチ判定手段42、内外連通モード指示手段43、現在モード判定手段44、導入モード戻し手段45、および適宜なメモリデバイスからなる記憶手段46を備えている。内外連通制御部24はその他、フラグ設定手段47およびフラグ判定手段48を備えているが、これらの手段47,48については、通常のコンピュータプログラムでのフラグの設定や判定に使用される一般的な手段である。
【0035】
内外連通制御部24もまた、CANを介してモニタ制御部22および空調制御部23との間で情報通信可能であり、例えば内外連通モード指示手段43からの駆動指示信号、導入モード戻し手段45からの駆動指示信号などは、CANを通して空調制御部23に出力され、空調制御部23はこれらの駆動指示信号に基づいてサーボモータ12用の駆動信号を生成し、内外気切替ダンパ11の位置制御を行うことになる。
【0036】
図3のフローチャートには、キャブのドアの開閉に伴う内外連通制御部24での各手段41〜48の動作順序が示されている。この図3に基づき、各手段41〜48の機能を具体的に説明するとともに、種々の状況で生じるドアの開閉に対して、ドアの閉まり性が確実に改善されることについて説明する。
【0037】
ここで、種々の状況とは、第1には、キースイッチ32がオン位置でドアが開けられ、そのままオン位置で再度、ドアが閉められた状況。このような状況としては、エンジンが稼働している状態で作業を止め、僅かな間だけドアを開けるような場合が考えられる。
【0038】
第2には、キースイッチ32がオン位置からオフ位置とされ、この後にドアが開けられ、そのままドアが閉められ、ドアが閉められた状態で再度、キースイッチ32がオン位置となる状況。この状況としては、ドアを開ける前にエンジンを停止させ、そのままキーを抜いて例えば休憩等に入り、休憩後にまた作業を開始する場合であり、休憩後の作業開始時には、ドアを閉めてからエンジンをスタートさせる場合である。
【0039】
第3には、キースイッチ32がオン位置からオフ位置とされ、この後にドアが開けられ、そのままドアが閉められるが(ここまでは第2の状況と同じ)、ドアが開けられた状態で再度、キースイッチ32がオン位置となる状況。この状況としては、ドアを開ける前にエンジンを停止させ、そのままキーを抜いて休憩に入り、休憩後にまた作業を開始する場合であり、休憩後の作業開始時には、ドアを開けた状態でエンジンをスタートさせる場合である。
【0040】
第4には、キースイッチ32がオンの状態でドアが開けられ、その後にキースイッチ32がオン位置からオフ位置とされてドアが閉められ、ドアが閉められた状態で再度、キースイッチ32がオン位置となる状況。この状況は、ドアを開けた後にエンジンを停止させ、休憩後の作業開始時には、ドアを閉めてからエンジンをスタートさせる場合である。
【0041】
第5には、キースイッチ32がオンの状態でドアが開けられ、その後にキースイッチ32がオン位置からオフ位置とされてドアが閉められるが(ここまでは第4の状況と同じ)、ドアが開けられた状態で、再度キースイッチ32がオン位置となる状況。この状況は、ドアを開けた後にエンジンを停止させ、休憩後の作業開始時には、ドアを開けた状態でエンジンをスタートさせた場合である。
【0042】
〔第1の状況についての説明〕
図3において先ず、オペレータがエンジンキーをキースイッチ32に挿入し、キースイッチ32をオン位置まで回すと、電源制御回路21に電源が投入され、モニタ制御部22および空調制御部23と同様、内外連通制御部24が起動し、キースイッチ判定手段41が起動する。この状態でオペレータは作業を行うことになる。通常はキャブのドアを閉めた状態で行うため、以下には、前述した第1の状況を想定し、ドアを閉めての作業中に、エンジンを稼働した状態で一旦作業を止め、ドアを開けて再度閉めるような場合について説明する。
【0043】
S1において、キースイッチ判定手段41は、キースイッチ32がオン位置にあるかオフ位置にあるかを判定する。ここでは、建設機械での作業中を想定しているから、キースイッチ32はオン位置であり、YESの判定がなされ、S2に進む。
【0044】
S2のステップでは、フラグ判定手段48がキーフラグK=1であるかを判定する。キーフラグKとしては、空調制御装置20をダウンさせた場合に「0」が設定され、空調制御装置20の起動後に通常の処理が一度でも行われると「1」が設定される。従って、ここでは、建設機械での作業が行われることで、通常の処理がしばらく継続された状態であるから、キーフラグKは「1」であり、S3に進む。
【0045】
S3のステップでは、ドアスイッチ判定手段42が起動し、ドアスイッチ33によるオンオフ信号を監視し、ドアが閉められている状態かを判定する。作業中であれば、ドアが閉められているので、ドアスイッチ判定手段42は、ドアスイッチ33からのオフ信号により、ドアが閉められていると判断する。このように判断されると、フラグ判定手段48は、ドアフラグDが1であるかを判定する(S4)。
【0046】
ドアフラグDは、ドアが開けられた状態でプログラムが実行されていれば、「0」が設定され、ドアが閉められた状態でプログラムが実行されている場合には、「1」が設定される。ここでは、ドアが閉められてのプログラムの実行であるから、ドアフラグD=1であり、YESと判定され、S5に進む。
【0047】
S5では、現在モード判定手段44が起動し、内外気切替ダンパ11の現在のモード(現在位置)を判定し、記憶手段46に記憶する。内外気切替ダンパ11が外気導入口2を塞ぐ側にあれば、内気導入モードであり、内気導入口3を塞ぐ側にあれば、外気導入モードである。このような判定は、内外気切替ダンパ11用のポテンショメータからの信号を、CANを介して空調制御部23から得ることで可能である。ここでは、説明の便宜上仮に、内気導入モードで作業をしているものとし、内気導入モードであることを記憶手段46に記憶する。
【0048】
次いで、フラグ設定手段47は、ドアフラグDとして「1」を設定し(S6)、キーフラグKとして「1」を設定する(S7)。
以上のように、キースイッチ32がオン位置にあり、ドアが閉められている状態、例えば建設機械での作業中のような場合には、S1〜S7を繰り返すことになる。
【0049】
このような状態から、オペレータが作業を一旦停止し(たただし、エンジンは稼働したままであり、キースイッチ32はオン位置にある)、何らかの理由でドアを開けた場合について説明する。
【0050】
このような場合には、キースイッチ32が依然オン位置であり、ドアスイッチ33は電源が供給された状態にあるから、ドアスイッチ33を正常に機能させること可能である。従って、ドアが開けられると、ドアスイッチ33ではオン信号が出力され、S3において、ドアスイッチ判定手段42がドアスイッチ33によるオン信号に基づいて、ドアが開けられていると判断する。つまり、S3電子制御式機械時計の判定はNOであり、S8に進む。
【0051】
S8では、フラグ判定手段48はドアフラグDが「1」であるかを判定する。この段階ではまだ、ドアフラグD=1であるから、判定はYESとなり、S9に進む。
S9では、S5と同様に、現在モード判定手段44が起動し、内外気切替ダンパ11の現在のモードを判定し、記憶手段46に記憶する。現在のモードは、内気導入モードであるから、現在モード判定手段44は、内気導入モードであることを記憶手段46に記憶する。
【0052】
次いで、内外連通モード指示手段43が起動し、現在モードが内気導入モードであったのを、強制的に内外連通モードにする(S10)。具体的に内外連通モード指示手段43は、サーボモータ12用の駆動指示信号生成し、内外気切替ダンパ11を中立位置にして、外気導入口2と内気導入口3とを連通させる。これにより、ドアが閉められた際に、キャブ内の空気を内気導入口3から外気導入口2を通してスムーズに外部へ逃がすことができ、ドアの閉まり性を向上させることができる。以下、フラグ設定手段47は、ドアフラグDとして「0」を設定し(S11)、また、S7において、キーフラグKとして「1」を設定する。
【0053】
以上では、キースイッチ32がオン位置にある状態で、ドアが開けられた場合について説明した。この場合では、S1→S2→S3→S8→S9→S10→S11→S7の順で実行され、内外気切替ダンパ11が内外連通モードに変更され、かつドアフラグDが「1」から「0」に変更されたまま、再度S1に戻る。
なお、現実的には、しばらくの間、ドアが開け放たれた状態が継続されることが考えられる。この場合には、S8において、NOと判断され、ドアが開けられている間は、S1→S2→S3→S8→(再度S1)を繰り返すことになる。
【0054】
さらに、ドアが開けられている状態から、ドアが閉められた場合について説明する。ここでドアを閉めるにあたっては、内外気切替ダンパ11が内外連通モードになっているため、ドアの閉まり性が良好であり、ドアを容易かつ確実に閉めることが可能である。
ドアを開けた状態から閉めると、S3での判定がYESとなってS4に進む。しかし、S4においては、現段階ではドアフラグD=0であるから、フラグ判定手段48はNOと判定し、S12に進む。
【0055】
S12では、導入モード戻し手段45が起動し、記憶手段46に記憶されている導入モード、つまり内気導入モードに内外気切替ダンパ11を戻す。このことにより、ドアを開く以前のモードに、内外気切替ダンパ11が戻されることになる。
以上が第1の状況を想定してのフローである。
【0056】
〔第2の状況についての説明〕
第2の状況は、その一部を図3のフローチャートに基づいて説明すると、S1〜S7の処理が繰り返されている状態から、キースイッチ32がオフ位置にされ、次いでドアの開閉が行われ、最終的にドアを閉めた状態で再度キースイッチ32がオン位置とされる状況である。従って、S1〜S7を繰り返している中で、S1においてNOと判定される。
【0057】
ここで、S1〜S7では、内外気切替ダンパ11が内気導入モードとされているものとする。また、本実施形態での空調制御装置20では、キースイッチ32がオフ位置にされると、各制御部22〜24は一気にシャットダウンされる訳ではなく、オフ位置にされた後に所定の処理が完了した時点で、ダウンするようになっている。すなわち、S1に引き続き、以下のS13〜S15を実行してからダウンすることになる。
【0058】
S13では、キースイッチ32がオフ位置とされたことを受けて、内外連通モード指示手段43が、現在の内気導入モードであったのを、強制的に内外連通モードにする。なお、この時点で記憶手段46には、S1〜S7での処理中において、内気導入モードであったことが記憶されている。
【0059】
S14では、フラグ設定手段47がキーフラグKを「0」に設定、ドアフラグDを「1」に設定する。
この後、S15では、電源制御回路のシャットダウン機能により、自動的に空調制御装置20がダウンする。
【0060】
このような状況では、キースイッチ32がオフ位置になった時点で、内外気切替ダンパ11を内外連通モードにするため、空調制御装置20に電源が投入されず、ドアスイッチ33が機能しない状態でも、ドアの開閉時には内外連通モードにしておくことができ、ドア閉め時の閉まり性を改善できる。
【0061】
そして、オペレータによるキャブ内の出入りがあった後、ドアを閉めた状態で再度キースイッチ32をスタート位置にすると先ず、S1にてキースイッチ判定手段41がYESの判定をし、S2にてフラグ判定手段48がNOの判定をする。これは空調制御装置20のシャットダウン直前に、キーフラグKに「0」を設定したからである。このためS2の後にはS16に進むことになる。
【0062】
S16では、導入モード戻し手段45が、内外気切替ダンパ11を記憶手段46に記憶されている内気導入モードに戻す。このことにより、キースイッチ32をオフ位置にする直前のモードに、内外気切替ダンパ11が戻されることになる。この後は、S3〜S7を実行し、再びS1に戻ってS1〜S7を繰り返す。
以上が第2の状況を想定してのフローである。
【0063】
〔第3の状況についての説明〕
第3の状況は、空調制御装置20をシャットダウンするところまでは第2の状況と同じであり、ドアが開けられた状態で再度、キースイッチ32がオン位置となることのみが異なる。従って、S16の後では、S3において、ドアスイッチ判定手段42がNOの判定をし、S8〜S11を実行し、S7からS1に戻り、ドアが開かれている間は、S1→S2→S3→S8を繰り返すことになる。
【0064】
従って、この第3の状況では、S16の処理とS9,S10の処理とにより、一旦内気導入モードに戻されるが、ドアが開いていることで、即座に内外連通モードに変更されることとなり、ドアを開けた状態でキースイッチ32をオン位置にした場合でも、ドアを閉める際には閉まり性が改善される状態にしておくことができる。
【0065】
〔第4の状況についての説明〕
第4の状況は、キースイッチ32がオンの状態でドアが開けられ、開けられた状態でキースイッチ32がオフ位置にされるのであるから、フローチャートでいえば、S1→S2→S3→S8を繰り返している途中でキースイッチ32がオフ位置にされることとなる。この状況では既に、S9にて内気導入モードが記憶手段46に記憶され、S10にて内外気切替ダンパ11が強制的に内外連通モードに位置していることが明らかであるから、S1からS13に進んだ場合には、S13の処理は実質的にスキップされ、S14、S15が実行される。このことにより、キースイッチ32をオフ位置にした段階でやはり、内外連通モードになっているため、その後に行われるドア閉め時の閉まり性を改善できる。
【0066】
そして、第4の状況では、ドアが閉まっている状態でキースイッチ32をオン位置にする。そうすると、S1→S2→S16→S3→S4までは第2の状況と同じである。また、キースイッチ32がオフ位置にされたのがドアを開いた状態であったことから、ドアフラグは本来「0」に設定されていたのであるが、シャットダウン直前のS14にて「1」に再設定されているため、このS4においては、フラグ判定手段48はYESと判定し、S5に進むことになる。次いで、S6、S7と進み、S7からS1に戻ってS1〜S7を繰り返すことになる。
【0067】
〔第5の状況についての説明〕
第5の状況では、S1→S2→S3→S8の状況でキースイッチ32がオフ位置されるため、シャットダウン時の内外気切替ダンパ11の位置、記憶手段46での記憶内容、ドアフラグDの設定内容は、それぞれ前述の第4の状況と同じである。ただし、再度のキースイッチ32にオン位置操作をドアが開けられた状態で行われることになるから、この点で第4の状況とは異なる。
【0068】
すなわち、S16の後では、S3において、ドアスイッチ判定手段42がNOの判定をし、しかも、S14にてドアフラグDが「1」に再設定されているから、S8では、フラグ判定手段48がYESの判定をし、以下、S9〜S11を実行することになる。つまり、S16以後は、第3の状況と同じである。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の空調制御装置20によれば、キースイッチ32がオフ位置にされた時には、空調ユニット1の内外気切替ダンパ11を内外連通モードにし、外気導入口2と内気導入口3とを連通させるので、キースイッチ32がオフとなり、ドアスイッチ33に電力が供給されないことで機能しない状態にあっても、キースイッチ32がオフ位置とされた後のドア閉め時には、ドアの閉まり性を確実に改善できる。
また、空調制御装置20では、前述の第1〜第5の状況といった想定されるドア閉め時において、ドアの閉まり性を向上させることができ、実用的である。
【0070】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0071】
前記実施形態では、空調制御装置20として、電源制御回路21、モニタ制御部22、空調制御部23、および内外連通制御部24が1つの制御装置として一体に設けられているように説明したが、例えば、電源制御回路21、モニタ制御部22、および内外連通制御部24を1つの装置として構成し、空調制御部23を別のもう1つの装置として構成してもよい。
【0072】
また、そのような場合において、電源制御回路21を、モニタ制御部22および内外連通制御部24を1つにした装置内にのみ設けておき、この装置内では、キースイッチ32のオフ位置により、所定のプログラムを実行した後に電源がシャットダウンするようにし、もう一方の装置では、キースイッチ32のオフ位置をトリガとして動作するリレーによって電源が切れるようにしてもよい。
また、電源制御回路21を両方の装置に設けておくことにより、両方の装置において、それぞれの電源制御回路21のシャットダウン機能により、装置自身が電源を切るようにしてもよい。
【0073】
前記実施形態では、空調ユニット1の外気導入口2および内気導入口3の中立位置を内外連通モードとして設定し、キャブ内の空気を内気導入口3から外気導入口2を通して外部へ逃がしていたが、ダンパ11を図1中の実線で示すダンパ位置として内気導入口3を遮蔽することで、各吹出口4〜6から外気導入口2を通して空気を逃がしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、建設機械、土木機械、農業機械、輸送車両等の空調制御装置として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施形態に係る空調制御装置によって制御される空調ユニットを示す模式図。
【図2】空調制御装置を示す機能ブロック図。
【図3】空調制御装置での処理を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0076】
1…空調ユニット、2…外気導入口、3…内気導入口、11…内外気切替ダンパ、20…空調制御装置、32…キースイッチ、33…ドアスイッチ、41…キースイッチ判定手段、42…ドアスイッチ判定手段、43…内外連通モード指示手段、44…現在モード判定手段、45…導入モード戻し手段、46…記憶手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気導入口、内気導入口、およびこれら導入口からの空気の導入を切り替える内外気切替ダンパを備えた空調ユニットを制御するための車載用の空調制御装置であって、
キースイッチがオン位置にある時に起動するとともに、
キースイッチがオン位置にあるかまたはオフ位置にあるかを判定するキースイッチ判定手段と、
キースイッチがオフ位置にある場合に、前記内外気切替ダンパを前記外気導入口と車両内部とを連通させる連通位置にする内外連通モード指示手段とを備えている
ことを特徴とする車載用の空調制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用の空調制御装置において、
前記内外気切替ダンパを前記連通位置にする前の現在位置を判定する現在モード判定手段と、
この現在モード判定手段で判定された前記現在位置を記憶する記憶手段と、
前記キースイッチがオン位置にあると前記キースイッチ判定手段が判定した場合に、前記記憶手段に記憶された前記現在位置を呼び出して、前記内外気切替ダンパを前記現在位置に戻す導入モード戻し手段とを備えている
ことを特徴とする車載用の空調制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載用の空調装置において、
前記車両のドアの開閉に応じてオンオフするドアスイッチが電気的に接続され、
前記ドアスイッチのオンオフ状態に基づいてドアの開閉状態を判定するドアスイッチ判定手段を備え、
前記内外連通モード指示手段は、前記ドアが開いた状態にあると前記ドアスイッチ判定手段が判定した場合に、前記内外気切替ダンパを前記連通位置にする
ことを特徴とする車載用の空調制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車載用の空調装置において、
前記導入モード戻し手段は、前記ドアが閉じていると前記ドアスイッチ判定手段が判定した場合に、前記記憶手段に記憶された前記現在位置を呼び出して、前記内外気切替ダンパを前記現在位置に戻す
ことを特徴とする車載用の空調制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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