説明

車載用アンテナ装置

【課題】 AM放送とFM放送の受信感度を低下させることなく小型化が可能な車載用アンテナ装置を提供する。
【解決手段】 車載用アンテナ装置100は、車両のルーフ上に固定される平板状のベースプレート部110と、ベースプレート部110上に載置される回路基板120と、ベースプレート部110に立設されたスペーサ111で回路基板120の上方に非接触に配置された第1アンテナエレメント130と、第1アンテナエレメント130の後方(車両の後方側)に配置された第2アンテナエレメント140とを備えている。また、回路基板120、第1アンテナエレメント130及び第2アンテナエレメント140は、レドーム150で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載するアンテナ装置に関し、特に車両のルーフ上に載置して用いる車載用アンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両にはAM放送及びFM放送を受信するためのアンテナ装置が搭載されている。AM放送及びFM放送を受信するためのアンテナ装置として、1m程度の長さのロッドアンテナが従来より知られている。また、アンテナのロッド部をヘリカル状に巻回したヘリカルアンテナとすることで、アンテナの長さを短くした車載用アンテナ装置も用いられている。しかし、ロッドアンテナは車体から大きく突出させて搭載されるため、車両の美観を損ねるという問題があった。
【0003】
そこで、アンテナをアンテナケース内に収納した車載用アンテナ装置が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のアンテナ装置について、その内部構成を示す正面図を図10に示す。同図に示す車載用アンテナ装置1は、平板状のアンテナベース20上にアンテナ基板30が立設されており、アンテナ基板30の上部にこれを跨ぐようにトップ部31が配置されている。このトップ部31とアンテナ基板30に形成されているアンテナパターンとで、アンテナエレメントが構成されている。AM放送及びFM放送の受信は、主にトップ部31のエレメントを用いて行われる。車載用アンテナ装置1は、車両のルーフ上に搭載して用いられることから、車両外部突起規制によりその高さを70mmとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−21856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1に記載のアンテナ装置では、主にトップ部だけでAM放送とFM放送の両方を受信するように構成されているため、十分な受信感度を得るためにはトップ部をある程度大きくする必要があり、さらに小型化するのが困難であった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、AM放送とFM放送の受信感度を低下させることなく小型化が可能な車載用アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車載用アンテナ装置の第1の態様は、車両のルーフに載置される車載用アンテナ装置であって、少なくとも受信信号を増幅する回路基板と、前記回路基板と前記ルーフ間に載置されるベースプレート部と、前記受信信号の受信に用いられる容量性の第1アンテナエレメント及び誘導性の第2アンテナエレメントと、前記回路基板、前記第1アンテナエレメント、前記第2アンテナエレメント、及び前記ベースプレート部を収納するレドームと、を備え、前記第2アンテナエレメントは、一端が前記第1アンテナエレメントに電気的に接続され他端が前記回路基板に電気的に接続されて前記レドームの底面の中心から外側にずれた位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の車載用アンテナ装置の他の態様は、前記第2アンテナエレメントが前記レドームの底面の中心から外側にずれている方向に、前記ルーフの中心から前記ルーフの周縁側にずれた位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の車載用アンテナ装置の他の態様は、前記ルーフの後方端部の近傍に配置され、前記第2アンテナエレメントが、前記第1アンテナエレメントの中心より後方に配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の車載用アンテナ装置の他の態様は、前記第2アンテナエレメントは、ヘリカルアンテナであることを特徴とする。
【0011】
本発明の車載用アンテナ装置の他の態様は、前記第2アンテナエレメントは、前記ルーフに対して略垂直に配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の車載用アンテナ装置の他の態様は、前記第2アンテナエレメントは、上方向から見て、前記第1アンテナエレメントの上端部に近接する位置に接続されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の車載用アンテナ装置の他の態様は、前記第2アンテナエレメントは、前記第1アンテナエレメントと上方向から見て重ならない位置に配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の車載用アンテナ装置の他の態様は、前記第1アンテナエレメントがスペーサにより支持されることを特徴とする。
【0015】
本発明の車載用アンテナ装置の他の態様は、前記第1アンテナエレメントが前記レドームの内壁に固定されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の車載用アンテナ装置の他の態様は、少なくともAMまたはFMまたはVHF帯の放送電波を受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、AM放送とFM放送の受信感度を低下させることなく小型化が可能な車載用アンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車載用アンテナ装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】車両のルーフに発生するミラー電流を説明するための模式図である。
【図3】ルーフ端部から第2アンテナエレメントまでの距離に対する利得の変化を示すシミュレーション結果である。
【図4】第1実施形態の車載用アンテナ装置のルーフ上の好ましい配置位置を説明する図である。
【図5】回路基板から第2アンテナエレメントまでの高さに対する利得の変化を示すシミュレーション結果である。
【図6】第1実施形態に係る車載用アンテナ装置の寸法の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車載用アンテナ装置の概略構成を示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る車載用アンテナ装置の概略構成を示す断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る車載用アンテナ装置の概略構成を示す断面図である。
【図10】従来のアンテナ装置の内部構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態における車載用アンテナ装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置を、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の車載用アンテナ装置100の概略構成を示す断面図である。車載用アンテナ装置100は、AM放送及びFM放送を受信するためのアンテナ装置であり、車両のルーフ上に載置して使用されるものである。
【0021】
アンテナ装置を車両のルーフ上に載置する場合、車両外部突起規制によりその高さを70mm以下とする必要があるが、さらに、外部に配置されることからそのデザイン性も要求される。そのため、アンテナ装置を収納するアンテナケースの形状に対してある程度設計の自由度が得られるようにしておく必要がある。本実施形態の車載用アンテナ装置100は、従来よりさらに小型化可能とするとともに、アンテナケースの形状に対応させてアンテナパターンを形成できるようにしている。
【0022】
車載用アンテナ装置100は、車両のルーフ上に固定されるベースプレート部110と、ベースプレート部110上に載置される回路基板120と、ベースプレート部110に立設されたスペーサ111で回路基板120の上方に配置された第1アンテナエレメント130と、第1アンテナエレメント130の後方(車両の後方側)に配置された第2アンテナエレメント140とを備えている。ベースプレート部110は、1枚の平板であってもよく、あるいは複数の平板に分割されていてもよい。また、回路基板120、第1アンテナエレメント130及び第2アンテナエレメント140は、レドーム150で覆われている。レドーム150は、その周端部がベースプレート部110の周縁に固定されて内部の回路基板120等を保護している。本実施形態の車載用アンテナ装置100では、ベースプレート部110とレドーム150とでアンテナケースを構成してシャークフィンアンテナを形成している。
【0023】
車載用アンテナ装置100では、回路基板120と第1アンテナエレメント130とがそれぞれレドーム150内の下方と上方に配置され、第2アンテナエレメント140がレドーム150内の中心より外側に配置されていることから、第1アンテナエレメント130と第2アンテナエレメント140と回路基板120とでコの字を描くような配置となっている。このようなコの字形状の配置とすることにより、後述するように、車載用アンテナ装置100では第1アンテナエレメント130と第2アンテナエレメント140をアンテナエレメントに用いることができ、第1のアンテナエレメント130と第2のアンテナエレメント140を組み合わせることで、第1のアンテナエレメント130もしくは第2のアンテナエレメント140の片方のみを用いた場合に比べアンテナ装置を小型化することが可能となる。
【0024】
第1アンテナエレメント130が容量性のエレメントであるのに対し、第2アンテナエレメント140は誘導性のエレメントである。本実施形態の車載用アンテナ装置100では、容量性の第1アンテナエレメント130と誘導性の第2アンテナエレメント140とを組み合わせることで、アンテナ利得特性の広帯域化を図っている。
【0025】
ベースプレート部110は、底面側を車両のルーフに密接できるように形成されており、その長手方向が車両の前後方向となるようにルーフに固定される。車載用アンテナ装置100を車両のルーフに固定するために、ベースプレート部110の底面に固定部112を備えている。固定部112は、例えばルーフを貫通してナットで固定するためのボルトであってよい。またベースプレート部110には、受信信号を伝送するケーブル160を車両内まで配索させるための貫通孔113が形成されている。
【0026】
回路基板120は、ベースプレート部110の上面に固定されている。また、回路基板120の上面には増幅器122が載置されており、さらにアンテナの給電点123とケーブル接続端124が設けられている。給電点123と増幅器122の間、及び増幅器122とケーブル接続端124の間が、例えば回路基板120上に形成されたパターンで電気的に接続されている。回路基板120の上面には、上記に限らずさらに別の回路等を配置することができる。
【0027】
第1アンテナエレメント130は、板金等で形成されており、スペーサ111に支持されて回路基板120に接触することなくその上方に配置されている。スペーサ111は、下端がベースプレート部110に略垂直に固定され、上端に第1アンテナエレメント130を固定している。第1アンテナエレメント130は、回路基板120に対して垂直に配置される必要はなく、斜めに配置されてもよい。また、その形状を平面または曲面とすることができ、アンテナケースを構成するレドーム150の形状に合わせて形状を変えることができる。さらに、第1アンテナエレメント130を回路基板120の真上に配置する必要はなく、回路基板120からずれた位置に配置してもよい。
【0028】
第2アンテナエレメント140は、第1アンテナエレメント130の後方に位置しており、その中心軸が回路基板120に対し略垂直となるように配置されている。第2アンテナエレメント140の上側引出し線141は第1アンテナエレメント130の上端に接続され、下側引出し線142は回路基板120の給電点123に接続されている。第2アンテナエレメント140は、そのインダクタンスを調整することで、FM放送を受信するための周波数調整を行うことができる。第2アンテナエレメント140は、上記に限らずレドーム150の中心(車載用アンテナ装置100の中心に相当)より外側に配置するのがよい。
【0029】
上記のように構成された本実施形態の車載用アンテナ装置100は、AM放送及びFM放送を受信するアンテナとして以下のように動作する。まず、AM放送は第1アンテナエレメント130を用いて受信することができ、その受信感度は第1アンテナエレメント130の対地容量で決定される。AM放送の受信感度を高めるには、第1アンテナエレメント130の面積を大きくするのが好ましいが、第1アンテナエレメント130の面積を大きくしていくと、第1アンテナエレメント130の周縁部が回路基板120に近接する。そして、第1アンテナエレメント130の周縁部が回路基板120に近接しすぎると、回路基板120に対する浮遊容量が増大して不要な容量が増大することになる。
【0030】
そこで、第1アンテナエレメント130をレドーム150の内壁に沿うような形状に形成して面積をできるだけ大きくし、第1アンテナエレメント130の頂部がレドーム150に近接または接触するまで高くすることで、第1アンテナエレメント130の周縁部が回路基板120から所定距離以上離れるようにするのが好ましい。
【0031】
次に、車載用アンテナ装置100によるFM放送の受信は、第1アンテナエレメント130と第2アンテナエレメント140の両方を用いて行われる。第2アンテナエレメント140は、FM放送を受信するための周波数調整の役割を有しているが、これに加えてアンテナエレメントとしても動作するようにしている。特許文献1に開示されているようなアンテナ装置では、誘導性デバイスであるコイルが第1アンテナエレメントで覆われる位置に配置されているため、誘導性デバイスがアンテナエレメントとして動作することはできず、周波数調整を行うのに用いられるだけであった。
【0032】
これに対し本実施形態の車載用アンテナ装置100では、第2アンテナデバイス140を第1アンテナエレメント130の後方に配置しており、これにより第2アンテナエレメント140がFM放送の電波を受信し易くなり、第1アンテナエレメント130と第2アンテナエレメント140とが一体になりアンテナエレメントとして動作することができる。共振時には第2アンテナエレメント140に磁力線が発生するが、この磁力線が第1アンテナエレメント130を貫通すると、渦電流が発生して第2アンテナエレメントで発生する磁界を抑制してしまう。そこで、第2アンテナエレメント140で発生する磁力線が第1アンテナエレメント130を貫通しない程度に、第2アンテナエレメント140を第1アンテナエレメント130から離して配置するのがよい。また、第2アンテナエレメント140をアンテナエレメントとして動作させるために、第2アンテナエレメント140の長さを第1アンテナエレメント130の高さよりも長くするのが好ましい。
【0033】
上記のように、第2アンテナエレメント140を第1アンテナエレメント130と垂直方向に重ならない後方に配置するのが好ましいが、これに限定されるものではない。本実施形態の車載用アンテナ装置100では、第2アンテナエレメント140をベースプレート部110の中心部以外の周縁部に配置することができる。第2アンテナエレメント140は、車載用アンテナ装置100の中心より外側、すなわちレドーム150の中心より外側に配置するのがよい。また、第2アンテナエレメント140を第1アンテナエレメント130と垂直方向に重なる位置に配置することも可能であるが、第2アンテナエレメント140が第1アンテナエレメント130の中心よりも後方に位置するように配置するのが好ましい。
【0034】
車載用アンテナ装置100を車両のルーフに搭載する位置は、ルーフの端部近傍とするのが好ましい。車両のルーフは、車載用アンテナ装置100に対し地板として作用する。そして、第2アンテナエレメント140がアンテナエレメントとして動作すると、ルーフの水平面上にミラー電流が発生する。車載用アンテナ装置100を車両のルーフの中央部に搭載したときと端部近傍に搭載したときの比較として、それぞれで発生するミラー電流を模式的に図2(a)、(b)に示す。ここでは、車両のルーフを1m四方の導体板50で模擬している。図2(a)では、第2アンテナエレメント140が導体板50の中央部に位置しており、導体板50の中央部を磁力線51が通過してミラー電流52が誘起されている。また図2(b)では、第2アンテナエレメント140が導体板50の端部近傍に位置しており、導体板50の端部近傍を磁力線51が通過してミラー電流53が誘起されている。
【0035】
車載用アンテナ装置100を車両のルーフの中央部に搭載したときは、図2(a)に示すように、第2アンテナエレメント140のアンテナ動作によりその直下の位置を中心に放射状のミラー電流52が誘起されるが、電流52が対称的に発生するため相互に打ち消されて受信感度の向上に寄与しない。これに対し車載用アンテナ装置100を車両のルーフの端部近傍に搭載したときは、図2(b)に示すように、第2アンテナエレメント140のアンテナ動作によりその直下の位置を中心に誘起される放射状のミラー電流53が非対象となって相互に打ち消されずに残る。このようにして残ったミラー電流は水平偏波に対する感度(利得)を増大させる効果があるが、FM放送の電波は主に水平偏波であることから、FM放送の受信感度が高められることになる。
【0036】
車載用アンテナ装置100のルーフ上の搭載位置がFM放送の受信感度(利得)に与える影響を、図3に示すシミュレーション結果を用いてさらに詳細に説明する。図3において、横軸の距離は図2に示すルーフ端部から第2アンテナエレメント140の位置までの距離Lを示しており、縦軸の利得は車載用アンテナ装置100の水平利得及び垂直利得を示している。また、図3(a)は車載用アンテナ装置100を第2アンテナエレメント140が後方となるように配置したときのシミュレーション結果を示し、図3(b)は車載用アンテナ装置100の前後を反転させて第2アンテナエレメント140が前方となるように配置したときのシミュレーション結果を示している。
【0037】
車載用アンテナ装置100を第2アンテナエレメント140が後方となるように配置したときは、図3(a)に示すように、距離を大きくするのに伴って、符号V1で示す垂直利得が若干増加する傾向を示すのに対して、符号H1で示す水平利得は単調に低下していく。これより、車載用アンテナ装置100をルーフの端部から中央側に移動させるほど水平利得が低下することがわかる。従って、主に水平偏波であるFM放送の受信感度を高めるには、車載用アンテナ装置100をできるだけルーフの端部近傍に搭載するのが好ましい。
【0038】
また、第2アンテナエレメント140が前方となるように車載用アンテナ装置100を配置したときにも、図3(b)に示すように、第2アンテナエレメント140を後方とした場合に比べてややばらつきが大きいものの、距離を大きくするのに伴って符号V2で示す垂直利得が若干増加する傾向を示すのに対して、符号H2で示す水平利得は単調に低下している。これより、FM放送の受信感度を高めるには、第2アンテナエレメント140を前方とした場合でも車載用アンテナ装置100をできるだけルーフの端部近傍に搭載するのが好ましい。
【0039】
次に、車載用アンテナ装置100を第2アンテナエレメント140が後方となるように配置したときと前方となるように配置したときとの比較として、水平利得と垂直利得を合成した合成平均利得を比較した結果を図3(c)に示す。同図(c)に示すように、第2アンテナエレメント140が後方となるように配置したときの合成平均利得(符号C1)と前方となるように配置したときの合成平均利得(符号C2)は、ともに距離Lを大きくするのに伴って減少していくが、第2アンテナエレメント140が後方となるように配置したときの方が常に利得が高くなっている。これより、第2アンテナエレメント140が前方となるように車載用アンテナ装置100をルーフに搭載するよりも、第2アンテナエレメント140が後方となるように車載用アンテナ装置100を搭載するのがより好ましいことがわかる。
【0040】
上記のシミュレーション結果より、車載用アンテナ装置100をルーフ中央部に配置するより後方端部に配置するのがより好ましいことが示されたが、後方端部に限定されず、ルーフの周縁部近傍に配置するのがよい。ルーフ上の車載用アンテナ装置100の好ましい配置位置を、図4を用いて説明する。同図に示すように、車載用アンテナ装置100をルーフ1の中央部以外に配置するのが好ましいが、車載用アンテナ装置100の配置位置がルーフ1の中心からずれている方向と、第2アンテナエレメント140の配置位置がベースプレート部110の中心からずれている方向とが略同じになるように配置するのがより好ましい。なお、車載用アンテナ装置100はシャークフィンアンテナであることから、その配置位置によらずレドームの長手方向を車両の前後方向としている。
【0041】
車載用アンテナ装置100をルーフ1に固定するために、ベースプレート部110の底面に固定部112が設けられている。車載用アンテナ装置100をルーフ1の後方端部に配置する場合、第2アンテナエレメント140ができるだけルーフ1の端部に位置するように、固定部112をベースプレート部110の中央より所定距離だけ前方に設けるようにしてもよい。
【0042】
次に、第2アンテナエレメント140の回路基板120からの好ましい高さについて、図5を用いて説明する。図5(a)は、第2アンテナエレメント140の回路基板120からの高さを変化させたときの位置関係を模式的に示したものであり、図5(b)は、横軸を第2アンテナエレメント140の高さとして縦軸に水平利得(符号H3)、垂直利得(符号V3)、及び合成平均利得(符号C3)の測定結果を示したグラフである。第2アンテナエレメント140の高さは、回路基板120から第2アンテナエレメント140の上端までの高さとしている。
【0043】
図5に示すように、第2アンテナエレメント140の高さを高くするのに伴って各利得が若干増加することがわかる。これは、第2アンテナエレメント140を回路基板120から高くするほど、第2アンテナエレメント140に生じる寄生容量が小さくなって帯域幅が広くなることによるものと考えられる。従って、第2アンテナエレメント140を回路基板120からより高い位置に配置するのが好ましく、本実施形態の車載用アンテナ装置100では第2アンテナエレメント140の上端が第1アンテナエレメント130の上端に一致する高さとしている。
【0044】
本実施形態では、第2アンテナエレメント140として導線を巻回して形成された誘導性デバイスを用いている。第2アンテナエレメント140のインダクタンスは、第2アンテナエレメント140の長さや導線を巻回している径の大きさによって調整することができる。第2アンテナエレメント140の長さや径の大きさは、第1アンテナエレメント130の大きさが決定されると、FM放送を高感度で受信できるように周波数調整を行うことで決定される。第2アンテナエレメント140の径は、レドーム150内に収納可能な範囲で大きくすることができる。
【0045】
第2アンテナエレメント140は、誘導性デバイスであり、レドーム150に収納できる範囲で、可能な限り大きいことが望ましい。第2アンテナエレメントの具体的な形状は、細長い導体を螺旋状、または複数の折り返し構造に形成されており、誘導性のインピーダンスを持たせたヘリカルアンテナや、ミアンダアンテナである。チップインダクタを用いる場合は、所定間隔を持って複数の素子を配置することにより実効長を長くすると良い。いずれの誘導性デバイスを用いても、FM放送を高感度で受信できるように周波数調整することが可能である。
【0046】
第1アンテナエレメント130及び第2アンテナエレメント140で受信された電波は、給電点123を経由して増幅器122に伝送される。増幅器122にできるだけ高い受信信号を入力するには増幅器122をできるだけ給電点123に近い位置に配置するのがよいが、これに限定されず、例えばケーブル接続端124に近い位置に配置してもよい。あるいは、増幅器122を回路基板120上には配置せず、ケーブル160で接続された別の基板上に配置してもよい。
【0047】
本実施形態の車載用アンテナ装置100の具体的な寸法の一例を図6に示す。本実施形態では、第1アンテナエレメント130の高さh1を約24mmとし、前後方向の長さd1を約49mmとすることができる。前後方向の長さd1は、50mm以下とするのが好ましい。また、回路基板120から第1アンテナエレメント130の周縁部までの高さh2を約30mmとすることができる。これにより、ベースプレート部110の前後方向の長さd2を約120mmとし、レドーム150の高さh3を70mmより低くすることができる。
【0048】
上記のように、本実施形態の車載用アンテナ装置100は、従来のアンテナ装置に比べて大幅に小型化することが可能となっている。図5に示した車載用アンテナ装置100では、ベースプレート部110の前方先端から第1アンテナエレメント130まで50mm以上の空きスペースが得られ、この空きスペースに例えばGPSアンテナを配置することも可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車載用アンテナ装置を、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態の車載用アンテナ装置200の概略構成を示す断面図である。本実施形態の車載用アンテナ装置200では、第1アンテナエレメント230を形成する板金がレドーム150の内壁に固着されている。これにより、スペーサ111が不要となっている。また、第2アンテナエレメント140もその上端をレドーム150の内壁まで高くすることができ、これによりFM放送に対する受信感度をさらに高めることができる。
【0050】
また、別の実施形態として、第1アンテナエレメント230をフィルムアンテナとし、このフィルムアンテナをレドーム150の内壁に固着させてもよい。
【0051】
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る車載用アンテナ装置を、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態の車載用アンテナ装置300の概略構成を示す断面図である。本実施形態の車載用アンテナ装置300では、レドーム150の内壁にメッキを施してメッキアンテナを形成し、これを第1アンテナエレメント330として用いている。本実施形態でも、スペーサ111が不要となる。また、図8では第2アンテナエレメント140をレドーム150の上端よりも低くしているが、第2実施形態と同様に、その上端をレドーム150の内壁まで高くしてFM放送に対する受信感度をさらに高めることができる。
【0052】
(第4実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る車載用アンテナ装置を、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態の車載用アンテナ装置400の概略構成を示す断面図である。本実施形態の車載用アンテナ装置400は、ベースプレート410が1枚の平板でなく、2枚以上の平板に分割されている。図9に示す一例では、ベースプレート410が第1平板411及び第2平板412の2枚の平板を組み合わせて構成されている。第2平板412は、図9の断面図では左右2つに分かれているが、水平方向の一部でつながっており、一枚の平板となっている。ベースプレート410を構成する平板はこれに限定されず、さまざまな形状のものを用いることができる。
【0053】
ベースプレート410が2枚以上の平板に分割されることで、ベースプレート410の製造が容易となる。例えば、ベースプレート410を複雑な形状の部分と簡単な形状の部分とに分割して作製することで、それぞれの製造に用いる金型を簡素化しかつ小型化することができる。これにより、ベースプレート410のコストダウンを図ることができる。また、分割されたベースプレート410の一部を共通部品として別種類のアンテナ装置のベースプレートにも利用できるようにすることが可能であり、金型を減らす等により製造コストを低減することができる。
【0054】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る車載用アンテナ装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における車載用アンテナ装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 ルーフ
100、200、300 車載用アンテナ装置
110 ベースプレート部
111 スペーサ
112 固定部
113 貫通孔
120 回路基板
122 増幅器
123 給電点
124 ケーブル接続端
130、230、330 第1アンテナエレメント
140 第2アンテナエレメント
141 上側引出し線
142 下側引出し線
150 レドーム
160 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフに載置される車載用アンテナ装置であって、
少なくとも受信信号を増幅する回路基板と、
前記回路基板と前記ルーフ間に載置されるベースプレート部と、
前記受信信号の受信に用いられる容量性の第1アンテナエレメント及び誘導性の第2アンテナエレメントと、
前記回路基板、前記第1アンテナエレメント、前記第2アンテナエレメント、及び前記ベースプレート部を収納するレドームと、を備え、
前記第2アンテナエレメントは、
一端が前記第1アンテナエレメントに電気的に接続され他端が前記回路基板に電気的に接続されて前記レドームの底面の中心から外側にずれた位置に配置されている
ことを特徴とする車載用アンテナ装置。
【請求項2】
前記第2アンテナエレメントが前記レドームの底面の中心から外側にずれている方向に、前記ルーフの中心から前記ルーフの周縁側にずれた位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項3】
前記ルーフの後方端部の近傍に配置され、
前記第2アンテナエレメントが、前記第1アンテナエレメントの中心より後方に配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項4】
前記第2アンテナエレメントは、ヘリカルアンテナである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項5】
前記第2アンテナエレメントは、前記ルーフに対して略垂直に配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至4に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項6】
前記第2アンテナエレメントは、上方向から見て、前記第1アンテナエレメントの上端部に近接する位置に接続されている
ことを特徴とする請求項1乃至5に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項7】
前記第2アンテナエレメントは、前記第1アンテナエレメントと垂直方向に重ならない位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至6に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項8】
前記第1アンテナエレメントがスペーサにより支持される
ことを特徴とする請求項第1乃至7のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1アンテナエレメントが前記レドームの内壁に固定されている
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項10】
少なくともAMまたはFMまたはVHF帯の放送電波を受信する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の車載用アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−110601(P2013−110601A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254322(P2011−254322)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】