説明

車載用カメラ

【課題】部品点数が削減でき、しかも、取付け作業性が良い車載用カメラを提供する。
【解決手段】カメラ筐体12より突設された取付用突部18を有するカメラ本体11と、取付用突部18に固定され、バックドアパネル2の取付孔3に取付用突部18と共に挿入されてカメラ筐体12との間でバックドアパネル2を挟み込む固定クリップ20とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の死角視認等のために車両に取り付けされる車載用カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転者には、車両後端の近傍エリアや車両前端の近傍エリアなどのように運転席から直接視認できない死角が存在する。又、直接視認できても運転席前の画面に映し出した映像の方が運転者にとって便利な場合もある。このような事情に鑑みて、車両の外側に車載用カメラが取り付けされる場合がある。
【0003】
この種の従来例の車載用カメラは、カメラ本体とブラケットと締結手段であるボルト及びナットとを備えている。カメラ本体にブラケットが固定され、このブラケットが車両取付部材にボルトとナットを用いて取り付けられる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−2115号公報
【特許文献2】特開2004−203345号公報
【特許文献3】特開2004−306665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来例の車載用カメラでは、カメラ本体の他にブラケットとボルトとナットが必要であるため、部品点数が多いという問題がある。また、車両への取付けでは、作業者がカメラ本体を車両取付部材の取付位置に仮支持し、この仮支持した状態でボルトとナットの締結作業を行う必要があるため、取付け作業性が悪いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、部品点数が削減でき、しかも、取付け作業性が良い車載用カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カメラ筐体より突設された取付用突部を有するカメラ本体と、前記取付用突部に固定され、車両取付部材の取付孔に前記取付用突部と共に挿入されて前記カメラ筐体との間で前記車両取付部材を挟み込む固定クリップとを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記固定クリップは、前記取付用突部の外周面より外側に突出する複数の弾性アーム部を有し、前記各弾性アーム部は、前記車両取付部材の前記取付孔への挿入過程では、前記取付孔の周縁に接触するとその接触力で取付孔に入り込む方向に弾性変形し、前記取付孔から抜け出て前記取付孔の周縁からの接触力が解除されると、前記取付孔よりも外側に突出する方向に弾性復帰変形し、前記カメラ筐体との間で前記車両取付部材を挟み込むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車載用カメラの取付用突部及び固定クリップを車両取付部材の取付孔に挿入すれば、固定クリップとカメラ筐体の間で車両取付部材を挟持し、これにより車載用カメラの取付けが完了するため、非常に簡単に取付けできる。又、部品は、車載用カメラの1部品である。以上より、部品点数が削減でき、しかも、取付け作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示し、車載用カメラが取り付けされた車両の一部斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、(a)、(b)は見る方向は異なるがそれぞれ車載用カメラの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は車載用カメラの分解斜視図、(b)は固定クリップの側面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、(a)車載用カメラの正面図、(b)は車載用カメラの右側面図、(c)車載用カメラの裏面図、(d)車載用カメラの平面図、(e)は車載用カメラの底面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、車載用カメラを取付孔に挿入する前の斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、(a)〜(c)は車載用カメラの取付け手順を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態を示し、車載用カメラの取り付け状態を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の変形例を示し、車載用カメラがバックドアパネルに取り付けされた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図7は本発明の一実施形態を示す。図1に示すように、車載用カメラ10は、車両1の背面の車両取付部材であるバックドアパネル2に装着されている。車載用カメラ10は、その外光取入れ開口12aを斜め下方に向けて配置され、車両後端の近傍エリアを撮影エリアとしている。車載用カメラ10は、撮影した画像信号をインストルメントパネル(図示せず)に設けたディスプレイ装置(図示せず)に送信する。ディスプレイ装置は、受信した画像信号に応じた画像を表示する。
【0013】
図2〜図4に示すように、車載用カメラ10は、合成樹脂製のカメラ本体11と、これと一体に固定された合成樹脂製の固定クリップ20とから構成されている。
【0014】
カメラ本体11は、カメラ筐体12と、カメラ筐体12の裏面開口を塞ぐバックカバー13と、カメラ筐体12内に収容された光学・撮像部14とを備えている。カメラ筐体12は、車両設置状態にあって、斜め下方面に外光取入れ開口12aを有する。バックカバー13は、カメラ筐体12にねじ15で固定されている。光学・撮像部14は、外部からの撮像光を取り入れ、取り入れた撮像光を画像信号に変換する。
【0015】
カメラ筐体12の裏面12bには、後方に向かって突出する取付用突部18が一体に設けられている。この取付用突部18内を通って電線(図示せず)が外部に引き出される。取付用突部18の外側面18aの上方と下方とバックカバー13には、アーム逃げ凹部19が形成されている。
【0016】
固定クリップ20は、取付用突部18の先端面にネジ(図示せず)で固定されている。固定クリップ20は、基底部21と、この基底部21の上縁端より延設された一対の上方弾性アーム部22と、基底部21の下縁端より延設された板状の下方弾性アーム部23とを備えている。上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23は、各アーム逃げ凹部19に沿ってカメラ筐体12の裏面12b側に向かって斜め外方に延びている。上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23は、各アーム逃げ凹部19の底面より浮いた状態で配置され、各アーム逃げ凹部19に入り込む方向(バックドアパネル2の取付孔3への挿入では、取付孔3に入り込む方向)に弾性変形できる。上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23の先端部は、取付用突部18の外側面18aより外側にそれぞれ突出している。上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23の各先端部には、係止段差22a,23aがそれぞれ形成されている。
【0017】
上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23は、バックドアパネル2の取付孔3への挿入では、取付孔3の周縁に接触するとその接触力で取付孔3に入り込む方向に弾性変形し、取付孔3の周縁からの接触力が解除されると、取付孔3よりも外側に突出する方向に弾性復帰変形する。
【0018】
次に、車載用カメラ10の車両1への取付作業を説明する。先ず、車両1のほぼ垂直方向に沿って配置されたバックドアパネル2の所定位置に取付孔3を開ける。取付孔3は、取付用突部18がほぼ隙間なく挿入できる大きさの孔である。
【0019】
次に、図5及び図6(a)に示すように、カメラ本体11の取付用突部18を取付孔3に位置合わせする。そして、図6(b)に示すように、バックドアパネル2の外面側からカメラ本体11の取付用突部18を取付孔3に挿入する。挿入が進むと固定クリップ20の上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23が取付孔3の周縁に突き当たる。この状態から更に強制挿入すると、図6(c)に示すように、固定クリップ20の上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23は、取付孔3の周縁からの接触力を受けて取付孔3に入り込む方向に弾性変形し、取付用突部18及び固定クリップ20の進入が許容される。
【0020】
取付用突部18が取付孔3の挿入完了位置まで挿入すると、固定クリップ20の上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23が取付孔3から完全に抜け、上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23が取付孔3の外側に向かって弾性復帰変形する。この弾性復帰変形によって、図7に示すように、固定クリップ20の上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23の各係止段差22a,23aが取付孔3の内周面及びバックドアパネル2の内面に係止される。これにより、カメラ筐体12の裏面12bと固定クリップ20の間でバックドアパネル2が挟み込まれる。この挟持力によって、カメラ本体11はバックドアパネル2に取付けされる。これで、車載用カメラ10の取付作業も完了する。
【0021】
以上説明したように、車載用カメラ10は、カメラ筐体12より突設された取付用突部18を有するカメラ本体11と、取付用突部18に固定され、バックドアパネル2の取付孔3に取付用突部18と共に挿入されてカメラ筐体12との間でバックドアパネル2を挟み込む固定クリップ20とを備えている。従って、カメラ本体11の取付用突部18をバックドアパネル2の取付孔3に挿入すれば、固定クリップ20とカメラ筐体12の間でバックドアパネル2を挟持する。これにより、車載用カメラ10の取付けが完了するため、非常に簡単に取付けできる。又、部品としては、車載用カメラ10の1部品である。以上より、部品点数が削減でき、しかも、取付け作業性が良い。
【0022】
固定クリップ20は、上方側に上方弾性アーム部22を、下方側に下方弾性アーム部23を有する。従って、固定クリップ20とカメラ筐体12の間には、取付用突部18の上側と下側より挟持力が作用するため、取付性が向上する。
【0023】
上方弾性アーム部22及び下方弾性アーム部23は、バックドアパネル2の取付孔3への挿入過程では、取付孔3の周縁に接触するとその接触力で取付孔3に入り込む方向に弾性変形し、取付孔3から抜け出て取付孔3の周縁からの接触力が解除されると、取付孔3よりも外側に突出する方向に弾性復帰変形し、カメラ筐体12との間でバックドアパネル2を挟み込む。従って、取付用突部18及び固定クリップ20を単にバックドアパネル2の取付孔3に挿入するだけで上方弾性アーム部22及び下方弾性アーム部23が挟持位置に変移するため、取付作業性が面倒になることがない。
【0024】
固定クリップ20の上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23の各係止段差22a,23aが弾性復帰力を作用させた状態で取付孔3の内周面にも係止されるので、取付孔3の内周面と取付用突部18の外側面18aとの間に隙間があっても車載用カメラ10がガタ付きなく取り付けされる。
【0025】
(変形例)
図8には、前記実施形態の変形例が示されている。図8に示すように、変形例の車載用カメラ10Aには、固定クリップ20Aの上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23の各先端部に係止段差22a,23aが形成されていない。車載用カメラ10Aのバックドアパネル2への取り付け状態では、固定クリップ20Aの上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23の各先端部は、取付孔3を完全に抜けてバックドアパネル2の内面に係止されるようになっている。この変形例においても、カメラ筐体12の裏面12bと固定クリップ20Aの間でバックドアパネル2が挟み込まれる。そして、固定クリップ20Aの上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23の各先端部は、取付孔3を完全に抜けてバックドアパネル2の内面に係止されているので、カメラ筐体12をバックドアパネル2の外側に引き抜こうとする外力に対して非常に強い引抜き阻止力を発揮する。
【0026】
前記実施形態にあって、カメラ筐体12の裏面12b側には、シール部材を設けても良い。シール部材を設ければ、車体外側の水、塵埃等が取付孔3よりバックドアパネル2の内側に侵入するのを有効に防止できる。又、シール部材の圧縮変形によって固定クリップ20、バックドアパネル2等の寸法の誤差を吸収しつつカメラ本体11をバックドアパネル2に取り付けることができる。更に、車体側からカメラ本体11に伝達される振動を低減できる。
【0027】
前記実施形態では、カメラ本体11や固定クリップ20を合成樹脂材にて形成したが、金属材にて形成しても良く、材料を問わない。
【0028】
前記実施形態では、固定クリップ20は、上方弾性アーム部22と下方弾性アーム部23を有し、上下二方向からバックドアパネル2を挟持するが、挟持方向と挟持位置はこれに限定されるものではない。例えば固定クリップ20が左右方向から挟持するように構成しても良く、又、固定クリップ20が三方向、四方向、若しくはそれ以上の方向から挟持するよう構成しても良い。
【0029】
前記実施形態では、車載用カメラ10をバックドアパネル2に取り付けたが、車両1のどの箇所に取り付けても良い。車載用カメラ10は、車両の外側でなく内側に取り付けても良く、又、撮影エリアも車外ではなく車内であっても良い。
【0030】
前記実施形態では、固定クリップ20は、取付用突部18にネジ(図示せず)で固定されているが、固定手段はこれに限定されない。接着剤によって固定しても良い。
【0031】
前記実施形態では、車載用カメラ10は、垂直方向に配置されているバックドアパネル2に取り付けたが、所望の撮影領域に向くよう外光取入れ開口12aを設定すれば、あらゆる向きの車両取付部材に取り付け可能である。
【符号の説明】
【0032】
2 バックドアパネル(車両取付部材)
3 取付孔
10,10A 車載用カメラ
11 カメラ本体
12 カメラ筐体
18 取付用突部
20,20A 固定クリップ
22 上方弾性アーム部(弾性アーム部)
23 下方弾性アーム部(弾性アーム部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ筐体より突設された取付用突部を有するカメラ本体と、
前記取付用突部に固定され、車両取付部材の取付孔に前記取付用突部と共に挿入されて前記カメラ筐体との間で前記車両取付部材を挟み込む固定クリップとを備えたことを特徴とする車載用カメラ。
【請求項2】
請求項1記載の車載用カメラであって、
前記固定クリップは、前記取付用突部の外周面より外側に突出する複数の弾性アーム部を有し、
前記各弾性アーム部は、前記車両取付部材の前記取付孔への挿入過程では、前記取付孔の周縁に接触するとその接触力で取付孔に入り込む方向に弾性変形し、前記取付孔から抜け出て前記取付孔の周縁からの接触力が解除されると、前記取付孔よりも外側に突出する方向に弾性復帰変形し、前記カメラ筐体との間で前記車両取付部材を挟み込むことを特徴とする車載用カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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