説明

車載用ディスクプレーヤ

【課題】イジェクト操作時にディスクをディスク挿入口から容易に取り出すことができるスロットイン方式の「車載用ディスクプレーヤ」を提供する。
【解決手段】ディスク挿入口4から挿入されたディスクDをイジェクト位置とプレイ位置との間で自動搬送するディスク搬送機構と、ディスクDをプレイ位置でチャッキングして回転駆動するドライブ機構とを備えたスロットイン方式の車載用ディスクプレーヤにおいて、前記ディスク搬送機構を、自在継手11を介して平面視V字状に連結された第1のローラ9と第2のローラ10と、これら両ローラ9,10の上方に対向配置されたディスクガイ8と、両ローラ9,10の外側端部を回転可能に支持するローラブラケット13とで構成すると共に、両ローラ9,10の連結部分をディスク挿入口4の中央部後方に近接配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVD等のディスクに情報を記録および/または再生する車載用ディスクプレーヤに係り、特に、ディスク挿入口とプレイ位置との間でディスクを自動搬送するスロットイン方式の車載用ディスクプレーヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に車載用ディスクプレーヤでは、ディスク挿入口を有する枠体の配設されたドライブシャーシと、ドライブシャーシの上端部に配設されたディスクガイドと、ディスクガイドの下方に揺動可能に配設されたローラブラケットと、ローラブラケットに回転可能に支持されたゴム製のローラとを備え、モータを駆動源としてローラを正逆両方向へ回転駆動することにより、ディスクガイドとローラとの間に挟持されたディスクをイジェクト位置(ディスク挿入口)とプレイ位置との間で自動搬送するようにしたスロットイン方式のディスク搬送機構が広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなディスク搬送機構を備えた車載用ディスクプレーヤにおいて、ディスクが装置本体内に装填されていないイジェクト状態(待機状態)にあるとき、ローラブラケットはスプリングの弾発力を受けてディスクガイドの下面に近接する方向へ付勢されており、ローラブラケットに支持されたローラはディスク挿入口の後方位置でディスクガイドの下面に接触し、または僅かな隙間を介して対向している。かかるイジェクト状態において、ユーザの手動操作によってディスクがディスク挿入口から装置本体内に所定量挿入され、該ディスクの挿入方向の先端部がディスクガイドとローラとの間に入り込んで挟持されると、ディスクはローラの一方向の回転駆動力によって装置本体の内部へと自動搬送される。このようにしてディスクがプレイ位置の上方まで自動搬送されると、ドライブシャーシの奥部に配置された検知レバーがディスクの挿入方向の先端部に押圧されて回動変位し、この検知レバーの回動変位に基づいてモード切換動作が行われる。その結果、ローラブラケットがスプリングの弾発力に抗して下方へ回動し、ローラがディスクガイドの下面から離れると共に、クランパを支持するクランプアームが下方へ回動し、ディスクの中心部がクランパとターンテーブル間にチャッキングされてプレイ状態となる。そして、このプレイ状態において、スピンドルモータを駆動源としてターンテーブルとディスクおよびクランパを一体的に回転駆動すると共に、光ピックアップをディスクの径方向へ移動することにより、ディスクに対する情報の再生動作等が行われる。
【0004】
また、再生等が完了したディスクを排出(イジェクト)するときには、上記と逆の動作が行われる。この場合、まず下降位置にあるクランプアームが上方へ回動し、クランパとターンテーブルとによるディスクのチャッキング動作が解除された後、ローラブラケットがスプリングの弾発力によって上方へ回動することにより、ディスクがディスクガイドとローラ間に挟持されたイジェクト開始状態となる。しかる後、ローラの他方向の回転駆動力によってディスクがプレイ位置からディスク挿入口に向けて自動搬送され、ディスクの排出方向の後端部がローラから離れる位置まで自動搬送されると、ディスクは当該位置で停止して排出方向の先端部分をディスク挿入口から所定量突出させるため、ユーザはディスク挿入口から突出するディスクを掴んで装置本体から取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−99833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した従来のスロットイン方式の車載用ディスクプレーヤでは、ディスク挿入口に対して平行配置されたローラとその上方に対向配置されたディスクガイドとの間にディスクを挟持し、この状態でローラの回転駆動力によってディスクをプレイ位置の上方まで自動搬送した後、ディスクの挿入方向の先端部で検知レバー等を回動変位させてクランプ動作に移行するようになっているため、ローラの設置位置がプレイ位置に対して離れ過ぎていると、プレイ位置でディスクの搬送力によって検知レバー等を動作させることができなくなる。このような理由からローラはディスク挿入口に対向するドライブシャーシの前端部よりも内方(後方)へ入り込んだ位置に配置されているが、それに伴ってローラとディスク挿入口との間の離反距離が長くなってしまうため、イジェクト操作時にディスク挿入口から突出するディスクの排出量(突出量)が減じられてしまい、ユーザにとってディスクを装置本体から取り出し難いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、イジェクト操作時にディスクをディスク挿入口から容易に取り出すことができるスロットイン方式の車載用ディスクプレーヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、ディスク挿入口の中央部近傍から外側部に向かって斜めに設置されたローラを備え、このローラの回転に伴って発生する斜め方向の搬送力のうち、ディスク挿入口と直交する方向に向かう分力を利用して、ディスクがディスク挿入口とプレイ位置との間で自動搬送されるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車載用ディスクプレーヤは、ディスク挿入口の中央部近傍から外側部に向かって斜めに設置されたローラを備えており、このようなローラによってディスクをディスクガイドとローラ間で挟持して自動搬送できる領域がディスクの搬送経路方向に沿って広がるため、ディスク挿入口から突出するディスクの排出量が多くなるように設定した場合でも、プレイ位置でディスクの搬送力を利用して確実にクランプ動作に移行させることが可能となり、イジェクト操作時にユーザはディスクをディスク挿入口から容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例に係る車載用ディスクプレーヤの斜視図である。
【図2】該ディスクプレーヤに備えられるドライブユニットの斜視図である。
【図3】該ドライブユニットを裏面側から見た斜視図である。
【図4】ディスクの搬送途中状態を示す説明図である。
【図5】ディスクがプレイ位置まで自動搬送された状態を示す説明図である。
【図6】ローラからディスクに対して発生する搬送力を示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る車載用ディスクプレーヤの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態例では、前面にディスク挿入口を有する枠体と、前記ディスク挿入口から挿入されたディスクを該ディスク挿入口とプレイ位置との間で自動搬送するディスク搬送機構と、挿入されたディスクを前記プレイ位置でチャッキングして回転駆動するドライブ機構とを備え、前記ディスク搬送機構が、正逆両方向に回転可能なローラと、このローラの上方に対向配置されたディスクガイドとを有し、これらディスクガイドとローラとの間に挟持されたディスクが該ローラの回転駆動力によって自動搬送される車載用ディスクプレーヤにおいて、前記ローラがディスクの搬送方向に対して互いに逆向きに斜め方向へ延びる第1のローラと第2のローラとからなり、これら第1および第2のローラのそれぞれの一端部どうしが前記ディスク挿入口の中央部近傍で平面視V字状に連結されているという構成にした。
【0012】
このように構成された車載用ディスクプレーヤでは、平面視V字状に連結された第1のローラと第2のローラの回転に伴ってディスクを互いに逆向きに斜め方向へ移動させようとする2種類の搬送力が発生し、これら2種類の搬送力のうち、ディスク挿入口と平行な方向の分力どうしはキャンセルされるが、ディスク挿入口と直交する方向の各分力によってディスクをディスク挿入口とプレイ位置との間で自動搬送することができる。これによりディスクをディスクガイドとローラ間で挟持して自動搬送できる領域がディスクの搬送経路方向に沿って広がるため、ディスク挿入口から突出するディスクの排出量が多くなるように設定した場合でも、プレイ位置でディスクの搬送力を利用して確実にクランプ動作に移行させることが可能となり、イジェクト操作時にユーザはディスクをディスク挿入口から容易に取り出すことができるようになる。
【0013】
また、本発明の他の実施形態例では、前面にディスク挿入口を有する枠体と、前記ディスク挿入口から挿入されたディスクを該ディスク挿入口とプレイ位置との間で自動搬送するディスク搬送機構と、挿入されたディスクを前記プレイ位置でチャッキングして回転駆動するドライブ機構とを備え、前記ディスク搬送機構が、正逆両方向に回転可能なローラと、このローラの上方に対向配置されたディスクガイドとを有し、これらディスクガイドとローラとの間に挟持されたディスクが該ローラの回転駆動力によって自動搬送される車載用ディスクプレーヤにおいて、ディスクの搬送経路を介して互いに平行に配設した一対の搬送ガイド部材を備えると共に、前記ローラを前記ディスク挿入口の中央部近傍から一方の前記搬送ガイド部材に向かって斜めに設置するという構成にした。
【0014】
このように構成された車載用ディスクプレーヤでは、ローラの回転に伴ってディスクを斜め方向に移動させて搬送ガイド部材に押し当てようとする搬送力が発生し、この搬送力のうち、ディスク挿入口と直交する方向の分力を利用してディスクをディスク挿入口とプレイ位置との間で自動搬送することができる。これによりディスクをディスクガイドとローラ間で挟持して自動搬送できる領域がディスクの搬送経路方向に沿って広がるため、ディスク挿入口から突出するディスクの排出量が多くなるように設定した場合でも、プレイ位置でディスクの搬送力を利用して確実にクランプ動作に移行させることが可能となり、イジェクト操作時にユーザはディスクをディスク挿入口から容易に取り出すことができるようになる。
【実施例】
【0015】
まず、図1〜図6を参照して本発明の第1実施例に車載用ディスクプレーヤを説明すると、図1に示すように、本実施例に係る車載用ディスクプレーヤは、本体装置の外殻を形成する箱状の枠体1と、この枠体1の内部に収納されたドライブユニット2を備えており、ドライブユニット2は複数のダンパ3や図示せぬスプリングを介して枠体1に弾性支持されている。枠体1の前面板1aには横長形状のディスク挿入口4が形成されており、枠体1の左右両内壁にはロックピン5が内方へ向かって突設されている。また、前面板1aには傾斜板1bが折曲形成されており、この傾斜板1bはディスク挿入口4の下辺中央部から枠体1の内底面に向かって前傾姿勢で延びている。
【0016】
図2と図3に示すように、ドライブユニット2は合成樹脂製のベース部材6を有しており、このベース部材6の手前側上面には金属製の支持板7がねじ止め固定されている。支持板7の下面には合成樹脂製のガイドトップ8がスナップ結合等によって一体化されており、このガイドトップ8とベース部材6の内底面との間にはディスク挿入口4に対向するディスク搬送空間が画成されている。このディスク搬送空間の内部にはゴム製の第1のローラ9と第2のローラ10が配設されており、第1および第2のローラ9,10の各一端部は自在継手11を介して平面視V字状に連結されている。本実施例の場合、第2のローラ10はベース部材6の裏面奥部に配設されたモータ12の駆動力を受けて回転する駆動側ローラとなっており、第1のローラ9は自在継手11を介して第2のローラ10と同期回転する従動側ローラとなっている。ただし、これとは逆に第1のローラ9を駆動側ローラとし、第2のローラ10を従動側ローラとしても良い。自在継手11はカルダンジョイントやツェッパジョイント等からなり、この自在継手11はディスク挿入口4の中央部後方で傾斜板1bの真上に位置している。また、第1のローラ9と第2のローラ10の各他端部はローラブラケット13の後端部に回転可能に支持されており、ローラブラケット13の前端部はベース部材6に回動可能に軸支されている。すなわち、第1および第2のローラ9,10は全体的に1本のローラの中央部をV字状に屈曲させた形状をなし、その屈曲部分に設けられた自在継手11がディスク挿入口4の中央部後方に近接配置されていると共に、その両側部がディスク挿入口4から比較的離れた位置でローラブラケット13に回転可能に支持されている。
【0017】
ローラブラケット13とベース部材6の底面との間には図示せぬスプリングが張架されており、ローラブラケット13はこのスプリングの弾性力によって第1および第2のローラ9,10をガイドトップ8の下面に近接する方向へ付勢されている。ローラブラケット13の後端部には図示せぬピンが設けられており、このピンが後述するスライド部材のカム孔に挿入されることにより、ローラブラケット13はスライド部材の前後進移動に伴ってピンを中心に回動するようになっている。なお、これらガイドトップ8と第1および第2のローラ9,10とローラブラケット13とによってディスク搬送機構が構成されている。
【0018】
ベース部材6の後壁にはクランプアーム14の左右後端部が回動可能に軸支されており、このクランプアーム14の中央部手前側にはクランパ15が回転可能に支持されている。また、ベース部材6の左右両側壁の外側には合成樹脂製のスライド部材16が配設されており、これら両スライド部材16はベース部材6の前後方向(X1−X2方向)に移動可能に支持されている。両スライド部材16はベース部材6の裏面側に配置されたリンク部材17を介して連結されており、前述したモータ12を駆動源として一方のスライド部材16が前後進すると、その動きに同期して他方のスライド部材16も前後進するようになっている。一方のスライド部材16の前端部下面には板ばね18が片持ち状に固着されており、この板ばね18の先端部には起立片18aが直角に折曲形成されている。起立片18aはスライド部材16の前後進に伴って傾斜板1bを摺動するようになっており、スライド部材16が後退位置あって起立片18aが傾斜板1bの下部に当接しているとき、板ばね18は図2の実線で示すように弾性変形していないが、スライド部材16の前進に伴って起立片18aが傾斜板1bの上部へ乗り上げると、起立片18aは上昇して自在継手11の下面に対向し、板ばね18は図2の2点鎖線で示すように上側に向けて弾性変形する。
【0019】
ベース部材6の裏面側にはドライブ機構を構成するスピンドルモータ19や光ピックアップ20等が搭載されており、このスピンドルモータ19の回転軸にはクランパ15の下面に対向するターンテーブル(図示せず)が固着されている。また、ベース部材6の裏面側には図示せぬ遊星歯車列やロックレバー等で構成される動力切換機構21が配設されており、この動力切換機構21によってモータ12の駆動力が第1および第2のローラ9,10とスライド部材16と光ピックアップ20の各動作のいずれかに切り換えられるようになっている。さらに、ベース部材6の左右両側壁には回動アーム22が回転可能に支持されており、これら回動アーム22に突設されたピン22aはスライド部材16に形成された係合孔16aに挿入されている。そして、両スライド部材16の前後進に伴ってピン22aが係合孔16a内を移動することにより、回動アーム22が枠体1の左右両側壁に折曲形成された図示せぬロック板と係脱するようになっている。
【0020】
なお、スライド部材16には係合孔16aの他にロック溝16bや図示せぬカム孔や突起等が形成されており、両スライド部材16の前後進に伴ってロック溝16bがロックピン5と係脱することにより、ドライブユニット2を枠体1に対してロック/アンロック状態に切り換えるロック切換機構が動作される。また、両スライド部材16の前後進に伴ってローラブラケット13の図示せぬピンが前記カム孔内を相対移動することにより、ローラブラケット13を回動させて第1および第2のローラ9,10が昇降動作するようになっている。さらに、両スライド部材16の前後進に伴って前記突起がクランプアーム14の両側壁に形成された図示せぬカムと係脱することにより、クランプアーム14を回動させてクランパ15がターンテーブルに対して昇降動作するようになっている。
【0021】
上述のごとく構成された車載用ディスクプレーヤの動作について説明すると、ディスクDが本体装置に挿入されていないイジェクト時(待機状態)において、両スライド部材16はベース部材6の手前側の前進位置にあり、これらスライド部材16のロック溝16bが枠体1のロックピン5に係止すると共に、両スライド部材16の係合孔16aに係合する回動アーム22が枠体1の図示せぬロック板に当接しているため、ディスク搬送機構やドライブ機構等のメカニズム全体を搭載したドライブユニット2は枠体1に対して固定的に支持されたロック状態となっている。また、かかるイジェクト状態において両スライド部材16の図示せぬ突起がクランプアーム14のカムに当接しているため、クランプアーム14は上方へ回動してクランパ15がターンテーブルから離反し、両者の間にディスクDを挿入可能な空間が確保されている。さらに、ローラブラケット13の図示せぬピンが両スライド部材16のカム孔の上段位置にあるため、ローラブラケット13は第1および第2のローラ9,10を支持した後端側が上昇した前傾姿勢となっており、両ローラ9,10の外周面は図示せぬスプリングの弾性力を受けてガイドトップ8の下面に圧接されている。このとき、板ばね18の起立片18aは前面板1aに形成された傾斜板1bの上部に乗り上げており、第1および第2のローラ9,10間を連結する自在継手11の下方への移動が起立片18aによって阻止されているため、第1および第2のローラ9,10は水平面内でV字状姿勢を保ったままガイドトップ8の下面と対向している。
【0022】
この状態でユーザがディスクDを摘んでディスク挿入口4から装置本体内に所定量挿入すると、ディスクDはローラブラケット13の上方のディスク搬送空間を通って第1および第2のローラ9,10の連結部分(V字状の谷部)まで達し、この間にディスクDの挿入によって図示せぬディスク検知手段が動作されることにより、該ディスク検知手段からの信号に基づいてモータ12が一方向へ回転し始める。その結果、このモータ12の駆動力によって第1および第2のローラ9,10が一方向へ回転し始め、図4に示すように、これら両ローラ9,10とガイドトップ8との間に挟持されたディスクDが両ローラ9,10の回転力によって挿入方向(矢印X2方向)へ自動搬送される。かかるディスクDの自動搬送中において、図6に示すように、第1のローラ9からディスクDに対して該第1のローラ9の軸線と直交する向きに搬送力F1が発生し、第2のローラ10からディスクDに対して該第2のローラ10の軸線と直交する向きに搬送力F2が発生する。ここで、ディスク挿入口4と平行な直線をPとすると、V字状に連結された第1および第2のローラ9,10は直線Pに対して逆向きに同じ角度θで傾斜しているため、搬送力F1の直線Pに平行な方向の分力F1aと搬送力F2の直線Pに平行な方向の分力F2aはキャンセル(相殺)され、ディスクDは搬送力F1,F2の直線Pと直交する方向の各分力F1b,F2bによって矢印X2方向へ自動搬送される。
【0023】
図5に示すように、このようにしてディスクDがプレイ位置の上方(ディスクDの中心孔がターンテーブルとクランパ15との間となる位置)まで自動搬送されると、ベース部材6の奥部に配置された図示せぬ検知レバーがディスクDの挿入方向先端側の縁部に押圧されて回動変位し、該検知レバーの回動変位をトリガーとして動力切換機構21が動作されるため、モータ12の駆動力が第1および第2のローラ9,10からスライド部材16へと切り換えられ、両スライド部材16がモータ12を駆動源としてベース部材6の前進位置から後退位置まで移動する。なお、かかるプレイ位置でもディスクDの挿入方向後端部は第1および第2のローラ9,10とガイドトップ8との間に挟持されており、第1および第2のローラ9,10の回転駆動力がディスクDに作用するようになっているため、ディスクDの搬送力によって前記検知レバーを確実に回動変位することができる。
【0024】
このようにして両スライド部材16が後退方向の末端位置まで移動する間に、両スライド部材13のロック溝16bがロックピン5から離れると共に、回動アーム22のピン14aがスライド部材16の係合孔16a内を移動して回動アーム22と図示せぬロック板の係合が解除されるため、ベース部材6は複数のダンパ3等によって枠体1に弾性的に支持されたアンロック状態となる。また、ローラブラケット13の図示せぬピンが両スライド部材16のカム孔の上段位置から下段位置へ移行するため、ローラブラケット13がスプリングの弾性力に抗して下方へ回動し、しかも、スライド部材16の後退によって板ばね18の起立片18aが傾斜板1bの下部側へ移動して自在継手11の下面から離れるため、ローラブラケット13に支持された第1および第2のローラ9,10は起立片18aに邪魔されることなく下降してディスクDの下面から離れる。また、このタイミングで両スライド部材16の図示せぬ突起がクランプアーム14のカムから離れるため、クランパ15を支持するクランプアーム14が下方へ回動し、ディスクDの中心部がクランパ15とターンテーブル間にクランプされる。さらに、ディスクDのクランプ動作が完了した時点で動力切換機構21によって動力伝達経路が切り換えられ、モータ12の駆動力がスライド部材16から光ピックアップ20へ切り換えられてプレイ状態となる。そして、このプレイ状態において、スピンドルモータ19を駆動してターンテーブルとディスクDおよびクランパ15を一体的に回転駆動すると共に、モータ12の駆動力によって光ピックアップ20をディスクDの径方向へ移動することにより、ディスクDに対する情報の再生動作等が行われる。
【0025】
また、再生等が完了したディスクDを排出(イジェクト)するときには、図示せぬイジェクト釦を投入してモータ12を他方向へ回転させることにより、上記と逆の動作が行われる。この場合、まず下降位置にあるクランプアーム14が上方へ回動してクランパ15とターンテーブルとによるディスクDのチャッキング動作が解除された後、ローラブラケット13がスプリングの弾性力によって上方へ回動することにより、ディスクDがガイドトップ8と第1および第2のローラ9,10間に挟持されたイジェクト開始状態となる。しかる後、モータ12を駆動源として第1および第2のローラ9,10を他方向へ回転することにより、ディスクDが図5に示すプレイ位置からディスク挿入口4に向けて排出方向(矢印X1方向)へ自動搬送され、ディスクDの排出方向の後端部が図4に示す位置からディスク挿入口4側へさらに近付くと、当該位置でディスクDは第1および第2のローラ9,10からの回転駆動力が遮断されて停止する。その際、第1および第2のローラ9,10の連結部分(自在継手11)がディスク挿入口4の中央部後方の近接位置に配置されているため、ディスク挿入口4から突出するディスクDの突出量(排出量)は増加したものとなり、ユーザはディスクDを掴み易くなって装置本体から容易に取り出すことができる。
【0026】
なお、このようにディスクDが排出方向へ自動搬送されるとき、第1および第2のローラ9,10からディスクDに対して図6の矢印F1,F2と180度逆向きの搬送力がそれぞれ発生するが、この場合も両搬送力のディスク挿入口4と平行な方向の分力どうしはキャンセルされるため、ディスクDは両搬送力のディスク挿入口4と直交する方向の各分力によって矢印X1方向へ自動搬送される。
【0027】
このように本実施例に係る車載用ディスクプレーヤでは、自在継手11を介して平面視V字状に連結された第1のローラ9と第2のローラ10をディスク搬送用ローラとして用い、これら第1および第2のローラ9,10の連結部分をディスク挿入口4の中央部後方に近接配置したので、第1のローラ9と第2のローラ10の回転に伴ってディスクDを互いに逆向きに斜め方向へ移動させようとする2種類の搬送力F1,F2が発生し、これら搬送力F1,F2のうち、ディスク挿入口4と直交する方向の各分力F1b,F2bによってディスクDをイジェクト位置とプレイ位置との間で自動搬送することができる。これによりディスクDをガイドトップ8と第1および第2のローラ9,10間で挟持して自動搬送できる領域がディスクの搬送経路方向(矢印X1−X2方向)に沿って広がるため、ディスク挿入口4から突出するディスクDの排出量が増加するようにした場合でも、プレイ位置でディスクDの搬送力を利用して確実にクランプ動作に移行させることが可能となり、イジェクト操作時にユーザがディスクDを掴み易くなって装置本体から容易に取り出すことができる。
【0028】
次に、本発明の第2実施例に車載用ディスクプレーヤを図7を参照して説明する。なお、図7において、図1〜図6に対応する部分には同一符号を付すことにより、重複する説明は適宜省略してある。
【0029】
図7に示すように、本実施例が前述した第1実施例と相違する点は、ベース部材6の左右両側壁の内側にディスクの搬送経路を介して対向する合成樹脂製の搬送ガイド部材23,24を設けると共に、ディスク挿入口4の中央部後方から一方の搬送ガイド部材24に向かってローラ25を斜めに設置したことにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。すなわち、本実施例の場合は、第1実施例で用いたV字状の2本ローラの一方を削除して他方を1本のローラ25とし、その代わりにディスクの搬送経路の左右両側に一対の搬送ガイド部材23,24を付加した構造となっている。なお、図7中には図示されているが、ドライブユニット2の手前位置にはガイドトップとローラブラケットが配設されており、これらガイドトップとローラブラケットおよびローラ25によってディスク搬送機構が構成されている。そして、ローラ25の一端部はディスク挿入口4の中央部後方の近接位置でローラブラケット13に回転可能に支持されており、ローラ25の他側部はディスク挿入口4から比較的離れた位置でローラブラケット13に回転可能に支持されている。
【0030】
本実施例に係る車載用ディスクプレーヤにおいては、ディスクDが矢印X2方向へ自動搬送されるとき、ローラ25からディスクDに対して該ローラ25の軸線と直交する向きに図6のF1と同様の斜め方向の搬送力が発生し、この搬送力のディスク挿入口4と平行な方向の分力(図6のF1a)よってディスクDは図示左側の搬送ガイド部材23に押し付けられるため、ディスクDは搬送ガイド部材23に案内されながら搬送力のディスク挿入口4と直交する方向の分力(図6のF1b)によってプレイ位置へと自動搬送される。その反対にディスクDが矢印X1方向へ自動搬送されるとき、ローラ25からディスクDに対して発生する斜め方向の搬送力のうち、ディスク挿入口4と平行な方向の分力よってディスクDは図示右側の搬送ガイド部材24に押し付けられるため、ディスクDはこの搬送ガイド部材24に案内されながら搬送力のディスク挿入口4と直交する方向の分力によってイジェクト位置へと自動搬送される。
【0031】
このように本実施例に係る車載用ディスクプレーヤでは、ディスク搬送経路を介して対向する一対の搬送ガイド部材23,24をディスクDの搬送方向に沿って配設すると共に、1本のローラ25をディスク挿入口4の中央部近傍から一方の搬送ガイド部材24に向かって斜めに設置したので、ローラ25の回転に伴ってディスクDを斜め方向に移動させていずれか一方の搬送ガイド部材23,24に押し当てようとする搬送力が発生し、この搬送力のうち、ディスク挿入口4と直交する方向の分力を利用してディスクDをイジェクト位置とプレイ位置との間で自動搬送することができる。これによりディスクDをガイドトップとローラ25間で挟持して自動搬送できる領域がディスクの搬送経路方向(矢印X1−X2方向)に沿って広がるため、ディスク挿入口4から突出するディスクDの排出量が増加するようにした場合でも、プレイ位置でディスクDの搬送力を利用して確実にクランプ動作に移行させることが可能となり、イジェクト操作時にユーザがディスクDを掴み易くなって装置本体から容易に取り出すことができる。また、1本のローラ25の両端部をローラブラケットに回転可能に支持することができるため、ガイドトップとローラブラケットおよびローラ25によって構成されるディスク搬送機構を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 枠体
1a 前面板
1b 傾斜板
2 ドライブユニット
4 ディスク挿入口
6 ベース部材
8 ガイドトップ
9 第1のローラ
10 第2のローラ
11 自在継手
12 モータ
13 ローラブラケット
14 クランプアーム
15 クランパ
16 スライド部材
17 リンク部材
18 板ばね
18a 起立片
19 スピンドルモータ
20 光ピックアップ
21 動力切換機構
23,24 搬送ガイド部材
25 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面にディスク挿入口を有する枠体と、前記ディスク挿入口から挿入されたディスクを該ディスク挿入口とプレイ位置との間で自動搬送するディスク搬送機構と、挿入されたディスクを前記プレイ位置でチャッキングして回転駆動するドライブ機構とを備え、前記ディスク搬送機構が、正逆両方向に回転可能なローラと、このローラの上方に対向配置されたディスクガイドとを有し、これらディスクガイドとローラとの間に挟持されたディスクが該ローラの回転駆動力によって自動搬送される車載用ディスクプレーヤにおいて、
前記ローラがディスクの搬送方向に対して互いに逆向きに斜め方向へ延びる第1のローラと第2のローラとからなり、これら第1および第2のローラのそれぞれの一端部どうしが前記ディスク挿入口の中央部近傍で平面視V字状に連結されていることを特徴とする車載用ディスクプレーヤ。
【請求項2】
前面にディスク挿入口を有する枠体と、前記ディスク挿入口から挿入されたディスクを該ディスク挿入口とプレイ位置との間で自動搬送するディスク搬送機構と、挿入されたディスクを前記プレイ位置でチャッキングして回転駆動するドライブ機構とを備え、前記ディスク搬送機構が、正逆両方向に回転可能なローラと、このローラの上方に対向配置されたディスクガイドとを有し、これらディスクガイドとローラとの間に挟持されたディスクが該ローラの回転駆動力によって自動搬送される車載用ディスクプレーヤにおいて、
ディスクの搬送経路を介して互いに平行に配設した一対の搬送ガイド部材を備えると共に、前記ローラを前記ディスク挿入口の中央部近傍から一方の前記搬送ガイド部材に向かって斜めに設置したことを特徴とする車載用ディスクプレーヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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