説明

車載用ナビゲーション装置及び車両の速度に基づくマップマッチング方法

【課題】 車両を取り巻く環境にかかわらず、また、他のマップマッチング技術と組み合わせることで、車両が存在する道路を精度良く特定することが可能な車載用ナビゲーション装置及び車両の速度に基づくマップマッチング方法を提供する。
【解決手段】 距離センサ5bと、制御部17とからなる車両の速度を検出する速度検出手段と、車両の期待速度の変化を示す期待速度パターンデータを、道路地図上の道路を示す道路データに関連付けて有する地図データベースとを備える車載用ナビゲーション装置10であって、速度検出手段が検出した速度に基づき、車両の速度変化を示す速度パターンデータを算出する処理と、速度パターンデータと期待速度パターンデータとを比較して、相関の度合いを算出する処理と、算出した相関の度合いに基づき、車両が存在する道路を特定する処理とを実行する制御部17を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置及び車両の速度に基づくマップマッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される一般的なナビゲーション装置は、より高い精度で現在位置を検出するために、GPS(Global Positioning System)測位と、ジャイロセンサ、速度センサ等を用いた自律測位とを併用している。検出した現在位置は、地図データベースに基づく道路地図とマップマッチング技術により照合される。このマップマッチング技術を実現する方式には、例えば車両からの距離が最も近い道路データを選別し、検出した現在位置をこれに整合させる投影法や、車両の一定期間、もしくは一定距離の走行軌跡を検出した現在位置に基づき算出し、この走行軌跡と最も相関の度合いが高い道路パターンから、走行した道路を判別するパターンマッチング法などがある。マップマッチング技術に関し、例えば特許文献1では、特に、近接して併走する道路がある場合に、車両が存在する道路を精度良く特定するマッチング技術を適用した以下に示すナビゲーション装置を提案している。
【0003】
特許文献1が提案するナビゲーション装置は、道路の混雑状況を示す道路状況情報を受信する道路状況情報受信手段と、車両の走行速度(以下、単に車速と称す)を検出する速度検出手段とを備えている。さらに、特許文献1が提案するナビゲーション装置は、道路状況情報受信手段が受信した道路状況情報と、速度検出手段が検出した車速との適合度を検出する適合度検出手段を備えている。特許文献1によると、上述の道路状況受信手段は、例えばVICS(Vehicle Information Communication System)情報(「順調」、「渋滞」等)を道路状況情報として受信し、適合性検出手段は、このVICS情報と、車速(「速い」、「遅い」等)との適合度を検出する。
【0004】
この場合、適合度検出手段は、マップマッチングにより現在車両が存在していると推定された一般道路のVICS情報が「順調」であるにもかかわらず車速が「遅い」であれば適合度が低いと検出し、一方、併走する高速道路のVICS情報が「渋滞」で、車速が「遅い」であれば適合度が高いと検出する。特許文献1が提案するナビゲーション装置はさらに道路判断手段を備えており、この道路判断手段は、上述の適合度の検出結果から併走する高速道路に車両が存在すると判断する。これにより、併走する道路のいずれか一方に車両が存在する場合でも、車両が存在する道路を精度良く特定することが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−97958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、パターンマッチング法に基づくマップマッチング処理(以下、単にパターンマッチング処理と称す)の場合、似通った道路パターンが複数存在する地域(例えば、京都の市街地など)では、車両が存在する道路を誤って判定することがある。図3は、パターンマッチング処理で車両が存在する道路を誤判定する状況を、道路地図を用いて示す図である。経路1は車両が実際に走行する経路を示している。ノードN0からノードN9までは道路地図上の位置をそれぞれ示している。ノードN1とノードN8には、それぞれ信号機Si1とSi2とが設置されている。また、経路2は経路1と略同一形状である。
【0007】
車両が実際にノードN0からN2に到着した際の走行軌跡に基づきパターンマッチング処理を実行した場合、経路1で示す道路(ノードN0−N2区間)と経路2で示す道路(ノードN1−N5区間)とが道路パターンが似通っているため候補道路として特定されたとする。ここで、ノードN1に向かっていたときの車両の検出位置が、実際に車両が走行している位置よりもオーバラン気味に検出されていた場合には、経路2で示す道路のほうが経路1で示す道路よりも走行軌跡との相関の度合いが高くなってしまうことがある。この場合には、パターンマッチング処理では経路2で示す道路に車両が存在すると誤判定してしまう。
【0008】
係る状況に対して、特許文献1が提案するナビゲーション装置は、例えば経路1で示す道路と、経路2で示す道路それぞれの道路状況が同程度の混雑状況である場合には、候補道路の適合度を同程度と検出してしまうことになる。すなわち、適合度の検出結果からは車両が存在する道路を区別できないため、特許文献1が提案するナビゲーション装置では、上述の状況で候補道路のうちから車両が存在する道路を精度良く特定できない。
【0009】
また、特許文献1が提案するナビゲーション装置では、車両が存在する道路を精度良く特定するために、道路状況情報を例えばVICSなどのシステムから受信する必要がある。すなわち、特許文献1が提案するナビゲーション装置は、システムが整備されていない地域を車両が走行する場合や、障害等によりシステムから道路状況情報を受信できない場合には、上述の効果を発揮することができない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、車両を取り巻く環境にかかわらず、また、他のマップマッチング技術と組み合わせることで、車両が存在する道路を精度良く特定することが可能な車載用ナビゲーション装置及び車両の速度に基づくマップマッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、車両の速度を検出する速度検出手段を備え、車両の期待速度の変化を示す期待速度パターンデータを、道路地図上の道路を示す道路データに関連付けて有する地図データベースを利用する車載用ナビゲーション装置であって、前記速度検出手段が検出した速度に基づき、車両の速度変化を示す速度パターンデータを算出する処理と、前記速度パターンデータと前記期待速度パターンデータとを比較して、相関の度合いを算出する処理と、算出した相関の度合いに基づき、車両が存在する道路を特定する処理とを実行する制御手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、例えば信号機の有無などによって車両の速度パターンが道路毎に異なってくることに着目して、車両が存在する道路を特定するにあたって、この速度パターンを利用することを特徴としている。本発明によれば、障害がある場合には必要な情報を受信できない等といった車両を取り巻く環境に左右されることなく、車両が存在する経路を特定することが可能である。
【0013】
また、本発明は、前記地図データベースと車両の位置情報とに基づいて、車両が存在する道路を特定するマップマッチング手段をさらに備え、前記制御手段は、相関の度合いを算出する前記処理として、前記マップマッチング手段が複数の道路を車両が存在する候補道路として特定した場合に、該候補道路を示す前記道路データそれぞれに関連付けられた期待速度パターンデータと、前記速度パターンデータとを比較して、相関の度合いを算出する処理を実行してもよい。
【0014】
本発明によれば、他のマップマッチング技術と組み合わせて制御手段が上述の処理を実行することで、例えば道路パターンが似通っている場合でも車両が存在する道路を精度良く特定することが可能である。
【0015】
また、本発明は、前記制御手段が、速度パターンデータを算出する前記処理を、所定時間または所定距離毎に実行してもよい。
【0016】
また、本発明は、前記制御手段が、車両が存在する道路を特定するための前記処理として、前記候補道路のうちから、算出した相関の度合いが最も高い候補道路を車両が存在する道路である、と判定する処理を実行してもよい。
【0017】
また、本発明は、車両の速度を検出する速度検出手段が検出した速度に基づき、車両の速度変化を速度パターンデータとして算出するステップと、車両用ナビゲーション装置の道路地図上の道路を示す道路データに関連付けた、車両の期待速度の変化を示す期待速度パターンデータと、前記速度パターンデータとを比較して、相関の度合いを算出するステップと、算出した相関の度合いに基づき、車両が存在する道路を特定するステップとを有することを特徴とする車両の速度に基づくマップマッチング方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両を取り巻く環境にかかわらず、また、他のマップマッチング技術と組み合わせることで、車両が存在する道路を精度良く特定することが可能な車載用ナビゲーション装置及び車両の速度に基づくマップマッチング方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【0020】
本実施例に係る車載用ナビゲーション装置10(以下、単にナビゲーション装置10と称す)の構成を、図1を用いて詳細に説明する。図1において、読取り機構1は、地図データやその他の案内データなどを地図データベースとして格納したCD(コンパクトディスク)−ROM(Read Only Memory)やDVD(Digital Versatile Disc)−ROM等の記録媒体を読み込むための構成である。ただし、これに限定されず、たとえばハードディスクドライブなどの記憶装置も適用することができる。
【0021】
また、地図データベースは、車両の期待速度の変化を示す期待速度パターンデータを道路データに関連付けて有している。より具体的には、以下に示すようにして、道路データに期待速度パターンデータを関連付けている。道路データは、道路地図上の位置(以下、ノードともいう)を示すノードデータと、ノード間を示すリンクデータとで構成されており、このノードデータとリンクデータとに車両の期待速度を示す期待速度データが関連付けられている。
【0022】
期待速度データは、例えば図3に示す道路地図で「信号あり交差点:ノードN1」、「信号なし交差点:ノードN2」、「T字路:ノードN6」などを示すノードデータそれぞれに対して関連付けられている。この期待速度データは1つのノードデータに対して、さらに「青信号」、「赤信号」、「直進」、「右折」、「優先道路」などの条件毎に存在する。同様に、期待速度データは、例えば「ノードN1−N2間」などを示すリンクデータに対しても関連付けられている。道路の期待速度は、道路地図上でこれら期待速度データの集合により示され、期待速度パターンデータは、これら期待速度データの集合である。
【0023】
操作部2は、ユーザがナビゲーション装置10に各種操作・設定を入力するための構成である。これは、リモートコントローラ装置やコントロールパネル等のように個別に構成されていても、後述する表示部6と一体に形成されたタッチパネル式の入力装置として構成されていても良い。更には、音声入力用のマイクロフォン等で構成されてもよい。
【0024】
VICS(道路交通情報通信システム)受信部3は、電波ビーコン又は光ビーコンから送信されてくるVICS情報を受信するための構成である。GPS受信部4は、GPS衛星から送信されてくるGPS信号を受信して車両の現在位置の緯度及び経度を検出するための構成である。自律航法センサ5は、車両方位を検出するためのジャイロ等を含む角度センサ5aと、一定の走行距離毎にパルスを発生する距離センサ5bとを有して構成されており、車両の進行方向や速度を検出する。
【0025】
表示部6は、例えば液晶表示方式のディスプレイ装置等で構成され、ナビゲーション装置10から入力された、道路地図や誘導経路や車両の現在位置や建造物その他アイコン等の各種情報を表示するための構成である。スピーカ7は、同じくナビゲーション装置10から入力された音声案内情報等を出力するための構成である。尚、スピーカ7はその他、音響装置等から入力された音楽等も出力することができる。
【0026】
また、ナビゲーション装置10において、バッファメモリ11は、後述する制御部17からの制御の下に読取り機構1から入力された地図データ等を一時的に格納するための構成である。I/F(インタフェース)12,13,14,15、16は、それぞれ操作部2,VICS受信部3,GPS受信部4,自律航法センサ5とナビゲーション装置10における内部バスとを接続するための構成である。
【0027】
制御部17は、例えばマイクロコンピュータやCPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置で構成される。本実施例では、制御部17で制御手段を実現している。この制御部17は、ナビゲーション用のプログラムを内蔵しており、このプログラムに従い、表示させたい地図のデータ等を読取り機構1からバッファメモリ11に読み出したり、バッファメモリ11に読み出した地図データから誘導経路を探索したり、設定された探索条件に合う誘導経路をバッファメモリ11に読み出された地図データ等を用いて1つ以上探索する等のナビゲーションに係る種々の処理を実行する。但し、例えば上記のプログラムをCD−ROMやDVD−ROM等に記憶しておくことも可能である。この場合、制御部17は必要に応じてこれを読出し、実行する。
【0028】
また、制御部17は、ナビゲーションに係る種々の処理として以下に示すパターンマッチング処理を実行する。但し、パターンマッチング処理に限らず、例えば投影法など、他のマッチング法に基づくマップマッチング処理を実行してもよい。処理制御部17は、GPS受信部4と自律航法センサ5とから出力される信号を利用して車両の現在位置を車両の位置情報として検出するための処理を実行する。さらに、制御部17は、所定距離毎に車両の位置情報に基づき、車両の走行軌跡を特定する処理を実行する。但し、所定距離毎ではなく所定時間毎にこの処理を実行することも可能である。
【0029】
続いて、制御部17は、この走行軌跡と所定の相関度合いを満たす、地図データベースに基づく道路地図上の道路を判別する処理を実行する。所定の相関度合いを満たす道路が複数存在する場合には、制御部17はこの複数の道路を候補道路として特定する処理を実行する。すなわち、本実施例では、制御部17でマップマッチング手段を実現している。また、この場合、制御部17は、車両の速度に基づくマップマッチング方法(以下、単に速度マッチング法と称す)を利用したマップマッチング処理(以下、単に速度マッチング処理と称す)をさらに実行する。すなわち、本実施例では、制御部17で制御手段を実現している。この速度マッチング処理については後述する。
【0030】
地図描画部18は、バッファメモリ11に読み出された地図データを用いて地図イメージの描画処理を行うための構成である。表示情報生成部19は、動作状況に応じて各種メニュー画面(操作画面)やカーソル等の各種マークを生成するための構成である。誘導経路記憶部20は、出発地及び目的地やその他の探索条件に基づいて制御部17において探索された誘導経路の全てのノードに関するデータを格納しておくための構成である。誘導経路描画部21は、誘導経路記憶部20から誘導経路データを読み出して誘導経路を他の道路とは異なる表示態様(色や線幅を用いた強調表示等)で描画するための構成である。アイコン描画部22は、地図イメージ上に描画する建造物やスポットや自車または他車などのアイコンの描画処理を行うための構成である。音声出力部23は、例えばDSP(Digital Signal Processor)等を含んで構成され、制御部17からの信号に基づいて音声信号をスピーカ7に出力する。
【0031】
画像合成部24は、地図描画部18で描画された地図イメージに、誘導経路描画部21で描画された誘導経路や、表示情報生成部19で描画された操作画面及び各種マークや、アイコン描画部22で描画された各種アイコンや、制御部17から入力された画像等を適宜重ねて、表示部6に表示させるための構成である。
【0032】
次に、図2に示す経路1と経路2との期待速度パターンデータとについて、図3に示す道路地図を参照しながら詳述する。図2(a)は、縦軸を期待速度とし、横軸を車両の位置としたグラフを用いて経路1で示す道路対応する期待速度パターンデータを示す図である。また、図2(b)は、縦軸を期待速度とし、横軸を車両の位置としたグラフを用いて経路2で示す道路に対応する期待速度パターンデータを示す図である。
【0033】
図3に示すように、経路1では車両がノードN1で右折することになる。このノードN1には信号機Si1が設置されている。したがって、車両は赤信号の場合には停止し、青信号の場合には右折する。これに基づき、車両が右折する場合のノードN1の期待速度データは、図3(a)に示すように「0」、または「S2」に設定されている。一方、経路2では車両がノードN1で直進することになる。したがって、車両は赤信号の場合には停止し、青信号の場合には直進する。これに基づき、車両が直進する場合のノードN4の期待速度データは、図3(b)に示すように「0」、または「S1」に設定されている。なお、車線幅などの道路条件はすべて同じであるとし、道路を示すリンクデータに関連付けられた期待速度データはすべて「S1」に設定されている。
【0034】
続いて、経路1では車両がノードN2でそのまま直進し、ノードN3で直角カーブを左折することになる。ノードN2では経路1で示す道路が優先道路になっているので、これに基づき、車両が直進する場合のノードN2の期待速度データは、図3(a)に示すように「S1」に設定されている。また、ノードN3では車両は赤信号で止まることがないので、これに基づき、ノードN3の期待速度データは、図3(a)に示すように「S3」に設定されている。
【0035】
経路1では、さらに車両がノードN6、N7、N8を直進してノードN9に到着することになる。ノードN8には信号機が設置されているため、直進する場合のノードN8の期待速度データは、図3(a)に示すように「S1」、または「0」に設定されている。ここで、信号機が設置された交差点では車両が黄色信号で減速することもあるため、車両が直進する場合のノードN8の期待速度データを、例えば破線で示すように「S6」に設定することも可能である。なお、ノードN6及びN7では経路1で示す道路が優先道路になっているため、車両が直進する場合のノード2と同様、期待速度が「S1」に設定されている。
【0036】
一方、経路2では車両がノードN4で右折することになる。この場合、車両は対向車がいる場合には停止し、いない場合には右折する。これに基づき、ノードN4を車両が右折する場合のノードN4の期待速度データは、図3(b)に示すように、「0」、または「S4」に設定されている。なお、ノードN4には信号機が設置されていないため、車両が右折する場合の期待速度データをノードN1とは異なる値に設定している。
【0037】
続いて、経路2では車両がノードN5で直進し、ノードN6で左折することになる。ノードN5では経路2で示す道路が優先道路となっていないため、車両が直進する場合のノードN5の期待速度データは、図3(b)に示すように「S1」、または「S5」に設定されている。また、ノードN6はT字路にあるため、ノードN6では車両が一時停止する。そのため、図3(b)に示すようにノードN6の期待速度データは「0」に設定されている。経路2では、さらに車両がノードN7、N8を直進してノードN9に到着することになる。
【0038】
上述した構成で、次に、制御部17が実行する速度マッチング処理について図2と図3とを用いて詳述する。速度マッチング処理として、まず制御部17は、例えば車両がノードN0からN2に到着するまでに走行した距離(所定距離)に対応する車両の速度変化を、速度パターンデータとして算出する処理を実行する。より具体的には、車両の速度は、距離センサ5bの出力信号に基づき、速度データとして制御部17により算出され、車両がノードN0からN2に到着するまでの間、算出された速度データ群が速度パターンデータとなる。なお、制御部17は、例えば算出した速度データを図示しない主記憶装置に一時的に記憶させ、その後、速度マッチング処理を実行する際に、主記憶装置に記憶させた速度データ群を速度パターンデータとして取得することが可能である。また、本実施例では距離センサ5bと制御部17とで速度検出手段を実現している。
【0039】
図3に示す道路地図において、パターンマッチング処理では、前述したように経路1で示す道路(ノードN0−N2区間)と経路2で示す道路(ノードN1−ノードN5区間)とが候補道路として特定される。制御部17は、ノードN0−N2区間を示す道路データに基づいて、期待速度パターンデータを取得する処理を実行する。この期待速度パターンデータが、図2(a)に示すノードN0からノードN2区間までの期待速度パターンデータに対応する。同様に、制御部17は、ノードN1−N5区間を示す道路データに基づいて、期待速度パターンデータを取得する処理を実行する。この期待速度パターンデータが、図2(b)に示すノードN1からノードN5までの期待速度パターンデータに対応する。
【0040】
続いて、制御部17は、車両がノードN0からN2に到着した際の速度パターンデータと、上述の経路1の期待速度パターンデータとを比較して、相関の度合いを算出する処理を実行する。ここで、車両はノードN1を右折する際に停止することなく右折できたとする。したがって、ノードN1における車両の速度を示す速度データは「S2」である。また、車両は実際にノードN0からノードN2までを走行しているので、相関の度合いは「高」と算出される。
【0041】
同様に、制御部17は、車両が上述の速度パターンデータと、上述の経路2の期待速度パターンデータとを比較して、相関の度合いを算出する処理を実行する。ここで、車両が右折した際の速度データ「S2」と、ノードN4に設定された期待速度データ「S4」とが異なるため、相関の度合いは「中」と算出される。なお、本実施例では、期待速度パターンデータとのかい離度をランク分けして相関の度合いを算出しているが、ランク分けせずに数値化して算出すること等も可能である。この場合には、かい離度が小さいほど相関の度合いが高くなる。
【0042】
さらに、制御部17は、算出した相関の度合いがより高い経路1で示す道路を、車両が存在する道路である、と判定する処理を実行する。なお、候補道路が複数あった場合には、制御部17は、最も相関の度合いが高い候補道路を車両が存在する道路である、と判定する。
【0043】
なお、上述の状況では、右折する際に車両が停止した場合には、ノードN1とノードN4とにおける期待速度データがともに「0」であるため、速度マッチング処理で算出する相関の度合いは同じになる。係る場合でも、図2に示すように、経路1と経路2との期待速度パターンデータが互いに異なっているので、その後同様にして速度マッチング処理を実行することで、車両が存在する道路を精度良く特定することが可能である。以上により、車両を取り巻く環境にかかわらず、また、他のマップマッチング技術と組み合わせることで、車両が存在する道路を精度良く特定することが可能な車載用ナビゲーション装置10及び速度マッチング法を実現可能である。
【0044】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施例に係る車載用ナビゲーション装置10の構成を示す図である。
【図2】経路1と経路2との期待速度パターンデータを示す図である。
【図3】パターンマッチング処理で車両が存在する道路を誤判定する状況を、道路地図を用いて示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 読取り機構
2 操作部
3 VICS受信部
4 GPS受信部
5 自律航法センサ
5a 角度センサ
5b 距離センサ
6 表示部
7 スピーカ
10 ナビゲーション装置
11 バッファメモリ
12、13、14、15、16 I/F
17 制御部
18 地図描画部
19 表示情報生成部
20 誘導経路記憶部
21 誘導経路描画部
22 アイコン描画部
23 音声出力部
24 画像合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度を検出する速度検出手段を備え、車両の期待速度の変化を示す期待速度パターンデータを、道路地図上の道路を示す道路データに関連付けて有する地図データベースを利用する車載用ナビゲーション装置であって、
前記速度検出手段が検出した速度に基づき、車両の速度変化を示す速度パターンデータを算出する処理と、
前記速度パターンデータと前記期待速度パターンデータとを比較して、相関の度合いを算出する処理と、
算出した相関の度合いに基づき、車両が存在する道路を特定する処理とを実行する制御手段を備えることを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記地図データベースと車両の位置情報とに基づいて、車両が存在する道路を特定するマップマッチング手段をさらに備え、
前記制御手段は、相関の度合いを算出する前記処理として、前記マップマッチング手段が複数の道路を車両が存在する候補道路として特定した場合に、該候補道路を示す前記道路データそれぞれに関連付けられた期待速度パターンデータと、前記速度パターンデータとを比較して、相関の度合いを算出する処理を実行することを特徴とする請求項1記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記制御手段が、速度パターンデータを算出する前記処理を、所定時間毎または所定距離毎に実行することを特徴とする請求項1または2記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記制御手段が、車両が存在する道路を特定するための前記処理として、前記候補道路のうちから、算出した相関の度合いが最も高い候補道路を車両が存在する道路である、と判定する処理を実行することを特徴とする請求項2または3記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
車両の速度を検出する速度検出手段が検出した速度に基づき、車両の速度変化を速度パターンデータとして算出するステップと、
車両用ナビゲーション装置の道路地図上の道路を示す道路データに関連付けた、車両の期待速度の変化を示す期待速度パターンデータと、前記速度パターンデータとを比較して、相関の度合いを算出するステップと、
算出した相関の度合いに基づき、車両が存在する道路を特定するステップとを有することを特徴とする車両の速度に基づくマップマッチング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−121139(P2007−121139A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314485(P2005−314485)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】