説明

車載用ナビゲーション装置

【課題】 路面軌道車両が走行する軌道が敷設されている道路が存在する地域を走行する車両のドライバに対する負担を軽減させるようにする。
【解決手段】 車両の現在位置を検出する自車位置検出手段14と、車両の現在位置と地図情報28とに基づき推奨走行経路を指定する走行経路指定手段15と、この推奨走行経路を含む情報であるナビゲーション情報を車両のドライバに対して知らせる通知手段16とを備えるとともに、走行経路指定手段15により指定された推奨走行経路に軌道敷設道路が含まれないように推奨走行経路を修正してナビゲーション情報とする軌道敷設道路回避手段19とを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されたナビゲーション装置は、単に車両の現在位置周辺の地図を表示する機能ばかりではなく、さまざまな機能が備えられている。
例えば、以下の特許文献1には、渋滞情報や工事情報などを加味した上で走行経路を案内するための技術が開示されている。
また、以下の特許文献2および3には、救急車などの緊急車両、路面電車および列車などと自車両との距離が接近した場合には、車両のドライバに対して警告音を発する技術が開示されている。
【0003】
他方、以下の特許文献4には、鉄道などに代表される各種の交通機関の運行時刻表を記憶しておき、この運行時刻表に基づいて、所定の踏切を列車が通過する時刻を予測し、列車通過中の踏み切りによって生じる渋滞を避けるための技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−240588号公報
【特許文献2】特開平8−136272号公報
【特許文献3】特開2003−106842号公報
【特許文献4】特開平7−229746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、道路上を走行する車両にとって関係の深い交通機関として、路面電車(路面軌道車両)が挙げられる。この路面電車は、その動力源として電気モータが用いられることが一般的であり、排ガスが生じないクリーンな交通手段として、近年注目されている。
もっとも、この路面電車は、レールの上を走行するため、その走行方向は当然にレールに沿った方向のみに限定される。つまり、自動車やオートバイなどの一般車両に比べて路面電車の機動性は非常に低く、このため、路面電車が走行する地域では、路面電車を一般車両よりも優先的に運行させる法規を採用するなどして、一般車両等と路面電車とが支障なく共存できるように対応している。
【0005】
しかしながら、一般車両のドライバにとっては、路面電車を優先的に走行させることを常に意図することが必要となるため、路面電車と併走したり、あるいは、路面電車とすれ違ったりした場合など、車両と路面電車とが近接した状況下においては、通常時よりも多くの注意を払いながら運転をすることが求められる。
また、路面電車を優先走行させるため、この路面電車が走行する道路、即ち、路面電車走行用のレールが敷設されている道路においては渋滞が発生しやすい。そして、このような渋滞発生中の道路を車両が走行する場合、車両は発進・停止を繰り返さなくてはならないため、渋滞していない道路を走行する場合に比べて、車両のドライバの負担は増加することになる。
【0006】
他方、路面電車に関する運用手法、例えば、細かい法規などは、その地域ごとで異なっており、この例を図6(財団法人運輸政策研究機構「LRTの導入可能性・活用方法の検討に関する報告書 平成13年3月」より引用)に示す。
そして、この図6に示すように、例えば、北海道の函館市、福井県の福井市、愛知県の豊橋市などでは、路面電車用のレールが敷設された車線(レール敷設車線)を一般車両が走行することが許可されているが、北海道の札幌市、東京都の世田谷区および北区、富山
県の富山市、滋賀県の大津市などでは、レール敷設車線の走行が禁止されている。また、東京都の荒川区や岐阜県の岐阜市では、レール敷設車線の一部のみで走行が許可されている。
【0007】
ここで、外国にも目を向けると、例えば、米国のサンフランシスコ市においては、図7に示すように、路面に「KEEP OUT(進入禁止)」の文字が塗布されて示され、路面電車(ケーブルカー)が走行する車線における一般車両の走行が原則的に禁止されている。
したがって、レール敷設車線を一般車両が走行することが許可されている都市(例えば、函館市)の住民が、レール敷設車線を一般車両が走行することが禁止されている都市(例えば、札幌市)において一般車両を運転するような場合には、日ごろ慣れ親しんだ交通法規とは異なる法規に従う必要があり、地元で走行する場合よりも多くの注意力をもって車両を運転することが求められる。
【0008】
また、路面電車が走行する地域においては、路面電車に関する道路標識が設けられていることは当然としても、このような路面電車に特有の道路標識を日常的に見かけることが無い地域の住民にとっては、この道路標識がどのような意味を持っているのかを瞬時に判断することが困難となる場合もある。
さらに、路面電車に関する運用は、図6に示すように、レール敷設車線を含む交差点において一般車両が停車することを禁止するゾーン(交差点内停車禁止ゾーン)が設定されているか否か(符号1−b参照)、レール敷設車線を横切った右折を許可するか否か(符号1−c)など、地域ごとにさまざまな相違点が存在しており、一般の道路を走行する場合に比べて、ドライバの負担が大きくなっているという課題がある。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、軌道敷設道路が存在する地域を走行する車両のドライバ(乗員)に対する負担を軽減させることができる、車載用ナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の車載用ナビゲーション装置(請求項1)は、車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と、該自車位置検出手段によって検出された該車両の現在位置と、地図に関する情報としての地図情報とに基づき、該車両が走行すべき目的地までの経路である推奨走行経路を指定する走行経路指定手段と、該走行経路指定手段により指定された該推奨走行経路を含む情報であるナビゲーション情報を該車両の乗員に対して知らせる通知手段とを備えるとともに、路面軌道車両が走行する軌道が敷設されている道路である軌道敷設道路に関する情報としての軌道敷設道路情報に基づいて、該走行経路指定手段により指定された推奨走行経路に該軌道敷設道路が含まれることを回避するように該推奨走行経路を修正して該ナビゲーション情報とする軌道敷設道路回避手段とを備えることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2記載の本発明の車載用ナビゲーション装置は、請求項1記載の内容において、時刻を検出する時刻検出手段と、該地図上の任意の地点における任意の時刻において該路面軌道車両が運行しているか否かを判定する軌道車両運行判定手段と、該走行経路指定手段により指定された該推奨走行経路に含まれる該軌道敷設道路を該車両が走行するであろうと予測される時刻である車両走行予測時刻を算出する予測時刻算出手段と、該予測時刻算出手段によって算出された該車両走行予測時刻の時点で、該走行経路指定手段により指定された該推奨走行経路に含まれる該軌道敷設道路において、該路面軌道車両が運行されていないことが該軌道車両運行判定手段により判定された場合には、該軌道敷設道路回避手段によって修正される前の該推奨走行経路を該ナビゲーション情報とする回避キャンセル手段とをそなえることを特徴としている。
【0012】
また、請求項3記載の本発明の車載用ナビゲーション装置は、請求項2記載の内容において、該路面軌道車両の現在位置を検出する軌道車両位置検出手段をそなえ、該軌道車両運行判定手段は、該軌道車両位置検出手段によって検出された該路面軌道車両の現在位置に基づいて、該路面軌道車両の運行状況を判定することを特徴としている。
また、請求項4記載の本発明の車載用ナビゲーション装置は、請求項2または3記載の内容において、該路面軌道車両の運行時刻表を取得する運行時刻表取得手段をそなえ、該軌道車両運行判定手段は、該運行時刻表取得手段によって取得された運行時刻表に基づいて、該路面軌道車両の運行状況を判定するを特徴としている。
【0013】
また、請求項5記載の本発明の車載用ナビゲーション装置は、請求項1〜4記載の内容において、該軌道敷設道路情報には、該軌道敷設道路において該車両が走行可能な車線である走行可能車線の情報である走行可能車線情報が含まれ、該車両が該軌道敷設道路を走行する場合に、該走行可能車線情報を該ナビゲーション情報に対して付加する車線情報付加手段をそなえることを特徴としている。
【0014】
また、請求項6記載の本発明の車載用ナビゲーション装置は、請求項1〜4記載の内容において、該軌道敷設道路情報には、該軌道敷設道路において用いられている交通標識に関する情報である交通標識情報が含まれ、該車両が該軌道敷設道路を走行する場合に、該交通標識情報を該ナビゲーション情報に対して付加する交通標識情報付加手段をそなえることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車載用ナビゲーション装置によれば、軌道敷設道路を避けるように推奨走行経路を修正するので、路面軌道車両が走行する軌道が敷設されている道路(即ち、軌道敷設道路)が存在する地域を走行する車両のドライバ(乗員)に対する負担を軽減させることができる。(請求項1)
また、路面軌道車両が車両の走行に対して影響を与えない場合には、軌道敷設道路を含めて推奨走行経路を指定するので、より短い距離や所要時間となる推奨走行経路を設定できる。(請求項2)
また、路面軌道車両の実際位置に基づいて検出された路面軌道車両の運行状況に応じて、軌道敷設道路を除くように或いは含めるように推奨走行経路を指定することができ、効率よく車両を目的地まで案内することができる。(請求項3)
また、路面軌道車両の運行時刻表に基づいて検出された路面軌道車両の運行状況に応じて、軌道敷設道路を除くように或いは含めるように推奨走行経路を指定することができ、さらに効率よく車両を目的地まで案内することができる。(請求項4)
また、軌道敷設道路を走行する場合においては、車両が走行することができる車線に関する情報をナビゲーション情報に付加してドライバに通知することにより、ドライバの負担を低減させながら、速やかに車両を目的地まで案内することができる。(請求項5)
また、軌道敷設道路を走行する場合においては、軌道敷設道路において用いられている交通標識に関する情報をナビゲーション情報に対して付加してドライバに通知することにより、ドライバの負担を低減させながら、速やかに車両を目的地まで案内することができる。(請求項6)
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置について説明すると、図1はその全体構成を示す模式的なブロック構成図、図2は軌道敷設道路を避けるように修正された推奨走行経路および修正前の推奨走行経路示す模式図、図3〜図5のそれぞれはその作用を示す模式的なフローチャートである。
図1に示すように、車載用ナビゲーション装置10は、車両に搭載されるものであって
、主に、制御ユニット11、記憶部12およびディスプレイユニット13によって構成され、ドライバ等の乗員(以下、単に「ドライバ」という)に対してナビゲーション情報を伝えることができるようになっている。なお、ここで、ナビゲーション情報とは、車両が走行すべき経路である推奨走行経路に関する情報を含む情報である。
【0017】
これらのうち、制御ユニット11は、いずれも図示しないインターフェースユニット,CPU,一時メモリなどを備える電子制御ユニットであって、車載用ナビゲーション装置10を統合的に制御することができるようになっている。
また、この制御ユニット11には、自車位置検出部(自車位置検出手段)14,走行経路指定部(走行経路指定手段)15,通知部(通知手段)16,クロック(時刻検出手段)17,路面電車運行判定部(軌道車両運行判定手段)18およびレール敷設道路回避部(軌道敷設道路回避手段)19が備えられている。
【0018】
さらに、この制御ユニット11には、予想時刻算出部(予測時刻算出手段)20,回避キャンセル部(回避キャンセル手段)21,路面電車位置検出部(軌道車両位置検出手段)22,運行時刻表取得部(運行時刻表取得手段)23,車線情報付加部(車線情報付加手段)24および交通標識情報付加部(交通情報付加手段)25が備えられている。
これらのうち、自車位置検出部14は、車載アンテナ26を通じて得られる衛星からのGPS情報によって自車両の現在位置を検出するものである。
【0019】
また、走行経路指定部15は、自車位置検出部14によって検出された自車両の現在位置と記憶部12に記憶された地図情報27とに基づき推奨走行経路を指定するものである。なお、記憶部12に関しては後述する。また、目的地は後述するディスプレイユニット13の入力部31を通じてドライバによって入力されるようになっている。
また、通知部16は、走行経路指定部15により指定された推奨走行経路を含む情報をナビゲーション情報として、ディスプレイユニット13を介してドライバに対して知らせるものである。
【0020】
また、このナビゲーション情報には、推奨走行経路に関する情報のほかにも、車両が走行できる車線に関する情報(推奨車線情報)や、レール敷設道路において用いられている交通標識に関する情報(交通標識情報)が含まれるようになっている。
ここで、レール敷設道路(軌道敷設道路)とは、路面電車に代表される路面軌道車両が走行するレールが敷設されている道路をいう。また、このレール敷設道路は、単に、レールが敷設されている道路の車線のみを指すものではなく、例えば、4車線道路において中央2車線に路面電車用のレールが敷設されている場合において、「レール敷設道路」という場合には、この4車線の道路全体を指す。また、路面電車用のレールが敷設されている車線(この例においては中央2車線)を「レール敷設車線」といい、当該レールが敷設されていない車線(この例においては外側の2車線)を「一般車線」という。
【0021】
クロック17は、現在の時刻を計測するものであって、アンテナ26を介して受信される標準電波に基づいて計測誤差を自動的に修正できる電波時計である。
路面電車運行判定部18は、記憶部12に記憶されている地図データ上の任意の地点における任意の時刻において、路面電車が運行しているか否かを判定するものである。なお、この路面電車の運行判定については後述する。
【0022】
また、この路面電車運行判定部18は、自車両が推奨走行経路に従って走行した場合に、路面電車と自車両とが遭遇するか否かを判定することもできるようになっている。
レール敷設道路回避部19は、走行経路指定部15により指定された推奨走行経路にレール敷設道路が含まれないように推奨走行経路を修正するものである。また、このレール敷設道路回避部19によって推奨走行経路が修正された場合には、上述の通知部16によ
り、この修正後の推奨走行経路がナビゲーション情報としてディスプレイユニット13を介してドライバに通知されるようになっている。
【0023】
予測時刻算出部20は、走行経路指定部15により指定された推奨走行経路にレール敷設道路が含まれている場合には、当該レール敷設道路を車両が走行するであろうと予測される時刻である車両走行予測時刻を算出するものである。なお、この車両走行予測時刻にはある程度の許容値が設定されている。
回避キャンセル部21は、走行経路指定部15により指定された推奨走行経路に含まれるレール敷設道路の場所において、予測時刻算出部20によって算出された車両走行予測時刻の時点で、路面電車が運行されていないことが軌道車両運行判定部18により判定された場合に、レール敷設道路回避部19の作動を停止させる
ものである。
【0024】
つまり、推奨走行経路にレール敷設道路が含まれていたとしても、自車両が当該レール敷設道路を走行する時刻の前後数分において路面電車が運行されていないことが明らかである場合には、この回避キャンセル部21によってレール敷設道路回避部19の作動が停止されるので、推奨走行経路に含まれたレール敷設道路を回避することを推奨せず、走行経路指定部15により指定された推奨走行経路がそのままディスプレイユニット13上に表示されるようになっている。
【0025】
なお、この回避キャンセル部21は、ドライバの要求に基づき、オンオフできるようになっているので、例えば、路面電車の運行状況に関わらず、レール敷設道路を回避して走行することを望むドライバは、この回避キャンセル部21をオフにすることで、その要求を満たすことができるようになっている。
路面電車位置検出部22は、アンテナ26を介して受信した路面電車の運行情報と、後述する運行時刻表取得手段23によって取得された路面電車の運行時刻表とに基づいて、路面電車の現在位置を検出するものである。なお、路面電車の運行情報は、路面電車の運営する経営母体や地方自治体等から提供されるようになっている。
【0026】
運行時刻表取得部23は、停留所ごとの運行時刻表をアンテナ26経由で取得するものである。また、この運行時刻表は、上述の路面電車の運行情報と同様に、路面電車の運営する経営母体や地方自治体から提供されるようになっている。
車線情報付加部24は、記憶部12に記憶されたレール敷設道路情報28に基づき、レール敷設道路においてレールが敷設された車線(即ち、レール敷設車線)およびその他の車線(即ち、一般車線)のうち、自車両が走行可能な車線である走行可能車線を選定するものである。そして、この車線情報付加部24は、自車両がレール敷設道路を走行する場合に、走行可能車線に関する情報をナビゲーション情報に対して付加することもできるようになっている。
【0027】
交通標識情報付加部25は、自車両がレール敷設道路を走行する場合に、記憶部12に記憶されたレール敷設道路情報28に基づき、レール敷設道路において用いられている交通標識に関する情報である交通標識情報をナビゲーション情報に対して付加するものである。
他方、記憶部12は、ハードディスクドライブ(以下、単に「HDD」という)であって、この記憶部12には、地図情報27およびレール敷設道路情報28が記憶されている。
【0028】
これらのうち、地図情報27は地図に関する情報であって、道路だけではなく、ガソリンスタンドやレストランといった種々の施設の情報が地図に関連付けられた状態で含まれるようになっている。
また、レール敷設道路情報(軌道敷設道路情報)28は、路面電車が走行するレールが敷設されている道路であるレール敷設道路に関する情報であって、より具体的には、レール敷設道路におけるレール敷設車線に関する情報、一般車線に関する情報、レール敷設道路において自車両が走行可能な車線である走行可能車線に関する情報(走行可能車線情報)、レール敷設道路において用いられている交通標識に関する情報(交通標識情報)などが含まれるようになっている。
【0029】
なお、地図情報27およびレール敷設道路情報28は、当初からHDD12に記憶されるように構成してもよいし、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)から読み出して、HDD12に記憶するようにしてもよい。また、HDD12に換えてRAM等の半導体メモリを設け、このRAMに地図情報27やレール敷設道路情報28を記憶するような構成としてもよい。さらに、アンテナ26を介して、外部のセンターより地図情報27やレール敷設道路情報28を得るような構成とすることも可能である。
【0030】
ディスプレイユニット13は、制御ユニット11と接続され、液晶ディスプレイ29、スピーカ30および入力部31が備えられている。
これらのうち、液晶ディスプレイ29は、制御ユニット11の通知部16から受信したナビゲーション情報を映像として表示するものである。
また、スピーカ30は、制御ユニット11の通知部16から受信したナビゲーション情報を警告音あるいは案内音声としてドライバに伝達するものである。
【0031】
また、入力部31は、ドライバによって操作される種々のボタンであって、この入力部31を通じて、車載用ナビゲーション装置10に対するドライバの要求が入力されるようになっている。
本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
【0032】
ここでは、図2に示すように、自車両が現在位置Aから目的地Bへ向かう場合を例にとって説明する。なお、この図2中、符号R0で示すルートは走行経路指定部15によって
指定される推奨走行経路、符号R1で示すルートはレール敷設道路回避部19によって修
正された推奨走行経路、符号L1で示す道路は路面電車が走行する道路(即ち、レール敷
設道路)である。
【0033】
経路を探索する際には、まず、ユーザによりディスプレイユニット13の入力部31が操作されることによって、目的地Bが設定され、経路を探索する旨の要求が入力されると、図3のステップS11において、自車位置検出部14により自車両の現在位置が検出され、その後、検出された自車両の現在位置と記憶部12に記憶された地図情報27とに基づき、現在位置Aから目的地Bまで自車両が走行すべき経路である推奨走行経路が走行経路指定部15によって指定される(ステップS12)。
【0034】
その後、ユーザによりレール敷設道路L1を回避したいか否かが操作部31を通じて入
力される(ステップS13)。
そして、ドライバがレール敷設道路L1を回避したい旨の要求を入力部31へ入力した
場合は、当該要求がディスプレイユニット13を通じて制御ユニット11に入力され(ステップS13のYesルート)、「レール敷設道路回避モード」(図4を用いて後述する)が選択される(ステップS14)。
【0035】
一方、ステップS13において、レール敷設道路L1を走行しても構わない旨の要求が
ドライバから入力部31へ入力されると、当該要求が入力部31から制御ユニット11に入力され(ステップS13のNoルート)、さらに、路面電車との遭遇を避けたいか否か
が操作部31を通じてドライバにより入力される(ステップS15)。
ここで、路面電車との遭遇を避けたい旨の要求がドライバにより入力部31へ入力された場合には(ステップS15のYesルート)、「路面電車回避モード」が選択される(ステップS16)。なお、この路面電車回避モードについては、図5を用いて後述する。
【0036】
他方、このステップS15において、路面電車との遭遇を避ける必要はない旨の要求がドライバより入力部31へ入力された場合には(ステップS15のNoルート)、ステップS12において走行経路指定部15によって指定された推奨走行経路R0がそのままナ
ビゲーション情報に反映され(ステップS17)、そして、この推奨走行経路R0が反映
されたナビゲーション情報が、通知部16によりディスプレイユニット13を通じてドライバに通知される(ステップS18)。
【0037】
ここで、ステップS14に示す「レール敷設道路回避モード」について、図4を用いて説明すると、まず、レール敷設道路回避部19により、推奨走行経路R0にレール敷設道
路L1が含まれているか否かが判定される(ステップS31)。なお、図2に示す例にお
いては、推奨走行経路R0にレール敷設道路L1が含まれているため(ステップS31のYesルート)、レール敷設道路回避部19により、推奨走行経路R0にレール敷設道路L1が含まれないように修正され(ステップS32)、この修正後の推奨走行経路R1がナビ
ゲーション情報に反映される(ステップS33)。
【0038】
なお、ステップS31において、推奨走行経路にレール敷設道路が含まれないと判定された場合においては(Noルート)、図3のステップS12において走行経路指定部15により指定された推奨走行経路R0がそのままナビゲーション情報に反映される(ステッ
プS34)。
そして、この図4に示すレール敷設道路回避モードのルーチンを抜けると、図3のステップS18に進み、このステップS18において、上述のステップS33において修正後の推奨走行経路R1が反映されたナビゲーション情報か、あるいは、ステップS34にお
いて推奨走行経路R0がそのまま反映されたナビゲーション情報かのいずれかが、通知部
16によりディスプレイユニット13を通じてドライバに通知される。なお、図2に示す例においては、推奨走行経路R0にレール敷設道路L1が含まれているため、修正後の推奨走行経路R1がディスプレイユニット13の液晶ディスプレイ29に表示されるとともに
、この推奨走行経路R1に沿った音声案内がスピーカ30から発せられる。
【0039】
ここで、図3のステップS16に示す「路面電車回避モード」について、図5を用いて説明すると、まず、路面電車位置検出部22により路面電車の現在位置が検出され(ステップS41)、さらに、運行時刻表取得部23により路面電車の運行時刻表が取得される(ステップS42)。
また、予測時刻算出部20により、推奨走行経路R0に含まれるレール敷設道路L1を自車両が走行するであろうと予測される時刻である車両走行予測時刻が算出される(ステップS43)。
【0040】
そして、ステップS41,S42において得られた路面電車の現在位置および運行時刻表と、ステップS43において得られた車両走行予定時刻に基づいて、路面電車と自車両とが遭遇するか否かが判定される(ステップS44)なお、このステップS44における判定は路面電車運行判定部18により行なわれる。
ここで、路面電車と自車両とが遭遇すると判定された場合には(ステップS44のYesルート)、レール敷設道路回避部19により、推奨走行経路R0にレール敷設道路L1が含まれないように修正され(ステップS45)、この修正後の推奨走行経路R1がナビゲ
ーション情報に反映される(ステップS46)。
【0041】
なお、ステップS44において、路面電車と自車両とが遭遇しないと判定された場合においては(Noルート)、走行経路指定部15により指定された推奨走行経路R0がその
ままナビゲーション情報に反映される(ステップS47)。
そして、この図5に示す路面電車回避モードのルーチンを抜けると、図3のステップS18に進み、このステップS18において、上述のステップS46のナビゲーション情報(修正後の推奨走行経路R1)、あるいは、上述のステップS47のナビゲーション情報
(修正されない推奨走行経路R0)のいずれかが、通知部16によりディスプレイユニッ
ト13を通じてドライバに通知される。
【0042】
そして、自車両がレール敷設道路L1を走行することがない場合には、そのまま、上述
したステップS11〜S18の制御が繰り返される(ステップS19のYesルート)。一方、自車両がレール敷設道路L1を走行することになった場合には(ステップS19の
Noルート)、車線情報付加部24により、レール敷設車線および一般車線のうち、自車両が走行可能な車線である走行可能車線が選定され、ここで選定された走行可能車線に関する情報(走行可能車線情報)がナビゲーション情報に対して付加される(ステップS20)。
【0043】
さらに、交通標識情報付加部25により、レール敷設道路L1において用いられている
交通標識に関する情報(交通標識情報)をナビゲーション情報に対して付加される(ステップS21)。
そして、これらの走行可能車線情報および交通標識情報が付加されたナビゲーション情報が、通知部16によりディスプレイユニット13を通じてドライバに通知される(ステップS22)。
【0044】
このように、本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置によれば、推奨走行経路にレール敷設道路が含まれている場合には、レール敷設道路回避部19が、この推奨走行経路がレール敷設道路を含まないように修正する。これにより、修正後の推奨走行経路は、修正前の推奨走行経路に比べて、若干走行距離が長くなる場合があり得るものの、レール敷設道路を走行する必要がなくなるため、ドライバに対する負担を軽減させることができる。
【0045】
また、レール敷設車線には、レールが敷設されているため、路面に凹凸があり、車両の乗り心地を損ねる場合があるが、レール敷設道路を含まないように車両を案内することで、このような事態を回避することもできる。
また、走行経路指定部15により指定された推奨走行経路に含まれるレール敷設道路を、自車両が走行すると予測される時点(即ち、車両走行予測時刻)で、路面電車が運行されていないことが、軌道車両運行判定部18により判定された場合には、回避キャンセル部21により、軌道敷設道路回避部19の作動が停止される。
【0046】
これにより、推奨走行経路を修正することなく、そのままドライバにナビゲーション情報として伝達することで、ドライバが車両を運転する時間を短縮し、ドライバへの負担を軽減することができる。
なお、路面電車が運行されていないと判定される具体的な例としては、早朝あるいは深夜など、路面電車の運行時間外である場合や、レール敷設道路において走行中の路面電車が存在しない場合などが挙げられる。
【0047】
なお、この回避キャンセル部21の作動/非作動(オンオフ)は、ドライバの要求により自由に選択できるようになっているので、路面電車の運行状況に関わらず、レール敷設道路を走行したくないというドライバの要求も満たすことができるし、路面電車と遭遇するのであればレール敷設道路を走行したくないというドライバの要求も満たすことができ
る。
【0048】
また、この軌道車両運行判定部18による判定は、軌道車両位置検出部22によって検出された路面電車の現在位置および運行時刻表取得部23によって取得された運行時刻表の少なくとも一方に基づいて行なわれる。
したがって、路面電車の現在位置を正確に検出することによって、効率よく自車両を目的地まで案内することができる。
【0049】
記憶部12に記憶されたレール敷設道路情報28には、レール敷設道路において車両が走行可能な車線である走行可能車線の情報である走行可能車線情報が含まれており、また、車線情報付加部24により、車両がレール敷設道路を走行する場合に、上記の走行可能車線情報がナビゲーション情報に対して付加される。
さらに、交通標識情報付加部25により、車両がレール敷設道路を走行する場合に、交通標識情報がナビゲーション情報に対して付加される。
【0050】
これにより、ドライバは、走行可能車線を容易に認識することができ、また、レール敷設道路において用いられている交通標識が日頃見かけないようなものであったとしても容易に理解することができるので、ドライバの負担を低減させながら、速やかに車両を目的地まで案内することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0051】
例えば上述の実施形態においては、回避キャンセル部21が、ドライバの要求により自由に作動/非作動(オンオフ)選択できるようになっている場合について説明したが、このような場合に限定するものではない。例えば、時間帯に応じてレール敷設車線の走行を許可したり許可しなかったりする地域において、この回避キャンセル部21のオンオフをクロック17と連動させるようにしてもよい。これにより、ドライバは、レール敷設車線の走行が許可されている時間帯であるか否かという点に注意を払うことなく、車両の運転に集中することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の全体構成を示す模式的なブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置により指定された推奨走行経路を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の作用を示す模式的なフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の作用を示す模式的なフローチャートであって、レール敷設道路回避モードを示す。
【図5】本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の作用を示す模式的なフローチャートであって、路面電車回避モードを示す。
【図6】路面電車の運用手法が各地で異なっていることを示す表である。
【図7】米国のサンフランシスコ市における路面電車の運用状況を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
10 車載用ナビゲーション装置
12 記憶部(記憶手段)
14 自車位置検出部(自車位置検出手段)
15 走行経路指定部(走行経路指定手段)
16 通知部(通知手段)
17 クロック(時刻検出手段)
18 路面電車運行判定部(軌道車両運行判定手段)
19 レール敷設道路回避部(軌道敷設道路回避手段)
20 予測時刻算出部(予測時刻算出手段)
21 回避キャンセル部(回避キャンセル手段)
22 路面電車位置検出部(軌道車両位置検出手段)
23 運行時刻表取得部(運行時刻表取得手段)
24 車線情報付加部(車線情報付加手段)
25 交通標識付加部(交通標識情報付加手段)
27 地図情報
28 レール敷設道路情報(軌道敷設道路情報)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と、
該自車位置検出手段によって検出された該車両の現在位置と、地図に関する情報としての地図情報とに基づき、該車両が走行すべき目的地までの経路である推奨走行経路を指定する走行経路指定手段と、
該走行経路指定手段により指定された該推奨走行経路を含む情報であるナビゲーション情報を該車両の乗員に対して知らせる通知手段とを備えるとともに、
路面軌道車両が走行する軌道が敷設されている道路である軌道敷設道路に関する情報としての軌道敷設道路情報に基づいて、該走行経路指定手段により指定された推奨走行経路に該軌道敷設道路が含まれることを回避するように該推奨走行経路を修正して該ナビゲーション情報とする軌道敷設道路回避手段とを備える
ことを特徴とする、車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
時刻を検出する時刻検出手段と、
該地図上の任意の地点における任意の時刻において該路面軌道車両が運行しているか否かを判定する軌道車両運行判定手段と、
該走行経路指定手段により指定された該推奨走行経路に含まれる該軌道敷設道路を該車両が走行するであろうと予測される時刻である車両走行予測時刻を算出する予測時刻算出手段と、
該予測時刻算出手段によって算出された該車両走行予測時刻の時点で、該走行経路指定手段により指定された該推奨走行経路に含まれる該軌道敷設道路において、該路面軌道車両が運行されていないことが該軌道車両運行判定手段により判定された場合には、該軌道敷設道路回避手段によって修正される前の該推奨走行経路を該ナビゲーション情報とする回避キャンセル手段とをそなえる
ことを特徴とする、請求項1記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
該路面軌道車両の現在位置を検出する軌道車両位置検出手段をそなえ、
該軌道車両運行判定手段は、該軌道車両位置検出手段によって検出された該路面軌道車両の現在位置に基づいて、該路面軌道車両の運行状況を判定する
ことを特徴とする、請求項2記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
該路面軌道車両の運行時刻表を取得する運行時刻表取得手段をそなえ、
該軌道車両運行判定手段は、該運行時刻表取得手段によって取得された運行時刻表に基づいて、該路面軌道車両の運行状況を判定する
ことを特徴とする、請求項2または3記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
該軌道敷設道路情報には、該軌道敷設道路において該車両が走行可能な車線である走行可能車線の情報である走行可能車線情報が含まれ、
該車両が該軌道敷設道路を走行する場合に、該走行可能車線情報を該ナビゲーション情報に対して付加する車線情報付加手段をそなえる
ことを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
該軌道敷設道路情報には、該軌道敷設道路において用いられている交通標識に関する情報である交通標識情報が含まれ、
該車両が該軌道敷設道路を走行する場合に、該交通標識情報を該ナビゲーション情報に対して付加する交通標識情報付加手段をそなえる
ことを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−258488(P2006−258488A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73500(P2005−73500)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】